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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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『 さよならはスローボールで 』 -これは一種の同窓会の終わり-

Posted on 2025年10月30日 by cool-jupiter

さよならはスローボールで 75点
2025年10月26日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キース・ウィリアム・リチャーズ
監督:カーソン・ランド

 

妻に「草野球の何がおもろいん?」と言われたが、それでもチケット購入。

あらすじ

アメリカの片田舎。ソルジャーズ・スタジアムは中学校建設のため取り壊しに。いつもそこで試合をしていたアドラーズとリバードッグズの面々は様々な思いを胸にラストゲームに臨む・・・

ポジティブ・サイド

おっさんたちがグダグダの草野球をする。それだけの映画なのに、胸に湧き上がってくるこのノスタルジアは何なのか。20代のころ、大学の先輩、同級生、後輩たちと参戦していた三鷹市民リーグを思い出した(ソフトボールだったが)。

 

野球が他のスポーツと大きく異なる点として

 

(1)攻めと守りがはっきりと分かれている
(2)太っていてもプレーできる
(3)プレー中にだらだら喋ることができる
(4)プレーの合間に余裕をもって飲食できる
(5)中年になってもプレーできる
(6)詳細なスコアカードがつけられる

 

などが挙げられる。ゴルフのように(2)が当てはまるものもあるし、(3)もゴルフに当てはまったりするが、これだけおっさん向きなスポーツはなかなかない。個人的には(6)が最も重要かつ独特であると思う。テニスのスコアカードを見て、そのポイントの詳細を思い浮かべるのは難しいが、野球は何となくそれができてしまう。

 

本作には草野球に興じるおっさん(一部若手もいる)、その試合を見守る者、そしてその試合を理解できない者の三種類の人間たちがいる。本作はその誰にも特別なドラマを用意しない。いや、一人だけいたか。それはスコアラーのフラニー。もし本作に主人公がいるとすれば、それはフラニー。何故なのかは、ぜひ劇場で鑑賞して確かめてほしい。

 

本作は野球映画であるが、とにかく野球は余白のスポーツ。本作ではプレーもフィーチャーされるが、それ以上にプレーしていない場面がフォーカスされている。外野でただ一人だけ佇立し、物思いに耽る。外野席の見物客に「うるせー、邪魔だ」と悪態をつく。あるいはベンチで野球談議に興じる。あるいは二階席でどうでもいい世間話をする。そうした無意味に思える時間も、これが最後の試合だと思うと、妙に愛おしく、そして腹立たしいものにも感じられる。この感覚は何か。これは少年時代への回帰なのだ。あるいは、売上だ、納期だ、業務改善だ、新人育成だと追い立てられることのない場所への一時的な避難、がちがちの上下関係に縛られた会社やビジネスという世界からの逃避なのだ。そしてチームメイト、あるいは対戦相手と出会うのは一種の同窓会なのである。

 

同窓会から帰りたくない、という経験はだれしもあるだろう。そんな切なさを押し殺して、黙々とプレーを続ける男たちの姿は見る者の胸を打つ。なかには「こんなゲームはさっさと終わらせよう」という者もいるのだが、それも当たり前の反応。いい年したおっさんがいつまで少年の気分に浸りたがっているのか。それもまっとうな批判だ。とにかく、本作の良さは観ないことには分からない。『 さよならはスローボールで 』とは誰がつけた邦題なのか分からないが、なかなかのセンスではないか。

 

ネガティブ・サイド

途中でさっそうと現れ、いつの間にやら消えていくリリーフピッチャーの正体をその場で明かしてほしかった。

 

フードトラックで何でピザを売っているのか?そこはホットドッグであるべきではないのか。

 

総評

非常に面白かった。ビッグプレーがあるわけでもなく、劇的な試合展開や思いもよらぬ人間関係が明らかになったりするわけでもない。おっさんたちが飽きることなく試合をしていく様がこれほど愛おしく感じられるとは。何の変哲もない男たちの向こうに、とてもありふれた、しかし尊ぶべきドラマがある。『 パターソン 』を楽しめた人なら、本作も問題なく楽しめるに違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

lose track of time

時を忘れるの意。”Damn, this party was so fun that I lost track of time. Gotta run. Or I will break my curfew. Have a good one, guys!”「ああもう、パーティー楽しすぎて時間を忘れてた。もう行くわ。門限やべえ。じゃあな」 のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 羅小黒戦記2 』
『 爆弾 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, キース・ウィリアム・リチャーズ, スポーツ, ヒューマンドラマ, フランス, 監督:カーソン・ランド, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 さよならはスローボールで 』 -これは一種の同窓会の終わり-

『 恋に至る病 』-近年まれにみる駄作-

Posted on 2025年10月28日 by cool-jupiter

恋に至る病 15点
2025年10月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山田杏奈 長尾謙杜
監督:廣木隆一

 

『 ミスミソウ 』や『 屍人荘の殺人 』、もしくは『 死刑にいたる病 』のようなテイストを期待していたが、全然違う作品だった。端的に言って残念な出来である。

 

あらすじ

親の転勤のため転校を繰り返してきた望(長尾謙杜)は、隣家の住人で新しい学校のクラスメイトの景(山田杏奈)と出会う。二人の距離は近づいていくが、それを快く思わない人物もいて・・・

ポジティブ・サイド

序盤で景が万物流転やら諸行無常など、理解しているのか怪しい概念を口にするが、サルトルのアンガージュマンの考え方を述べたのにはびっくりした。対象は限られると思うが、哲学専攻の大学生は鑑賞時に耳を澄ましてみよう。

ネガティブ・サイド

キャラクター同士の関係の始まり、その変化や深化がまったくと言っていいほど描けていない。たとえば望がクラスの女子を下の名前で呼んだりする契機を景と絡めて描けば、それも景というキャラの深堀りにつながっただろうに。

 

ブルーモルフォの設定も意味不明。なるほど、ソシャゲでログインボーナスをもらい続けているうちにやめられなくなるということはある。しかし、デイリーミッションをこなしているうちにやめられなくなるというのは、何らかの reward なしには考えられない。そのリワードが何であるのかが暗示すらされないのでは、ブルーモルフォの恐怖が伝わってこない。

 

そのブルーモルフォ絡みの殺人事件でも、クラスメイトばっちりニュース映像に映し出されているのに「クラスターが云々」やら「何でも知ってるね!」やら、アホかな?いや、それが景の人心掌握術だというならいいが、だったらそういうシーンを事前に入れておいてくれ。たとえば額の傷の治りが不安になって、それを女子連中にLineか何かで打ち明けて、取り巻き女子たちも同じような傷を自分でつけて・・・のような描写があれば、クラスが狂っていくスタートとしては悪くなかっただろう。

 

いじめのシーンもえらい中途半端。せっかくのPG12なのだから、もっと陰湿かつ痛みを感じさせる描写が欲しかった。それよりも、根津原の頭が悪すぎて呆れるしかなかった。自分でいじめの証拠を写真にして、それを自分で拡散するとかアホかな。前田敦子演じる刑事も、望に色々尋ねる前に現場(防犯カメラの映像や結婚のような証拠が死ぬほど残っていると思われる)の周辺をくまなく洗え。とことん無能臭を放つ刑事だったな。

 

兎にも角にも望と景の関係の描写があまりにも薄く、足りない。その一方で無駄なシーンが多すぎ。先輩の話とかいらんやろ。その先輩も、あんな小さな凶器であんな凶行は無理。ペーパークラフトではなく、せめて彫刻でも作らせておくべきだった。

 

引きのカメラからのロングのワンカットを多用していて、なにか作劇的な意味があるのかと思ったが特になし。カメラワークには意図を込めるべし。また、イッてしまったキャラは皆、アップで顔を映していたが、そこで瞬きするキャラとしないキャラ、また瞬きしないキャラも耐え切れずに最後に瞬きしてしまうなど、演技・演出の両面で課題を残した。

 

総評

観ていて苦痛を感じるほどつまらなかった。山田杏奈は好きな役者だが、今回はミスキャスト。血なまぐさい役は似合うが、一種のカリスマ性というか、魔性の女としては弱い。望を演じた役者もアイドルか?セリフ回しが拙すぎる。童顔だけで起用されたのだろうか。中高生ならそれなりに楽しめるのかもしれないが、大人にはきつい。チケット購入の前に、よくよく検討のこと。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

morpho

作中では蝶の名前として言及されるが、これはギリシャ語で「形」の意味。蝶といえば卵→幼虫→さなぎ→成虫と形を変える代表選手である。ちなみに英語学習界隈で時折見られる「語源から単語を覚えよう」で言われる語源とは、ほとんどの場合、実は語源ではない。それらはたいてい接頭辞、語幹、接尾辞で、これらは morpheme = 形態素の仲間である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 羅小黒戦記2 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, F Rank, サスペンス, 山田杏奈, 日本, 監督:廣木隆一, 配給会社:アスミック・エース, 長尾謙杜Leave a Comment on 『 恋に至る病 』-近年まれにみる駄作-

聖地巡礼 『 港に灯がともる 』

Posted on 2025年10月26日2025年10月26日 by cool-jupiter

2025年10月26日 兵庫県神戸市長田区二葉町

 

『 港に灯がともる 』でフォーカスされた丸五市場を探訪してきた。実はお盆休みにも訪れたのだが、まさかの休み。今回はそのリベンジである。

 

JR新長田駅で下車して、まずは鉄人28号を見物。たまに車窓から眺めていたオブジェだが、実際に目の当たりにしてみるとその偉容に圧倒された。あいにくの天気で映えはしなかったが、兵庫の県南住みなら一度は訪れてもいいかもしれない。

その後、西神戸センター街を通って丸五市場を目指す。途中で司馬懿の像に遭遇。Jovianは三国志では、実は司馬懿が一番好きである。愚鈍にして「そうか、ここは横山光輝の出身地なのか」と思い当たる。が、実際は須磨の出身らしい。なんじゃそりゃ。

少し歩いてお目当ての丸五市場へ到着。暗い。地元尼崎の杭瀬商店街もなかなか寂れっぷりだが、これは最早、長洲の長栄市場(つぶれそう)や金楽寺の太平市場(つぶれた・・・)とそっくりだ。ある意味、つぶれる前に来ることができたのはラッキーなのだと考え、さっそく中へ。

入って割とすぐ右手にキムチ屋さん。在日っぽいおばちゃんが切り盛りしている店。セロリのキムチとナムルを購入。ご飯がおいしくなりそうだ。先に進むと右手にそばめし屋、左手にバー(飲み屋?)がある。そばめし屋の手前にはフリースペースもあり。数人だが客が入っている。

 

さらに少し先には劉備の像が鎮座しているが、俺はあんまり劉備が好きになれないんよなあ・・・ 右に曲がって左に曲がると惣菜屋と漬物屋が。惣菜屋で牛筋煮込みを購入。おばあちゃんに500円を渡すが、実はこの人、漬物屋さんだった。惣菜屋さんが少し外しているので代わりに店番をしていたとのこと。昭和的なほのぼのさを感じた。

その先はなんと崩落注意エリア。電気は通っているものの、天井の蛍光灯はほとんどすべて死に絶えていた。実際に崩れた天井もあり、なおかつ閉店した店のシャッターの中には上からの重みで変形したと思しきものも。あまり長いすべきエリアではないと判断し引き返す。

 

いくつかある入口のひとつのすぐ横にある青果店では南米系の若い兄ちゃんが店員をやっていた。アジアンな感じが強いエリアではあるが、良くも悪くも多国籍化が進んでいるようだ。

雨がひどくなったので。アーケードに避難。ユキヤ食品という店を発見したので、赤セン、ミノ、ハツ、テッチャン、バサの串焼きを購入。バサとは珍しい。これは牛の肺で、フワッフワの食感で、まさに珍味。東京の焼き肉屋で数回しか食べたことがなかったが、神戸で食べられるとは。そこから北上すると左手におにぎり竹ちゃんなる店が。15:00頃という中途半端な時間だったため、おかかと福神漬けの2個セットを妻と分ける。おかかを頂戴したが、普通の味。妻曰はく、福神漬けは美味しかったとのこと。

 

そこからは新長田から各駅停車に乗り三宮へ。歩いて20分弱で「おめざや」へ。雨がひどく、なかなかしんどかった。お目当ての黒豆きなこバタークリームと豆腐ケーキと各種マドレーヌを購入。帰りは阪神電車の春日野道から西宮へ。にしのみや市民祭りを横目にJR西宮まで歩く。そしてJR尼崎に帰ってきた。

 

そこから一休みしてレイトショーに向かうが、それは次の記事にて。


全体的に感じるのは時代の変化。丸五市場には「市場や商店街の姿がこのまま消えて行っていいのか」というポスターがあった。個人的には伝統芸能でもない限り、いつかは消えていくし、保存する力は働かないと思っている。そんな力があるなら、たとえば『 わたしは光をにぎっている 』の銭湯もつぶれなかったはずだし、『 港に灯がともる 』でリフォームされてハッピーエンドになっていたはず。大切なのは形を残すことではなく、思い出を残すことではないかと思う。なので長田の思い出をここにも残しておく。とはいっても、一番良いのは実際にそこを訪れて、ある程度のお金を落とすことであるのは間違いない。阪神間の住人、あるいは北摂の住人でたまに鶴橋に行くという人は、折を見て丸五市場やその周辺に足を延ばしてみてはどうだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

food stall

屋台の意。いわゆる市場は衰退が激しいが、屋台はまだまだ勝負できるのではないか。淀川花火しかり、天神祭りしかり。ユキヤ食品も屋台ではないが、屋台的に売り出すことで新規客をゲットできているように思う。韓国や中国といった東北アジア、および台湾、タイ、ベトナム、カンボジアなどは屋台文化が強い。日本も、屋台をもう少しプロモートしてもいいのかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 恋に至る病 』

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代Leave a Comment on 聖地巡礼 『 港に灯がともる 』

『 秒速5センチメートル(2025) 』 -男の女々しさを描き出す-

Posted on 2025年10月21日2025年10月21日 by cool-jupiter

秒速5センチメートル 70点
2025年10月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松村北斗 高畑充希 上田悠斗 白山乃愛
監督:奥山由之

 

妻の「これ観たい」の一言でチケット購入。

あらすじ

プログラマーとして働く遠野貴樹(松村北斗)は、常に過去にとらわれていた。それは東京の小学校に転校してきた篠原明里(白山乃愛)との記憶だった。同じく転校生だった貴樹(上田悠斗)は彼女と交流を深めていく。しかし、明里はまたも引っ越すことになり・・・

ポジティブ・サイド

よくあんな気持ち悪い(思春期男子的に)アニメを実写化しようとしたなと思うが、これがいい感じに仕上がっているのだから大したもの。脚本と監督が原作に必要以上に忠実にならなかったことが成功の要因であるように思う。

 

大人になった貴樹と明里の対称的な日常への向き合い方を淡々と描写していくのが良かった。基本的には貴樹の物語は『 僕の好きな女の子 』で、乃愛の物語は『 ちょっと思い出しただけ 』だと思えばいい。

 

ただし、そこに思春期特有の甘酸っぱさと、ちょっとしたファンタジー要素というか、セカイ系的な要素が混じっている。ひたすら内省的になりがちな貴樹を、上司が適度に現実につなぎとめている。このあたり、松村北斗出演の傑作『 夜明けのすべて 』の上司や彼女未満の同僚との関係性にそっくりで、大人になり切れない男の典型というか、普遍的な在り方の一つなのだろう。

 

では、大人とは何か?この問いが発せられる文脈によって答えは様々だが、思い出に執着することなく、感謝できるようになることではないだろうか。プラネタリウムで見せる貴樹の涙は彼の成長のひとつの証であり、『 君の膵臓をたべたい 』の春樹の涙に匹敵するシーンだったと感じた。

 

電車、ロケット、探査機など、常に境界を越えて移動していくギミックが、貴樹と明里の関係を象徴化している。一度は忘れかけていた存在を、時速5キロメートルで思い出すシーンは印象的だった。確実に前に進む女と一向に前に進めない男の対比。そんな貴樹が遅ればせながらも前に進んでいくことを決意するシーンは白眉。「好きだった」と伝えられるのは、好きではなくなったからではなく、好きだったという気持ちを客観視できるようになったから。切なくもさわやかなビルドゥングスロマンだった。

 

ネガティブ・サイド

ペーシングに難あり。種子島をもう少し圧縮(煙草のエピソードなんかあったか?)したり、本屋でのニアミスを削ったりして、全体を1時間50分にまとめられれば、間延びしているという印象は生まれなかったのでは?

 

上田悠斗→松村北斗は理解できるが、上田悠斗→青木柚と青木柚→松村北斗はつながらない。もっとビジュアル的に適した役者はいなかったのか。白山乃愛→高畑充希も、ちょっと無理があった。

 

総評

矛盾するように聞こえる、かつセクシストにも聞こえかねないが、男が本来的に持つ女々しさを原作アニメ以上に巧みに、しかし控えめに、かつ確実に描出していると感じた。男は「名前を付けて保存」、女は「上書き保存」とはよく言ったもので、そのコントラストをやや冗長ながらもロマンチックに、かつドラマチックに描いている。デートムービーに向くかはわからないが、おっさん世代には刺さるのではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

railroad crossing

踏切の意。物語の中で踏切をフィーチャーしたシーンが2つある。あちら側とこちら側をへだてる象徴で、非常に印象的なシーンである。都市部では高架化あるいは地下化が進んでいるとはいえ、鉄道大国日本にはまだまだたくさんの踏切がある。これを機に覚えておこう。ちなみに横断歩道は pedestrian crossing と言う。併せて覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 恋に至る病 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ラブロマンス, 上田悠斗, 日本, 松村北斗, 白山乃愛, 監督:奥山由之, 配給会社:東宝, 青春, 高畑充希Leave a Comment on 『 秒速5センチメートル(2025) 』 -男の女々しさを描き出す-

『 ハンサム・ガイズ 』 -ホラーとコメディの融合作-

Posted on 2025年10月17日2025年10月17日 by cool-jupiter

ハンサム・ガイズ 60点
2025年10月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ソンミン イ・ヒジュン コン・スンヨン
監督:ナム・ドンヒョプ

 

シリアスな作品を連続で鑑賞したので、箸休めに本作のチケットを購入。

あらすじ

強面のジェピル(イ・ソンミン)と筋骨隆々のサング(イ・ヒジュン)は山奥に夢のマイホームを購入。しかし、近くに遊びに来ていた大学生グループのミナ(コン・スンヨン)を湖から助けたことから、大学生たちに殺人鬼だと勘違いされ・・・

ポジティブ・サイド

おっさん二人で家を買うという関係性がいい。「ハンサムな俺たちがモテないのは、モテようとしていないからだ」という発言も笑ってしまう。なるほど、この映画は一見して冴えない二人がモテるようになるストーリーなのだな、と分かりやすく予感させてくれる。

 

対するは、よくあるイケイケの大学生グループ。これが車で黒山羊を轢き殺してしまったことで、悪魔がよみがえってしまう。何を言っているのかわからないかもしれないが、『 破墓 パミョ 』みたいなものだと思えばよろしい。

 

ミナが殺人鬼に捕らえられたと勘違いした一団が、一人、また一人とアホな死に方をしつつ、死ぬことで悪魔の手先として復活する展開には笑った。と、同時にとある大学生の死にざまと復活は極めてまっとうなホラーになっていたりもする。バランスがいい。序盤の家のリフォーム作業や、その際に見つかった以前のオーナー神父の所有物も、終盤にしっかり効いてくる。

 

最後はほのぼの。モテるとは、不特定多数の異性から人気抜群になることではない。得難い異性の友を得ること、それができれば、そいつらはきっとハンサムだ。

 

ネガティブ・サイド

大学生がミナの奪還に乗り出す理由が弱い。もっと『 愚行録 』的な内容だったら、その後の言動との整合性がより強くなったと思うのだが。

 

ジェピルが理不尽にボコボコにされるシーンは、何らかの方法でもっとシリアスさを減じることはできなかったか。かなり胸が痛むシーンだった。男子大学生は、このシーンがあろうとなかろうと、すでに十分に嫌な奴。なので、彼にヘイトを集めるという意味も薄かった。

 

I don’t know English. と言っていた神父が(文字通りに)大きく成長して登場。なので、本当の意味での成長も見てみたかった。ラテン語を読めると思えるシーン(病室の床頭台の上のテクスト)があったのだから、『 エクソシスト 』のカラス神父よろしく、ラテン語を話すぐらいはしてほしかった。

 

総評

最初の30分ぐらい、本気でジェピル=イ・ソンミンだと気付かなった。それぐらいメイクも濃かったし、表情の作り方も違う。本当にカメレオン俳優だと思う。ホラーというにはコメディでありすぎ、コメディというにはホラーでありすぎる。ジャンル・ミックスの成功作品で、韓国宗教に関する知識がなくとも問題なく楽しめるライトな作品。度を越したグロ描写はないが、想像するのもはばかられるような死に方が一つあるので、そこだけは注意のこと。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヌグセヨ

韓国ドラマや映画でしょっちゅう聞こえてくる。意味は「どちら様ですか」で、ドア越しでも電話でも使える。意味としては Who is it? もしくは Who are you? である。次に韓国のドラマや映画を観る時には、ぜひ耳を澄ましてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 恋に至る病 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ソンミン, イ・ヒジュン, コメディ, コン・スンヨン, ホラー, 監督:ナム・ドンヒョプ, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 ハンサム・ガイズ 』 -ホラーとコメディの融合作-

『 隠された爪跡 』 -日本人は外国人と共生不可能か-

Posted on 2025年10月13日2025年10月13日 by cool-jupiter

隠された爪痕 75点
2025年10月12日 スペースふうらにて鑑賞
出演:曹仁承
監督:呉充功

 

とある伝手から本作の上映会を知り、スペースふうらへ赴く。鑑賞者は十数名で20代は1名、30代も1名、後は60~70代のシニアだった。

あらすじ

1923年9月1日、関東大震災時の朝鮮人虐殺を、当事者や目撃者の証言によって再構成するドキュメンタリー。

 

ポジティブ・サイド

『 福田村事件 』では、日本人が日本人を惨殺する過程がつぶさに描かれた。それに先立って、捕縛されていた社会主義者(当然日本人)も警察署内で殺されていった。同国人を誤解あるいは偏見に基づいて殺してしまったことが大きな衝撃であるが、本当に問われるべきは大多数の日本人が極めて少数の朝鮮人を虐殺したこと。そして、それが偶発的に生じた事件ではなく、実は国家が主導した事件である可能性が高いことだ。

 

本作は1983年公開で、実際の撮影はそれよりも数年または十年さかのぼって行われた。仮に1975年だとすれば、関東大震災から53年後、当時20歳でも年齢は73歳。多少薄まったり、あるいは大げさになっているとして、十分に事件は記憶されていると考えられる。本作は在日一世のアボジや、同世代の日本人の証言を生々しく捉え続けている。

 

『 ハルビン 』で伊東博文が「我々は文明をもたらしたのに何故それに感謝せず、反抗するのだ」のように慨嘆していたが、まさにそうした国際的な緊張が背景にある。『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』で、

 

「天は日本人の上にアジア人を造らず欧米人の下に日本人を造らず」というのが福沢の本音

 

だと書いたが、震災によって苦境に立たされた際の国家および国民の不安と不満の矛先を、国家主導で朝鮮人、中国人などのマイノリティに向けたというのが真相だろう。戒厳令発令に至るまでの過程を記した公文書は存在しないが、これも消された可能性が高い。国家がいかに簡単に公文書を改竄・破棄するのかについては、安倍政権を思い起こすだけでいい。自警団は自発的に組織されたと思っていたが、当時の政府が各地に「朝鮮人の攻撃に備えるために自警団を組め」という指令を飛ばした文書はいくつか残っていることから、これは実は国家的なジェノサイドだった疑いも濃厚である。ちなみに虐殺行為に加担した人々のほとんどは不起訴、さらに起訴された人々も大正から昭和への代替わりの際の天皇即位に伴って恩赦されている。状況証拠でしかないが、国家的な犯罪だったことを示唆していると言えよう。

 

東日本大震災や熊本地震でも「井戸に毒」というデマが飛んだが、恐ろしいのはそうした情報を国家やメディアではなく一般人が発することが可能なこと。そして日本人はデマに実はかなり耐性が低いであろうということ(わが兵庫県民の政治およびメディアのリテラシーの低さを見よ!)。

 

当時の関東地方の人口は推計で800万人。在住の朝鮮人は15,000人。そのうちの6,500人が死亡している。比率としては0.18パーセント。しかし半数近くが死亡、これはジェノサイドとみなされても仕方がない。ここに中国人を加えても、せいぜい比率は0.2パーセントだろう。現代日本の人口における外国人比率は3パーセント弱。南海トラフ地震が起きた時、自警団が組まれ、根拠のない情報に基づいて外国人迫害が起きてもおかしくない。だから、あらかじめ排斥しろ、ではアホなカルトの参政党と同じ。他者を同行しようとする前に、まずは自身のリテラシーを上げること。正しい情報を発信しようとする前に、正しくない情報は発信しないという心構えを持つこと。

 

ちなみに・・・実は本作には字幕がついているが、これは初版にはなかったとのこと。在日アボジだったり、当時を証言する日本人だったりは、興奮しているのか混乱しているのか、口調や言葉が結構めちゃくちゃで、リスニングだけの理解では無理があった。もし、どこかで上映会がある場合、主催者に字幕の有無を尋ねるべきである。正直、字幕なしでは理解がおぼつかない。

 

ネガティブ・サイド

荒川河川敷の発掘作業については、エンドクレジット前あるいは後にでも、何らかの注釈は入れられないのだろうか。一種のネタバレになるが、主催者が必ずこの情報を補足してくれるとは限らないので書いてしまうが、当時の荒川河川敷に埋められた朝鮮人の死体は数日後に掘り起こされ燃やされたことが判明している。一種の歴史修正主義者が「遺骨が出ないのだから虐殺はなかった」という主張の材料に本作が使われることを懸念して、ここに書いておく。

 

総評

40年以上前にこんなドキュメンタリーがあったとは知らなかった。調べてみると第七藝術劇場で2023年に本作および続編の『 払い下げられた朝鮮人 』も上映されていた。梅田だけではなく、もっと十三方面にもアンテナを張っておくべきだった。スペースふうらのオーナーによると、また上映会をするかもしれないとのこと。興味のある方々は是非そちらにアンテナを向けられたし。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 シークレット・メロディ 』
『 恋に至る病 』

 

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『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』 -革命はテレビで放送されない-

Posted on 2025年10月13日2025年10月13日 by cool-jupiter

ワン・バトル・アフター・アナザー 75点
2025年10月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レオナルド・ディカプリオ ショーン・ペン ベニシオ・デル・トロ チェイス・インフィニティ
監督:ポール・トーマス・アンダーソン

 

3時間近い上映時間ということで、しっかり昼寝をしてからレイトショーに出陣。

あらすじ

パット(レオナルド・ディカプリオ)は過激派フレンチ75の一員として活動していた。同志のペルフィディアとその娘と共に暮らすようになるが、ある時、仲間が銀行強盗に失敗。一転して追われる身となったパットは、まだ若い娘のウィラと共に新たな戸籍を得て逃亡する亡するが・・・

ポジティブ・サイド

D・トランプが激怒しそうな作品。もうそれだけで面白い。ある意味でアメリカ版の『 桐島です 』の桐島聡が『 ハリエット 』のハリエット・タブマンと出会ってしまった、という物語だった。

 

あるきっかけによりハリエット、ではなくペルフィディアを執拗に追い回すことになる狂った警察官をショーン・ペンが怪演。個人的には『 アイ・アム・サム 』のイメージの強い俳優だったが、こんな頭のイカれたオヤジ役もやれることに軽く感動させられた。ストーリーが進むほどに狂気の度合いがどんどん増していき、見ているこちらが心配になるほどだった。

 

対照的に、ディカプリオは頭のイカれたオヤジというよりも、腑抜けてしまったオヤジが父親として強さを取り戻していくストーリー。序盤は常に頭がラリっていて、言動も不穏、動きもヨレヨレ。しかし、娘のウィラに魔の手が迫っていることを知ってからは徐々に革命の闘士として再覚醒していく。その過程の描写もサスペンスとユーモアの配分が絶妙。ポール・トーマス・アンダーソンのキャリアの中の演出でも、これはベストではないか。

 

そのボブを手助けするベニシオ・デル・トロ演じるセンセイのキャラも非常に味わい深い。ヒスパニックであり、英語とスペイン語を話し、空手の指導者でありながら教え子のウィラはなぜか韓国語を話すという、劇中で誰よりもアメリカ的と言えるキャラである。かつ現代版のハリエット・タブマンと言える男である。彼が用意しているトンネル(実際にはtunnnelと発音されていた)の字幕が地下鉄道となっていることに気付かれただろうか。これはまさに『 ハリエット 』が車掌を務めた地下鉄道へのオマージュ。字幕翻訳担当の松浦美奈は great job である。警察に逮捕されたボブが見事に脱走できたのも、まさに現代版の地下鉄道の力によるもの。決してご都合主義ではない。もちろん本物の「地下鉄道」にも言及される場面があり、それに言及する人々がどのような人種であるかにも注目してほしい。

 

アメリカのリベラルを強烈に支持しているようにも嘲笑っているようにも見える。受け取り方は様々だろうが、アメリカはしばしば建国の父たちを称揚する。ボブとウィラという一種のいびつな親子関係をアメリカという非常に若い国家の歴史と重ねて合わせて見るとよいだろう。たとえば建国の父たちが定めた One man, one vote. =一人一票という原則は平等に見えて実は違う。これは実はアメリカに限った話ではなく、たとえばアジアの中で最も急速に近代化に成功した日本も、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の精神を発揮したが、これも実は「天は日本人の上にアジア人を造らず欧米人の下に日本人を造らず」というのが福沢の本音だったりする。本作はアメリカ特有の問題を扱った上質なサスペンスというだけではなく、それが実は先進国の近現代史のダークな精神性の発露とそれへの批判という意味にも捉えられるべきである。

 

ネガティブ・サイド

ペルフィディアのキャラがイマイチよくわからない。序盤早々に姿を消してしまうが、そこは何らかの最後っ屁をかましてほしかった。

 

賞金稼ぎの突然の変心の理由が弱いというか、”I don’t do kids.”と言いながら、ロックジョーの提案にあっさり乗ってしまうのは何故なのか。握手の前に数秒の躊躇なり、一瞬の表情の曇りなどを見せてくれれば、変心のシーンはご都合主義には映らなかっただろう。

 

ウィラにはジャン=クロード・ヴァン・ダムのハイキックをロックジョーにお見舞いしてほしかった。その上でケロッとしているロックジョーというのは、かなりシネマティックなシーンになったはず。

 

総評

3時間近い上映時間に身構えていたが、最初の30分あたりを過ぎてしまえば、後はストーリーに引き込まれるのみ。アクションあり、サスペンスあり、スリルあり、ユーモアありの濃密な時間だった。日本はアメリカの30年遅れだとよく言われるが、外国人人口が全体の3パーセントを占めるようになった今、本作は日本社会の在り方を考えるための大きなヒントにもなりうるエンタメ大作だと言える。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fight fire with fire

直訳すれば「火を使って火と戦う」だが、実際のニュアンスは「やられたらやり返す」というもの。劇中では火炎瓶を投げてくるモブに対して、Let’s fight fire with fire. のセリフと共に催涙弾が撃ち込まれた。別に火炎放射器で反撃しても、意味としてはおかしくないが。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 シークレット・メロディ 』
『 恋に至る病 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ショーン・ペン, チェイス・インフィニティ, ベニシオ・デル・トロ, レオナルド・ディカプリオ, 監督:ポール・トーマス・アンダーソン, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』 -革命はテレビで放送されない-

『 ラテン語でわかる英単語 』 -校正と編集に甘さを残す-

Posted on 2025年10月9日2025年10月9日 by cool-jupiter

ラテン語でわかる英単語 50点
2025年10月1日 読書開始(読了時期未定)
著者:ラテン語さん
発行元:株式会社ジャパンタイムズ出版

 

折に触れて小説やら新書を紹介しているが、今回はかなり異色の書籍を紹介したい。

 

概要

「本書は、英検®1級レベルの高い語彙力をつけたい方が効率よく英単語を学習できるように作成したものです」(3ページより抜粋)

 

ポジティブ・サイド

Jovianは英検1級に合格しているが、特段、対策はしなかった。なぜなら(と言っていいかどうか分からないが)ラテン語のバックグラウンドがあったからだ。大学3年生のまるまる一年間、〈ラテン語Ⅰ〉、〈ラテン語Ⅱ〉、〈ラテン語購読〉(わが母校は3学期制なのだ)を受講して、平日には2~3時間、ラテン語を勉強していた。もちろん、20年以上経った今ではかなり忘れてしまっているが、X(旧Twitter)界隈で時々見かける「語源がうんぬんかんぬん」と宣う輩よりは、遥かにetymologyの知識はあると自負している。そのJovianの目から見ても、なかなか面白い語がたくさん取り上げられている。

 

たとえば jus = 権利(86ページ)という語がある(個人的には ius と書きたいが)。これが jurisdiction や prejudice、juror や jury の語源であると知れば、一気にそうした方面の語彙が増える、あるいは覚えやすくなるだろう。

 

136ページの via = 道も面白い。ある程度英語力があれば、via Tokyo = 東京経由で、という意味になるのをご存じだろう。あの via である。ここから convey や convoy、また deviate などの語が派生している。

 

140ページの labor も味わい深い。英語でも労働だが、ラテン語でも労働だ。ここから laboratory = 仕事するところ → 実験室 となったり、あるいは elaborate《形容詞》 で「手の込んだ」、中島誠之助風に言うなら「いい仕事をしている」、という意味にもなる。日本語にも定着したコラボ= collaboration にも、しっかりと labor が入っている。

 

179ページの cedere = 行く、もぜひ知っておきたい。これにより exceed = 外に出ていく=超える、precede =(時間的に)先に行く、proceed =(空間的に)先に行く、secede = 脱退・分離独立する、なども容易に把握できる。本書では seccession をアメリカの南部諸州の独立だと紹介しているが、この語は2014年のスコットランド独立住民投票前に英字新聞で盛んに使われていたし、おそらくスペインからのカタルーニャ独立運動などが英語圏で報じられる際にも使われているはず。シネフィル(映画好き)っぽく言わせてもらえば、『 スター・ウォーズ 』の prequel trilogy で戦争が勃発したのは、通商連合が分離主義勢力=secessionist と組んでからだった。

 

語源の知識が英語力を伸ばすかどうかは不明だが、語彙力を伸ばす手助けになるのは間違いない。英検1級を目指す人が、ちょっと目先を変えた単語帳を求めるなら、本書も選択肢に入れていいだろう。

 

ネガティブ・サイド

大きな弱点が2つ。1つは著者の問題で、もう1つは編集・校正の問題。

 

ラテン語由来の英単語の網羅性がやや甘い。gradi を語源とする語としてregress, digress, congress, egress まで挙げておきながら ingress がないのは解せない。

 

manus = 手についても、派生語ではなく語の説明のところに manual = 手引書だと書くだけで、普通の学習者の腹落ち具合はかなり異なってくると思うのだが。なんでもal = 手引書だと書くだけで、普通の学習者の腹落ち具合はかなり異なってくると思うのだが。なんでもかんでも英検1級を基準に考えるべきではないと思う。parare のところで repair を取り上げているのだから、取り上げる英単語の選択が首尾一貫しているとは言い難い。

 

次に編集のミス(それとも著者のミス?)について。255ページのferreについて、「英語のtransfer「輸送する」とtranslate「翻訳する」は、同じ動詞(の違う語幹)が元になっている。つまり、完了形「私は運んだ」はtuli、「運ばれた」という意味になる完了受動分詞はlatusで、どちらもferreと起源が異なる形が使われているのだ」とあるが、起源は両方ともferreで同一である。正しくは『どちらもferreの時制や態が変化してできた異なる語幹(tulやlat)が使われているのだ』となるだろうか。

 

hortusの説明に「226で紹介したcohorsの関連語」とあるが、226とナンバリングされた語のところにも、226ページにもcohorsは記述されていない。これは編集・校正段階のミスだろう。

Jacereのところで、Jacta alea est =「さいは投げられた」としているが、これはAlea iacta est. の間違いではないか。いや、ラテン語は語順には融通無碍だが、歴史的な格言はそのままの語順を保つべきだ。

 

ザーッと軽く流し読みしただけで、これだけ「ん?」という記述が見つかるのだから、熟読するとどうなることやら・・・

 

英語のインデックスはあるが、ラテン語のインデックスがない。何故?

 

総評

英検1級を目指す人には向くかもしれない。あるいは時々存在する英単語マニアには好適か。ラテン語あるいはフランス語学習をある程度済ませた人には向かない。本書がベストセラーあるいはロングセラーになれば、そのうち errata がつくかもしれない。それを期待する意味でも本書を紹介しておく。もっとライトな語源の本がいいという人は GENGOZO でググってみよう。これはかつてのJovianの上司が作った本。たまにメルカリやヤフオクで売られている。間違いがかなり含まれているが、語源と英単語そのものの網羅性は(一応)本書よりも上である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』
『 ブラックバッグ 』
『 RED ROOMS レッドルームズ 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 国内, 書籍Tagged 2020年代, D Rank, 学術書, 日本, 発行元:株式会社ジャパンタイムズ出版, 著者:ラテン語さんLeave a Comment on 『 ラテン語でわかる英単語 』 -校正と編集に甘さを残す-

『 君の声を聴かせて 』 -王道の恋愛映画かつ家族映画-

Posted on 2025年10月7日 by cool-jupiter

君の声を聴かせて 70点
2025年10月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ホン・ギョン ノ・ユンソ キム・ミンジュ
監督:チョ・ソンホ

 

『 あの夏、僕たちが好きだったソナへ 』と同じく、台湾映画の韓国リメイク。そうとは知らずにチケット購入したが、かなり面白かった。

あらすじ

ヨンジュン(ホン・ギョン)は定職に就かず、実家の弁当屋を嫌々手伝っていた。ある日、配達先のプールでろうあ者の水泳選手ガウル(キム・ミンジュ)を世話する姉のヨルム(ノ・ユンソ)に一目惚れして・・・

 

ポジティブ・サイド

哲学専攻ゆえに就職に難儀するというのは、宗教学専攻ゆえ同様の経験をしたことがあるJovianにはいたく共感できた。自分がある程度、社会不適合者であるという自覚は当然あったが、いかなる分野であれ学問をそれなりに収めてきた人間を冷遇する社会は息苦しいではないか。

 

本作はしかし、ヨンジュンに手話を授けていた。手話を学んだ理由も終盤に明かされるが、純朴青年そのものという感じでほっとする。プールサイドで見かけた美女の妹に速攻で姉の名前を聞きに行くという行動がキモいと感じられないのは、彼のピュアさが垣間見えるからか。

 

互いにソウル在住の26歳だとは思えないほどのスローな関係の進展に全くやきもきしない。それは本作が恋愛映画ではなく家族の物語だから。ヨンジュンの両親は、本当なら息子を家からたたき出してもおかしくないのに、優しく見守る。ヨルムとガウルの両親も、木の上に立って見るの例えではないが、遠くから娘を信じて見守っている。

 

本作にはとある仕掛けがあり、気付く人は最初の10分で気付くだろう。普通の人でも中盤で、どんなに鈍い人でも終盤には分かるはず。たとえば『 マローボーン家の掟 』のように、登場人物同士の・・・おっと、これ以上は興ざめになる。しかし、本作が優れているのは、その仕掛けが分かっていても楽しめる構成にある。両片思いの変則バージョンとでも言おうか。

 

全編ほとんど手話で、しかもその手話のほとんどが韓国ローカルの手話。したがって、日本の手話を解する人なら、たとえば『 ケイコ 目を澄ませて 』のカフェでの会話シーンが理解できただろう。しかし、本作は無理。だが、どういうわけか通じるように感じられるのだ。それは、手話を使うヨンジュン、ヨルム、ガウルがとても表情豊かだから。しかも、それが演技ではなく、本当に恋する男女が互いの心を図らずもさらけ出しているかの如く。いや、それも監督の演出、役者の演技なのだが、観ている側が「いい演技だなあ」ではなく、「いいやつだなあ」、「かわいい子だな」と素直に思えるキャラクター像を作り上げている。本質は家族の物語なのだが、ラブロマンスとしても非常に味わい深い作品に仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

クレームおばさんが実際にペナルティを食らうシーンが5秒でいいから欲しかった。

 

クラブのシーンはとある伏線なのだが、その伏線は別のシーンでも張られていて足りていた。個人的にはもっと『 ベイビー・ドライバー 』でジョーが骨伝導スピーカーで音楽を楽しんだような、もっと少人数で屋内で音楽を楽しむようなシーンが欲しかった。

 

とある事件をきっかけに姉妹がギクシャクする展開になるが、この前のシーンから姉妹の間の思いのズレに関する描写を小出しにしていってくれていれば、ガウルの涙の訴えがもっとドラマチックになったのではないだろうか。

 

総評

エンタメとして普通に面白く、ロマンスとしてもさわやかで、ヒューマンドラマとしても申し分ない出来栄え。デートムービーに最適だが、中高年カップルが息子や娘が交際相手を連れてくる現代的シミュレーション物語として鑑賞するのもいい。スルーしていた『 ぼくが生きてる、ふたつの世界 』や、小説が面白かった『 レインツリーの国 』あたりを鑑賞してみたくなった。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャンカンマン

ちょっと待って、の意。これもパリパリ=早く早く、と並んで非常によく聞こえてくる表現、かつパリパリ同様に2回連続で発話されることが多い。ドラマや映画で必ずと言っていいほど聞こえてくるので、ぜひ耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』
『 ブラックバッグ 』
『 RED ROOMS レッドルームズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ミンジュ, ノ・ユンソ, ヒューマンドラマ, ホン・ギョン, ラブロマンス, 監督:チョ・ソンホ, 配給会社:KDDI, 配給会社:日活, 韓国Leave a Comment on 『 君の声を聴かせて 』 -王道の恋愛映画かつ家族映画-

『 宝島 』 -エンタメ性がやや不足-

Posted on 2025年9月28日2025年9月28日 by cool-jupiter

宝島 60点
2025年9月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:妻夫木聡 永山瑛太 窪田正孝 広瀬すず
監督:大友啓史

 

3時間超の作品と知って尻込みしていたが、ついにチケット購入。沖縄尚学の甲子園優勝の年に公開されるというのは、ある意味でとても縁起がいい。

あらすじ

1952年の沖縄で、米軍基地に侵入し、物資を奪う戦果アギヤーのオン(永山瑛太)、グスク(妻夫木聡)、レイ(窪田正孝)たちは、ある夜、ついに米軍兵に見つかってしまう。必死で逃げおおせたものの、オンは行方知れずとなる。時は流れ、グスクは刑事に、レイはヤクザに、オンの恋人のやまこ(広瀬すず)は教師になって・・・

ポジティブ・サイド

沖縄が飲み込まされてきた理不尽の数々が活写されている。本土に捨てられ、アメリカに踏みにじられる。それも弱い立場の女性や子どもほど。戦果アギヤーの面々が単なる愚連隊ではなかったのは、こうした人々への思いやりがあったから。グスクが刑事として情報源に孤児たちを使うのは非常にクレバーでシャーロック・ホームズ的。逆に言えば沖縄は産業革命後期のロンドンと同じく、貧富の差が拡大し、政治的に取りこぼされた人々を多く生んでいたのだ。沖縄の人々の大半はそうした構造的な苦境に立たされていたわけで、その責任は日本政府と米軍の両方にあったことを本作は余すことなく見せつける。

 

難しいのは、沖縄経済は米軍からのカネに支えられており、基地の存在および一定数存在する頭のおかしい米兵の存在を必要悪として許容できるかどうかという部分。これについて米兵狩りをする組織と、特飲街を仕切るヤクザの間に緊張が生じているという形で描写されており、非常に巧みだと感じた。一方で米兵の婦女暴行や交通事故、果ては飛行機の墜落や毒ガス漏洩など、治外法権状態の沖縄の人々の心情は察して余りある。これを必要経費だと割り切っていいのか。

 

人権や民主主義が絵空事でしかない中で、沖縄の人々が本土復帰を目指していく。グスク、レイ、やまこはそれぞれ異なる立場でその過程に身を投じていく。詳細は書けないが、一貫しているのは日本政府の主体性の無さ。アメリカを刺激するような動きは注視するが、沖縄の本土復帰を支援することはない。沖縄は「本土に復帰する」が、日本は「沖縄を回復する」というのが政治的には正しい表現。しかし、日本政府は「沖縄が本土に復帰」と表現する。香港の時もそうで、当時Jovianは高校生だったが、新聞の見出しはどれも「香港返還」だった。主語が欧米側=視点が欧米側なのだ。本作を鑑賞して米軍や米兵の横暴に対して憤りを覚えるのは正しい。しかし、それは実は我々の多くが無意識に沖縄に向けている意識と同じところから生じている事態だということには自覚的であるべきだろう。

 

クライマックスのコザ騒動と、その最中の嘉手納基地侵入は非常にサスペンスフルだった。こうした暴動を単なる歴史の一ページと思ってはならない。ある程度の年齢の人であれば2011年夏の英国の暴動を覚えているだろうし、2020年のジョージ・フロイド死亡事件に端を発した全米のデモと暴動は、その後のBlack Lives Matter運動につながったのは記憶にたらしいところだ。暴動を肯定するわけではないが、昔の沖縄は大変だったのだなという誤った感想は決して抱いてはならない。

 

ネガティブ・サイド

まず何よりもエンタメ性が足りない。というか、上映時間の長さによってエンタメ性が希釈されてしまっている。たとえばグスクが大柄な変態米兵を逮捕しようとするシーンで、塚本信也演じる相棒とコメディっぽいやりとりをしたり、その米兵に反撃されたりするシーンがあるが、そういうものは不要。ここだけで30秒はカットできると感じた。色々と間延びしていたシーンを引き締めれば30分はカットできたはず。

 

通訳はそれなりに頑張っていたが、決定的におかしなところも多かった。特に最初にアーヴィンがグスクに接触してきたシーンで、He’ll be properly interrgogated. I’ll see to it.のように発言していたのを「適切に立件されるようにする」と訳していたが、interrogateは取り調べするという意味で、立件するでは決してない。他にも Nothing more,

 nothing less. を「身分をわきまえろ」と訳したりするのも、二人の友情や信頼を破壊しかねない意訳。また、アーヴィンがまだ話していない部分も先に日本語に訳している箇所もあった。

 

宝が何であるのかが明らかになる過程はスリリングだったが、その宝が( ゚Д゚)ハァ?という形で消えていくのは原作通りなのだろうか。また、序盤にこれ見よがしに出てきた洞窟が伏線になるかと思いきや、あんな台風の多い地域であんな残り方はないわ・・・ 終わり方でとんでもなく損をしている作品だと感じた。

 

総評

映画として面白いかと言われればやや微妙。しかし本作には『 福田村事件 』と同じく、日本の映画界も韓国のような本格的な社会派映画を(再び)作れるようになってきた契機の一本として数えられるポテンシャルがある。沖縄の歴史ではなく、現在進行形の日本史および世界史だと思って鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

This is no fucking joke!

作中の某シーンでのグスクのセリフ。字幕では「嘘じゃないぞ」みたいな感じだったが、実際は「冗談で言ってるんちゃうぞゴラァ!」みたいな感じ。ただ実際にこれを言えるシチュエーションとこれを言えるような関係性の相手を両方持つことは難しい。ということで日常もしくは仕事ではだいたい同じ意味の “I am dead serious.” =「俺は大真面目だ」を使ってみよう。 

 

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『 RED ROOMS レッドルームズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, 妻夫木聡, 広瀬すず, 歴史, 永山瑛太, 監督:大友啓史, 窪田正孝, 配給会社:ソニー・ピクチャーズ, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 宝島 』 -エンタメ性がやや不足-

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