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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2024年11月

『 記憶汚染 』 -記憶=歴史の一貫性を揺るがす野心作-

Posted on 2024年11月26日 by cool-jupiter

記憶汚染 70点
2006年11月ごろに読了
著者:林譲治
発行元:早川書房

18年前に読んだ小説だが、最近あった強烈な出来事に関連して紹介したい。

あらすじ

土建会社社長の北畑は、奈良の弥生遺跡から謎の文字板を発見するが、なぜかそれは200年前のものと推定された。いっぽう痴呆症研究に従事する認知心理学者・秋山霧子は、人工知能の奇妙な挙動に困惑していた。2つの事象が交わったとき、人類の営為そのものを覆す驚愕の真実が明らかになる・・・(早川書房ホームページより)

ポジティブ・サイド

最近あった強烈な出来事とは兵庫県知事選のことである。本来ここは映画や書籍の感想を語る場だが、たまには政治的な思想を開陳するのもありだろう。

まず前かつ現知事の斎藤元彦の再選には愕然とした。別に自分が尼崎市民で稲村さんを応援していたからではない。現にJovianは大澤芳清に一票を投じた。別に彼を支持しているわけではなく、共産党系の候補の票が伸びる=他の候補者が緊張感を持つ、と考えているだけだ。

まあ、そんなことはどうでもいい。『 記憶汚染 』は2003年刊行のSF作品で、物語の舞台は2040年に設定されている。そこではワーコンと呼ばれるウェアラブル・コンピュータが一般に普及している。本作にはウェアラブル・コンピュータ以外にも人工知能やインターネットを更に超えたようなネットワーク社会が描かれている。要するに、本当に2040年にありえそうな社会なのだ。

しかし本書の一番のポイントは、タイトルにもある通り「記憶」である。人間だれしも強烈に脳裏に焼き付いている記憶があるだろう。入学式に見た桜かもしれないし、初恋の人の笑顔かもしれない。しかし、二日前の夕食が何だったのか即座に思い出せるだろうか。思い出せたとして、本当にその記憶は正しいのか。人間の記憶はいい加減なもので、都合よく美化されたり、あるいは消去されたりする(後者は「記憶にございません」を連発する政治家たちを見る限り、かなり怪しいのだが)。

そこで人類は近代になって「記憶」をアウトソースするようになった。外注先は言わずもがなのコンピュータ。コンピュータはどんなに進化しても、基本的には「計算(演算)」と「記憶」だけしかできない。その記憶のかなりの部分を、個人でも集団でも我々は意識的かつ無意識にパーソナルなコンピュータおよびYouTubeやFacebook、Instagramといったプラットフォームにどんどんと任せるようになっているのが現代という時代である。

そこで話は兵庫県知事選となる。生粋の斎藤支持者が10万人いたとして、さらに100万が彼に票を投じた背景は色々と現在進行形で語られている。大きな枠組みとしては、オールドメディア(新聞やテレビ) vs ソーシャル・メディア(旧ツイッターetc)というものがよく挙げられている。オールドメディアが報じていない情報がSNSでは手に入る。そちらが実は真実なのでは?と思い込んだ人々がエコーチャンバーに入ってしまい、斎藤支持に転向してしまったという論理である。

それも一理あると思うが、もっと注意しなければならないのは、我々の多くが自分自身の記憶および演算(=思考と言ってもいいだろう)に信を置けなくなっていることだろう。うちの職場は関関同立出身者だらけで、それなりに高学歴という連中ばかりのはずだが、それでもいとも簡単に斎藤が内部告発者を自分の指示で探し出し、片腕たる副知事にガン詰めさせたことを忘れてしまうのだ。この一事だけで権力者不適格なのだと判断できないことが嘆かわしいし愚かしい。ただ偏差値60の大学を出ていてもYouTubeの動画やXのポスト・リポストの嵐の中で記憶がゆがみ、正常な判断ができなくなるのだから、兵庫の有権者100万人が斎藤支持に転向してしまってもおかしくはない。

まあ、何が言いたいかと言うと、本作に登場する様々なガジェットや社会の在りよう、そして我々の記憶、さらに歴史というものの存立そのものをも揺るがすようなプロットは、ゼロ年代ではSF的だったが、2020年代の今なら『 本心 』と同じくらいの距離感に感じられるはず。今こそあらためて読んでほしい小説である。

ネガティブ・サイド

SFあるあるなのだが、本作のキャラクターおよびキャラ同士の人間関係、人間模様はたいして面白くない。また語り口もかなり重たく、読後にやや閉口した記憶がある。

また物語のペーシングにも難あり。たしかラストの数十ページでかなり強引に話をまとめてしまったと記憶している。再読したいのだが、本の山の中から見つけられず・・・ Jovianのこの記憶も案外不正確だったりして・・・ そうならないようにブログを始めたのだが、これも知らぬ間にハッキングされて、シレっと書き換えられた過去記事を読んだりして「ああ、そうだったなあ」と都合よく解釈したりしてもおかしくはない。

総評

実はずっと本作は飯田譲治の作品だと思い込んでいた。そのためFacebookでも「飯田譲二の『 記憶汚染 』」のように漢字まで間違えた書き方をしてしまっていた。ことほど然様に人間の記憶は当てにならない。Jovianもエラソーに色々と言っているが、日記でもブログでもFacebookでもX(旧ツイッター)でもなんでもいいので、自分という記憶と演算の一貫性を保証するものを持つ、そのうえでそうした媒体が持つ危うさに自覚的になることが現代では求められている。本書は20年近く前にそのことについて警鐘を鳴らしていたわけで、現代でも読む価値が損なわれていないSF作品と言える。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

social media

日本語ではよくSNS=social networking serviceと言うが、これは英語ネイティブにはほぼ通じない。英語では social media という言い方が支配的で、SMなどと略すこともない(文脈次第だがsadomasochisticだと解釈される恐れあり)。中上級者でもたまに I don’t use any SNS. と言う人がいるが、通じないので I don’t use any social media. と言うようにしよう。

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 正体 』

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Posted in 国内, 書籍Tagged 2000年代, SF, 日本, 発行元:早川書房, 著者:林譲治Leave a Comment on 『 記憶汚染 』 -記憶=歴史の一貫性を揺るがす野心作-

『 六人の嘘つきな大学生 』 -ミステリ部分があまりにも弱い-

Posted on 2024年11月25日2024年12月30日 by cool-jupiter

六人の嘘つきな大学生 30点
2024年11月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浜辺美波
監督:佐藤祐市

 

浜辺美波が主演ということでチケット購入。

あらすじ

人気企業スピラリンクスの新卒採用で最終選考に残った嶌衣織(浜辺美波)ら6人の大学生は最終課題であるグループディスカッションに向けて団結して協力していた。しかし課題は急遽変更となり、採用枠は1名に限定された。さらに、最終課題の当日、部屋では謎の封筒が見つかり・・・

ポジティブ・サイド

密室で次々に明かされる就活生のダークサイド。そして、崩れていく友情。その展開はサスペンスフルだった。

 

就活が一種の戦争であることはバブル崩壊以降、もはや常識。本作は『 何者 』同様に人間の裏側を描きながら、佐藤祐市監督の過去作『 キサラギ 』的な密室でのディスカッションの面白さもあった。

ネガティブ・サイド

まずスピラリンクスという会社が意味不明。新人でも年俸一千万円が可能って、どんな企業やねん。コンテンツクリエーション系の企業なら10,000千円/年は十分可能だが、一年目からは不可能やで。

 

10,000人から6人採用とすると、倍率1667倍となる。んなアホな。1,000人から6人なら166倍で、これなら超人気企業としてリアルな数字となる。

 

関東の錚々たる大学が実名で出てくるが、学生の描き方がステレオタイプすぎると感じた。これが『 あのこは貴族 』や『 愚行録 』のように、特定の大学だけにフォーカスするならまだしも、これだけたくさんの大学を色眼鏡を通じて描き出していいのか。特に早稲田と慶應はあまりに典型的過ぎて笑ってしまった(良い意味ではない)。

 

スピラリンクスも、採用の最終段階がトンデモな方向に行っているのに何の介入も行わないとはどういう料簡なのだ?警察や金融機関への就職ちゃうねんぞ・・・

 

一番の不満点としてミステリ部分の弱さが挙げられる。原作小説は未読だが、映画と同じトリック(?)なのか。JR中央線の武蔵境または東小金井を大学生時代に最寄り駅としていたJovianは劇中のとある矛盾に一発で気付いた。立教や明治の学生が気付かないわけがないだろう。

 

また複数の大学で実際に教えていた者として言わせてもらえば、学校から学校への移動というのは、校門から校門への移動を指すのではない。教室から教室への移動を指すのだ。劇中での学生たちが言う移動時間は、実質的には20分ぐらい足りない。

 

それにしてもこの犯人、行動力がありすぎて笑ってしまう。そこまで調べるとなると、全員とは言わないまでも一人、二人ぐらいの耳にはその活動が届くに違いない。特にとある重要書類には苦笑いするしかなかった。これを見せてもらえるぐらいに信頼を得るには、あまりにも時間が足りないはず。催眠術でも使ったのか。

 

終盤、パスワードロックされた媒体が出てくるが、これに対するヒントがアンフェアではなかったか。「犯人が好きなもの」ではなく「犯人が愛したもの」はmisleadingすぎる。そこで自分の好物を入力する衣織にも喝!それがお前の愛なんか・・・

総評

コロナ後(と言っていいかどうかは分からんが)の就活模様ということで、洋画『 エグザム 』が元ネタなのかも?原作小説の評価は高いので、映画化に際して色々と削ってしまったのだろう。浜辺美波ファン以外にお勧めするのは難しい。大学生がこれを観てリアルな就職活動だと思わないことを切に願う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

job-hunt

就職活動する、の意。I will start job-hunting as soon as I come back from France to Japan. =「フランスから日本に帰国次第、就活を始めるつもりだ」のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 正体 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 浜辺美波, 監督:佐藤祐市, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 六人の嘘つきな大学生 』 -ミステリ部分があまりにも弱い-

『 オアシス 』 -乾いた心を潤すものは-

Posted on 2024年11月21日 by cool-jupiter

オアシス 70点
2024年11月17日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:清水尋也 高杉真宙 伊藤万理華
監督:岩谷拓郎

 

兵庫県知事選の結果がショッキングだったので、簡易レビュー。

あらすじ

ヤクザのヒロト(清水尋也)がクスリの売人を締めたことで、半グレ集団と一触即発になってしまう。そこにはヒロトの幼馴染みの金森(高杉真宙)も属していた。しかし、二人の共通の幼馴染みの紅花(伊藤万理華)が戻ってきたことが事件につながってしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

『 さがす 』で鮮烈な印象を残した清水尋也がヤクザ者を好演。歩き方、目つき、タバコの吸い方など時代錯誤と思えるほどにステレオタイプなヤクザで、令和の今となっては逆に新鮮だった。また痩せ型の長身なのもプラス。無言の威圧感がある。『 クローズ 』でまったく怖くない不良を演じていた東出昌大とは対照的。高杉真宙も『 ギャングース 』同様の軽いチンピラ役が板についていた。

 

かなり血なまぐさいシーンが多いのも個人的にはプラス。『 終末の探偵 』ではギャグにしか見えなかったヤクザ者同士の果たし合いも、本作はドラマチックに見せることに成功していた。

 

ネガティブ・サイド

組長の息子が警察にとっ捕まっていないのが不思議でしょうがない。白昼堂々とあんな犯行を過去に行っていたら、いくらなんでも逃げ切れるものではないと思うが。それとも日本も『 チェイサー 』で描かれたように、場末の風俗嬢が消えてもほとんど誰も気づかない社会になりつつあるという意味なのだろうか。

 

総評

欲しいものなどない。今を生きていられればいい、という若者たちの刹那的なドラマが悲しくもあり、羨ましくもある。はっきり言って未来も何もない終わり方なのだが、中年Jovianは何故か清々しさを感じた。生きた証を残す、生きた実感を得るために必要なのは、生きた年数ではなく生きた密度なのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

stab

刺すの意。刃物で刺す時はだいたい stab を使えば間違いない。stab someone in the back と言えば、「人の背中を刺す」と「背後から刺す=裏切る」の意味がある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 ドリーム・シナリオ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 伊藤万理華, 日本, 清水尋也, 監督:岩谷拓郎, 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS, 青春, 高杉真宙Leave a Comment on 『 オアシス 』 -乾いた心を潤すものは-

『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

Posted on 2024年11月18日 by cool-jupiter

シングル・イン・ソウル 65点
2024年11月15日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:イム・スジョン イ・ドンウク
監督:パク・ボムス

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

小さな出版社勤務のヒョンジン(イム・スジョン)は、大都市でのシングル・ライフに関するエッセイ本を手がけることになる。そこで予備校で小論文指導をして、SNSでもシングル・ライフについて発信するヨンホ(イ・ドンウク)に執筆を依頼するが・・・

ポジティブ・サイド

主人公ヒョンジンは年齢不詳ながら、おそらくアラサー(大学の先輩であるヨンホが飲酒可能な学生時代から数えて11年だったので)。それにしてはメルヘンチックな幻想を抱き続ける姿が面白い。一方でエッセイを執筆することになるヨンホも、独身貴族生活を満喫しつつも、過去の恋愛を引きずっている姿が物悲しくも面白おかしい。二人が距離を縮めていきながらも男女の仲を予感させないストーリーは、一昔前だと考えられない構成。しかし本作はそこにリアリティがある。出版社の同僚たちもキャラが立っていて、それぞれに見せ場がある。

 

本作の見どころの一つは非常にぎこちないキスシーン。『 ロッキー 』で、ロッキーとエイドリアンが玄関でキスするシーンとは一味違った、非常に不器用なキスが描き出される。これはこれでリアルだと感じた。

 

初恋を美化する男の悪癖が今作でも強調されていたのもリアルだった。記憶の美化は、たいてい『 青春18×2 君へと続く道 』のように、印象的な瞬間を忠実に脳裏に焼き付けておくことで起こる。本作は一味違うパターンだが、こうした記憶の仕方を知らず知らず実行してしまっている男性はかなり多いと思われる。

 

ネガティブ・サイド

100分ちょっとという上映時間にして、間延びしているように感じられた。フォーカスがヒョンジンのロマンスなのか、キャリアなのか、家族の関係なのか、色んなところに飛ぶので、それだけ展開のテンポが悪くなってしまっていた。

 

ヨンホ仕事=小論文指導をしているシーンが少なかった。講義の中で彼が「書く」という営為をどのように捉えているのかをもっと語ってくれていれば、エッセイの中身や彼自身のバックグラウンドにさらに深みが生まれたものと思う。

 

総評

韓国には負けるものの、日本もかなりの未婚社会になってきた。お一人様を満喫するのか、それとも伝統的な価値観に抗うことに疲れながら生きるのか。そのあたりのヒントが得られないこともない。さわやかなストーリーではあるが、デートムービーには適しない点には注意が必要。案外、DINKSで鑑賞するのが最も良いのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。ソンベニム=先輩様という形で使われることもあるが、本作ではソンベだった。先輩後輩を強く意識するのはアジアでは日本と韓国ぐらいだろうか。韓国からの留学生も増えているので。案外今どきの大学生は知っている語彙かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オアシス 』
『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ドンウク, イム・スジョン, ラブロマンス, 監督:パク・ボムス, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

『 本心 』 -サブプロットを減らすべし-

Posted on 2024年11月16日 by cool-jupiter

本心 50点
2024年11月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:池松壮亮 田中裕子 三吉彩花 妻夫木聡
監督:石井裕也

 

AIとVRの組み合わせという、まさに今の仕事に近い領域のストーリーだと思い、チケット購入。

あらすじ

石川朔也(池松壮亮)は入水自殺しようとする母・秋子(田中裕子)を追って川に入ったことから昏睡状態に。一年後に目を覚ますも、母は自由死を選択していたことを知る。世界は様変わりしており、朔也はリアル・アバターとして働き始める。ある時、母のVirtual Figureを作れると知った朔也だが・・・



ポジティブ・サイド

人工知能やVR技術が徐々に一般に浸透してきている。企業がRAGを使って、顧客対応botを作ったり、あるいは自社マニュアル参照インターフェースをAIボットにすることも珍しくなくなった。すでに中国やアメリカでは、本作で描かれているようなサービスもあるという記事も目にした。原作小説は2021年に初版、ということは平野啓一郎は2018~2019年代にはかなり具体的な本作の構想を練っていたものと思われる。2018年はGPT元年と歴史家に認定されるだろうと予測されているが、平野の作家として炯眼を持っていると言わざるを得ない。

 

特にVF制作会社CEOの妻夫木の演技が際立って上手い。目線、ちょっとした表情、佇まいに底知れなさを感じさせ、まったく「本心」が見えない。『 ある男 』では抑制されていた内面が、本作では非常にうまく押し殺されているがゆえに、かえってそれに気づく。しかし、その中身までは見透かせないという絶妙なバランスの演技だったように感じた。

 

『 PLAN75 』と似たような世界観が構築されている点でも原作者の眼力が目立つ。先の衆議院選挙で国民民主党が大躍進したが、その当主の玉木雄一郎は増大する一方の医療費削減のために尊厳死を提唱していた。スキャンダルでどうなるのか分からないが、一定数の国民が自由死を望む未来はあってもおかしくない。

 

リアル・アバターという職業も、技術の過渡期には存在してもおかしくない。実際にUber Eats的なサービス供給網と、YouTubeやFacebookなどのリアル配信技術とVRさえあれば可能そう(セキュリティはひとまず考えないものとする)だし、Jovianもコロナ中に妻とZoomでタージ・マハルのツアーに参加したことがある。同時通訳の技術も上がってきた今、国内よりも海外に需要がありそうなサービスで、十分にリアリティを感じた。

ネガティブ・サイド

ストーリー周辺はリアルだったが、肝心のストーリーがリアルではなかった。というよりもリアルである必要はなかったのに、リアルにしようと詰め込んで失敗したという感じか。サブ・プロットが多すぎると感じた。

 

幼馴染みかつ工場でもリアルアバターでも同じ同僚の男はいらない。社会の格差が広がっていくにつれ、人間と人間の関係もギスギスしたものになることを訴えたいのだろうが、本物の人間以上に人間らしいVFを作る、そしてそのVFと交流することが話の本筋であるべきで、社会の変化、人間の変化はもっとさりげなく描写するだけでよかった。

 

イッフィーさんというキャラクターも不要というか蛇足だった。おそらくアバターを使って告白するという行為の不自然さを訴えたいのだろうが、それがいかに野暮であるかを朔也に直に語らせてどうするのか。そういうことは、それこそ観ている者の想像に訴えるべきだ。『 ゴジラ-1.0 』でも佐々木蔵之介が「これからの日本はお前らに任せたぜ」と言葉にしてしまっていたが、そういうことは表情で訴えるだけでいい。なんでもかんでも言葉で説明するのは文芸の手法。いくら原作が小説だからといって、映画にまで文芸の技法を持ち込む必要はない。

 

序盤の綾野剛役のVFや、それと交流する生身の人間をもう少し映し出してほしかった。特にVFが持つ死の意識は非常に示唆的で「受動意識仮説」を思わせるものだった。母が死を選んだ理由が知りたいのなら、VFが持つ死の観念を開陳してほしいと願うのは求めすぎではないだろう。

 

個人的に最も見たかったのは、VF同士が相手をVFだと認識しないままにコミュニケーションするシーンと、それを生身の人間が目撃した際に感じるだろうグロテスクさ、あるいはそれがVFだと気付けないことに対するグロテスクさを体験してみたかったが・・・

 

総評

結論、親の心子知らず。触れ合えない対象に答えを求めるのではなく、触れ合える相手を求めようという、ありきたりな教訓ドラマだった。ヒューマンドラマは畢竟、人間とは何か、人間とはどうあるべきかを追究する試みで、テーマ自体はどれも陳腐。すべては見せ方なのだ。本作はその意味で見せ方がとにかく稚拙だ。石井監督の「語りたい」欲求が強く出過ぎた作品と言える。まあ、それも結局は波長が合うかどうかだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

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今でこそアバターは普通の言葉になったが、映画『 アバター 』の頃は意味を知っている人はほとんどいなかったと記憶している。本来は「化身」という意味でヒンドゥー教や仏教の概念。劇中でVirtual Figure(架空人形)とされたものがAction Figure(可動人形)との対比になっていると思えば、リアル・アバターという用語にもリアリティが感じられる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 オアシス 』
『 シングル・イン・ソウル 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 三吉彩花, 妻夫木聡, 日本, 池松壮亮, 田中裕子, 監督:石井裕也, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 本心 』 -サブプロットを減らすべし-

『 つぎとまります 』 -新人バス運転手の成長物語-

Posted on 2024年11月10日 by cool-jupiter

つぎとまります 50点
2024年11月9日 シアターセブンにて鑑賞
出演:秋田汐梨
監督:片岡れいこ

 

『 惡の華 』、『 リゾートバイト 』で準主役だった秋田汐梨が、京都を舞台にした映画の主役を張るということでチケット購入。

あらすじ

保津川美南(秋田汐梨)は、日本一のバス運転士になるという夢を実現させるため、かつての地元、京都・亀岡のバス会社に就職する。教習と失敗を通じて徐々に成長していく美南は、ある時、自分が運転士を目指すきっかけになった運転士と再会するが・・・

 

ポジティブ・サイド

パイロットが呼気検査に引っかかってフライトが延期というニュースは数年に一回あるように思う。一方でバス運転手の呼気検査というのは新鮮だった。えらい大事になるようで、公共交通機関で働くということのプロフェッショナリズムが垣間見られた。

 

路線沿線の過疎化、それに伴う赤字化などの問題も、軽くではあるが触れられていたところも良かった。亀岡という京都市のすぐ隣でもそうした事態が進行中であるということは、地方の中核都市のすぐ近隣も同様ということ。バス運転士の給料カット、バス路線廃止、さらに万博用のバス運行のためだけに交野市のバス路線を廃止した維新の会を勝たせた大阪府民は、本作を観て何かを感じ取ってほしい。

 

それは半分冗談として、ビルドゥングスロマンとしては標準的な出来に仕上がっている。教習担当、同僚、上司、友人、常連客と登場人物も多士済々。大型車両をセンチメートル単位で操るシーンもあり、匠の技を見せてくれる。大昔、東京の三鷹市や小金井市に住んでいた頃は小田急バスに時々乗っていたが、今にして思えば、よくあんな図体の車両をあんな細い道路だらけの住宅地で右折左折を軽々行っていたバスドライバーたちはプロだったのだなあと思い起こされた。『 パターソン 』をもう一度観てみようかな。

 

『 しあわせのマスカット 』でも重要なモチーフになった西日本豪雨は本作でも取り上げられた。鉄道網が充実しているところに住んでいると気が付かないが、ちょっと田舎に行けば電車は基本的に一路線だけ。そこが寸断されてしまえば高校生やサラリーマンはお手上げ。バスの運転士もエッセンシャル・ワーカーなのだと気付きを与えてくれるストーリーには、日本中のバス運転士が喝采を送るのではないか。

 

オカルト的な展開も、割とまっとうに着地する。変に恋愛要素を入れずにビルドゥングスロマンに徹したのも好判断。

 

ネガティブ・サイド

バス運転手のプロフェッショナリズムは感じられたが、具体的な技術論がほとんどなかった。唯一あったのが、ある信号から次の信号までゆっくり走ればちょうど青のタイミングになるというものぐらい。これとて、道路事情や信号の時間調整次第ですぐに覆ってしまう。たとえばミラーの角度の調整だとか、西日があたる時間帯の姿勢の取り方だとか、そういったものが欲しかった。「周りをよく見てしっかり判断」とか、実際には何も言っていないに等しい。

 

新人というか、若い世代、あるいは女性という面で美南が役に立つという場面も必要だった。たとえば現金ではなくキャッシュレスで運賃を支払おうとして手間取る高齢者にてきぱきと対応するとか、あるいはバス利用する高校生たちのちょっとした変化に気づいてあげられるとか、そうした適性や成長過程を見せていれば、上司に直訴するシーンにもう少し説得力や迫真性が生まれていたかもしれない。

 

越境バスを描くのもいいが、もっと域内交通の足としての側面を強調してほしかった。バスは基本的には近距離移動の足なのだから。たとえば京都パープルサンガの試合前、試合後の観客の移動は大部分はJRおよびマイカーが担うだろうが、地域の小中学校生やサッカー少年少女を招待する場合にはバスが使われることが多いだろう。そうした地域密着型バスとしての側面をもっと強調すれば、亀岡のご当地ムービーとしての完成度を高められたと思う。

 

総評

明智光秀ファンのJovianにとって亀岡と福知山は、ある意味で非常になじみのある場所。そこを舞台に、バス運転手という誰もがなじみのある職業でありながら、その実態があまり知られていない存在に光を当てようという企画は買い。惜しむらくはストーリーにリアリティがない、演技が大袈裟、地元アピール不足だったことか。京都、大阪の人間なら応援の意味も込めて鑑賞するのもありだろう。本当は40点だが、秋田汐梨が可愛かった&亀岡が舞台ということで10点おまけしておく。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Does this bus go to … ?

劇中で一瞬英語も使われていた。「このバスは・・・に行きますか?」の意味だが、こういう場合は未来形ではなく現在形を使う。英語の現在形は、現在の状態だけではなく、性質や習慣性を表す時にも使われる。Will this bus go to … ? だと「このバスは・・・に行く予定(予定は未定であって決定ではない)ですか?」のようなニュアンスとなり不自然。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 オアシス 』
『 本心 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:片岡れいこ, 秋田汐梨, 配給会社:パンドラLeave a Comment on 『 つぎとまります 』 -新人バス運転手の成長物語-

『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

Posted on 2024年11月9日 by cool-jupiter

破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン

 

チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。

あらすじ

巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。

 

「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。

 

改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。

 

日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。

 

ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。

 

日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。

 

まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。

 

総評

土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

トッケビ

超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イ・ドヒョン, キム・ゴウン, チェ・ミンシク, ホラー, ユ・ヘジン, 監督:チャン・ジェヒョン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

『 スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 』 -テロパート以外は見え見え-

Posted on 2024年11月6日 by cool-jupiter

スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 40点
2024年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:成田亮 千葉雄大 クォン・ウンビ 大谷亮平
監督:中田秀夫

 

『 スマホを落としただけなのに 』、『 スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 』の続編。

あらすじ

殺人鬼にして天才ブラックハッカーの浦野(成田亮)は、韓国の地下組織ムグンファからの依頼で日韓首脳会談の妨害工作に動いていた。一方、内閣官房サイバーセキュリティ室に出向中の刑事・加賀谷(千葉雄大)に内通者バタフライの存在も伝えて・・・

 

ポジティブ・サイド

日韓首脳会談を狙ってテロを起こすというのは、ありえなくもない話。そこで使われる手法(それが現実的かどうかはさておき)も、なかなか意表を突くものになっていた。浦野のそうした天才っぷりと同時に、今でも麻美に執着する変人っぷりも描き方のバランスも悪くなかった。

 

主人公が加賀谷ではなく浦野になっていたのも、これはこれでありだろう。『 ボーダーライン 』では主役はエミリー・ブラントだったが、『 ボーダーライン ソルジャーズ・デイ 』では主役はベニシオ・デル・トロに変わっていた。

 

日本人が韓国語を、韓国人が日本語をしゃべりまくる映画。個人的には大谷亮平と佐野史郎は頑張っていた。成田亮の韓国語は普通。つまり上手い。韓国人のクォン・ウンビの日本語は『 新聞記者 』、『 ブルーアワーにぶっ飛ばす 』のシム・ウンギョンより少し下手、という程度。つまり、まあまあ上手かった。

ネガティブ・サイド

バタフライの正体やら加賀谷の妻の思わせぶりな言動など、作り手が観る側をミスリードしたいのは分かるが、何もかもがバレバレで笑ってしまう。冒頭のシーンでも、普通に無名の俳優を使えなかったのか。

 

内閣官房サイバーセキュリティ室もお粗末。Jアラートが発令されながら、室長が「うち?外務省?」と出所を確認するのは二重の意味で滑稽。ひとつはアラートの内容>アラートの発令者という関係を取り違えているところ。もう一つは外務省がJアラートなど出すわけがないということ。

 

公安やら警察の面々が日韓首脳の警護を仰せつかりながら、その真っただ中、しかもフェイクテロに引っかかった直後に別の任務を帯びて韓国に飛ぶなどということがあるものか。元大阪府警のJovian義父が観れば憤慨するか、あるいは頭を抱えることだろう。

 

スミンというキャラとの関係を通じて浦野の人間性を追究しようとする試みは悪くないが、そこにソーシャルエンジニアリングの天才という一面が見られなかった。なぜそこまで早い段階でスミンは組織ではなく浦野に従ってしまったのか。逆にスミンが組織を裏切るような伏線が、実際に裏切った後に出てくるのもおかしい。

 

佐野史郎が出てきたあたりで、エンディングはだいたい予想できた。それは別にいい。問題は、肝心のブツのクオリティがさっぱりだったこと。道具係に時間と予算がなかったのか。それとも単に腕が今一つだったのか。

総評

もはや「スマホを落とす」とは関係のないストーリーだが、浦野と加賀谷の物語に一応の決着はつくので、それを見届けるのはありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国レッスン

フェジャン

会長の意。ちなみに社長はサジャン。漢字と音がなんとなく結びつくのが感じられるはず。韓国語の面白いところは、フェジャンニム、サジャンニムのように役職の後にニム=様をつけるところ。Jovianも大学によっては Sir と呼ばれたり、ソンセンニム=先生様と呼ばれたりしていた。

 

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『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

Posted on 2024年11月4日 by cool-jupiter

トラップ 50点
2024年11月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョシュ・ハートネット
監督:M・ナイト・シャマラン

 

Jovianのカナダ人の友人は ”I gave up on him.” と語ったが、Jovian自身はまだ少しシャマランに期待しているためチケット購入。

あらすじ

クーパー(ジョシュ・ハートネット)は愛娘ライリーが学校で好成績を収めたご褒美に、人気の歌姫レディ・レイブンの追加コンサートに連れて行く。しかし、会場は異様なまでの厳重警備。実はコンサートそのものが連続殺人鬼ブッチャーを捉えるための仕掛けだったのだ・・・

以下、逆説的なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

あまりに色々と感想を書くと、それだけでネタバレに近づく。なのでJovianが鑑賞前に予想していたプロットをいくつか下に紹介してみたい。

 

1.実はサイコパスは父親ではなく娘の方。父親は何も知らない娘を必死で逃がそうとしているだけ。

2.実はトレイラーにある口の軽い従業員の話はジョーク。レディ・レイブンが用心深い人物なので本当に会場が厳重に警備されているだけで、クーパーは独り相撲を取っている。

3.実は『 デビル 』と同じ世界で、シリアル・キラーが悪魔に追い詰められていく。 

 

仮説1はたいていの人が思いつきそう。2はフレドリック・ブラウンのとある小説とそっくり。興味のある人は短編以外の中から探してみよう。3は『 アイム・ノット・シリアルキラー 』に着想を得た。

 

本作は視点操作がユニークで、スマホやカメラ、果ては銃のスコープなど、何かを通じて何かを見るという行為の危うさが示唆されている。また『 ザ・サークル 』のようなSNSの力がこれでもかと示されるのも現代的。

 

サスペンスとして観れば間違いなくアベレージ以上の作品。

 

ネガティブ・サイド

警察がかなり無能。というか、現場に入る心理学の博士が無能というべきか。もちろん、そうしないことには脱出は無理ゲーになるのだが、クーパーが機転を利かすというよりは博士の手腕に疑問符が付くという展開が多かったと感じた。

 

娘の同級生とその母親とのいざこざのくだりはバッサリとカットしてよかったのでは?

 

コンサート会場以外にも、車や家などからも脱出しまくる。ここまで来るとギャグの領域。

 

総評

映画や小説を楽しむ方法は、1)事前にストーリーを予測する、と2)事前情報一切なしで臨む、の二つに大別される。本作はどちらのアプローチも可能だが、できれば2)の方が望ましいのかな。理想は本作がシャマラン映画の初体験であること。まあ、そんな観客は圧倒的少数派だろうけれど。楽しむためにはシャマランらしさ=大どんでん返しを期待しないことが肝要である。できるだけ頭を空っぽにして、深く考えずライトに楽しもう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crispy

元々は食べ物がサクサク、パリパリのような意味で、Longman Dictionary では food that is crispy is pleasantly hard on the outside = クリスピーな食べ物は外側が心地よい硬さであると定義されている。一方、urban dictionary では if something or an act that someone does is good or looks cool (by BigSexyBuffalo April 3, 2017)となっている。Jovianは大学でも教えていたので、現代日本の若者言葉にはそれなりについていけていたが、英語の現代スラングとなると少々弱い。

 

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