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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2022年7月

『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』 -広げすぎた風呂敷を畳めず-

Posted on 2022年7月31日2022年7月31日 by cool-jupiter

ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 20点
2022年7月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード サム・ニール ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム イザベラ・サーモン
監督:コリン・トレボロウ

 

『 ジュラシック・ワールド 炎の王国 』で、広げまくった風呂敷をどう畳むのか。関心はそこだったが、製作陣は見事に回避。さらに『 ジュラシック・パーク 』から連綿と続いてきたメッセージもあっさりと放棄。これは一種の詐欺商法ではないのか。

あらすじ

恐竜たちが解き放たれた世界。オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、クローン少女であるメイジー(イザベラ・サーモン)を守りながら暮らしていた。しかし、そのメイジーがオーウェンの盟友ラプトルのブルーの子と共に謎の男たちに誘拐される。オーウェンとクレアは救出に動き出す。一方、アメリカの穀倉地帯に出現した謎の巨大イナゴを追うサトラー博士(ローラ・ダーン)は、旧知のグラント博士(サム・ニール)と共にバイオシン社を訪れて・・・

 

ポジティブ・サイド

しっかり騙されてしまったというか、乗せられているなと感じるが、やはり『 ジュラシック・パーク 』の面々が集まると、高校生の頃に劇場で鑑賞した時の気持ちが蘇ってくる。『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』でキャリー・フィッシャーやハリソン・フォード、マーク・ハミルと再会した時のような感傷や、『 トップガン マーヴェリック 』でマーヴェリックと再会した時の感覚に近い。まあ、自分がそれだけオッサンになったということか。

 

パラサウロロフスのような、何とか象レベルで捉えられそうな恐竜から、ギガノトサウルスのような象をおやつに食べそうな化け物に、某大学の教科書に出てきたばかりのケツァルコアトルスなど、新しいモンスターたちはどれもこれも eye-candy だった。羽毛をまとった恐竜の姿も、NHKではなくハリウッド水準のCGで観られたのにも満足。

 

初代の裏切りデブを彷彿させるモブキャラに、発煙筒のシーンの完全オマージュなど、良い意味で壮大なシリーズのフィナーレを飾るにふさわしい ”演出” の数々が堪能できた。

以下、ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

新旧キャラが勢揃いするのは確かに壮観だが、逆に絶対に死なないキャラが増えるということをも意味する。それはストーリーから緊張感を奪い去る。毀誉褒貶の激しい『 スター・ウォーズ 』の新三部作(Jovianは賛の立場)では、旧作のキャラの死亡(役者本人の死亡もあったが)や離脱が相次いだ。これは観る側にかなりの衝撃を与えた。だが本作にはそうした緊張感は一切なし。バイクやクルマのアクションがスリリングだとは感じたが、それはその他多くの映画で何百回と観たやつである。

 

思ったよりも翼竜や首長竜、魚竜が活躍しなかったのはCG予算の限界なのか、アイデア不足なのか。代わりにイナゴネタとは・・・。劇中のデブが言及していたように、聖書の『 出エジプト記 』のビジョンなのだろうが、ここに来て恐竜以外の生き物を持ってくるか?

 

我々が観たかったのは『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』的な世界の続きである。

 

“So, you’d want to make Godzilla our pet?“
「ゴジラを我々のペットにするということかな?」

“No. We will be his.”
「違う。我々が彼のペットになるのだ」

 

という世界観である。それこそが取りも直さず、第一作のアラン・グラント博士の

 

Look… Dinosaurs and man, two species separated by 65 million years of evolution have just been suddenly thrown back into the mix together. How can we possibly have the slightest idea what to expect?

 

という疑問への答えだったはずである。バイオシン=Biosyn=Bio Sin = 生物学の罪。それこそがシリーズが描いてきたものだ。科学には侵してはならない領域があるのだ。そこにコミットしてしまった過去の作品では、すべて人間が痛い目を見ている。本作はその集大成=人間が転落し、恐竜が生態系の頂点に君臨する世界を描くべきだったのに・・・どうしてこうなった。

 

シャーロットのクローンであるメイジーのドラマも拍子抜け。コロナ禍で公開が遅れる不運があったとはいえ、自分の細胞から卵子と精子を作って、それを掛け合わせてマウスが日本で作出されたというのは大きなニュースになった。現実がクローンを通り越して、小説『 リング 』の貞子的な領域に到達してしまった以上、シャーロットのアイデンティティを巡る物語も盛り上がりに欠けてしまう。

 

ヘンリー・ウー博士によるイナゴの遺伝子書き換えにも開いた口が塞がらない。イアン・マルコムを二十数年ぶりに引っ張り出してきたのは、”Life will find a way.” と再度言わせるためではなかったのか。人間が小賢しい真似をしても生命は必ずそれを回避してしまう、というのがジュラシック・シリーズが繰り返し発してきたメッセージではなかったのか。なんで今回は上手く行くことになっているのか?もうこれでロシアによるウクライナ戦争の影響以上のダメージが穀物およびその他の農作物に与えられるのは必定ではないか。何が描きたいんや・・・

 

最後の最後に恐竜、翼竜、首長竜に魚竜までが世界中の生き物と見事に平和裡に共存・・・って、そんなわけあるかーーーー!!!そうした世界を描くなら、恐竜が文明世界を大破壊して、人間も他の動植物も捕食しまくって、生態系の頂点に立った。そこで各種の生き物がしかるべきバランスの中に落ち着いて、恐竜たちも現代の生き物たちと調和(≠共生)して生きるようになった、という世界像をこそ提示すべきだろう。何から何までアメリカ的御都合主義と言うか、白人帝国主義的と言うか、これっぽっちの理解も共感もできない締め括られ方だった。『 ジュラシック・パーク 』だけで終わっておけば、伝説的な作品として22世紀まで残っただろうに。

総評

ハッキリ言って駄作。常にキャラがしゃべりまくり、常に効果音とBGMが鳴り続け、精巧ではあるが現実的な質感に欠けるCG恐竜が画面を覆いつくすばかりの作品。アメリカ人的には大受けするのだろうか。東洋的な世界観からずれまくった思想を一方的に開陳されても、どう受け止めて良いのか分からない。これがアメリカ的な多様性や共生の見本なのだろうか。劇場のお客さんの表情は満足と困惑の半々ぐらいに映った。個人的にはクソ映画・オブ・ザ・イヤー候補を観てしまった、という気持ちである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I want to forget about this CGI shitfest as quickly as possible.

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, アクション, アメリカ, イザベラ・サーモン, クリス・プラット, ブライス・ダラス・ハワード, 監督:コリン・トレボロウ, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』 -広げすぎた風呂敷を畳めず-

『 THE FLIGHT ザ・フライト 』 -続編は不要-

Posted on 2022年7月30日2022年7月30日 by cool-jupiter

THE FLIGHT ザ・フライト 65点
2022年7月27日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:モヒト・チャダ
監督:スラージ・ジョシ

学生も講師もコロナだらけ。穴埋めで死にそうなので簡易レビュー。

 

あらすじ

航空会社社長のランヴィール(モヒト・チャダ)は、自社航空機の墜落事故の責任を認め、投資家への説明のためドバイへと飛ぶ。離陸後、目覚めると機内には誰もおらず、コクピットも応答しない。ランヴィールは空の密室から脱出できるのか・・・

 

ポジティブ・サイド

あれよあれよの航空機事故発生から、緊急取締役会の開催。一見関係なさそうなチンピラと若者の揉め事から、その若者が航空会社の社長だと判明するまでが非常にスピーディー。そして颯爽と飛行機に乗り込み、美女CAから怪しげな飲み物を受け取って・・・からのシチュエーション・スリラー的展開へと突入。

 

飛行機そのものが一種の密室になる映画というと、リーアム・ニーソン主演の『 フライトゲーム 』やジョディ・フォスター主演の『 フライトプラン 』など定期的に生産されるが、このインド映画は飛行機内に自分一人だけというなかなか斬新なアイデアを盛り込んできた。普通に考えれば絶体絶命なのだが、そこを乗り越えていく面白さがある。

 

中盤はほぼ一人芝居だが、そこはヒース・レジャーのセリフを吐いて悦になる主人公。トム・クルーズやらアイアンマンやら映画『 ハート・ロッカー 』にまで言及する。単純に観ていて飽きない。

 

何とか助かろうと機内であがくランヴィール。そんなランヴィールを助けようと地上で奮闘する者たち。その一方で黒幕たちは・・・とサスペンスが嫌が応でも盛り上がる。ドンデン返しに次ぐドンデン返しで、観る側を飽きさせない。経済問題や社会批判をテーマに盛り込んではいるが、優先すべきは娯楽とばかりのサービス精神には脱帽である。

 

ネガティブ・サイド

序盤のランヴィールの格闘シーンは不要だったのでは。妻との他愛ない会話を見せつつも、直観力や推理力に優れた男だという描写の方が求められていたのでは?

 

CGがしょぼい。韓国映画の『 ノンストップ 』よりも遥かにしょぼい。ランヴィールを乗せた機は確かに離陸したのだと観る側に印象付けるためにも、もう少し真に迫ったCGを追求すべきだった。

 

続編作る気満々の終わり方だが、この1作で終わっておくべきだったと思う。あのキャラが『 ゴールド/金塊の行方 』のマシュー・マコノヒーばりの、どちらにも解釈できる笑顔を見せて終わらせる方が絶対にインパクトも大きいし、その後のボックスオフィスなどから続編製作の判断などもできただろうに。

 

総評

インドらしい歌や踊りは一切排除された作品で、ハリウッドに迎合したような作品に映る。だが、最後の最後にアメリカでは絶対に撮れないショットを持ってくるところにボリウッドの矜持を感じた。続編を作っても間違いなくポシャるだろうが、だからといって本作が面白さが否定されるわけではない。単独作品として十分に楽しめるので、外出が嫌になる夏の猛暑日にどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

It’s not rocket science.

ロケット科学ではない=そんなに難しいことではない、の意。JovianがTESOLという英語教授資格を取得するにあたってメンター(といっても同い年だが)だったオーストラリア人がしょっちゅう使っていた表現。

Jovian : So, how do you teach to-infinitives and gerunds?
どうやってto不定詞と動名詞を教える?

Mentor: Just elicit from students what they know. Don’t teach. Help them understand. It’s not rocket science. 
受講生が既に知っていることを引き出せ。教えようとするな。理解するのを手助けしろ。そんなに難しいことじゃない。

のように使われる。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, インド, モヒト・チャダ, 監督:スラージ・ジョシLeave a Comment on 『 THE FLIGHT ザ・フライト 』 -続編は不要-

『 バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー 』 -お下劣な笑いを楽しむべし-

Posted on 2022年7月28日 by cool-jupiter

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー 75点
2022年7月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フィリップ・ラショー ジュリアン・アルッティ エロディ・フォンタン
監督:フィリップ・ラショー

 

大学でコロナ激増で超多忙のため簡易レビュー。

あらすじ

売れない役者セドリック(フィリップ・ラショー)はバッドモービルに乗って宿敵ピエロと戦うという『 バッドマン 』という映画の主役の座を手にする。しかし撮影の最中、父親が入院したと聞いたセドリックはバッドモービルで病院に急行するが、その途中で事故を起こしてしまう。意識を取り戻したセドリックは、自分をスーパーヒーローだと思い込んでしまい・・・

ポジティブ・サイド

原題は Super-héros malgré lui、英語では Superhero in spite of himself = 「知らないうちにスーパーヒーロー」の意味。in spite of oneself で「我知らず」や「気付かぬうちに」という意味である。

 

『 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 』のフィリップ・ラショーによる主演兼監督作。MCUからDCEUまで、あらゆるヒーローのコスチューム、テーマ音楽、ガジェットをパロってパロってパロりまくっている。Jovianhは『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』以降のMarvel映画は出涸らしのようだと感じているが、ここまであっけらかんとしたパロディを見せつけられると、まだまだヒーロー映画にも鉱脈はあるのだなと感じる。

 

至って真面目にスーパーヒーローであろうとするセドリックと、そのセドリックを救おうとする家族や友人の面々、そして本作のヴィランが織り成すドラマが、フランス流の容赦のないお下劣ユーモアと共にどんどん進行していく。邦画の関係者は是非ともこのテンポの良さを学んでほしい。そして、漫画や小説を忠実に映像化するのではなく、フィクションであるスーパーヒーロー映画をさらにフィクション化するというメタ的な物語の技法についても考察してほしい。

 

そうそう、本作は記憶喪失ものでもある。冒頭から中盤こそ面白いが、終盤で大コケする確率が98%というジャンルでもある。本作は2%に属する作品、つまり主人公の記憶喪失が見事に物語の結末に結びついている。主演・監督のみならず脚本にも名を連ねるフィリップ・ラショーの面目躍如たる一作である。

ネガティブ・サイド

お下劣、お下品なジョークが満載だが、とある子どもが〇〇されるシーンは笑えなかった。セドリックの暴走を無理やり軌道修正した形だが、もっと別の方法や演出があったのではと思う。

 

スマホのテキストメッセージのネタは、いくらなんでもその至近距離では成立しないだろうと思わされた。文字通りの意味で距離感がめちゃくちゃだった。

 

総評

粗製濫造の感のあるヒーロー映画だが、メタ的なパロディという可能性を残していた。アホな映画であることは観る前から分かっている。なので、問題はそのアホさ加減をどれくらい許容できるかによる。高校生や大学生のカップルがデートムービーにするには不適だろう。社会人、それもちょっとマンネリ気味になってきているカップルに向いていると感じる。???と感じる向きはぜひ鑑賞されたし。鑑賞後に、その意味が分かるだろう。

 

Jovian先生のワンポイントフランス語レッスン

égalité

エガリテと読む。意味は平等や対等である。テニスファンなら、全仏オープンの中継でデュースの時にアンパイアが「エガリテ」と言っているのを耳にしたことがあるはず。英語学習上級者なら egalitarianism =平等主義という語彙を知っているかもしれない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, エロディ・フォンタン, コメディ, ジュリアン・アルッティ, フィリップ・ラショー, フランス, ベルギー, 監督:フィリップ・ラショー, 配給会社:アルバトロス・フィルムLeave a Comment on 『 バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー 』 -お下劣な笑いを楽しむべし-

『 アクセル・フォール 』 -スリラーに徹すべし-

Posted on 2022年7月24日 by cool-jupiter

アクセル・フォール 30点
2022年7月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シャーロット・ベスト
監督:アンティーン・ファーロング

夏と言えばホラーまたはスリラー。『 TUBE チューブ 死の脱出 』のようなシチュエーション・スリラーかなと思い、近所のTSUTAYAでレンタル。

 

あらすじ

アリア(シャーロット・ベスト)が目覚めると、そこは超高層ビルのエレベーター内だった。エレベーターの扉は開かず、急激な下降と上昇を繰り返してアリアを痛めつける。誰が?何のために?謎が謎のままに、エレベーターのモニターにはアリアの父が拷問を受ける映像が映り・・・

 

ポジティブ・サイド

エレベーターは密室でありながら、動くという特徴を持つ。地震の多い日本という国では、エレベーター内に閉じ込められるというのは現実的な恐怖として感じやすい。その意味で、アリアの置かれた状況を我が事のように感じられた。

 

アリアの父の拷問シーンも、観ていて結構痛い。やはり低予算映画が力を入れるべきは、高額な役者や美麗なCGではなく、苦痛の表現だ。アリア自身も結構痛めつけられるが、観ていて本当に自分でも脳震盪を起こしそうに感じた。

 

状況が全く不明なままアリアが痛めつけられ、スマホに残る謎のメッセージや、モニターに映る父の様子など、序盤のミステリ要素とサスペンスの風味はなかなかのもの。シチュエーション・スリラーというジャンルは、序盤だけは面白さは保証されている。

 

ネガティブ・サイド

原題は Rising Wolf = 立ち上がる狼ということで、このタイトルならそもそも借りなかった。やはりアリアに訳の分からない超能力があった、という設定が本作を一気に駄作に落としている。

 

エレベーターの急降下でアリアが気絶するたびに謎の回想シーンが入るが、これが物語のテンポを悪化させている。回想シーンそのものに面白さというか、様々な謎を解く鍵、あるいはさらに謎を膨らませる要素があればよかったが、それも無し。その代わりにアリアには双子の妹ザラがいて、二人そろって謎の超能力があり、父親はCIAのエージェントで・・・って、色々と詰め込みすぎ。

 

まず超能力の設定が不要。なおかつ、その超能力が本当に超がつくようなむちゃくちゃな能力。サスペンス要素を盛り上げたいなら、アリアの能力は通信あるいは何らかの感知・検知能力にすべきだろう。エレベーターという密室で最も必要になるのは、まずは情報。その情報を得るには、外部と通信するか、または自ら感じ取ることが必要。備え付けの電話やスマホが使えなくなった。そこで過去の回想で、ザラや、あるいは両親とテレパシーでコミュニケーションしていた。あるいは、壁の向こう側が見えたり、遠いところの音や声が聞こえたりといった経験が思い出されて・・・という展開なら、まだ分かる。超能力自体が的外れな上に、それがエレベーターという密室と上手にリンクしないのはマイナスである。

 

悪役がロシア人というのはある意味でタイムリーであるが、「エンジニア」なる謎の存在を探すというのがクリシェだし、エレベーター内のモニターが切れている時だけ、アリアが叔父のジャックと通話できるというのも都合が良すぎて、すぐにピンとくる。特にゲームの『 メタルギアソリッド2 』や『 エースコンバット3 エレクトロスフィア 』をプレーしたことがあれば「これはアレか」となるだろう(ジャックが実在するかどうかではなく、ジャックの正体は誰なのか、という点で)。

 

覚醒したアリアはまさに Rising Wolf のタイトルにふさわしいが、何だろうか、この「私の戦いはまだ始まったばかり」感満載の終わり方は・・・ 続編作る気満々に見えるが、今どきのジュブナイル小説でも、もっとちゃんとしたプロットを組み立てるだろう。サイキックパワーやらタイムトラベル、原子分解から原子再構成までやりたい放題やったのだから、いさぎよく一作で完結しておくべきだろう。まあ、これの続編にカネを出そうというスポンサーはいないだろうが。

 

総評

オーストラリア発の珍品である。クオリティとしては、毎年夏になると出てくる珍品ゾンビ映画、あるいは珍品サメ映画と変わらない。超能力ものは嫌いではないが、それは超能力が世界観とマッチするときだ。配信やレンタルショップで目にしても、視聴はお勧めしない。視聴するなら自己責任でどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Rising

いわゆる分詞の形容詞的用法というやつである。意味は「立ち上がる」、「上昇する」など。Rising Star = 人気や知名度が上昇中のスター、The Land of the Rising Sun = 日出ずる国など、多少英語を勉強した人なら馴染み深い分詞だろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, オーストラリア, シチュエーション・スリラー, シャーロット・ベスト, ファンタジー, 監督:アンティーン・ファーロング, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 アクセル・フォール 』 -スリラーに徹すべし-

『 メイド・イン・バングラデシュ 』 -Do not underestimate Bangladeshi women-

Posted on 2022年7月23日 by cool-jupiter

メイド・イン・バングラデシュ 70点
2022年7月18日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:リキタ・ナンディニ・シム
監督:ルバイヤット・ホセイン

 

簡易レビュー。

あらすじ

シム(リキタ・ナンディニ・シム)は、工場で長時間ミシン操作をする労働者だったが、あるきっかけで労働組合の結成に動き出す。仲間を集めて、組合を作り、労働環境の改善や賃金のアップを勝ち取ろうとするシムだったが・・・

ポジティブ・サイド

インドからイスラム勢力が独立して出来たパキスタンから、さらに独立して生まれたバングラデシュ。つまり、コテコテのムスリムの国であるが、本作で描かれるシムとその同僚たちが、会社の幹部の男性たちに見せる「闘う姿勢」に圧倒される。ものすごい剣幕で迫っていくバングラデシュ女性を目の当たりにして、「あれ、これって韓国映画だったっけ?」とまで思わされた。その一方で、20代の女子らしいトークも随所で聞かれる。特に、会社経営者の右腕的な存在の男性と、シムの同僚は不倫関係にあるのだが、そのことを面白おかしく揶揄するシーンの女性たちのあけすけなトークに、「なぜ邦画は男女のあれやこれやをあけっぴろげに語れないのか」と慨嘆させられた。

 

過酷な労働よりも、我々が普段から当たり前のものとして享受している労働者の権利が、実は当たり前ではないということが、ドキュメンタリー風に活写される。映画的な巧みなカメラワークやBGM、効果音、過剰な演技などは一切なく、組合の結成に奮闘するシムと、彼女の前に立ちはだかる様々な障害(同僚や夫、役人まで)、そしてその障害を一つずつ乗り越えていく様はバングラデシュだけではなく、女性の地位向上を目指すあらゆる国や地域のエールとなるだろう。

ネガティブ・サイド

シムをたきつけた女性記者は、もっと全編にわたってシムを支援すべきではなかったか。

 

シムの夫も非常に勇ましい場面があったが、何故あそこで警備員をぶん殴らなかったのか。警備員に一発お見舞いして、その上でシムの腕を強引に引いていく、というのなら納得がいったのだが。

 

総評

我々が何気なく着ている服は、新疆ウイグル自治区の強制労働の賜物だったというニュースが近年報道されたのは記憶に新しい。が、中国だけではなくバングラデシュも低賃金かつ重労働で世界に衣料品を提供していることが分かった。複雑な気分にさせられる。しかし、最後の最後にシムが機転を利かせて勝利するシーンのカタルシスは本物。Jovian妻は満足していた。本作は男性よりも女性をエンパワーするようである。

 

Jovian先生のワンポイントベンガル語レッスン

ヘー

ベンガル語で Yes = はい、の意。劇中で何度も聞こえてくるので、すぐにわかる。言語は文脈とセットで覚えよう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, デンマーク, バングラデシュ, ヒューマンドラマ, フランス, ポルトガル, リキタ・ナンディニ・シム, 監督:ルバイヤット・ホセイン, 配給会社:パンドラLeave a Comment on 『 メイド・イン・バングラデシュ 』 -Do not underestimate Bangladeshi women-

『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を-

Posted on 2022年7月22日 by cool-jupiter

キングダム2 遥かなる大地へ 55点
2022年7月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山崎賢人 吉沢亮 豊川悦司 清野菜名
監督:佐藤信介

『 キングダム 』はなかなかの出来栄えだったが、今作はちょっと落ちるという印象。それでも随所に原作漫画らしさが爆発しており、面白さは保っている。

 

あらすじ

下僕の身から戸籍を得た信(山崎賢人)は、王宮に侵入した秦王・嬴政(吉沢亮)の暗殺者を見事に撃退する。しかし、その直後、魏が秦へ侵攻してきたとの報が入る。嬴政は迎撃のため麃公将軍(豊川悦治)を蛇甘平原に出征させる。武功を求めて歩兵に志願した信は、同郷の尾平や尾到、伍長の澤圭、謎の剣士・羌瘣(清野菜名)と伍を組むことになるが・・・

ポジティブ・サイド

副題の「遥かなる大地へ」の通り、山や王宮がメインの戦場だった前作とは一転して、ほとんどの闘いが屋外で繰り広げられる。それも大平原に山岳にと、非常にスケールが大きい。黄色の土ぼこりが一面に舞うと、山ばかりの日本の平野とは違うなと感じる。単純な演出効果は大きい。

 

アホだが確実に腕は立つ信を前作に引き続き、山崎賢人が好演。チャンバラの迫力も前作と同水準を維持している。また蛇甘平原で一気に敵陣に突っ込んでいく無謀さ、そこで雑兵を蹴散らす漫画的な迫力も映像で十分に表現できていた。大軍vs大軍の迫力を出すのは予算的にもCG技術的にも無理。しかし、本作では伍という単位にフォーカスすることで、その問題をうまく回避した。実際の歩兵部隊も伍長や什長が最小単位を率いていたし、最近の連載では描かれなくなった伍の戦いにはリアリティが感じられた。

 

同時に、原作漫画で二度にわたって絶望感を与えられた魏の戦車隊の迫力は、漫画には出せないものがあった。Jovianの持つ映画における戦車というのは『 ベン・ハー 』ぐらいなのだが、戦車隊が歩兵を蹂躙する様、その戦車隊を「策」でもって退ける様、そして信が戦車を見事に破壊するシークエンスなどは、スペクタクルそのもの。これらのシーンは是非とも大画面で堪能されたい。

 

『 キングダム 』は究極的にはキャラクター漫画であり、映画もキャラクター映画である。極端な話、将軍一人で数千人の力に匹敵するし、実際に原作でも李朴は合従戦編でそのような趣旨のことを述べていた。その意味で、今作では最初の三人(信・嬴政・河了貂)以外の、後の飛信隊の中核となるメンバーの絆を上手く描き出していた。特に原作では全く馴れ合おうとしなかった羌瘣を、原作とは少し(というか大いに)異なる方法で仲間に引き込むという脚本はよくできていた。原作者が加わっているから、どこを削るのか、何を足すのかが明確だったのだろう。

 

エンドロール後には第三作への予告編も垣間見ることができる。『 キングダム 』で予想したとおりに、馬陽防衛戦になりそうだ。まだ編集段階だろうか。2時間40分程度の長さで、飛信隊の誕生から王騎の矛を受け継ぐシーンまで、見せ場てんこ盛りで描き出してほしい。

ネガティブ・サイド

率直に言って、羌瘣、麃公、呂不韋はミスキャストだと感じた。初登場時の羌瘣は10代前半くらいのはず。清野菜名は薹が立つではないが、それこそ現在連載中の宜安の戦いぐらいの年齢に見える。探せばもっと羌瘣っぽい役者はいるはずだし、見当たらなければ、それこそオーディションすべきだろう。

 

麃公を演じた豊悦も、ビジュアルはかなり原作に忠実だったが、声と立ち居振る舞いがどうにも本能型の極みに思えなかった。「全軍、待機じゃあ!」や「ハァアア!」の声のピッチが高すぎて、どうにもイメージに合わない。また呉慶将軍との一騎打ちも、原作にあった「相手を知ろうとする」過程がすっぽり抜け落ちていて、信が目指すべき大将軍像を呈示できていなかった。

 

最後に少しだけ出てくる呂不韋も佐藤浩市では年齢が合わないし、なにより原作の呂不韋が放つ圧倒的なオーラが足りない。北村一輝や豊原功補のような役者の方が呂不韋に逢っているように感じる。あと、春秋戦国時代で最も有名な人物の一人である李斯が登場しなかったのは何故なのだろうか。

 

アクションは文句なしだが、それ以外の部分の演出の粗が多かった。魏火龍の発音がキャラごとに違ったり、あるいは羌瘣と羌象が緑穂を異なるイントネーションで発音したりと、もう少し台詞回しにも目を光らせてほしかった。

 

効果音にも改善の余地あり。羌瘣が巫舞で敵兵を屠っていく際の音が「ガギィン」だった。これは絶対に「スヒン」でなければならない。フォーリー・アーティストの尻を叩いて「スヒン」という音を生み出すべきだった。

 

ミスチルの楽曲『 生きろ 』は悪くなかったが「遥かなる大地」という感じは全くしなかった。副題が「仲間と共に」とかなら、まだフィットしたのかもしれないが。前作同様にONE OK ROCKの荘厳なバラード曲を依頼できなかったのだろうか。

 

総評

アクション映画としても、漫画の映像化としても、それなりの水準に達している。三部作は往々にして、1から2で上がって、2から3で落ちるものだが、本シリーズは1から2で少し下がってしまった。その代わり、2から3で爆上がりすることが期待できそう。原作ファンならキャスティングや演出に対して賛否のどちらもありそうだが、観て損をすることはないはず。歩兵目線の戦争アクションを邦画も描けるようになったというのは実に感慨深い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

turn the tables 

「テーブルを引っくり返す」というのが直訳だが、実際の意味は「形勢を逆転する」の意。劇中では渋川清彦演じる縛虎申千人将が「将軍の狙いはここから大局を覆すことだ」と言うシーンがあったが、大局を覆すというのは turn the tables が英訳としてふさわしいだろう。類似の表現に turn things around というのもある。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, アクション, 吉沢亮, 山崎賢人, 日本, 清野菜名, 監督:佐藤信介, 豊川悦治, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を-

『 ソー ラブ&サンダー 』 -シリーズ疲れが顕著-

Posted on 2022年7月19日 by cool-jupiter

ソー ラブ&サンダー 40点
2022年7月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリス・ヘムズワース ナタリー・ポートマン クリスチャン・ベール
監督:タイカ・ワイティティ

元同僚カナダ人が「期待できない。DVDまで待つ」というので、嫁さんと劇場へ。うーむ、MCU全般に言えることだが、franchise fatigue = シリーズ疲れが深刻であるように思う。

 

あらすじ

積極的に闘うことから身を引いたソー(クリス・ヘムズワース)は、神殺しの剣・ネクロソードを持つゴア(クリスチャン・ベール)が銀河の各地の星々で神を殺しまわっていることを知る。遂にゴアと闘うことになったソーの前に、かつての恋人ジェーン・フォスター(ナタリー・ポートマン)がムジョルニアを携えて現れ・・・

ポジティブ・サイド

MCU特有のマシンガントークは健在。スター・ロードとソーの掛け合いは面白いし、肥満体からのリカバリーや、自分探しの旅、さらには求められなければ闘わないという、中二病的な思考回路も、ソーというキャラクターに親近感を抱かせる要素になっている。

 

キャプテン・アメリカに奪われ(?)、ヘラに粉砕されたムジョルニアが今作では復活。しかし、持ち主はナタリー・ポートマン。そのナタリー・ポートマンとソーとの、燃え上がりそうで燃え上がらない焼け木杭には、イライラさせられつつも、成熟した大人同士の距離感を教えられた気もする。そう、これはアホな男子のノリのまま生きてきたソーが、一人前の大人になる一種のビルドゥングスロマンなのだ。

 

ソーがストーム・ブレイカーに浮気し、ムジョルニアをほったらかしにしてしまったことを何度も詫びるシーンには笑ってしまう。今の女より昔の女を大切にしようとするとどうなるか、男性諸賢は本作を教訓にされたし。

以下、少々ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

残念ながらアクションに観るべきものなし。ナタリー・ポートマンがマイティ・ソーになっても、アクションそのものはこれまでのソー映画のそれと変わり映えしない。そこで、今回はゼウスの武器であるキンキラキンの変な武器も簒奪。けれど、何をしたところで Marvel 映画のアクションはどん詰まりに来ていると感じる。ひたすらに肉弾戦で全てを破壊するハルクだけは、シリーズがどれだけ進んでも爽快感あるバトルシーンを提供してくれそうだが、ハルクはもうお役御免。

 

閑話休題。本作はタイカ・ワイティティ監督の演出と波長が合うかどうかで、印象がガラリと変わるのだろう。『 ジョジョ・ラビット 』のように、コメディとして始まり、シリアスなヒューマンドラマに変貌していく物語はお手のものなのかもしれないが、コメディとシリアスなドラマを共存させるのは不得手なのかもしれない。熱心な信徒だったゴアが、神そのものの傲岸不遜さに触れて棄教し、自らが神殺しになってしまうというのは、これ以上ないシリアスなドラマのはずだ。特にアメリカからすれば、自らが信じてきた国家観が過去数十年で大きく揺らいできた。湾岸戦争へのアメリカ参戦のきっかけは在米クウェート人のお芝居だったし、『 モーリタニアン 黒塗りの記録 』など、国家による茶番劇はドンドンと明るみに出ている。この「信じていたものに裏切られる」というゴア側の視点が本作では致命的に欠けているように思う。この「何を信じていいのか」という不信感を、「やっぱり信じられるヒーローがいる!」というカタルシスに持っていくための仕掛けが本作にはない。観終わって最も印象に残ったのは、コメディとシリアスのアンバランスな配合具合だった。

 

序盤にプレゼントされる巨大ヤギもギャーギャーうるさい。これはあれか?土着の民族からの贈り物は野蛮極まりないという意識の表れ?このヤギの意味がちょっと分からなかった。

 

Jovianが忘れているだけかもしれないが、序盤に出てきていたジェーンの友達はドラマの人物?『 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 』もそうだったが、映画鑑賞の前提にドラマ視聴を持ってこないでほしい。観たいのは映画であって、ドラマではないという層も一定数いることを作り手は意識してほしい(などとディズニーに言っても無駄だとは分かっている)。

 

エンドロール後に次回作が示唆されているが、さすがにもう食傷気味。ソーがヘラクレスとの壮絶な一騎打ちに敗れて、ヴァルハラでジェーンと live happily ever after でシリーズのフィナーレにしてくれてええよ。

 

総評

駄作ではないが、取り立てて褒めるべきところもない作品。少々嫌味な言い方をさせてもらえば、よくできたミュージックビデオのようだ。そして、それで成功したのが『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 』だった。が、こちらとしては「それはもう観た」としか感じない。MCU全体に言えることだが、サノスを失ってから、物語の軸がはっきりしない。そろそろこの Marvel というフランチャイズそのものから離脱する頃合いか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

give or take ~

 

直訳すれば「与える、または取る」だが、実際の意味は「誤差は~ぐらいで」、「~ぐらいの増減ありで」のような意味となる。

I think he is about 45 years old, give or take one or two years.
彼は45歳ぐらいだと思う、誤差はあっても1~2歳。

The year’s revenue will be a hundred million yen, give or take a few million yen.
今年の収益予想は1億円で、そこから数百万円増減することもあります。 

のように使う。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, クリス・ヘムズワース, クリスチャン・ベール, コメディ, ナタリー・ポートマン, 監督:タイカ・ワイティティ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ソー ラブ&サンダー 』 -シリーズ疲れが顕著-

『 TUBE チューブ 死の脱出 』 -評価の別れるシチュエーション・スリラー-

Posted on 2022年7月17日 by cool-jupiter

TUBE チューブ 死の脱出 50点
2022年7月14日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ガイア・ワイス
監督:マチュー・テュリ

近所のTSUTAYAで発見。準新作だったが、クーポンで安く借りてきた。観る前から駄作臭が漂ってきていたが、どちらかと言うと珍作だった。

 

あらすじ

あてもなく彷徨するリサ(ガイア・ワイス)は、偶然通りかかった車に乗せてもらう。しかし、運転手は殺人罪で逃亡中の男だった。急ブレーキで頭を打ったリサが目覚めると、全身に謎のスーツが着用され、左腕には光るブレスレットが装着されていた。小部屋の扉が開くと、その先は一方通行のダクトになっていた。彼女はこの空間から脱出できるのか・・・

ポジティブ・サイド

原題は フランス語で Meandre、英語なら meander = 曲がりくねる、である。『 CUBE 』の一文字違いで TUBE とは、なかなか凝った邦題である。このタイトルとDVDのジャケットだけで借りてしまった。クソ映画だと分かっていても、観なければならないクソ映画というのもある。本作はその一つである。

 

CUBEが三次元方向に展開する超構造体であったのに対して、こちらは基本的には TUBE という邦題の通り、一方通行である。その時々に左右に道は分岐するが、同方向に進み続けなければならない点は変わらない。ブレスレットによるカウントダウンとチューブ状の構造物という時間と空間の両方の面から追い立てられる演出は上手いと感じた。

 

主演のガイア・ワイスはかなりの演技巧者。序盤で見せる怯え切った表情と、中盤で見せる鬼気迫る表情のコントラストは凄い。数々のトラップや、『 CUBE 』世界に出てこないようなモンスターも登場する。かなりグロい死体描写や、観ているこちらの血圧が一瞬でガクンと下がってしまうような人体破壊描写もあったりする。オチは少々いただけないが、そこにいたるまでの謎とサスペンスを楽しめれば、それで十分だろう。

 

以下、少々ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

冒頭のヒッチハイク的なシーンは必要だったか?もちろん、チューブ内に何らかのお仲間を入れてやらなければならないが、別にそれはリサの〇〇でも△△でも良いわけで、ポッと出の男を無理やり配置する必要はなかったように思う。また、いきなりチューブの中から始まる方が『 CUBE 』同様に、ベタではあるが観る側を「え?え?ここはどこ?」という不安な気持ちにさせられたはず。

 

手首に刻印された謎のマークが、ちょっと misleading すぎる。 ナチュラルに左から読んでいたが、正しい読み方が右から左だったら?あるいは腕を90度真横に倒して、上から、つまり橈骨側から読むのが正しいとしたら?地球ですら、国や文化圏によって数字や文字を読み始める方向は異なるのだから、本作のような世界観を堂々と呈示する作品では、このあたりにもっとリアリティを込めてほしかった。

 

最後の最後に胎内回帰するというオチは悪くないと感じた。問題なのは、そこからさらに別のオチに飛躍したこと。ストーリーは『 アメイジング・ジャーニー 神の小屋より 』から、一気に『 ノウイング 』へと変貌する。最後の最後に投げっぱなしジャーマンスープレックスをかまされた気分である。こんな結末を用意するぐらいなら、『 海底47m 』や『 ゴーストランドの惨劇 』的なオチというか展開で良かったのではないだろうか。

 

総評

雰囲気的にはどことなく『 プラットフォーム 』に近い。訳も分からず謎の空間に投げ出されるというシチュエーション・スリラーの文法に忠実で、少ない登場人物でサスペンスを盛り上げるというフランス文学的なテイストも味わえる。問題は終盤の展開で、終わりよければ全て良し派は本作の hater となるだろう。一方で、手に汗握る展開を数十分間味わわせてくれたので十分だよ派なら、本作を楽しめるだろう。 自分の嗜好を確認の上、視聴するかどうかを決められたし。

 

Jovian先生のワンポイント仏語レッスン

un deux trois quatre

アン ドゥー トロワ カートゥルと読む。意味は、1、2、3、4である。アン・ドゥー・トロワはバレエでお馴染みだろう。4= quatre だが、これが英語の quarterとそっくりだと気付けるだろう。フランス語の meandre = 英語の meander である。余談だが、Jovianが私淑するジョー小泉は、言語を学ぶ際には、まず数字から覚えるという。海外ボクサーの世話役やマネジメントを行う際に、選手の国の言葉で「0722  0900」などど言って、ココだとその場所(ホテルのロビーなど)をジェスチャーで指す。何度か言えば、『 ああ、7月22日の9:00にここで待っていろ、と言っているのか 』と察してくれるらしい。Jovianの好きなジョー小泉のエピソードである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, ガイア・ワイス, シチュエーション・スリラー, フランス, 監督:マチュー・テュリ, 配給会社:アットエンタテインメントLeave a Comment on 『 TUBE チューブ 死の脱出 』 -評価の別れるシチュエーション・スリラー-

『 地獄の花園 』 -アクションをもっと真面目に-

Posted on 2022年7月16日 by cool-jupiter

地獄の花園 50点
2022年7月12日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:永野芽郁 広瀬アリス
監督:関和亮

劇場公開時にはスルーしたが、クーポン使用で近所のTSUTAYAから安く借りてくる。アクションが全体的に中途半端で、メインのキャラも脇役に食われてしまっていた。

 

あらすじ

ごく普通のOLである直子(永野芽郁)の会社では、猛者たちがOL界の覇権を求めて抗争を繰り広げていた。ある日、中途採用された法条蘭(広瀬アリス)と直子はひょんなことから意気投合。しかし、蘭は超武闘派のOLで、あっという間に三富士株式会社のトップに君臨する。以来、周辺企業のトップのOLたちとの抗争が絶えなくなり・・・

 

ポジティブ・サイド

OLの世界には昔も今もお局が存在する。ある意味、男性サラリーマン以上に権謀術数を駆使して権力闘争を繰り広げるのが、OLという生き物である。偏見と言うことなかれ。良くも悪くも、これが日本企業に勤める女性社員のすべてとは言わないまでも、多くに当てはまることなのである(Jovian妻談)。そのOLの生態を一昔前のヤンキー漫画に当てはめて描写したところに本作の面白さがある。

 

菜々緒や大島美幸のOL姿はそれだけで笑ってしまうし、川栄李奈のヤンキーでありながらOL的な気遣いを見せられるというギャップにも、やはり笑ってしまう。このヤンキーOLの仁義なき派閥抗争と、そこに突如現れる新勢力の広瀬アリス、その広瀬アリスの友人となる永野芽郁の掛け合いが物語を動かしていく。

 

他者との抗争=ヤンキー漫画における他校との抗争で、相手の頭を潰せば、そこを丸ごと傘下に加えられるということから、抗争がどんどんと拡大、過激化していく。その途中で出てくるトムソンというのは、やはりサムソンが元ネタだろうか。トヨタですら敵わない財閥にして超巨大企業である。そこの幹部OLを全員男性キャストで固めたのには賛否両論あるだろうが、Jovianはやや賛である。コメディなのだから、これぐらいアホなキャスティングは許容すべきであろう。

 

広瀬アリスの武者修行シーンは笑えるし、最後の最後でこれまでの数々の闘争を、ある意味ですべてなかったことにする価値観の開陳も悪くない。というか、この世界観をそのままに物語を閉じてはいかんだろう。その点で、アホ極まりない物語にも一応の決着がつけられ、話はきれいに閉じていく。頭を空っぽにして観る分には良い映画だろう。

 

ネガティブ・サイド

映画館で観た予告編をうっすらと覚えているが、ハッキリ言ってトレーラーの作り方を間違っている。永野芽郁のアクションシーンは全カットして、広瀬アリスが頂点を目指して闘っていくストーリーだと思わせるようにすべきだった。トレーラーのせいで「実は永野芽郁も強いんでしょ?」と観る側にバラしてしまうのは全く得策ではない。誰がトレーラー作ったの?そして、誰がそれを承認したの?

 

肝心かなめのアクションも迫力不足。ちょっとしたパンチや蹴りのたびにカットして、別アングルから別アクションを映していくカメラワークは、役者の鍛錬不足を何とか目立たないようにしたいという工夫なのだろうが、ここを追求しないことには真の面白さは生まれてこない。『 翔んで埼玉 』がクッソ面白かったのは、埼玉狩りのアクションやGACKTと伊勢谷友介の衝撃のキス、埼玉VS千葉の大軍勢同士の激突など、アホなシーンのリアリティをこれでもかと追求したからである。OL同士の喧嘩でも、もっと役者たちを追い込んでほしかったし、追い込むべきだった。別に『 アジョシ 』や『 悪女 AKUJO 』のようなクオリティは求めていない。ただ、真っ正面から魅せるアクションシーンがひとつぐらいはあってもよかったのではないか。

 

主要キャラであるはずの永野芽郁や広瀬アリスが遠藤憲一に完全に食われていた。もちろん演技合戦の中では『 ボーダーライン 』のベニシオ・デル・トロや『 ジュラシック・パーク 』のジェフ・ゴールドブラムのように、主役を食ってしまう脇役というのは存在する。しかし本作の沿道の悪目立ちは監督の演出力不足によるところが大であると思われる。キャスティングではなくディレクションの問題だろう。

 

総評

日本ならではのアイデアが詰まっているし、日本ならではの弱点も露呈している、何とも評価に困る作品。ということは、一部の人々から高評価を得て、一部の人々からは低評価を得やすい作品ということになる。要は、作り手と観る側の波長が合うかどうかである。男性視点からのOL社会を面白いと思うか、くだらないと思うか。観るかどうかは直感で決めるべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Stop talking shit, you ugly whore!

「寝言こいてんじゃねーよ、ブス!」の私訳。聞いた瞬間の思いつきだが、実際にプロの翻訳者でも、案外こういう訳に落ち着くのではないかと思う。寝言を言う ≒ 馬鹿なことを言うなので、ここでは talk shit とした。悪口を言う、無礼・不愉快なことを言う、の意味である。ちなみに、こんな英語は実生活では絶対に使ってはならない。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, コメディ, 広瀬アリス, 日本, 永野芽郁, 監督:関和亮, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 地獄の花園 』 -アクションをもっと真面目に-

『 ラストサマーウォーズ 』 -「映画を作る映画」の佳作-

Posted on 2022年7月13日 by cool-jupiter

ラストサマーウォーズ 70点
2022年7月10日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:阿久津慶人 飯尾夢奏
監督:宮岡太郎

傑作『 成れの果て 』で監督・企画・編集を務めた宮岡太郎が、本作でも監督・企画・編集を務めた。それだけでチケット購入決定。

 

あらすじ

小学6年生の陽太(阿久津慶人)は、同級生の明日香(飯尾夢奏)が夏の終わりに外国に引っ越すことを知り、ショックを受ける。映画好きな陽太は、夏休みの自主研究課題として、明日香をヒロインにした映画を作ろうと思い立つが、肝心のスタッフがいない。陽太は担任に相談するが・・・

ポジティブ・サイド

『 サマーウォーズ 』や『 永遠の831 』、『 ビューティフルドリーマー 』、洋画で言えば『 SUPER8/スーパーエイト 』のような要素がふんだんに盛り込まれた映画である。「夏」、「少年少女」、「家族」、「映画作り」がハッシュタグにつくような作品と言えばいいだろうか。キーコンセプトが分かりやすく、どこに主眼を置いて鑑賞すれば良いのかが明確である。 

 

この映画なら、主人公の陽太に同化して観ればいい。本作は陽太から明日香への不器用なラブレター作りであり、それはすなわち少年のビルドゥングスロマンである。いわゆる陰キャな少年が想いを寄せる同級生の少女相手に映画を作るというプロットに共感できない者などいないだろう。逆にこの時点で「何だこの子?」と感じるのなら、チケットを買ってはダメだ。時間と金を無駄にすること請け合いである。

 

脚本家やプロデューサー、カメラ・オペレーター、照明などをゲットしていく流れもテンポが速くてよい。脚本家がネットに小説をアップしているアマチュア小説家というのも『 私に✖✖しなさい 』のようなウェブ小説プラットフォームを考えれば、それなりに説得力はあるし、スマホのカメラ、あるいは Zoom や Google Meet を使えば、誰でも一応は動画が作れて、なおかつ YouTube にもアップできる時代である。大学生や高校生ではなく、小学生が数人集まって映画を作るというのは、もはやファンタジーではなくなった。実際に本作にインスパイアされて、夏休みの自由研究で映画を作る少年少女が現れても全く不思議ではない。

 

ロケハンから衣装集めなどは、『 鬼ガール!! 』とは異なったアプローチで、このあたりは埼玉と大阪の地域性の違いが見て取れる。撮影が順調に進んできたところで、アクシデントが発生。このあたりから『 ぼくらの七日間戦争 』的な要素が現れ始める。すなわち、大人への反抗である。といっても暴力的なそれではなく、実に微笑ましいもの。子どもの目からは親が抑圧的に見える時が多々あるかもしれないが、それにはちゃんと理由があるのだ。

以下、少々ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

陽太の家族の因果の描写が少々弱い。たとえば陽太の兄をよくよく見ると、歩くシーンばかりだったり、もしくは食卓のシーンで特定の指が使えていなかったりといった、過去に何らかの(軽い)障がいを負ったことを暗示するような描写を入れるべきだった。それがないと陽太の母親の異様な執着が腑に落ちない。

 

担任の先生と陽太、あるいは脚本の女の子が台本を一緒に読む、あるいはロケ地や撮影の順序について話しているシーンも欲しかった。ほんの数秒でもよいから、そうしたシーンがあれば、終盤のとあるシーンで唐突に先生が陽太とその家族の前に現れるシーンの説明がついたはずだ。これがないと、広い入間で先生がどうやってピンポイントで陽太と明日香のところにたどり着けたのか分からない。

 

総評

入間のご当地ムービーでもありながら、主軸は少女への思慕と家族の再発見を通じたひと夏の少年の成長物語である。つまり万人受けするテーマを描いている。映画を作る映画はJovianの好物テーマだが、本作もなかなかの面白さ。80分と非常にコンパクトにまとまっているのもいい。大人と子どもで、本作の見方はかなり異なることだろう。夏休みに、ぜひ家族でどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a movie buff

映画マニアの意。別に映画に限らず、何らかの分野の熱狂的なファンは buff と呼ぶ。野球マニアなら a baseball buff、F1マニアなら an F1 buff である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 日本, 監督:宮岡太郎, 配給会社:「ラストサマーウオーズ」製作委員会, 阿久津慶人, 青春, 飯尾夢奏Leave a Comment on 『 ラストサマーウォーズ 』 -「映画を作る映画」の佳作-

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