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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 CUBE 』 -シチュエーション・スリラーの極北-

Posted on 2021年10月5日2021年10月5日 by cool-jupiter

CUBE 80点
2021年10月3日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:モーリス・ディーン・ウィント ニコール・デ・ボア アンドリュー・ミラー
監督:ビンチェンゾ・ナタリ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211005002118j:plain



Jovian嫁は本作を観たことがないというので、自宅で鑑賞。コロナ収束の兆しは喜ぶべきだが、映画館およびその周辺での無節操な輩が明らかに増加しているため、逆に映画館通いがしにくくなった。Give me a goddamn break…

 

あらすじ

男は目覚めると謎の立方体の中にいた。周りの部屋の人間も合わせて男女6人だが、なぜ、どのようにして立方体に閉じ込められたのか皆目見当がつかない。そんな中、アッティカの鳥の異名を持つ脱獄王が先導するが、彼はある部屋に仕掛けられた死のトラップにかかって命を落としてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭いきなり男が死亡する。しかもただの死に方ではなく、鋼線が格子状に張り巡らされたトラップによって一息で人間サイコロステーキにされてしまう。Jovian嫁は「うげ」という言葉を発したが、Jovianも大学生の時にレンタルビデオで借りてきて鑑賞したときに同じような声を発したと記憶している。それほど強烈なシーンで、タイトルにもなっているキューブという立方体の危険さが観る側に一発で伝わってくる。この人間サイコロステーキは映画『 バイオハザード 』でもレーザーの形で登場している。悪く言えばパクリ、上品に言い換えればオマージュだろう。

 

サイコロステーキのシーンという顔に酸のシーンといい、低予算映画ながらどこにカネと手間をかけるべきか、よく分かっている。グロとバイオレンスは忌避されるテーマであるが、そうであるがゆえにそのジャンルの熱心な愛好家というものが存在する。ビンチェンゾ・ナタリ監督はそのことをよく理解している。

 

キャストが無名なのもいい。次に誰が死ぬか分からないからだ。また役者としての知名度や格付けなどを演じる側も観る側も気にする必要がないし、監督も演出を好きなようになれるだろう。『 ディープ・ブルー 』のサミュエル・L・ジャクソンや『 ザ・ハント 』のエマ・ロバーツのような例もあるが、低予算映画は売れていない俳優を起用して、そこから逆にスターを生み出すべきだ。日本でも『 カメラを止めるな! 』という超低予算映画から濱津隆之やどんぐりといった役者が売れるようになった。役者>ストーリーという構図に陥りがちな邦画は、このようなアイデア一発で勝負する映画から学んでほしい。

 

グロとバイオレンスを序盤で強烈に見せつけるが、本作が優れているのは、そうした視覚的な恐怖の演出の軸を、キャラクターの変容へと変えていくところ。特に警察官クエンティンが、法執行官としての意志と責任を忘れ、暴力に物を言わせるように変貌していくのは正にホラーである。怪物の誕生である。精神科医のハロウェイや大学生のレブン、謎の男ワースなどが織りなす奇妙なチームワークと対立の構図は、ミステリでおなじみの吹雪の山荘や絶海の孤島の屋敷に閉じ込められた哀れなモブキャラたちのそれ。ここでの疑心暗鬼の様相は、『 遊星からの物体X 』にも共通するサスペンスがある。

 

数学を武器にしてキューブの謎に迫る過程、その数学が誤っていたと分かった時の絶望、そこに現われる意外な救世主など、最後の最後まで息をつかせぬハラハラドキドキ展開で突っ走る。Jovian嫁は「これって『 インシテミル 』にそっくりやな」という感想を述べたが、エンタメとしては本作が圧勝であろう。日本版リメイクの公開前に多くの方々に復習鑑賞してほしいと思う。

 

ネガティブ・サイド

キューブの中で動く部屋が存在するわけだが、それを可能にするためには立方体の中にかなりの隙間が必要である。クエンティンらのパーティーはかなりあちこちキューブ内を巡っているが、早い段階で「動く部屋」の通り道を発見できなかったのは少し考えづらい。

 

レブンが一の位が2や5の3桁の数字を数秒考えて「素数じゃない」というシーンは、やはり何度見ても奇妙だ。2以外の偶数は絶対に素数ではないし、一の位が5の二桁以上の数字は必ず5の倍数で、すなわち素数ではありえない。

 

デカルト座標も、「動く部屋」には割り振れないだろうし、「動く部屋」の通路=何もない空間や、「動く部屋」を通すために動かされる部屋にも割り振れないだろう。数学はネタに使えばキャラが一気にスマートに見えるが、そこで失敗すると一気にキャラが陳腐化してしまうという諸刃の剣である。

 

総評

観るのは3度目だが、やはりこれは傑作である。謎の密室状の構造に閉じ込められ、理不尽なストーリーが展開するというジャンルを確立し、その影響は公開から20年以上が過ぎた2020年代でも健在。『 プラットフォーム 』などは一例だろう。本作が気に入ったという人は『 CUBE 2 』は華麗にスルーして、『 CUBE ZERO 』を鑑賞しよう。クオリティは落ちるものの、思いがけない連環の物語になっていることにアッと驚くことだろう。日本版のリメイクには正直なところ不安9、期待1であるが、是非ともJovianの予想を裏切ってほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Let’s face it.

直訳すれば「それに直面しよう」となるが、少し意訳すれば「そのことを直視しよう」となる。なにか都合が悪いが、それでも真実であるということを述べる前に言う。 Let’s face it. He is a good man, but he’s a bad sales rep. = 「現実を見よう。彼は良い人だが、営業マンとしてはダメだ」のように使う。  

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, A Rank, アンドリュー・ミラー, カナダ, シチュエーション・スリラー, ニコール・デ・ボア, モーリス・ディーン・ウィント, 監督:ビンチェンゾ・ナタリ, 配給会社:クロックワークス, 配給会社:ポニーキャニオン

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