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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: B Rank

『 シャザム! 神々の怒り 』 -少年から大人へ-

Posted on 2023年3月28日 by cool-jupiter

シャザム! 神々の怒り 70点
2023年3月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ザカリー・リーバイ アッシャー・エンジェル
監督:デビッド・F・サンドバーグ

簡易レビュー。

 

あらすじ

普通の少年ビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)古代の神々の力を持つヒーロー・シャザム(ザカリー・リーバイ)に変身する力を使って、兄弟たちと街のピンチを救っていた。そんな中、アトラスの娘たちが、かつて父が奪われた力を奪還するために迫ってきて・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭のカリプソとヘスペラの襲来シーンのシリアスさと、その後のシャザムの面々が崩落していく橋から人々を救出していくシーンのコミカルさのコントラストが素晴らしい。ヒーローたちが力を合わせるのではなく、力を合わせないとヒーローになれないというのがシャザムの親しみやすさ。スパイダーマンと言いながら、中身がボーイであるピーター・パーカーに通じるところがある。

 

ハリポタから『 アナイアレイション 全滅領域 』まで、これでもかと色んな作品のパクリオマージュを取り入れている。これぐらい開き直ったほうが清々しい。特にスティーブは、昨今急激に注目を集めているChatGPTを彷彿とさせる。次作にも出番はあるはず。

 

少年から大人へ、居心地の良い家から外の世界へという、ビリーの人生の過渡期と、スーパーヒーローとしてのシャザムの活躍と葛藤が良いバランスで描かれている。最終盤に出てくるゲストは、そのBGMを聞いた瞬間に鳥肌が立った。次作も楽しみだ。

 

ネガティブ・サイド

ユニコーンの活躍がもう少し長く見たかった。

 

ラドンの名前を冠するからには、ラドンらしく超音速飛行ぐらいしてくれないと。もっさりとした飛行はいただけない。

 

DCEUへの本格参戦が決まったようだが、最後の最後がインフォマーシャルにしか見えなかった。シリーズがMCU的にならないことを切に祈る。

 

総評

おバカ映画とシリアス映画のバランスが良い塩梅。『 アクアマン 』と並んで、全く暗くないDCヒーローだ。ヒーローものでありながら、ファミリーものでもある。血のつながり以上のものでつながっているファミリーという描写は近年のトレンドだが、そうした物語はMCUよりもDCUの方が巧みかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

breathe down one’s neck

直訳すれば「首に息を吹きかける」だが、転じて「ずっと見張っている」、「じっと監視している」の意。前の職場の同僚アメリカ人が “〇〇 sensei’s always breathing down my neck.” とぼやいていたなあ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ロストケア 』
『 マッシブ・タレント 』
『 search #サーチ2 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アッシャー・エンジェル, アメリカ, ザカリー・リーバイ, 監督:デビッド・F・サンドバーグ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 シャザム! 神々の怒り 』 -少年から大人へ-

『 少女は卒業しない 』 -鮮烈な青春の一瞬-

Posted on 2023年3月12日 by cool-jupiter

少女は卒業しない 70点
2023年3月11日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:河合優実 中井友望 小野莉奈 小宮山莉渚
監督:中川駿

簡易レビュー。

 

あらすじ

廃校と取り壊しが決まっている山梨の高校。山城まなみ(河合優実)、作田詩織(中井友望)神田杏子(小宮山莉渚)、後藤由貴(小野莉奈)は、卒業を目前に控えながら、それぞれに秘めた想いをなかなか形にすることができず・・・

ポジティブ・サイド

キャスト全員がアイドルではなく、ちゃんとした役者である。特に印象に残ったのは作田詩織を演じた中井友望。関西のいくつかの大学で教えることがあるが、こういう子は一定数存在する。ペアワークやグループワークを呼び掛けても無言または無反応。ただし、授業の終わりに講師にちょっとした質問だけをしに来る。藤原季節演じる教師が、また良い味を出している。

 

主役はまなみだろうか。『 佐々木、イン、マイマイン 』以来、彼女の出演作は定期的にチェックしているが、本作でも鮮烈なインパクトを残した。表情や声の使い分けが素晴らしい。ちなみに、まなみの想い人の登場シーンに「ん?」と感じたが、これは非常にフェアな演出。

 

最後は不覚にも森崎という男子生徒に二重の意味で泣かされた。二重というのは「その歌声の美しさ」と「その歌声が駿に届いていた」ことを指す。久々に邦画で well up した気がする。

 

ネガティブ・サイド

場面と場面のつなぎが、やや乱暴なところが見受けられた。4組の男女のオムニバス形式なのだから致し方ないとも言えるが、静寂のシーンから大音量シーンに転換するのはいただけない。もう少し各シーンの余韻を大事にしてほしいものである。

 

やや台詞に頼り過ぎかなと感じた。『 ここは退屈迎えに来て 』の成田凌が「ずっと高校生でいたい」というのと同じ独白を由貴がするのは、なんか違うなと感じた。開花する前の桜の木々を物憂げに見つめる。そんな演出は追求できなかったか。

 

総評

青春映画の秀作。タイトルの『 少女は卒業しない 』というのは、少女時代を忘れないということだろう。男は基本的に全員アホであるため、野郎同士が再会すればすぐに少年に戻ってしまう。『 くれなずめ 』が好例だ。本作は逆に、淡い想いに決着をつけて、前に進んでいく少女たちの物語。劇場で上映している間に、ぜひともチケット購入を!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

commencement

卒業=graduation で覚えている人も多いと思う。ぜひもう一つ、commencementも押さえてほしい。graduationは卒業に至るまでの過程に重点を置くのに対し、commencementは修了そのもの、さらにそれが含意する「何か新しいことの始まり」も意味する。年配のテニスファンなら、松岡修造が引退会見で「これはコメンスメント、終わりであると同時に始まりである」という趣旨の発言をしたことを覚えておられると思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 湯道 』
『 Winny 』
『 シン・仮面ライダー 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 中井友望, 小宮山莉渚, 小野莉奈, 日本, 河合優実, 監督:中川駿, 配給会社:クロックワークス, 青春Leave a Comment on 『 少女は卒業しない 』 -鮮烈な青春の一瞬-

『 マジック・マイク XXL 』 -青春に別れを告げるロードトリップ-

Posted on 2023年3月4日 by cool-jupiter

マジック・マイク XXL 70点}
2023年3月1日 WOWOW録画にて鑑賞
出演:チャニング・テイタム ドナルド・グローヴァー アンバー・ハード
監督:グレゴリー・ジェイコブズ

『 マジック・マイク 』の続編。やはり『 マジック・マイク ラストダンス 』への備えとして再鑑賞。

 

あらすじ

ストリップの世界からは足を洗い、家具職人として慎ましく生活するマイク(チャニング・テイタム)に、かつての仲間から「ダラスが旅立った」と告げられる。通夜に訪れたマイクだが、ダラスはアダムと共に天国ではなく中国に旅立っていた。一同はそれぞれの人生を歩み始めるために、最後にストリップの大会に参加しようと、マートル・ビーチに向けてロードトリップに出るが・・・

 

ポジティブ・サイド

前作のラストで踊ることを拒否したマイクが、今作では自分の職場でBGMに乗せられて不意に踊りだす。家具職人として汗水たらして働きながらも、マイクはやっぱりマジック・マイクだった。ストリッパー、本作の言葉を借りれば男性エンターテイナーとしての残り火が残っていた。夜の世界で1ドル札の雨を降らすのではなく、昼間の世界でこつこつと働く。その姿に我々はホッとすると同時に、ちょっぴりガッカリもさせられる。誰もが大人にならなければならないが、青春と決別するのはなかなかに難しい。本作は、マイクだけではなく、かつての仲間たちすべてが青春に別れを告げる物語である。

 

フローズン・ヨーグルトを売って生計を立てるティトに、芸能プロダクションに履歴書を送りまくるケンなど、前作でそれほどフォーカスされなかった個性豊かなキャラたちの背景が見えてくる。また、ロードトリップの中でマイクと各キャラが個別に話していく中で、彼らの関係についても様々な側面が見えてくる。じっくり話したことはなかったが、実は互いに深くリスペクトしていたことが分かったり、実はわだかまりを抱いていることが判明したりと、陽キャは陽キャで色々あったんだなと感じる。

 

旅の途中で出会う人々も、それぞれにドラマがある。仏頂面のコンビニ店員を「お前のダンスで笑顔にしろ、それができれば新作ダンスだって生み出せる!」というマイクの力強い提案と、それに乗ったリッチーがバックストリートボーイズの ”I Want It That Way.” を背景に披露する渾身のダンスが本作の見どころの一つ。また、一晩泊めてもらうことになる家で、マダム達の様々な悩みに耳を傾け、励ましの言葉を掛けて、自己効力感を与えるシークエンスもハイライトの一つ。ダラスとアダムは金のために中国へ行ってしまったが、マイクをはじめ残された面々は、自分たちが癒しを提供する存在であったことに気付いていく。

 

マートル・ビーチの大会で踊ったからとて、何かが劇的に変わるわけではない。結婚を夢見たり、妻子のいる生活に憧れたり、堅実な職業を得ようとしたり、あるいは華々しい芸能の世界にしがみつこうとしたり、進路は様々だ。そう、進路。つまり、大学生が院に進んだり、あるいは就職したり、ニートになったりと、色々あるが、マイクとその仲間たちは派手なバカ騒ぎをすることで、モラトリアムの終わりを受け入れたのだ。今回のロードトリップは彼らなりの卒業旅行なのだ。

 

ラストのステージ・パフォーマンスは圧倒的。Jovianが自分の結婚式で使ったブルーノ・マーズの “Marry You” をドナルド・グローヴァーが歌うシーンが個人的には最も盛り上がった。マイクが道中で知り合ったストリッパー仲間と最後に見せるパフォーマンスも圧巻。最後に打ち上げた大きな花火は、彼らの旅の終わりを締め括るにふさわしい。歳をとってから思い起こして、ふっと笑うことができる。そうした瞬間を持つことが青春の醍醐味だし、そうした瞬間を共有できる仲間を戦友と呼ぶのだろう。

 

ネガティブ・サイド

トバイアスが事故で out となってしまったために、急遽、マイクの古い伝手でローマにMCを頼むことになる。そこは良いとして、そのローマのMCがそれほどシャープだとは感じられない。レディをクイーンと言い換えるぐらいで、何か特別にMCの才能があるようには感じられなかった。これなら前作のマシュー・マコノヒー演じるダラスの方が遥かにMCとしては上だろう。”All right, all right, all right.” だけでその場の空気を全て自分色に染め上げるマシュー・マコノヒーのオーラを上回るような決め台詞を用意すべきだった。

 

あとは、ほんの少しでいいのでブルックの出番も欲しかった。ケリー・マクギリスは『 トップガン マーヴェリック 』にとても出演できないと自己判断したそうだが、コディ・ホーンはギャラで揉めたりしたのだろうか。

 

総評

青春との盛大な決別、そのほろ苦さが存分に味わえる。一方で、修学旅行的な楽しさもある。ロードムービーとしても青春映画としても、非常に良い仕上がりになっている。女性のみならず、30代以上の男性も、本作を通じて自分の人生を見つめ直すことができる。もちろん単純に男性ストリッパーが大いに羽目を外す映画として観賞しても構わない。むしろ、若い世代はそういう見方をすべきかもしれない。そこから10年後に本作を観ることで、自らの成長や成熟を感じることもあるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

ride

仮面ライダーのライダーは ride から来ている。意味は「乗る」だが、これは名詞。劇中ではしばしば last ride という形で使われていた。プロレスラーのアンダーテイカーの決め技の一つだが、実際は You’re in for a ride. の ride に「最後の」の last がついたもの。ride には「何か楽しいこと、エキサイティングなこと」という意味もある。 マイクたちの言う our last ride というのは、みんなでやる最後のバカ騒ぎ的な意味なのだ。 

 

次に劇症鑑賞したい映画

『 シャイロックの子供たち 』
『 マジック・マイク ラストダンス 』
『 湯道 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, アンバー・ハード, チャニング・テイタム, ドナルド・グローヴァー, 監督:グレゴリー・ジェイコブズ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 青春Leave a Comment on 『 マジック・マイク XXL 』 -青春に別れを告げるロードトリップ-

『 マジック・マイク 』 -自分探しの青春映画-

Posted on 2023年3月2日 by cool-jupiter

マジック・マイク 70点
2023年2月28日 WOWOW録画にて鑑賞
出演:チャニング・テイタム マシュー・マコノヒー アレックス・ペティファー コディ・ホーン
監督:スティーブン・ソダーバーグ

『 マジック・マイク ラストダンス 』の予習のために再鑑賞。

 

あらすじ

日雇いの現場仕事をしているマイク(チャニング・テイタム)は現場でアダム(アレックス・ペティファー)と知り合う。ストリッパーとして働くマイクは、クラブで偶然、アダムと出会い、自分のクラブに引き入れる。アダムはそこで思わぬ才能を見せ、頭角を現わしていく。一方、マイクはアダムの姉のブルック(コディ・ホーン)と知り合い、自分の夢について真剣に考えるようになっていき・・・

 

ポジティブ・サイド

ダンスシーンがどれもキレッキレ。チャニング・テイタムの athleticism はハリウッドでも随一だろう。『 トップガン マーヴェリック 』のBlu rayを無造作に再生していることが多いが、OneRepublic の ”I Ain’t Worried” をBGMに皆がビーチでフットボールするシーンになると、Jovian妻は「サービスシーン?」と言って、そこだけ観に来る。

 

マシュー・マコノヒーがクラブのオーナーとして圧倒的な存在感を放っている。脳内麻薬ドバドバ状態で、ジムでアダムにストリップのあれこれを指南する様は本作のハイライトの一つ。そのアダムが、何もせず、ただ夢物語にうつつを抜かす若造だったのが、ストリップによって自信をつけて、行動が変わっていく。これも一つの青春だろう。対照的に、アダムを引き入れたマイクは、徐々に自分の本当にやりたい仕事、家具の制作と販売を実現するために、銀行に融資を申し込む。しかし悲しいかな、現金収入しかないために銀行の信用が得られず、融資は得られず。夢を実現させたいのに、現実がそこに立ちはだかる。これも一つの青春の形か。

 

そう、本作は陽キャの男性ストリッパーたちがヒャッハーする青春映画であると同時に、「若く美しい時期は永遠には続かない」という現実と折り合いをつけようとするタイプの青春映画でもある。日本でもモラトリアム期間がどんどん長くなっているが、それはアメリカでも同じらしい。若さは無敵の武器になりうるが、失ってしまうと「ただの人」になってしまう。この事実を受け入れるのは結構難しい。いつまでも自分を「若い」と思い込んで、気が付けば会社の後輩たちから眉を顰められている、というオッサン連中はJovian含め日本に軽く数十万人はいるだろう。

 

それにしてもマイク、良い人すぎるなあ。アダムが若気の無分別で盛大にやらかした後も、兄貴分としてしっかりフォロー。そのことを知らないブルックに厳しいことを言われても、ぐっと飲み込んで反論しない。男やで。

 

マイアミに旅立つ直前に、マイクがブルックに吐露する”It’s what I do, but it’s not who I am.” =「あれは俺の仕事だが、俺の人格じゃない」というのは、『 トップガン マーヴェリック 』でマーヴェリックが”I’m a fighter pilot, a naval aviator. It’s not what I am. It’s who I am.” =「僕は戦闘機パイロットで海軍の飛行機乗りだ。それは職業じゃなくて、僕そのものだ」というセリフと対になっている。マーヴェリックは自己実現を果たしているが、マイクはまだなのだ。この自分になるということ、(英語ではしばしば Be you. と言う)その過程での成功や失敗を描く映画が青春ジャンルに入るのだろうが、本作はそれを男性ストリッパーの視点から描いたところがユニーク。女性はもちろん、男性にも勧められる。オッサンなら更に良し。何者かになろうともがく若者の姿は、それだけで尊く美しい。 

 

ネガティブ・サイド

マイク、アダム、ダラス以外のストリッパー連中の描写がアンバランスだった。ターザンは最初にアダムをからかうところだけ、ケンは自分の奥さんのおっぱいを触らせようとするところぐらいか。せっかくなら個性的な脇役連中にも、もう少しスポットライトを当ててほしかった(だからこそ続編があるのだろうが)。

 

ブルックが病院で働くシーンが少しあっても良かったのではないか。夜のクラブで浮世の憂さを晴らす女性たちがいる一方で、自分の仕事や人生、他者や社会にしっかり向き合っている女性がいる。ブルックは後者である、という描写があれば、マイクの生き方とのコントラストが際立ったものと思う。

 

総評

久しぶりに観たが面白い。一時期、『 ドン・ジョン 』とこれをBGM代わりに再生していた時期もあったが、不惑を過ぎて再鑑賞することで、マイクたちの刹那的な生き方の裏にある、確たる人生を掴めるのかどうか分からないという不安や苦悩により強く共感できるようになった。ジャニーズに忖度せず、とことん追い込んで指導・演出できる監督と良い脚本があれば、ジャニタレでリメイクしても良いのでは?無理か・・・

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

My hands are tied.

マイクが融資を頼んだ銀行員の台詞。直訳すれば「私の両手は縛られている」だが、実際の意味は「私には何もできない」、「私にできることはない」のような感じか。『 グレイテスト・ショーマン 』の “Rewrite The Stars” の歌詞の最後はこれである。 仕事などで自分にできることがなくなってしまった時、My hands are tied. と言ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』
『 マジック・マイク ラストダンス 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, アレックス・ペティファー, コディ・ホーン, チャニング・テイタム, マシュー・マコノヒー, 監督:スティーブン・ソダーバーグ, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズ, 配給会社:ブロードメディア・スタジオ, 青春Leave a Comment on 『 マジック・マイク 』 -自分探しの青春映画-

『 別れる決心 』 -歪んだ純愛-

Posted on 2023年2月23日 by cool-jupiter

別れる決心 70点
2023年2月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:パク・ヘイル タン・ウェイ
監督:パク・チャヌク

大学の追試や試験代替課題の採点と新年度の準備と研修ラッシュ。ここから1か月半はまさに繁忙期。しばらく簡易レビュー続きになるか。

 

あらすじ

刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が山頂から転落死した事件を捜査していた。殺人の可能性を見出したヘジュンは、男性の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑惑の眼差しを向ける。しかし彼女にはアリバイがあった。捜査を進めるうちに、強くしなやかに生きるソレに、ヘジュンは徐々に惹かれていき・・・

ポジティブ・サイド

タン・ウェイの妖艶さに尽きる。別にきわどい露出や激しいラブシーンがあるわけではないが(ヘジュンと奥さんのセックスシーンはある)、その femme fatal ぶりには魅了されざるを得ない。理解したいのに理解できない。いや、理解できるが間接的にしか理解できないという刑事ヘジュンと容疑者ソレの距離感が絶妙。時に使用されるスマホの翻訳機能が二人の間の越えがたい、しかし超えられないことはないという壁を象徴している。

 

パク・チャヌクといえば『 オールド・ボーイ 』のようなエロスとバイオレンスが持ち味。しかし、本作のエロスは実に控えめ。バイオレンスなシーンもあるにはあるが、青あざと流血に彩られるようなものでもない。ヘジュンが捜査のために一方的に室内のソレを覗くシーンの演出は見事だった。こうやって、いつの間にか容疑者に同化してしまう、というのは実際にありえそうに感じた。

 

誰かが死ねば、あの刑事がやって来る。あるいは、何らかの謎さえあれば、あの男はやってくる。これをサイコパスの思考と見るか、それとも究極の愛情と見るか。セックスする相手を愛しているのか、それとも愛しているからこそセックスしないのか。様々な問いが渦巻く中、女たちは別れる決心をする。なんとも苦みと深みのある作品だった。

 

ネガティブ・サイド

実質的に二部作的な構成になっているが、これをもうちょっと縮めて2時間ちょうどにはできなかったか。

 

殺人事件そのものの捜査の描写が弱い。ヘジュンが捜査に憑りつかれているのは分かるが、客観的に見て「警部、ちょっとおかしいですよ」と言ってくれるキャラが後半になってはじめて現れるのには違和感を覚えた。

 

総評

韓国映画らしいと言えば韓国映画らしいが、パク・チャヌク映画らしいかと言われれば、あまりそうではない。それでも、巨匠の新境地と言うか、見せないことで想像力を刺激する、あるいは直接的にではなくシンボルを通じて見せるという手法に唸らされることが多かった。もう少しコンパクトにまとめられていれば、韓国映画ファン以外にも勧められる。逆に言えば、韓国映画ファンならばチケット代の価値は十分に得られる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

韓国映画ではしばしば夫婦が互いに「ヨボ」と言って呼びかける。日本語で言うところの「あなた」や「なあ」などに当たるらしい。劇中のヘジュンが時々発する言葉だが、この言葉ひとつで距離感が近くなったり遠くなったり感じるのだから、人間関係、就中、夫婦の関係というものは難しい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, タン・ウェイ, パク・ヘイル, ラブロマンス, 監督:パク・チャヌク, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 別れる決心 』 -歪んだ純愛-

『 対峙 』 -緊迫の対話劇-

Posted on 2023年2月20日 by cool-jupiter

対峙 75点
2023年2月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェイソン・アイザックス マーサ・プリンプトン リード・バーニー アン・ダウド
監督:フラン・クランツ

日本は犯罪者だけではなく、その家族にも異様に厳しいが、犯罪大国アメリカはそのあたりどうなのか。本作は非常に緊迫感のある対話劇であった。

 

あらすじ

高校生による銃乱射事件が発生。多くの生徒が死亡し、犯人も図書室で自らを撃って死亡した。事件から数年後、被害者の息子の父ジェイ(ジェイソン・アイザックス)と母ゲイル(マーサ・プリンプトン)はセラピストの勧めにより、とある教会で加害者の父リチャード(リード・バーニー)と母リンダ(アン・ダウド)と出会い、対話を持つことに・・・

ポジティブ・サイド

4人の親たちの台詞のみが部屋に響く。そこに派手な効果音や観る側の情緒を揺さぶるようなBGMは一切ない。これにより、ドキュメンタリー的な作品とは一味違うリアリティのある作品に仕上がっている。カメラワークも、序盤はひたすら定点カメラからの映像で、ここはドキュメンタリー的に感じる。しかし、終盤からは手振れのあるカメラワークとなり、まるで観ている自分もその場にいるかのように感じさせられた。

 

肝心のストーリーはどうか。非常に珍しい。低予算映画ほど台詞だらけになりがちだが、本作は演じる役者たちが、言葉に魂を乗せている。愛する者を失った者の悲嘆や、理不尽な死に対する怒りなどが、観客に存分に伝わってくる。

 

本作の特徴として「見せない」ということが挙げられる。数々の写真のやりとりがなされるが、どれ一枚として映されることはない。また、悲惨極まりない銃乱射事件やその余波についても大いに語られるが、回想シーンも全くない。本作は観る側の想像力を信頼している。それは、そのまま「あなたが被害者の親になったとしたら?」、「あなたが加害者の親になったとしたら?」という問いにつながっている。

 

この被害者の両親と加害者の両親が出会い、言葉を交わすことの意味とは何か。ここで対峙する彼ら彼女らの言葉について語るのは無粋だろう。なので、ちょっと違う角度から。本作の原題は Mass である。これは日本語で「ミサ」の意。Jovianは一応、国際基督教大学で宗教学(といってもキリスト教ではなく古代東洋思想史だったが)を専攻していたし、先輩後輩同級生にはキリスト者がたくさんいたし、そんな学生やOYRと呼ばれる留学生たちとミサに出たこともある。ミサとはめちゃくちゃ分かりやすく言うと、人間関係の完成である。

 

キリスト教の教えの一つに「汝の敵を愛せ」というものがある(余談だが、国際基督教大学から割りと近い府中市には「酒は人類の敵である。汝の敵を愛せ」という看板を掲げた酒屋があった)。もちろん、劇中で誰かが Love your enemies などと言うわけではない。しかし、舞台が教会でタイトルが「ミサ」ということは、本作が提示するひとつの結論は融和であると言える。馴染みのある人は多くないかもしれないが、本作を鑑賞する際はキリスト教的価値観を少しだけ意識してみてほしい。

 

ネガティブ・サイド

オチが弱いというか、アメリカ人的な死生観というか人生観というか、そういったものは結局『 ウインド・リバー 』で開陳されたものと何一つ変わらない。結局のところ、アメリカ人の精神に刻まれた陰影の濃さは、昔も今もあまり変わらないということなのだろう。

 

序盤のジェイとゲイルの車内の会話はカットしてよかった。同様に最後の最後にリンダによって語られるエピソードも不要であると感じた。見せないことで想像させる手法を貫いたのだから、語らないことで想像させる手法も貫くべきだった。

 

総評

非常にユニークな作品。ひたすら語りで進んでいくが、その言葉の一つひとつが非常に重い。まるで舞台劇を観ているかのように感じられる。日本をはじめとする東洋では、個人の罪によって三族皆殺しがありうる。過激極まりない考え方だが、この思想は現代にも残っている。高畑淳子がとっくに成人した息子の犯罪でコテンパンに叩かれたのは記憶に新しい。家族が犯罪加害者になってしまった、あるいは犯罪被害者になってしまった時、自分は何に、どのように向き合うべきなのか。それを示唆する、非常に現代的な作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

in hindsight

「今にして思えば」、「後から思い起こしてみると」のような意味。ほぼ同じ意味の表現として in retrospect もあるが、こちらの方が少しフォーマルな印象がある。英語中級者なら知っておきたい表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, アン・ダウド, サスペンス, ジェイソン・アイザックス, ヒューマンドラマ, マーサ・プリンプトン, リード・バーニー, 監督:フラン・クランツ, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 対峙 』 -緊迫の対話劇-

『 イニシェリン島の精霊 』 -内戦の擬人化劇-

Posted on 2023年2月13日 by cool-jupiter

イニシェリン島の精霊 75点
2023年2月11日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:コリン・ファレル ブレンダン・グリーソン ケリー・コンドン バリー・コーガン
監督:マーティン・マクドナー

カナダ人元同僚が絶賛していたのでチケットを購入。『 スリー・ビルボード 』には及ばないが、佳作であると言える。

 

あらすじ

1923年、イニシェリン島。パードリック(コリン・ファレル)は親友コルム(ブレンダン・グリーソン)から一方的に絶交を宣言される。パードリックは自分に何か至らぬことがあっただろうと真摯にコルムに謝罪するが、コルムは「これ以上関わるなら自分の指を切り落とす」とまで宣言して・・・

ポジティブ・サイド

イギリス映画の特徴である乾いた空気感は本作でも健在。対照的に人間関係は非常にウェットである。田舎の特徴と言ってしまえばそれまでだが、この島に登場する人々は老いも若きも他人との距離が近い。というか距離がない。プライベートな領域に遠慮会釈なく踏み込んでくる。こうした島だからこそ、コルムの突然の絶交宣言にはパードリックのみならず周囲の人間も困惑させられる。

 

絶交とはいうものの、パードリックとコルムはそれなりに言葉を交わせる。絶交とは?と観ている側が疑問に思い始める頃に、コルムは有言実行、自らの指を切り落とす。まさに衝撃の展開となるわけだが、パードリックはそこで怯まない。それでもコルムとの友情を取り戻そうともがく。だがコルムは全く応えない。当てつけのように、島を訪れた音大生たちと夜な夜なパブで交流を持つ。このあたりからパードリックも変わり始めていく。コルムとの友情ではなく対立を選んでいく。その過程で、コルムが音大生と交流し始めたように、パードリックも横暴な経験の息子ドミニク(バリー・コーガン)と奇妙な交流を持っていたが、その関係も壊れていく。妹のシボーン(ケリー・コンドン)もやがて島から去っていく。

 

コルムとパードリックの対立は、最後には『 スリー・ビルボード 』並みの惨事につながっていく。おかしなもので、人間同士がどこまでも対立しても、それに巻き込まれる動物に対しては、コルムもパードリックもお互いに人間らしさというか優しさを見せる。人間らしさとは何なのかと考えさせられる。Homo homini lupus. 人は人に狼という言葉を思い出した。また、パブの男たちが「昔は敵と言えばイングランド人だったが、今ではIRAだか政府軍だかで、意味が分からない」と言っていた。何のことはない台詞かもしれないが、当事者ではない者だと、昔も今も洋の東西を問わず、人間の意識はこの程度であるということを痛烈に皮肉っていると感じた。たとえばタリバンと聞いて、2001年以前にどれだけの人が認識できただろうか。Bellum omnium contra omnes. 万人の万人に対する闘争と言うが、人間は常に争うものなのか。そしてその争いには周囲は無関心なのか。そして争っている者同士の関係はいったん変質してしまえば、元には戻らない。コルムが指をなくしても、コルムはコルムである。たとえパードリックの良き友であったコルムではなくなってもコルムはコルムなのだ。国民を多少戦争で死なせても、国家の政体は変わらないのか。昔のアイルランドではなく今日のロシアを見ているとそう思えてくる。

 

コリン・ファレルの演技が絶品。100年前のアイルランドの片田舎の退屈な男をまさに体現した。対峙するブレンダン・グリーソンも偏屈ジジイを怪演。憎悪とは異なる感情から絶交するという難しい役どころを見事に解釈したと感じる。他に演技面で光ったのはバリー・コーガン。ここ数年で急激に頭角を現しつつある。本作のちょっとおかしな青年という役は、『 母なる証明 』のウォンビンのそれに匹敵するほどに感じた。

 

『 スリー・ビルボード 』が個人の赦しの物語であったとするなら、本作はその反対、つまり国家の対立を擬人化したものと言えるかもしれない。ロシアとウクライナの戦争開始から一年になんなんとし、台湾有事やら防衛費倍増やらと日本を取り巻く環境も激変している。イニシェリン島の精霊は世界のどこにでもいるのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

ドミニクのたどる運命というか、彼の結末が物悲しい。事故なのか、それとも自分の意志なのか。そこをあいまいにしたところに不満を感じる。ドミニクは、とある自分の行動の結果にとことん絶望したというシーンを入れてほしかった。そうすればイニシェリン島という場所の閉塞感が更に強調されたものと思う。

 

イニシェリン島のバンシーを体現していたと思われる黒衣の老婆のキャラは不要だったように感じた。

 

総評

内戦と聞くと、職業柄か個人的な嗜好からか、どうしてもアメリカ南北戦争が思い浮かぶ。が、アメリカが The United States of America であるように、英国も The United Kingdom である。『 二人の女王 メアリーとエリザベス 』から歴史が分かるように、彼の国はバラバラの国が一つにまとまっているのだ。鑑賞時にはそうした背景を知っておく必要がある。『 ウルフウォーカー 』は、ローマやイングランドに攻め込まれるアイルランドの謂いになっていたが、本作のコルムとパードリックの関係は、単なる個人同士の諍いではなく、内戦や国家間の戦争の愚かしさを傍観するしかないという無力感を味わわせてくれる。なんとも疲れる映画である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

There goes ~

~がなくなる、~がダメになる、の意。劇中では There goes that theory. = その理論はダメだ、のように使われていた。

There goes my PC. = PCが壊れた
There goes my money. = カネがなくなった

のように、結構なんにでも使える表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』
『 対峙 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イギリス, ケリー・コンドン, コリン・ファレル, バリー・コーガン, ヒューマンドラマ, ブレンダン・グリーソン, 監督:マーティン・マクドナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 イニシェリン島の精霊 』 -内戦の擬人化劇-

『 FALL フォール 』 -シチュエーション・スリラーの秀作-

Posted on 2023年2月8日2023年2月8日 by cool-jupiter

FALL フォール 75点
2023年2月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレイス・キャロライン・カリー ヴァージニア・ガードナー ジェフリー・ディーン・モーガン
監督:スコット・マン

妻が観たいというのでチケット購入。個人的には優先順位は低い作品だったが、予想以上に面白かった。

 

あらすじ

ベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)は、フリークライミング中の夫の事故死の悲嘆から抜け出せずにいた。事故から一年後、デンジャーDとして活躍する親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)が訪問してくる。夫の死を乗り越えるために、高さ600メートルの旧テレビ塔の頂上まで昇ろうと誘ってきて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

高さ600メートルは想像しがたい。東京スカイツリーと言われても、関西人にはピンと来ない。しかし、梅田のスカイビルの3倍以上の高さと言われるとギョッとするし、あべのハルカスの展望台の2倍の高さと言われると冷や汗をかいてしまう。高所恐怖症の人がいる反面、高いところが怖くない人もいる。しかし、本作の描く高所に恐怖を感じない人はいないはずだ。本国のキャッチコピーの通り、Fear reaches new heights. である。

 

トレーラーの時点では承認欲求モンスターの女子二人が繰り広げる迷惑劇だと思い込んでいたが、『 フリーソロ 』とまでは行かないまでも、クライミングのバックグラウンドがあることを描いてくれたのは良かった。高いところに昇るというのは、それだけでかなり危険な行為なのだ。

 

テレビ塔の頂上につくまでの描写も不穏である。振動で揺さぶられて緩くなったり外れてしまうネジなどをこと細かく映すことで、いつベッキーとハンターは窮地に陥るのか、とサスペンスを盛り上げていく。冷静に考えれば頂上にたどり着くまではピンチになるはずがないのだが、観ている間は結構ハラハラドキドキさせられた。スコット・マン監督の手腕はお見事。

 

頂上に到達するも、梯子が壊れて降りられない。電波もない。人影もない。さあ、どうする?本作はスリラーであると同時にサバイバル映画でもある。水が少量で食い物なし。トイレもなし。ベッドも無し。着替えも無し。二人が持っているものを最大限に使って、なんとか状況を打開していこうとあがく様は素直に応援したくなるし、試みが上手く行きそうで上手く行かないという展開の連続で非常に疲れる。そんな中で、二人の間に思わぬ不協和音も聞こえてくる。状況だけでも非常にサスペンスフルなのに、ここにきて人間関係までもが・・・ ここから先の展開は是非劇場で確かめられたし。

 

サバイバルの先にはホラー展開も待っている。高度600メートルで何が襲ってくるのか?とも感じたが、その正体は序盤で明らかにされている。これには純粋に恐怖を感じた。逃げ回ろうにも逃げられない。文字通り、一歩間違えれば転落死するのだから。だが本作はある意味で『 127時間 』も真っ青の展開で主人公を生かす。諦めなければ人間ここまで出来るのか、とホラーと人間賛歌を同時に行うという離れ業も見せてくれる。これもぜひ劇場で確認されたい。本作鑑賞後、しばらく高層ビルには登りたくなくなること請け合いである。

 

ネガティブ・サイド

物語にケチをつけるとすれば、最後の最後の救出劇がすべて省略されていたところか。

 

『 海底47m 』のスタッフが再集結、みたいな宣伝は不要に思う。いや、まあ宣伝側の意図は分かるが、おかげで劇中のとある展開が予想できたというか、あっさり見破れてしまった。

 

字幕翻訳者にも喝。ベッキーの好きなWWEレスラーの名前がバウティスタになっていたが、それは役者としての名前。レスラーとしての名前はバティスタだ。

 

最後の最後、Let’s go home. は無いわ・・・。普通に警察に逮捕される案件やろ。

 

総評

女子二人だけで、ここまで観る側をグイグイ引っ張り続ける力を持った作品は近年だと『 17歳の瞳に映る世界 』と『 Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バック 』ぐらいか。スリラーとしても、これでもかと観客をハラハラドキドキさせ続けてくれて、まさにサービス満点。この恐怖と緊迫感はまさに劇場の大画面と大音響で味わうべきだ。ぜひチケット購入を!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You got this.

『 トップガン マーヴェリック 』(追いトップガン6回目)でも紹介した表現。You can do this. の意味。劇中ではハンターが何度も何度もベッキーをこう言って励ます。日常でも職場でも使える表現。ぜひ知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, イギリス, ヴァージニア・ガードナー, グレイス・キャロライン・カリー, ジェフリー・ディーン・モーガン, スリラー, 監督:スコット・マン, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 FALL フォール 』 -シチュエーション・スリラーの秀作-

『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』 -コメディではなくシリアスドラマ-

Posted on 2023年2月6日 by cool-jupiter

グッドバイ、バッドマガジンズ 70点
2023年2月4日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:杏花
監督:横山翔一

シネ・リーブル梅田で予告編を何度か観て、面白そうだと感じたのでチケット購入。コメディ要素はあるものの、結構シリアスな人間ドラマに仕上がっていた。

 

あらすじ

女性誌編集を希望しながらも、男性向け成人誌の編集で採用された詩織(杏花)。卑猥な画像や物品に囲まれたオフィスで仕方なく働くも、女性編集者の澤木やライターのハルに影響を受け、徐々に仕事に打ち込むようになっていく。そして女性向け成人誌の創刊というチャンスを掴むことになるが・・・

ポジティブ・サイド

東京オリンピックに関しては2023年の今でも超巨額の談合やら何やらが今も捜査されているが、その巨大スポーツ利権イベントの裏でコンビニの店頭から消えたエロ雑誌とそれらを作る人々のドラマに焦点を当てたのはかなり目の付け所が秀逸であると感じる。

 

まずは主演の杏花の演技が素晴らしい。就職難の中、コネで雑誌社に就職するも、配属先は男性向け成人誌の編集部門。うら若き乙女にとってかなりアウェイの職場だろう。死んだ魚の目で来る日も来る日も女性のヌードがプリントされた紙をシュレッダーにかけていく日々。新人は雑用が主な仕事とはいえ、これはなかなかキツイ。しかしわずか数か月でたくましく成長する詩織。後輩社員に変わってキャッチコピーを考える様は圧巻。電光石火の早業で、次々に刺激的なエロの見出し語を生み出していく詩織の成長に、オッサンであるJovianは目頭が熱くなった。

 

詩織が成長できたのも自己研鑽だけではなく、周囲の仕事人の助けもある。落ち目のエロ本業界にあっても、良いものを作ればユーザーはついてくるという信念を持った仕事人がいるからこそ。逆にそうした人々が独立を志向して会社を去っていくのがリアルだった。残された面々も、しばしば営業と対立。これはどこの業界のどこの会社でも見られる光景だろう。うちのような語学教育会社でも、営業がクライアントに「弊社なら可能です!」とか堂々と宣言して、レッスンプランを考えたり講師に研修を実施するJovianのような教務担当が頭を抱えるというのは、日常茶飯事とまで言わないが、年に2~3回はある(口八丁の営業、ホンマええ加減にせえよ・・・)。

 

本作がお仕事ムービーとして優れている点は、仕事で盛大にやらかしてしまう展開を見せてくれるところ。ここで某キャラがやらかすミスは、サラリーマン的には洒落にならない類のものである。ミスの発生機序やその結果がもたらす影響が非常にリアルだった。

 

衰退産業にあっても個として雄々しく生きていくことができる。題材こそエロ本だが、そこに込められたメッセージは万人向けである。

ネガティブ・サイド

「テープがなければ中身で戦えた」という台詞には共感できなかった。昔も今も書籍やレンタルビデオ、レンタルDVDは中身ではなく外側で勝負してきたはず。飲食店なんかもそう。世の中の製品というのは、まずは外側で勝負しないと始まらない。このあたりを描いた小説に『 装幀室のおしごと。 ~本の表情つくりませんか?~ 』がある。

 

物語の軸が終始定まらなかった。仕事を通じて詩織が成長していくビルドゥングスロマンなのか、斜陽産業で頑張る人々を活写するお仕事ムービーなのか。どちらも追求するのではなく、どちらかに振り切るべきだった。途中からエロ雑誌の存在意義ではなく、人は何故セックスするのかにテーマが変質していったのも気になる。最後の展開は不要に思えた。

 

次々と社員が退社していく中、クビになる人もいるのだが、「え?クビだけですむの?社会的に抹殺されへんの?」という展開には少々鼻白んだ。

 

総評

雑誌の栄枯盛衰を描く物語としては『 SCOOP! 』や『 騙し絵の牙 』を上回る面白さ。全体を通して観るとトーンが一定しないが、一瞬一瞬の面白さはなかなかのもの。主演の杏花の成長は、この職場、この業界だからこそ、万人が応援できるストーリーに仕上がっている(最後以外は)。PG12作品だが、間違っても高校生あたりがデートムービーにできるものではない。大学生でもどうだろうか。35歳以上なら男性でも女性でも、お仕事ムービーとしてもエロ本の歴史ものとしても楽しめるはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

dirty magazines

タイトルにあるバッドマガジンズというのは低品質な雑誌、あるいはコンテンツが邪悪な雑誌という意味。英語ではエロ雑誌、成人雑誌は概して dirty magazines と言う。別に知っておく必要はないだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 杏花, 監督:横山翔一, 配給会社:日活Leave a Comment on 『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』 -コメディではなくシリアスドラマ-

『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

Posted on 2023年1月31日 by cool-jupiter

宇宙戦争(1953) 70点
2023年1月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジーン・バリー アン・ロビンソン
監督:バイロン・ハスキン

『 そばかす 』でトム・クルーズの『 宇宙戦争(2005) 』に言及されていたのを聞いて、再鑑賞しようとTSUTAYAを訪れる。そのDVDの隣に元ネタがあったので、そちらも併せてレンタルしてきた。

 

あらすじ

ロサンゼルス近郊に隕石が落下。天文物理学者のクレイトン・フォレスター(バリー・ジーン)は、調査に乗り出すも、隕石の正体は分からない。やがて、隕石の中から謎の浮遊マシーンが出現し、周囲の人間や建造物を焼き払っていく。隕石は世界各地に落ち、マシーンも続々と現れ、人類は絶体絶命の危機に落ちるが・・・

 

ポジティブ・サイド

古き良き、という表現は個人的にはあまり好まないのだが、本作に関してはまさに古き良き特撮映画の香りがプンプンする。何もかもがCGである現代映画に比べると、大道具や小道具が活き活きと仕事をしていた姿が目に浮かぶ。その後の東宝の『 ゴジラ 』、『 モスラ 』、『 ラドン 』などの大怪獣特撮映画は、本作から多大なインスピレーションを得ているのは間違いない。隕石状でやって来る侵略者というのはキングギドラだ。

 

浮遊マシーンの造形や、そこから伸びてくるチューブの造形もいい。このデザインはなんとなくだが、ディズニーの隠れた秀作『 ブラックホール 』のロボット、マクシミリアンに引き継がれているようにも思う。

 

火星人の侵攻に対するアメリカ人の反応にもリアリティーがある。当時、内戦以外でアメリカ国内が戦場になったことはないが、本作で描かれる逃げ惑う人々、暴徒と化す人々、教会で従容と死を待つ人々の姿には迫真性があった。

 

米軍が徹底抗戦し、浮遊マシーンがケロッとしている様も特撮の粋という感じがした。原爆まで持ち出すのは、まさに冷戦前夜という感じだが、全翼の爆撃機は実にかっこよかった。核攻撃を含む米軍の全火力が無意味だったというシークエンスは『 インデペンデンス・デイ 』に引き継がれたように思う。

 

もはや一巻の終わり・・・というところで、火星人が地球の微生物になすすべなく侵され、死んでいくという描写も、コロナ禍を経験した我々の目には新鮮かつ説得力あるものとして映る。

ネガティブ・サイド

冒頭で金星がスキップされたのは何故?

 

レイチェルが特に何か大きな役割を果たすわけではないのがビミョーなところ。まあ、フォレスター博士自体も役立たずで終わってしまうのだが。

 

前線が破られた際に、後方に新たな防衛網を築きに向かった軍人さんはその後どうなったのだろう?

 

総評

特撮ファンならぜひ鑑賞しよう。非常にオーガニックな映像を楽しめるだろう。SFファンも鑑賞すべきであると思う。人間ドラマを楽しみたい向きにはお勧めできない。ただ、コロナ禍によって、目に見えない微生物やウィルスの存在を否応なく意識させられるようになった現代、本作の価値が再び高まっているのは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Take my word for it.

私の言葉をそのまま受け取ってくれ、転じて「信じてくれ」、「本当なんだ」という意味になる。劇中では「早くワシントンに知らせて増援を呼んでくれ」というような台詞の前で使われていた。何か強調したいこと、強く主張したいことがある時に使いたい表現である。

 

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『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1950年代, B Rank, SF, アメリカ, アン・ロビンソン, ジーン・バリー, 監督:バイロン・ハスキンLeave a Comment on 『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

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