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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: B Rank

『 悪魔のいけにえ 』 -4Kデジタルリマスター鑑賞-

Posted on 2026年1月13日 by cool-jupiter

悪魔のいけにえ 75点
2026年1月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ガンナー・ハンセン
監督:トビー・フーパー

 

風邪で体調イマイチなので簡易レビュー。

あらすじ

サリー、ジェリー、フランクリン、カーク、パムの5人は、テキサス州のフランクリンの実家を目指す途上で屠殺場で働く男を乗せる。しかし男は不審な言動を見せ、果てはフランクリンをナイフで傷つける。男を放り出した5人は何とか目当ての館に到着するが・・・

ポジティブ・サイド

構成やらショットなど、既視感を覚えるものばかりだが、それは逆に本作がそれらのクリシェを生み出したということ。言い換えればこの分野の古典的な作品になっているということだ。

 

面白いのは、ボロボロの館ではなく、外見がきれいに整った館の方に殺人鬼が潜んでいるのは新鮮だった。

 

効果音もBGMもなく、いきなり殺されていく面々。このテンポの良さよ。グロ描写は一切なし。それでいて観る側が凄惨な殺人シーンを想起するのは、屠殺方法の話、動物や人間の骨、そしてチェーンソーの駆動音によるところが大きい。低予算ゆえの怪我の功名か。

 

結局、最も恐ろしいのは超自然的なホラーよりも、理解できない人間の方なのだ。ラストの荒れ狂うレザーフェイスで、『 母なる証明 』のラストシーンを思い出した。ポン・ジュノ監督が本作からインスピレーションを得ていたとしても何の不思議もない。アカデミー賞で監督賞を受賞した際にテキサス・チェーンソーに言及しているからだ。

ネガティブ・サイド

ほうきでペチペチ叩くシーンはギャグにしか見えなかった。

 

元焼肉屋としては、屠殺場で働く人々に偏見を与えかねない作品になっているところが気になった。

 

総評

4Kリマスターでなければ、おそらく夜の逃走と追跡シーンなどは、かなり見づらい絵になっていたのでは?その意味でも劇場鑑賞する価値はあると言える。『 13日の金曜日 』のジェイソンや『 ハロウィーン 』のマイケル・マイヤーズといった仮面の大男の原点はレザーフェイスにあり。今の目で見るとチープかもしれないが、古典だと思って鑑賞しよう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

have seen better days

直訳すれば「(人・物が)より良い日々をすでに見た」となるが、実際のニュアンスは「(人・物が)ピークを過ぎた」ということ。We’ve got to admit Nishikori has seen better days. =錦織の全盛期は終わったということを認めなければならない、のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 万事快調 オール・グリーンズ 』
『 とれ! 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1970年代, B Rank, アメリカ, ガンナー・ハンセン, ホラー, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 悪魔のいけにえ 』 -4Kデジタルリマスター鑑賞-

『 YADANG ヤダン 』 -裏切りと逆転の上質クライムドラマ-

Posted on 2026年1月13日2026年1月13日 by cool-jupiter

YADANG ヤダン 70点
2026年1月1月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:カン・ハヌル ユ・ヘジン パク・ヘジュン
監督:ファン・ビョングク

 

風邪でダウン中なので簡易レビュー。

あらすじ

麻薬犯罪者と司法取引を行い、情報を引き出すイ・ガンス(カン・ハヌル)は、地方検事のグァニ(ユ・ヘジン)と義兄弟となり、成果を挙げていく。しかし、警察を出し抜く形である大物を検察が逮捕したことで、事態は大きく動き・・・

ポジティブ・サイド

『 雨とあなたの物語 』の純朴な手紙男が、警察や麻薬の使用者、さらには売人までを手玉に取るヤダンとして大暴れ。副題が The Snitch で、これは密告者の意。『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』のアル・パチーノの最後の長広舌でも悪ガキ三人が snitches と呼ばれていた。とにかく麻薬の所持や使用で捕まった者と一種の司法取引を行い、売人や購入者のネットワーク情報と引き換えに罪を減じる取引を行うのがヤダンである。

 

検察、警察、麻薬常習者、麻薬流通者、そこに財閥の御曹司かつ次期大統領候補の息子が加わり、裏切りの連続と、そこからの大逆転が非常に痛快。脚本家たちはかなりの手練れである。

 

ネガティブ・サイド

『 オールド・ボーイ 』のチェ・ミンシクさながらに体を鍛えたガンスだが、腕っぷしは強くなっていなかったのは残念。

 

皇帝のキャラをもう少し深堀りする必要があったのでは?

 

総評

ユ・ヘジンの出演作はほぼ間違いなく面白いというジンクスは今回も守られた。韓国社会のダークな部分を存分に見せつけられるが、それを許さない人々の意志や、そうした闇に取り込まれた人々を救おうとする人々の善意もしっかりと描かれている。韓国らしい痛快なクライムドラマだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒョン

兄の意。何度か紹介した表現。日本でも兄貴分というように、必ずしも血のつながりがなくても使える。英語でも親しみを込めて brother と相手を呼ぶことがある。ただ英語の brother よりも、韓国語のヒョンの方が、日本語の兄貴、兄貴分には近いだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 この本を盗む者は 』
『 悪魔のいけにえ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, カン・ハヌル, クライムドラマ, パク・ヘジュン, ユ・ヘジン, 監督:ファン・ビョングク, 配給会社:ショウゲート, 韓国Leave a Comment on 『 YADANG ヤダン 』 -裏切りと逆転の上質クライムドラマ-

『 ボディビルダー  』 -エンディングに不満あり-

Posted on 2026年1月6日2026年1月6日 by cool-jupiter

ボディビルダー 70点
2026年1月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョナサン・メジャース
監督:イライジャ・バイナム

 

『 ジョーカー 』そっくりだと聞き、チケット購入。

あらすじ

片田舎で祖父と二人暮らしのキリアン・マドックス(ジョナサン・メジャース)は、ボディビルダーとして一花咲かせたいという願望を抱いていた。しかし、キリアンは怒りの感情のコントロールに難を抱えていて・・・



ポジティブ・サイド

非常に少ない登場人物だけで物語が進んでいく。まるでフランス映画的だ。しかし、そこにはミステリの風味もロマンスの予感もない。あるのはキリアンの非常に孤独な生活のみ。ストイックにボディビルに打ち込む姿には孤高という言葉も似合いそうだが、さにあらず。彼は孤独なのだ。

 

『 ジョーカー 』におけるアーサーと同じように、キリアンは両親に対して問題を抱え、好意を寄せる女性に対する接し方に問題があり、肝腎かなめのボディビルに対してもステロイドを使うという反則技を使っている。いくらハードにトレーニングをして、食事制限をしていても、これでは駄目だ。

 

『 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 』のフィギュアスケートもそうだが、評価がすべて他者の評価によって決まってしまう競技とは、なんと残酷であることか。得点競技ではなく採点競技の難しいところだ。すぐに How to make people like you などとググってしまうところに、彼の承認欲求以前の幼稚さが現れている。

 

キリアンの問題は至極簡単。自分が人を好きになれないから、人は自分を好きになってくれない。つまり、愛された経験の欠如によって歪んでしまった。あるいは子どものメンタルのまま、体だけが大きくなってしまった。子どもとは性と労働から疎外された者と社会学的に定義されるが、異性と付き合えない、セックスもできない、仕事もできないというキリアンはまさに体が大きいだけの子どもなのだ。何をやっても上手く行かず、怒りを爆発させても、そのしっぺ返しを食らう。彼は人生の弱者であり敗者である。

 

このあたりから物語は一気にジョーカー色を帯びてくる。なにもかもダメなキリアンの元に舞い込む一報。上向くかと思われた人生。しかし・・・ 『 ショーシャンクの空に 』では、ブルックスは娑婆になじめなかった。遅れて出てきたレッドも娑婆になじめず、命を絶とうとした。キリアンの選択は・・・  

 

ネガティブ・サイド

個人的にはラストの10分は蛇足。観る側を虚実皮膜のあわいに落とし込むような締めくくり方で十分だった。たとえば『 国宝 』で喜久雄が最後に目にしたのは、父親の死の情景と重なるきらめきだった。喜久雄は父親のように、あるいは俊介のようになったのか。それとも、その境地に達しただけなのか。その解釈は観る側に委ねられている。そういう結末の描き方を模索できなかったか。

 

時代設定はどうなっているのだろうか。2016年のコンペティションで云々かんぬんというセリフから、それ以降の時代だと思われるが、一方でアメリカンプロレスの話題の中でテイカーとケインの破壊兄弟が出てきたが、それは2000年前後。また、スマホが出てこない。たまに電話が出てきても、それはすべて固定電話。またYouTubeが存在しながらも、ボディビルの大会映像はすべてVHS。いったい、どういう世界線なのだろうか。

 

総評

レイトショーで鑑賞したのもあるだろうが、十数人ほどいた観客の中で女性はJovian妻一人だけ。あとはすべて中年男性だった。どこの劇場もこのような有様なのだろうか。人が悪に染まる要因は、元々のパーソナリティなのか、それとも環境なのか、それらの複合なのか、それ以外なのか。じっくりと見極めてみてほしい。間違ってもデートムービーだと思ってはいけない。本作ほどデートに向かない作品はない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go out with ~

~と一緒に外出する、転じて「~とデートする」の意味。文脈なしでも、ほぼ間違いなくデートの誘いだと解釈される表現。連れだって何かをしたい時、恋人、あるいは意中の相手には Do you want to go out with me? を、友人や同僚には Do you want to hang out with me? を使おう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 YADANG ヤダン 』
『 この本を盗む者は 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ジョナサン・メジャース, スリラー, 監督:イライジャ・バイナム, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 ボディビルダー  』 -エンディングに不満あり-

『 ナタ 魔童の大暴れ 』 -神仙妖魔の区別なし-

Posted on 2025年12月29日 by cool-jupiter

ナタ 魔童の大暴れ 75点
2025年12月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:田村睦心
監督:餃子

 

春ごろに一人で鑑賞したJovian妻曰はく「面白い」とのことだったのでチケット購入。確かに面白かった。

あらすじ

哪吒(田村睦心)は親友の敖丙の魂の消滅を防ぐために、仙人となり、その褒美をもって敖丙の肉体の元を得ようとする。師匠とともに崑崙山の先の仙境に赴いた哪吒は順調に試験をこなしていくが・・・

ポジティブ・サイド

冒頭で前作の内容をダイジェスト的に流してくれるのはありがたい。細かい部分はどうにかして前作を観るしかないのだが、とにかく哪吒と敖丙は『 RRR 』におけるラーマとビームのような関係だと思えばよい。無二の親友となった二人だが、実は戦い合う運命だった二人だと思えばよい。

 

そんな二人が、おそらく前作で肉体的に死亡してエンド、しかし本作はその直後、師匠が二人を肉体的によみがえらせようとするところから始まる。ディズニーアニメはほとんど観ないが、これはまさにディズニーおよびピクサーのノリではないか。ミニオンが出てきても違和感がなさそう。それが不思議に合う。というか、魔童たる哪吒の悲壮感と、それを隠そうとするために作った悪ガキ感にマッチしている。

 

序盤にお下劣かつお笑いシーンがあるが、実はこれが大いなる伏線。無意味なギャグが無意味ではなかった。

 

戦闘シーンは中国の武術と神仙もしくは妖魔の超能力のミックス。それを『 ドラゴンボール 』的に見せてくる。終盤の哪吒は明らかに超サイヤ人と漫画『 HUNTER×HUNTER 』のゴンさんを模しているとしか思えない。明らかにアメリカおよび日本を意識して作られているが、それが中国国内で超絶ヒットしたというのだから興味深い。現代中国人のテイストがそれだけ成熟しているのだろう。

 

最後の最後も『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』にも存在した一種のカタルシスのシーン。こういうのを見ると、儒教的・家父長的な価値観は現代中国にも根強く残っていて、しかし中国人は実はそれを打破したがっているようだ。日本もエンタメを通じて自身の想いをぶちまける、あるいは時代や社会の閉塞感を吹っ飛ばすような願望を込めるということをもっと行っていいし、この点は中国作品から学べるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

嘔吐はセーフだと思うが、いっぺんゲロしたものをもう一度食べようとするのはどうなのか。

 

『 封神演義 』の世界観の中で「完璧」という言葉が出てくるのは翻訳としていかがなものか。時代が全然違う。オリジナルの中国語でもそうなのだろうか。ストップなどの外来語を使うのも感心しない。これは吹替だけ?こちらもオリジナルがそうなっているのか?

 

総評

キャラ同士の人間関係や世界観を掴むのに苦労するが、ある程度理解してしまえば、あとはアクションを楽しむのみ。『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』では見られなかった、火尖槍で暴れる哪吒を堪能できる。文字通りの意味での哪吒の三面六臂の活躍が見られる。中国語で上映している劇場はないのだろうか。ぜひ隣に中国人の観客がいる状態で鑑賞してみたい。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

師父

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』で小黒や偽ムゲンが何度も発していた語。中国語を習っているJovian妻によると、ここで使われている父という漢字は必ずしも男性性を表しているわけではなく、技術や知識を時代に継がせていく役割を担う者という意味らしい。そして師母というのは、師匠の奥さんという意味になるそうな。中国語、難しい・・・

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 ボディビルダー  』
『 アバター ファイヤー・アンド・アッシュ  』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, ファンタジー, 中国, 田村睦心, 監督:餃子, 配給会社:面白映画Leave a Comment on 『 ナタ 魔童の大暴れ 』 -神仙妖魔の区別なし-

『 ナイトフラワー 』  -その母性は罪か-

Posted on 2025年12月22日2025年12月22日 by cool-jupiter

ナイトフラワー 70点
2025年12月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:北川景子 森田望智
監督:内田英治

 

アングラな雰囲気に惹かれ、チケット購入。

あらすじ

シングルマザーの夏希(北川景子)はバイトを掛け持ちするも生活に困窮。ある夜、違法薬物の売人から偶然に薬物を手に入れた夏希はそれを一万円で売ってしまう。そして、ふとしたことから知り合った格闘家の多摩恵(森田望智)と共に薬物の売人になることを決意して・・・

ポジティブ・サイド

シングルマザーの貧困率が5割だと報じられて久しい。そして(主に)元夫側の養育費未払い率も統計によっては9割に達するという。2024年に法改正され、今年2025年から養育費の未払い・不払いには強制執行がなされるようになったのは、蓋し良い変化だろう。しかし、本作の夏希の夫は逃げた。つまり書類上は夫婦のまま。これでは養育費は取れない。本作はそんな夏希の窮状と子育てのストレスを序盤から存分に見せつける。同じシングルマザーでも『 レッドシューズ 』とはそこが違った。

 

本作の一つのテーマに、貧困家庭と恵まれた家庭、そしてそうした家庭の親と子の関係性の対比がある。貧しい家の子がなんらかの才能に秀でていても、それを伸ばせる環境を与えるには結局財力がものを言う。芸術でも格闘技でもおなじこと。この世は結局カネなのか。本作はそれに対して明確にYesと答えつつも、カネでは決して得られないものがあることも鮮烈に描き出す。『 ヤクザと家族 THE FAMILY 』では現代に昭和的なヤクザの家族観をある意味で復活させたのが新鮮だったが、そうした価値観が普通の人々にまで及んできている、新しい形の連帯が望まれている、あるいは生まれていることを活写したのは本作の貢献の一つ。

 

メインのキャラクターの背景を掘り下げず、観る側の想像に委ねるのは吉と出れば凶と出ることもある。本作は吉。たとえば夏希が高校中退なのは何故か。明確な答えはない。ただし妊娠・出産のために中退したわけではない(年齢的に合わない)ことは分かるし、おそらく『 愛されなくても別に 』の宮田の母的な母親に育てられたであろうことは、実家に頼れないことからも想像がつく。そしてスーパーで働けば日用品や食品が従業員割引で買えることも知らない、つまりそんなバイト経験を持つ同級生や知り合い(地域の気の良いおばちゃんなど)とのつながりも持てなかったことが分かる。

 

そうした想像力を働かせることで、田中麗奈演じるもう一人の母親の心理が逆に手に取るようにわかる。非常に抑制された演技が、逆に過剰に見えるほどだった。このあたりの演出はさすがだと感じた。

 

自分および家族の幸せのためなら他者を不幸にすることを厭わないのは罪なのか。他者を不幸にする者は、別の他者によって不幸にされても文句は言えないのだろうか。そうしてまで追い求める幸福は現実なのか、それとも薬物が生み出す多幸感同様に虚構なのか。答えは月下美人のみぞ知る・・・

 

ネガティブ・サイド

母性をテーマにするのは結構だが、内田監督自身が一種のバイアスを今でもかなり引きずっているのだろうか。母性を婉曲的にではあるが、神話的に扱っているのはどうかと思う。ドラッグ製造と密売のボス的存在が「母親がまともなら自分はこうはならなかった」的に述懐するのは興ざめ。裏を返せば母親のせいで犯罪者になったと言っているのに等しく、それはもう母原病と同じで根拠がない、ただの難癖だ。

 

そんなボス的存在が素人の夏希にアジトの場所や顔を晒す?迂闊すぎるやろ・・・

 

田中麗奈演じる母親も、普通は探偵に調査プラス救出、または自分をそこに連れていってほしいと依頼するのが筋。渋川清彦演じる探偵も、なんでその写真をチョイスするのか。ホンマに元警察かいな・・・

 

総評

公開からしばらく経つのに劇場の入りはなかなか。ほとんどが女性で、10代はゼロ、20代はまばら、30~60代が大勢を占めていた。男性客は非常に少ない。それだけ本作および本作のレビューが訴えかける層がはっきりしているのだろう。社会の不条理と様々な母性を映し出す佳作であることは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

protect

多摩恵が夏希に言う「守ってやるよ」を英訳すると、I’ll protect you. となる。守るには、defendやguardなどの似た動詞があるが、protectは危険から守る、defendは攻撃から守る、guardは安全のために守るということ。野球の捕手や主審がプロテクターをつけるのは投球や打球が危ないから、サッカーやバスケのディフェンスは敵の攻撃に対する守備、ガードレールは交通安全ためにある、という感じで覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ナタ 魔童の大暴れ 』
『 星と月は天の穴 』
『 ボディビルダー  』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 北川景子, 日本, 森田望智, 監督:内田英治, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 ナイトフラワー 』  -その母性は罪か-

『 プレデター バッドランド 』 -Clan Over Family-

Posted on 2025年11月9日 by cool-jupiter

プレデター バッドランド 75点
2025年11月7日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ エル・ファニング
監督:ダン・トラクテンバーグ

 

配信のプレデター作品は観ていないが、予習としては『 プレデター 』、『 プレデター2 』で十分か。余裕があれば『 エイリアンVSプレデター 』と『 AVP2 エイリアンズVS.プレデター 』も鑑賞しておけばよい。ちなみに『 ザ・プレデター 』は不要である。

あらすじ

ヤウージャの若き戦士デク(ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ)は、弱者として父に切り捨てられそうなところを兄クウェイに助けられる。デクは自らの強さを証明するために、父ですらも恐れるカリスクをハントするため、惑星ゲンナに降り立つ。原生の危険生物に襲われながらも生き抜いていくデクは、謎のアンドロイドのティア(エル・ファニング)と出会い・・・

ポジティブ・サイド

プレデターの強さと狩りへの執着と、武士道的な精神性を冒頭の10分で描き切り、そこからは『 プロメテウス 』あるいは『 エイリアン:コヴェナント 』のように未知の世界の冒険となる。

 

デクがプレデター的な武器と戦闘術で生き残りつつも、それが通じない植物や巨大生物もおり、絶体絶命という瞬間にアンドロイドのティア登場と、ストーリー展開のテンポもいい。

 

プレデターの伝統的な武器を使い単独で戦っていたデクが、ある話をきっかけにティアやバドと共闘していくようになるのも面白いと感じた。ヤウージャの伝統的な強さの定義に当てはまらない自分が、ヤウージャの伝統的な方法でもって強さを証明しようとすることの矛盾をデクが感じ取り変化していくのは、デクのビルドゥングスロマンであり、多様性と異文化共生のメッセージを包括していた。

 

『 ブレードランナー2049 』あたりで、人間とアンドロイドの関係にさらに踏み込んだ考察を行ったリドリー・スコットやドゥニ・ヴィルヌーヴの路線を本作も共有している。ミッションを指定されたアンドロイドと、狩ることしか自身の存在を証明できないヤウージャには、それ以外の生き方を知らないという共通点がある。その二者が交わった時のケミストリーには大きな爽快感があった。

 

終盤の『 エイリアン2 』へのオマージュとなるべきシーンにはニヤリとさせられた。デクがそれほどの脅威の存在になったと認識されたということか。本作はデクの文学的かつ文字通りの意味での父殺しの物語であると同時に、『 エイリアン 』ユニバースにおける母たる存在と『 プレデター 』ユニバースにおける母たる存在のクロスオーバーも予感させてくれる。続編が今から待ち遠しい。

 

ネガティブ・サイド

ティアはヤウージャ語を解するが、他のアンドロイドはヤウージャ語を解さないというのはご都合主義に感じた。

 

ティアの下半身アクションは真新しかったが、感覚器を持たないのになぜバトルができるのか。アンドロイドの感覚器も顔面にあるということは劇中でも描写されていた通りではないか。

 

You’re one ugly motherfucker. や Get away from her, you bitch! のような印象的な one liner が欲しかった。

 

総評

これは傑作。AVPが失敗した、本当の意味での人間vsプレデターvsエイリアンにつなげてもいいし、そこにアンドロイドを加えた四つ巴でもいいし、あるいは人間・プレデター連合軍vsエイリアン・アンドロイド連合軍のような二勢力の対決でもいい。あるいは、それらをデクのような第三極が潰していく展開も面白そう。文学、およびそれにつらなるフィクションの世界では父殺し=patricideが一大テーマだったが、今後はそこに母殺しが提起されるのか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

prey

獲物、あるいは餌食の意味。I am prey to none! =俺は誰の獲物でもない!=俺は絶対的に駆る側だ!というヤウージャの信念が印象的だった。preyはもちろん、生態学などで被食者を表す語としても使われるが、プレデターのような戦闘種族が比ゆ的に使ってもOKである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』
『 もののけ姫 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アクション, アメリカ, エル・ファニング, ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ, 監督:ダン・トラクテンバーグ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 プレデター バッドランド 』 -Clan Over Family-

『 爆弾 』 -佐藤二朗のベストアクト-

Posted on 2025年11月2日 by cool-jupiter

爆弾 75点
2025年10月31日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:佐藤二朗 山田裕貴 渡部篤郎 染谷将太 
監督:永井聡

 

『 死刑にいたる病 』的な面白さを期待してチケット購入。その望みは叶えられた。

あらすじ

酔って暴れた酔っ払いの鈴木田吾作(佐藤二朗)を逮捕、取り調べしていく中で、刑事の等々力(染谷将太)は鈴木の言動に不穏な気配を感じとる。そんな中、鈴木が予言した爆発が実際に起こってしまい・・・

ポジティブ・サイド

東京各地にストーリーそのものは展開するも、大部分は取調室の内部で進行していく。その中で行われる刑事と被疑者の演技対決が心地よい。染谷将太、渡部篤郎、山田裕貴が佐藤二朗に対峙していき、全員が見事に立ち向かいつつ、巧みに佐藤二朗を引き立てた。といっても、佐藤自身も今回の役は『 さがす 』や『 あんのこと 』以上にダークで、自身の代表作になったと自負しているに違いない。

 

意味不明な問答の繰り返しに謎解きと心理戦を織り交ぜていく。それ自体はよくある手法だが、そこから導き出される「心の形」には唸らされた。警察官が家族や友人など、私=プライベートの部分を突かれると弱かったり、あるいは闇落ちしたりするのはハリウッドでは常套手段套手段だが、警察としての使命感や正義感の歪みをストレートに指摘してくる作品は珍しい。小説の映画化とはいえ、それが邦画で達成されたことは素直に喜びたいと思う。

 

いつも何かあれば怒鳴るだけの染谷将太が、非常に陰のあるキャラを演じていたのも好印象。何を考えているのかわからないが、職務上でリスペクトできる相手にはしっかりと向き合うという、一種のプロフェッショナリズムというか、ダンディズムを備えたキャラを演じきった。

 

対照的に、上司を立てつつも本当は自分の方が有能だという自負を隠さない類家というキャラも味わい深かった。「自分以外の人間が馬鹿に見える」という指摘を受けても、それを否定せずに飄々と受け流す。丸メガネをかけても、その炯々たる眼光はいっさい隠せていない。感情移入するには難しいキャラだが、だからこそ観る側は類家と鈴木の対決を文字通りに傍観者として見守るしかない。そこから生まれる謎とサスペンスは近年の邦画の中でも出色。

 

1回戦、2回戦、3回戦と対決を経るごとに謎が明かされ、そして謎が深まっていく。サスペンスがまったく途切れず、2時間超でもスイスイと鑑賞できた。類家と等々力の二人で続編というか、スピンオフを作ってほしい。そう思えるほど、ストーリーだけではなくキャラの魅力にもあふれた逸品だった。

 

ネガティブ・サイド

警察は事件の話を外でもしないし、家庭内でもしない。もちろん刑事も人の子で、家族には一般的な捜査の手法ぐらいは話すかもしれない。しかし警察という組織がどのような手順で動くのかなどを話すわけがない。

 

そもそも某キャラも家族を想っている描写を見せつつも、やってしまったことは家族を追い詰める行為。こんな警察官いるか?

 

爆弾についても同じで、かなり不自然。爆弾そのもののアイデアはなかなか洒落ているが、それらがあのタイミングであんな風に爆発するわけがない。

 

総評

よくよく考えればおかしい点はいくつもあるものの、謎とサスペンスが矢継ぎ早に提示されていくので、鑑賞中はとにかくストーリーに没頭できる。佐藤二朗は50代にしてキャリアの代表作が生まれたし、山田裕貴は次は経済ヤクザか殺人犯役かな。一部でグロいシーンがあるが、気になる向きはそのシーンだけ片目をつぶればよい。案外、デートムービーに良いかもしれない。恋人あるいは恋人未満の相手と一緒に見たら、間違いなく心拍数が上がるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go down in history

歴史に名を残す、の意。Jovianの元同僚の英検1級保持者(予備校講師上がり)が知らなかった表現。世間では早くもクリスマスケーキの予約が始まったが、とあるクリスマスソングを英語で歌えば、この表現が出てくる。街中のBGMに耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 羅小黒戦記2 』
『 代々木ジョニーの憂鬱な放課後 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ミステリ, 佐藤二朗, 山田裕貴, 日本, 染谷将太, 渡部篤郎, 監督:永井聡, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 爆弾 』 -佐藤二朗のベストアクト-

『 さよならはスローボールで 』 -これは一種の同窓会の終わり-

Posted on 2025年10月30日 by cool-jupiter

さよならはスローボールで 75点
2025年10月26日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キース・ウィリアム・リチャーズ
監督:カーソン・ランド

 

妻に「草野球の何がおもろいん?」と言われたが、それでもチケット購入。

あらすじ

アメリカの片田舎。ソルジャーズ・スタジアムは中学校建設のため取り壊しに。いつもそこで試合をしていたアドラーズとリバードッグズの面々は様々な思いを胸にラストゲームに臨む・・・

ポジティブ・サイド

おっさんたちがグダグダの草野球をする。それだけの映画なのに、胸に湧き上がってくるこのノスタルジアは何なのか。20代のころ、大学の先輩、同級生、後輩たちと参戦していた三鷹市民リーグを思い出した(ソフトボールだったが)。

 

野球が他のスポーツと大きく異なる点として

 

(1)攻めと守りがはっきりと分かれている
(2)太っていてもプレーできる
(3)プレー中にだらだら喋ることができる
(4)プレーの合間に余裕をもって飲食できる
(5)中年になってもプレーできる
(6)詳細なスコアカードがつけられる

 

などが挙げられる。ゴルフのように(2)が当てはまるものもあるし、(3)もゴルフに当てはまったりするが、これだけおっさん向きなスポーツはなかなかない。個人的には(6)が最も重要かつ独特であると思う。テニスのスコアカードを見て、そのポイントの詳細を思い浮かべるのは難しいが、野球は何となくそれができてしまう。

 

本作には草野球に興じるおっさん(一部若手もいる)、その試合を見守る者、そしてその試合を理解できない者の三種類の人間たちがいる。本作はその誰にも特別なドラマを用意しない。いや、一人だけいたか。それはスコアラーのフラニー。もし本作に主人公がいるとすれば、それはフラニー。何故なのかは、ぜひ劇場で鑑賞して確かめてほしい。

 

本作は野球映画であるが、とにかく野球は余白のスポーツ。本作ではプレーもフィーチャーされるが、それ以上にプレーしていない場面がフォーカスされている。外野でただ一人だけ佇立し、物思いに耽る。外野席の見物客に「うるせー、邪魔だ」と悪態をつく。あるいはベンチで野球談議に興じる。あるいは二階席でどうでもいい世間話をする。そうした無意味に思える時間も、これが最後の試合だと思うと、妙に愛おしく、そして腹立たしいものにも感じられる。この感覚は何か。これは少年時代への回帰なのだ。あるいは、売上だ、納期だ、業務改善だ、新人育成だと追い立てられることのない場所への一時的な避難、がちがちの上下関係に縛られた会社やビジネスという世界からの逃避なのだ。そしてチームメイト、あるいは対戦相手と出会うのは一種の同窓会なのである。

 

同窓会から帰りたくない、という経験はだれしもあるだろう。そんな切なさを押し殺して、黙々とプレーを続ける男たちの姿は見る者の胸を打つ。なかには「こんなゲームはさっさと終わらせよう」という者もいるのだが、それも当たり前の反応。いい年したおっさんがいつまで少年の気分に浸りたがっているのか。それもまっとうな批判だ。とにかく、本作の良さは観ないことには分からない。『 さよならはスローボールで 』とは誰がつけた邦題なのか分からないが、なかなかのセンスではないか。

 

ネガティブ・サイド

途中でさっそうと現れ、いつの間にやら消えていくリリーフピッチャーの正体をその場で明かしてほしかった。

 

フードトラックで何でピザを売っているのか?そこはホットドッグであるべきではないのか。

 

総評

非常に面白かった。ビッグプレーがあるわけでもなく、劇的な試合展開や思いもよらぬ人間関係が明らかになったりするわけでもない。おっさんたちが飽きることなく試合をしていく様がこれほど愛おしく感じられるとは。何の変哲もない男たちの向こうに、とてもありふれた、しかし尊ぶべきドラマがある。『 パターソン 』を楽しめた人なら、本作も問題なく楽しめるに違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

lose track of time

時を忘れるの意。”Damn, this party was so fun that I lost track of time. Gotta run. Or I will break my curfew. Have a good one, guys!”「ああもう、パーティー楽しすぎて時間を忘れてた。もう行くわ。門限やべえ。じゃあな」 のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 羅小黒戦記2 』
『 爆弾 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, キース・ウィリアム・リチャーズ, スポーツ, ヒューマンドラマ, フランス, 監督:カーソン・ランド, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 さよならはスローボールで 』 -これは一種の同窓会の終わり-

『 秒速5センチメートル(2025) 』 -男の女々しさを描き出す-

Posted on 2025年10月21日2025年10月21日 by cool-jupiter

秒速5センチメートル 70点
2025年10月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松村北斗 高畑充希 上田悠斗 白山乃愛
監督:奥山由之

 

妻の「これ観たい」の一言でチケット購入。

あらすじ

プログラマーとして働く遠野貴樹(松村北斗)は、常に過去にとらわれていた。それは東京の小学校に転校してきた篠原明里(白山乃愛)との記憶だった。同じく転校生だった貴樹(上田悠斗)は彼女と交流を深めていく。しかし、明里はまたも引っ越すことになり・・・

ポジティブ・サイド

よくあんな気持ち悪い(思春期男子的に)アニメを実写化しようとしたなと思うが、これがいい感じに仕上がっているのだから大したもの。脚本と監督が原作に必要以上に忠実にならなかったことが成功の要因であるように思う。

 

大人になった貴樹と明里の対称的な日常への向き合い方を淡々と描写していくのが良かった。基本的には貴樹の物語は『 僕の好きな女の子 』で、乃愛の物語は『 ちょっと思い出しただけ 』だと思えばいい。

 

ただし、そこに思春期特有の甘酸っぱさと、ちょっとしたファンタジー要素というか、セカイ系的な要素が混じっている。ひたすら内省的になりがちな貴樹を、上司が適度に現実につなぎとめている。このあたり、松村北斗出演の傑作『 夜明けのすべて 』の上司や彼女未満の同僚との関係性にそっくりで、大人になり切れない男の典型というか、普遍的な在り方の一つなのだろう。

 

では、大人とは何か?この問いが発せられる文脈によって答えは様々だが、思い出に執着することなく、感謝できるようになることではないだろうか。プラネタリウムで見せる貴樹の涙は彼の成長のひとつの証であり、『 君の膵臓をたべたい 』の春樹の涙に匹敵するシーンだったと感じた。

 

電車、ロケット、探査機など、常に境界を越えて移動していくギミックが、貴樹と明里の関係を象徴化している。一度は忘れかけていた存在を、時速5キロメートルで思い出すシーンは印象的だった。確実に前に進む女と一向に前に進めない男の対比。そんな貴樹が遅ればせながらも前に進んでいくことを決意するシーンは白眉。「好きだった」と伝えられるのは、好きではなくなったからではなく、好きだったという気持ちを客観視できるようになったから。切なくもさわやかなビルドゥングスロマンだった。

 

ネガティブ・サイド

ペーシングに難あり。種子島をもう少し圧縮(煙草のエピソードなんかあったか?)したり、本屋でのニアミスを削ったりして、全体を1時間50分にまとめられれば、間延びしているという印象は生まれなかったのでは?

 

上田悠斗→松村北斗は理解できるが、上田悠斗→青木柚と青木柚→松村北斗はつながらない。もっとビジュアル的に適した役者はいなかったのか。白山乃愛→高畑充希も、ちょっと無理があった。

 

総評

矛盾するように聞こえる、かつセクシストにも聞こえかねないが、男が本来的に持つ女々しさを原作アニメ以上に巧みに、しかし控えめに、かつ確実に描出していると感じた。男は「名前を付けて保存」、女は「上書き保存」とはよく言ったもので、そのコントラストをやや冗長ながらもロマンチックに、かつドラマチックに描いている。デートムービーに向くかはわからないが、おっさん世代には刺さるのではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

railroad crossing

踏切の意。物語の中で踏切をフィーチャーしたシーンが2つある。あちら側とこちら側をへだてる象徴で、非常に印象的なシーンである。都市部では高架化あるいは地下化が進んでいるとはいえ、鉄道大国日本にはまだまだたくさんの踏切がある。これを機に覚えておこう。ちなみに横断歩道は pedestrian crossing と言う。併せて覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 恋に至る病 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ラブロマンス, 上田悠斗, 日本, 松村北斗, 白山乃愛, 監督:奥山由之, 配給会社:東宝, 青春, 高畑充希Leave a Comment on 『 秒速5センチメートル(2025) 』 -男の女々しさを描き出す-

『 隠された爪跡 』 -日本人は外国人と共生不可能か-

Posted on 2025年10月13日2025年10月13日 by cool-jupiter

隠された爪痕 75点
2025年10月12日 スペースふうらにて鑑賞
出演:曹仁承
監督:呉充功

 

とある伝手から本作の上映会を知り、スペースふうらへ赴く。鑑賞者は十数名で20代は1名、30代も1名、後は60~70代のシニアだった。

あらすじ

1923年9月1日、関東大震災時の朝鮮人虐殺を、当事者や目撃者の証言によって再構成するドキュメンタリー。

 

ポジティブ・サイド

『 福田村事件 』では、日本人が日本人を惨殺する過程がつぶさに描かれた。それに先立って、捕縛されていた社会主義者(当然日本人)も警察署内で殺されていった。同国人を誤解あるいは偏見に基づいて殺してしまったことが大きな衝撃であるが、本当に問われるべきは大多数の日本人が極めて少数の朝鮮人を虐殺したこと。そして、それが偶発的に生じた事件ではなく、実は国家が主導した事件である可能性が高いことだ。

 

本作は1983年公開で、実際の撮影はそれよりも数年または十年さかのぼって行われた。仮に1975年だとすれば、関東大震災から53年後、当時20歳でも年齢は73歳。多少薄まったり、あるいは大げさになっているとして、十分に事件は記憶されていると考えられる。本作は在日一世のアボジや、同世代の日本人の証言を生々しく捉え続けている。

 

『 ハルビン 』で伊東博文が「我々は文明をもたらしたのに何故それに感謝せず、反抗するのだ」のように慨嘆していたが、まさにそうした国際的な緊張が背景にある。『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』で、

 

「天は日本人の上にアジア人を造らず欧米人の下に日本人を造らず」というのが福沢の本音

 

だと書いたが、震災によって苦境に立たされた際の国家および国民の不安と不満の矛先を、国家主導で朝鮮人、中国人などのマイノリティに向けたというのが真相だろう。戒厳令発令に至るまでの過程を記した公文書は存在しないが、これも消された可能性が高い。国家がいかに簡単に公文書を改竄・破棄するのかについては、安倍政権を思い起こすだけでいい。自警団は自発的に組織されたと思っていたが、当時の政府が各地に「朝鮮人の攻撃に備えるために自警団を組め」という指令を飛ばした文書はいくつか残っていることから、これは実は国家的なジェノサイドだった疑いも濃厚である。ちなみに虐殺行為に加担した人々のほとんどは不起訴、さらに起訴された人々も大正から昭和への代替わりの際の天皇即位に伴って恩赦されている。状況証拠でしかないが、国家的な犯罪だったことを示唆していると言えよう。

 

東日本大震災や熊本地震でも「井戸に毒」というデマが飛んだが、恐ろしいのはそうした情報を国家やメディアではなく一般人が発することが可能なこと。そして日本人はデマに実はかなり耐性が低いであろうということ(わが兵庫県民の政治およびメディアのリテラシーの低さを見よ!)。

 

当時の関東地方の人口は推計で800万人。在住の朝鮮人は15,000人。そのうちの6,500人が死亡している。比率としては0.18パーセント。しかし半数近くが死亡、これはジェノサイドとみなされても仕方がない。ここに中国人を加えても、せいぜい比率は0.2パーセントだろう。現代日本の人口における外国人比率は3パーセント弱。南海トラフ地震が起きた時、自警団が組まれ、根拠のない情報に基づいて外国人迫害が起きてもおかしくない。だから、あらかじめ排斥しろ、ではアホなカルトの参政党と同じ。他者を同行しようとする前に、まずは自身のリテラシーを上げること。正しい情報を発信しようとする前に、正しくない情報は発信しないという心構えを持つこと。

 

ちなみに・・・実は本作には字幕がついているが、これは初版にはなかったとのこと。在日アボジだったり、当時を証言する日本人だったりは、興奮しているのか混乱しているのか、口調や言葉が結構めちゃくちゃで、リスニングだけの理解では無理があった。もし、どこかで上映会がある場合、主催者に字幕の有無を尋ねるべきである。正直、字幕なしでは理解がおぼつかない。

 

ネガティブ・サイド

荒川河川敷の発掘作業については、エンドクレジット前あるいは後にでも、何らかの注釈は入れられないのだろうか。一種のネタバレになるが、主催者が必ずこの情報を補足してくれるとは限らないので書いてしまうが、当時の荒川河川敷に埋められた朝鮮人の死体は数日後に掘り起こされ燃やされたことが判明している。一種の歴史修正主義者が「遺骨が出ないのだから虐殺はなかった」という主張の材料に本作が使われることを懸念して、ここに書いておく。

 

総評

40年以上前にこんなドキュメンタリーがあったとは知らなかった。調べてみると第七藝術劇場で2023年に本作および続編の『 払い下げられた朝鮮人 』も上映されていた。梅田だけではなく、もっと十三方面にもアンテナを張っておくべきだった。スペースふうらのオーナーによると、また上映会をするかもしれないとのこと。興味のある方々は是非そちらにアンテナを向けられたし。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 シークレット・メロディ 』
『 恋に至る病 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1980年代, B Rank, ドキュメンタリー, 日本, 曹仁承, 監督:呉充功Leave a Comment on 『 隠された爪跡 』 -日本人は外国人と共生不可能か-

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