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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 アメリカン・アサシン 』 -新世代のエージェント誕生の物語-

Posted on 2018年7月8日2020年1月10日 by cool-jupiter

アメリカン・アサシン 65点

2018年7月7日 東宝シネマズ梅田にて観賞
出演:ディラン・オブライエン マイケル・キートン テイラー・キッチュ シャーロット・ヴェガ
監督:マイケル・クエスタ

  • 以下、本作および他作品のネタばれは白字で表示

これは思わぬ掘り出し物である。『アンロック 陰謀のコード』も佳作ながら、大物俳優を序盤でこれ見よがしに抹殺したことが、逆に観る側に「ああ、コイツが真犯人か」と思わせてしまった点が大いなるマイナスであった。今作はその轍を踏まず、主人公ミッチ・ラップ(ディラン・オブライエン)の師匠スタン・ハーリー役にマイケル・キートンを配した。この師匠というのが味噌で、上司や同僚にしてしまうと、スパイ映画の文法、いや様式美か、とも言うべき裏切りが発生してしまう。師匠と弟子という関係ならば、デイヴィッド・マレルの小説『ブラック・プリンス』がその壮絶な対決を描いている。これを超えるのは難しい。映画化してほしいが、題材がかなり古いので現代風へのアレンジが必須だ。しかし、ランボーの原作者でもある同著者の作品であるから、今後そうした展開が無いとは言い切れない。ともかく、師匠と弟子というのも戦う運命にあるというのは、エンターテインメント界では簡単に予想できることだ。しかし、ここに新世代の様式が生まれた。同じ師匠に教わった弟子同士の対決である。と、ここまで書いてきて「なんかそんな話もどこかで観たか、読んだ気がする」と思えてきたが、思い出せないので、まあ良いだろう。

物語はスペインの美しいビーチで、ミッチが恋人のカトリーナ(シャーロット・ヴェガ)にプロポーズをして、イエスの返事をもらうところから始まる。しかし、次の瞬間、ビーチを含むリゾートが突如、テロ集団に銃撃され、周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図へ。ミッチも被弾、カトリーナも死亡。ミッチはここから、体を鍛え、格闘技を身につけ、アラビア語を使いこなし、コーランの知識と立派なあごひげを蓄え、聖戦を従事する戦士として、自分の妻になるはずだった女性を殺したテロ集団にその身を投じようとする。もちろん復讐のためである。しかし、組織に入り込めるかという、まさにその瞬間、CIA率いる特殊部隊が突撃、ミッチの敵を呆気なく射殺してしまった。CIAは独力でここまでたどり着いたミッチをスカウト。本格的なエージェントして育成するためにスタン(マイケル・キートン)に身柄を預ける。そんな中、ロシアのプルトニウムが大量に盗み出され、核爆弾がどこかで秘密裏に製造される恐れありという事案が発生。CIAおよびスタンとミッチにも召集がかかるが、犯人はかつてのスタンの弟子であった・・・

アクションシーンは『アトミック・ブロンド』と同じく非現実的な現実路線である。つまり主人公も適度に殴られ蹴られブン投げられる。決して無敵ではないところに好感が持てるし、それでいてしっかり勝ってしまうのだが、彼自身がそのことに自信を抱いているわけではないと吐露する場面があるのが素晴らしい。そんな恋人を失った復讐の鬼と化した男が普通さを残しているところに、親しみやすさも湧いてくるし、応援してやりたいという気持ちも生まれてくる。『ミッション・インポッシブル』シリーズのイーサンは、『アンブレイカブル』のブルース・ウィリスか『MONSTERZ モンスターズ』の山田孝之かといったような非現実さしか、いつの間にか感じなくなってしまった。そんな中、颯爽と現れたディラン・オブライエンの新境地に我々は喝采を送りたくなってしまうのである。

また、この映画の公開されるタイミングも幸運に助けられている。核兵器を持つことで、たとえ小国でも大国と同じ交渉のテーブルに着くことができるのだということは北朝鮮が世界中に示した事実である。また、アメリカ海軍艦隊が本格的にフィリピンから撤退をしたことで中国が南シナ海にかなり大っぴらに進出するようになったのは疑いようの無い事実だ。その米海軍艦隊を核で一発で消し飛ばしてやろうというのは、アイデアとして非常に面白いし、存外にリアリティを有していた。こんな漫画『沈黙の艦隊』みたいな与太話が、作品のリアリティとエンターテインメント性を高めているのは、僥倖なのか、それともプロデューサーの眼力なのだろうか。まあ、両方か。

元々はヴィンス・フリンの小説が元ネタで、シリーズ化も期待できそうだ。フリンというと『ゴーン・ガール』のギリアン・フリンが思い浮かぶが、ヴィンスの方もメモリーにインプットしておいた方が良さそうである。

この映画はタイトルの出し方というか、そのタイミングが秀逸の一語に尽きる。アサシンと言いながら、やっていることは殺人および破壊工作なのだが、暗殺を行うシーンは無い。それでいて『アメリカン・アサシン』というタイトルに偽りがないのは見事である。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』あたりからますます険のある顔つきが堂に入ってきたマイケル・キートンを堪能するもよし、『メイズ・ランナー』でブレイクを果たしたディラン・オブライエンをひたすら堪能するもよし、冒頭の3分で退場する恋人カトリーナ役のシャーロット・ヴェガを応援するのも良いだろう。BGMやCGも効果的かつ印象的で、劇場鑑賞向きの作品である。観ておいて損は無い一本であろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アクション, アメリカ, ディラン・オブライエン, マイケル・キートン, 監督:マイケル・クエスタ, 配給会社:キノフィルムズ

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