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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: SF

『 インターステラー 』 -尻すぼみであること以外はパーフェクト-

Posted on 2023年1月9日 by cool-jupiter

インターステラー 80点
2023年1月7日 WOWOW録画にて鑑賞
出演:マシュー・マコノヒー アン・ハサウェイ ジェシカ・チャステイン
監督:クリストファー・ノーラン

諸事情あってなかなか映画館に行けないので、過去のWOWOW録画DVDを手に取る。中に入っているのは『 インターステラー 』と『 コンタクト 』で、前者を選ぶ。

あらすじ

ダストボウルの大量発生により土壌で作物が育たず、酸素も近い将来に生存不可能なレベルにまで低下することが予想される世界。元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は娘マーフの部屋で起きる奇妙なサインから座標を読み取る。そこではNASAが、人類救済ミッションを密かに進めており、クーパーは土星付近のワームホールを目指すミッションに参加することになる・・・

ポジティブ・サイド

地球滅亡ではなく人類滅亡という設定がいい。しばしば発生する砂嵐は dust bowl =ダストボウルと呼ばれる、1930年代にアメリカとカナダの農業に大打撃を与えたものである。もちろん Jovian はダストボウルを直接に経験した世代ではないが、これはアメリカ近代史ではしょっちゅう触れられるのでよく知っていた。

ワームホールの説明や描写もSF入門レベルにまで dumb down してくれているのも有難い。ワームホールの説明として、紙を折り曲げて二点をくっつけるというのは定番中の定番だが、二次元平面の紙の上の穴(hole)は三次元空間では球(sphere)になるという説明は秀逸だと感じた。

ワームホールの先の別の銀河で訪れる移住先の星々の描写も光っている。ブラックホール近傍の惑星あるいはステーションというのは『 ブラックホール 』でもお馴染みで、それ自体にオリジナリティはない。しかし、ブラックホールの重力圏内と圏外での時間のずれが生むドラマは、ベタながら見応えがあった。

ノーラン監督は初期から「時間」をテーマにした作品作りで知られていて、本作でもそれは一貫している。『 TENET テネット 』で見せた見事な物語の円環的構造は、実は本作でも示されていて、劇場で始めた鑑賞した時、WOWOWで二度目に鑑賞した時、そして今回と、毎回その構造の巧みさに舌を巻く。

本作の最大の功績はTARSかもしれない。R2-D2やBB-8とはまた違った魅力のあるロボットである。コミュニケーションの設定に正直度やユーモアがあったが、これは案外現実世界で似たようなロボットが作られた際、取り入れられる設定かもしれない。また、安易に人型にするのではなく、TARSのような造形の方がモビリティも確保できるだろうなと感じた。

SFにはファンタジーの領域にどっぷり浸かったものと、現実的な科学技術に立脚しつつ、ほんの少しのフィクションを混ぜたものがある。どちらも面白いのだが、本作は数あるSF作品の中でもファンタジーの領域と現実の領域が見事な配分でミックスされていると感じる。ここでいうファンタジーとは「愛」の力。いかなる科学も超越する親子の奇妙な愛の絆は、何度見ても感動させられてしまう。俺もだいぶ単純になってもうたな・・・

ネガティブ・サイド

親子の愛だけに留めておけばよかったのに、なぜアン・ハサウェイ演じるブランド博士をクーパーの love interest にする必要があったのか。ここが解せない。友愛に近い感じで良かったのでは?

そのブランド博士やその他の面々も、人類を救うと言いつつ、移住候補先の星の大地に星条旗の旗を立てるのか?これが英国籍と米国籍を持つクリストファー・ノーランの植民に対する意識の表れなのだろうか?うーむ・・・

天文物理学や生物学の門外漢だが、ガルガンチュアのようなブラックホールが天文単位の距離にあるような複数の惑星は、そもそも移住に向かないのでは?ブランド博士の言う通り、小惑星の衝突などが起きない(ブラックホールがそれらをすべて吸い込むか弾き飛ばす)環境では、生物の創発が喚起されない。地球ですら木星のおかげで天体衝突の確率は1000分の1になっているとされる。微生物や植物すらない環境はテラフォーム不可能な気がするのだが・・・

総評

最後の最後のクーパーの決断が個人的には受け入れがたいが、そこに至るまでの3時間近い物語には圧倒されるばかり。3度目の鑑賞でもそう感じる。ティモシー・シャラメやケイシー・アフレック、マイケル・ケインにジョン・リスゴーなど、若手から超ベテランまでが脇を固める。2010年代のSF映画の秀作の一つであることは間違いない。

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

stella

ラテン語で a star の意味。interstellar は文字通り「星々の間の」、「恒星間の」という意味である。星座を constellation と言うが、色んな星が一緒になってできるのが星座ということである。似たような語に『 アド・アストラ 』の astra がある。これは astrum の複数形の対格で、こちらも意味は星だが、やや誌的な感じがする表現。これの元はギリシャ語のasterで、astronaut や astronomy はここから来ている。アスタリスクを見たら「あ、確かに星だ」と感じてもらえれば幸いである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』
『 ファミリア 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アメリカ, アン・ハサウェイ, ジェシカ・チャステイン, マシュー・マコノヒー, 監督:クリストファー・ノーラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 インターステラー 』 -尻すぼみであること以外はパーフェクト-

『 ブレイン・ゲーム 』 -色々な要素を詰め込みすぎ-

Posted on 2023年1月4日 by cool-jupiter

ブレイン・ゲーム 50点
2023年1月2日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジェフリー・ディーン・モーガン アンソニー・ホプキンス アビー・コーニッシュ コリン・ファレル
監督:アルフォンソ・ポヤート

2018年にシネ・リーブル梅田で公開していたのを覚えている。何故かこのタイミングで近所のTSUTAYAで準新作扱いだったので、クーポンを使って割引料金でレンタルしてきた。

 

あらすじ

謎の連続殺人事件を捜査するFBIのジョー(ジェフリー・ディーン・モーガン)とキャサリン(アビー・コーニッシュ)は、予知能力を持つ医師クランシー(アンソニー・ホプキンス)に助力を求める。しかし、捜査を進めるにつれて、クランシーは犯人が自分を上回る予知能力の持ち主であると気付き、捜査から降りると言い出す・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤のいくつかの謎めいた殺人事件の現場はなかなかの迫力。異様な死に様を見せる被害者の数々に、『 セブン 』や、アンソニー・ホプキンスつながりで言えば『 羊たちの沈黙 』のような猟奇殺人事件映画の傑作の予感が漂う。カウルズ捜査官も、どことなくスターリング捜査官の雰囲気をたたえている。序盤の捜査開始シーンから真犯人のコリン・ファレル登場シーンまでは結構面白い。

 

コリン・ファレルの狂信的なまでのサイコパス殺人鬼の演技も堂に入っている。アンソニー・ホプキンスを鼻で笑うような演技はなかなかできない。『 AVA / エヴァ 』でも感じたが、この役者は老人とバトルを繰り広げるのが似合うのかもしれない。その超絶的な予知能力を物語る、とある録画映像の演出も地味ながら素晴らしい。

 

原題の Solace は慰めの意。本作のテーマに mercy killing =安楽死がある。ペインコントロールの上手く行かない末期癌患者は時に「殺してくれ」と叫ぶこともある。その瞬間の苦しみから解放するには死は最も確実かつ手っ取り早い手段だろう。『 いのちの停車場 』や『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』が扱ったトピックでもあるが、本作はさらに一歩踏み込んで、苦痛を感じ始める前に殺すという、屈折した思想を持った犯人像を作り上げた。この安楽死を単なる殺人と切って捨てるのか、それとも救いや慰めの一手段と見るのか。この部分について、ある意味で非常に剣呑な誘いをもって本作は閉じられる。この幕の閉じ方はなんとなく『 CURE キュア 』を思わせてくれた。

 

ネガティブ・サイド

ホプキンスやファレルの持つ超能力の正体がよく分からない。予知能力も物や人に手を触れて発動する場合と、不意に発動する場合がある。さらに、劇中でもたびたびフラッシュバックのように挿入されるビジョンには予知と過去視の両方があって、かなりややこしい。しかも、その能力の発動タイミングもかなり(製作者にとって)恣意的に思える。能力発動の条件があいまいなままストーリーが進むので、どうしてもご都合主義に見えてしまう。カーチェイスの最中および直後などはその最たる例だ。

 

真犯人=ファレルの存在は、あらすじどころかポスタービジュアルやDVDのカバーで明かされてしまっているが、この男の登場がとにかく遅い。1時間40分のストーリーのうち1時間ぐらい過ぎたあたりで登場してくるというのは、脚本のペース配分ミス、あるいは編集ミスだろう。あまりにバランスが悪すぎる。

 

キャスティングも、別にアンソニー・ホプキンスを起用する必要はなかったのでは?まあ、彼自身が製作総指揮に名を連ねているので、それはできない相談か。しかし、それでもクランシー博士とその娘がどうみてもお祖父ちゃんと孫にしか見えないし、妻とも相当な年齢の開きがあるように見えた。60歳ちょっとの別の役者を起用できなかったのか。役者としてのホプキンスは否定しないが『 羊たちの沈黙 』の二番煎じを狙うのは無理。ストーリーそのものは悪くないのだから、自分よりも若い役者を起用し、超知性かつ超能力の犯人を、友情と経験で追い詰めるような素直な物語にしてほしかった。

 

総評

序盤から中盤にかけての面白さは文句なし。ただし、いったんコリン・ファレルが現れてからは「なんじゃ、そりゃ・・・」という展開のオンパレード。超能力対決というのは『 スキャナーズ 』の昔から陸続と生み出されてきたが、本作はその中でも凡庸な部類に入る。ヒューマンドラマのパートにもっと力を入れるか、あるいは犯人と刑事&博士の対決にもっと尺を取れば、もう少し面白さも増したはず。アンソニー・ホプキンスのファンなら鑑賞もありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

precognition

 

予知の意。『 マイノリティ・リポート 』好きならプリコグという言葉を覚えているはず。あれは precognition の派生語、precognitives の省略形だ。cognition というのは取っ付きにくい語だが、この元のラテン語の cognosco は、同じ意味のギリシャ語 gnosis に由来する。gnosis は知識という意味で、ニュースアプリの「グノシー」の社名はまず間違いなくここから来ている。また、診断=diagnosis というのも、gnosis を含んでいる。身体診察や問診を通じて(dia = through)病気を「知る」ということである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アビー・コーニッシュ, アメリカ, アンソニー・ホプキンス, コリン・ファレル, サスペンス, ジェフリー・ディーン・モーガン, 監督:アルフォンソ・ポヤート, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 ブレイン・ゲーム 』 -色々な要素を詰め込みすぎ-

『 テラフォーム 侵略 』 -やや竜頭蛇尾のSF-

Posted on 2022年12月19日 by cool-jupiter

テラフォーム 侵略 50点
2022年12月18日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ニコール・シャルモ ジャック・キャンベル
監督:エディ・アーヤ

近所のTSUTAYAで準新作コーナーにあったので、クーポンを使ってレンタル。典型的なクソB級SFだと思っていたが、どうしてなかなか面白かった。

 

あらすじ

アメリカの片田舎に隕石が落下。周辺の住民およそ1300人全員が犠牲になった。隕石落下地点では有毒ガスが発生。軍は一帯を封鎖する。謎の解明のために宇宙生物学者のローレン(ニコール・シャルモ)が召喚されるが、回収された遺体のうち49名が突如として起き上がった・・・

 

ポジティブ・サイド

侵略ものとしてはなかなか珍しい植物媒介型。Jovian的には小説『 トリフィド時代 』以来のように思える。よくよく考えれば、これは理にかなっている。新天地に最初に降り立つべきは動物ではなく植物。そして植物がガス交換して、それによって大気組成を徐々に変えていくというのは、実際のテラフォーミングの過程とも合致するはず。

 

さらに死体が起き上がるというのもなかなかのホラー。面白いなと感じたのは、死体がゾンビ化して動き回って周囲の生物を襲いまくる、ということがない。逆にどこか虚空の一点を時折見つめるのみ。これはシュールな光景で、これは『 光る眼 』とかからヒントを得ているのかな。物語が進むにつれ、ローレンの過去と今回の侵略がリンクしてくる。このへんは『 メッセージ 』の真似だろう。

 

過去の先行作品のおいしいところを頂いてくるのは別に悪いことではない。問題はしっかりと自分流の味付けができるかどうか。その意味で、本作は割と真面目に科学的な考証を行っている。ああ、そこがそうなるの?という感じで、思わぬ形で過去と現在をつなげてくる。ここはちょっと感心した。

 

ちなみにこれ、元ネタというか、着想は漫画『 風の谷のナウシカ 』から得てるよね。

 

ネガティブ・サイド

序盤にローレンと一緒に出てくる男性科学者はちょっと問答をしただけで、あとは全然役立たず。『 メッセージ 』におけるジェレミー・レナ―的なポジションのはずだろうに。このキャラはばっさりカットしても良かった。 

 

仮説段階とはいえ、異星文明由来の物質を吸い込んだ人間相手に、スタンダード・プリコーションで接近したらダメでしょ。

 

異星人がいよいよ本領発揮してくるという時に、ドラマ『 X-ファイル 』的な演出をするのは少々気になった。映画が映画のオマージュを取り込むのはいいが、ドラマの演出をそのまま使うというのはどうもなあ。

 

最後の最後の展開、必要かな?『 アクセル・フォール 』並みに唐突な終わり方。一応伏線は張ってあるものの、だからどうしたの?としか言えない。

 

総評

『 アド・アストラ 』思弁的なSFが好き、または『 ザ・メッセージ 』のようなB級作品を楽しめるという向きなら、本作もそこそこ楽しめるはず。a rainy day DVD もしくは a stay-at-home day DVD として、ウォッチ・リストに入れておいてもいいかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I’m listening.

直訳すれば「私は聞いている」、字幕では「それで?」だった。普通の会話の中でも割と出てくる表現で、「それで?」や「ということは?」や「つまり?」のように、「あなたの話を聞いている。その続きを話してほしい」を簡潔に表現していると思えばいい。会話に自信がなく、うなずいてばかりの人は、一度 “I’m listening.” を使ってみよう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』
『 ケイコ 目を澄ませて 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, アメリカ, オーストラリア, ジャック・キャンベル, ニコール・シャルモ, 監督:エディ・アーヤLeave a Comment on 『 テラフォーム 侵略 』 -やや竜頭蛇尾のSF-

『 マーズ・ミッション2042 』 -中国発の竜頭蛇尾のSF-

Posted on 2022年12月4日 by cool-jupiter

マーズ・ミッション2042 15点
2022年12月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:スオ・シャオクン
監督:リウ・ナー

『 ムーンインパクト 』がアホ極まりないUSA産SFだったので、ならば中国産はどうか?とということで近所のTSUTAYAでレンタル。竜頭蛇尾のダメSFだった。

 

あらすじ

火星移住計画が進行中の2042年。中国やアメリカは火星の軌道上および地表で様々な実験や研究を行っていた。そんな中、火星に小惑星が接近しているとの報が入る。時を同じくして、火星に謎の生命体が出現。地表探査チームは宇宙船で脱出するが、巨大生物に襲われ不時着を余儀なくされる。アメリカは中国に救助を要請。中国のエウロパ探査宇宙船ワン・フー乗組員は火星に着陸するが・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の15分は『 オデッセイ 』そのまんま。マット・デイモンが火星に取り残されてしまうシークエンスを中国が再構成してみた、という感じ。word for word, scene for scene の再構築ではないが、明らかにオマージュのレベルを超えている。こうした姿勢は悪くないと思う。技術的に進んだ相手の手法をそのまま真似てみるというのは、芸術を学ぶ上で不可欠。模写はその最たる例。映画でもそういう試みはあっていい。

 

火星の大気中を遊泳するクジラはなかなかの迫力。アメリカ人が宇宙生命体を描くと『 ライフ 』のカルヴィンのようなクリーチャーになってしまうが、中国が描くクジラやトカゲはアジア的なセンスが素直に反映されていて、個人的には受け入れやすい。

 

ネガティブ・サイド

科学的な考証は無きに等しい。いちいちツッコミを入れるのも馬鹿らしいが、火星と地球の距離を考えろ。『 オデッセイ 』がなぜあれほどハラハラドキドキとヤキモキした感じを生み出せたのか。それは通信に要するタイムラグ。地球と火星で通信すると、往復で30分弱かかる。それが本作ではリアルタイムに通信できている。超光速通信だ。そんな技術があれば、火星のテラフォーミングなど、とっくに達成されていそうに思えるが。

 

アメリカ人を悪者にするのは別にOK。アメリカもソ連やロシア、中国などを散々悪者に描いてきた。問題は、アメリカ人の研究者個人が悪いのであって、アメリカが悪いのではないという描き方。もっと踏み込んでええんやで、中国さん。せっかくの宇宙SF。もっとスケールの大きい話しようや。また中国人俳優の中で英語を喋るのが1~2人しかいない。韓国やインドをもっと見習って、俳優に語学を勉強させるべき。エンタメ分野でも世界制覇を目指すなら英語は今後マストだろう。邦画は無理でも、中国映画界にはそのポテンシャルがあってしかるべき。

 

俺の屍を越えてゆけ的な展開が短時間で二度発生。これは萎える。こういう感動の押し売りが受け入れられるのは一つの映画につき1回までと心得よ。また最後は父と息子の葛藤と和解の物語に着地してしまうが、そこに至るまでの人間ドラマの描写が圧倒的に弱い。冒頭の展開だけで脚本家が力尽きて、予算も使い果たしのだろうか。

 

総評

一言、ダメ映画である。冒頭シーンの迫力に期待を持ってはいけない。そこがピークである。a rainy day DVD にもならない。小説『 三体 』が世界を席巻して以来、中国発のSFの良作を待っているが、まだまだ時間がかかるのかもしれない。配信やレンタルで見かけてもスルーするのが吉。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. Hardly anything was impressive after the first 15 minutes.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, スオ・シャオクン, 中国, 監督:リウ・ナーLeave a Comment on 『 マーズ・ミッション2042 』 -中国発の竜頭蛇尾のSF-

『 ムーンインパクト 』 -愛すべきダメダメB級SF映画-

Posted on 2022年11月28日 by cool-jupiter

ムーンインパクト 20点
2022年11月26日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マイケル・ブロデリック クリス・ブドゥー
監督:ブライアン・ノワック

『 ザ・メニュー 』鑑賞後に口直しが必要と感じ、チーズバーガーをほうばりながら観られそうなB級作品をTSUTAYAでピックアウト。決して『 ムーンフォール 』と間違えてレンタルしたわけではない。

 

あらすじ

月に巨大小惑星が激突。その衝撃で月は軌道を離れ、徐々に地球に落下してきた。月の地球落下まで残された時間は3時間。ペンタゴンは反物質エンジンで月の裏側にブラックホールを発生させ、その重力で月を引き戻す作戦を実行するため、かつての宇宙飛行士ジム・ローソン(マイケル・ブロデリック)を宇宙に送り込もうとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤のジムとポールの兄弟のある行動を見て「おいおい、アホかこいつらは」と思ってしまったシーンが、まさかの終盤の展開につながっている。これには腰を抜かした。その伏線の張り方もさることながら、その馬鹿馬鹿しさと、それゆえのスケールの大きさには驚かされた。監督はブラックホールだとか、月の落下よりも、このビジョンを映画にしたかったんだろうな。

 

映画が始まった瞬間から月の落下まで3時間、それがすぐに1時間40分ぐらいになる。その間、ジムとポールの行く手にはトラブルだらけ。とにかく常に彼らがせわしなく動き回るので飽きは来ない。

 

ネガティブ・サイド

科学的に間違っている描写を逐一挙げれば、おそらく数千に届くのではないか。それぐらい何もかも間違えている。物理や天文学をまともに学校で習ったことはなく、そうした知識は小説、映画、テレビ番組、書籍などから得ているJovianでも「なんじゃこりゃ?」と感じるシーンやセリフがてんこ盛りである。

 

まずもって反物質エンジン?反物質の採取は月軌道どころか木星あたりに行かないと無理。さらに反物質エンジンでブラックホール生成?意味が分からない。さらにそのブラックホールの重力で月を元の軌道に引き戻すと言うが、生み出してしまったブラックホールはどう片付けるのか?

 

さらに中国とロシアがアメリカの作戦を無視して核ミサイルを射出しようとする。その理由は「ブラックホールは地球まで飲み込んで破壊してしまう恐れがある」という至極もっともな懸念。それに対するジムとポールの答えが「重力は距離の逆二乗で弱まるから大丈夫、地球にブラックホールの重力は届かない」という説明・・・って、ちょっと待った。それ、某出版社が小学校の理科の参考書でやらかしてた間違いそのまんま。「人工衛星は無重力空間にあります。地球の重力が届きません」と書いた次のページで「月は地球の重力に惹きつけられる形で回っています」というのと理解のレベルが同じやんけ。大体、地球の重力に引っ張られる月を、さらに引っ張り戻せるだけの重力を持つブラックホールなら、地球も同時に引っ張るに決まってるやん。AとBが綱引きしてて、BがAを引っ張ってる最中に、CがAをさらに強い力で引っ張ったら、CがBとAの両方を引っ張るでしょ・・・ 

 

その他にも宇宙船の速度が時速3億6千万キロ、つまり光速の約3分の1という反則級のスピードに達したのには笑った。最初は字幕のミスか?と思ったが、何度聞いても two hundred and nine million miles per hour = 時速209,000,000マイルと言っているので、字幕ミスではなかった。他にも宇宙船が遠心力を使わずに人工重力を発生させていて、なんでその技術をスケールアップさせて月を別方向に引っ張らないの?と思わせてくれる。他にも宇宙服に穴が開いているのに、軽く空気が漏れるだけの描写など、随所で頭を抱えざるを得ない描写のオンパレード。

 

極めつけは、この手の天体落下型ディザスター・ムービーでおなじみのロシュ限界が思いっきり無視されているのには呆れた。というのも、脚本家の名前が Joe Roche =ジョー・ロシュなのだ。脚本を書く時に科学的考証を一切しないと決めてたんかな?

 

カメラワークも皆無。その他のキャラもほとんどすべて同じアングルでひたすらしゃべり続けるだけ。その半数は、ほとんど無意味に死んでいく。彼ら彼女らの演技はまさに学芸会レベル。映画大国アメリカでも、ゾンビやらサメやら天体落下やらのクソ映画を大量生産することで、ごくまれに傑作が生まれるという構図は健在なのだ。

 

総評

これぞ愛すべき大馬鹿B級映画である。いや、クオリティを考えればC級もしくはD級と言ってもいいのだが、観る側が「ああ、アンタらはこのシーンをやりたかったのね」と作り手側に少しでも共感できれば、それだけでB級である。レンタルもしくは配信で観る場合、楽しもうなどと思ってはいけない。雨の週末にスナックでも食べて、スマホ片手に鑑賞するのが吉である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

one of a kind

「唯一無二」、「他に並ぶものがない」の意。人にも物にも使える。普通は良い意味で使われるが、

This film is one of a kind … in a bad way. 
この映画は唯一無二だよ・・・悪い意味でね。

のように言うこともできる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, アメリカ, クリス・ブドゥー, マイケル・ブロデリック, 監督:ブライアン・ノワックLeave a Comment on 『 ムーンインパクト 』 -愛すべきダメダメB級SF映画-

『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』 -4Kリマスター版-

Posted on 2022年11月8日 by cool-jupiter

王立宇宙軍 オネアミスの翼 60点
2022年11月6日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:森本レオ
監督:山賀博之

漫画『 げんしけん 』で本作を知ったのはいつだったか。劇場公開されたので、これ幸いとチケットを購入。

 

あらすじ

オネアミス王国の宇宙軍は、宇宙に行ったことのない軍として民衆から指示されていなかった。宇宙軍の士官シロツグ(森本レオ)は、信心深い少女リイクニとの偶然の出会いをきっかけに、人類初の有人宇宙飛行のパイロットに志願するが・・・

ポジティブ・サイド

いちばん最初に感じたのは手描きアニメの良さが凝縮されているということ。現代のデジタルで描いて、PC上で動かすという手法ではなく、セル画をひたすらに描き連ねて作った、まさに古き良きアニメという感じがする。

 

戦闘機からロケット打ち上げ発射台にいたるまで、メカのデザインも素晴らしい。現実に実際にワークしそうな設計思想が垣間見えるのが良い。一方で、少年の想像力というか、科学的な考証よりもロマンを前面に押し出したようなメカの造形にもニヤリとさせられる。

 

王国も中世ファンタジー世界ではなく、産業革命のただ中のイングランドそっくり。ただし、どこか違う。バラックや路地裏に東南アジア的な雰囲気も漂っている。『 ブレードランナー 』的、あるいは『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』的とも言えるかもしれない。

 

そこに住まう人々の意識も、ちょうど中世から近代に脱皮するぐらいか。水軍や陸軍は存在意義を保持しているが、宇宙軍はそもそも宇宙に行ったことがないし、宇宙に敵がいるのかどうかも分からない。しかし、宇宙は宇宙として、人類最後のフロンティアとして厳然と存在する。もちろん本作の製作時にすでに人類は宇宙に到達していた。だから本作の価値が落ちるわけではない。逆に、人類の宇宙到達をリアルタイムで見届けられなかった自分たちに捧げる作品を作ろうとしたのだろう。同時に、当時の宇宙開発が米ソの軍拡競争の一環として繰り広げられていたことへの抗議の意味合いもあったことだろう。

 

まさに少年の少年による少年のためのアドベンチャーアニメと言える。

ネガティブ・サイド

SFは大きく二つに分けられる。一つは、時代と共にそのアイデアが風化しないもの。もう一つは、時代が進むとそのアイデアが風化してしまうもの。前者の代表例はジェイムズ・P・ホーガンの『 星を継ぐもの 』、ロバート・L・フォワードの『 竜の卵 』、グレッグ・イーガンの『 宇宙消失 』あたりか。後者の代表例は残念ながら本作か。

 

有人宇宙飛行を達成するという目的達成のために何かユニークなアイデアが提起されるわけではない。本作は Science Fiction なSFではなく、Space Opera なSFであるが、それでも何か本作の世界を特徴づけるテクノロジーもしくは理論が必要だった。ガンダムが何故あれほど説得力があり、幅広い世代を魅了したのか。それはミノフスキー粒子という設定により、宇宙空間で近接戦闘をする必然性が生まれたからだ。本作も何か一つ、独自の世界観を確立する設定を持ってほしかった。本作のストーリーはかなり政治的な色合いが強いが、もっと純粋に科学や技術を追求するべきだった。

 

シロツグのリイクニへの迫り方は、ちょっとなあ・・・。女子への距離の詰め方を知らないアホなオタクそのまんま。製作者たちはそこまで自分を反映する必要はなかった。

 

総評

作画や音楽の素晴らしさは2020年代でも十分に通用する。むしろ、セル画にこれでもかと描き込む作品は、近い将来にロストテクノロジーとなってしまうだろう。そういう意味では実に貴重な作品をリマスターしてくれたものである。一方で、ストーリーがとにかく陳腐である。本格的なSFらしさを求めるとがっかりさせられる。また製作者の感性が非常に色濃く反映されているので、ガイナックス作品と波長が合わない人は、本作とも波長は合わないだろう。そのあたりを考慮の上、鑑賞するかどうかを判断されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

no matter what

使い方が色々ある表現だが、これをセンテンスの最後に置くと「何が何でも」のような意味になる。終盤でシロツグが「俺は死んでも上がるぞ!」のようなことを言うが、これは

I’m going up no matter what!

だろう。I’m going up even if I die! はちょっと変だ。

I’ll get off at 5:30 pm no matter what. Today’s my daughter’s birthday.
何が何でも5時30分にあがるぞ。今日は娘の誕生日なんだ。

のように、日常生活の中でどんどん使ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 警官の血 』
『 窓辺にて 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1980年代, C Rank, SF, アニメ, 日本, 森本レオ, 監督:山賀博之, 配給会社:バンダイナムコフィルムワークスLeave a Comment on 『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』 -4Kリマスター版-

『 アフター・ヤン 』 -アンドロイドを悼むということ-

Posted on 2022年10月23日 by cool-jupiter

アフター・ヤン 75点
2022年10月22日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:コリン・ファレル ジョディ・ターナー=スミス ジャスティン・H・ミン マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ 
監督:コゴナダ

 

妻のリクエストで大阪ステーションシティシネマへ。客層はほぼ中高年といった感じ。

あらすじ

茶葉店を営むジェイク(コリン・ファレル)と妻カイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、幼い養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)、アンドロイドのヤン(ジャスティン・H・ミン)は幸せに暮らしていた。しかし、ある日、突然、ヤンが故障してしまう。ヤンを修理する方法を探す過程で、ジェイクはヤンに毎日数秒だけの映像記録が残るメモリーが内臓されていることを知り・・・

ポジティブ・サイド

シンボリズムに溢れた作品。白人の父、黒人の母、アジア系の養子にアジア系のアンドロイドと、diversity を象徴するような家族が冒頭から映し出される。その家族がそろって踊る、しかし、皆が躍るのを止めてもヤンだけが踊り続ける。最初は戸惑ったが、後にこれが本作の Establishing Shot であると分かった。

 

ヤンの故障に最も過敏に反応するのがミカというのも、当たり前と言えば当たり前だが、その反応には注意を払う必要がある。I want him back! と叫ぶミカは、ヤンが死んだとは理解していない。あくまで故障であって、修理すれば元に戻ると信じている。ミカはほんの子どもであるが、死の概念が理解できないほど幼いわけではない。この世界にどれほど深くアンドロイドが根付いていて、しかしその歴史はまだそれほど古くはないことが示唆されている。本作は常に、説明することを拒否する。観る側に絶えず考察することを要求する。

 

ヤンの修理を試みる過程でジェイクはヤンに内蔵された数々の過去の映像を掘り起こすことになる。その中でクローンの存在についても観る側は知ることになる。人間同士の関係、人間とアンドロイドの関係、人間とクローンの関係の記憶の断片の数々から浮かび上がってくるのは、我々が生きるこの世界には未知の領域がいくらでもあるということ。たとえば自分の父と母の幼少期、自分の親友の家庭内での姿、自分の子どもの初恋など。これらの、本来であれば知り得ないような家族の秘密、さらに他人の秘密のようなものをわずかでも垣間見た時に明らかになるもの、それが歴史ではないだろうか。我々の知らないところで誰かが生きているし、我々が死んだ後も誰かが生きていく。

 

Every new beginning comes from some other beginning’s end. という歌詞がある。セミソニックの『 Closing Time 』という楽曲のそれで、結構ヒットした曲なので30代以上なら知っている人も多いだろう。本作のテーマはまさにこれで、何かが終わったとしても、それは別の何かの始まりなのかもしれない。芋虫にとっての終わりは、蝶にとっての始まり。ならばアンドロイドにとっての終わりも、何か別の事象の始まりなのではないか。本作は答えを語らない。答えは鑑賞者それぞれが想起するのだろう。

ネガティブ・サイド

個人的にはクローンに関する云々は不要であると感じた。おそらくだが、人間にとっては遠くの人間を愛するよりも、近くの動物やメカを愛する方が易しい。同様に、人間はクローンよりもロボットの方に愛着を感じやすいと考えられる。本作はロボットに焦点を集中させるべきだと感じた。

 

全編が非常に淡々と進んでいくが、もう少し何らかの起伏というか、分かりやすい起承転結があっても良かった。

 

総評

観終わって、しばらく席で沈思黙考する作品は多くない。しかし本作はそうさせてくれた一本。家族とは?生とは?死とは?文学や芸術、果ては哲学や宗教の領域にまで亘る問いが本作ひとつの中に収められている。近い将来(20~50年後ぐらいか?)に到来するであろうアンドロイドやクローンとの共生社会の一つありうべきシミュレーションとして、本作の価値は高い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

wrap one’s head around ~

~を理解する、の意。『 ゴーストランドの惨劇 』や『 スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち 』でも紹介した表現。

I still can’t wrap my head around what this movie is all about.
この映画のテーマがなんなのか、今でも分からない。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 秘密の森の、その向こう 』
『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 アムステルダム 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アメリカ, コリン・ファレル, ジャスティン・H・ミン, ジョディ・ターナー=スミス, マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ, 監督:コゴナダ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 アフター・ヤン 』 -アンドロイドを悼むということ-

『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

Posted on 2022年8月28日 by cool-jupiter

NOPE  / ノープ 70点
2022年8月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ダニエル・カルーヤ キキ・パーマー スティーブン・ユアン ブランドン・ペレア
監督:ジョーダン・ピール

Jovianは矢追純一世代だったので、UFOには一時期かなりハマっていた。そのUFOをジョーダン・ピールが料理するというのだから、観ないわけにはいかない。

 

あらすじ

馬の飼育と調教を生業にするヘイウッド家の父が、謎の死を遂げる。長男OJ(ダニエル・カルーヤ)は、父の死と空に一瞬見えた謎の飛行物体が関連していると確信。妹のエム(キキ・パーマー)と共に、謎の物体をカメラに収めようと考えるが・・・

ポジティブ・サイド

予告や内容紹介の段階では、M・ナイト・シャマランの『 サイン 』のようなストーリーなのかと思った人は多くいそう。実際に似ているところもあったし、そうでないところもあった。いずれにせよ確実なのは、ジョーダン・ピールがまたしても非常にオリジナル作品を送り出してくれたことだ。

 

オープニングのTVショーはまったくもって意味不明。また映画の各段階で馬の名前が画面に大々的に表示される。これもこの段階では意図が見えない。しかし、後々これらが本作のテーマとダイレクトにつながっていることが分かる。

 

ハリウッドのはずれのはずれにある広大な馬の飼育場、その上空の雲の中に得体の知れない存在がいる。そして、それはどうやら人や馬を襲う。この正体不明の存在との闘争・・・ではなく、とにかくこいつを写真や映像にしてビッグになってやろう、というところが現代風で面白い。また、その奇妙なモチベーションに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのが興味深い。

 

主人公OJを演じるダニエル・カルーヤは、『 ゲット・アウト 』とはガラリと異なる寡黙な男。しかし馬および野生動物に対する造詣が深く、そのことが物語上で大きな意味を持っている。また馬の調教師であるというバックグラウンドに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのは興味深い。映画産業の初期の初期から現代に至るまで、我々は物語(往々にしてそれは事件)をカメラという媒体で撮られ、スクリーンという媒体に映写されるものだと思ってきた。しかし、本当の事件が自分の身にリアルに起きた時、人はどう対応するのか。これが本作の裏テーマなのではないかと思う。

 

徐々に正体を現すUFOと、それをカメラに収めようとするOJとMの兄妹や、奇妙な協力者エンジェル、自身の経験が裏目に出て被害に遭ってしまうジュープなど、それぞれの登場人物が物語に意味と味わいを与えている。個人的に最も印象に残るのは、後半に登場する老カメラマン。常にPCモニターで「あるもの」を見ているのだが、本作ではそれは痛烈な皮肉に見えてくる。UFOで始まり、ハリウッドの新たな神話の誕生で終わる。何を言っているのか分からない?だったら劇場で観るべし。

以下、マイナーなネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

序盤から中盤にかけての展開がスリリングだったのに対して、終盤にかけての展開は少しテンポが落ちたと感じる。「あれは何だ?」、「もっとちゃんと見せろ」という中盤までのテンションが、後半にまで持ち越されていない。謎の存在をカメラに収めるというミッションに、途中で別キャラが入り込んでくるからだろう。もしも牧場の倉庫に主導のフィルムカメラが眠っていて「ひいひいひいお爺ちゃん、ありがとう!」という展開であれば、また異なる印象を受けたと思う。

 

これはトレーラーの罪なのだろうが、Mがしきりに “Don’t look, don’t look.” と言いながら歩くシーンは盛大なネタバレだった。

 

UFOが『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』的な変形を見せるのはちょっといただけない。もっと無機質なままで良かったのにと思う。写真に収めるべきは馬に乗ったOJであるべきだったと思う。

 

総評

『 ゲット・アウト 』のような意表を突いたSF的な要素もありながら、常に社会批判も盛り込んでくるのがジョーダン・ピール流。今作でも伝統的な映画業界やパパラッチ、YouTuber を皮肉る一方で、エンターテイメントとしての面白さもしっかり追求できている。ジャンルとしてはSF+ホラーになるのだろうが、このホラー映画は観る人を選ばない。ある意味で、『 ゲット・アウト 』や『 アス 』よりも、本作の方がジョーダン・ピール世界への入門編としては適しているかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nope

No のくだけた言い方。No をクイックに歯切れよく発音すると、語尾に p の音がついてくる。同じことは Yes にも言える。これをインフォーマルに言うと Yep となる。いずれの表現もかなりカジュアルな表現なので、ビジネスの場では使わないようにしたい。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アメリカ, キキ・パーマー, スティーブン・ユアン, ダニエル・カルーヤ, ブランドン・ペレア, ホラー, 監督:ジョーダン・ピール, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

『 ねむれ思い子 空のしとねに 』 -シンギュラリティ後にありうる未来か-

Posted on 2022年8月20日 by cool-jupiter

ねむれ思い子 空のしとねに 70点
2022年8月17日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:福島央俐音 井上喜久子 田中敦子
監督:栗栖直也

『 マインド・ゲーム 』がまだレンタルされている。いつになったら返却されるのか。すぐ近くにあった本作を、ジャケット裏のあらすじも読まずタイトルだけでレンタルする。

 

あらすじ

赤ん坊が生まれたばかりの夫婦が交通事故に遭い、子どもの織音(福島央俐音)だけが生き残った。それから19年後、警察から追われる織音を、エージェントのユリ(田中敦子)が逃亡を幇助する。そのまま実験用宇宙ステーションへ連れて行かれた織音は、事故当時の姿のままの母・里美(井上喜久子)と再会する・・・

 

ポジティブ・サイド

栗栖直哉が独力で作り上げたということに舌を巻く。それができるだけのテクノロジーが一般に普及し、だからこそ本作の設定にリアリティが付与されている。

 

何が何やら分からないままに序盤は進んでいくが、宇宙ステーションで織音が母・里美と再会するシーンにまず驚かされる。のみならず、その里美の正体が明かされ、なぜ織音が宇宙ステーションまで呼び出されたのか、その理由の壮大さにも圧倒される。

 

死者の復活、死者との交信あるいは語らいというのは、映画や小説などのフィクションの世界では割とありきたりなテーマではある。本作はそうしたジャンルでは陳腐ですらある愛や恐怖といった要素に、さらに謀略やアクションといった要素も盛り込んできた。スケール大きいなあと感心してしまう。

 

ついついナレーションで色々と説明したくなってしまうところをグッとこらえて、物語そのものにキャラクターを描かせた。そしてキャラクターが動くことで、物語も進んでいった。いつかハリウッドあたりが実写映画化するかもしれないという期待を抱かせる。

 

ネガティブ・サイド

いくつかのシーンが非常に陳腐だったというか、『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』や『 AKIRA 』といった先行作品のシーンや構図をそのまま持ってきたように見えたのはマイナス。

 

アニメーションは日本のお家芸だが、『 あした世界が終わるとしても 』のようなユラユラと動くアニメキャラというのは個人的に気味が悪い。絵柄については賛否両論あるようだが、そこは別に気にならない。むしろ不気味の谷を感じさせる絵柄で、本作のテーマにも合っている。問題は、不自然な動き。

 

総評

設定にリアリティがある。一昔前なら完全な純SF扱いだっただろうが、人間の脳の仕組み、特に意識や記憶を司る部位の働きなどがどんどん解明され、また人工知能や超大容量記憶装置などが夢物語ではなくなっている現代において、本作が提示する世界観そして人間観は非常に示唆に富む。描写に陳腐なところがあったり、どこかで見たような構図があったりするが、気にしては負けである。『 JUNK HEAD 』の堀貴秀のような奇才が、まだまだ日本にはいる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

freak

劇中で里美が「化け物」呼ばわりされるが、これは monster ではなく freak だろう。『 ダークナイト 』でもジョーカーがギャングの一人から Freak 呼ばわりされていたように、人間ではあるが通常の人間ではない者、しばしば嫌悪感を催させる者を freak と呼ぶ。綾辻行人の『 フリークス 』を読めば、この言葉の意味がより強く実感できるだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, SF, ヒューマンドラマ, 井上喜久子, 日本, 田中敦子, 監督:栗栖直哉, 福島央俐音, 配給会社:インターフィルムLeave a Comment on 『 ねむれ思い子 空のしとねに 』 -シンギュラリティ後にありうる未来か-

『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』 -広げすぎた風呂敷を畳めず-

Posted on 2022年7月31日2022年7月31日 by cool-jupiter

ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 20点
2022年7月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード サム・ニール ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム イザベラ・サーモン
監督:コリン・トレボロウ

 

『 ジュラシック・ワールド 炎の王国 』で、広げまくった風呂敷をどう畳むのか。関心はそこだったが、製作陣は見事に回避。さらに『 ジュラシック・パーク 』から連綿と続いてきたメッセージもあっさりと放棄。これは一種の詐欺商法ではないのか。

あらすじ

恐竜たちが解き放たれた世界。オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、クローン少女であるメイジー(イザベラ・サーモン)を守りながら暮らしていた。しかし、そのメイジーがオーウェンの盟友ラプトルのブルーの子と共に謎の男たちに誘拐される。オーウェンとクレアは救出に動き出す。一方、アメリカの穀倉地帯に出現した謎の巨大イナゴを追うサトラー博士(ローラ・ダーン)は、旧知のグラント博士(サム・ニール)と共にバイオシン社を訪れて・・・

 

ポジティブ・サイド

しっかり騙されてしまったというか、乗せられているなと感じるが、やはり『 ジュラシック・パーク 』の面々が集まると、高校生の頃に劇場で鑑賞した時の気持ちが蘇ってくる。『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』でキャリー・フィッシャーやハリソン・フォード、マーク・ハミルと再会した時のような感傷や、『 トップガン マーヴェリック 』でマーヴェリックと再会した時の感覚に近い。まあ、自分がそれだけオッサンになったということか。

 

パラサウロロフスのような、何とか象レベルで捉えられそうな恐竜から、ギガノトサウルスのような象をおやつに食べそうな化け物に、某大学の教科書に出てきたばかりのケツァルコアトルスなど、新しいモンスターたちはどれもこれも eye-candy だった。羽毛をまとった恐竜の姿も、NHKではなくハリウッド水準のCGで観られたのにも満足。

 

初代の裏切りデブを彷彿させるモブキャラに、発煙筒のシーンの完全オマージュなど、良い意味で壮大なシリーズのフィナーレを飾るにふさわしい ”演出” の数々が堪能できた。

以下、ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

新旧キャラが勢揃いするのは確かに壮観だが、逆に絶対に死なないキャラが増えるということをも意味する。それはストーリーから緊張感を奪い去る。毀誉褒貶の激しい『 スター・ウォーズ 』の新三部作(Jovianは賛の立場)では、旧作のキャラの死亡(役者本人の死亡もあったが)や離脱が相次いだ。これは観る側にかなりの衝撃を与えた。だが本作にはそうした緊張感は一切なし。バイクやクルマのアクションがスリリングだとは感じたが、それはその他多くの映画で何百回と観たやつである。

 

思ったよりも翼竜や首長竜、魚竜が活躍しなかったのはCG予算の限界なのか、アイデア不足なのか。代わりにイナゴネタとは・・・。劇中のデブが言及していたように、聖書の『 出エジプト記 』のビジョンなのだろうが、ここに来て恐竜以外の生き物を持ってくるか?

 

我々が観たかったのは『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』的な世界の続きである。

 

“So, you’d want to make Godzilla our pet?“
「ゴジラを我々のペットにするということかな?」

“No. We will be his.”
「違う。我々が彼のペットになるのだ」

 

という世界観である。それこそが取りも直さず、第一作のアラン・グラント博士の

 

Look… Dinosaurs and man, two species separated by 65 million years of evolution have just been suddenly thrown back into the mix together. How can we possibly have the slightest idea what to expect?

 

という疑問への答えだったはずである。バイオシン=Biosyn=Bio Sin = 生物学の罪。それこそがシリーズが描いてきたものだ。科学には侵してはならない領域があるのだ。そこにコミットしてしまった過去の作品では、すべて人間が痛い目を見ている。本作はその集大成=人間が転落し、恐竜が生態系の頂点に君臨する世界を描くべきだったのに・・・どうしてこうなった。

 

シャーロットのクローンであるメイジーのドラマも拍子抜け。コロナ禍で公開が遅れる不運があったとはいえ、自分の細胞から卵子と精子を作って、それを掛け合わせてマウスが日本で作出されたというのは大きなニュースになった。現実がクローンを通り越して、小説『 リング 』の貞子的な領域に到達してしまった以上、シャーロットのアイデンティティを巡る物語も盛り上がりに欠けてしまう。

 

ヘンリー・ウー博士によるイナゴの遺伝子書き換えにも開いた口が塞がらない。イアン・マルコムを二十数年ぶりに引っ張り出してきたのは、”Life will find a way.” と再度言わせるためではなかったのか。人間が小賢しい真似をしても生命は必ずそれを回避してしまう、というのがジュラシック・シリーズが繰り返し発してきたメッセージではなかったのか。なんで今回は上手く行くことになっているのか?もうこれでロシアによるウクライナ戦争の影響以上のダメージが穀物およびその他の農作物に与えられるのは必定ではないか。何が描きたいんや・・・

 

最後の最後に恐竜、翼竜、首長竜に魚竜までが世界中の生き物と見事に平和裡に共存・・・って、そんなわけあるかーーーー!!!そうした世界を描くなら、恐竜が文明世界を大破壊して、人間も他の動植物も捕食しまくって、生態系の頂点に立った。そこで各種の生き物がしかるべきバランスの中に落ち着いて、恐竜たちも現代の生き物たちと調和(≠共生)して生きるようになった、という世界像をこそ提示すべきだろう。何から何までアメリカ的御都合主義と言うか、白人帝国主義的と言うか、これっぽっちの理解も共感もできない締め括られ方だった。『 ジュラシック・パーク 』だけで終わっておけば、伝説的な作品として22世紀まで残っただろうに。

総評

ハッキリ言って駄作。常にキャラがしゃべりまくり、常に効果音とBGMが鳴り続け、精巧ではあるが現実的な質感に欠けるCG恐竜が画面を覆いつくすばかりの作品。アメリカ人的には大受けするのだろうか。東洋的な世界観からずれまくった思想を一方的に開陳されても、どう受け止めて良いのか分からない。これがアメリカ的な多様性や共生の見本なのだろうか。劇場のお客さんの表情は満足と困惑の半々ぐらいに映った。個人的にはクソ映画・オブ・ザ・イヤー候補を観てしまった、という気持ちである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I want to forget about this CGI shitfest as quickly as possible.

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, アクション, アメリカ, イザベラ・サーモン, クリス・プラット, ブライス・ダラス・ハワード, 監督:コリン・トレボロウ, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』 -広げすぎた風呂敷を畳めず-

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