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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 迷宮物語 』 -迷い込むのか、自ら入っていくのか-

Posted on 2021年2月17日 by cool-jupiter

迷宮物語 80点
2021年2月16日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:津嘉山正種 銀河万丈 吉田日出子
監督:川尻善昭 りんたろう 大友克洋

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210217231025j:plain
 

確か小学生の頃にテレビ放送されたのを観た記憶がある。路地裏でピエロの影を追いかけたり、男が白目をむいていたり、壊れかけのロボットの不気味な歩き方などの断片的なイメージが、なぜか最近になって急に脳裏に浮かんできたので、アマプラにて鑑賞。

 

あらすじ

少女サチとその愛猫チチェローネは家屋内でかくれんぼをしていた。隠れているサチを探すチチェローネの前でピエロ付きのオルゴールが鳴り始める。鏡の中にサチを見たチチェローネは鏡の中に引きずり込まれ、サチと共に不可思議な世界を彷徨うことになり・・・

 

ポジティブ・サイド

Jovianは幼少の頃は絵本が好きだった。特に『 おしいれのぼうけん 』や『 めっきらもっきらどおんどん 』を気に入っていた。今思えば、異世界への憧憬はこの頃に萌芽があったのだろうと自己分析。それが『 スター・ウォーズ 』にどっぷりとハマるきっかけになったのだろう

 

“ラビリンス*ラビリントス”

本作でもサチが迷い込む異世界には、不思議な懐かしさと奇妙な不安感が同居している。まるで『 千と千尋の神隠し 』を先取りしたかのような世界観である。もちろん、本作がその後の作品に影響を与えたのは事実であろうし、本作自身も先行作品からインスピレーションを受けていたことは間違いない。チチェローネが最初に隠れていたのは時計。サチが姿を消したのは鏡。アリスに影響されなかったというのは考えられない。そういう目で見れば、本作はintertextualityの見本のようでもある。

 

テレビゲーム黎明期のような画像の連続など、作り手の嗜好プラス当時の実験的な空気が色濃く反映された作品。迷宮というのは、自分から入っていってしまうものなのだなと思わされる。

 

“走る男”

 

打って変わって近未来の硬質的なサイバーパンク作品。『 アリータ バトル・エンジェル 』のモーターボールや『 バトルランナー 』のランニング・マン(これが原題で、奇しくも意味は“走る男”)のように、ディストピアな未来世界では人類はレースに熱狂するのだろう。チャンピオンのザック・ヒューが、虚実の定かならぬ領域でレースを戦っている様は、一種のホラーである。人馬一体という言葉があるが、人車一体、または人機一体になっているようだ。戦闘機パイロットは一般人には耐えられないようなGを受けても飛び続けるが、ザックも同じ感覚なのだろう。

 

迷宮というのは、いつの間にか入り込んでしまうものなのかもしれない。

 

“工事中止命令”

 

大友克洋の作品。栴檀は双葉より芳しである。スクラップ&ビルドの当時の日本経済や日本産業の本質をよく突いていると感じる。壊れかけのロボットが非常に良い味を出している。ロボットやAIは決して無謬な存在ではないことは『 2001年宇宙の旅 』や『 エイリアン 』でもお馴染みであるが、それを日本の気鋭のクリエイターが表現すると、本エピソードの出来上がりである。監督ロボにくっついている長い長いケーブルが印象的で意味深長だ。つまるところ、この狂ったロボットも末端に過ぎないわけだが、それは派遣されてきた杉岡勉も同じこと。弐瓶勉の『 BLAME! 』の東亜重工も、案外このような感じで超構造体を作り始めてしまったのだろう。

 

我々は知らず知らずのうちに、迷宮に生きているのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

“走る男”の絵には躍動感がない。レースマシンをもっと動かせとまで言わないが、ザック・ヒューという男(の魂のようなもの)が、いつの間にやら異世界に入り込んでしまっていたという展開に説得力を持たせるには、人間の限界を超えた過酷なレースを走っているという描写が不可欠のはずだ。

 

3作に共通するガジェット、またはテーマBGMのようなものがあればパーフェクトだった。テレビ(でなくともよいが)のリモコンだとか手帳といったものがすべて同じデザインである、または特定のBGMが同じ、またはオリジナルのちょっとした変調になっていれば、これらの迷宮世界のつながりを感じられたのだが。

 

総評

これほどクリエイターのアーティスティックな感覚を素直に映像化することは、現代では難しいのではないか。無難を志向して、低コストでそこそこの収益が上がる映画を量産してもよいが、ビジョンのある作家には、そのビジョンに忠実な作品を作れるようにしてやることも必要ではないか。1980年代の作品である本作を鑑賞して、あらためて現代に対して提言をしたいと感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be shrouded in mystery

~は謎に包まれている、の意味。ほぼ決まり文句である。彼の死は今も謎に包まれている=His death is still shrouded in mystery. と表現できる。Shroudという語は『 サッドヒルを掘り返せ 』で少し触れているが、ぜひ単語ではなくthe Shroud of Turinやbe shrouded in mysteryのように一塊で覚えてしまおう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1980年代, A Rank, SF, アニメ, ファンタジー, 吉田日出子, 日本, 津嘉山正種, 監督:りんたろう, 監督:大友克洋, 監督:川尻義昭, 配給会社:角川書店, 銀河万丈

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