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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2025年11月

『 もののけ姫 』 -4Kデジタルリマスター上映-

Posted on 2025年11月13日2025年11月13日 by cool-jupiter

もののけ姫 90点 
2025年11月9日 Tジョイ梅田にて鑑賞 
出演:松田洋治 石田ゆり子 
監督:宮崎駿


4Kデジタルリマスター上映ということで、少々値は張るが迷わずチケットを購入。

あらすじ

東国の勇者アシタカ(松田洋治)は、村を襲ったタタリ神を討ち、呪いをもらってしまった。掟に従い村を去ったアシタカは、呪いを解く術を求めて西国に旅立つ。その旅先で、森を切り拓き、鉄を作るたたら場とそこに生きる人々、そして山犬と共に生きる少女サン(石田ゆり子)と出会う・・・

ポジティブ・サイド

詳細は『 もののけ姫 』を参照のこと。

DolbyCinemaの追加料金600円で、チケット一枚2800円だったが、劇場は半分ぐらいは埋まっていた。しかも若い世代が多い。10代、20代のカップルの姿も。

イーマの6階のトイレ前で妻を待っている間、多くの観客が感想を口にしながらエスカレーターを降りていった。「美輪明宏さんの収録、YouTubeで観たけどすごかった」とか「あの歌手の人、こめよしさん?歌声やばい」とか。『 ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 』の時も大きな声で感想を述べ合うグループがいたが、傑作を観ると人はどうしても語りたくなってしまうのだろう。

『 羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来 』、『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』ともに傑作だが、本作はやはりそれよりも上の作品だと感じた。妖精と人間の共存か併存か、森の精と人間の共生か。テーマは似通っているが、その見せ方は全く異なる。人間に師事する妖精のシャオヘイと、山犬を親と慕う人間サンは、人間に対して全く異なるアプローチを見せる。シャオヘイの言う「僕は正しい者の味方だ」というのは強者の論理。サンが言う「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない。」という矛盾こそが、共生の本質なのではないかと思う。すなわち互いに憎み合い、傷つけ合うことも含めて、共に生きていく。生きることは傷つけ、傷つけられること。しかし、生きていれば何とかなる。なんという矛盾。しかし、なんという真理だろうか。

ネガティブ・サイド

詳細は『 もののけ姫 』を参照のこと。

総評

コロナ禍の折、「一生に一度は、映画館でジブリを」というキャンペーンがあったが、5年に1度はそうした取り組みがあってもいい。午前10時の映画祭みたいに、過去の名作や傑作を大スクリーンと大音響で蘇らせることには大きな意義がある。『 羅小黒戦記 』は中国の力というよりは制作会社の力が飛び抜けているらしいが、そのあたりもジブリと似ている。二作を見比べるのも面白いだろう。Jovianも近々、小黒2の字幕版を観に行く予定である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

win out

最後に勝つ、の意味。ジコ坊の「馬鹿には勝てん」の私訳として、Fools win out in the end. としてみたい。馬鹿に勝てないのは誰かというよりも、馬鹿が最後に勝つというニュアンスにしてみた。win には win against や win back、win over などの句動詞がある。これらを使えれば英検準1級、使いこなせれば英検1級である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 ミーツ・ザ・ワールド 』
『 ひとつの机、ふたつの制服 』
『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 <字幕版> 』.

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, S Rank, アニメ, ファンタジー, 日本, 松田洋治, 監督:宮崎駿, 石田ゆり子, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 もののけ姫 』 -4Kデジタルリマスター上映-

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』 -吹き替え鑑賞-

Posted on 2025年11月12日2025年11月12日 by cool-jupiter

羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 80点
2025年11月9日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:花澤香菜 宮野真守 悠木碧
監督:MTJJ

 

『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』の続編。今作も面白かった。

あらすじ

シャオヘイ(花澤香菜)は師匠のムゲン(宮野真守)と共に修行の日々を送っていた。しかし、ある時、会館の一つが襲撃を受けた。その容疑者とされてしまったムゲンは、ナタの屋敷に軟禁状態となる。シャオヘイは姉弟子ルーイエ(悠木碧)と共に真相究明に乗り出すが・・・

ポジティブ・サイド

前作に続いて人間と妖精の共存を模索している。前作が妖精から人間へ干渉していく物語だったが、本作は人間が妖精に干渉してくる。もちろん、そこには妖精同士の政治的な駆け引きにも似た思惑が介在しているのだが、それがどこか現実世界に通じているようにも感じられた。

 

強すぎる執行人のムゲンが出張ってしまうと、あっという間に話が終わってしまう。では、どうするか。本作は説得力がある、それでいて絶対にそれが真相ではないと観る側に確信させる方法で序中盤はムゲンに退場してもらう。MCUにおけるマグニートー的なパワーの持ち主であるムゲンには、人間の通常兵器は効果がないからだ。もちろん、いかに効果がないのかを見せつけるシーンもあるので、彼のファンは安心してよい。

 

シャオヘイは相変わらず子どものビジュアルを維持しているが、日々の修行により前作とは比較にならないほどパワーアップしている。「シャオヘイ、ここでお前の力を見せてくれ」とこちらが感じるシーンが都合3回訪れるが、いずれも見事なアクションを披露してくれる。もちろん、巨大化け猫変化もあるので安心してほしい。

 

しかし、今作はルーイエこそが準主役。前作におけるムゲン以上にシャオヘイの保護者というか師匠代理というか。よそよそしさを感じさせながらも、いつの間にかしっかりと姉弟子になっていく過程は、前作のムゲンの印象の変わり方以上のインパクトがある。

 

前作で金と木が特にフォーカスされた属性バトルだが、今作では土が大活躍。地上もしくは地下という場所の制約は受けるものの、自分のフィールドで戦えれば、土属性の妖精が一番強いのでは?本作ではさらに空中戦も見せ場の一つ。次の3では『 アバター ウェイ・オブ・ウォーター 』並みに水中および水上で水属性が大活躍するところが見たい。

 

前作でほとんど何もしなかったナタが、本作ではかなりの見せ場を与えられているのも嬉しい。またムゲンがマグニートー並みか、あるいはそれ以上のスーパーパワーで某国の軍を無力化していく様は圧巻。オチにも笑った。続編作る気満々の終わり方は普通はあまり好きではないが、本シリーズは早く続きが見たい。5年は待てない。2年後には観たい。

 

ちなみに・・・劇場から結構な数の中国語を話す客が出てきたが、旅行者なのか、それとも国内在住者なのか。今回は吹替で鑑賞したが、字幕版も近々鑑賞して、どのような客層なのか確かめてみたいと感じた。

ネガティブ・サイド

ヴィランが能力奪取系というのは前作と同じ。ここは少し変化が欲しかった。

 

ムゲンが通常兵器に対してほぼ無敵なのは分かるが、Ace Combat 5のSOLG、あるいはAce Combat 3のO.S.L的な超兵器にも強いというのは、さすがに少し説明、あるいは詳しい描写が必要だったように思う。

 

総評

前作に負けず劣らずの傑作。敵国がまんま『 ボーン・トゥ・フライ 』と同じだが、それは彼の国がソ連やロシアを敵国に描いてきたのと同じこと。本作で執行人の数は数百人に上ることが判明したが、逆算すれば人間界に住まう妖精は数十万から数百万は存在するのだろうか。次回作の3では、世界大戦になるのか、妖精界の内ゲバになるのか、それとも人間界の内ゲバに妖精が介入するのか。とにかく期待!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

cease fire

しばしば命令形で、Cease fire! =撃ち方止め!の意味で用いられる。ceasefireとくっついて名詞になることもあり、実は報道などでよく使われている。イスラエルはハマスとの間の停戦協定は ceasefire deal、韓国と北朝鮮の38度線、すなわち停戦協定ラインは ceasefire line のように表現される。TOEICにはまず間違いなく出ないが、英検準1級以上なら出てくる可能性は十分ある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 もののけ姫 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』
『 ひとつの机、ふたつの制服 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アニメ, ファンタジー, 中国, 宮野真守, 悠木碧, 監督:MTJJ, 花澤香菜, 配給会社:アニプレックスLeave a Comment on 『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』 -吹き替え鑑賞-

『 プレデター バッドランド 』 -Clan Over Family-

Posted on 2025年11月9日 by cool-jupiter

プレデター バッドランド 75点
2025年11月7日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ エル・ファニング
監督:ダン・トラクテンバーグ

 

配信のプレデター作品は観ていないが、予習としては『 プレデター 』、『 プレデター2 』で十分か。余裕があれば『 エイリアンVSプレデター 』と『 AVP2 エイリアンズVS.プレデター 』も鑑賞しておけばよい。ちなみに『 ザ・プレデター 』は不要である。

あらすじ

ヤウージャの若き戦士デク(ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ)は、弱者として父に切り捨てられそうなところを兄クウェイに助けられる。デクは自らの強さを証明するために、父ですらも恐れるカリスクをハントするため、惑星ゲンナに降り立つ。原生の危険生物に襲われながらも生き抜いていくデクは、謎のアンドロイドのティア(エル・ファニング)と出会い・・・

ポジティブ・サイド

プレデターの強さと狩りへの執着と、武士道的な精神性を冒頭の10分で描き切り、そこからは『 プロメテウス 』あるいは『 エイリアン:コヴェナント 』のように未知の世界の冒険となる。

 

デクがプレデター的な武器と戦闘術で生き残りつつも、それが通じない植物や巨大生物もおり、絶体絶命という瞬間にアンドロイドのティア登場と、ストーリー展開のテンポもいい。

 

プレデターの伝統的な武器を使い単独で戦っていたデクが、ある話をきっかけにティアやバドと共闘していくようになるのも面白いと感じた。ヤウージャの伝統的な強さの定義に当てはまらない自分が、ヤウージャの伝統的な方法でもって強さを証明しようとすることの矛盾をデクが感じ取り変化していくのは、デクのビルドゥングスロマンであり、多様性と異文化共生のメッセージを包括していた。

 

『 ブレードランナー2049 』あたりで、人間とアンドロイドの関係にさらに踏み込んだ考察を行ったリドリー・スコットやドゥニ・ヴィルヌーヴの路線を本作も共有している。ミッションを指定されたアンドロイドと、狩ることしか自身の存在を証明できないヤウージャには、それ以外の生き方を知らないという共通点がある。その二者が交わった時のケミストリーには大きな爽快感があった。

 

終盤の『 エイリアン2 』へのオマージュとなるべきシーンにはニヤリとさせられた。デクがそれほどの脅威の存在になったと認識されたということか。本作はデクの文学的かつ文字通りの意味での父殺しの物語であると同時に、『 エイリアン 』ユニバースにおける母たる存在と『 プレデター 』ユニバースにおける母たる存在のクロスオーバーも予感させてくれる。続編が今から待ち遠しい。

 

ネガティブ・サイド

ティアはヤウージャ語を解するが、他のアンドロイドはヤウージャ語を解さないというのはご都合主義に感じた。

 

ティアの下半身アクションは真新しかったが、感覚器を持たないのになぜバトルができるのか。アンドロイドの感覚器も顔面にあるということは劇中でも描写されていた通りではないか。

 

You’re one ugly motherfucker. や Get away from her, you bitch! のような印象的な one liner が欲しかった。

 

総評

これは傑作。AVPが失敗した、本当の意味での人間vsプレデターvsエイリアンにつなげてもいいし、そこにアンドロイドを加えた四つ巴でもいいし、あるいは人間・プレデター連合軍vsエイリアン・アンドロイド連合軍のような二勢力の対決でもいい。あるいは、それらをデクのような第三極が潰していく展開も面白そう。文学、およびそれにつらなるフィクションの世界では父殺し=patricideが一大テーマだったが、今後はそこに母殺しが提起されるのか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

prey

獲物、あるいは餌食の意味。I am prey to none! =俺は誰の獲物でもない!=俺は絶対的に駆る側だ!というヤウージャの信念が印象的だった。preyはもちろん、生態学などで被食者を表す語としても使われるが、プレデターのような戦闘種族が比ゆ的に使ってもOKである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』
『 もののけ姫 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アクション, アメリカ, エル・ファニング, ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ, 監督:ダン・トラクテンバーグ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 プレデター バッドランド 』 -Clan Over Family-

『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』 -劇場再鑑賞-

Posted on 2025年11月4日 by cool-jupiter

羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~ 80点 
2025年11月1日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:花澤香菜 宮野真守 櫻井孝宏
監督:MTJJ

 

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』に備えて復習鑑賞。劇場は7~8割の入りとかなり盛況だった。

あらすじ

森でのどかに暮らしていた猫の妖精・小黒(花澤香菜)は、人間の開発によって住処を追われる。放浪の旅の最中に同じく妖精のフーシー(櫻井孝宏)たちと出会った小黒は、彼らの住処で共に暮らすことになる。しかし、そこに最強の執行人、ムゲン(宮野真守)が現れ、フーシーらを撃退する。小黒はムゲンに連れ去られてしまい・・・

ポジティブ・サイド

大自然や都会の情景は美麗ながら、キャラクター造形は比較的シンプルなのがいい。キャラの外見ではなく内面にこそ興味や関心を寄せてほしいという製作者側の期待もあるのだろう。

 

二度目の鑑賞で、なぜ小黒に領界が二つあるのかやっと分かった。アホな俺・・・

 

たとえとしては不謹慎かもしれないが、本作はイスラエルとパレスチナの物語的でもある。つまり極めて政治的かつ人為的な隔離の物語なのだが、それをどちらか一方の側だけが悪であるという描き方をしない点はアジア的と言えるかもしれない。

 

仙人と言っても差し支えないムゲンがクレジットカードを持っていたり、原付に乗ったり、地下鉄に乗ったり、また妖精たちがスマホで遊んでいたりと、ジブリ的な世界観と現代社会が融合している。そして違和感がない。これはまったく日本的ではなく、中国的と評すべきか。

 

人間は人間の世界に、妖精は妖精の世界にという考え方が作品世界にも浸透しているが、小黒は旅路と戦いの果てにそれとは異なる答えを見出す。ハリウッド映画ならしばしば家族に、フランス映画ならしばしば男女に、北欧映画ならしばしば友情に、韓国映画ならバディに還元しがちな価値観を、本作はある意味でスター・ウォーズ的に着地させる。これもユニーク。劇場ではすすり泣きがあちこちから聞こえてきた。ええ?あんたら、二度目の鑑賞ちゃうん?と思いつつ、Jovianの目にも妻の目にもうっすらと涙が・・・

 

ネガティブ・サイド

魔童ナタの扱いの悪さが・・・ 続編ではきっと大暴れしてくれるのだろう。

 

総評

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』がとにかく楽しみ。銃器を持つ人間と敵対することになりそうだが、金属性のムゲンと小黒はマグニートー並みに無双できそう。そうならない何かがあるのだろう。魔童ナタの活躍も見れそうだ。副題にある「ぼくら」という言葉が誰をどこまで包摂するのか。現代中国人の意識を垣間見る良い機会にもなりそうである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Five Elements

陰陽五行の意。木火土金水(もっかどごんすい)はそれぞれWood, Fire, Earth, Metal, Waterとなる。シャオヘイやムゲンはMetal属性、フーシーはWood属性である。ちなみに西洋は古代ギリシャ思想の流れを汲んで四元素説(火、土、水、風)である。ファイナルファンタジーⅤのクリスタルがこの4つだったことを覚えているのは主として40歳以上だろう。ちなみにリュック・ベッソンの『 フィフス・エレメント 』は、この四元素の先のもうひとつのエレメントを描いた作品である。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』
『 代々木ジョニーの憂鬱な放課後 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, 2020年代, A Rank, アニメ, ファンタジー, 中国, 宮野真守, 櫻井孝宏, 監督:MTJJ, 花澤香菜, 配給会社:アニプレックス, 配給会社:チームジョイLeave a Comment on 『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』 -劇場再鑑賞-

『 爆弾 』 -佐藤二朗のベストアクト-

Posted on 2025年11月2日 by cool-jupiter

爆弾 75点
2025年10月31日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:佐藤二朗 山田裕貴 渡部篤郎 染谷将太 
監督:永井聡

 

『 死刑にいたる病 』的な面白さを期待してチケット購入。その望みは叶えられた。

あらすじ

酔って暴れた酔っ払いの鈴木田吾作(佐藤二朗)を逮捕、取り調べしていく中で、刑事の等々力(染谷将太)は鈴木の言動に不穏な気配を感じとる。そんな中、鈴木が予言した爆発が実際に起こってしまい・・・

ポジティブ・サイド

東京各地にストーリーそのものは展開するも、大部分は取調室の内部で進行していく。その中で行われる刑事と被疑者の演技対決が心地よい。染谷将太、渡部篤郎、山田裕貴が佐藤二朗に対峙していき、全員が見事に立ち向かいつつ、巧みに佐藤二朗を引き立てた。といっても、佐藤自身も今回の役は『 さがす 』や『 あんのこと 』以上にダークで、自身の代表作になったと自負しているに違いない。

 

意味不明な問答の繰り返しに謎解きと心理戦を織り交ぜていく。それ自体はよくある手法だが、そこから導き出される「心の形」には唸らされた。警察官が家族や友人など、私=プライベートの部分を突かれると弱かったり、あるいは闇落ちしたりするのはハリウッドでは常套手段套手段だが、警察としての使命感や正義感の歪みをストレートに指摘してくる作品は珍しい。小説の映画化とはいえ、それが邦画で達成されたことは素直に喜びたいと思う。

 

いつも何かあれば怒鳴るだけの染谷将太が、非常に陰のあるキャラを演じていたのも好印象。何を考えているのかわからないが、職務上でリスペクトできる相手にはしっかりと向き合うという、一種のプロフェッショナリズムというか、ダンディズムを備えたキャラを演じきった。

 

対照的に、上司を立てつつも本当は自分の方が有能だという自負を隠さない類家というキャラも味わい深かった。「自分以外の人間が馬鹿に見える」という指摘を受けても、それを否定せずに飄々と受け流す。丸メガネをかけても、その炯々たる眼光はいっさい隠せていない。感情移入するには難しいキャラだが、だからこそ観る側は類家と鈴木の対決を文字通りに傍観者として見守るしかない。そこから生まれる謎とサスペンスは近年の邦画の中でも出色。

 

1回戦、2回戦、3回戦と対決を経るごとに謎が明かされ、そして謎が深まっていく。サスペンスがまったく途切れず、2時間超でもスイスイと鑑賞できた。類家と等々力の二人で続編というか、スピンオフを作ってほしい。そう思えるほど、ストーリーだけではなくキャラの魅力にもあふれた逸品だった。

 

ネガティブ・サイド

警察は事件の話を外でもしないし、家庭内でもしない。もちろん刑事も人の子で、家族には一般的な捜査の手法ぐらいは話すかもしれない。しかし警察という組織がどのような手順で動くのかなどを話すわけがない。

 

そもそも某キャラも家族を想っている描写を見せつつも、やってしまったことは家族を追い詰める行為。こんな警察官いるか?

 

爆弾についても同じで、かなり不自然。爆弾そのもののアイデアはなかなか洒落ているが、それらがあのタイミングであんな風に爆発するわけがない。

 

総評

よくよく考えればおかしい点はいくつもあるものの、謎とサスペンスが矢継ぎ早に提示されていくので、鑑賞中はとにかくストーリーに没頭できる。佐藤二朗は50代にしてキャリアの代表作が生まれたし、山田裕貴は次は経済ヤクザか殺人犯役かな。一部でグロいシーンがあるが、気になる向きはそのシーンだけ片目をつぶればよい。案外、デートムービーに良いかもしれない。恋人あるいは恋人未満の相手と一緒に見たら、間違いなく心拍数が上がるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go down in history

歴史に名を残す、の意。Jovianの元同僚の英検1級保持者(予備校講師上がり)が知らなかった表現。世間では早くもクリスマスケーキの予約が始まったが、とあるクリスマスソングを英語で歌えば、この表現が出てくる。街中のBGMに耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 羅小黒戦記2 』
『 代々木ジョニーの憂鬱な放課後 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ミステリ, 佐藤二朗, 山田裕貴, 日本, 染谷将太, 渡部篤郎, 監督:永井聡, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 爆弾 』 -佐藤二朗のベストアクト-

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