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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 2020年代

『 市子 』 -それでも静かに生きていく-

Posted on 2023年12月19日 by cool-jupiter

市子 75点
2023年12月16日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:杉咲花 若葉竜也
監督:戸田彬弘

 

簡易レビュー。

あらすじ

市子(杉咲花)は同棲している恋人の長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けて快諾する。しかし、市子は翌日に姿を消してしまう。市子を探し求める長谷川は、市子がかつては月子と名乗っていたことを知り・・・

 

ポジティブ・サイド

本作の扱うテーマはレバノン映画の傑作『 存在のない子供たち 』と同じ。戸籍=身分証明=アイデンティティというのが現代社会だが、そこからこぼれ落ちてしまった者はどう生きていけばよいのか。本作はそれを追究しようとしている。

 

これまで少女役ばかりだった杉咲花がやっと一皮むけたかなという印象。弱さと強かさの両方を併せ持つ女性を演じきったのは見事。傾城の美女ではなくともファム・ファタールにはなれるのだ。

 

市子の過去をめぐって様々な人物の物語を移していく手法は『 正欲 』と同じ。また、エンドロールの際に流れる声で物語を想起させる手法は『 カランコエの花 』と同じ。content ではなく form が重なるのは個人的には全然OKである。

 

ネガティブ・サイド

いくらなんでも最初の事件は簡単に事の真相がばれてしまうと思うのだが。そうなると月子→市子というメタモルフォーゼも無理ということなってしまう・・・

 

また次の事件では死んだ人間の仕事がそちら関係なので、必然的に市子およびその周辺も捜査されてしまうと思われる。

 

総評

ウィリアム・アイリッシュの昔から「消えた女」を追うというプロットはハズレが少ない。本作もいくつかの点に目をつぶればOKだ。作劇の面ではいくつかの先行作品とそっくりだが、中身の点では『 さがす 』に似ていると感じた。邦画の世界でも陰影の深い作品が生み出されつつあるのは好ましいことだと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

hug

ハグするというのは日本語にもなっている。意味は「抱きしめる」である。劇中の長谷川の印象的なセリフに「抱きしめたい」というものがあったが、あれは I want to hug her. となるはず。よりドラマチックかつロマンチックな言い方をするなら I want to wrap her in my arms. となる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』
『 怪物の木こり 』
『 きっと、それは愛じゃない 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 日本, 杉咲花, 監督:戸田彬弘, 若葉竜也, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 市子 』 -それでも静かに生きていく-

『 エクソシスト 信じる者 』 -ホラーというよりは人間ドラマ-

Posted on 2023年12月12日 by cool-jupiter

エクソシスト 信じる者 60点
2023年12月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レスリー・オドム・Jr. リディア・ジュエット アン・ダウド エレン・バースティン
監督:デビッド・ゴードン・グリーン

 

傑作『 エクソシスト 』の続編ということでチケット購入。

あらすじ

娘のアンジェラ(リディア・ジュエット)が友達と二人で宿題をすると言ったが帰ってこない。調べたところ、二人は森に入っていた。父ビクター(レスリー・オドム・Jr)は懸命に娘を探すが見当たらない。二人は3日後にとある牧場の納屋で見つかるも、その間の記憶がない。それどころか、不可解な現象がビクターの身の回りで起こり始めて・・・

ポジティブ・サイド

母と娘の絆の戦いが、本作では父と娘の絆の戦いになっている。その父ビクターを演じるレスリー・オドム・Jr.が印象的。どこかで観たと思ったら『 ハリエット 』でウィリアム・スティルを演じていたのか。優しさと厳しさを同居させた、まさにアメリカ的な positive male figure で、男性というジェンダーの特徴をうまい具合に体現しているなと感じた。また、そのことが悪魔憑きの(間接的な)原因になっているのは上手いと感じた。

 

娘のアンジェラも純粋無垢な少女が悪魔に憑りつかれて変貌していく様は結構怖い。失禁から始まって、痙攣に至るまでがリアル。アンジェラが徐々に体のコントロールを失っていくという経過を巧みに描いている。

 

究極的には白人の母娘とカトリックの神父のストーリーだった前作とは違い、今作は各地のエクソシストの混合チームを結成。その過程で、意地悪に思えた隣人が加入してくる経緯がユニーク。また、前作の母親クリス・マクニールが同役で再登場。彼女のもとに車でビクターが向かうシーンで流れる Tubular Bells が個人的には本作のピークだった。

 

悪魔祓いの儀式前に「え?」という展開で唖然とさせられる。そして満を持して登場した神父が『 エクソシスト 』で最も有名なシーンを再現。このシーンが最もホラーらしかった。

 

ネガティブ・サイド

ジャンプ・スケアが多過ぎ。特に序盤。こけおどしの演出でびっくりさせるのではなく、観る側の恐怖心を刺激するような演出をしてほしい。夏恒例の糞ホラーではなく『 エクソシスト 』の続編なのに。

 

学校の授業で心霊云々のビデオを鑑賞するものだろうか。普通に子供たちが自宅のPCでそれっぽいYouTubeを観るのではダメだったのだろうか。PCにグリッチが走る場面が序盤にもあったことだし。

 

憑依された子供たちの演技は見事だったものの、結末は拍子抜けかな。というか前作を意識しすぎているよう思う。「どうせ上回るものが作れないなら、前作と似たような作りにしてしまえ」的な姿勢が監督から感じられた。それは創作活動の姿勢としては評価するのは難しい。

 

娘リーガンと母クリスの再会はちょっと蛇足だったかな。

 

総評

『 エクソシスト 』の続編。前作を観ていなくても鑑賞は可能。直接的なつながりは少しだけしかないが、色々とオマージュがあるので、できれば予習を推奨する。本作は一義的にはホラーではなくヒューマンドラマ。チケット購入に際しては、このことを承知しておきたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

seance 

『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』や『 ズーム/見えない参加者 』などでもおなじみの「交霊会」の意。TOEFL iBT110やIELTS8.5を目指すような人でも知っている意味はない。ただ、オカルトやホラーが好き、かつ英語にも興味がある(この語はもともとはフランス語だが)という向きなら、教養の一環として知っておいていいかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 市子 』
『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』
『 怪物の木こり 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アン・ダウド, エレン・バースティン, ヒューマンドラマ, ホラー, リディア・ジュエット, レスリー・オドム・Jr., 監督:デビッド・ゴードン・グリーン, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 エクソシスト 信じる者 』 -ホラーというよりは人間ドラマ-

『 首 』 -北野武の自伝映画-

Posted on 2023年12月6日 by cool-jupiter

首 65点
2023年12月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ビートたけし 西島秀俊 加瀬亮
監督:北野武

 

Jovianはまあまあ歴史好きで、日本史だと八切止夫の悪影響のせいか、明智光秀が好きである。ちなみに本作を鑑賞するにあたって歴史的な考証や学説を背景にして考えてはいけない。あくまでも北野史観、もしくは北野武の自伝として観るべきである。

あらすじ

天正七年。荒木村重は主君・織田信長(加瀬亮)に反旗を翻した。謀反を平定した織田軍では、重臣の明智光秀(西島秀俊)と羽柴秀吉(ビートたけし)が乱の首謀者の村重を捕縛すれば、信長の跡目になれると伝えられて・・・

 

ポジティブ・サイド

観終わって一番の感想は「これはたけしの自伝だな」だった。やることがすべて石原軍団や東京キッズの猿真似だったピートたけしが、やることすべてが信長の猿真似と言われた秀吉を演じているところからも、そのことがうかがわれる。男しか軍団に入れない「たけし軍団」の思想が本作にも色濃く投影されている。一部でBL色が強いという声もあるようだが、衆道や男色は別に安土桃山時代の専売特許ではなく、それこそ足利将軍時代から現代まで連綿と存在してきたわけで、それを指してBLと呼ぶのは少し違う気がする。むしろ、戦国時代の男たちの関係を描くことで、北野武が自らの思想を開陳したと見るべきなのだろう。火事で死亡したたけしの師匠・深見千三郎が本作における織田信長であることは火を見るよりも明らかだ。

 

映像は北野武作品らしいバイオレンスとユーモアに満ちている。それが命があっさりと消えてしまう戦国時代を非常にリアルに映し出していた。個人的に最も笑わせてもらったのが徳川家康と影武者。三方ヶ原の戦いの頃から影武者が何人もいたのは有名な話で、これでもかと刺客に狙われて、そのたびにどんどん影武者が死んでいく。男しか出てこない本作の中で、数少ない例外が柴田理恵か。夜伽の相手に一番の年増を選ぶ家康に笑ってしまうし、鬼の形相で家康に襲い掛からんとする柴田理恵にも笑ってしまう。もう一つ女性が出てくる場面は備中高松城。退陣していく羽柴軍を見て「メシの種が逃げていく」と焦る遊女たちにも笑ってしまう。

 

本作を別の視点から見る重要キャラに曽呂利新左エ門がいる。芸人の祖にあたる人物でカムイさながらの抜け忍。東西冷戦さなかのダブルエージェントのごとく、あちらこちらへ飛び回り、情報を仕入れてくる。また侍大将を夢見る百姓の茂助のキャラもいい。お笑い界の頂点を目指さんと青雲の志を抱き、アホながら一直線に駆け抜けるも・・・という、まさに現代お笑い界の芸人そのままの生きざま。

 

生え抜きだろうが外様だろうが、有能であればどんどん取り立ててきた信長が晩年には自らの息子たちに甘々になっていたのは近代の歴史学が明らかにしたところ。加瀬亮のキレっぷりばかりがフォーカスされているが、魔王としての信長と人間としての信長の両面を描いた作品は他にはなかなか思いつかない。『 利休にたずねよ 』が近いぐらいか。芸人としての師匠と人間としての師匠を重ね合わせていたのだろう。

 

物語を通じてこれでもかというぐらいに人が死ぬが、首にこだわって死んだ茂助と首に執着せず、結果的に天下を取った秀吉。この残酷なコントラストの意味するところは、誰を殺したかではなく何人を殺したかということ。お笑いで天下を取りたければ、審査員を笑わせるのではなく一般大衆を笑わせろ。ビジネスで天下を取りたいなら、特定クライアントではなく世間を喜ばせろ、ということか。

ネガティブ・サイド

秀吉や家康は信長よりかなり若いのだが、本作ではそこがおかしい。秀吉はビートたけしがどうしても演じたかったのだろうが、家康には40歳ぐらいの俳優で適任を探せなかったのか。

 

一部の役者の演技がワンパターン。というか、西島秀俊は誰を演じても西島秀俊。ニコラス・ケイジやハリソン・フォードと同じタイプの俳優やな。案外、椎名桔平あたりが明智光秀に合っていたかも。

 

秀吉、秀永、官兵衛の三人が喋るシーンはかなりの割合でアドリブが入っていなかったか。明らかにおかしな「間」が散見された。これが北野武流の映画作りだと言われれば納得するしかないが、面白さを増していたかと言われれば大いに疑問である。

総評

歴史的・史料的な正確性を過度に求めなければ十分に楽しめるはず。北野作品ということでグロテスクなシーン、暴力的なシーンもあるので、そこは注意のこと。本能寺の変という日本史上の一大ミステリの真相についても一定の答えを提示している点も興味深い。デートムービーには向かないが、時代劇好き・歴史好きな父親を持っていれば、たまにはご尊父を映画館に誘って、親孝行してみるのもいいだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

successor

跡継ぎ、継承者の意味。知っての通り、織田信長の権力基盤を受け継いだのは形の上では織田信雄だが、実質的な権力を継承したのは羽柴秀吉だった。本作ではしきりに跡目という表現が使われるが、英語で最も一般的に使われる跡目、跡継ぎは successor である。successor to the throne =王位継承者、successor to the business =事業承継者のように、前置詞 to を使うことを覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 市子 』
『 エクソシスト 信じる者 』
『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, C Rank, ビートたけし, 加瀬亮, 日本, 歴史, 監督:北野武, 西島秀俊, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 首 』 -北野武の自伝映画-

『 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 』 -社会批判コメディの良作-

Posted on 2023年11月28日 by cool-jupiter

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 70点
2023年11月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:GACKT 二階堂ふみ 杏 片岡愛之助
監督:武内英樹

 

『 翔んで埼玉 』の続編。前作には劣るものの、コメディの中にも社会批判の精神が垣間見られる良作だった。

あらすじ

埼玉解放戦線の活躍により通行手形が廃止されて3か月。埼玉県人は東京を目指すばかりで、横のつながりを欠きつつあった。麻実麗(GACKT)は埼玉の心をひとつにすべく、海を作ることを画策。和歌山の白浜から良質な真砂を持ち帰るために出航するが・・・

ポジティブ・サイド

埼玉県民がラジオ放送の物語に耳を傾けるという前作のフォーマットを踏襲。しかし、今回は舞台が滋賀ということで今度は関西人をビジネスターゲットにした。そしてそれはかなり成功していると感じた。とにかくローカルネタのオンパレードで関西人の笑いのツボを的確に刺激してくる。尼崎にもなぜか平和堂があり、よく行くところなので、HOPカードには我あらずプッと吹き出してしまった。

 

前作でのネタも適度に引き継いでいるので、埼玉に海を作るという突拍子もないアイデアもすんなりと受け入れられた。また麗がマイアミ帰りという設定がまさかこのような形で説明されるとは思わなかった。左フックをあごに食らったような衝撃だが、これは滋賀県民ならゲラゲラ大笑いしてしまうのかもしれない。

 

そんな麗と仲間たちが、なんだかんだで関西上陸。そこで大阪の横暴と圧政に苦しむ滋賀その他の住民たちと解放戦線を組むというのはワンパターンではあるが面白い。そしてその面白さは、ヴィランがヴィランとして躍動しているからこそ際立つ。

 

本作では吉村大阪府知事の冷酷さや身勝手さが、嘉祥寺というキャラを通じてよくよく表現されていた。タイガースの優勝や大阪万博など、タイムリーなネタも満載。特に大阪府民以外が道頓堀に飛び込むのは許さない、という姿勢には唸った。コロナ爆発の前、かの知事が兵庫県民と京都府民に「大阪に来るな」と発言したことを覚えている関西人は多いだろう。この傲岸不遜な姿勢、心根をとことんパロディ化することに成功した武内監督および脚本家の徳永友一は透徹した人物眼の持ち主であると評したい。

 

この極悪大阪に対して、「琵琶湖の水を止める」という鉄板ネタで立ち向かう滋賀解放戦線には笑うしかない。そして前作でも繰り広げられたご当地出身の有名人合戦もユーモア抜群。特に西宮出身であるにもかかわらず神戸出身を公言していた女優が、実は別の土地と非常に深い関わりを持っていたというシーンには腹の底から笑わせてもらった。

 

最後は「白い粉」で全世界の大阪化を画策する府知事の目論みを、まさかの方法で文字通り粉砕するギャグ漫画かいなという超絶展開。というか元々はギャグ漫画だったな。大阪のシンボルを埼玉の自虐ネタが粉砕するという展開にイライラさせられた大阪人もいたことだろうが、最後に大阪人の面倒見の良さをアピールするという抜かりなさ。生粋の大阪人のJovian妻は「やっぱり大阪人は人情あるわ」と、すっかり製作者の掌の上で踊らされていた。散々大阪をディスりながら、最後にコロッと態度を変えさせる。作り手は大阪人をよくわかっている。大阪人だけではなく、神戸市民以外の兵庫県民、京都市民以外の京都府民、そして滋賀県民や和歌山県民にもお勧めしたい改作である。

ネガティブ・サイド

尼崎の劇中での描かれ方はなんだったのだろうか。大阪市尼崎区と揶揄されることもある我が街であるが、こんな意味不明な描写をされるのならカットしてほしかった。もしくは大阪最強軍団の補欠的扱いで姫路と一緒にむりやり動員される、というのなら笑えたのだが。

 

甲子園を脱出した麗がいきなり京都の祇園にワープしたのは何故なのか。梅田の地下ダンジョンは全カット?うーむ・・・

 

大阪府知事の怪しい儀式は不要だったかな。

総評

前作が東京のジャイアニズムをとことん皮肉ったように、今作では大阪のジャイアニズムをとことんコケにしている。その象徴が片岡愛之助演じる大阪府知事。大阪もしくは関西圏以外の方々には吉村大阪府知事がどのように受け止められているのかは分からないが、彼の本性が本作では非常にコミカルに、しかりリアルに描かれていると思って頂いて結構だ。思えばこうした大都市に搾取される地方という構図は日本の問題の縮図である。ぜひ本作を見て大いに笑ってもらい、最後に少しヒヤッとしてもらいたい(特に都会人)。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take someone away

誰かを連行する、の意味。『 スター・ウォーズ 』の冒頭でダースベイダーがトルーパーにレイア姫を連行するように言う時に “Take her away!” と言っていた。映画でしょっちゅう聞こえてくる表現なので、意識して聞いてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 花腐し 』
『 首 』
『 市子 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, GACKT, ブラック・コメディ, 二階堂ふみ, 日本, 杏, 片岡愛之助, 監督:武内英樹, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 』 -社会批判コメディの良作-

『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

Posted on 2023年11月22日 by cool-jupiter

デシベル 65点
2023年11月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・レウォン
監督:ファン・イノ

 

韓国映画お得意のサスペンスものということでチケット購入。

あらすじ

とある家に爆弾が届けられ爆発。そのニュースを知った潜水艦の元副長カン・ドヨン(キム・レウォン)のもとに犯人からの電話が入る。次のターゲットがサッカースタジアムだが、そこに仕掛けられた爆弾は一定以上の音量に反応すると起爆までの時間が半減するというもので・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の潜水艦シーンは『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』そっくり。もちろん真似たわけではないだろうが、韓国映画はハリウッド映画的な文法を忠実に実行することがある。この時点で期待が盛り上がってきた。

 

一年後、謎の爆破事件が勃発。そこから元副長のカン・ドヨンの苦闘が始まる。途中でなし崩し的に仲間になる記者のオ・デオがめちゃくちゃ良い奴。韓国映画界には味のある三枚目がよく出てくるが、彼もそんな感じ。コミックリリーフが存在するおかげで、そのコントラストとしての爆弾テロリストの恐怖が倍増している。

 

一定以上のデシベルを感知すると爆弾のカウントダウンの残り時間が半減するというのはなかなか怖い。日常の街中の声や音がそのまま凶器と化すからだ。潜水艦の隠密性も音を出さないことから得られるので、潜水艦乗りのカン・ドヨンが音に苛まれるのは観ていて本当に痛々しかった。

 

謎の爆弾魔が犯行に及ぶ動機が明らかになるにつれ、サスペンスが盛り上がる。真相を知ったところから、さらにもう一歩踏み込んでその深層部分を非常に硬質なドラマとして見せつけてくる。ストーリーはカン・ドヨンの家族をも巻き込んで進む。奥さんと娘がとことん追いつめられる本作だが、逆に新しい家族観を提示したとも言える。記者オ・デオが最終盤に放つ質問に対するドヨンの答えは、その場では語られない。しかし、彼の思いが最後の最後に回想される。子曰く「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」。人間、ドヨンのように強く生きねばならんなと思わされた。

 

ネガティブ・サイド

爆弾が絡むシークエンスはすべて緊張感がみなぎっているが、終盤の肉弾アクションになると急にクオリティが低下する。細かいカットの連発で、ここはもっと頑張れただろうと思う。軍人同士の格闘戦で、韓国の成人男性のほとんどが兵役経験者ということを考えれば、もっと攻めた演出を監督には施してほしかった。

 

明らかに無関係な一般人をも巻き込むような爆弾設置は、犯人の思想信条上どうだろうか。カン・ドヨンの関係者を徹底的に排除しようとする方が、彼の失ったものとのバランスがとれていると思うのだが。

 

最後に、これは映画の中身とは関係ないが、一言だけ。なんで日本の配給会社や宣伝会社は販促物で盛大なネタバレをかますの?パネルのビジュアルが全部ネタバレしているではないか。のみならず、某映画情報サイトもキャラクター紹介欄でネタバレをかます始末。いや、本作はミステリではないが、だからといってサイトや販促物でネタバレをしていい理由は一つもない。日本の宣伝・配給会社にはもう少し考えてほしいものだ。

 

総評

韓国映画らしいサスペンス。警察をとことんコケにすることに定評がある韓国映画界だが、本作では軍上層部の怠慢や無責任さも堂々と批判している。潜水艦ものだと本邦では『 沈黙の艦隊 』が上映中だが、自衛隊は映画製作にきょぅ力してくれるもので、映画によって批判される対象ではない。それが良いかどうかはさておき、政治や軍事、司法を容赦なくエンタメの形で批判する韓国映画と日本映画のコントラストがここにも見て取れる。単なるサスペンスとしてもなかなかの面白さ。『  白鯨との闘い 』的なサスペンスも楽しめる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

配偶者への呼びかけに使われる。男女どちらが使っても良い。日本語にすると「あなた」や「ねえ」あたりになるだろうか。ドラマでもしょっちゅう聞こえるし、なんなら日本人・韓国人の夫婦YouTuberもよく使っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 花腐し 』
『 首 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・レウォン, サスペンス, 監督:ファン・イノ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

『 正欲 』 -少し語りに頼りすぎ-

Posted on 2023年11月16日 by cool-jupiter

正欲 65点
2023年11月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:稲垣吾郎 新垣結衣 磯村勇人
監督:岸義幸

 

傑作『 前科者 』の岸善幸の監督作ということでチケット購入。悪くはないのだが、期待値を上げすぎたか。

あらすじ

桐生夏月(新垣結衣)は、中学の時に転校していったクラスメイトの佐々木佳道(磯村勇人)と十数年ぶりに再会する。二人には奇妙な共通点があり、夏月は佳道に接近しようとする。一方で、検察官の寺井(稲垣吾郎)は不登校になった息子の教育方針を巡って、妻と徐々に折り合いが悪くなっていき・・・

ポジティブ・サイド

通常とは異なる性的志向を持つ人々に関する映画が近年特に増えてきたと感じる。2018年公開の『 カランコエの花 』、2021年公開の『 彼女が好きなものは 』、2023年公開の『 エゴイスト 』などLGBTに焦点を当てた作品は枚挙にいとまがない。アロマンティックに光を当てた『 そばかす 』も独自の面白さがあったが、本作はさらに突っ込んだ sexual orientation をテーマに持ってきた。

 

ストーリーの中心にいるのは新垣結衣と磯村勇人。中学校の同級生だが、佳道が引っ越して以来、二人の奇妙な縁は途切れていた。しかし、佳道の両親の交通事故死と佳道の帰郷から二人の奇縁が徐々に戻ってくる。その見せ方が非常に巧みだと感じた。田舎特有の人間関係の濃密さ、つまり悪気のないプライバシーの詮索や介入が爽やかに行われる。そんな中で二人が育む奇妙な関係が逆に好ましく、愛らしく思えてくる。

 

その裏側では検察官の稲垣吾郎が不登校の息子の教育方針や子育ての方針をめぐって妻と対立する。いや、対立というよりも拒絶の方が近いか。自分の理解の及ばないものは認めない。不登校YouTuberを詐欺師と切って捨てるが、あまりにも狭量だ。YouTuberの中に詐欺師がいるのは現実だが、普通に学校に行っている、普通に会社勤めをしている者の中にも詐欺師は存在する。けれども、この男の中では世の中は白と黒で割り切れて、自分が黒いと思ったものはすべて黒いのだ。この稲垣吾郎演じる検事が一種のリトマス試験紙になっていて、見る側がどれだけダイバーシティを許容できるか、あるいは許容できないのかを測る物差しになっている。

サイドストーリーとして大学生二人の不思議な関係性もフォーカスされるが、その片方の男性が突如としてメインのプロットに絡んでくるところが非常に現代的と言える。同好の士と出会うことのハードルが下がったことは、間違いなく個人を利している。しかし、そのことが社会を利すかどうかは別問題になるのが難しいところ。

 

多様な登場人物たちの群像劇となっているのは、原作者・朝井リョウの『 桐島、部活やめるってよ 』と同じ。学校という非常に狭いコミュニティから、社会という非常に広大なコミュニティにストーリーの舞台は移っているが、ある人間の言動が別の人間に思いがけず大きな影響を及ぼしていく、という点では共通している。新垣結衣と稲垣吾郎のほんのちょっとした、しかしやや奇妙な会話が、最終盤で非常に大きな意味を持ってくる。というか、稲垣吾郎が処理しきれない意味や情報となって圧し掛かってくる。彼がほんのわずかだけ見せる動揺を我々は見逃さない。それは我々も同じく動揺しているから。常識外の存在、理外の存在と思っていた相手にこそ優しや思いやりといった人間性が宿っていると気付いた時の心情はいかばかりか。それを映し出すためだけに本作は制作されたと言っても過言ではない。

 

それにしても、マジョリティの性的志向者と超マイノリティの性的志向者の違いをあっけらかんと映し出すシーンには恐れ入った。偶然なのだろうが、『 東京ラブストーリー 』かいなというセリフを新垣結衣が口にした瞬間に、最後列の誰かがポップコーンか何かをドサッと落とした音が聞こえた。セリフに動揺したのか?トレーニングみたいというセリフが聞こえたが、慣れないうちは行為の後に筋肉痛になったという男は多いはず。こういうリアルなセリフをサラッと言えるところに異質さを感じたし、だからこそ新垣結衣が検事に託す伝言の重みが増すのだろう。

 

ネガティブ・サイド

ちょっと全体的に説明セリフが多すぎると感じた。目立ってそう感じたのは2つのシーン。一つは稲垣吾郎が不登校YouTuberについて妻と言い争うシーン。もう一つは大学の空き教室のシーン。いずれも思いをストレートに言葉にしすぎ。もっと表情や身振り手振りや立ち居振る舞いで見せてほしい。小説の映画化なので言葉に頼りたくなるのは分かるが、それだと小説を読めばすんでしまう。映像にするにあたって、もっと観客に感じ取ってもらえるような演出をすべき。

 

登場人物の行動でひとつ腑に落ちなかったのは夏月が佳道の家に突撃するシーン。同好の士、あるいは同病相憐れむ仲だと思っていた相手に裏切られたと感じたのか?普通の恋愛感情や異性への性欲が理解できないにしては、部屋の明かりが消えたことの意味を悟ったのは何故なのか?たとえば回転寿司屋で、佳道の連れの女性がセルフサービスの水を持ってくる、そして、その水を美味しそうに飲む、のようなカットが一瞬でもあれば良かったのだが。編集でカットされたのだろうか。

 

あとは夏月と佳道の生活か。卵焼きをシェアするのも良いが、たとえば風呂場やトイレ、台所で二人が恍惚とするシーンが一切なかった。または公共料金の請求書に二人して唖然とする、あるいは大笑いするのようなシーンもなかった。これも編集でカットされたのだろうか。二人がいわゆる「普通」とは違うというシーンをもう少し見せるべきだったと思う。

 

総評

かなり野心的な作品。ストーリーは文句なしに面白いし、演技に関しても安定の磯村勇人や新鋭の東野絢香が堪能できる。ただ、映画的なカメラワークはまったく無いし、とある「物」をきれいに映し出してはいるが、艶めかしさまでは感じさせなかった。物語としては◎だが、映像作品としては△か。ただし、現代的なテーマを扱い、単純なハッピーエンドで終わらせないところは買い。エンドロールの際に胸に去来する想いの強さが、おそらくその人の想像力と共感力の強さだろう。それらを測る映画であると言える。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

-phile

ファイルと読む。これは接尾辞で「~が好き」「~に親しんでいる」という意味を作り出す。Jovianが高校生ぐらいだったかな。雑誌か何かで「Xファイルの熱烈ファンをX-Phileと呼ぶ」のような記事を読んで、それで -phile の意味を学んだことを覚えている。本作の場合だと、aquaphile となるだろうか。パッと見で意味が分かりそうだが、実際に調べるのは映画の鑑賞後にどうぞ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 デシベル 』
『 花腐し 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 新垣結衣, 日本, 監督:岸義幸, 磯村勇人, 稲垣吾郎, 配給会社:ビターズ・エンドLeave a Comment on 『 正欲 』 -少し語りに頼りすぎ-

『 火の鳥 エデンの花 』 -再解釈に失敗-

Posted on 2023年11月12日 by cool-jupiter

火の鳥 エデンの花 20点
2023年11月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:宮沢りえ 吉田帆乃華 窪塚洋介
監督:西見祥示郎

兵庫県宝塚市出身の巨匠、手塚治虫の数ある作品の中でも、おそらく1、2を争うクオリティの『 火の鳥 』シリーズ、その中でも望郷編がアニメ化されたと知り、チケット購入。

 

あらすじ

辺境惑星エデンに降り立ったロミ(宮沢りえ)とジョージ(窪塚洋介)。エデンに根を下ろすべく、ジョージは水資源を探し求めるが、事故によって帰らぬ人となってしまう。身ごもっていたロミは、ロボットのシバと共に子を産み、育てることになるのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 えんとつ町のプペル 』や『 海獣の子供 』のSTUDIO4℃による映像は確かにきれいだった。漫画に描かれていなかったエデンの地上の細部や、あるいは空に浮かぶ近傍惑星の姿、さらに岩船で降り立つ星の奇妙な生態系など、このあたりの描写は漫画を映画にした甲斐があったと評価できる。

 

コム役の声はなかなかの演技。泉下の手塚治虫師も納得のパフォーマンスだったのではないだろうか。

 

ロボットのシバも声とキャラデザ、そして挙動は良かった。

 

ネガティブ・サイド

序盤のストーリー展開を改変、いや改悪してしまったのは何故なのか。手塚治虫が『 創世記 』の一節「カインはその妻を知った」に対して「その妻はどこから出てきた?そうか、こういうことか?」と考えた(かどうかは知らないが、恐らくそうだろうと想像する)その答えが、見事に否定されてしまった。色々と描くのに制約があるのは分かるが、何も直接的な行為を見せる必要があるわけではない。火の鳥という永遠の生命をもつ存在から見れば、人の生き死になど一瞬のこと。しかし、その一瞬の中にも生命は信じられないほどのドラマを生み出すのだというのが『 火の鳥 』という作品のテーマではなかったか。本作は、その信じられないドラマのパートを全部吹っ飛ばしたわけで、以後のシーンはまったく集中して観られなかった。

 

だいたい窪塚洋介の声の演技がひどい。監督は何をどう演出したというのか。宮沢りえも、個人的にはミスキャスト。本作はロミという少女が女性へと変化を遂げ、さらに老境に達しても、性質も話し方も変わらない。そこは演じ分けてほしかった。これも監督の演出なのか。

 

だいたい13年のコールドスリープと1300年のコールドスリープを間違えるか?間違えるにしても、カインもシバも13年間まったく気が付かないことなどありえるか?

 

目覚めたロミが女王として君臨する流れにも違和感ありあり。原作で描かれた禁忌が本作では存在していないため、エデンの繁栄に対してロミが何も寄与していないにもかかわらず女王として崇められるのは不自然過ぎた。

 

その後はイッセー尾形の声のキャラ以外の棒読み演技でじっくりとはとても鑑賞できず・・・ 原作から改変されたエンディングも釈然としなかった。

 

総評

様々な意味で物足りない作品。Jovianは『 火の鳥 』の中では『 未来編 』、『 黎明編 』、『 乱世編 』、『 太陽編 』が好きだが、本作は多分ヒットしないだろうし、他の『 火の鳥 』作品を現代に再解釈しようという機運の醸成にも寄与しないように思われる。うーむ、残念・・・。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

nostalgia

望郷の意味。feel nostalgic for ~ で「~を懐かしく感じる」という形でよく使われる。この語は接尾辞 -ia がついているのがポイント。英検準1級以上を目指すのなら、-iaで終わるのはだいたい、病気、地名、花の名前だと覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 デシベル 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, SF, アニメ, 吉田穂乃華, 宮沢りえ, 日本, 監督:西見祥示郎, 窪塚洋介, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 火の鳥 エデンの花 』 -再解釈に失敗-

『 ドミノ 』 ーThe less you know, the betterー

Posted on 2023年11月6日2023年11月6日 by cool-jupiter

ドミノ 65点
2023年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ベン・アフレック ウィリアム・フィクナー アリシー・ブラガ
監督:ロバート・ロドリゲス

 

本作に関しては、極力何の事前情報も入れずに鑑賞するのが吉である。それにしても『 リゾートバイト 』でも感じたが、日本の配給会社、提供会社はもうちょっと宣伝文句を控えめにできないものか。

あらすじ

娘を誘拐された心の傷を持つ刑事ローク(ベン・アフレック)のもとに、銀行強盗のタレコミが入る。現場で犯人が狙う貸金庫の中からロークは娘の写真と謎のメッセージを発見する。犯人は警察官を操り、屋上から飛び降りて姿を消した。捜査を進めるロークは、謎の占い師ダイアナ(アリシー・ブラガ)から、人間を操るヒプノティックの存在を知らされ・・・

ポジティブ・サイド

本作はアクション映画の大家ロバート・ロドリゲスの新境地かもしれない。『 アリータ バトル・エンジェル 』などで驚きのアクション・シークエンスを演出してきた彼が、今作ではミステリー、サスペンス、スリラーの要素を前面に打ち出してきた。原題の Hypnotic とは「催眠にかかっている」の意。動詞の hypnotize は『 この子は邪悪 』で紹介しているので、興味のある向きは参照されたい。 

 

ベン・アフレックが傷心の刑事を好演しているが、やはりトレイラーから存在感抜群だったウィリアム・フィクナー演じる謎の術師が素晴らしい。キリアン・マーフィーもそうだが、見た目からしてただならぬ妖気というかオーラがあり、一筋縄ではいかないキャラであることが一目でわかる。

 

捜査中に知り合った謎の女ダイアナと共に、謎の催眠術師レヴ・デルレーンを追いかけ、また追いかけられるという中盤の展開はスリリング。しかし、相手は他人に「別の世界」を知覚させてしまう術師。襲い来る群衆に、味方でさえも信用できない状況。緊迫感を煽るBGMと共にサスペンスが盛り上がる。

 

中盤に「ほほう」という展開がやってくる。細かいネタバレはご法度だが、本作は一種の記憶喪失もの。タイムトラベルものと記憶喪失ものは序盤から中盤にかけては絶対に面白い・・・のだが、逆に終盤に尻すぼみになってしまうことがほとんど。本作は、そこにさらにもう一捻り二捻りを加えてきたところが秀逸。細かくは言えないが、1990年代の小説『 NIGHT HEAD 』の某敵キャラがヒントである。

 

94分とコンパクトながら、様々なアイデアを巧みに盛り込み、それでも消化不良を起こさせない脚本はお見事。後半の怒涛の伏線回収は作劇術のお手本と言えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

映像は確かに凄いが、街がグニャリと折れ曲がっていく光景は『 インセプション 』や『 ドクター・ストレンジ 』で見た。二番煎じは不要である。

 

また催眠術が効かない人間が一定数出るのは、感染パニックもので一定数最初から免疫を持つ者がいるのと同じ。それが特定のキャラクターとなると、どうしても「ははーん、つまりコイツはあれだな」と簡単に邪推できてしまう。もう少し捻りが必要だったろう。感染ものではないが『 トータル・リコール 』などともそっくりだ。

 

ダイアナという能力者が主人公に協力しつつも、敵であるデルレーンが自分よりも強力な能力者で尻込みしながらも何とか抵抗していくというのは『 ブレイン・ゲーム 』にそっくり。ということは「この先に何かあるよね?」と疑うのは理の当然。どんでん返しというのは、予想もしないところからひっくり返す、あるいは予想していた以上にひっくり返すことが求められるが、本作に関しては予想の範囲内だったという印象。

 

総評

どんでん返しがあると思って観てはいけない。本作を楽しむ最大のポイントは公式ホームページなども含めて、事前の情報を極力避けることにある。ということは、こんなレビューを読んでいる時点でアウトである。観るならサッサとチケットを買う。観ないのなら別の映画のチケットを買う。それだけのことである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

construct

ここで紹介したいのは「建築する」「構築する」という動詞ではなく「心理的構成物」という名詞の意味。『 マトリックス 』でエージェント・スミスがネオに向かって戦う意味を ”Is it freedom or truth?! Perhaps peace?! Could it be for love?! Illusions, Mr. Anderson, vagaries of perception! Temporary constructs of a feeble human intellect trying desperately to justify an existence that is without meaning or purpose!” のように問うシーンでも使われている。心理学や哲学を勉強している、あるいは英検1級やTOEFL iBT100、IELTS7.5を目指す人なら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アリシー・ブラガ, ウィリアム・フィクナー, スリラー, ベン・アフレック, 監督:ロバート・ロドリゲス, 配給会社:ギャガ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 ドミノ 』 ーThe less you know, the betterー

Godzilla Minus One -A great homage to the very first film and GMK-

Posted on 2023年11月5日 by cool-jupiter

Godzilla Minus One 75/100
November 3rd, 2023 Watched at Movix Amagasaki
Casts: Ryunosuke Kamiki   Minami Hamabe
Director: Takashi Yamazaki

 

Director Takashi Yamazaki, who angered many movie fans with ‘Dragon Quest: Your Story’ somewhat redeemed himself with ‘Lupin the 3rd: The First.’ I bought a ticket a little concerned, but I got my money’s worth/

Introduction

As the end of the war drew near, pilot Shikishima (Ryunosuke Kamiki), assighned the mission of launching a kamikaze attack on the enemy, had to make an emergency landing on Odo-shima Island due to aircraft trouble. However, that night, Godzilla attacked the island, and the detachment was wiped out. The only survivors were Shikishima and the chief mechanic. Later, when Shikishima returned to Tokyo, he learned of his parents’ death. However, he got into a strange relationship with Noriko (Minami Hamabe), and a child to whom she was not the biological mother …

Some major spoilers ahead. You’ve been warned.

 

Positives

The story began with Odo-shima Island, which put a smile on my face. And Godzilla’s appearance within the first 5 minutes also put a smile on my face. “Shin Godzilla”, the last Japanese Godilla film, had an early appearance of Godzilla, too, but this film immediately shows us the full body of Godzilla, which Shin Godzilla didn’t do.

 

Once Godzilla got his feet dry, Tokyo turned into a wasteland just like that. Unlike the first Godzilla that was in black and white, this one felt very realistic. In the first film, where all the characters (except Dr. Yamane) were full of sadness and despair. On the other hand, in this film, various characters’ emotions crisscrossed. Despite being a special kamikaze attack team member, Shikishima, the protagonist played by Ryunosuke Kamiki, refused to die and survived. A young girl who some other woman entrusted her baby to somehow got to know him. The next door widow, played by Sakura Andoh, intervened and helped this young strange couple. Even though the story was set in 1945, it was still very easy to sympathize with these characters because the emotions they were going through were universal.

 

Godzilla, powered up and enlarged by the Bikini Atoll nuclear tests, soon reappeared and destroyed the heck out of the Ginza district, which was a direct homage to the original. I couldn’t help but raising my fist into the air at the appearance of the tank unit because that was what happened in the original movie. Godzilla’s atomic breath was, in a sense, more destructive than Shin Godzilla’s. The rising mushroom cloud evoked memories of GMK (my favorite Godzilla movie!). What an overwhelming sense of despair and loss!

 

“Shin Godzilla” was about a national effort to stave off and terminate Godzilla, but this film was about a civilian operation against Godzilla, given the pre-Cold War situation at the time and the fact that Japan had been demilitarized by GHQ. It had only been a few years since the end of the war, so there were still quite a few military survivors. When they revealed the tactic, a gadget appeared and it immediately put a smile on your face because it reminded us of the Oxygen Destroyer from the original. The operation involved targeting Godzilla’s weakness as a living creature, and it was reasonably and logically convincing because that was basically what  Mechagodzilla from “Godzilla vs. Kong,” tried to do to Godzilla. The Godzilla theme that played as warships surrounded Godzilla just before this attack was truly an homage to the original because in the first movie, this music came on not when Godzilla destroyed Tokyo, but when the tank unit arrived and opened fire against Godzilla. That unique Akira Ifukube’s Godzilla theme song was originally the BGM when the Self-Defense Forces appeared. In this film, it was used as the theme song for civilian forces, not for Godzilla. Finally, there’s a kamikaze attack on Godzilla’s mouth, just like the anti-nuclear bacteria missile in “Godzilla vs. Mothra.” A heavily wounded Godzilla sinking to the bottom of the ocean was clearly an homage to GMK, which again did put a smile on my face.

 

Writer/director Takashi Yamazaki successfully made a name for himself for creating a new Godilla movie out of the traditional Godzilla movies.

Negatives

The human drama part was weak. To be more precise, it was hard to see the focus of the dramas. It wasn’t clear whether the film wanted to focus on the process of Shikishima, Noriko, and Akiko turning from a pseudo-family into an authentic one or if it wanted to focus on Shikishima and the other survivors overcoming their war traumas. It should have concentrated on on big subplot, not two.

 

A few of the actors’ performances stood out like a sore thumb. Shikishima, the main character, was completely overshadowed by Yoshioka Hidetaka and Kuranosuke Sasaki. The acting, or rather the directing, often missed the mark. In the final scene, Shikishima dropped the coat he was wearing onto the ground, but wasn’t the timing a bit off? That kind of scene happened throughout the film. It felt like Shikishima’s acting or the director’s direction didn’t quite fit in with the main character.

Overall Summary

Defining Godzilla is difficult, but it’s easy to recognize what is not Godzilla. In that sense, there is no room for doubt that the creature in this film is Godzilla, and this film is a Godzilla movie. Showa Godzilla was all about Godzilla destroying Japan, yet Japan always underwent a rehab in a booming economy. Reiwa Godzilla, on the other hand, is portrayed as an ominous force that could come back any time if Japan continues to economically dwindle and politically become right wing. The highly able and competent Japanese government depicted in ‘Shin Godzilla’ was fiction. It seems we’ve entered an era where we, as civilians, must make sure that Godzilla is not real and that he belongs in fiction and entertainment.

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ゴジラ, 怪獣, 日本, 浜辺美波, 監督:山崎貴, 神木隆之介, 配給会社:東宝Leave a Comment on Godzilla Minus One -A great homage to the very first film and GMK-

『 ゴジラ−1.0 』 -初代とGMKへのオマージュ-

Posted on 2023年11月4日 by cool-jupiter

ゴジラ−1.0 75点
2023年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神木隆之介 浜辺美波
監督:山崎貴

 

『 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 』で多くの映画ファンを激怒させ、『 ルパン三世 THE FIRST 』でやや汚名返上した山崎貴監督。不安を抱きつつチケットを購入したが、本作は当たりだった。

あらすじ

終戦間際。特攻を命じられた操縦士の敷島(神木隆之介)は機体不調により大戸島に緊急着陸する。しかし、その夜、ゴジラが島に襲来し、遣隊は全滅。生き残りは敷島と整備長のみだった。その後、東京へ帰った敷島は両親の死を知る。しかし、そこで連れ子を伴った典子(浜辺美波)と共に奇妙な共同生活が始まり・・・

 

以下、本作およびゴジラ・シリーズのマイナーなネタバレあり

ポジティブ・サイド

大戸島というロケーションにニヤリ。そして開始5分で登場するゴジラにもニヤリ。『 シン・ゴジラ 』もゴジラ自体の登場は早かったが、本作はいきなりゴジラの全身を見せつけてくれる。

 

焦土と化した東京も、白黒だった初代ゴジラと違ってリアリティが抜群。登場するキャラクター全員(山根博士除く)に悲壮感いっぱいだった第一作と違い、本作は特攻隊であるにもかかわらず生き延びてしまった敷島や、兵隊が不甲斐ないせいで家族を失ってしまった未亡人など、より様々なキャラクターたちの感情が交錯する。それにより、歴史的に距離がある時代であるにもかかわらず、色々な人物に感情移入しやすくなっている。

 

ビキニ環礁の核実験でパワーアップ、サイズアップしたゴジラが再登場し、銀座を破壊していくシーンは、まさに初代へのオマージュ。戦車隊の登場にも思わずニヤリ。ゴジラの吐く放射熱線は、ある意味シン・ゴジラ以上の破壊力。モクモクと立ち上るキノコ雲はGMK(私的ゴジラ映画第1位!)を髣髴させる。この圧倒的な絶望感と喪失感!

 

『 シン・ゴジラ 』は国を挙げてのゴジラ対策だったが、本作は当時の世界情勢と武装解除された日本という状況から、民間人による対ゴジラ作戦を決行。終戦からわずか数年なので、軍の生き残りはそれなりにいる。そして明かされる作戦。ここでも初代のオキシジェン・デストロイヤーを髣髴させるオブジェにニヤリ。作戦としては、生物としてのゴジラの弱点を突くというもので、説得力はそれなりにあった。また『 ゴジラvsコング 』でメカゴジラがゴジラの口の中に攻撃をしようとして観る側を震え上がらせたが、本作はまさにそれを敢行。その直前に艦船が一斉にゴジラを包囲していく際に流れるゴジラのテーマは、まさに初代へのオマージュ。あの特徴的なテンポの曲は、もともと自衛隊登場時のBGMだった。それが本作にゴジラではなく民間戦力のテーマソングとして使用されたことにもニヤリ。最後には『 ゴジラ対モスラ 』での抗核バクテリア弾よろしくゴジラの口に突撃。ボロボロになって沈みゆくゴジラと、エンディングでの不穏なワンシーンは完全にGMKへのオマージュでさらにニヤリ。

古いゴジラ映画の様々なネタを再調理して、見事な一品に仕立て上げている。

ネガティブ・サイド

人間パートが弱い。というかドラマの焦点が見えにくい。敷島と典子とアキ子の疑似家族が真の家族になっていく過程に焦点を当てたいのか、それとも敷島やその他の生き残りたちの戦争トラウマの克服に焦点を当てたいのかが分かりにくかった。二軸ではなく、どちらかに注力すべきだったと思う。

 

役者の演技のアンバランスというか、主役のはずの敷島が吉岡秀隆や佐々木蔵之介に完全に食われている。演技というか演出も的外れなものが多かった。最終盤、敷島が羽織っていたコートをバサッと地面に落とすのだが、そのタイミングはちょっと違うのでは?と感じた。そういうシーンが多い。敷島の演技というか、監督の演出が主役にだけはハマらなかったように感じる。

総評

ゴジラを定義するのは難しいが、何がゴジラでないのかはすぐにわかる。その意味で、本作に登場するのは確かにゴジラであり、本作はゴジラ映画である。昭和ゴジラといえば日本を破壊しまくり、それでも復興する経済絶好調な日本の産物だった。令和ゴジラはすでに経済的にボロボロな日本が政治的に道を誤ったら復活してしまう存在として描かれている。『 シン・ゴジラ 』で描かれた有能な日本政府という像はフィクションだった。我々民間人がゴジラという虚像(災厄)を虚像(エンタメ)のままにしておかなければならない時代になってしまったようである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

detachment

文脈にもよるが、ここでは分遣隊の意味。本体から切り離されて活動することから、そのように呼称される。attachment に「添付」の意味があることはTOEIC500以上なら知っているはず。detachment とは attachment の反対語なのである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

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