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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 GODZILLA ゴジラ 』 -迫力はあるが、作り込みが甘い-

Posted on 2019年6月2日2020年4月11日 by cool-jupiter

GODZILLA ゴジラ 55点
2019年5月30日 所有ブルーレイにて鑑賞
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン 渡辺謙 エリザベス・オルセン
監督:ギャレス・エドワーズ

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『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』の前日譚にあたるのが本作である。その意味では、復習上映にちょうどよいタイミングであろう。『 シン・ゴジラ 』を劇場鑑賞したからに、USゴジラも鑑賞しないことにはバランスが悪い。

 

あらすじ

怪獣を秘密裏に調査してきた組織モナークはフィリピンで巨大生物の痕跡を発見していた。その後、日本の原子炉で不可解な事故が発生。それは巨大生物の復活の狼煙で・・・

 

ポジティブ・サイド

原子炉の事故というのは、間違いなく3.11への言及だ。日本ではなくアメリカがこのことに言及したことは、それだけで意義深い。また、巨大不明生物の出す音に着目している点も興味深い。『 シン・ゴジラ 』では、「奴の知能の程度は不明だが、我々とのコミュニケーションは無理だろうな」と言われてしまったが、怪獣とのコミュニケーションの可能性を模索する方向性が2014年時点で示唆されていることは称賛に値する。三枝未希的なキャラはそう何度も生み出せるものではないのだ。

 

敵怪獣のMUTOには賛否両論があるが、EMP攻撃でF-22を面白いように落としていく様は観る側を絶望的な気分にさせてくれる。山本弘の小説『 MM9 』へのオマージュなのだろうか。常識的に考えれば、人類の科学技術の粋である現代兵器が通じない相手など存在するわけがない。それが実際に通じないところが怪獣の怪獣たる所以なのだが、そんな化け物がゴジラ以外にたくさん存在されるのも何かと不都合だ。だからこそ、攻撃がいくら命中しても効果なし、から、電気系統がすべて切れてしまう=兵器が無力化される、というアイデアに価値が認められる。

 

ゴジラが人類の攻撃を屁とも思わず、ひたすらMUTOを追いかけまわすのも良い。Godをその名に含むからには、人間とは別次元の存在であらねばならない。米艦隊を引き連れているかのように悠然と大海原を往くゴジラの姿には確かに神々しさが感じられた。

 

主人公が爆弾解体のスペシャリストというのもユニークだ。決して花形ではないが、いぶし銀的なミッションの数々に従事してきたのであろうと思わせる雰囲気が、アーロン・テイラー=ジョンソンから発せられていた。

 

ゴジラという人間を歯牙にもかけず、都市を完膚なきまでに破壊し、それでも結果的には人類を守ってくれた存在に、人はどう接するべきなのだろうか。泰然として海に還っていくゴジラを見送る芹沢博士の誇らしげな笑顔とグレアム博士の畏敬の念からの涙に、ゴジラという存在の巨大さ、複雑さ、奥深さが確かに感じ取れた。

 

ネガティブ・サイド

ジョー・ブロディを途中退場させる意味はまるでなかった。また、フォードが途中で子どもを助けるシーンも、あっという間に子どもが両親のもとに帰っていけるのであれば必要ない。どうしても人間ドラマ、家族ドラマを描きたいのは分かるし、Jovianが怪獣映画を監督する、またはそれ用の脚本を書く機会が与えられたならば、何らかのヒューマンな要素を入れるのは間違いない。なのでドラマを持ち込もうとすることは否定しない。問題はその描き方である。妻を失ったジョーは、息子や孫までは失えないと息子と協力して、これまでに個人的なリサーチで溜めこんできた情報をモナークおよび米軍にシェアする。または、フォードが電車で助けるのを子どもではなく老人にする。その老人の姿を通じて、フォードは間接的に父の愛情の深さと大きさを知ることになる。そんな風なドラマが観たかったと思ってしまう。人間パートが、どうにもちぐはぐなのだ。我々が見たいのは怪獣同士のバトルである、もしくは軍隊が怪獣に果敢に向かっていきながらもあっさりと蹴散らされるシークエンスである。

 

だが、そうしたシーンもどんどんと先延ばしにされてしまう。ハワイでの激突シーンもテレビ放送画面に切り替わり、本土決戦でもエリザベス・オルセンがシェルターに逃げ込むと同時に別画面に切り替わる。クライマックスの怪獣バトルのカタルシスを最大化したいという意図は分かるが、ちょっと焦らし過ぎではないか。だが最大の問題点は、ゴジラとMUTOの最終決戦があまりにも暗過ぎて何が起きているのかよく分からないところだ。肝心のMUTOへのトドメも、『 ゴジラ2000 ミレニアム 』とかぶっている。もしもこれがオマージュであると言うなら、もっと徹底的にやってほしかったと思う。

 

総評

決して悪い映画ではない。しかし、ゴジラというタイトルを冠するからには、ゴジラをゴジラたらしめるサムシングを備えていなければならない。それが何であるのかを定義するのは困難極まる。しかし、そうではないものはひと目で分かる。本作が描くのは、間違いなくゴジラである。ただ、少しゴジラ成分が足りないように思えてならない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アーロン・テイラー=ジョンソン, アメリカ, エリザベス・オルセン, ゴジラ, 怪獣映画, 渡辺謙, 監督:ギャレス・エドワーズ, 配給会社:東宝

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