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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アメリカ

『 ゴジラvs.コング 』 -劇場再鑑賞-

Posted on 2021年7月17日 by cool-jupiter

ゴジラvs.コング 70点
2021年7月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アレクサンダー・スカルスガルド ミリー・ボビー・ブラウン レベッカ・ホール ブライアン・タイリー・ヘンリー 小栗旬
監督:アダム・ウィンガード

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ゴジラとコングのどつき合いを再鑑賞。良かった面と物足りない面の両方が浮き彫りになったと感じた。

 

あらすじ

キングギドラが倒されてから3年。一切姿を見せていなかったゴジラが突如米国のエイペックス社を襲撃する。同社従業員のバーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は会社の陰謀を暴くべくポッドキャストで放送を繰り返していた。その一方で、モナークは髑髏島にコングの収容基地を作っていたが、巨大に成長したコングをこれ以上には収容できそうになかった。アイリーン(レベッカ・ホール)は島から出すとゴジラがコングを襲撃してくると主張するが・・・

 

ポジティブ・サイド

あらためて思うのは、肉弾戦の面白さ。昭和の怪獣プロレスは今の目で見ると極めて campy であるが、そこにはCG全盛の今には出せない味があった。もちろんコングもゴジラもフルCGの本作であるが、そのバトルは基本的にすべてフィジカル・コンタクトを伴うもの。MarvelやD.C.のスーパーヒーローものでは最終的にはレーザービームの打ち合いからの大爆発になることが多いが、やはり視覚的にも聴覚的にも、ドシン、ドスン、ドカンのような擬音語が聞こえてきそうなバトルは楽しい。噛みつきからの一本背負いからストンピングに移行するところなど、WWEのヒールを思わせるムーブ。このシーンのためだけにもう一度劇場に行ってみたい。

 

ゴジラが四つん這いになって、それこそオオトカゲのように動くシーンは記憶にない。これもコングという霊長類とゴジラという爬虫類・両生類のコントラストを大いに強調していた。コングが武器を持つのもまさにプロレス。令和ではどうか分からないが、昭和のプロレスに凶器は欠かせないのである。

 

KOMよりも破壊の迫力が増していたのもポイントが高い。モンスター・ゼロ=キングギドラとゴジラの初顔合わせが南極だったこともあり、人工物の破壊が足りなかった。今作ではゴジラとコングの顔合わせが洋上だったが、巡洋艦から艦載機、空母まで撃沈と、ゴジラのもたらす破壊を堪能することができた。

 

香港の街には悪いが、ひたすらゴジラ(と少しだけコング)に破壊されるのを観るのも楽しかった。最初はなぜ香港?という疑問に、つい最近まで西洋文明に属し、今では東洋文明に属しているという、The Battle of East and Westにふさわしい舞台だからとも感じられた。

 

カイル・チャンドラーやミリー・ボビー・ブラウンの人間パートの薄さに初回は眉をひそめたが、再鑑賞で「モナークのあれやこれやのドラマは要らないか」と思えた。

 

ネガティブ・サイド

KOMとの一番の違いというか、最も残念だったところは伊福部サウンドのゴジラのテーマ音楽がなかったところ。もちろん、よく似たサウンドは挿入されていたが、それは『 ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 』でジョン・ウィリアムスによるテーマ曲のパロディが使われていたのと同様の感覚を受けた。

 

ゴジラとコングの最初の遭遇で、ゴジラの放射熱線で空母が撃沈されてしまったが、あれではあの海域は思いっきりフクシマ状態では?

 

レン・セリザワ(敢えてこう書く)が何故anti-Godzillaなのか。その部分の説明が不足していた。1954年の『 ゴジラ 』の芹沢博士も実は結構マッドな発言をしていたが、それは科学者として純粋すぎるあまりのものだった。レンについても何か一つ、背景を物語るもの、たとえば渡辺謙が『 GODZILLA ゴジラ 』で見せたような懐中時計のようなものがあれば良かったのだが。

 

総評

ヒューマンドラマ要素を期待してはいけない。怪獣が大暴れして、人間の造形物が次から次へと壊れていく様を楽しむための映画である。コロナ禍が続く中、人類の叡智の結晶であるワクチンが自然の脅威であるコロナウィルスへの切り札になるのかという想いを、メカゴジラに託して観てみるのも興味深い。そうした現実世界を下敷きに本作を鑑賞すれば、渡辺謙の言った”We will be his.”=我々人類がゴジラのペットになるのだ、というセリフが味わい深くよみがえってくる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

duke it out

スラングとまではいかないが、かなりinformalな表現。日本語にすれば「どつき合う」となる。

Godzilla duked it out with Kong. = ゴジラがコングとどつき合った。

Godzilla and Kong duked it out with each other. = ゴジラとコングがどつき合いをした。

のように使う。まあ、こんな表現を知っているなら英会話スクールに通う必要はない。Camblyなどを使って、ひたすらネイティブと話せるレベルだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, アレクサンダー・スカルガルド, ゴジラ, ブライアン・タイリー・ヘンリー, ミリー・ボビー・ブラウン, レベッカ・ホール, 小栗旬, 監督:アダム・ウィンガード, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ゴジラvs.コング 』 -劇場再鑑賞-

『 ゴジラvsコング 』 -ゴジラ映画というよりもコング映画-

Posted on 2021年7月4日2021年7月6日 by cool-jupiter

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210704151446j:plain

ゴジラvsコング 70点
2021年7月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アレクサンダー・スカルスガルド ミリー・ボビー・ブラウン レベッカ・ホール ブライアン・タイリー・ヘンリー 小栗旬
監督:アダム・ウィンガード

 

待ちに待っていた一作。可能な限り事前情報はシャットアウトし、当日はゴジラTシャツとゴジラキャップでMOVIXあまがさきへ出陣。本当はTOHOシネマズなんばあたりへ向かいたかったが、コロナが落ち着くまでは繁華街は避けねば・・・

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あらすじ

キングギドラが倒されてから3年。一切姿を見せていなかったゴジラが突如米国のエイペックス社を襲撃する。同社従業員のバーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は会社の陰謀を暴くべくポッドキャストで放送を繰り返していた。その一方で、モナークは髑髏島にコングの収容基地を作っていたが、巨大に成長したコングをこれ以上には収容できそうになかった。アイリーン(レベッカ・ホール)は島から出すとゴジラがコングを襲撃してくると主張するが・・・

 

以下、ネタバレあり

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ポジティブ・サイド

ハリウッド版ゴジラ(*ジラを除く)の属性がしっかりと引き継がれている。すなわち、ゴジラは人間の活動は基本的に歯牙にもかけない怪獣王であるということ。これは良かった。今作のゴジラの新しい面としては、爬虫類的に這いまわる動きが、ゴジラとは思えないほどに俊敏であること。昭和ゴジラまでにしか見られなかったストンピング攻撃もポイントが高い。

 

コングの設定も伝統的なもの。動きも1930年代コングを踏襲していて、ピーター・ジャクソン版と見た目の共通点も多い。素手では何をどうやってもゴジラには勝てないので武器を持たせてあげたが、これぐらいはハンデとしてちょうどいい。電気の力でパワーアップする、あるいは復活するというのもコングのお約束であり、そこもしっかり踏襲されている。美女ではなく少女と交流するというのも時代の流れか。耳の聞こえない少女ジアの自然で、それでいて力強いたたずまいは、確かにコングをして「守ってやらねば」と思わせるに足るものがあった。

 

怪獣映画というのは基本的にプロレス的な肉弾戦で、『 アベンジャーズ 』シリーズの中でも『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』をJovianが最も面白いと感じるのは、ヒーロー同士の戦いがプロレスのそれで、最後の最後のキャップとアイアンマンの戦いが電撃やらビームがメインではなく、肉弾戦になっているからだ。ゴジラとコングが『 キングコング対ゴジラ 』並みのプロレスを形だけでも見せてくれたことに個人的には満足している。ゴジラがコングを踏みつけながら咆哮する様は「負けを認めんかいゴルァ!」のように聞こえて面白かった。まあ、これは予想通りの結果。何をどう考えても、コングがゴジラに敵うわけがないのである。

 

『 GODZILLA ゴジラ 』や『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』でさらりと触れていた地球空洞説を本作は追究。『 ザ・コア 』などのように定期的に出てくるネタだが、衛星によって地表が丸裸にされている現代、地下に目を向けるのはごく自然な発想であろう。地下世界が単なる地底旅行ではなく、文字通りに別世界、漫画『 HUNTER×HUNTER 』で言うところの暗黒大陸のようで、これも面白い。ここから新たにキングギドラ級の別の怪獣が現われてくる可能性も感じさせてくれた。

 

メカゴジラの出現情報は事前にシャットアウトできなかったが、今作のようなどちらが勝ってもどちらが負けても賛否両論が生まれるような対決には、両者に共通する第三の敵を登場させるのが常道。『 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 』もそうだった。メカゴジラもお約束通り。宇宙人ではなく人類がメカゴジラを作ると暴走してしまうのは、『 ゴジラ×メカゴジラ 』や『 GODZILLA 決戦機動増殖都市 』でお馴染みである。そしてメカゴジラは基本的にクソ強い。アホみたいな火力を有して、プロレスでも強いという反則キャラである。本作でもその強さを遺憾なく発揮し、ゴジラを圧倒。そのメカゴジラをコングとゴジラの共闘で倒す流れは、これまた予想通りとはいえ、楽しむことができた。

 

あまり小難しいことは考えず、巨大怪獣たちが激突するところを観たいという向きにお勧めしたい。

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ネガティブ・サイド

ゴジラのパートとコングのパートがアンバランス。というか、これはゴジラ映画ではなくコング映画。アメリカの制作会社が作ったものとはいえ、もう少しゴジラに尺を与えてくれ。伊福部サウンドも権利関係か何かで使えなかったのか?

 

KOMの続きにも見えない。前作のキーパーソンの一人だったラッセル(ミリー・ボビー・ブラウン)もほとんど何もしていないし、父親カイル・チャンドラーに至ってはKOMで芹沢から渡されたバトンをどこにやったのか分からない。サリー・ホーキンスを死なせていなければ代役が見事に務まっていただろうに。芹沢の息子の小栗旬も、なぜモナークではなくエイペックスに属しているのかが謎。父親の遺志を受け継ぎたくない事情があるのなら、それを説明すべきだ。あるいは、それをほのめかすべきだった。

 

怪獣たちの通った後で自然が復活したという前作の終わりから今作に至るまで、世界がどう復興してきたのか。その過程でゴジラという怪獣王の君臨する世界で人間が大自然に対してどのように振る舞ってきたのかを見せる描写が一切なかったのが悔やまれる。エイペックス、あるいは世界のどこかの国が「怪獣?SDGs?知るか!この世界は人間がexploitしてナンボなんじゃいヨッシャー!」みたいな考え方をしているということが見せられていれば、メカゴジラの開発にもっと説得力が生まれる。

 

そのメカゴジラ自身の強さの見せ方も微妙。スカルクローラーを倒しても、今さら誰も感銘を受けたりなどしない。コングとゴジラが壮絶なプロレスに興じている中、KOMのごとく、ラドンやMUTOなどの怪獣が誰が王の座に座るのかを見届けるために集まってきた。そこにメカゴジラが登場。『 ゴジラvsメカゴジラ 』のようにあっさりとラドンを病院送りにする。次の生贄は・・・という瞬間に小栗旬が変調。メカゴジラが暴走を始める・・・であれば、メカゴジラの強さがもっと具体的に伝わってきたはず。

 

総評

モンスターバースのことを考えずに、単独作品としてゴジラとコングがdick-measuring contestをプロレス的にやっていると割り切って観るべし。小栗旬のファンならば、その扱いのひどさに天を仰ぐことだろう。けれど日本人俳優がハリウッドに行くというのはこういうこと。筒香や秋山を見るべし。誰もがイチローや大谷になれるわけではないのだ。本当は60点ぐらいなのだが、ゴジラというキャラに5点、コングというキャラにも5点を与えたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Who’s your daddy?

劇中で実際に使われているセリフではないが、ゴジラがコングに対して「負けを認めろ」と迫るシーンの咆哮の意味を考えてみた。私的に英語字幕を付けるとするならば、これで決まりである。直訳すれば「お前の父ちゃんは誰だ?」となるわけだが、ここでの意味は「俺の方が強いだろう?」のような感じである。相手にこちらの優位を見せつける時の言葉である。もちろん本当の親子の間で使うこともある。同僚アメリカ人が自分の娘に対して説教するときに、これを言っているのを聞いたことがある。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, アレクサンダー・スカルガルド, ゴジラ, ブライアン・タイリー・ヘンリー, ミリー・ボビー・ブラウン, レベッカ・ホール, 小栗旬, 監督:アダム・ウィンガード, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ゴジラvsコング 』 -ゴジラ映画というよりもコング映画-

『 クワイエット・プレイス 破られた沈黙 』 -第3作に続くか-

Posted on 2021年6月27日 by cool-jupiter

クワイエット・プレイス 破られた沈黙 75点
2021年6月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:エミリー・ブラント キリアン・マーフィー ミリセント・シモンズ
監督:ジョン・クラシンスキー

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『 クワイエット・プレイス 』の続編。音を立てると化け物がすっ飛んでくるという設定の妙葩今作でも健在。さらにホラーでありながら、見事なファミリードラマにしてビルドゥングスロマンに仕上がっている。

 

あらすじ

エヴリン(エミリー・ブラント)は生まれたばかりの赤ん坊と娘のリーガン(ミリセント・シモンズ)、息子のマーカスと共に新たな家を求めて旅をしていた。そこで偶然にもかつての友人、エメット(キリアン・マーフィー)と出会う。しかし、彼は「生き残っている人間に救う価値などない」と言ってエヴリンへの助力を断る・・・

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ポジティブ・サイド

すべての根源である Day 1 も適度に謎めいていて良い。超巨大宇宙船の全貌を見せないのは、まだまだ続きがあるという予告のようでもある。またリーガン視点(聴点と言うべきか)で物語が描写されるシーンでは、違う意味でのサスペンスが生まれる。音が一切聞こえなくなるため、死角の出来事に対して無防備になってしまう。「志村、うしろー!」的なアレである。単純だが、この演出は効果的だった。

 

エミリー・ブラントが今作でも戦う母親像を好演。『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』や『 ボーダーライン 』のような戦う女性として輝きを放っていたが、今シリーズではそこに母親属性が加わった。それもPolitically correctな理由で戦っているのではなく、生存のために戦っている。しかし、元々強い女性だから生き残っているのではなく、その強さを夫から受け継いだという設定もいい。

 

前作は『 死の谷間 』のように一つの場所、一つのコミュニティでの物語だったのが、今作では世界が一気に広がった。前作で生まれた赤ん坊がいつ泣き出すか分からないというスリルの元だが、泣き声を予防・防止する方法も現実的。ミリセント・シモンズ演じる長女リーガンと頼りない長男マーカスの壮大なるビルドゥングスロマンになっている点にも感銘を受けた。positive male figureがいなくとも家族は大きく育つようにも見えるが、やはりpositive male figureの存在が必要だ。しかし、安易に新しい男を迎えるのではなく、死んだ夫・父親の精神を受け継いでいくという筋立ては、陳腐ながら、なんと説得力があるのか。

 

二ヵ所で同時進行するクライマックスはまさに手に汗握る鳥肌もののスリルとサスペンス。知恵と勇気で怪物に立ち向かうエミリー・ブラントは美しいの一語に尽きるし、雄々しく立ち上がる長男の姿は感涙もの。単純明快にして非常にpredictableな展開であるにも関わらず、ここまで心が揺さぶられるのは何故か。その仕組みを知りたい人は、前作を鑑賞の上、劇場へ赴かれたし。

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ネガティブ・サイド

序盤のところどころでジャンプ・スケアが使われるのが気に入らない。そういうこざかしい演出は不要である。

 

荒廃した世界で怖いのは生き残った人間、というのは映画に限らず創作物の文法に等しいが、それでも今作の生き残り組のワル達にはリアリティがない。いったいあの方法で何を手に入れたいのか。どうせなら『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』並みに怪物を飼って遊んでいるといったぶっ飛んだ描写が観てみたかった。

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総評

『 ZOOM / 見えない参加者 』という珍品も制作される当世だが、ハウリングがいかに耳障りなものであるかを体感した人も多いことだろう。ビデオ会議が極めて一般的になった今という時代に鑑賞することで、逆にリアリティを増している。「音を立てたら超即死」という極めてドギツイ宣伝文句も、「咳やくしゃみをしたらアウト」という現代に重なるところがあり面白い。三作目も作られそうだ。期待して待ちたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

How do you say ~ ?

「~はどう言う?」という意味。物語の序盤で何気なく出てくるが、実は非常に重要な伏線になっている個所で使われている表現。How do you say otsukaresama? や、How do you say ittekimasu?というのは英語話者が日本語を習い始めた時に言う定番表現である。What do you call ~? もよく使う。よくこの二つを混同して、What do you say ~?やHow do you call ~?と言ってしまう人がいるので、そこだけは注意のこと。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エミリー・ブラント, キリアン・マーフィー, サスペンス, ホラー, ミリセント・シモンズ, 監督:ジョン・クラシンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 クワイエット・プレイス 破られた沈黙 』 -第3作に続くか-

『 アナと世界の終わり 』 -コロナ禍にフィットするミュージカル-

Posted on 2021年6月3日 by cool-jupiter

アナと世界の終わり 65点
2021年5月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エラ・ハント
監督:ジョン・マクフェール

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土日は映画館が閉まっているため、読書かYouTube、またはレンタルDVD鑑賞。最近、YouTubeでたまたま上がってきたTim Minchinによる『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』のユダ役が素晴らしかったので、ミュージカルでも観るかと近所のTSUTAYAで本作をチョイス。ゾンビ要素が濃いめかなと思いきや、意外にも本格的なミュージカル映画だった。

 

あらすじ

アナ(エラ・ハント)は父と二人暮らし。オーストラリア旅行のためにバイトしていることが、友人のジョンのせいで父にばれてしまい口論に。翌日、学校へ向かうアナとジョンの前に突如ゾンビが現れる。辛くもゾンビを撃退したアナだが、街はいつの間にかゾンビだらけ。アナたちは皆がいるはずの学校へ向かおうとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

ゾンビワールドとコロナ禍の現在は、人との接触を避けなくてはならないという意味で、よく似ている。ゾンビ物を観るたびに、脚本家や監督といったアーティストのビジョンには感心させられる。愛する人であっても、無理やり離れなければならないという状況は、まさにコロナが蔓延する今という時代そのままである。

 

それよりも本作で堪能すべきはミュージカル・パートだろう。冒頭からどこか満たされないティーンたちが歌う”Break Away”がなかなかの名曲。正直、このナンバーだけでレンタル代の元は取れたと感じた。アップテンポの明るいメロディでありながら、歌詞は現状からの脱却を力強く渇望する歌。それを歌うエラ・ハントたちの歌声が力強く、それでいて哀し気だ。ゾンビ蔓延世界の登校風景で颯爽と歌われる”Turning My Life Around”でも主演エラ・ハントの歌唱力が光る。 Hey, it’s a brand new day. のHeyを高音域で伸びやかに歌えるのが素晴らしい。また、陽気に絶望的な状況を歌っているのも、背景のシュールさと絶妙なコントラストになっている。エラ・ハント以外では悪の校長サヴェージ先生が、”Nothing Gonna Stop Me Now”でひときわ目立つ輝きを放っている。『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』のカヤパをほうふつとさせる。 

 

ゾンビ映画というのは、それこそ星の数ほど制作されてきており、またミュージカルもそれなりの数が生み出されてきた。しかし、ゾンビ・ミュージカルというのは、ありそうでなかったジャンル・ミックスだ。ミュージカル形式で感情を爆発させる登場人物たち。そして「え、このキャラ、ここで死ぬの?」という意外な展開の組み合わせで、ぐいぐいと引き込まれてしまう。グロ描写はそこまで多くないが、田舎町で鬱屈した気分のティーンたちによる人間関係と恋模様は結構ドロドロである。案外、梅雨の時期の室内デートにも使えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

コメディとして振り切れていないところが惜しい。ボーリング場での対ゾンビのバトルなど、もっと面白くできるはず。ボウリングの球でゾンビの頭を潰したシーンでは、「お、ゾンビをボウリングのピンに見立てて、遊びながら倒していくか?」と期待させたが、それはなし。その一方で、ゾンビの頭がボールリターンにゴロゴロゴロと帰ってくるという茶目っ気ある演出。コメディとして振り切るパートは全力でコメディに徹してほしかった。

 

ミュージカル・パートの楽曲の良さと反比例するかのように、ゾンビ・パートの展開があまりに陳腐だ。人間社会の規範が壊れることで人間の本性が明らかになるというのはゾンビ映画文法にあまりにも忠実すぎる。意外性が欲しい。無茶苦茶だと自分でも思うが、アナの父がゾンビの群れの中に亡き妻の幻を見出して・・・のようなサブプロットがあれば、個人的には大満足だったのだが。

 

アナの親友のリサを演じたマルリ・シウにもう少し見せ場が欲しかった。ステージで彼女が歌う歌は、ダブル・ミーニング満載である。字幕でも面白さは伝わるが、英語が分かる人はぜひ聞き取って、色々と調べてほしい。この歌の暗喩するところ、ゾンビ・パートでもう少し実現してしかるべきではなかったか。

 

総評

究極的には好みの問題だが、『 ラ・ラ・ランド 』の楽曲よりも本作の楽曲のほうが個人的には楽しめたし感銘を受けた。愛する人々を助けたい一心で行動するのはゾンビ映画としては陳腐だが、その過程の描写が『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』のようにスタイリッシュだ。イギリスのどこか陰鬱な空気が全編を覆っているが、それを吹き飛ばす楽曲のパワーも全編に満ち溢れている。ゾンビ映画と敬遠するなかれ。ミュージカル好きなら要チェックだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be lost in ~ 

「~に夢中になる、没頭する」の意。序盤早々の歌唱シーンで使われているが、字幕に盛大な誤訳があるので注意。

 

There’s a world out there, why does no one care? Are they lost in the game they play?

外には広い世界が待ってるのに みんな諦めちゃってるの?

 

となっているが、正しくは

 

There’s a world out there, why does no one care? Are they lost in the game they play?

すぐそこに世界が広がってるのに みんなは目の前のゲームに夢中なの?

 

が正しい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, イギリス, エラ・ハント, ミュージカル, 監督:ジョン・マクフェール, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 アナと世界の終わり 』 -コロナ禍にフィットするミュージカル-

『 ブリングリング 』 -泥棒、ダメ、絶対-

Posted on 2021年5月9日 by cool-jupiter

ブリングリング 50点
2021年5月8日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ケイティ・チャン エマ・ワトソン イズラエル・ブルサール
監督:ソフィア・コッポラ

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時間つぶしにTSUTAYAで借りてきた。難解な哲学書を読んでいて、頭をリセットする必要がある。そうした時には、何も考えていないティーンの映画でも観るに限る。これは偏見かな。

 

あらすじ

マーク(イズラエル・ブルサール)は転校先で出会ったレベッカ(ケイティ・チャン)に誘われ、ふとしたことから空き巣と窃盗の共犯になってしまう。やがてニッキー(エマ・ワトソン)らも加わり、彼らはハリウッドのセレブたちの留守を狙って、豪邸への侵入を繰り返すようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

ティーンの日常風景が生々しい。ドロドロとした虐めや派閥争いではなく、淡々とした友情を淡々と描き出す序盤は、ドキュメンタリーのようにも感じられた。元が実話だからしょうがない。何度も侵入されては、色んなものを盗まれるパリス・ヒルトンだが、実際に自宅を撮影用に提供したというのだから、商魂たくましいと言うしかない。その豪邸の広さ、物の多さ、そして至るところから発せられる強烈なナルシシズムからは、確かにティーンならずとも惹きつけられてしまうカリスマ性を感じる。

 

戦利品のアイテムや金を使ってガキンチョどもが何をするかと言えば、お定まりのショッピングにドラッグ、そしてクラブ通い。このあたりは大人も子どももアメリカ人らしさ全開という感じがする。『 ウルフ・オブ・ウォールストリート 』のディカプリオも目のくらむよう大金を稼いで、同じようなことをやっていた。これも陳腐でありながら生々しい。リアルであると感じる。

 

生々しいのは、犯行に及ぶティーンたちの無計画性。そして、今風の言葉で軽く評するなら、自己承認欲求の強さ。なぜセレブ宅への侵入と窃盗の現場で写真を撮るのか、そしてそれをSocial Mediaに上げてしまうのか。なぜ自分たちの盗みを同級生たちに自慢してしまうのか。そして、犯行現場で素手であれやこれやをべたべたと触って指紋を残すのか。帽子もかぶらず、髪の毛も落としまくっていくのか。『 アメリカン・アニマルズ 』での、凝りに凝った犯行計画を練り上げていく過程とは対照的に、本当に何も考えずに次から次へと犯行を繰り返すブリング・リングの面々には嫌悪感すら催してしまう。観る側をこのような気持ちにさせた時点で、本作は一定の成功を収めていると言えるだろう。

 

ネガティブ・サイド 

『 スプリング・ブレイカーズ 』は青春への決別を映し出していたが、本作で描かれるブリングリングの連中は、マークを除いて全員アホである。反省の色が見られない。いや、反省しないだけならいいのだが、その原因を何らかの形で劇中で提示すべきだろう。ホームスクーリングや離婚した両親など、思わせぶりな描写は多いが、それは事実であって仮説の形にはなっていない。有罪が確定しているにもかかわらず、自らの将来をメディアに高らかに語ったり、事件の真相を知りたければ自分のウェブサイトを見ろと宣伝するニッキーは、どこまでも薄っぺらい。本当なら、そうしたティーンのアホな自己承認欲求をかなえる手伝いをするような映画ではなく、何が彼女たちをそこまで駆り立てたのかを考察し、そこを盛り込むべきだった。

 

他に不足を感じたのは、マスコミ及び大衆の反応の描写。アホなティーンがある意味で同じくらいアホなセレブに経済的な痛撃を一時的にも加えたこと、そしてそれを口コミおよびSocial Mediaを通じて一時的にもセンセーションを作り出したことを、当時のニュース映像と対比する形で挿入すべきだった。そこをもう少し手厚く描写しないと、ブリングリングの連中が特別だったことになり、ごく一部の無軌道な若者、若気の無分別の物語になってしまう。そうではなく、若いうちは(老いてからでも)誰でも道を踏み外す可能性があること。そして、セレブであろうが誰であろうが、情報の取り扱い、そのリテラシーについてもっと注意を要すべしという教訓が伝わってこない。

 

エマ・ワトソンは悪い女優ではないが、特別に良い女優でもないと今作の演技から感じた。ハリポタのハーマイオニーというはまり役は、『 スター・ウォーズ 』におけるルークやハン・ソロと同じく、役者の素の顔を引き出す演出が奏功したというのが大きい。本作のエマ・ワトソンのあざとさはあまりにも意図的で、逆に演技くさくなっている。本当のエマ・ワトソンの演技を観たい向きは『 ウォールフラワー 』を鑑賞すべし。 

 

総評

ハリウッドの豪邸に入り込んで、好き勝手なことをする。そんなことが出来るんかいなと思ってしまうが、『 ビバリーヒルズ・コップ2 』でもエディ・マーフィーが同じようなことをやっていたなと思い出した。つまりは出来てしまうし、実際にそうした事件が起きた。盗みに入る方もアホだなと思うし、盗みに入られる方もアホだなと思う。『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』のシャロン・テートの教訓からセレブたちは学んでいないのかと考えさせられるが、この能天気さや鷹揚さもアメリカの特徴なのだろう。暇つぶし用、典型的な a rainy day DVDである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

for all I know

文頭または文末に使って、「多分」、「もしかしたら」という意味を加える。

For all I know, the champion could lose.

I want to be a politician. I could even become Prime Minister for all I know.

のように使う。関西人ならば語尾につける「知らんけど」とほぼ同じだと説明すれば一発で理解できるかもしれない。知らんけど。

 

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Posted in 国内, 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, イギリス, イズラエル・ブルサール, エマ・ワトソン, クライムドラマ, ケイティ・チャン, ドイツ, フランス, 日本, 監督:ソフィア・コッポラ, 配給会社:アークエンタテインメント, 配給会社:東北新社Leave a Comment on 『 ブリングリング 』 -泥棒、ダメ、絶対-

『 透明人間 』 -ダーク・ユニバースの復活なるか-

Posted on 2021年5月5日 by cool-jupiter

透明人間 75点
2021年5月3日 レンタルBlu-rayにて鑑賞
出演:エリザベス・モス オリバー・ジャクソン=コーエン オルディス・ホッジ マイケル・ドーマン
監督:リー・ワネル

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TSUTAYAで110円クーポンを使ってレンタル。USJが無観客営業を要請されて気の毒だなと感じていたので、ユニバーサルの映画をピックアウトした次第。

 

あらすじ

光学分野の天才エイドリアン(オリバー・ジャクソン=コーエン)はセシリア(エリザベス・モス)を異常に束縛していた。彼のもとから脱出したエリザベスだったが、その後にエイドリアンが自殺したと知らされる。しかし、その頃から彼女の身の回りで不可解なことが起こり始め・・・

 

ポジティブ・サイド

ジョン・カーペンター版の『 透明人間 』は確かWOWOW放送時に観た。高校生ぐらいだっただろうか。H・G・ウェルズ以来、透明人間の物語は数限りなく作り出されてきたが、透明人間が主人公ではなくヴィランというのは珍しいような気がする。

 

ソシオパスの男が透明人間になって自分を捨てた女に復讐する。見方によってはギャグだが、これがどうしてなかなかのホラー風味のサスペンスに仕上がっている。観る側は不可解な事象はすべて透明人間の仕業だとわかっているのだが、セシリアには最初はそれがわからない。そんな段階でもカメラはしばしば”覗き”のアングルからセシリアを捉え、観る側に透明人間の視点を体験させる。あるいは、なにもない空間に何度もパンし、見えない何かの存在を執拗に意識させてくる。この、キャラクターが気づいていない、またはうすうす感じてはいるが確信にまでは至っていない状態と、観ている側の「早く気付け、やべーぞ!」という感覚のギャップが一級のサスペンスを生み出している。この構成は見事。

 

セシリアがいよいよ透明人間の存在を確信したとき、エイドリアンの弟で財産分与を手がける弁護士のトムが絶妙の演技でそれを否定する。このトムを演じた役者マイケル・ドーマンは、Jovianだけが名作だ傑作だと騒いでいるタイムループもの『 トライアングル 』でもなかなかの存在感を放っていた隠れた名優である(ちなみに『 トライアングル 』をDVDなどで借りる際は、ボックスの表面にネタバレがあるので注意のこと)。

 

本作は、透明人間の存在をダイレクトに前面に押し出すのではなく、透明人間が存在しうると信じてしまう心理、そしてあの男なら透明人間になってまでストーキングしてもおかしくないという狂った人間の心理をメインに描いている。その一方で、狂っているのはエイドリアンなのか、それとも・・・というところにまで踏み込んでいる。単純構造の物語ではなく、多重構造の物語になっていて、オチも二重三重になっている(あるいはそのように解釈できる)。目に見えない相手が怖いのではない。目に見える体を持つ人間の、目に見えない心の中が怖い。そんな、ある意味ではホラーの王道を行く作品である。

 

ネガティブ・サイド

透明人間がいくらなんでも強すぎではないだろうか。警察やガードマン相手に、いくら自分が不可視とはいえ格闘で圧倒するのはどういうことなのか。ボクシングなど、なんらかの格闘技の経験者でもないと、あれだけ簡単に人間をノックアウトすることはできないと思われるが。

 

あのスーツの素材および機能はどうなっているのだろう。耐衝撃性があり、耐水性もあり、おそらく小型の電池で長時間作動する、あるいはスーツそのものに発電機能がありそうだが、まるでアイアンマンやアントマンの世界観で、ダーク・ユニバースのそれとは相容れいないものように感じた。

 

一番の疑問は、あのスーツを着用したままで”行為”ができるのかということ。あるいは薬で眠らせて、自分はいそいそとスーツを脱いで事に及んだというのか。にわかには信じがたいし、じっくり考えてみてもやはり信じがたい。透明人間という大嘘部分を担保するために、その他の部分には極力リアリティが必要だが、そこで少し失敗しているという印象を受けた。

 

総評

鳥山明の漫画『 ドラゴンボール 』の初期にたくさん出てくる透明人間や人造人間(フランケンシュタインの怪物)、男狼などはすべてユニバーサルのキャラクターである。それらを全部集めたダーク・ユニバース構想は見事に頓挫したが、個々のキャラクターの魅力や可能性までが棄損されたわけではない。本作はそのことを見事に示してくれた。ホラーといっても、幽霊やら正体不明の怪奇生物が出てくるわけではないので、そうした分野はちょっと・・・という人にもお勧めしやすい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

video 

ビデオ、動画の意味。しかし、元々はラテン語で”I am seeing ~”の意味。ここから色々な英単語、たとえば、vision, visual, vistaなどが派生していった。勘の良い人ならaudio = I am hearingから、audienceやauditoriumが生まれたのだとピンとくることだろう。 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エリザベス・モス, オリバー・ジャクソン=コーエン, オルディス・ホッジ, サスペンス, ホラー, マイケル・ドーマン, 監督:リー・ワネル, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 透明人間 』 -ダーク・ユニバースの復活なるか-

『 ムーラン(1998) 』 -異色のディズニー・プリンセス-

Posted on 2021年5月3日 by cool-jupiter

ムーラン(1998) 75点
2021年5月1日 レンタルBlu-rayにて鑑賞
出演:ミンナ・ウェン エディ・マーフィー
監督:トニー・バンクロフト バリー・クック

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210503172538j:plain

違う『 ムーラン 』を観てしまったので、本家のムーランを借りてきた。劇場公開時にはそれほど強い感銘は受けなかったが、オッサンになって再鑑賞すると異なる印象を受けた。

 

あらすじ

北方のフン族が万里の長城を越えて侵攻してきた。そのため、皇帝は一家につき男性一名を徴発する。ムーラン(ミンナ・ウェン)は、老身の父の代わりに髪を切り、父の甲冑を身にまとって、軍へと向かう・・・

 

ポジティブ・サイド

勝手な印象だが、『 メリダとおそろしの森 』は本作にかなりインスパイアされているのでは?女性でありながら戦うという、一世代前の価値観とは incompatible なストーリーが両作品ともに展開されるが、ディズニー・プリンセスの一人であるムーランは実際に戦闘に従事するだけではなく、敵を大量に殺害し、ヴィランであるシャン・ユーに至っては爆殺する。これにはびっくりした。以前は何も感じなかったが、ディズニー映画では人が直接的に死ぬ描写はご法度と知った今の目で見ると、本作の展開は衝撃的だ。

 

特に序盤のお見合いから、徴兵令、ムーランの出立、軍への合流と訓練の日々までがミュージカル調で時にコミカルに描かれるのは、まさにディズニー映画的。しかし、陽気に隊の皆で歌いながらの行軍の先に、全滅させられた味方部隊を発見する展開も衝撃的。もちろん死体や血の描写はないが、Jovianの脳裏には思わず同年代の『 プライベート・ライアン 』が浮かんできてしまった。

 

ともすれば戦争のダークな面にムーランも観る側も引き込まれそうになるが、守護龍ムーシューの存在が絶妙なストッパーになっている。この龍と幸運のコオロギ、そして愛馬カーン、同じ隊の陽気な連中とリー・シャン隊長らの存在が、異民族との戦争そして戦闘という凄惨になりかねない物語のトーンとバランスを良い塩梅に保っている。

 

ムーランの女性性が過度に強調されない点も時代と言えば時代か。女であることがばれても、守られるべき存在や男を応援する立場という属性をムーランは拒絶する。しかし、父という男性性の象徴からはなかなか自由になれない。それがムーランの時代・地域の特徴であり、それを克服するのはムーランの物語ではない。アジアというディズニーのお膝元ではない地域が舞台であることを配慮したものだと解釈しておく。

 

ネガティブ・サイド

ムーランが髪を切るシーンをもう少しドラマティックに出来なかったか。元々、お見合いも失敗続きではあったが、それでも父親を安心させたいという気持ちをムーランは抱いていた。そこで女性のシンボルでもある髪をばっさりと切るシーンにもう少し葛藤をにじませていれば、その後のリー・シャン隊長とのほのかなロマンスの予感にもっと説得力が生まれたものと思う。

 

幸運のコオロギの活躍が少し足りない。序盤にムーランに幸運をもたらす活躍が見たかった。もしくはヤオやチェン・ポーら、隊の愉快な仲間たちに幸運を分け与える描写が欲しかった。

 

総評

鏡に映る自分が自分ではないという感覚、つまり他人の目に映る自分と自分が認識する自分が異なっているという感覚は、古今東西の誰にでも共通するものだと思う。中国版ではムーランがやたらと腕っぷしが強かったりするが、機転の良さで大活躍するムーランもまた乙なものである。ただし普通のディズニー物語とは違い、人が死ぬ過程が間接的にとはいえ結構つぶさに描かれていたりするので、鑑賞は小学校高学年以上からが望ましいか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

S rest in one’s hands

Sは誰かの手にかかっている、という意味で使われる慣用表現。

 

The success of this project rests in your hands

このプロジェクトの成功は君たちにかかっている。

The future of the country rested in their hands.

国の未来は彼らにかかっていた。

 

のように使う。劇中ではムーシューにかけて、The fate of the Fa family rests in your claws. と言われていた。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, アニメ, アメリカ, エディ・マーフィー, ミンナ・ウェン, 歴史, 監督:トニー・バンクロフト, 監督:バリー・クック, 配給会社:ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパンLeave a Comment on 『 ムーラン(1998) 』 -異色のディズニー・プリンセス-

『 AVA/エヴァ 』 -続編は難しいか-

Posted on 2021年4月18日2021年4月18日 by cool-jupiter

AVA/エヴァ 40点
2021年4月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェシカ・チャステイン ジョン・マルコヴィッチ コリン・ファレル ダイアナ・シルヴァース
監督:テイト・テイラー

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『 女神の見えざる手 』のジェシカ・チャステイン主演作。定期的に制作される女性エージェントの物語だが、割と最近の『 ANNA アナ 』と比較すると、二枚は落ちるかなという印象。

 

あらすじ

暗殺者エヴァ(ジェシカ・チャステイン)は、標的を殺す前に「あなたはどんな悪いことをしたの?」と問いかけるようになっていた。ある任務で、事前に与えられた情報が誤っていたことからエヴァは組織への不信感を募らせる。そして標的に問いかけるという行動を問題視していた組織も、サイモン(コリン・ファレル)にエヴァを始末させようとして・・・

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ポジティブ・サイド

ジェシカ・チャステインというだけでチケットを購入を購入した人は多いだろう。Jovianもその一人。彼女の演技力は折り紙付きで、実際に鉄面皮の殺し屋から情緒不安定な女性的な面までを2時間足らずの間に幅広く披露した。大将という対象を暗殺した後に現場から逃走する際に、か弱い女性のふりをして兵士を騙す変わり身の早さ。ひらひらのドレスのままに格闘から銃撃戦までをこなすタフさ。複数言語を流暢に操る頭脳明晰さ。いずれにおいても説得力のある演技が堪能できる。

 

アメリカ映画でしばしば大きな柱として描かれる父親=positive male figureとの間に因縁があり、それが組織の上司であり、また父親代わりでもあるジョン・マルコビッチとの複雑な距離感につながっている。そのマルコヴィッチも年齢不相応のアクションで見せ場を作る。エヴァとサイモンの両方の師匠であることから、片方は父親の補完、もう片方は父親殺しを成し遂げるという因縁多きキャラクター。この好々爺を間に挟むことで、エヴァとサイモンの激突がよりドラマチックになっている。

 

ジェシカ・チャステインのファンならばチケットを買おう。

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ネガティブ・サイド

ジェシカ・チャステインの走りの不格好さはハリソン・フォードに通じるものがある。アクションの迫力はまあまあだが、それも細かいカットを巧みに編集したもの。ジェシカ・チャステイン本人の athleticism 自体はあまり高くなさそう。女優の運動能力という点では『 悪女 AKUJO 』や『 The Witch 魔女 』といった韓国映画に余裕で負けている。銃撃戦の方はまだしも、近接格闘戦になると、カットごとのつながりが妙にぎこちなく映る。fight choreographer の指導がイマイチというのもあるかもしれないが、ジェシカのパンチやキックのすべてに「何か違う」感がずっと付きまとっている。元軍人の現暗殺者というキャラ設定が、アクションのせいで弱くなってしまうのは本末転倒である。

 

暗殺者のプライベートな面を描くのは興味深い試みだが、そこでも『 ANNA アナ 』に負けている。あちらは一人の女性が二人の男を手玉に取ったが、こちらは一人の男を二人の女(それも姉妹!)で取り合うという修羅場展開。暗殺者のプライベートにまで闘争の種は要らんやろ・・・ しかも、その相手の男も職業がギャンブラーって何やねん。恋愛および結婚対象にしたらダメな属性ナンバーワン。8年も暗殺稼業をやっているエヴァが、この男に未練たらたらである理由がさっぱり分からなかった。

 

サイモンの最期が残念過ぎる。何故にわざわざ人気の少ない方向へと逃げるのか。組織に家族の護衛を要請するなら、同じその電話で自分に応援または足を寄こすようにと言えばいいではないか。エヴァ相手に「俺のほうが殺しのキャリアは上だ」みたいなことを言っていたが、とてもそうは思えなかった。終わり良ければ総て良しと言うが、終わりが悪ければ総て悪しとも言えてしまう。その典型例のような悪役だった。

 

『 マー サイコパスの狂気の地下室 』や『 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー 』のダイアナ・シルヴァースの出番が足りない。というか、続編作る気満々の終わり方だが、それならサイモンの娘であるカミールの強さがほんの少しでもいいから伝わるシーンが必要だったが、そんなシーンも演出も無し。ダイアナ・シルヴァースの無駄使いだった。

 

総評

ジェシカ・チャステインのファンにはお勧めできるが、それ以外にはやや難しい。聞けば途中で監督が降板して、テイト・テイラーが引き継いだらしい。『 ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 』などでも分かるが、監督が途中で代わるのはマイナスがあまりにも大きい。野球やサッカーは監督交代が奏功することがあるが、映画でそれはまずない(そういう意味では『 ボヘミアン・ラプソディ 』は例外的)。なので、物語や映像、キャラの深堀具合などではなく、ひたすらジェシカ・チャステインを鑑賞したい人のための作品であると了承してから李チケットを買うべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

do ~ justice

~を正当に評価する、の意。作中では”Pictures don’t do you justice.” =「写真はあなたを正当に評価していない」=写真はあなたの魅力をしっかりと写し出していない、のように使われていた。昔、YouTubeでアメリカのボクシング試合を見あさっていた時に、”TV does this fight no justice!” = 「テレビではこの試合の迫力が伝わらない!」というアナウンサーの絶叫を聞いたことがある。こういう表現がさらっと使えれば英会話の上級者と言える。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, コリン・ファレル, ジェシカ・チャステイン, ジョン・マルコヴィッチ, ダイアナ・シルヴァース, 監督:テイト・テイラー, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 AVA/エヴァ 』 -続編は難しいか-

『 パーム・スプリングス 』 -結婚について考えよ-

Posted on 2021年4月14日 by cool-jupiter

パーム・スプリングス 70点
2021年4月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンディ・サムバーグ クリスティン・ミリオティ J・K・シモンズ
監督:マックス・バーバコウ

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無名キャストたちが主演を張りながらも、アメリカではかなりの高評価だったことからチケットを購入。タイムトラベルものやタイムループものは出だしは絶対に面白いのだが、着地に失敗することも多い。本作はちゃんと着地できている。

 

あらすじ

結婚式で出会ったナイルズ(アンディ・サムバーグ)とサラ(クリスティン・ミリオティ)は、二人でロマンチックな雰囲気に。しかし、そこへ謎の老人ロイ(J・K・シモンズ)が現れ、ナイルズにボーガンの矢を放つ。ナイルズは「来るな!」と言い残して、赤い光を放つ洞窟の中に消えていく。ナイルズを追って洞窟に入ったサラは、気が付くとその日の朝に戻っていて・・・

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ポジティブ・サイド

同じ一日を何度も繰り返すという作品には『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』があるが、ある意味ではこちらのナイルズの方があちらのトム・クルーズよりも遥かに深刻で、なおかつ状況を楽しんでいる。冒頭のシークエンスから笑ってしまう。起き抜けにいきなり一戦交えるナイルズとそのガールフレンドのミスティだが、ナイルズはまったく興奮しておらず、ミスティも「時間がないから」と言って、ナイルズに自分で出すように言うが、そのそばで”Shit!”を連発するミスティを見つめるナイルズの表情が様々なことを物語っている。物語の中盤以降にこの顔を思い浮かべれば、アンディ・サムバーグの演技力・表現力の豊かさを称賛できるはずだ。

 

ヒロインのサラは大きな目が特徴的な妙齢の女性。しかし、妹が結婚するというのに本人は独身、家族の態度も何やらよそよそしい。パーティーでも一人で延々と飲むタイプで、社交的には見えない。割とすぐに本人の口から語られることだが、いろいろちょっとアレな人なのだ。この序盤の家族、特に父親の言動をしっかりと覚えておくと、終盤の物語の舞台裏(タイムループ現象の謎ではない)が明らかになる瞬間に役立つ。

 

ナイルズがミスティの浮気に傷心して、それを見たサラがナイルズを癒してやりたくなってしまい・・・という部分だけ見ればよくある三文芝居なのだが、ここの作りが非常によく、二人の盛り上がりにリアリティがある。と同時に、実はこのプロット自体が・・・と、これ以上は書いてはいけないんだった。

 

色々あってループ世界を楽しむ二人の様子を観るのはこちらも楽しくなってくる。実際に自分でもこういう行動をとるだろうな、という大胆な行動をとってくれるのだ。だって死んでもリセットされる(一応痛みは感じるらしい)だけで、どんなリスクだって取り放題なのだから。つまり、二人は二人だけの世界で生きているわけだ。というあたりで愚鈍なJovianは、これが恋愛および結婚生活の象徴であることに気が付いた。恋愛をしているときは無敵な感じがする。そして結婚当初もそうである。しかし、だんだんと二人だけの生活を続けていくと、そこに新鮮味を感じられなくなってくる。そうした時にどうすべきなのか。これはある意味で結婚観を問われる映画である。Jovianは結婚とは「その相手と一緒に年を取っていきたいと思えるかどうか」だと考えている。もちろん、「その相手との間に子を持ちたい」だとか「その相手と一緒に子供を育てたい」、「その相手と一緒に笑いたい」、「その相手と一緒に苦労をしたい」など、これは人の数だけ答えがある問いだ。不正解と言える答えはあるだろうが、唯一の正解などというものは存在しない。

 

タイムループもラブコメ要素も普通といえば普通だが、本作のメッセージは「結婚について真剣に考えてほしい」ということなのだろうと受け取った。もしも独身者や「結婚?しねーよ」と言う人は、絵本の『 100万回生きたねこ 』を読んでから、本作を鑑賞されたし。そうすればナイルズの決断について、より深く共感できるようになるはずである。

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ネガティブ・サイド

J・K・シモンズの出番はもっとあってよかった。というか、時々現れて殺しに来ると言いながら、実際にやってくるのは2回だけ。これだけでは拍子抜けだ。もちろん、なぜあんまりやって来ないのかは後から説明されるが、前半で能天気に楽しむナイルズとサラに a change of pace をもたらすために、もう少し高い頻度で殺しに現れてほしい。そうすれば、無意味だと感じてしまうようになる生にも何らかの意味があるはずだと考えるきっかけになったのではないか。

 

素朴な疑問が二つ。一つは、サラがタイムループからの脱出方法を実験するためにヤギを使うのだが、なぜサラはそのヤギがタイムループをしていると知っていたのだろう。あるいは、ヤギを洞窟の赤い光に連れ込んだのだろうか。であれば、その描写はカットしてはいけなかったのではないか。

 

疑問のもう一つは、タイムループの内と外。この終わり方だと、タイムループは実はタイムループではない。あるいは『 アベンジャーズ/エンドゲーム 』のように、時間線=意識線のような時間構造を想定しなければならないが、だとするとサラが独学していた量子力学は・・・まあ、これはタイムトラベルの原理と同じで深く考えてはいけない領域か。

 

総評

余計な登場人物や余計なサブプロットもなく90分でサクッと終わるので非常に観やすい。一部、性的な描写もあるが露骨なものではない(一応、PG12である)ので、高校生ぐらいならデートムービーとして鑑賞することもできそうだし、夫婦で鑑賞すればさらに味わい深くなること間違いなしである。コメディ調でありながら、訴えてくるテーマはシリアス。しかしシリアスさは感じさせず、ライトなノリで最後まで楽しめる。結構な掘り出し物だと思うので、映画ファンならチケットを買われたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

cheat on somebody

日本語でもチートという片仮名で根付いているが、英語ではcheat on somebody = 誰かという相手を裏切って浮気をする、の意味。cheat on Nancyというのはナンシーが浮気相手という意味ではないので注意。この場合、裏切られたのはナンシーである。cheat in an exam=試験でカンニングをする、というのも割と使われる表現である。cheat = 何らかの不正行為を行う、と理解しておこう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, J・K・シモンズ, アメリカ, アンディ・サムバーグ, クリスティン・ミリオティ, ラブコメディ, ラブロマンス, 監督:マックス・バーバコウ, 配給会社:プレシディオ, 香港Leave a Comment on 『 パーム・スプリングス 』 -結婚について考えよ-

『 21ブリッジ 』 -プロットはありきたりだが、迫力は十分-

Posted on 2021年4月11日 by cool-jupiter

21ブリッジ 55点
2021年4月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チャドウィック・ボーズマン J・K・シモンズ ステファン・ジェームス
監督:ブライアン・カーク

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ブラックパンサーのチャドウィック・ボーズマンの遺作。マンハッタン封鎖という壮大なスケール+話題性に惹かれて鑑賞。エンタメの面だけ見れば上々である。

 

あらすじ

マンハッタンで警察官8人が射殺されるという事件が発生した。警察官殺しの犯人を過去に何度も射殺してきたアンドレ・デイビス(チャドウィック・ボーズマン)刑事が犯人を逮捕するため、マンハッタンを全面封鎖するが・・・

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ポジティブ・サイド

チャドウィック・ボーズマンの雄姿が光る。冒頭の査問シーンから、容赦なく相手を射殺していくタイプかと思いきや、血も涙もある人間だった。認知症の母親をいたわる姿に、Mama’s boyとしての顔と、激務である刑事の仕事に誇りを持っているというプロフェッショナリズムの両方が見えた。これがあるためにラストの言葉による対決が説得力を持っていた。

 

犯人たちを追跡するシークエンスも大迫力。追いかけるデイビスは『 チェイサー 』のキム・ユンソクばりに走る走る、逃げる。犯人の一人であるマイケルも『 哀しき獣 』のハ・ジョンウばりに逃げる逃げる。マンハッタンの街中や道路、地下鉄、住宅などを縦横無尽に駆け巡る追跡&逃走劇は、邦画では描けない臨場感。追う者と追われる者がいつしか自分たちだけの一体感を得ていくというのは、よくある話であるが、それゆえに説得力がある。

 

ハリウッド映画で感じるのは、銃撃のリアリティ。銃撃されたことはないけれど、色々なものが確実に伝わってくる。Jovianは大昔に一度だけアメリカで銃を撃ったことがあるけれど、銃器って重いんだ。それを扱っている人間の体の動きや姿勢、撃った後の反動、それに音響などの迫真性がたまらなく恐ろしい。こればっかりは邦画が逆立ちしても勝てない領域(勝つ必要はないけれど)。

 

チャドウィック・ボーズマンのファンならば、彼の雄姿を目に焼き付けるべし。

 

ネガティブ・サイド

デイビスのキャラクターをもう少し深堀りすることはできなかったか。警官殺しを容赦なく殺すというのは、なかなか強烈なキャラクターだ。だからこそ、冒頭で描かれる彼の父親の死や、実際に彼が行ってきた容疑者や犯人の射殺に至る経緯をもっと詳しく見せる必要がある。それが中途半端ゆえに「あれ、撃ち殺すんじゃないの?」という疑問がわき、それが「ああ、撃ち殺せないプロット上の理由があるのね」とつながってしまう。このあたりからストーリーの全体像が読めてしまうし、2020年夏の米ウィスコンシン州のジェイコブ・ブレイク事件を彷彿させる、無抵抗な人間を警察が容赦なく射殺・銃撃するシーンを見せられれば、否が応でも黒幕の存在にはピンとくる。韓国映画の警察が無能というのは常識だが、アメリカ映画の警察が味方とは限らないというのもまた常識である。

 

デイビスの孤立無援、孤軍奮闘っぷりばかりが目立つが、「ヨランダ」にもう少し後半に出番があってもよかったのではないか。「ケリー」の方にはあるのだから、ここはバランスをとってほしかった。というか、ヨランダがデイビスにかけてきた電話はいったい・・・

 

総評

警察という仕事の困難さはJovianも義理の親父から何度か聞かされた。しかし、警察という仕事の誇らしさもそれ以上に聞かされた。そういう意味で、マンハッタン封鎖作戦以降は、警察1vs警察の物語として観るべし。ただしデイビスの人間性はうまく描出されていたが、デイビスの警察官としてのバックグラウンドがほとんど描かれなかった点が惜しい。同じようなテーマの『 ブラック アンド ブルー 』の方が面白さは上だと感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be on borrowed time

『 サヨナラまでの30分 』で紹介した live on borrowed time とほぼ同じ意味である。つまり、借り物の時間で存在している=死ぬのは時間の問題、ということ。劇中のアメリカの警察の恐ろしさを実感させてくれるセリフである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, J・K・シモンズ, アクション, アメリカ, ステファン・ジェームス, チャドウィック・ボーズマン, 中国, 監督:ブライアン・カーク, 配給会社:ショウゲートLeave a Comment on 『 21ブリッジ 』 -プロットはありきたりだが、迫力は十分-

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