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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アクション

『 ソー ラブ&サンダー 』 -シリーズ疲れが顕著-

Posted on 2022年7月19日 by cool-jupiter

ソー ラブ&サンダー 40点
2022年7月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリス・ヘムズワース ナタリー・ポートマン クリスチャン・ベール
監督:タイカ・ワイティティ

元同僚カナダ人が「期待できない。DVDまで待つ」というので、嫁さんと劇場へ。うーむ、MCU全般に言えることだが、franchise fatigue = シリーズ疲れが深刻であるように思う。

 

あらすじ

積極的に闘うことから身を引いたソー(クリス・ヘムズワース)は、神殺しの剣・ネクロソードを持つゴア(クリスチャン・ベール)が銀河の各地の星々で神を殺しまわっていることを知る。遂にゴアと闘うことになったソーの前に、かつての恋人ジェーン・フォスター(ナタリー・ポートマン)がムジョルニアを携えて現れ・・・

ポジティブ・サイド

MCU特有のマシンガントークは健在。スター・ロードとソーの掛け合いは面白いし、肥満体からのリカバリーや、自分探しの旅、さらには求められなければ闘わないという、中二病的な思考回路も、ソーというキャラクターに親近感を抱かせる要素になっている。

 

キャプテン・アメリカに奪われ(?)、ヘラに粉砕されたムジョルニアが今作では復活。しかし、持ち主はナタリー・ポートマン。そのナタリー・ポートマンとソーとの、燃え上がりそうで燃え上がらない焼け木杭には、イライラさせられつつも、成熟した大人同士の距離感を教えられた気もする。そう、これはアホな男子のノリのまま生きてきたソーが、一人前の大人になる一種のビルドゥングスロマンなのだ。

 

ソーがストーム・ブレイカーに浮気し、ムジョルニアをほったらかしにしてしまったことを何度も詫びるシーンには笑ってしまう。今の女より昔の女を大切にしようとするとどうなるか、男性諸賢は本作を教訓にされたし。

以下、少々ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

残念ながらアクションに観るべきものなし。ナタリー・ポートマンがマイティ・ソーになっても、アクションそのものはこれまでのソー映画のそれと変わり映えしない。そこで、今回はゼウスの武器であるキンキラキンの変な武器も簒奪。けれど、何をしたところで Marvel 映画のアクションはどん詰まりに来ていると感じる。ひたすらに肉弾戦で全てを破壊するハルクだけは、シリーズがどれだけ進んでも爽快感あるバトルシーンを提供してくれそうだが、ハルクはもうお役御免。

 

閑話休題。本作はタイカ・ワイティティ監督の演出と波長が合うかどうかで、印象がガラリと変わるのだろう。『 ジョジョ・ラビット 』のように、コメディとして始まり、シリアスなヒューマンドラマに変貌していく物語はお手のものなのかもしれないが、コメディとシリアスなドラマを共存させるのは不得手なのかもしれない。熱心な信徒だったゴアが、神そのものの傲岸不遜さに触れて棄教し、自らが神殺しになってしまうというのは、これ以上ないシリアスなドラマのはずだ。特にアメリカからすれば、自らが信じてきた国家観が過去数十年で大きく揺らいできた。湾岸戦争へのアメリカ参戦のきっかけは在米クウェート人のお芝居だったし、『 モーリタニアン 黒塗りの記録 』など、国家による茶番劇はドンドンと明るみに出ている。この「信じていたものに裏切られる」というゴア側の視点が本作では致命的に欠けているように思う。この「何を信じていいのか」という不信感を、「やっぱり信じられるヒーローがいる!」というカタルシスに持っていくための仕掛けが本作にはない。観終わって最も印象に残ったのは、コメディとシリアスのアンバランスな配合具合だった。

 

序盤にプレゼントされる巨大ヤギもギャーギャーうるさい。これはあれか?土着の民族からの贈り物は野蛮極まりないという意識の表れ?このヤギの意味がちょっと分からなかった。

 

Jovianが忘れているだけかもしれないが、序盤に出てきていたジェーンの友達はドラマの人物?『 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 』もそうだったが、映画鑑賞の前提にドラマ視聴を持ってこないでほしい。観たいのは映画であって、ドラマではないという層も一定数いることを作り手は意識してほしい(などとディズニーに言っても無駄だとは分かっている)。

 

エンドロール後に次回作が示唆されているが、さすがにもう食傷気味。ソーがヘラクレスとの壮絶な一騎打ちに敗れて、ヴァルハラでジェーンと live happily ever after でシリーズのフィナーレにしてくれてええよ。

 

総評

駄作ではないが、取り立てて褒めるべきところもない作品。少々嫌味な言い方をさせてもらえば、よくできたミュージックビデオのようだ。そして、それで成功したのが『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 』だった。が、こちらとしては「それはもう観た」としか感じない。MCU全体に言えることだが、サノスを失ってから、物語の軸がはっきりしない。そろそろこの Marvel というフランチャイズそのものから離脱する頃合いか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

give or take ~

 

直訳すれば「与える、または取る」だが、実際の意味は「誤差は~ぐらいで」、「~ぐらいの増減ありで」のような意味となる。

I think he is about 45 years old, give or take one or two years.
彼は45歳ぐらいだと思う、誤差はあっても1~2歳。

The year’s revenue will be a hundred million yen, give or take a few million yen.
今年の収益予想は1億円で、そこから数百万円増減することもあります。 

のように使う。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, クリス・ヘムズワース, クリスチャン・ベール, コメディ, ナタリー・ポートマン, 監督:タイカ・ワイティティ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ソー ラブ&サンダー 』 -シリーズ疲れが顕著-

『 地獄の花園 』 -アクションをもっと真面目に-

Posted on 2022年7月16日 by cool-jupiter

地獄の花園 50点
2022年7月12日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:永野芽郁 広瀬アリス
監督:関和亮

劇場公開時にはスルーしたが、クーポン使用で近所のTSUTAYAから安く借りてくる。アクションが全体的に中途半端で、メインのキャラも脇役に食われてしまっていた。

 

あらすじ

ごく普通のOLである直子(永野芽郁)の会社では、猛者たちがOL界の覇権を求めて抗争を繰り広げていた。ある日、中途採用された法条蘭(広瀬アリス)と直子はひょんなことから意気投合。しかし、蘭は超武闘派のOLで、あっという間に三富士株式会社のトップに君臨する。以来、周辺企業のトップのOLたちとの抗争が絶えなくなり・・・

 

ポジティブ・サイド

OLの世界には昔も今もお局が存在する。ある意味、男性サラリーマン以上に権謀術数を駆使して権力闘争を繰り広げるのが、OLという生き物である。偏見と言うことなかれ。良くも悪くも、これが日本企業に勤める女性社員のすべてとは言わないまでも、多くに当てはまることなのである(Jovian妻談)。そのOLの生態を一昔前のヤンキー漫画に当てはめて描写したところに本作の面白さがある。

 

菜々緒や大島美幸のOL姿はそれだけで笑ってしまうし、川栄李奈のヤンキーでありながらOL的な気遣いを見せられるというギャップにも、やはり笑ってしまう。このヤンキーOLの仁義なき派閥抗争と、そこに突如現れる新勢力の広瀬アリス、その広瀬アリスの友人となる永野芽郁の掛け合いが物語を動かしていく。

 

他者との抗争=ヤンキー漫画における他校との抗争で、相手の頭を潰せば、そこを丸ごと傘下に加えられるということから、抗争がどんどんと拡大、過激化していく。その途中で出てくるトムソンというのは、やはりサムソンが元ネタだろうか。トヨタですら敵わない財閥にして超巨大企業である。そこの幹部OLを全員男性キャストで固めたのには賛否両論あるだろうが、Jovianはやや賛である。コメディなのだから、これぐらいアホなキャスティングは許容すべきであろう。

 

広瀬アリスの武者修行シーンは笑えるし、最後の最後でこれまでの数々の闘争を、ある意味ですべてなかったことにする価値観の開陳も悪くない。というか、この世界観をそのままに物語を閉じてはいかんだろう。その点で、アホ極まりない物語にも一応の決着がつけられ、話はきれいに閉じていく。頭を空っぽにして観る分には良い映画だろう。

 

ネガティブ・サイド

映画館で観た予告編をうっすらと覚えているが、ハッキリ言ってトレーラーの作り方を間違っている。永野芽郁のアクションシーンは全カットして、広瀬アリスが頂点を目指して闘っていくストーリーだと思わせるようにすべきだった。トレーラーのせいで「実は永野芽郁も強いんでしょ?」と観る側にバラしてしまうのは全く得策ではない。誰がトレーラー作ったの?そして、誰がそれを承認したの?

 

肝心かなめのアクションも迫力不足。ちょっとしたパンチや蹴りのたびにカットして、別アングルから別アクションを映していくカメラワークは、役者の鍛錬不足を何とか目立たないようにしたいという工夫なのだろうが、ここを追求しないことには真の面白さは生まれてこない。『 翔んで埼玉 』がクッソ面白かったのは、埼玉狩りのアクションやGACKTと伊勢谷友介の衝撃のキス、埼玉VS千葉の大軍勢同士の激突など、アホなシーンのリアリティをこれでもかと追求したからである。OL同士の喧嘩でも、もっと役者たちを追い込んでほしかったし、追い込むべきだった。別に『 アジョシ 』や『 悪女 AKUJO 』のようなクオリティは求めていない。ただ、真っ正面から魅せるアクションシーンがひとつぐらいはあってもよかったのではないか。

 

主要キャラであるはずの永野芽郁や広瀬アリスが遠藤憲一に完全に食われていた。もちろん演技合戦の中では『 ボーダーライン 』のベニシオ・デル・トロや『 ジュラシック・パーク 』のジェフ・ゴールドブラムのように、主役を食ってしまう脇役というのは存在する。しかし本作の沿道の悪目立ちは監督の演出力不足によるところが大であると思われる。キャスティングではなくディレクションの問題だろう。

 

総評

日本ならではのアイデアが詰まっているし、日本ならではの弱点も露呈している、何とも評価に困る作品。ということは、一部の人々から高評価を得て、一部の人々からは低評価を得やすい作品ということになる。要は、作り手と観る側の波長が合うかどうかである。男性視点からのOL社会を面白いと思うか、くだらないと思うか。観るかどうかは直感で決めるべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Stop talking shit, you ugly whore!

「寝言こいてんじゃねーよ、ブス!」の私訳。聞いた瞬間の思いつきだが、実際にプロの翻訳者でも、案外こういう訳に落ち着くのではないかと思う。寝言を言う ≒ 馬鹿なことを言うなので、ここでは talk shit とした。悪口を言う、無礼・不愉快なことを言う、の意味である。ちなみに、こんな英語は実生活では絶対に使ってはならない。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, コメディ, 広瀬アリス, 日本, 永野芽郁, 監督:関和亮, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 地獄の花園 』 -アクションをもっと真面目に-

『 モガディシュ 脱出までの14日間 』 -極限状況から脱出せよ-

Posted on 2022年7月4日 by cool-jupiter

モガディシュ 脱出までの14日間 75点
2022年7月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・ユンソク チョ・インソン チョン・マンシク
監督:リュ・スンワン

名優キム・ユンソク主演作。韓国が国際社会での存在感を増そうともがいていた時代を映したという意味で『 国家が破産する日 』とよく似ている。あちらも焼けつくようなサスペンスがあったが、こちらも言葉そのままの意味で手に汗握り、固唾をのんでしまう作品であった。

 

あらすじ

1990年、国連加盟を目指す韓国はアフリカ諸国の支援を取り付けようと躍起になっていた。ソマリア駐在大使ハン(キム・ユンソク)も、ソマリア大統領やその側近に接近していた。しかし、同じく国連加盟を目論む北朝鮮の妨害にあっていた。そんな中、内戦が勃発。北朝鮮のリム大使(ホ・ジュノ)は、韓国大使館へ助けを求めようとするが・・・

ポジティブ・サイド

太陽政策以来、南北は、少なくとも韓国側は融和への路線を歩んでいる。だが、本作は1990年、つまり南北がバチバチに対立していた頃の話。その争いも、北がソマリアのチンピラを雇って、韓国大使の自動車を銃撃し、大統領との面会に遅刻させるという、ユーモラスなのか深刻なのか分からないもの。だが、いったん内戦が勃発するや、わずかに残っていたユーモアは消し飛び、物語は戦場さながらの、いや戦場そのままの修羅場からの脱出劇へと変貌する。

 

まずソマリア人たちの trigger happy ぶりに怖気を奮うしかない。銃社会と言えば『 女神の見えざる手 』のアメリカが思い浮かぶが、銃を誰がどう手に入れるかではなく、誰もが銃を持ち、政権側は反乱軍に発砲するし、反乱軍も政権側に発砲する。同国人に対してそうなのだから、外国人に対して容赦などするはずもない。相手が外交官であっても反乱軍は気にしない。いや、反乱軍だからこそ気にしない。そんな恐怖感が、逆に南北朝鮮人の心を近づける。

 

命からがら韓国大使館へと逃げ込む北朝鮮外交官たちとその家族たちが、晩餐を振る舞われるが、誰もそれに手を付けない。元々一つの国家だった朝鮮半島であるが、彼らはその文壇の始まりをモガディシュに見出していたのだろう。キム・ユンソクがホ・ジュノと自分の器を無言で入れ替え、むしゃむしゃと食べ始めたところで、北朝鮮側も三々五々食べ始める。ここで、南北の女性が同時に荏胡麻の葉に同時に橋を伸ばすシーンは、人間が本来持っている思いやりというものを淡々と描く名場面だった。

 

本作は南側の視点に立っているが、北を問答無用の悪に描くことはせず、また南を無条件に善に描くことをしない。北の人間が自分たちの子どもたちに南の文化を見させまいとして、我が子の目を覆うシーンもある一方で、南の人間は北の人間すべてが暗殺者として育てられていると陰口をたたく。どっちもどっちである。この相容れない同民族が、極限状況で互いを認め合っていくのが本作の一つの見どころである。分断されるソマリアと、分断される中で統一・・・とは言わないが、一つにまとまっていく南北朝鮮の人々のコントラストが映える。非常に逆説的であるが、民族や部族がまとまるために極限状況は不要であるというメッセージが強く伝わってくる。

 

クライマックスのイタリア大使館に向けての逃走劇はカーアクションの白眉である。カーアクションだけ見れば『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』や『 ただ悪より救いたまえ 』よりも上である。4台のクルマが連なって銃撃の雨あられをかいくぐる一連のシークエンスは、カメラワークの巧みさもあり、非常にスリリングな出来に仕上がっている。脱出した先に見る光景、それはもう一つの分断だった。このやるせなさよ。清々しい余韻を残して終わることを良しとしない韓国映画の面目躍如である。

 

1990年と言えば湾岸戦争勃発のイメージが強く、ソマリアで内戦が起きていたことなど当時はリアルタイムで知りようがなかったし、そんな情報も自分には入ってこなかった。小学生だったから当たり前だが、当時の大人も海外の一大事といえば湾岸戦争だったはずだ。だが、そんな戦争の裏でこれほど濃密なドラマが繰り広げられていたとは知らなかった。韓国映画の勢いは、コロナ禍でも衰えを知らないようだ。

ネガティブ・サイド

南北の参事官同士が肉弾戦を繰り広げるシーンがあるが、あまりにも南が北を圧倒しすぎではないか。もっと互角の殴り合い(というか蹴り合い)をしてくれれば、終盤のカーアクション後の展開をもっとドラマチックに演出できたことだろう。

 

各国大使たちの丁々発止のやりとりや、時に支え合い、時に出し抜こうとする外交官の駆け引きが描かれていれば、終盤のイタリア大使館やエジプト大使館から協力を得られる展開がもっと感動的になったと思われる。

 

総評

韓国映画はしばしばハリウッド映画の亜種とされるが、まさにハリウッド的なテイストに溢れた作品。序盤はユーモアを交え、60分で一つ目の山場、90~105分に対立と緊張の中で芽生える南北の人間の奇妙な友情や連帯感は、陳腐ではあるが、それゆえにいくらでもドラマを生み出すことができる。『 PMC ザ・バンカー 』はスーパー・エクストリームな展開だったが、こちらは歴史的な事実に基づいている。その意味ではリアリティが抜群である。韓国映画と邦画の差は開くばかりである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

15 minutes late

『 シャンチー テン・リングスの伝説 』で紹介した 90% confident の類似表現。劇中ではキム・ユンソクが We were only 15 minutes late. = たった15分遅刻しただけなのに、と正しい形で使っていた。前にも書いたが、Jovianの以前の職場の英検1級ホルダー3名はそろいもそろって 〇〇 san will be late for 15 minutes を「正しい英語である」と認識するトンデモ英語講師であった。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, キム・ユンソク, サスペンス, チョ・インソン, チョン・マンシク, 歴史, 監督:リュ・スンワン, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 モガディシュ 脱出までの14日間 』 -極限状況から脱出せよ-

『 トップガン マーヴェリック 』 -MX4D鑑賞-

Posted on 2022年6月28日2022年12月31日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点
2022年6月25日 TOHOシネマズなんばにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

『 トップガン マーヴェリック 』の感想で「なぜ4DXやMX4D上映は日本語吹き替えばかりなのか。航空業界の Lingua Franca は英語と決まっているのだが」と書いたところ、6月中旬から字幕版でも4DXやMX4Dが楽しめるようになった。言ってみるものである。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭、”Danger Zone” と共に空母から艦載機がどんどん発艦していくシーンから、浮遊感を存分に味わえたし、KAWASAKIのバイクの疾走感も感じられた。マーヴェリックとひよっこ連中との模擬空戦や、trench run や popping up のトレーニングなどでも Four Dimensional な感覚を与えてくれる4DXは本作との相性が特に良かったと感じる。映画の世界ではカーアクションがお馴染みだが、あれは二次元機動。飛行機、特に戦闘機のように高速で激しく三次元機動するような映画は数少ないが、そうした作品は今後も4DXやMX4Dで公開してほしい。

 

一部でミュージックビデオを揶揄された前作『 トップガン 』であるが、本作は前作へのオマージュをふんだんに取り込んでいる。前作で二度聞かれた “Take me to bed, or lose me forever.” =「ベッドに連れて行って、そうじゃないとあなたとは永遠にお別れよ」と対を成すかのように、マーヴェリックがアイスマンに “I could lose him forever.” =ルースターを永遠に失ってしまうかもしれない、と吐露するシーンは素晴らしかった。ビーチバレーとビーチアメフトの対比は目立つが、もっとさり気ないところで前作へのオマージュを示している点が非常に好ましい。 

 

他にもハングマンがバーでルースターに突っかかっていくシーンで “I love this song!” =「この曲、最高だな!」と言い放つ時にかかっているのが “Slow Ride” で、これがそのままルースターの慎重な姿勢、さらにトレーニングでもスローペースで飛んでしまうことの伏線になっていた。

 

劇場はかなりの入りで、20代くらいのカップルが目立った。デートムービーとして重宝されているということだろう。時間とお金に余裕があれば、一度は本作を4Dで鑑賞されたし。

ネガティブ・サイド

戸田奈津子氏の字幕翻訳にはやはりいくつか疑問が残る。

 

ハングマンの言う “In this mission, a man flies like Maverick or a man doesn’t come back. No offense intended.” =「このミッションでは、マーヴェリックのように飛ぶ男じゃないと生還できない。(フェニックスを見ながら)悪気があって言ったわけじゃない」というのが本当のところ。字幕では No offense intended = 「偉そうかな」になっていた。ハングマンは、ウォーロックがマーヴェリックを紹介する前に “the best men and women …” と言ったところでもフェニックスをちらりと見て「女は一人だけなのに、women だってよ」みたいな目つきをしていた。そういったところを踏まえて、No offense intended はもっと直截的に「おっと、女性もいたっけ」のような皮肉にすべきだった。

 

ルースターの言う ”Talk to me, dad.” =「助けて、父さん」という訳もいかがなものか。もっとマーヴェリックに合わせて「やるぞ、父さん」とか思いっきり意訳して「父さんの声が聞こえた」とかでも良かったのでは?

 

総評

アースシネマズ姫路で視野270度の3面マルチプロジェクション上映を行っているが、吹き替えらしい。何故だ?航空業界の Lingua Franca は英語と相場が決まっている。尼崎市民のJovianは姫路に赴くのにやぶさかではない。劇場や配給会社の賢明なる判断を期待したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

level the playing field

「競技場を平らにする」というのが直訳だが、実際の意味は「競争の条件が等しくなる」ということ。

YouTube has leveled the playing field for all the video creators.
ユーチューブによって、すべての動画制作者は等しい条件で勝負できるようになった。

のような使い方をする。

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ヒューマンドラマ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズ『 トップガン マーヴェリック 』 -MX4D鑑賞- への4件のコメント

『 トップガン マーヴェリック 』 -劇場再鑑賞-

Posted on 2022年6月5日2022年12月31日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点
2022年6月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー

また観てしまった。会社でも40代~50代のオッサン連中(日本人&外国人)から「観てきたぜ!」のと報告が相次いでいる。「当時はみんな、レザージャケットを着てKAWASAKIのバイクに乗っていた」と懐古する声が特に印象に残った。会社でも世間でも本作の評判は上々のようである。

 

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

トップガン・アンセムからの『 Danger Zone 』+空母から発艦していくF-18だけで、この世界に吸い込まれていく感覚は2度目の鑑賞でも健在。やはり『 スター・ウォーズ 』のオープニング・タイトル映像+ジョン・ウィリアムズのテーマ音楽に匹敵する力を感じた。

 

前作でも戦闘機の疾走感は存分に味わえたが、今作の工夫として大空ではなく低空を飛行するシーンをかなり多めに使うことが挙げられる。これにより景色が流れていくのを目にすることができ、戦闘機の常識外れのスピードを視覚で直接的に体験することができるようになった。Gを感じることはできないが、爽快感は確実に感じられる。

 

初回鑑賞時に見誤っていたのが、ミッション遂行時の条件。最高高度100フィート、最低速度660ノット/時だった。ゲームのAce Combatでこれをやれと言われても無理である。特にハイGクライムからの背面ダイブ、そして精密爆撃からの再度のハイGクライムはメビウス1やサイファーでも不可能に思える。だからこそ、それをシミュレーションでも本番でもやってのけるマーヴェリックに痺れてしまう。

 

ロシアが仮想敵国として描かれているが、コロナによって上映が2年以上遅れ、プーチンがウクライナへ侵攻したことで、本作の持つ意味が偶然にも大きくなった。「抜かずの剣こそ我らの誇り」とは漫画『 ファントム無頼 』の神田の台詞だが、抜かないからといって剣をなまくらにしておいてよい理由はない。マーヴェリックは米海軍のパイロットでトップガンの教官だが、日本の自衛隊の飛行教導群にもマーヴェリックのような凄腕パイロットはいるはずなのだ。日本はロシア、中国、北朝鮮と覇権主義あるいは先軍主義の国に面しており、地政学的に高い防衛力を要求される国である。平和を脅かす真似をするから先制攻撃・・・という考え方には素直に首肯はできかねるが、平和を維持するためには膨大なエネルギーが必要である。

 

コロナ禍によってエッセンシャル・ワーカーという存在が初めて可視化された。ロシアのウクライナ侵攻によって、我々が気付いていないところで平和の維持に従事する人間がいるのだということが本作によって多くの人によって意識されることと思う。しかし、ゆめゆめ本作のメッセージを誤って受け取ることなかれ。マーヴェリックが望むのは、愛する人と共に平和な空を飛ぶことである。決して撃墜王になることではない。

ネガティブ・サイド

映画そのものの出来とは無関係なこと2つ。

 

なぜ4DXやMX4D上映は日本語吹き替えばかりなのか。航空業界の Lingua Franca は英語と決まっているのだが。

 

ハングマンが言われる、あるいは言う “You look good.” や I’m good.” の「調子が良い」というのは誤訳だと思われる。ニュアンスとしては「良い腕してる」の方が近いはず。最後に颯爽と現れて絶体絶命のマーヴェリックとルースターを助けたところで、フェニックスが  “Hangman is good, but Mav is better.” みたいなことを言っていたことから、調子ではなく腕前と解釈すべきだろう。

 

総評

さすがにプロットが全部わかったうえで鑑賞すると、初回の興奮は消えてしまう。しかし逆に本作の映像的に優れた面により集中して鑑賞することができたように思う。すまじきものは宮仕えと言うが、サラリーマン社会よりも遥かに厳しい軍隊において、自分の美学=仲間を見捨てない、死なせないという思いを貫くマーヴェリックに、勇気をもらうオッサン連中は多いはず。さあ、オッサンたちよ。初回を一人で鑑賞したなら、次は前作を配信やレンタルで家族鑑賞だ。そして本作を家族で劇場鑑賞しようではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

at the request of ~

「~のリクエストによって」の意。劇中では “You are here at the request of Admiral Kazansky, a.k.a. Iceman.” という形で使われていた。ネット掲示板ではしょっちゅう、This post was deleted at the request of the original poster. という風にも使われている。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ヒューマンドラマ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -劇場再鑑賞-

『 トップガン マーヴェリック 』 -The sky is the limit-

Posted on 2022年5月29日2022年12月31日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点
2022年5月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

『 トップガン 』の続編。待ちに待たされた作品だが、This film is worth the wait! 前作の世界観を見事に受け継ぎ、人間ドラマとエンタメ性を高いレベルで融合させた。今年のベストと言っていいだろう。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

 

以下、軽微なネタバレあり

ポジティブ・サイド

オープニングからF-18が空母から発艦していく圧巻の映像、それと共に流れる『 トップガン・アンセム 』が郷愁を誘いつつ飛翔も予感させる。そしてケニー・ロギンスの “Danger Zone” で一気に大空へと舞い上がる。これによって『 トップガン 』の世界が一挙に再構築された。『 スター・ウォーズ 』もテーマ音楽だけで一気にその世界に引き込まれるが、『 トップガン 』にもその力がある。また『 スター・ウォーズ 』同様に効果音も脳に刻み付けられている。一時期、”You can’t hear a picture” というミームが流行ったが、映像だけで戦闘機のエンジン音や滑空音が脳内で再生されるというトップガンのファンは多いのではないだろうか。

 

前作へのオマージュを随所にちりばめつつ、現代的な視点も盛り込まれている。ゲーム『 エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 』が本作とのコラボ機体をリリースしたのは2019年だったが、思えばよくも待ったものである。ゲームと同じく現実世界でもドローンによる戦争が行われるようになってしまったが、それは取りも直さず人間が航空機に乗り込んでの操縦は不要になることを意味する。つまりパイロットはお払い箱である。そのことは『 エースコンバット6 解放への戦火 』や『 エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 』といったゲームでもしきりに言及されていた。その人間不要論を見事に打ち破ったのが本作だと言える。

 

まず、トップガンが挑むミッションがまんまフライトシミュレーターのゲームのミッションそのものである。いや、ある意味ではゲームよりも難易度が高いミッションだろう。Jovianが一時期ハマっていた Ace Combat シリーズは渓谷などの狭いエリアを飛ぶ ミッションが恒例だったが、ゲームでこれをやれと言われても ( ゚Д゚)ハァ? と反応するだろう。下限速度が時速400ノットで上限高度が1000フィート、そして高G加速で山肌に沿って上昇し、背面飛行で下降に転じ、施設を精密爆撃せよというのだから。マスコミあるいは映画評論家は、ぜひ航空自衛隊、できればブルーインパルスのパイロットにこのミッションが達成可能かどうか尋ねてほしい。おそらく答えは否だろう。実際にトップガンの面々もバンバン Mission Failed を連発する。最早このミッションそのものがダメかと思われたところで、マーヴェリックが実演でミッションは achievable と証明するシークエンスは最高に痺れた。 

 

そこまでの過程でグースの息子、テラーとの確執も丹念に描かれる。マーヴェリックは序盤から何度か “Talk to me, Goose.” という例のセリフを口にするが、別離から30年を経てもグースが心の中にいることを観る側にしっかりと伝えてくる。息子のルースターがバーのピアノで “Great Balls of Fire” を熱唱するシーンには我あらず涙ぐんでしまった。こんな単純な演出で泣けてしまうとは、Jovianも年を取ったのかねえ・・・ 二人の間の因縁、そこに込められたマーヴェリックの思いの深さは、そのままグースが愛した者への思いの深さになっている。  

 

いざミッションへと飛び立つトップガンの面々。だが、ルースターは逡巡してしまう。まるで前作のマーヴェリックのように。しかし、やはりパイロットを奮い立たせるのは機体の性能ではなく人間の思いなのだということを、本作はここでも高らかに宣言する。ミッションを成功させ、いざ離脱という時に前作同様の悲劇が隊を襲う。マーヴェリックが文字通りに体を張ってルースターを救うシーンにも、やはり涙ぐんでしまった。なぜ自分はこんなに涙もろくなってしまったのか。そこから続く『 エネミー・ライン 』的な展開では「なんでそこにF-14があるの?」とは思ってしまうが、鹵獲された機体を分析・調査するためだと納得した。

 

最終盤のドッグファイトは前作以上の大迫力。 “It’s not the plane, it’s the pilot.” = 「大事なのは機体じゃない、パイロットなんだ」とマーヴェリックを鼓舞するルースターに胸アツにならずにいられようか。普通に考えれば1980年代のクルマと2010年代のクルマ、もしくは1980年代のコンピュータと2010年代のコンピュータで性能を比較すれば前者は絶対に後者に勝てない。実際にマーヴェリックの十八番であるコブラからのオーバーシュート戦法を上回る、クルビット機動でのミサイル回避を披露する敵側の第5世代戦闘機(まあ、Su-57だろう)を相手にド迫力の空戦が繰り広げられる。手に汗握るとはまさにこのこと。自動運転車や無人機が主流になっていく世の流れは変えられないが、それでも “But not today.” と言い切るマーヴェリックの姿に、人間の誇り、尊厳とは何であるのかを教えられた。紛れもない大傑作である。 

ネガティブ・サイド

チャーリーが出てこなかったのは何故なのか、ギャラで折り合わなかったのか。『 クリード 炎の宿敵 』でもブリジット・ニールセンを三十数年ぶりに出演させたことがドラマを一段と盛り上げた。ヴァル・キルマーだけではなくケリー・マクギリスも必要だった。

 

総評

文句なしの傑作である。オリジナルからの続編のクオリティの高さという点では『 エイリアン 』、『 エイリアン2 』に勝るとも劣らない。カメラワークなどは前作よりも進化しており、Jovianの前の座席に座っていた年配女性たちは「ホンマに自分でも飛んでるみたいやったわ」と感想を言い合っていた。劇場の入りは8割ほどで、年配組が多かったように見受けられたが、若い観客もそれなりにいた。ぜひ前作を鑑賞の上、トム・クルーズの雄姿をその目に焼き付けてほしい。そして人間不要となりつつある世の流れに雄々しく抗う人間ドラマ、人間賛歌を多くの人に味わっていただきたいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I’ll give you that.

この that はひとつ前の言葉の内容を指す。

A: ”Let’s study in the library.” 
B: “That’s a good idea.”

の that と同じ。実際の用例としては、

You’re a good tennis player. I’ll give you that. 
君は良いテニス選手だ、認めよう。

のように「~を認めよう」のような意味になる。相手は you に限らない。They are formidable fighter pilots. I’ll give them that. = 「あいつらは手ごわい戦闘機乗りだ、それは認めよう」のようにも言える。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ヒューマンドラマ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズ『 トップガン マーヴェリック 』 -The sky is the limit- への4件のコメント

『 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 』 -ドラマの予習を前提にするな-

Posted on 2022年5月5日 by cool-jupiter

ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 45点
2022年5月4日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:ベネディクト・カンバーバッチ エリザベス・オルセン ソーチー・ゴメス
監督:サム・ライミ

 

先月退職した元・同僚カナダ人と共に鑑賞。彼もJovianもイマイチだという感想で一致した。

あらすじ

異世界で魔物から少女を助けようとする夢を見たドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、かつての恋人クリスティーンの結婚式に参列していた。しかし、その最中に夢で見た少女アメリカ(ソーチー・ゴメス)が怪物に襲われているところに遭遇する。辛くも少女を助けたストレンジは、アメリカはマルチバースから来たと知る。助力を必要とするストレンジは、自身と同じく魔法使いであるワンダ(エリザベス・オルセン)を訪ねるが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

ドクター・ストレンジのスティーブンの部分、つまり腕の立つ外科医であり、鼻持ちならない人間の部分がクローズアップされたのは良かった。スーパーヒーローは人間部分とヒーロー部分のせめぎ合いが大きなドラマになるが、それが最も面白いのはスパイダーマン、次いでアイアンマン、その次にドクター・ストレンジだと感じている(ちなみにその次はハルク)。冒頭の結婚式から一挙に魔物とのバトルになだれ込んでいくシークエンスで「ここから先は全部スーパーヒーローのパートですよ」と丁寧に教えてくれるのは配慮があってよろしい。クリスティーンと良い意味で決別できたことで、短いながらもスティーブンの成長物語にもなっていた。

 

これはネガティブと表裏一体なのだが、「え?」というキャラクターが「え?」という役者に演じられて登場する。このシーンは震えた。予告編でも散々フォーカスされていて気になっていたが、この御仁を持ってくるとは。ヒントは『 デッドプール 』。彼が時系列関連で云々言う際にマルチバースっぽい台詞を言う。その時の名前がヒントである。

 

映像は美麗を通り越して、もはや訳が分からないレベル。特に最初のマルチバース行きのシーンはポケモンショックを起こすレベルではないかと思う(一応、褒めているつもり)。魔法のグラフィックや、その他のスーパーヒーローの技のエフェクトも、通り一遍ではあるが、エキサイティングであることは疑いようがない。特に面白かったのは音符さらには楽譜が魔法になるシーン。ある攻撃の強さや衝撃度は1)視覚的に、2)効果音によって示されるが、そこに明確に音楽を乗せてきたのは新しい手法であると感じた。今後、これをマネする作品がちらほら出てくるものと思われる。

 

サム・ライミが監督ということでホラーのテイストが入っているが、良い意味でMCUっぽさを裏切っていて面白かった。MCU作品はスター・ウォーズ以上にプロデューサー連中が強固すぎる世界観を構築していて、そこからの逸脱は一切許されない=監督や脚本家の個性は不要という印象があったが、ディズニー上層部もマルチバース的な寛容の精神を持ち始めたのだろうか。

ネガティブ・サイド

予告編で散々ワンダが出てきたいたので、彼女がヴィランであることは分かる。けれども、テレビドラマの視聴を前提に映画を作るか?これはテレビドラマの劇場版映画ではないはずだが。一緒に観たカナダ人は「電車の中でドラマのrecap動画を観たから何とか意味は分かった」と言っていたが、ドラマには一切触れていないJovianには何のこっちゃ抹茶に紅茶な展開であった。

 

第一の疑問として、何故ワンダに子どもがいる?いや、別に子どもがいてもいいが、なんであんなに成長した子どもがいるの?『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』から10年以上経過したようには思えないが。劇中で「魔法で創った」と説明されるが、だったら何故にもう一度魔法で子どもを創らないのか?まあ、親からすれば子どもは唯一無二なのだろうが、それならそれで別の宇宙の自分から自分の子どもを奪うという結論に至る思考回路が謎となる。

 

第二の違和感はワンダ強すぎということ。インフィニティ・ウォーやエンドゲームでもうすうす感じていたが、ワンダが強すぎる。ワンダとキャプテン・マーベルだけでサノスを十分に倒せたのでは?『 エターナルズ 』の 面々より普通に強いだろう。他の不満点としては、せっかく出てきたファンタスティック・フォーたちがあっさりとやられたり、挙句にはあのキャラまでワンダにねじり殺されてしまう始末。うーむ・・・

 

マルチバース関連で一番よく分からないのは、どこのユニバースでもドクター・ストレンジがベネディクト・カンバーバッチであるということ。『 スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム 』を思い出そう。別のユニバースには別のピーター・パーカーが存在していた。なぜ本作ではカンバーバッチ版のストレンジしか出てこないのか。もちろんスパイダーマンとドクター・ストレンジを同列に扱えるわけはないが、互いにリンクしている作品同士、もう少しこのあたりの説明が必要だったと思う。またアメリカは72のユニバースを巡ったそうだが、そのいずれでもサノスは倒されていたのか?それだけ巡れば、いくつかはサノスによって生命が半滅させられたユニバースに遭遇しそうなものだが。

 

アメリカが語る他のユニバースでの鉄則その1は良いとして、その2の食べ物の部分が良く分からない。それが何か重要な展開につながるわけでもなんでもないからだ。ポストクレジットシーンその2にはつながるが、ここのユーモアは笑えないし、完全に空回りしていた。

 

魔法を使った戦いにはそれなりに満足できたが、ストレンジが華麗な体術を駆使して戦うシーンは個人的には萎えた。浮遊マントがストレンジの体を逆に操って、hand to hand combat で敵を倒す、というのならまだ理解できるのだが。

 

ポストクレジット・シーンその1では、シャーリーズ・セロンが登場。しかし、誰よ、これ?『 エターナルズ 』のラストもそうだが、もはやMCU作品はそれ自体が別作品のインフォマーシャルと化している。映画が映画を宣伝するというのは、好ましくない。もしやるなら『 ワンダーウーマン 1984 』のように、たいていの人が分かるようなキャラを持ってくるべきだ。

 

総評

ぶっちゃけた話、『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』以降、スパイダーマン以外のMCUものは面白くない。ドラマその他の媒体と相互補完させたりするような商法が更に目立つからだ。MCUは元々そのような側面が強かったが、そこがさらに強引になったと感じる。一応、義務感で次作も観るつもりではいるものの、『 モービウス 』もスルーしたし、そろそろこのジャンルから降りてもいいかもしれないと個人的には感じる。映画館自体は大盛況だったので、この路線自体は成功かもしれないが、あまり積極的に勧めたいと思える出来ではなかった。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Try as I might, 

劇中のウォンのセリフの一部。頑張ってはみたものの、の意。ほぼ間違いなく、I couldn’t … が続く。私 = I 以外が主語になることもあるが、I が最もよく使われるように思う。

Try as I might, I couldn’t fix the printer.
頑張ってみたが、プリンターを直せなかった。

などのように使う。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, エリザベス・オルセン, ソーチー・ゴメス, ベネディクト・カンバーバッチ, 監督:サム・ライミ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 』 -ドラマの予習を前提にするな-

『 エイリアン2 』 -SFアクションの極北-

Posted on 2022年4月13日 by cool-jupiter

エイリアン2 90点
2022年4月6日 レンタルDVD鑑賞
出演:シガニー・ウィーバー マイケル・ビーン ランス・ヘンリクセン
監督:ジェームズ・キャメロン 

 

『 エイリアン 』の続編。ホラー路線を継承しては前作を超えられないという判断か、思いっきりアクション方面に舵を切った。この判断は正解である。

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あらすじ

エイリアンとの死闘から57年後。クライオスリープから目覚めたリプリー(シガニー・ウィーバー)は、会社にエイリアンの話を信じてもらえず、逆にノストロモ号を爆破したことから尋問を受け、職務停止処分となる。しかし環境改良のために送り込まれたLV-426の植民団と通信が途絶。リプリーはアドバイザーという立場で屈強な海兵隊員たちと共に、再びLV-426を目指すが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

前作のタグラインは”In space, no one can hear you sream”(宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない)だったのが、今作では ”This time, it’s war”(今度は戦争だ)になったように、戦争映画の文法に非常に忠実に作られていると感じる。宇宙船スラコ号で、クルーがクライオスリープから目覚めてからLV-426に降下していくまではベトナム戦争映画か何かに見えるが、それがいちいち面白いのだ。まるで『 コマンドー 』や『 プレデター 』のように、面白 one-liner がポンポンと飛び出してくる。それが単に笑えるだけではなく、この海兵隊員たちの関係性(信頼関係や力関係)が浮き彫りになってくる。

 

”Hey, Vasquez. Have you ever been mistaken for a man?”

(おい、バスケス。男に間違えられたことあるか?)

“No. Have you?”

(ないよ。お前は?)

 

このシーンだけでバスケスのファンになってしまうし、ハドソンが面白キャラであることが存分に伝わってもくる。

 

本作はほとんどすべてのキャラクターが立っているのも特徴だ。トラッシュ・トーカーのハドソンはもちろん、女性ランボーと言っていいバスケス、典型的な鬼軍曹タイプのエイポーンに、経験不足の士官ゴーマンなど。結局は誰もが死ぬわけだが、その死に様が一人ひとり異なっていて味わいがある。最後の最後までマシンガントークのまま連れ去られるハドソンに、一瞬で殺されるエイポーン、へなちょこ士官でいつの間にかリプリーに指揮権を奪われるゴーマンが、負傷したバスケスを救うシーンは胸アツだし、そこから二人して自爆するのは感動的ですらある。それだけキャラに感情移入できるのである。

 

完全版ではスペースジョッキー(エンジニア)の不時着した宇宙船にたどり着いて、しっかりフェイスハガーをもらってくる父親と半狂乱の母を見て叫ぶニュートの悲鳴の鋭さよ。ホラー映画における女優の叫び声はもはやクリシェであるが、それでもニュートの悲鳴は群を抜いて観る側を不安にさせる力を持っている。他にも、サムズアップや敬礼など、セリフ以外でも印象的なシーンが多い。女優としては本作だけしか出演していないが、ハリウッド映画史に確実に爪痕を残した子役として語り継がれていくだろう。

 

だが白眉は何と言ってもリプリー。完全版では母親属性が追加され、ニュートとの絆がさらにアップ。またヒックスとの奇妙な連帯が、リプリーが探そうともしなかった夫との関係性をしのばせる。海兵隊員が一人また一人と脱落していく中、銃器を手にニュートの救出に向かう様、そしてクイーンエイリアンとの対面シーンは何度見ても息を呑む。劇場で当時リアルタイムで鑑賞した人は、本当に呼吸が止まったのではなかろうか。卵を焼き払い、ウォーリアーを蹴散らす様は、まさに女コマンドー。またスラコ号内でパワーローダーの乗ってクイーンと対峙する際にリプリーが言い放つ “Get away from her, you bitch!” (ニュートから離れろ、このクソアマめ!)というセリフが強烈な印象を残す。前作のマザーコンピュータへの ”You bitch!” と合わせて、まさに女の戦い、母と母の戦いである。 

 

クイーンの造形も見事としか言いようがない。黒光りしながら粘液を滴らせる巨体、産卵管から卵を産み落とすグロテスクさ、そしてビショップを真っ二つに引き裂く残虐性とパワー。映画史に残るスーパーヴィランと言っていいだろう。『 エイリアン 』で個人的に感じ入ったのはフェイスハガーの死体をアッシュが念入りに調べるシーン。CGではなく現実に存在するものをカメラに収めることでしか生み出せない質感というものが確かに存在する。クイーンは中に人間二人が中に入って動かし、その他の細かい動作は外部からリモートコントロールしていたそうだが、この技術はハリウッドで継承されているのだろうか。モスラやキングギドラのピアノ線による操演はもはやロスト・テクノロジーになっているが、このように実物を作って、人間が動かして、それをカメラに収めるという映画の技術は、しっかりと継承されてほしいと切に願う(その意味で『 JUNK HEAD 』の堀貴秀は奇人であり偉人である)。

 

『 エイリアン 』がSFとホラーの完璧なマリアージュだとすれば、『 エイリアン2 』はSFとアクションの完璧なマリアージュだと言えるだろう。

 

ネガティブ・サイド

ヒックスとリプリーがニュート救出のために奮闘するのはいいが、この疑似家族形成の過程においてヒックスは華々しく討ち死にするべきではなかったか。ウォーリアーと差し違えるか、あるいはビショップの次にクイーンに切り裂かれるなどすれば、リプリーから妻という属性が消え、母という属性がさらに強められたことだろう。

 

総評

3日間で4回観た。それぐらい楽しめた作品。ジェームズ・キャメロンは『 ターミネーター 』だけの one-hit wonder ではないことを本作で見事に証明した。闘う女性キャラと言えばエレン・リプリーか、それともサラ・コナーか、ってなもんである。とにかく緊張の糸が張りつめっぱなしだが、そこかしこに海兵隊員特有のユーモアやキャラクター同士のケミストリーが感じられ、一度見始めると止められない。CGではなく手作りのプロダクション・デザインの奥深さやキャラの魅力など、何度でも鑑賞できる大傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

get back on the horse

直訳すれば「馬の背に戻る」ということで「落馬しても、もう一度トライしろ」、つまり「失敗しても、もう一度頑張れ」という意味の慣用句。クリストファー・リーブを思い起こすと言いづらいが、フロンティア・スピリットを感じさせる言葉ではある。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, S Rank, SF, アクション, アメリカ, シガニー・ウィーバー, マイケル・ビーン, ランス・ヘンリクセン, 監督:ジェームズ・キャメロン, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 エイリアン2 』 -SFアクションの極北-

『 エイリアン: コヴェナント 』 -一作目の不完全リメイク-

Posted on 2022年4月5日 by cool-jupiter

エイリアン: コヴェナント 50点
2022年4月1日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:マイケル・ファスベンダー キャサリン・ウォーターストーン
監督:リドリー・スコット

 

先月の残業時間が危険水域に入った。今月もやばそうなので簡易レビューを。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220404235539j:plain

あらすじ

植民船コヴェナントは航行中に事故に遭い、クルーを冬眠から目覚めさせた。夫を失ったダニエルズ(キャサリン・ウォーターストーン)らは失意に沈む。しかし、船にはとある信号が届いていた。それは近傍の居住に適した惑星から発せられていた。クルーは調査のためにその惑星に赴くが・・・

 

ポジティブ・サイド

グロいシーンが前作『 プロメテウス 』よりも増。特に最初に背中を突き破られるシーンはなかなかに disturbing で良かった。

 

ネオモーフの白さも味わい深い。エイリアン=ゼノモーフ=黒というイメージが非常に強いが、白い個体がデイビッドと奇妙な信頼関係を築きかけようとするシーンは示唆的だった。繁殖できないアンドロイドと寄生しなければ繁殖できないエイリアンには不思議なコントラストがある。

 

話が『 ターミネーター 』的な世界観で駆動されているが、それはそれで現代の感覚が反映されていて、納得できないものでもない。

 

全体的に『 エイリアン 』を彷彿させるシーンや構図が多かったのも好印象。

 

エンジニア ⇒ 人類 ⇒ アンドロイド ⇒ エイリアン ⇒ エンジニア という奇妙な連環はどこか『 ガニメデの優しい巨人 』的だが、リドリー・スコットの世界観あるいは人間観がよく現れているとも言える。『 ブレードランナー 』で人間とレプリカントの違いを追究せんとしたスコット翁は、本作によってエイリアン=異質なる者とは異星生物ではなく「被造者」による「被造者」であるという仮説を打ち出した。AIのシンギュラリティが現実に視界に入った現代、創造者と被造者の関係が可変的であるというのは、独特かつ説得力ある視座であると評価してよいだろう。

 

ネガティブ・サイド

どんな偶然が起きれば、ニュートリノ・バーストに遭遇するというのか。そして、たまたまニュートリノ・バーストに遭遇した場所のすぐ近くで、ジョン・デンバーの『 カントリー・ロード 』を受信するなどといったことがあるものか。普通に考えれば、行うべきは通信であって着陸探査ではない。前作に引き続き、宇宙船のクルーがアホすぎる。

 

そのクルーも、やはり呼吸可能というだけで宇宙服もヘルメットも着用しないという非常識っぷり。前作に引き続き、同じ愚を犯している。特にコロナが終息せず、マスクをはずすことが今でもためらわれる今という時代の視点からすると、未知の惑星でこれほど無防備な宇宙飛行士というのは、アホにしか見えない。エイリアンは第一義的には寄生生物(しかも宇宙最悪レベル)なのだから、通常の生物の生体防御を巧みにかいくぐる様を描くべきだった。人間がアホなので寄生に成功しました、ではなく、人間も対策を打っていましたがエイリアンはもっと上手でした、という展開こそが必要だった。

 

エンジニアもエンジニアでアホすぎる。理由があって生物兵器の実験場惑星で冬眠していた同朋が数万年ぶりに母星に帰ってくるというのは、確かに種族総出で出迎えるべき一大イベントだろう。J・P・ホーガンの『 巨人たちの星 』でも似たような描写はあった。しかし、この世界の知的生命体というのは通信を行わないのだろうか。人類がアホなのは創造者譲りなのか。

 

最後の最後に、セックスしたら死ぬというホラー映画のクリシェを持ってくるのも気に入らない。何故にわざわざ自分から三流ホラー路線に入っていくのか理解できない。

 

総評

かなり微妙な出来と言わざるを得ない。『 プロメテウス 』よりもエンタメ色が強まった分、様々なクリシェが生じてしまい、逆に展開が読みやすくなってしまっている。というか、マイケル・ファスベンダーではなく、もっとマイナーな役者でないと、この twist は生きないだろう。三作目もあるらしいが、スコット翁にどのようなビジョンが見えているのか、少々不安でならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

covenant

ぶっちゃけJovianも本作を飛行機で観るまでは知らなかった語。しかし、旅先のカナダのバンクーバーの街中で Covenant House を見かけて、「お、コヴェナントや」と思い、その場でググったことを今でも覚えている。Covenant House = 家などに居場所がない人の避難所である。英検1級を目指すのであれば知っておいて良いと思うが、そうでなければ無視してよい。

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アクション, アメリカ, キャサリン・ウォーターストーン, マイケル・ファスベンダー, 監督:リドリー・スコット, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 エイリアン: コヴェナント 』 -一作目の不完全リメイク-

『 バットマン・フォーエヴァー 』 -ジム・キャリーの独擅場-

Posted on 2022年2月26日 by cool-jupiter

バットマン・フォーエヴァー 65点
2022年2月24日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:バル・キルマー ジム・キャリー トミー・リー・ジョーンズ ニコール・キッドマン
監督:ジョエル・シュマッカー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220226141602j:plain

『 THE BATMAN ザ・バットマン 』公開前に復習鑑賞。多分20年ぶりくらいに鑑賞したが、ダークな中にユーモアを内包するティム・バートンのバットマンとは異なり、本作はユーモアの中に狂気を内包している。

 

あらすじ

検事ハーヴィー・デント(トミー・リー・ジョーンズ)は狂気の怪人、トゥー・フェイスとなり、ゴッサム・シティの銀行を襲撃する。バットマンによって凶事は防がれたものの、今度はウェイン・エンタープライズの従業員、エドワード・ニグマ(ジム・キャリー)が海神リドラーに変身。ブルース・ウェイン(バル・キルマー)に彼らの魔の手が迫る・・・

 

ポジティブ・サイド

再鑑賞して真っ先に思ったのは、プロダクションデザインに相当に力が入っているなということ。CGが全盛になる前の、ある意味で正統派の映画を観たように感じた。ウェイン宅の調度品からバット・ケイブの造作まで、これはこれでジョエル・シュマッカーの世界観が出ている。前二作は、ジャック・ニコルソンの狂喜のジョーカーに、シリアスでダークで政治色も強めの哀れなペンギンだったので、ある意味の揺り戻しが来たのも納得。

 

トミー・リー・ジョーンズは素晴らしい役者だと感じた。個人的には『 タイ・カップ 』がベストだと感じているが、本作のトゥー・フェイス役もかなりのはまり役。この作品だけ単体で観ればただの変なおじさんだが、作品ごとにガラリと芸風を変えられる演技ボキャブラリーを持っていることが分かる。笑いながら笑えない暴力を行使するキャラとしては、ジャック・ニコルソンのジョーカーに次ぐ奇妙な可笑しさと怖さがあると思う。ビリー・ディー・ウィリアムズがトゥー・フェイスを演じても、おそらくここまで突き抜けたキャラにはなれないだろう。

 

このトゥー・フェイスを上回るどころか、主役のバットマンさえ霞ませるのがジム・キャリー演じるリドラー。『 マスク 』や『 グリンチ 』など、マスクをかぶったり変装したりするキャラで本領を発揮する怪優だが、本作でもその高い演技力を遺憾なく発揮している。頭が飛びぬけて良いが狂っている、あるいは狂っているが恐ろしく頭脳明晰という二律背反キャラを完璧なまでに演じている。コミカルな動きでバット・ボムを放り投げてバット・ケイブおよびバット・モービルを破壊していく様の何ともいえない薄気味悪さと怖さはジム・キャリーにしか出せない味だろう。Jovianの職場はカナダ人が多めだが、彼ら彼女らが高く評価する自国の俳優はだいたいジム・キャリーである(ちなみに監督だとジェームズ・キャメロン)。

 

バル・キルマーは結構よいキャスティングだった。若くてハンサム、そして経営者としてのカリスマ性も感じられ、ブルース・ウェインとして説得力があった。バットマンとしても、hand to hand combat でトゥー・フェイスの手下たちを次から次へと片付けていく様子が非常に小気味良かった。ミステリアスさなどの影の部分が前面に出ていたマイケル・キートンとは一味違ったバットマン像を打ち出せていた。ダークナイトとしての使命を果たそうとしながら、一人の人間としての人生も生きようとする姿が、悪役トゥー・フェイスやニグマ/リドラーと奇妙なコントラストを成していた。ティム・バートンの描き出す陰影のあるゴッサムおよびバットマンとは大いに趣が異なるが、こうしたバットマンもありだろうと感じた。

 

ネガティブ・サイド

ロビンのキャラが軽すぎるように感じた。トゥー・フェイスに復讐を果たしたい理由があるのは分かるが、脚本に説得力を欠いていた。家族の復讐のためというよりも、ヴィランが二人なので、バットマンの相棒ロビンを出そうという意味合いの方が強かったように映った。もちろんロビンにはロビンの悲しい過去があり。バットマンにはバットマンの悲しい過去があるのだが、互いが相手を必要とするようになる過程の描写が弱かったと感じる。

 

トゥー・フェイスとリドラーの直接の絡みはもう少し減らして良かった。アクの強い者同士を混ぜると、たいていは bad chemistry となる。本作もそうなってしまった。両ヴィランとも単独で十分にキャラ立ちしており、共闘することで1+1=2ではなく、1+1=1になっていたように思う。基本的には一映画で一ヴィランであるべき、もしくはヴィランを一人倒したら、また新たなヴィランが現われるという方が、ゴッサム・シティらしいのでは。

 

トゥー・フェイスを殺してしまうのはバットマンらしくない。コインの表裏で潔く自決するようなプロットは描けなかったものか。

 

総評

久しぶりに鑑賞したが、リドラーの予習にはならないと実感。悪役が強烈すぎて主役が食われてしまっている。ただ『 THE BATMAN ザ・バットマン 』に興味があって、なおかつ「リドラーって誰?」という人は本作を鑑賞するのも一つの手かもしれない。最新作は間違いなく、恐ろしいほど狂ったリドラーではなく、恐ろしいリドラーを描いているはず。そのギャップをJovianは楽しみにしている。この次のシュワちゃんのMr. フリーズは文字通りの意味で寒いギャグが連発されるので、猛暑の夏にでも気が向いたら再鑑賞しようと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Old habits die hard.

直訳すれば「古い習慣は一生懸命死ぬ」だが、意訳すれば「古い習慣はなかなか消えない」となる。日常生活でもビジネスでも時々使われる表現。die hard というとブルース・ウィリスを思い浮かべる映画ファンは多いだろうが、あれも「一生懸命死ぬ」転じて「なかなか死なないタフな奴」の意味である。

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, C Rank, アクション, アメリカ, ジム・キャリー, トミー・リー・ジョーンズ, ニコール・キッドマン, バル・キルマー, 監督:ジョエル・シュマッカー, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 バットマン・フォーエヴァー 』 -ジム・キャリーの独擅場-

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