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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アメリカ

『 SMILE スマイル 』 ーもう少しキャラに肉付けをー

Posted on 2024年2月25日2024年2月25日 by cool-jupiter

SMILE スマイル 50点
2024年2月22日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ソシー・ベーコン
監督:パーカー・フィン

 

劇場予告編か何かで観て、気になっていた作品。面白さはまあまあといったところ。

あらすじ

精神科医のローズ(ソシー・ベーコン)は、カウンセリングをしようとした患者が奇妙な笑顔を浮かべながら自殺するのを目撃する、それ以降、ローズは奇妙な笑顔を浮かべる人物を目撃するようになり、そして彼女自身も不可解な行動を取ってしまうようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

明るいところが怖いという点を売りにした『 ミッドサマー 』の如く、本作は笑顔が恐怖の対象になりうることを示した点でユニーク。

 

何じゃそりゃ?という不可解な死に方、それに不釣り合いな奇妙な笑顔というアンバランスが不快感を催させる。冒頭の5分でこの世界に引き込まれてしまった。

 

この笑顔を見せる怪異の正体が不明で、次々に異なる人間の姿で主人公に迫ってくるというのは『 イット・フォローズ 』的で、個人的には好みである。単なる偶然だが、猫の日に本作を鑑賞して、これほど嫌な気分にさせられるとは、脚本兼監督のパーカー・フィンはやり手である。

 

笑顔の怪異の謎を元カレと共に突き止めようとする中盤以降、謎の自殺の連鎖から逃れた者がいるという情報、そしてその方法が結構えぐい。ただ、そこから論理を突き詰めて、怪異と対決しようというローズの姿勢は精神科医然としていて頼もしい。

 

本作はカメラワークが良い。ローズが同棲中の婚約者と元カレと一緒にいる時のカメラのズームイン、ズームアウトのタイミングでスリルとサスペンスを生み出している。できれば劇場で鑑賞したかったと感じた。

 

ネガティブ・サイド

序盤はかなりジャンプ・スケアが多い。そんなものを使わずとも、カメラワークで充分に恐怖感を生み出せることを証明しているのに、何故に安易な方法に走ってしまうのか。笑顔というのは日常でよく見るものなので、その笑顔が本物なのか、それとも怪異なのかとローズおよび観客を疑心暗鬼にさせるシーンはいくらでも撮れるはず。音響で驚かすのではなく、映像で怖がらせる、あるいは不安がらせてほしい。

 

ローズにはローズのトラウマがあるのだろうが、それでもここまで嫌なキャラに描く必要があったのだろうか。特にFワードの連発には正直辟易した。いや、four-letter word の使用そのものは否定しないが、医師という職業とマッチしていない。加えて、精神科医という仕事のしんどさを丁寧に描くこともしていないせいで、ローズが胸の奥底に抱えている闇のせいだけで嫌な人間になってしまっているように見える。

 

終盤に出てくる怪異が、まんま『 IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』の中盤に出てくるCGモンスターのパクリ。これはオマージュとは呼べないだろう。

 

ローズの婚約者も、もっとローズに寄り添ってほしかった。ナチュラルに無礼な発言を繰り返して、そらローズも元カレの方に行くわなと感じた。いや、それはプロット上の必然だからしゃーないとしても、トラウマは病気で、その病気は遺伝する発言は行き過ぎ。ドン引きした。

 

元カレの背景も謎。なにが彼をそこまで献身的にさせるのか。主要キャラたちをもう少しだけ深掘りしてほしかった。

 

総評

低予算ホラーだが、スプラッタ映画的なグロシーンもあって、見応えはそれなりにある。笑顔が怖いという新機軸もそれなりに楽しめた。キャラとの波長が合うかどうかは観る人次第だが、序盤と中盤は結構怖いので、ホラー耐性のない人にはお勧めできない。ホラー愛好家には傑作たりえないだろうが、話のタネに鑑賞しておいても損はしないだけのクオリティはある。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

the cold shoulder

冷たい肩ではなく「冷たい態度」の意。しばしば give ~ the cold shoulder で、~に冷たい態度をとる、~にそっけなく接する、のような意味で使われる。My supervisor has been giving me the cold shoulder since I disagreed with her at the meeting. =「会議で異議を述べて以来、上司は私に冷淡な姿勢を取り続けている」のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜明けのすべて 』
『 犯罪都市 NO WAY OUT 』
『 ソウルメイト 』

SMILE/スマイル ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

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  • ソシー・ベーコン
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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, ソシー・ベーコン, ホラー, 監督:パーカー・フィンLeave a Comment on 『 SMILE スマイル 』 ーもう少しキャラに肉付けをー

『 プラネット・デューン 砂漠の惑星 』 -低予算映画の極み-

Posted on 2024年2月18日 by cool-jupiter

プラネット・デューン 砂漠の惑星 20点
2024年2月18日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エミリー・キリアン ショーン・ヤング
監督:グレン・キャンベル タミー・クレイン

先週末はJovianがインフルエンザ、今週末はJovian妻がインフルエンザと、とても映画館に行ける状況ではなかった。近所のTSUTAYAでクーポンを使って、クソ映画と知りつつ、リハビリの意味でレンタル。

 

あらすじ

宇宙船パイロットのアストリッド(エミリー・キリアン)はロシア人宇宙飛行士を救出するが、協定外の行動をとったことにより、懲罰として砂漠の惑星で消息を絶った人員の救出を命じられる。一癖あるクルーたちと共に降り立った惑星には、謎の巨大ワームが生息しており・・・

 

ポジティブ・サイド

『 スター・ウォーズ 』やら『 エイリアン 』やら『 トレマーズ 』やら『 デューン/砂の惑星 』に対するオマージュだけは認める。

 

ネガティブ・サイド

この手の低予算映画にありがちだが、とにかくキャラがのべつ幕無しにしゃべっている。映像やBGMで物語るという頭はないらしい。

 

救出ミッションだというのに、ろくな装備もなく、よくよその惑星に降下できるなと感心する。降りた先でも酸素濃度が10%になったりするが、「高い山の上にいるぐらいだから大丈夫」みたいに言うが、そんな中でよく全力疾走できるなと呆れてしまう。また、同じ環境で酸素濃度が5%にも低下するが、それでもキャラたちは「やばい、脱出しよう」などと言ったりするが、普通に死ぬ酸素量だと思われる。仮にもSF作品なのだから、脚本家には最低限の科学知識が求められる。

 

サンドワームが血液中の鉄分を求めるって、サメかな?というか、どうやって血中のヘモグロビンを検知しているのだ?キャラの女性率が高かったが、まさか全員が都合よく生理中だったとか?んなアホな・・・

 

キャラがまったく深堀されない中で、どんどんとキャラに無理やりなドラマとアクションをくっつけていくので、まったく感情移入できないし、ストーリーにも入っていけない。主人公がとにかく嫌なアメリカ人の典型で、これを好きになれというのは無理な注文だ。90分弱とはいえ、よく sit through できたと自分を褒めたい。

 

総評

OpenAI社の Sora が話題だが、割と近い将来(4~5年後?)には、これぐらいのクオリティの映像作品は大学生たちがパソコンだけで作ってしまうのではないだろうか。その意味ではこういう低予算作品は今後お目にかかれなくなる可能性もある。クソな商業作品を鑑賞するとしたら逆に今しかないのだろうか。そんなことを、ふと考えさせられた作品。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Stay sharp

直訳すると「鋭いままでいなさい」だが、実際は「気を抜くな」「警戒を続けろ」のような感じ。戦争映画や戦争ゲームでよく聞こえてくる気がするが、別に日常生活や職場でも文脈が正しければ使っても大丈夫である。

例)

The deadline is approaching. Stay sharp, everyone.
締め切りが迫ってきている。みんな、気を抜かないように。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 熱のあとに 』
『 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 』
『 夜明けのすべて 』

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プラネット・デューン 砂漠の惑星 [DVD]

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  • ショーン・ヤング
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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, アメリカ, エミリー・キリアン, ショーン・ヤング, 監督:グレン・キャンベル, 監督:タミー・クレインLeave a Comment on 『 プラネット・デューン 砂漠の惑星 』 -低予算映画の極み-

『 僕らの世界が交わるまで 』 -コミュ障家族の再生物語-

Posted on 2024年1月23日 by cool-jupiter

僕らの世界が交わるまで 65点
2024年1月20日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジュリアン・ムーア フィン・ウルフハード
監督:ジェシー・アイゼンバーグ

 

ジェシー・アイゼンバーグの監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

DV被害者のシェルターを運営する母エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、音楽のライブ配信に夢中の息子ジギー(フィン・ウルフハード)は、互いを理解しあえず、すれ違うばかり。そんな中、シェルターに受け入れた女性の息子を第二の我が子のように思い始める。一方でジギーも、政治を知的な同級生女子に惹かれていき・・・

ポジティブ・サイド

コミュ障というのは、単に喋りが下手という意味ではない。中島梓は『 コミュニケーション不全症候群 』で、コミュニケーション不全症候群とはコミュニケーションの対象を人間とそれ以外に分けて、人間以外とのコミュニケーションにより親和性を持つことだと喝破した。本作に引きつけて言うなら、PCのモニターの向こう側のリスナーに夢中なジギーは立派なコミュニケーション不全症候群患者である。その母も、息子のジギーを独立した人格の持ち主ではなく、育成シミュレーションゲームのキャラか何かだと思っている節がある。これも立派なコミュニケーション不全症候群患者だと見なせるだろう。

 

本作は、この困った母と息子が互いに向き合うようになるまでを丹念に描いていく。面白いのは、親子というのは似たもので、エヴリンもジギーもお互いに真摯に向き会えばいいものを、わざわざ代替の対象を見つけ出して、それに執着していく。ジギーは聡明で、政治を語り、集会にも参加するアクティブな同級生女子に惹かれていく。観ながら「おいおい、その娘はお前の母ちゃんの若い頃そっくりなんやぞ?」と思いながら、ある意味でハラハラしながら観ていた。同時並行で、エヴリンはシェルターに転がり込んできた女性の息子がよくできた母思いの孝行息子ということで、彼を疑似息子に見立てて、再度の育成ゲームに乗り出す始末。

 

この絶妙なすれ違いが終わり、親子が互いに向き合う過程が、原題 = When You Finish Saving the World(あなたが世界を救ったら)によくよく表れている。マザー・テレサは日本人に「インド人ではなく、まずは家族を気にかけてください」と言った。最近の『 コンクリート・ユートピア 』でも「修身斉家治国平天下」が聞かれた。治国や平天下を語る前に、まずは家族や家庭に向き合うべし。過度に説教臭くなることなく、かといって安易なお涙頂戴になることなく、とある家族の姿を淡々と描いていく。自分もしっかりしなくちゃ、と感じられる人はきっと多いはず。

 

ネガティブ・サイド

エヴリンの妻、ジギーの父親の存在感がイマイチだった。中途半端なインテリで、自分の意見というものがない。これなら別に、エヴリンをシングルマザーに設定しても良かった。

 

ジギーがライラに嫌われてしまう経緯をすべてライラの言葉で説明してしまうのは残念だった。ライラの態度や周囲の視線から、自分で何かを悟るというシークエンスにしてほしかった。

 

エンディングが少し雑。『 スリー・ビルボード 』と同じで、もう1~2分でいいので、その先が欲しかった。

 

総評

コミュ障家族というのは、おそらく先進国あるいは経済が一定程度に発展した国では必然的に発生するはず。職場や学校という家庭以外に属するコミュニティがあり、なおかつ自宅には個室があるという条件がそろえば、本作のような物語は実はそう珍しくないのではないかと思う。Z世代云々という矮小な世代論ではなく、もう少し普遍的な親子像、家族像を模索しようとしているという視点で本作は鑑賞されるべきではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sup

これは What’s up? の短縮形。What’s up? → Wassup? → Sup? という具合にどんどん短縮されていく。しばしばネットでは What’s up? に対してどう反応するか?という記事やら解説が出回るが、正しい答えなどない。ただし日常レベル(Jovianの体感)で最もよくあるやりとりは

 

A: Hey dude, sup?
B: Hey!

 

または

 

A: Sup, man?
B: Sup?

 

のようなものである。本作でもそういうシーンがある。Sup? を使えればそれだけで英会話中級者だろう。それだけくだけた感じで話せる友達がいるということだから。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 VESPER ヴェスパー 』
『 みなに幸あれ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ジュリアン・ムーア, ヒューマンドラマ, フィン・ウルフハード, 監督:ジェシー・アイゼンバーグ, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 僕らの世界が交わるまで 』 -コミュ障家族の再生物語-

『 アクアマン/失われた王国 』 -脳みそを空っぽにして鑑賞できる-

Posted on 2024年1月17日 by cool-jupiter

アクアマン/失われた王国 60点
2024年1月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェイソン・モモア
監督:ジェームズ・ワン

 

簡易レビュー。

あらすじ

父親になったアーサー(ジェイソン・モモア)は子育てに奔走する一方で、アトランティス王国の政務にも忙殺されていた。そんな中、ブラックマンタが謎めいた漆黒のトライデントを発見し、邪悪に憑りつかれていき・・・

 

ポジティブ・サイド

ステッペンウルフの “Born To Be Wild”、そしてノーマン・グリーンバウムの “Spirit in the Sky” のイントロだけが延々と流れるオープニングで、アーサーの「人間」パートの描写はほぼ終わり。あとは「ヒーロー」パートの描写に専念するというのは潔い構成。

 

MCUのようにやたらとキャラを増やすのではなく、前作『 アクアマン 』に引き続き弟オームとヴィランのブラックマンタが物語を形作る。なので物語に入っていきやすい。

 

ストーリー展開も前作同様に、アドベンチャーゲーム的。〇〇に行って△△と出会う。△△から情報をゲットしたら、◇◇に向かう。そこでイベントが発生して・・・の繰り返し。テンポが良い。

 

弟の確執と和解という意味では『 マイティ・ソー 』そっくりで、これまで人間社会と隔絶してきた高度文明の物語という点では『 ブラックパンサー 』そっくり。それでもアクアマンがアクアマンらしいと感じられるのは、妙なイデオロギーをまじえず、力こそパワーという物語作りに徹しているからだろう。

ネガティブ・サイド

トポの出番が終盤になかったのは残念。このタコには巨大タツノオトシゴにくっつく以外の活躍の場が与えられてしかるべきだった。

 

イデオロギーの代わりに昆虫食のインフォマーシャル的な場面を挿入するのはどうなのか。いや、別にそれも2030年以降には必要だろうとは思うが、それの前段階として資源を最も食いつぶしているアメリカのファストフードを異文化理解の例に持ってくるのは個人的には( ゚Д゚)ハァ?だった。

 

ラスボスをあまりにもアッサリと倒してしまうのも拍子抜け。力こそパワー的に粉砕するにしても、もう少し丁寧な描き方があったはず。

総評

あまり深く考えずに鑑賞できるのが良いところでもあり悪いところでもある。ただMCUのように、ドラマや他作品の鑑賞がほぼ必須といった複雑な前提は無い。極端な話、前作を知らなくても何とかなるぐらいだ。週末に頭を空っぽにしたい時、ポップコーンを食べながら映画を観たいという時に、お勧めの一本。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

astounding

小説『 内なる宇宙 』で、ヴィザーというスーパーコンピュータが “This is astounding!” と言う場面がある。翻訳家の池央耿(2023年10月逝去、合掌)は「驚天動地とはこのことだ!」と訳していた。驚天動地は大袈裟だが、astounding は surprising よりも遥かにインパクトがある表現だということは間違いない。強く感銘を受けたときは “Astounding …” と呟こうではないか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 VESPER ヴェスパー 』
『 みなに幸あれ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アドベンチャー, アメリカ, ジェイソン・モモア, 監督:ジェームズ・ワン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 アクアマン/失われた王国 』 -脳みそを空っぽにして鑑賞できる-

『 エクソシスト 』 -信じる者は救われる-

Posted on 2024年1月8日 by cool-jupiter

エクソシスト 85点
2024年1月7日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エレン・バースティン リンダ・ブレア ジェイソン・ミラー マックス・フォン・シドー
監督:ウィリアム・フリードキン

 

『 怪物の木こり 』の口直しが必要と思い、劇場からの帰り道にTSUTAYAで本作と『 Sダイアリー 』をレンタル。3回目の鑑賞。1回目は多分、小学生ぐらいで、ほとんど覚えていない。2回目は大学4年の頃に仲間数人で観た。なので2001年だったか。

あらすじ

女優クリス・マックニール(エレン・バースティン)の娘リーガン(リンダ・ブレア)は突然、暴力的かつ攻撃的な言動を呈し始める。精神科医に検査・診察させても原因がはっきりしない。途方に暮れるクリスに、医師は悪魔祓いの秘儀を提案して・・・

 

ポジティブ・サイド

『 レイダース 失われたアーク《聖櫃》 』的な発掘現場で見つかる、不思議な像。イラクの古代の遺物を邪教として描くのは時代が時代だからしゃーない。

 

場面変わってアメリカでは、ベトナム戦争末期。『 シカゴ7裁判 』や『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』に近い時代。政治や科学に対する不信が広がっていた時期と言える。そこに信仰という宗教的な営為の是非を問おうとしたのは非常にタイムリーであったはずだし、科学がきわめて高度に発達した現代においても、一定のテーマとして在り続けている。そこらへんが本作が古典たる所以だろう。

 

ディレクターズ・カットを観たが、時代や社会をていねいに描いているという印象を受けた。キャラの台詞やナレーションなどは一切使わず、映像でていねいに見せるという手法に好感を抱く。

 

その後のホラー映画の多くが本作にインスパイアされたと言われているが、ホラー以外も本作に触発されたはず。『 ロッキー 』のトレーニング・シーンのモンタージュの一部はカラス神父のジョギングへのオマージュに見えるし、馬車に乗る老婆は『 スター・ウォーズ 』シリーズのパルパティーン皇帝のモデルになったのではないかとも感じる。ラテン語を話す悪魔という設定は『 エミリー・ローズ 』が借用した。クリス邸の前の階段は『 ジョーカー 』でホアキン・フェニックスが踊り狂った階段、こちら側とあちら側を隔てる境界のように見えた。

 

悪魔に憑りつかれたリーガンを丹念に科学・医学の面からアプローチしていくことで、これが単なる疾患ではなく超常現象なのだということが明らかになっていく。一方でクリスの友人でもあるバークが死亡してしまうこと、医学を超えた警察沙汰にもなる。このあたりのバランスの取り方も上手い。ホラーとサスペンスの間を巧みに行ったり来たりすることで、観る側も信仰と理性の間を行ったり来たりすることになる。バークの死の真相についても、カラス神父の壮絶な最後のシーンから、別の可能性が浮かび上がってくる。このあたりの何が真実なのか惑わせる作風、理性的に考えるのか、それとも超常現象を認めるのかというのが本作の一貫したテーゼになっている。

 

本作をホラーの金字塔たらしめる数々の印象的なシーン、たとえばリーガンが緑色の吐しゃ物を吐くシーンや首をぐるりと180度回転させるシーン、さらに空中浮遊するシーンや、劇場公開時にはカットされてしまったスパイダー・ウォークのシーンなどは今見ても十分に怖い。むしろ過剰な効果音やCGが一切使われていないことで不気味さが増しているとすら言える。

 

冒頭のメリン神父の再登場によって、ついにカラス神父も悪魔祓いに参加。二人でリーガンに対峙するも、精神疾患によって息子を認知できなくなった母親の幻影を見せられたカラスが退場、一人残ったメリン神父は死亡。カラス神父の母の旧姓を答えられなかったリーガンが、その母の幻影を見せてくるという精神攻撃、さらに元々持病で服薬が欠かせなかったメリン神父の死因な何かなど、観る側の理性をとことん揺さぶる展開には恐れ入った。

 

最後にカラス神父の同僚のダイアー神父が、例の階段を下りることなく振り返るシーンで物語は締めくくられる。ダイアーは信じたのだろうか?見上げるメリン神父、見下ろすダイアー神父という対比から考えれば信じなかったのだろう。しかし、カラス神父の最後の懺悔を聞いたのもダイアー神父だった。彼が振り返った先にいるのが我々鑑賞者だとすると、ベタな表現ではあるが、解釈は観る側に委ねられたのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド 

ほとんど非の打ち所がない作品だが、リーガンが十字架で局所を思いっきり刺すシーンの後、医者を呼ばなかったのだろうか。精神科ではなく小児科あるいは外科をも巻き込むシーンがあっても良かったのにと思う。

 

総評

人間ドラマとしてもホラーとしても素晴らしい。続編の『 エクソシスト 信じる者 』がホラーよりも人間ドラマを重視したのは、オリジナルへのオマージュと、ホラーとしては勝てないという二つの理由からだったのか。また20年後に鑑賞してみたい。その頃には悪魔は宇宙開発ではなくゲノム編集などを呪っているのだろう。本作はそういう見方ができる、つまり時の経過にも充分に絶えうる作品で、だからこそ古典と呼んで差し支えないと思う。

 

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I beg your pardon?

劇中で2~3回使われたかな。意味は「もう一度おっしゃっていただけますか?」という、丁寧なもの。しかし、相手に復唱をお願いする意味以外に、文脈によっては「今何て言ったコノヤロー」的なニュアンスにもなるので注意。使うならフォーマルな場に限定しよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』
『 ブルーバック あの海を見ていた 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 映画, 海外Tagged 1970年代, A Rank, アメリカ, エレン・バースティン, ジェイソン・ミラー, ヒューマンドラマ, ホラー, マックス・フォン・シドー, リンダ・ブレア, 監督:ウィリアム・フリードキン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 エクソシスト 』 -信じる者は救われる-

『 ナポレオン 』 -人間ナポレオンに迫る-

Posted on 2023年12月27日2023年12月28日 by cool-jupiter

ナポレオン 70点
2023年12月23日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ホアキン・フェニックス ヴァネッサ・カービー
監督:リドリー・スコット

簡易レビュー。

 

あらすじ

砲兵長ナポレオン(ホアキン・フェニックス)は英国軍の撃退などで軍人として昇進していく。その中で未亡人のジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)と出会い、結婚する。戦争の中で頭角を現し、出世を重ねるナポレオンだが、ジョゼフィーヌの浮気が判明して・・・

ポジティブ・サイド

大学時代にフランス人、ドイツ人と一緒に暮らしていた時、ドイツ人が冗談めかして「ヒトラーさえいなかったら、ヨーロッパの嫌われ者はナポレオンを生んだフランスだったのに」と言ったところ、フランス人が「だろうな」と応じたことがあった。本作を見れば、ナポレオンがいかにヨーロッパ中で戦争していたのかが分かる。

 

その一方で、本作が本当に描き出したかったのは、英雄や悪魔としてのナポレオンではなく、一人の男性としてのナポレオン。もっと言えば、女に弱いナポレオン。英雄色を好むと言われるが、ナポレオンも例外ではない。一方で、意外なほどにジョゼフィーヌ一筋で、ヨーロッパ史にまあまあ詳しいJovianも知らないエピソードがあって面白かった。

 

『 her 世界でひとつの彼女 』や『 ジョーカー 』で隙のある男というか、今風に言えば弱者男性を演じたホアキン・フェニックスが、稀代の快男児のナポレオンを演じるとともに、どこまでジョゼフィーヌに執着するキモ男も同時に好演。これは配役の勝利。個人的にはウェリントン卿がイメージそのままで、クライマックスのワーテルローの戦いは非常に楽しめた。もう一つの見どころは戴冠式。ルイ・ダヴィッドも一瞬だけ映る。

 

『 最後の決闘裁判 』には及ばないが、人間、就中、男と女の真実(≠事実)を明らかにせんとするリドリー・スコットの哲学が開陳された一作。

 

ネガティブ・サイド

トラファルガーの海戦がスルーされたのは何故?もちろん撮影はしたのだろうが、ここをバッサリと切ってしまうと「英国は海戦は知っていても陸戦は知らない」というナポレオンの言葉に説得力がなかったように思う。

 

今でこそロシアとウクライナが戦争していたり、イスラエルとパレスチナが戦争していたりして、為政者が戦争を起こす、あるいは国民が戦争を強く支持してしまうという構図があるので、本作の社会的意義も見出せるが、それがなければ単なるエンタメ作品では?というと、エンタメとしてはちょっと弱い気がする。戦争シーンに迫力はあるが、大砲で人がバタバタ倒れていくシーンには迫真性はなかった。『 プライベート・ライアン 』とは言わないが、『 エイリアン 』並みのグロ描写があっても良かったのでは?最初の馬のシーンで期待をさせておいて、えらく尻すぼみだなと感じられた。

 

総評

ヨーロッパ史にある程度の造詣がないと鑑賞はお勧めできない。逆に言えばナポレオンおよびその周辺の歴史をある程度知っているなら楽しめる。また人間としてのナポレオンに注目するのだと割り切って鑑賞するのもありだろう。そんな向きはいないと思うが、デートムービーにするのは禁物である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a close-run thing

「紙一重の出来事」の意。劇中では使われなかったが、ウェリントン卿がワーテルローの戦いの後に言ったとされる言葉。ただし、実際は a damn nice thing もしくは the nearest-run thing が正しい言葉だとも言われる。ナポレオンの「吾輩の辞書云々」と同じで、一種の伝説のようなもの。同僚ブリティッシュによると British Englishでは今日でも使われるとのこと。危機一髪の状況をなんとか生き残ったら、That was a close-run thing. と表現してみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 TALK TO ME トーク・トゥ・ミー 』
『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』
『 きっと、それは愛じゃない 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, ヴァネッサ・カービー, ホアキン・フェニックス, 伝記, 歴史, 監督:リドリー・スコット, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 ナポレオン 』 -人間ナポレオンに迫る-

『 エクソシスト 信じる者 』 -ホラーというよりは人間ドラマ-

Posted on 2023年12月12日 by cool-jupiter

エクソシスト 信じる者 60点
2023年12月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レスリー・オドム・Jr. リディア・ジュエット アン・ダウド エレン・バースティン
監督:デビッド・ゴードン・グリーン

 

傑作『 エクソシスト 』の続編ということでチケット購入。

あらすじ

娘のアンジェラ(リディア・ジュエット)が友達と二人で宿題をすると言ったが帰ってこない。調べたところ、二人は森に入っていた。父ビクター(レスリー・オドム・Jr)は懸命に娘を探すが見当たらない。二人は3日後にとある牧場の納屋で見つかるも、その間の記憶がない。それどころか、不可解な現象がビクターの身の回りで起こり始めて・・・

ポジティブ・サイド

母と娘の絆の戦いが、本作では父と娘の絆の戦いになっている。その父ビクターを演じるレスリー・オドム・Jr.が印象的。どこかで観たと思ったら『 ハリエット 』でウィリアム・スティルを演じていたのか。優しさと厳しさを同居させた、まさにアメリカ的な positive male figure で、男性というジェンダーの特徴をうまい具合に体現しているなと感じた。また、そのことが悪魔憑きの(間接的な)原因になっているのは上手いと感じた。

 

娘のアンジェラも純粋無垢な少女が悪魔に憑りつかれて変貌していく様は結構怖い。失禁から始まって、痙攣に至るまでがリアル。アンジェラが徐々に体のコントロールを失っていくという経過を巧みに描いている。

 

究極的には白人の母娘とカトリックの神父のストーリーだった前作とは違い、今作は各地のエクソシストの混合チームを結成。その過程で、意地悪に思えた隣人が加入してくる経緯がユニーク。また、前作の母親クリス・マクニールが同役で再登場。彼女のもとに車でビクターが向かうシーンで流れる Tubular Bells が個人的には本作のピークだった。

 

悪魔祓いの儀式前に「え?」という展開で唖然とさせられる。そして満を持して登場した神父が『 エクソシスト 』で最も有名なシーンを再現。このシーンが最もホラーらしかった。

 

ネガティブ・サイド

ジャンプ・スケアが多過ぎ。特に序盤。こけおどしの演出でびっくりさせるのではなく、観る側の恐怖心を刺激するような演出をしてほしい。夏恒例の糞ホラーではなく『 エクソシスト 』の続編なのに。

 

学校の授業で心霊云々のビデオを鑑賞するものだろうか。普通に子供たちが自宅のPCでそれっぽいYouTubeを観るのではダメだったのだろうか。PCにグリッチが走る場面が序盤にもあったことだし。

 

憑依された子供たちの演技は見事だったものの、結末は拍子抜けかな。というか前作を意識しすぎているよう思う。「どうせ上回るものが作れないなら、前作と似たような作りにしてしまえ」的な姿勢が監督から感じられた。それは創作活動の姿勢としては評価するのは難しい。

 

娘リーガンと母クリスの再会はちょっと蛇足だったかな。

 

総評

『 エクソシスト 』の続編。前作を観ていなくても鑑賞は可能。直接的なつながりは少しだけしかないが、色々とオマージュがあるので、できれば予習を推奨する。本作は一義的にはホラーではなくヒューマンドラマ。チケット購入に際しては、このことを承知しておきたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

seance 

『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』や『 ズーム/見えない参加者 』などでもおなじみの「交霊会」の意。TOEFL iBT110やIELTS8.5を目指すような人でも知っている意味はない。ただ、オカルトやホラーが好き、かつ英語にも興味がある(この語はもともとはフランス語だが)という向きなら、教養の一環として知っておいていいかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 市子 』
『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』
『 怪物の木こり 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アン・ダウド, エレン・バースティン, ヒューマンドラマ, ホラー, リディア・ジュエット, レスリー・オドム・Jr., 監督:デビッド・ゴードン・グリーン, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 エクソシスト 信じる者 』 -ホラーというよりは人間ドラマ-

『 ドミノ 』 ーThe less you know, the betterー

Posted on 2023年11月6日2023年11月6日 by cool-jupiter

ドミノ 65点
2023年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ベン・アフレック ウィリアム・フィクナー アリシー・ブラガ
監督:ロバート・ロドリゲス

 

本作に関しては、極力何の事前情報も入れずに鑑賞するのが吉である。それにしても『 リゾートバイト 』でも感じたが、日本の配給会社、提供会社はもうちょっと宣伝文句を控えめにできないものか。

あらすじ

娘を誘拐された心の傷を持つ刑事ローク(ベン・アフレック)のもとに、銀行強盗のタレコミが入る。現場で犯人が狙う貸金庫の中からロークは娘の写真と謎のメッセージを発見する。犯人は警察官を操り、屋上から飛び降りて姿を消した。捜査を進めるロークは、謎の占い師ダイアナ(アリシー・ブラガ)から、人間を操るヒプノティックの存在を知らされ・・・

ポジティブ・サイド

本作はアクション映画の大家ロバート・ロドリゲスの新境地かもしれない。『 アリータ バトル・エンジェル 』などで驚きのアクション・シークエンスを演出してきた彼が、今作ではミステリー、サスペンス、スリラーの要素を前面に打ち出してきた。原題の Hypnotic とは「催眠にかかっている」の意。動詞の hypnotize は『 この子は邪悪 』で紹介しているので、興味のある向きは参照されたい。 

 

ベン・アフレックが傷心の刑事を好演しているが、やはりトレイラーから存在感抜群だったウィリアム・フィクナー演じる謎の術師が素晴らしい。キリアン・マーフィーもそうだが、見た目からしてただならぬ妖気というかオーラがあり、一筋縄ではいかないキャラであることが一目でわかる。

 

捜査中に知り合った謎の女ダイアナと共に、謎の催眠術師レヴ・デルレーンを追いかけ、また追いかけられるという中盤の展開はスリリング。しかし、相手は他人に「別の世界」を知覚させてしまう術師。襲い来る群衆に、味方でさえも信用できない状況。緊迫感を煽るBGMと共にサスペンスが盛り上がる。

 

中盤に「ほほう」という展開がやってくる。細かいネタバレはご法度だが、本作は一種の記憶喪失もの。タイムトラベルものと記憶喪失ものは序盤から中盤にかけては絶対に面白い・・・のだが、逆に終盤に尻すぼみになってしまうことがほとんど。本作は、そこにさらにもう一捻り二捻りを加えてきたところが秀逸。細かくは言えないが、1990年代の小説『 NIGHT HEAD 』の某敵キャラがヒントである。

 

94分とコンパクトながら、様々なアイデアを巧みに盛り込み、それでも消化不良を起こさせない脚本はお見事。後半の怒涛の伏線回収は作劇術のお手本と言えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

映像は確かに凄いが、街がグニャリと折れ曲がっていく光景は『 インセプション 』や『 ドクター・ストレンジ 』で見た。二番煎じは不要である。

 

また催眠術が効かない人間が一定数出るのは、感染パニックもので一定数最初から免疫を持つ者がいるのと同じ。それが特定のキャラクターとなると、どうしても「ははーん、つまりコイツはあれだな」と簡単に邪推できてしまう。もう少し捻りが必要だったろう。感染ものではないが『 トータル・リコール 』などともそっくりだ。

 

ダイアナという能力者が主人公に協力しつつも、敵であるデルレーンが自分よりも強力な能力者で尻込みしながらも何とか抵抗していくというのは『 ブレイン・ゲーム 』にそっくり。ということは「この先に何かあるよね?」と疑うのは理の当然。どんでん返しというのは、予想もしないところからひっくり返す、あるいは予想していた以上にひっくり返すことが求められるが、本作に関しては予想の範囲内だったという印象。

 

総評

どんでん返しがあると思って観てはいけない。本作を楽しむ最大のポイントは公式ホームページなども含めて、事前の情報を極力避けることにある。ということは、こんなレビューを読んでいる時点でアウトである。観るならサッサとチケットを買う。観ないのなら別の映画のチケットを買う。それだけのことである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

construct

ここで紹介したいのは「建築する」「構築する」という動詞ではなく「心理的構成物」という名詞の意味。『 マトリックス 』でエージェント・スミスがネオに向かって戦う意味を ”Is it freedom or truth?! Perhaps peace?! Could it be for love?! Illusions, Mr. Anderson, vagaries of perception! Temporary constructs of a feeble human intellect trying desperately to justify an existence that is without meaning or purpose!” のように問うシーンでも使われている。心理学や哲学を勉強している、あるいは英検1級やTOEFL iBT100、IELTS7.5を目指す人なら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アリシー・ブラガ, ウィリアム・フィクナー, スリラー, ベン・アフレック, 監督:ロバート・ロドリゲス, 配給会社:ギャガ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 ドミノ 』 ーThe less you know, the betterー

『 ザ・クリエイター/創造者 』 -イデオロギーではなくテクノロジーを見せろ-

Posted on 2023年10月23日 by cool-jupiter

ザ・クリエイター/創造者 40点
2023年10月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョン・デビッド・ワシントン マデリン・ユナ・ボイルズ ジェマ・チェン 渡辺謙
監督:ギャレス・エドワーズ

 

AIが現実の仕事や学問に巨大なインパクトを与え始めている中でタイムリーな作品が公開されたと思い、チケット購入。

あらすじ

2055年、LAでAIによる核爆発が勃発。以降、アメリカはAIを排除することを決定。ニューアジア共和国に潜伏する謎のAI開発者ニルマータを捉えるために、潜入捜査官のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は組織の女性マヤ(ジェマ・チャン)に近づき、夫婦となるが・・・

以下、軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

日本国内でもChatGPTを禁止する大学(上智など)が出てくるなど、大学レベルですらAIに対する対応が割れるのだから、国家となると尚更のはず。中国がGoogleを遮断したりするという実例もある。本作は冒頭からロボットの発達とそこにAIが搭載されて・・・という歴史の if をダイジェストで見せてくれるが、まさに近現代のテクノロジー史の一端を見せられているようで興味深かった。このイントロがあるからこそ、ある意味荒唐無稽もいいところのメインプロットに説得力が生まれている。

 

舞台がアメリカ国外というのも良い。これまでアメリカ映画におけるアメリカ=全世界的な価値観を、本作は踏襲していない。ゾンビ映画でもモンスター・パニックでもパンデミックものでも、アメリカ=世界という等式が成り立つことがほとんどだったが、AIを拒否するアメリカとAIと共存するニューアジア共和国という対比は新鮮だった。

 

こんな感想を抱いたのはごく少数だと思うが、Jovianは途中からジョシュアがモハメド・アリに見えてきた。本作を楽しむ鍵は、ジョシュアにどれだけ感情移入できるかにあると思う。まあ、マイノリティーの意見・感想です。

ネガティブ・サイド

全体的に意外性がない。死んだと思ったヒロインが実は生きていた、というのは開始10分で分かること。要はそこにたどり着くまでの過程を以下に予想外のものにするかにあるのだが、全体的な世界観が『 ターミネーター 』および『 ターミネーター2 』の裏返しだと感じたし、人間側(というかアメリカ人)の感性も『 アイ、ロボット 』そっくり。結局は技術革新の裏で常に進行するラダイト運動のSF版という感じ。ノマドの外観および内部のデザインやレイアウトも『 エリジウム 』や『 スター・ウォーズ ローグ・ワン 』のビジュアルに酷似している。後者の方は監督が同じだからある意味で当然か。最も意外であるべき、ジョシュアが何故ミッションである最終兵器の破壊ではなく保護を選んだのかという理由についても、『 ブレードランナー2049 』が先行している。

 

舞台のニューアジア共和国というのがハッキリしない。我らが渡辺謙が登場し、やたらと日本語も聞こえてくるから日本?景色からしてラオス、カンボジア、ベトナム?ノマドを見ていると、どうもベトナム戦争時の民間人へのナパーム攻撃を想起させる点からして、やっぱりベトナム?だとするとAIは共産主義?そして最終的に勝利を収めるのも共産主義?イデオロギー的な背景など無しに、純粋にテクノロジーを受容するのか、拒絶するのかというストーリーの方がシンプルで、よりエンターテインメント性を追求できたのではないかと思う。

 

ところで・・・21世紀も半分を大きく過ぎているにもかかわらず、ニューアジア共和国は20世紀半ばの東南アジアのように見えるのは何故なのか?AIやロボットと共存している国家の生活水準があんなに低いはずがないと思うのだが。ただギャレス・エドワーズ監督は『 GODZILLA ゴジラ 』でジャンジラなる珍妙な日本を描いた前科があるからなあ・・・ アジアに対して正しい知識やリスペクトを持っていないように感じられて仕方がなかった。

 

総評

面白いのは面白いのだが、全編どこかで見た構図のパッチワーク。渡辺謙のAIロボも、どこか浮いていた。家族や愛の物語で締め括るのは『 インターステラー 』と同じ。壮大な世代交代のストーリーが、えらく小ぢんまりとまとまってしまったという印象。テクノロジーの話ではなくイデオロギーの話なので、鑑賞するかどうかは自分の嗜好をよくよく確かめて検討すること。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

turn the tide 

「流れを変える」の意。劇中では turn the tide of the war = 戦争を逆転させるのように使われていたと記憶している。日常だと

 

He mentioned the critical evidence and turned the tide of the debate.
彼は決定的なエビデンスに言及して、ディベートの流れを変えた。

 

The sales rep turned the tide of the negotiation by offering the client a big discount.
営業担当は顧客に大幅値引きを提供することで交渉の流れを変えた。

 

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 リゾート・バイト 』
『 月 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, アメリカ, ジェマ・チェン, ジョン・デビッド・ワシントン, マデリン・ユナ・ボイルズ, 渡辺謙, 監督:ギャレス・エドワーズ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ザ・クリエイター/創造者 』 -イデオロギーではなくテクノロジーを見せろ-

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

Posted on 2023年9月25日2023年9月25日 by cool-jupiter

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 80点
2023年9月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フランキー・フェイソン
監督:デビッド・ミデル

 

妻が「面白そう」というので、チケットを購入。ハズレが少ないシネ・リーブル梅田の上映作品だが、本作は年間ベスト級の面白さだった。

あらすじ

心臓病を抱えるケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、誤って救命救急サービスのアラームを作動させてしまう。それによってケネスの自宅に警察官が急行し、ケネスの安否を確認しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

舞台はケネスの自宅室内とアパートのホールウェイ。主な登場人物は、ケネスと最初に現場に急行する警察官3名、ライフ・ガード社の女性オペレーター1名、そしてケネスの姪っ子一人と、非常に小規模な作品。しかし、そこに流れる空気の濃密さはそんじょそこらの映画の比ではない。

 

最初は職務に忠実にケネスの安否を確認しようとする警察官たち。しかしケネスが黒人、元海軍兵、さらに精神障害の既往歴ありという属性を知るにつれて、どんどんと過激化していく。黒人ということは犯罪者予備軍ではないか。海軍ということは武器を所有しているのではないか。まるで『 福田村事件 』のように、疑心暗鬼がいつの間にか確認に変わり、法執行官の代表たる警察官がいとも簡単に法を破っていく。そこに至るまでの過程が『 デトロイト 』そっくりだが、『 デトロイト 』では銃声というトリガーがあった。しかし、本作では警察官の暴力性を引き出す契機は何もなし。そのことが観る側に恐怖感を呼び起こす。単に暴力的になっていくから怖いのではない。職務に忠実であろうとする姿勢が、いつの間にか他者を傷つけることを厭わない姿勢に変わっていくことが恐ろしい。そういう意味では本作は『 ヒトラーのための虐殺会議 』に近いものがある。これは極端な例かもしれないが、哲学者ハンナ・アーレントが見抜いたように、人は凡庸な悪にこそ支配されてしまう。その過程をわずか数十分で臨場感たっぷりに描いた点が本作の一番の貢献と言えるかもしれない。

 

ケネスを演じたフランキー・フェイソンの迫真の演技には息を呑むばかり。双極性障害の持ち主にして、軽いPTSD持ちにも見えた。彼の脳裏に去来したであろう様々な体験を一切映像化することなく、観る側にそれをありありと想起させる演技力と監督の手腕は見事の一語に尽きる。ライフ・ガード社のオペレーターの女性の声だけの迫真の演技も印象的。中学校教師上がりの警察官ロッシの個人としての信条が、警察という階級組織の中で簡単に押しつぶされていく様もリアルだった。

 

タイトルの通りに最後にケネスは殺害されてしまうわけだが、その結末には慄然とさせられる。法とは何か。人命とは何か。何が我々を狂わせるのか。何が我々を思考停止に陥らせるのか。本作が示唆する問題はアメリカだけに限定されたものでは決してない。

 

ネガティブ・サイド

エンドロール時に本物のケネスや警察官たちの声が聞こえるが、警察官たちは暴力的というよりも、ケネスをおちょくるような口調だったと感じた。であるならば、そのような口調を再現し、それをケネスが威圧的、高圧的、威嚇的と受け取ってしまう、のような演出を模索できなかったか。あるいは、エンドロールの実在の人物たちの声はすべてカットしてしまうのも一つの選択肢だっただろう。

 

総評

間違いなく年間ベスト候補の一つ。非常に限定的な時間と空間、そして人間関係だけで圧倒的なドラマを生んでいる。大量破壊兵器を持っていないのに、あたかも持っているかのように振る舞ったイラクは空爆されてしかるべきだった。ウクライナ戦争以降、このような言論が耳目に入ってくるが、どう考えてもアメリカの方が悪い。疑わしきは罰せずというのが人類のたどり着いたひとつの結論であるはずだが、個人レベルでも国家レベルでも疑惑を確信に変えて行動してしまうアメリカには決して倣ってはならない。やることなすこと全てアメリカの猿真似の本邦も、本作や『 福田村事件 』を直視しなければならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make sure

しばしば S1 make sure that S2 + V のような形で使う。意味は、S2がVするとS1が確認する。まあ、これは例文で覚えたほうが早い。

 

She made sure that the door was locked and the windows were closed.
彼女はドアが施錠されていて、窓も閉じられているということを確認した。

I want to make sure that this assignment is due next month.
この課題は来月が締め切りであると確認したい。

 

のように使う。初級者から上級者まで日常でバンバン使う表現なので、ぜひ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 BAD LANDS バッド・ランズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, スリラー, フランキー・フェイソン, 伝記, 監督:デビッド・ミデル, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

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