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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』 -もっとホラー要素を強化せよ-

Posted on 2019年11月4日2020年4月20日 by cool-jupiter

IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 50点
2019年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ビル・スカルスガルド ジェームズ・マカヴォイ ジェシカ・チャステイン 
監督:アンディ・ムスキエティ

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前編の『 IT イット “それ”が見えたら、終わり。 』はまあまあ面白いホラーだった。全編を子ども時代にしてしまうことで、テレビ映画の欠点だった誰が大人になれて、誰が大人になれないのかを、分からないようにしたのは大胆な改変だったが、正解だった。それでは続編の本作はどうか。こちらが行った大胆な改変は、不正解ではないにしろ、正解とは言い難いものである。

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あらすじ

ルーザーズ・クラブがペニー・ワイズ(ビル・スカルスガルド)を撃退してから27年。デリーには再び不穏な気配が迫りつつあった。そして「イット」の再来を確信したマイクは、ビル(ジェームズ・マカヴォイ)やベバリー(ジェシカ・チャステイン)らに連絡を入れる。ルーザーズ・クラブの面々はデリーで再会を果たすが、そこにはメンバーが一人欠けており・・・

 

ポジティブ・サイド

アラフォーになったルーザーズ・クラブの面々がどのように「大人」になったのか、その描写が端的で素晴らしい。お堅い仕事に就いている者もいれば、安定しているとは言えない仕事に就いている者もいる。結婚している者もいれば、独身の者もいる。しかし、誰もハッピーには見えないし、誰も子どもを持っていない。つまりルーザーズは、どこかでまだ大人に成り切れていないのだ。そのことを下手な説明的な台詞を一切入れずに、映像とナチュラルな会話だけで描き切った導入部は、続編の始まり方としては白眉だろう。

 

キャスティングも良い。ジェームズ・マカヴォイやジェシカ・チャステインといった実力派はもちろんのこと、子役らと顔の作りがよく似た大人を適宜に配置できている。特にエディを演じたジェームズ・ランソンは始めはジェイク・ジレンホールに見間違えた。子役と大人役がスムーズにつながることで、観る側も続編に違和感なく入って行くことができる。このキャスティングも成功である。

 

ペニー・ワイズの見せる恐怖の幻影は本作でも様々な形を取るが、個人的に最も印象に残ったのはベバリーが出会い、会話をする老婆。この老婆が画面の隅っこで見せるわずか1秒のアクションが本作で最も恐怖を感じられるシーンであった。惜しむらくは、この老婆をトレイラーに出してしまっていたこと。観る前から「ああ、このお婆さんも幻影なのだ」と分かってしまっていた。それが無ければ、もっと鳥肌が立っただろうにと感じた。誠に惜しい演出である。

 

それなりに怖いと感じたのは、バワーズが見るかつての悪友の姿。一瞬だけ怖かった。またベンが思い出の品、トークンを取りにいく場面で見る幻影もそれなりに恐怖感を催させてくれた。自分の心の最も美しい部分と自分の心の最も弱い部分が重なるところを攻めてくるペニー・ワイズはなかなかの逆心理カウンセラーだなと思わされた。

 

原作小説にもテレビ映画にもなかった要素として、ネイティブ・アメリカンのガジェットを追加してきたのは、アイデアとしては悪くない。事実、オーストラリアのアボリジニの伝承には、どう考えても数万年前のオーストラリアの生態系を指しているとしか考えられない内容があると『 コズミックフロント☆NEXT 』が言っていた。ペニー・ワイズの正体と起源に迫る上で、この着想は悪くなかった。

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ネガティブ・サイド

ホラー映画であるが、怖くない。これは致命的な欠陥である。本作が怖くない最大の理由は、ジャンプスケアの多用にある。もはや様式美と言っていい程にパターン化されたジャンプスケアには、辟易させられる。自分が監督でも、ここでこれをこうしてああするだろう、という展開のオンパレードである。ホラー映画ファンを唸らせるシーンは数えるほどしかない。

 

またビジュアルにも特筆大書すべきところはない。というよりも、どこかで見たような演出やクリーチャーの造形には心底ガッカリさせられた。パッと思いついただけでも『 遊星からの物体X 』や『 スコーピオン・キング 』、『 シャイニング 』に劇中でまさに上映中だった『 エルム街の悪夢 』など。名作へのオマージュだと言えば聞こえは良いが、これが監督や脚本家の想像力の限界なのだろうか。テレビ映画版を超えなければならない、2年前公開の前編を超えなければならない。そうした気概が空回りしたのなら、まだ許せる。しかし、この作り方では最初からモンタージュ的な映画を作ってやろうという風に開き直っていたようにしか感じ取れない。

 

色々とタイミングも悪いのだろう。『 キャプテン・マーベル 』で猫=ヤバい生き物という認識を映画ファンは新たにしたわけであるが、そこへポメラニアンを持って来ても、残念ながら意外性も驚きも恐怖もない。また社会の闇と自分の心の闇の両方に押し出されるようにジョーカーに堕ちて行ったキャラを我々はすでに『 ジョーカー 』に見た。大人の構築した社会の網目から外れた部分で活動する子どもたち、なかんずくルーザーズの面々が自らのトラウマを刺激されながらも、それを乗り越えていく様は勇ましく、美しい。けれども、恐怖が本当の恐怖たり得るのは、それが自分の身に起こってもおかしくない時である。そうした意味で、『 ジョーカー 』は自分の心にある闇を抉り出してくれた。自分は本作にホラー映画要素を過大に期待していたのだろうか。この続編にして完結編は、『 グーニーズ 』や『 スタンド・バイ・ミー 』、『 ぼくらの七日間戦争 』、藤子不二雄Aの漫画『 少年時代 』のように、大人の目から見た子どもたちの奮闘記のように思える。そうした観点から鑑賞すれば本作は佳作である。しかし、ホラー映画としてはダメダメである。

 

原作にある (゚Д゚)ハァ? というベバリー絡みの展開は、本作でも採用されない。R15指定とは何だったのか。また黒人差別の要素を薄める一方で、性的マイノリティ、あるいは性的弱者の要素もカット。テレビ映画版のとあるキャラクターがある秘密を告白するシーンは、大人と子どもを分かつ非常に重要な要素に関することだっただけに、その部分をほのめかすだけでばっさりとカットしてしまった本作には喝である。

 

総評

筋金入りのホラー映画ファンを満足させる、あるいは納得させる作品ではない。それだけは言える。一方で、変則的な青春もの、大人たちによるジュブナイル物語だと思えば、そこそこのクオリティの作品に仕上がっているのではないか。大御所スティーブン・キング作品の映像化は当たり外れが比較的はっきりしている。本作は残念ながら外れ寄りの作品であるというのが私見である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

What did I miss?

 

直訳すれば「自分は何を見逃した?」だが、実際の意味は文脈によって異なる。『 ボヘミアン・ラプソディ 』で、クイーンのメンバーが郊外のスタジオで曲作りをしている時のディスカッションが言い争いに発展していく中、ラミ・マレック演じるフレディが遅れてやって来て開口一番に言う台詞がこれである。会議に遅刻した時には「どこまで話が進みましたか?」、映画や劇や漫才などの途中でトイレなどに言って帰って来た時に、連れに「なんか面白い展開あった?」などと言う時にもこれを使える。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, ジェームズ・マカヴォイ, ジェシカ・チャステイン, ビル・スカルスガルド, ホラー, 監督:アンディ・ムスキエティ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画

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