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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 劇場版 再会長江 』 -中国社会の今に迫るドキュメンタリー-

Posted on 2024年5月10日 by cool-jupiter

劇場版 再会長江 80点
2024年5月6日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:竹内亮 小島瑠璃子
監督:竹内亮

 

簡易レビュー。

あらすじ

映像作家の竹内亮は、長江源流の最初の一滴に迫るために旅に出る。それは10年前に訪れた長江流域で出会った人々との再会の旅路であり、10年間の中国社会の変化に触れる旅路でもあった。

ポジティブ・サイド

長江の雄大さを伝える映像が多く、ドキュメンタリー作品ではあるが非常に cinematic な作品でもある。長江流域で出会う個性的な人々や少数民族との交流も純粋に興味深い。『 天空のサマン 』を鑑賞した後に本作を観ることで、失われつつある民族の文化への危機感と、逆にそれらを育んだ長江の豊かな恵みへの憧憬を同時に感じる。

 

世界的な大河である長江も、その源流は氷河から滴る雫、そして小さな名もなき川の集合体。現在の中国におけるマジョリティである漢民族の社会と歴史は、多くの少数民族たちの有形無形の財産・遺産から成り立っているのだと感じた。

ネガティブ・サイド

あらゆる民族がプートンファを話すことに対して、日本語ネイティブである竹内監督からその良し悪しについて語ってほしかったと思う。

 

総評

一言、傑作。変わらない文化と不断の変化を続ける社会という相反する2つの要素を、流れ続けながらも常にそこに存在する大河という存在を通じて描き出す手法には脱帽せざるをえない。語学学習を志す人にとってもお勧めしたい作品。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

チュングォ

漢字では「中国」と書く。つまり中国のこと。作中で何度も聞こえてくる。ちなみに中国語で日本はリーベンだが、中世ではジッポン。これを聞いたマルコ・ポーロが「さらに東方にジパングがあるのか」と思い、それが英語ではさらに Japan に変化した。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 青春18×2 君へと続く道 』
『 不死身ラヴァーズ 』
『 関心領域 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, ドキュメンタリー, 中国, 小島瑠璃子, 監督:竹内亮, 竹内亮, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 劇場版 再会長江 』 -中国社会の今に迫るドキュメンタリー-

『 マイ・スイート・ハニー 』 -韓流ラブコメの佳作-

Posted on 2024年5月7日 by cool-jupiter

マイ・スイート・ハニー 65点
2024年5月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ユ・ヘジン キム・ヒソン
監督:イ・ハン

 

『 キラー・ナマケモノ 』鑑賞を妻に却下され、逆に本作を提案されたのでチケット購入。

あらすじ

製菓会社の研究員チャ・チホ(ユ・ヘジン)は、刑務所上がりの兄の借金を返済する過程で、シングルマザーのイルヨン(キム・ヒソン)と出会う。二人は意気投合し、食べ友になるが・・・

 

ポジティブ・サイド

色んな作品でちらほら見かけるユ・ヘジンがラブコメの主役に。このあたりも韓国映画らしい。『 パスト・ライブス/再会 』が30代男性のピュアすぎる恋を描いたかと思えば、こちらは40代男女のピュアな恋愛模様を活写してきた。なんというか、痛々しい男子大学生のようなノリの良さ、あるいはノリの悪さを40代半ばのブサイク男子がやるのだから、これが面白くないはずがない。

 

お菓子やらジャンクフードばかりで栄養失調になっているチホとシングルマザーのイルヨンが食べ友になるという流れも自然。最初は金の貸し借りの関係だったのが、知人になり、友人になり、そしてかけがえのない恋人になっていくというストーリーは凡庸ではあるが楽しめた。チホの会社の役員会議の内容やその面々の台詞やアクションが笑えるし、イルヨンの職場の上司も『 ただ君だけ 』に出てきたような典型的な下心ありありの小悪人キャラで、観る側としてはどうしたってイルヨンを応援せざるをえない。

 

すったもんだがありながらも、落ち着くべきところに落ち着く物語だった。案外、高校生や大学生などの若い世代が観ても楽しめるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

チホの兄貴とチホの関係性や幼少時のとある出来事などは全部省略して、10分ぐらい短縮してしまっても良かった。

 

イルヨンの夫のネタも笑えるには笑えるが、必要なサブプロットだったかというと、うーむ・・・ これもバッサリとカットしてしまって良かったのでは?

 

総評

チホの外見と行動のキモチワルサが最初の見どころ。しかし、そのチホがどんどん魅力的に見えてくるのが本作の movie magic。その絶妙な仕掛けを知りたい人はぜひ鑑賞を。本作は一風変わった家族の物語でもあり、変則的なサラリーマン物語でもある。若い世代でもチホやイルヨンと同世代でも楽しめるはず。ぜひ多くの方に鑑賞いただきたい韓流ラブコメの佳作である。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒュン

兄の意。必ずしも血のつながりがなくても使える。やくざ者の映画でもしょっちゅうヒュンニム=兄様=兄貴という形で使われている。Jovianの元同僚韓国系アメリカ人も「俺のことをヒュンと呼んでいいぞ」と言ってくれていたっけ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 劇場版 再会長江 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・ヒソン, ユ・ヘジン, ラブコメディ, 監督:イ・ハン, 配給会社:松竹, 韓国Leave a Comment on 『 マイ・スイート・ハニー 』 -韓流ラブコメの佳作-

『 ミッドナイト・イン・パリ 』 -劇場鑑賞-

Posted on 2024年5月2日 by cool-jupiter

ミッドナイト・イン・パリ 75点
2024年4月28日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

出演:オーウェン・ウィルソン レイチェル・マクアダムス マリオン・コティヤール レア・セドゥー
監督:ウッディ・アレン

 

『 ミッドナイト・イン・パリ 』が劇場にて再上映ということでチケット購入。

あらすじ

脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とその両親と共にパリに旅行に来ていた。深夜のパリで偶然に乗り込むことになったクルマは、なんとギルを1920年代のパリに連れて行き、多くの歴史上の作家や芸術家と交流することに。それ以来、ギルは夜な夜なパリの街に繰り出しては、不思議な時間旅行に出かけて・・・

ポジティブ・サイド

『 マリの話 』の高野徹監督はホン・サンスから多大な影響を受け、そのホン・サンスは韓国のウッディ・アレンと呼ばれることもある。インテリ男性が女性と恋に落ちるが、なんだかんだで失恋してしまう。男の願望と現実が絶妙にブレンドされた作品を産み出すのがウッディ・アレン。そのストーリーテリングの妙味は本作でも遺憾なく発揮されている。

 

ポールとギルを通じて知識と教養の違いが明らかにされている。すなわち前者はそれ自体を蓄積するもの、後者はそれを使って仕事や趣味を充実させるもの。ギルの文学者や芸術家への憧憬があり、それが彼の葛藤にもなっているが、逆にそれによってパリを堪能できている。対するポールはパリを解説するばかり。男たるもの(という表現は不適切かもしれないが)、ギルのように生きたいものだ。

 

不思議なタイムスリップをしながらも「黄金時代症候群」は現代特有の病ではなく、いつの時代の文化人も罹患した、ある意味で普遍的な病理だったということが分かる展開は秀逸。

 

Jovian妻は冒頭から最終盤まで、パリの街を堪能したとのこと。以前に一人旅をした時にあちこちを歩いたことがあり、映画のままのパリを思い出したという。俺もパリジャンの友達にいつか会いに行きたいなあ。

 

ネガティブ・サイド

何回観てもレイチェル・マクアダムス演じるイネズが必要以上に不愉快なキャラに見えてしまう。もっと普通の、もっと stereotypical な嫌な女でよかったのに。何故にここまで不快な女性に仕立ててしまったのだろうか。 

 

総評

暗転した劇場、大画面、大音響で鑑賞するだけで物語の面白さが一割増しになる気がする。DVD鑑賞時は70点だったが、77点に感じられたので75点としておく。中年カップルや女性のおひとりさまが多く、総じて客層は良かった。ゴールデンウィークのデート・ムービーにぴったり・・・かどうかは結婚しているかどうかによる。未婚向けか既婚向けかは、実際に鑑賞して感じ取ってほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

by day, by night

アドリアナの台詞に “I don’t know if Paris is more beautiful by day or by night” のようなものがあった。by day と by night はしばしばセットで使用される。意味は「昼は、昼に」と「夜は、夜に」だが、対称性を表現したい時に使われることが多い。

He is Bruce Wayne by day and Batman by night. 
彼は昼間はブルース・ウェインで夜はバットマンだ。

のように使う。He is Bruce Wayne during the day and Batman at night. と言ってもいいが、あまりナチュラルには感じない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 キラー・ナマケモノ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, オーウェン・ウィルソン, スペイン, ファンタジー, マリオン・コティヤール, レア・セドゥー, レイチェル・マクアダムス, 監督:ウッディ・アレンLeave a Comment on 『 ミッドナイト・イン・パリ 』 -劇場鑑賞-

『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』 -怪獣映画ならぬ怪作映画-

Posted on 2024年4月29日 by cool-jupiter

ゴジラxコング 新たなる帝国 30点
2024年4月26日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レベッカ・ホール ケイリー・ホトル 
監督:アダム・ウィンガード

 

ゴジラ映画ということで意気揚々と公開初日のレイトショーのチケットを購入。しかし、ゴジラ映画ではなくコング映画、もっと言えば悪趣味な怪獣プロレス映画だった。

あらすじ

ゴジラは地上、コングは地底と棲み分けていたが、モナークは地底世界からの謎のシグナルをキャッチ。それは一種の救難信号だった。モナークとコングは、その未探査領域で思いがけぬ存在と接触し・・・

ポジティブ・サイド

序盤でコングのキャラクターを深掘りできていたと思う。元々人間寄りの怪獣だったが、前作や前々作のように安易に手話に頼らず、コングの生活描写を通じてコングの心情をある程度描き出せていた。

ネガティブ・サイド

ゴジラがゴジラではなくなってしまった。パワーアップするのは別に構わんが、走ったり飛び跳ねたりするのは、作り手がはしゃいでいるというか、自分たちが子どもの頃に夢中になったおもちゃを自分たちの手で思い通りに動かしたいという願望をかなえたようにしか見えない。ゴジラというキャラクターには歴史と伝統があって、それを重んじたいと感じた節は皆無。アメリカ産のコングの美女好きという属性は時代に合わないからと都合よく抹消しておきながら、日本産ゴジラは自分たちの思うように作り変えるという創作姿勢にはまったく賛同できない。伊福部音楽を使わない時点でゴジラはゴジラでなくなってしまった。

 

プロットも浅い。コングが同種族を見つけて、そこでボス猿になっていく。それだけ。素カーキングとやらも典型的なヴィランで深みがない。はぐれ猿のコングが仲間に受け入れられるかどうかという葛藤やドラマを描く代わりに、悪い奴がいるからコングにやっつけさせようという分かりやすい方向に逃げただけ。1対1では尺が足りないから新怪獣を出して、ゴジラにはそいつの相手をしてもらおうというのも薄っぺらすぎ。これならモンスターバースではなく単独コング映画でよかった。

 

人間キャラもお寒い限り。何の役にも立たないのに続投出演するブロガーに、新登場で特に何もしない歯医者。レベッカ・ホールと養子のジミの物語もあまりにも陳腐。コングと心通わせる文明社会に居場所を見出せない少女がアメリカナイズされていく様は見るに堪えない。You belong with me って、テイラー・スウィフトかいな(いや、Jovianはテイラーの音楽は大好きだが)。

 

総評

『 オッペンハイマー 』を産み出せるアメリカがゴジラの描き方をここまで誤るとは。結局は誰が作品の方向性を決めるのか次第なのか。ゴジラはコングの引き立て役ではないのだが。モンスターバースはまだまだ続きそうだが、その場合、監督もしくはプロデューサーはマイケル・ドハティにしてほしい。どうせクレイジー路線で行くなら、ゴジラおよび怪獣にリスペクトを持った人物に託したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

the Ice Age

氷河期の意。『 GODZILLA ゴジラ 』では、the Stone Age =石器時代が言及されていた。東宝は今でこそ『 シン・ゴジラ 』や『 ゴジラ‐1.0 』を制作できているが、それ以前には dry spell =乾期・製作が進まない時期があった。dry spell は英検準1級以上を目指すなら知っておきたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 キラー・ナマケモノ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, ケイリー・ホトル, レベッカ・ホール, 怪獣, 怪獣映画, 監督:アダム・ウィンガード, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』 -怪獣映画ならぬ怪作映画-

『 トップガン マーヴェリック 』 -ライブ音響上映-

Posted on 2024年4月20日2024年4月20日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点 
2024年4月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞 
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー 
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

およそ1年半ぶりの劇場鑑賞。ライブ音響上映に惹かれてチケット購入。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

 

ポジティブ・サイド

ライブ音響上映ということで、冒頭のF-18の空母からの発艦、空母への着艦シーン、そこで流れる Danger Zone の音圧に文字通り押しつぶされそうに感じた。「映画の半分は音楽である」とは押井守の言だが、本作を鑑賞して氏の言葉の正しさがあらためて証明されたと感じた。要所で流れる Top Gun Anthem や、The Man, The Legend などの音量も爆音で聞くことで、こちらの感情の揺さぶられ方もより激しくなった。

 

何度も劇場鑑賞およびBlu-ray鑑賞したり、YouTubeで元&現役軍人が色々とコメントしたりしている動画を観ているので色々と粗が目に入りはするが、そんなものはどうでもいいと思えるほどの迫力がある。最も感動したのはF-14の離陸前のBGM、次に感動したのはマーヴェリックとルースターが空母に帰還するシーンのBGM。音響と音楽の持つインパクトは大きいのだなとあらためて感じさせられた。

 

ネガティブ・サイド

敢えて字幕に集中してみたが、結構ひどい。museum piece を骨董品と訳すのは漢字の制限があって難しいにしても、年代物とかではダメなのか。ポンコツはひどすぎる訳。フェニックスとハングマンの掛け合いもめちゃくちゃ。まあ、これは映画というよりも翻訳者の問題か。字幕翻訳はかくも難しい。

 

総評

面白いものは何度見ても面白い。日曜日に本作のサントラをいくつか Walkman に入れてしまった。『 オズの魔法使 』や『 テルマ&ルイーズ 』のように、傑作だという評価が定着している作品は、映像をリマスターするとか音響をパワーアップさせるなどして、劇場リバイバル上映をもっと頻繁に行っていいのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Literally

「文字通りに」という意味。近年最も乱用されている英語の一つと言っても過言ではない。I literally died laughing out loud. = 笑い過ぎてホンマに死んだわ、のような感じで使われる。ということは日本語でも乱用および誤用されている?劇中では存在感ゼロだったボブが I’ve been here the whole time. と言い、それに対してハングマンが The man’s the stealth pilot. =ステルスのパイロットかよ、と反応したのを、その後にマーヴェリックがまったく同じようにハングマンとルースターに気づかれず、Been here the whole time. と言っていた。細かいところも面白い。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』
『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

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Posted in 映画, 海外Leave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -ライブ音響上映-

『 パスト ライブス/再会 』 -初恋は実らない-

Posted on 2024年4月14日 by cool-jupiter

パスト ライブス/再会 65点
2024年4月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレタ・リー ユ・テオ
監督:セリーヌ・ソン

 

大学開講の第1週で多忙につき、簡易レビュー。

あらすじ

12歳のノラ(グレタ・リー)とヘソン(ユ・テオ)は互いに思いあっていたが、ノラの両親のカナダ移住に伴って離れ離れになってしまう。24歳でオンラインで再会を果たす二人だったが、やがて疎遠になってしまう。そして36歳、ヘソンは休暇でニューヨークを訪れ、ノラと再会することになり・・・

ポジティブ・サイド

監督の自伝的要素が非常に強く、パーソナルな面で突き刺さるものが多かった。特に Facebook のような Social Media でかつての知人友人を見つけて連絡が取れてしまうというのは過去にはありえない、現代に特有の事象。似たような経験があるという30代、40代、50代は多いのではないだろうか。

 

イニョンという考え方はアジア、特に仏教圏、輪廻転生の概念が普及している地域の人間には分かりやすい。イニョンとはいわゆる縁起のこと。本作がアカデミー賞にノミネートされたというのは、ここらへんがアメリカ人に新鮮だったのもあるからでは?

 

ヘソンとアーサーの距離感、またノラとアーサーの距離感が絶妙だった。アメリカ人がアメリカで異邦人の気持ちになる。これもアカデミー会員の心の琴線に触れたシーンかなと思う。

 

ネガティブ・サイド

男はいくつになっても男の子のままというある種の偏見を飲み屋に集まる変わらない面々で描くというのは少々芸がないと感じた。いや、これも一種の同族嫌悪かな。

 

結局のところ、両親のエゴに振り回された子どもたちの話だったのでは?という印象が拭えなかった。割と引っ越しばかりで、それが嫌だった自分が強く思い出されたからな気がしないでもないが。

 

総評

『 僕の好きな女の子 』をもっとドラマチックに、もっと哲学的にしたものだったなという印象。運命というにはあまりにも淡すぎて、悲恋というのはあまりにも濃い。ぜひパートナーと鑑賞してほしい。Jovianと妻の感想は多くの点で非常に対照的だった。逆に結婚という因習は、そうした互いの違いから以下に目をそらし続けるのに役立つかということが逆接的に感じられるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Lives

lifeの複数形は正しくはライブズとスではなくズとなる。Black lives matter もブラック・ライブズ・マターと報じられていた。一方でワーナー・ブラザースのように、公式にズではなくスを使っている組織もある。まあ、発音は正確に越したことはない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 あまろっく 』
『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, グレタ・リー, ユ・テオ, ロマンス, 監督:セリーヌ・ソン, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 パスト ライブス/再会 』 -初恋は実らない-

『 オッペンハイマー 』 -伝記映画の傑作-

Posted on 2024年4月7日 by cool-jupiter

オッペンハイマー 80点
2024年4月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キリアン・マーフィー
監督:クリストファー・ノーラン

 

『 ソウルメイト 』や『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』を立て続けに鑑賞して、やや面白不感症気味になっていたが、本作はめちゃくちゃ面白かった。

あらすじ

物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、第二次世界大戦中のアメリカでマンハッタン計画の責任者に任命される。職務に邁進するオッペンハイマーだが、複雑な人間関係や敵対国ドイツ、同盟国ながら共産主義国家であるソ連との競争にもその身を投じていくことになり・・・

ポジティブ・サイド

なんとも重厚かつ長大な物語だった。オッペンハイマー目線での過去と現在が頻繁に行き来し、なおかつ科学者としてのオッペンハイマーだけではなく家族人(だが決して典型的なファミリー・マンではない)として実像や、一人の男として、あるいは軍事や政治におけるポスター・ボーイとして、あらゆる面が映し出されていた(ちなみに本作が鑑賞しづらかったという向きには『 インセプション 』を観てからの再鑑賞をお勧めする)。まさに伝記映画の超大作だった。

 

冒頭から原子の世界のイメージや恒星の活動や死滅のイメージがオッペンハイマーの頭の中でありありと生起されていくところが観客に共有される。これだけ想像力豊かな人物が広島や長崎で起きたことを想像できなかったということの重みは計り知れない。「原爆被害に対する描写がないのはけしからん」と気色ばむ方々は、まず第一に本作はオッペンハイマーの伝記であって、彼は戦時中、あるいは戦争直後に日本を訪れていないということを知るべきだ。また作中でも色濃く描かれているが、オッペンハイマーは非常に想像力豊かな人間で、外国に対して関心と敬意を抱き、自らのユダヤ系のルーツから差別に対しても寛容ではなかったと描かれている。そんな彼がヒロシマやナガサキの惨状を頭の中で思い描けなかったということは、繰り返しになるが、それだけ重いことなのだ。

 

実は国際基督教大学の第一男子寮の一つ上の先輩がロスアラモスで研究員をやっている(ちょっとググれば出てくるし、ご本人も全く隠していない)。2023年11月にその先輩たちとZoom飲み会をした際に、本作の出来(≠内容)やアメリカでの受け止められ方を少しだけ聞くことができた(が、それは興味のある人が自身で調べればいいだろう)。

 

Jovian自身は大学時代に多くの留学生たちと一緒に『 火垂るの墓 』を鑑賞した後、とあるアメリカ人から “Why did you not surrender earlier?” と言われたこと、そして前の職場の同僚アメリカ人に “If Japan had nuclear weapons, they would have used them.”(アメリカ人は仮定法を正しく使えないのだ)と言われたことは、今でもはっきり覚えている。 一部の日本人は自分たちが戦争の被害者として正しく扱われていないと感じたいようだが、自分たちに自分たちなりの歴史認識があるように、相手にも相手なりの歴史認識がある、ということは理解すべきだ。

 

あまり映画の感想になっていないが、ヒロシマ、ナガサキに続いて福島がフクシマになりかけた日本は、オッペンハイマーの想像した破滅のビジョンに対してもっと敏感であってしかるべきと思う。批判する前に鑑賞しよう。鑑賞してから批判しよう。

ネガティブ・サイド

当時のロスアラモスにも間違いなく「研究できればそれでいいや」というマッドサイエンティストがいたはず。そうした無邪気な(だからこそタチが悪い)科学者とオッペンハイマーの対比が欲しかった。そこの描写は不十分であったように感じた。

 

アカデミーが助演男優賞を送るとしたら、ダウニー・Jr よりマット・デイモンの方がふさわしかったのではないだろうか。

 

総評

180分という上映時間も2時間程度に感じられた。それだけ密度の濃い映画だった。オッペンハイマーの生涯を描いた本作からは様々な教訓が得られる。それは観る人の年齢、性別、職業、問題意識によって異なる。一つ言えるのは「想像力を持つこと」の重要性。より良い未来を想像するのか、より悪い未来を想像するのか。自分の仕事や人生について深く考えるきっかけをもたらしてくれる傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Your reputation precedes you

直訳すれば「あなたの評判はあなたに先行しています」で、あなたがここに来るより先にあなたの評判が届いていますよ、ということ。『 トップガン マーヴェリック 』でもサイクロンがマーヴェリックに全く同じセリフを言っていた。ちょうど異動の季節なので、噂の新戦力がやって来た時などに使ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 変な家 』
『 パスト ライブス/再会 』
『 あまろっく 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, キリアン・マーフィー, サスペンス, 伝記, 歴史, 監督:クリストファー・ノーラン, 配給会社:ビターズ・エンドLeave a Comment on 『 オッペンハイマー 』 -伝記映画の傑作-

『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』 -20世紀最高傑作のひとつ-

Posted on 2024年3月31日 by cool-jupiter

続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 100点
2024年3月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリント・イーストウッド イーライ・ウォラック リー・ヴァン・クリーフ
監督:セルジオ・レオーネ

 

『 続・夕陽のガンマン 』の劇場再上映。『 オッペンハイマー 』の劇場公開期間はまだ続くだろうが、本作は今を逃すと一生観られないかもしれない。ということでこちらのチケットを購入。

あらすじ

時はアメリカ南北戦争の最中。賞金稼ぎのブロンディ(クリント・イーストウッド)と賞金首のトゥーコ(イーライ・ウォラック)、そして北軍士官のエンジェル・アイ(リー・ヴァン・クリーフ)の3名は、20万ドルもの大金がどこかに隠されていることを知り、互いに協力し、互いに出し抜きあい、金貨の隠し場所を探っていき・・・

ポジティブ・サイド

キャラ、ストーリー、演出、撮影、音楽など、すべてが完璧。4Kではなく2Kで劇場鑑賞したのも良かったかもしれない。3時間弱もなんのその。うちの親父は十三の映画館で公開当時に観たと言っていたが、同じ経験ができたのは嬉しい。

 

3人のキャラが立っているのが素晴らしい。The Good のブロンディも実は全然良い奴ではないし、The Bad のエンジェル・アイも自分なりの正義を貫く男。卑劣漢(この訳はすごい)のトゥーコの優れたプロフェッショナリズムと隠れた家族愛。この3人は表情だけで物語れるのだ。

 

本作のストーリーや演出がもたらした影響は途轍もなく大きい。観ていて「あ、あの映画のあのシーンはここからインスパイアされたんだな」と感じるシーンが随所にある。最も分かりやすいには、ハン・ソロがグリードをテーブル下から射殺するシーン。あれはエンジェル・アイのオマージュだろう。

 

この時代はフィルム撮影なので、撮ったその場で再生することには色々と制約があったはず。なので、役者もそんなに簡単にNGは出せない。しかし、本作ではロングのワンカットがかなり多用されている。前にも述べたが、トゥーコがガンショップであれこれと吟味するシーンや砂漠でボトルを放り投げて、そのボトルが砂丘の斜面を絶妙に転がっていくシーンなどは、今見ても鳥肌が立つほど素晴らしい。

 

そして何といってもエンニオ・モリコーネの音楽が圧倒的な臨場感と没入感をもたらしている。テーマ音楽の笛の根だけで無限の荒野を前進している気分になれるし、The Ecstacy of Gold を背景にサッドヒル墓地を駆け回るトゥーコはまさに黄金の魔力に憑りつかれた男の欲望の強さ、人間の本能的なものと、一つの旅の終着点にたどり着いた哀愁の両方を感じさせる。決闘シーンの The Trio の雄大さは言わずもがなだが、途中で挿入される『 夕陽のガンマン 』のオルゴールの旋律と、その後に続く銃声の数々、そこに3人の表情を映し出すことで、それぞれが過去に行ってきた決闘の数々を観る側に想起させる。徹底的にビジュアル・ストーリーテリングに徹するセルジオ・レオーネのまさに面目躍如だ。

 

劇場再公開期間中にできるだけ多くの人に鑑賞してほしい。鑑賞後は『 サッドヒルを掘り返せ 』も観てみよう。

 

ネガティブ・サイド

なし。

 

総評

『 バック・トゥ・ザ・フューチャー 』シリーズの大ファンであるJovian妻は『 荒野の用心棒 』は知っていたが、本作は初見。それでもかなり面白いと感じてくれた(第一声が「まあまあやな」だが、これは最大級の賛辞)。『 オズの魔法使 』や『 テルマ&ルイーズ 』を観た時にも感じたが、映画館はもっと名作のリバイバル上映をやっていい。コロナ禍でのジブリ映画の再演が好例。『 風と共に去りぬ 』とか、それこそ『 用心棒 』は、ぜひ大画面と大音響で鑑賞したい。

 

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follow ~ through

~を完遂する、の意。劇中ではエンジェル・アイが When I’m paid, I always follow my job through. = 「報酬を受け取ったら、常に依頼を完遂するのが俺だ」みたいなことを言っていた。テニスやゴルフは打つ前にテイクバックを行い、球を打ち、フォロースルーをしっかり行う。このイメージで覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オッペンハイマー 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

続 夕陽のガンマン MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版 [Blu-ray]

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, イーライ・ウォラック, イタリア, クリント・イーストウッド, スペイン, リー・ヴァン・クリーフ, 監督:セルジオ・レオーネ, 西ドイツ, 西部劇, 配給会社:アーク・フィルムズLeave a Comment on 『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』 -20世紀最高傑作のひとつ-

『 デューン 砂の惑星 PART2 』 -チャニがあまりにも可哀そう-

Posted on 2024年3月28日 by cool-jupiter

デューン 砂の惑星 PART2 65点
2024年3月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ティモシー・シャラメ ゼンデイヤ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

 

『 DUNE デューン 砂の惑星 』の続編。大学開講前の超絶繁忙期なので簡易レビュー。

あらすじ

ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)は、砂漠の民フレメンの助力を得て、ハルコンネン家に反撃を開始していく。チャニ(ゼンデイヤ)と心を通わせつつも、フレメンの預言にある救世主として振る舞う中で、チャニとの距離は離れていく。そこにハルコンネン家から最強の刺客、フェイド=ラウサが送り込まれ・・・

 

ポジティブ・サイド

前作からのラバーンがどう見てもプロレスラーのパティスタのイメージ通りの脳筋男で、個人的には「うーむ」だったが、今作ではオースティン・バトラー演じるフェイド=ラウサがヴィランとしては良い感じ。超文明を誇る世界観の中で決闘に応じる高貴さと雄々しさ、そして何よりも狂気が感じられて素晴らしい。悪役が輝かないと、主役が輝けない。本作のMVPはフェイド=ラウサで決まり。

 

すべてを失ったポールが、チャニと接近して、しかし逆にすべてを手に入れていく過程でチャニと離れていく。チャニの切なさが言葉ではなく表情やしぐさで痛いほどに伝わってくる。ポリコレ的にはアレだが、男社会で上り詰めていく男を、女は距離をとって眺めるしかないのか。『 グレイテスト・ショーマン 』でもそうだったが、ゼンデイヤはこういう役がよく似合う。

 

ネガティブ・サイド

映像に既視感ありあり。フレメンの居住区などは『 ブレードランナー2049 』とそっくり。宇宙船も『 メッセージ 』を髣髴させるばかり。

 

BGMも、これまた良くも悪くもハンス・ジマーという感じ。

 

『 ゴジラ‐1.0 』で冒頭5分でゴジラが出てきたように、今作も開始5分で巨大サンドワームを出してほしかった。

 

総評

良くも悪くもヴィルヌーヴの作品という感じ。つまり映像美は文句なし。ただ観る側が慣れてきた感があるのは否めない。ただ野望に燃える男と、そんな男から離れていかざるを得ない女というドラマは、陳腐ながらも非常に楽しめた。三作目はいつ公開だろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

None of your business

チャニのセリフだったかな。直訳すれば「あなたの仕事では全くない」だが、実際の意味は「お前の知ったこっちゃない」ぐらいか。割と強めの表現なので言い方と、これを言う相手との関係性には注意のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』
『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, アクション, アメリカ, ゼンデイヤ, ティモシー・シャラメ, 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 デューン 砂の惑星 PART2 』 -チャニがあまりにも可哀そう-

『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

Posted on 2024年3月13日 by cool-jupiter

ソウルメイト 85点
2024年3月10日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ダミ チョン・ソニ ピョン・ウソク
監督:ミン・ヨングン

 

中国映画『 ソウルメイト 七月と安生 』の韓国リメイク。なまなかにリメイクするだけになってしまうのでは・・・という懸念を吹っ飛ばす大傑作に仕上がっている。

あらすじ

少し内気なハウン(チョン・ソニ)は自由なミソ(キム・ダミ)と出会い、やがて二人は無二の親友になっていく。しかし、ハウンがジヌ(ピョン・ウソク)と付き合い始めたことで二人の関係に少しずつ変化が生じて・・・

ポジティブ・サイド

オリジナルが傑作だったので、リメイクしても質が低下するだけでは・・・。鑑賞前はそう感じていたが、とんでもない。残すべきところは残し、変えるべきところは変える。傑作が大傑作に生まれ変わった。

 

話の大筋は原作と同じ。ただし、大きな変更もある。原作では七月と安生の二人の友情がネット小説によって表現されていたが、本作では小説を絵画に置き換えた。これによって本作はいきなりミソの巨大な肖像画を見せられることになる。つまり二人の友情、その産物が一気に可視化される。原作では文字だったものが、その後の映像によって雄弁に語られたが、本作ではそれを一気にビジュアル化した。正直なところ「いきなりこんなもの見せて大丈夫か?壮絶なネタバレでは?」と怪訝にすら感じたが、これは完全に杞憂だった。というか、小説を絵画にすることで、終盤のドラマがこれほど泣けるものになるとは・・・

 

キム・ダミはチョウ・ドンユイに勝るとも劣らぬ演技でミソを好演。子役もどこで探し出してきたのか、キム・ダミにそっくり。それにしても高校生から20代後半ぐらいまでを全く違和感なく演じ分けるキム・ダミやチョン・ソニの演技力の高さよ。もちろんそれを演出するミン・ヨングン監督の手腕もあるのだろうが、日本で本作をリメイクできるだろうか。ミソが河合優実で、ハウンが南沙良?監督は今泉力哉または三宅唱とか?

 

閑話休題。オリジナルでは七月はいつもボーイフレンドの自転車に二人乗りしていたが、今作のハウンはいつもミソの原付の後ろに乗っている。この違いは大きいと感じた。特に中盤のとある大きな出来事の後、いつも二人一緒だったミソとハウンだったはずが、ミソはハウンとジヌをある意味置き去りにして先に帰ってしまう。これがその後の二人の関係性を何よりも雄弁に物語っていた。

 

その後、済州島を出ることになったミソと済州島に残ることになったハウン。オリジナルを忠実になぞりつつも、わずかな脚色を施している。印象的なのはミソという名前が漢字では微笑となるところ。常に明るく笑顔をたたえていたミソが、思わぬタトゥーを彫っていたり、あるいは一人暮らししていたアパートの壁にほんのちょっとした落書きをしていたり。本人が語らずとも、それらがミソの心情を見事に代弁していた。物語るオリジナルから、シネマティックなリメイクへ。この脚本家、相当な手練れ。

 

その後、再会を祝した二人だったが、離れて過ごした間に際立つようになってしまった考え方や行動様式から仲違いへ。このあたりも原作に忠実ながら、しかし巧みに換骨奪胎している。それでも離れられない二人。原作でも光と影の関係に言及されていたと記憶しているが、ある時から常に自分の先へと歩いていくミソに対し、ハウンはついに自分でも別世界へ飛び出していく。今まで影だった自分が、今度はミソを影にしてしまう。

 

ここで二人が小さな頃から対照的な絵を描いてきたことが大いなる伏線となって活きてくる。抽象的な絵を描くミソと極めて写実的な絵を描くハウン。この二人の絵が交わる瞬間のドラマに涙を流さずにはいられようか。絵を描くということが、これほどの深い愛情表現になるのか。絵を描くという行為が、これほど深い対象理解につながるのか。そして絵を描くということが、これほど自分の心の中を映し出すものなのか。冒頭で大写しされるミソの肖像画が、まったく違った意味を帯びて迫ってくる最終盤の展開に涙が止まらなかった。間違いなく2024年のベストである。

 

ネガティブ・サイド

あのケーキは一体どこから出てきたのだろうか。

 

原作では「ダサい下着」を思いっきりカメラに映し出していたが、本作はそこを回避。うーむ・・・

 

総評

ミン・ヨングン監督の情報がほとんど見当たらないのだが、いったい何者なのだろう。日本では漫画のドラマ化の問題点が浮き彫りになって久しいが、原作を脚色するなら原作を超えなければ意味がない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバラマ

使ってはいけない韓国語の一つ。意味はクソ野郎。劇場の照明点灯後のJovian妻の第一声は「ジヌはクソ野郎やな」だった。クソ野郎=シバラマである。この言葉が実際にどのように使われるのかを知るには『 息もできない 』を鑑賞のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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