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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:クロックワークス

『 #彼女が死んだ 』 -社会の闇の一端を覗く-

Posted on 2025年1月19日 by cool-jupiter

#彼女が死んだ 70点
2025年1月18日 kino cinéma 心斎橋にて鑑賞
出演:ピョン・ヨハン シン・ヘソン イエル
監督:キム・セフィ

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

不動産業を営むク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)は顧客から預かった鍵で家に入り込み、最も不要そうなものを失敬するという趣味の持ち主。彼はある時、インフルエンサーとして振る舞うハン・ソラ(シン・ヘソン)に興味を抱く。そのハン・ソラが引っ越しするということで、ジョンテは部屋の鍵を託される。留守を見計らって侵入したジョンテが見たのは、腹部から大量出血してピクリとも動かないソラだった・・・

 

ポジティブ・サイド

不動産屋に対しての信頼がゼロになりそうな冒頭ながら、他人のスマホやSNSを覗き込む主人公ジョンテに対して、徐々にシンクロしてしまうという現代人は多いのではないだろうか。そのような巧みな掴みから、ハン・ソラの死亡シーンの遭遇、そして消えた死体と刻々送られてくる謎めいた脅迫状と、中盤まで怒涛のスピードで展開される疾走感は、まさしく韓国映画。

 

中盤以降、ハン・ソラの見えざる顔が見えてくるあたりから、社会の闇が浮かび上がってくる。そんな中でも、極めて異質な個人として浮かびあってくるのは・・・おっと、ここから先は言ってはいけない。

 

中盤から登場するオ刑事の存在感が素晴らしい。本邦だと『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』で北川景子が長髪をくくりもせずに捜査現場に出向いていたが、無能揃いで知られる韓国警察も、女性刑事となるとリアリティが格段に増す。いかつい顔、長身、肩幅広い、気が強い、結構な武闘派という刑事で、彼女の登場シーンは一か所を除いて全てが絵になっていた。

 

それにしても韓国映画は、女優の発狂シーンを描くのが本当にうまい。人間の感情を視覚的に表現することにかけては韓国の俳優陣は世界でもトップレベルではないだろうか。そしてエンタメ作品ながらも、最後に苦味を残すのも『 目撃者 』同様に、韓国映画のお約束。主演の二人は『 エンドレス 繰り返される悪夢 』でも共演していた。確かに、二人ともうっすらと記憶にあった。

 

ネガティブ・サイド

お客さんから預かっている鍵の保管方法が緩すぎではないだろうか。ダイヤル式の金庫に入れておいてもいいと思うのだが。

 

詳しくは書けない(何故なら詳しく描写されていない)が、現代社会において取り扱いに厳重な注意を要する二つの対象が abuse されていたというのが本作の一つの肝。しかし、その部分の描写が必要最低限を下回っているように見えた。『 トガニ 幼き瞳の告発 』とまでは言わないが、1~2分で良いので、とある対象への虐待シーンは入れてほしかった。

 

とある殺人シーンがあまりにも非合理的。滑車が使われていたわけでもあるまいに、あそこまで物理的な力が作用するか?

 

総評

陰鬱かつ凄惨なサスペンスである。以下、ビミョーにネタバレっぽく言うなら、ビル・S・バリンジャーの小説『 歯と爪 』と、デビッド・フィンチャー監督の映画『 ゴーン・ガール 』、アニーシュ・チャガンティ監督の『 search サーチ 』に韓国テイストを加えたような感じと言えば伝わるだろうか。つまり、古典的・典型的な要素を盛り込みながらも、現代風にアップデートされた作品ということ。観て損はしない一作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Love what you do

スティーブ・ジョブズのスピーチの一節として知られる。当時はこれをどう訳すのかで英語界隈で結構な議論が巻き起こった。loveは愛せ、大好きになれ、惚れ込め、などで良いのだろうが、what you do を果たして仕事と訳してよいのかどうか。文脈的には仕事で問題ない。ただし、 What do you do? = お仕事は何ですか?と暗記するのは間違い。中学の同級生と10年ぶりに再会して、「久しぶり、今は何してるの?」というのが、What do you do?の意味。答えは「大学院に通ってる」かもしれないし、「サラリーマンやってる」かもしれないし、「バイトしながら投資の勉強してる」かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アット・ザ・ベンチ 』
『 港に灯がともる 』
『 怪獣ヤロウ! 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, B Rank, イエル, サスペンス, シン・ヘソン, ピョン・ヨハン, 監督:キム・セフィ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 #彼女が死んだ 』 -社会の闇の一端を覗く-

『 ソウルの春 』 -勝てば官軍負ければ賊軍-

Posted on 2024年9月1日 by cool-jupiter

ソウルの春 75点
2024年8月31日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チョン・ウソン ファン・ジョンミン
監督:キム・ソンス

 

Jovianの生年に実際に韓国で起こった歴史的事件をモチーフにした作品ということでチケット購入。

あらすじ

朴正煕大統領が暗殺された。実行犯を取り調べの責任者に任命されたのは、韓国陸軍内で隠然たる勢力を誇るハナ会のチョン・ドゥグァン(ファン・ジョンミン)。しかし彼は自身の権勢拡大のために陸軍参謀総長を拉致し、クーデターを画策する。首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)はチョンの野望を阻止するために立ち上がるが・・・

 

ポジティブ・サイド

140分超ながら、体感では90分ほど。ひと息つける場面が一切ないままに物語は進行していく。登場人物は多いものの、クーデターを起こして権力を握りたいチョン・ドゥグァン、それを阻止したいイ・テシンの二人の名前だけ押さえておけばよい。

 

クーデターの計画、参謀総長の拉致、大統領からの裁可、指揮下の精兵部隊のソウルへの召喚とそれを阻止するための別の精鋭部隊の召喚と、わずか一夜の中で状況が刻一刻と変化していく。

 

ファン・ジョンミン演じるクーデター首謀者のチョン・ドゥグァンは人間味に溢れており、豪放磊落な一面と繊細な一面を併せ持っている。大人物のようでもあり、小者のようにも映るのだが、かかる魅力が彼をハナ会のトップに、ひいてはクーデター勢力のトップに君臨させている。一度決めたら最後までとことん行く男で、情勢の変化に一喜一憂する仲間や先輩を時に脅迫し、時に一喝し、時に弱みを見せることで取り込んでいく。韓国版の木下藤吉郎とも言うべき人たらしである。

 

対するイ・テシンは職務に忠実で群れることを潔しとしない孤高の軍人。韓国軍の上層部が情勢の変化に一喜一憂し、時に日和見を決め込もうとする中でも、首都防衛に専心する。その高潔さ故に従う者、従えない者があぶり出され、当時の韓国軍の体質や、一枚岩になれない体制がよくよく見て取れる。

 

クライマックスチョン・ドゥグァンとイ・テシンの対峙の迫力には息を呑んだ。そして対決の結末には鳥肌が立った。というか、途中で気付かなかった俺はアホだ。冒頭ではっきり史実を脚色しているという注意書きがあったではないか。クーデター側の首謀者二人の名前をちょっと変えれば・・・ 本作は軍事政権時代を反省・批判している一方で、「この国をなんとかしたい」という強烈な野望を抱く政治家の不在を嘆いているようにも受け取れる。おこぼれに与ろうと権力に群がる小物は不要だという韓国映画界から韓国政治へのメッセージに思える。単なる善悪の対立にとどまらない深みを生み出すのは、キム・ソンス監督の面目躍如といったところか。

 

クーデターというと1991年のソ連崩壊を覚えているが、韓国もよく似た歴史をたどっていたのか。民主主義を自力で得た国と、民主主義を与えられた国。どちらが幸せなのだろうと考えさせられる。

 

ネガティブ・サイド

漢江にかかる橋を封鎖するためにテシンが「市民の力も借りねば」と言うが、そのシーンこそカットせずに盛り込むべきではなかったか。また、警察は何をしていたのだろう。ハナ会の人脈で警察も抑えていたという描写があれば、さらに説得力や緊迫感は増したはず。

 

最後のバリケードを挟んでの対峙シーン前に市民の存在に言及するシーンがあったが、これは不要だったか。もしここで市民に言及するなら、橋の封鎖のシーンで市民の協力を描くべきだし、それを描かなかったのなら、最後の対決シーンでも市民の描写は不要だった。

 

総評

やはり韓国映画の本領は歴史の闇、社会の闇に迫るスリラー作品だなとつくづく感じる。次にTSUTAYAでレンタルするのは『 KCIA 南山の部長たち 』、その次は『 光州5・18 』かな。この後味の悪さは『 トガニ 幼き瞳の告発 』のそれに比肩する。とことんはじけたアホな映画か、とことん出来の悪い映画を観て気分をリセットしたくなる。そんな韓国映画の怪作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

アンジャ

これも韓国映画やドラマでお馴染みの表現。意味は「座って」で、インフォーマルな表現。しばしばアンジャアンジャのように使われている。日本語でも「座って座って」と二回言うのと同じ感じ。階級や軍人歴の違いはあれど、腹を割って話をしようとする姿勢を常に打ち出すチョン・ドゥグァンが多用していた。そういう意味では政治家向きの軍人だったのかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 エイリアン:ロムルス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, チョン・ウソン, ファン・ジョンミン, 歴史, 監督:キム・ソンス, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ソウルの春 』 -勝てば官軍負ければ賊軍-

『 壁越しの彼女 』 -Love is blind-

Posted on 2024年8月28日 by cool-jupiter

壁越しの彼女 60点
2024年8月25日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:イ・ジフン ハン・スンヨン
監督:イ・ウチョル

 

台湾ロマンスの次は韓国ラブコメ。

あらすじ

歌手を夢見るスンジン(イ・ジフン)は安アパートの最上階に引っ越しする。しかし、その隣には住人をあの手この手で追い出してきたラニ(ハン・スンヨン)が住んでいた。互いに譲らない二人は、やがて生活音を出しあう時間帯を取り決めるが・・・

ポジティブ・サイド

序盤のホラー調から一転してコメディ路線に突っ走り、その後は少しシリアスなお仕事ムービーに。最後はちゃんとしたロマンス路線に着地という具合に、短時間の中でかなり物語のトーンが変わる。しかし、そのことに違和感を覚えず、むしろどんどん物語世界に引き込まれるのは、主要キャラクターの魅力と壁を隔てた顔を知らない二人の奇妙なロマンスの行き着く先を見たいという好奇心ゆえ。

 

歌手を目指すと言いながら、どこか本腰を入れられないスンジンと、ユーモラスに、時にシリアスに向き合ってくれる竹馬の友たちが素晴らしい。男の友情かくあるべし。一人黙々と、しかし騒々しく創作に打ち込むラニの過去にあった悲しい裏切り。二人が急速に距離を縮めながらも、スンジンの善意からの行動がすべてをぶち壊してしまう、そのお下劣な方法と、それがもたらす深刻な結果の落差は、さすが韓国映画。邦画では絶対に描けない展開を軽々と描写してくれる。

 

『 her 世界でひとつの彼女 』にリアリティを感じなかった向きも、本作なら受け入れられるのではないか。恋愛に壁はつきものだが、本物の壁で隔てられたラブロマンスというのは、おそらく世界的にも希少価値が高いはず。観ればハラハラドキドキからホンワカまで味わえる、韓国ラブコメの佳作である。

ネガティブ・サイド

ラニの体調不良を匂わせるシーンが序盤から出てくるが、これがかなりの拍子抜け。少しネタバレ気味になるが、邦画の秀作『 夜明けのすべて 』のような描写がほしかったと思う。あるいは、薬を飲むシーンは全カットでも良かったかもしれない。

 

スンジンと竹馬の友たちとの交流は男の友情の極致と言えるものだが、なぜ彼らがそれほどプー太郎状態のスンジンを純粋に応援できるのかが不可解と言えば不可解。少年時代、あるいは大学生時代あたりでスンジンが思いがけない形で優しや、または逞しさを見せた、という短いエピソードがあっても良かった。

 

総評

おそらくコロナ禍の最中に構想された作品。オンライン飲み会ならぬ壁隔て食事会は、一歩間違えばギャグを通り越して意味不明な絵となるが、コロナを経験したことでこのようなシーンも可能になった。このあたりの作劇術が見え隠れするのも面白い。日本だと本作にかなり先行する『 おと・な・り 』がシチュエーション的に近い。が、感情の表出方法が日韓ではまったく異なるので、そのあたりの国民性の違いを微笑ましく思えるかどうかが評価の分かれ目になりそう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

platonic love

古代ギリシャの哲学者プラトン的な愛のこと。人間は元々アンドロギュヌス=両性具有だった。それが男と女に分かれてしまったので、両者は互いを求めあうようになったというもの。これがエロス。プラトニック・ラブはこの感性そのものを指す。すなわち実際に一つになるという行為ではなく、一つになりたいという願望、その心の在りようを「愛」と呼んでいるわけだ。イデアという理想世界を構想したプラトンらしいと言えばプラトンらしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 ソウルの春 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ジフン, ハン・スンヨン, ラブコメディ, 監督:イ・ウチョル, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 壁越しの彼女 』 -Love is blind-

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

Posted on 2024年3月13日 by cool-jupiter

ソウルメイト 85点
2024年3月10日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ダミ チョン・ソニ ピョン・ウソク
監督:ミン・ヨングン

 

中国映画『 ソウルメイト 七月と安生 』の韓国リメイク。なまなかにリメイクするだけになってしまうのでは・・・という懸念を吹っ飛ばす大傑作に仕上がっている。

あらすじ

少し内気なハウン(チョン・ソニ)は自由なミソ(キム・ダミ)と出会い、やがて二人は無二の親友になっていく。しかし、ハウンがジヌ(ピョン・ウソク)と付き合い始めたことで二人の関係に少しずつ変化が生じて・・・

ポジティブ・サイド

オリジナルが傑作だったので、リメイクしても質が低下するだけでは・・・。鑑賞前はそう感じていたが、とんでもない。残すべきところは残し、変えるべきところは変える。傑作が大傑作に生まれ変わった。

 

話の大筋は原作と同じ。ただし、大きな変更もある。原作では七月と安生の二人の友情がネット小説によって表現されていたが、本作では小説を絵画に置き換えた。これによって本作はいきなりミソの巨大な肖像画を見せられることになる。つまり二人の友情、その産物が一気に可視化される。原作では文字だったものが、その後の映像によって雄弁に語られたが、本作ではそれを一気にビジュアル化した。正直なところ「いきなりこんなもの見せて大丈夫か?壮絶なネタバレでは?」と怪訝にすら感じたが、これは完全に杞憂だった。というか、小説を絵画にすることで、終盤のドラマがこれほど泣けるものになるとは・・・

 

キム・ダミはチョウ・ドンユイに勝るとも劣らぬ演技でミソを好演。子役もどこで探し出してきたのか、キム・ダミにそっくり。それにしても高校生から20代後半ぐらいまでを全く違和感なく演じ分けるキム・ダミやチョン・ソニの演技力の高さよ。もちろんそれを演出するミン・ヨングン監督の手腕もあるのだろうが、日本で本作をリメイクできるだろうか。ミソが河合優実で、ハウンが南沙良?監督は今泉力哉または三宅唱とか?

 

閑話休題。オリジナルでは七月はいつもボーイフレンドの自転車に二人乗りしていたが、今作のハウンはいつもミソの原付の後ろに乗っている。この違いは大きいと感じた。特に中盤のとある大きな出来事の後、いつも二人一緒だったミソとハウンだったはずが、ミソはハウンとジヌをある意味置き去りにして先に帰ってしまう。これがその後の二人の関係性を何よりも雄弁に物語っていた。

 

その後、済州島を出ることになったミソと済州島に残ることになったハウン。オリジナルを忠実になぞりつつも、わずかな脚色を施している。印象的なのはミソという名前が漢字では微笑となるところ。常に明るく笑顔をたたえていたミソが、思わぬタトゥーを彫っていたり、あるいは一人暮らししていたアパートの壁にほんのちょっとした落書きをしていたり。本人が語らずとも、それらがミソの心情を見事に代弁していた。物語るオリジナルから、シネマティックなリメイクへ。この脚本家、相当な手練れ。

 

その後、再会を祝した二人だったが、離れて過ごした間に際立つようになってしまった考え方や行動様式から仲違いへ。このあたりも原作に忠実ながら、しかし巧みに換骨奪胎している。それでも離れられない二人。原作でも光と影の関係に言及されていたと記憶しているが、ある時から常に自分の先へと歩いていくミソに対し、ハウンはついに自分でも別世界へ飛び出していく。今まで影だった自分が、今度はミソを影にしてしまう。

 

ここで二人が小さな頃から対照的な絵を描いてきたことが大いなる伏線となって活きてくる。抽象的な絵を描くミソと極めて写実的な絵を描くハウン。この二人の絵が交わる瞬間のドラマに涙を流さずにはいられようか。絵を描くということが、これほどの深い愛情表現になるのか。絵を描くという行為が、これほど深い対象理解につながるのか。そして絵を描くということが、これほど自分の心の中を映し出すものなのか。冒頭で大写しされるミソの肖像画が、まったく違った意味を帯びて迫ってくる最終盤の展開に涙が止まらなかった。間違いなく2024年のベストである。

 

ネガティブ・サイド

あのケーキは一体どこから出てきたのだろうか。

 

原作では「ダサい下着」を思いっきりカメラに映し出していたが、本作はそこを回避。うーむ・・・

 

総評

ミン・ヨングン監督の情報がほとんど見当たらないのだが、いったい何者なのだろう。日本では漫画のドラマ化の問題点が浮き彫りになって久しいが、原作を脚色するなら原作を超えなければ意味がない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバラマ

使ってはいけない韓国語の一つ。意味はクソ野郎。劇場の照明点灯後のJovian妻の第一声は「ジヌはクソ野郎やな」だった。クソ野郎=シバラマである。この言葉が実際にどのように使われるのかを知るには『 息もできない 』を鑑賞のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, キム・ダミ, チョン・ソニ, ヒューマンドラマ, ピョン・ウソク, 監督:ミン・ヨングン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

『 VESPER ヴェスパー 』 -ディストピアSFの標準的な作品-

Posted on 2024年1月27日 by cool-jupiter

VESPER ヴェスパー 60点
2024年1月21日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:ラフィエラ・チャップマン
監督:クリスティーナ・ブオジーテ ブルーノ・サンペル

 

簡易レビュー。

あらすじ

生態系が破壊され、特権階級のみが城塞都市シタデルに暮らし、それ以外の人間はわずかな資源だけを頼りに生きていた。寝たきりの父と暮らす少女ヴェスパー(ラフィエラ・チャップマン)は、ある日、森の中で倒れている女性カメリアを見つけて・・・

ポジティブ・サイド

全編を覆うおどろおどろしい雰囲気は悪くない。昔のドキュメンタリー番組『 フューチャー・イズ・ワイルド 』的だが、危険な植物が繁茂し、菌類が地を覆い、殺人昆虫が跋扈する世界という意味では『 風の谷のナウシカ 』にも近いと感じた。

 

主人公ヴェスパーを演じたラフィエラ・チャップマンの機智とサバイバル能力、そして子どもゆえのフィジカルな弱さとメンタルの弱さが、平板に感じられる物語への絶妙な味付けになっていた。

 

メカメカしいと思っていたガジェットが、実はクローネンバーグの『 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 』ばりにバイオバイオしていたりと、人造人間やら粘菌が登場する世界観とも一致していて良い感じ。

 

最後のシーンの美しさこそ本作のメッセージ。ぜひ vesper とは何を意味するのか、調べてみよう。

 

ネガティブ・サイド

食用可能な植物の種子の喪失およびその対策としての保存はすでに各国で始められている。その植物の再繁殖を一回に限定するという遺伝子操作も不可能ではないだろう。実際に繁殖不可能な子孫を残す蚊をリリースして、マラリアを撲滅しようという計画も以前からある。分からないのは、ヴェスパーがそれだけのバイオテクノロジーの知識を一体どうやって学んだのかということ。カメリアを疑似的な母親だ思い、色々な鳥や動物の鳴き声を教わるシーンから、生物学の基本的なテキストやデータベースにヴェスパーがアクセスできなかったことは明白。だったらどうやって分子生物学を学んだのか、一切説明がつかない。

 

総評

放っておくとこうなりますよ、という非常にディストピアSFらしいSFを味わえた。どこまでいっても壁、そして階級差を作ってしまう人間と、軛から解き放たれた大自然のコントラストが映える作品。静謐な雰囲気の中にもスリルとサスペンスが織り交ぜられている。評価イマイチのようだが、個人的には面白いと感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

unlock

劇中で、とある遺伝子に秘められた秘密を解き放つ際に unlock という表現が使われていた。見ての通り、lock = 鍵をかけるが un によって否定されている。つまり、鍵をかけた状態が解放されるという意味となる。ゲームなどでアイテムや能力がアンロックされる、などのようにカタカナでも定着しつつある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 みなに幸あれ 』
『 ザ・ガーディアン 守護者 』
『 哀れなるものたち 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, フランス, ベルギー, ラフィエラ・チャップマン, リトアニア, 監督:クリスティーナ・ブオジーテ, 監督:ブルーノ・サンペル, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 VESPER ヴェスパー 』 -ディストピアSFの標準的な作品-

『 コンクリート・ユートピア 』 -人間社会の汚穢を描く-

Posted on 2024年1月12日 by cool-jupiter

コンクリート・ユートピア 70点
2024年1月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ビョンホン パク・ソジュン パク・ボヨン
監督:オム・テファ

 

簡易レビュー。

あらすじ

突如発生した天変地異により、韓国社会は崩壊した。唯一崩落しなかった皇宮アパートには生存者が押し寄せるが、住民は団結し、彼らを排除することを決定。住民のリーダーとして、冴えない中年のヨンタク(イ・ビョンホン)が選ばれるが・・・

ポジティブ・サイド

韓国の苛烈な経済格差および移民問題を痛烈に皮肉った序盤、そして民主主義の正の面と負の面が露になる中盤、そして閉鎖・孤立したコミュニティが民主主義の負の面から自壊していく終盤と、非常にテンポよく物語が進んでいく。

 

韓国映画あるあるなのだが、まったくもって普通の一般人に見える人が、突如発狂するシーンが何度もあって、緊張感も持続する。男性のほとんどが兵役経験者ということで、住民とその他の争いにもリアリティがある。

 

能登半島地震の被災現場の本当の悲惨さは知るべくもないが、「人間社会はこうあってはならない」という韓国映画のメッセージは、ある意味でこれ以上ないタイミングで届けられたと思う。

 

ネガティブ・サイド

細かいところだが、男性陣の誰もひげが伸びないのは何故?韓国成人男性はもれなくひげの永久脱毛済み?そんなはずはないと思うが・・・

 

ラストは正直なところ、賛否両論あるだろう。自分はやや否かな。最後まで狂気で突っ走ってほしかった。

 

総評

韓国映画の佳作。災害ものでは人間の本性があらわになるが、韓国映画はそこで人間のダーティーな面を映し出すことを恐れないところが素晴らしい。イ・ビョンホン以外のキャストの演技力も申し分なく、いつも同じメンツで映画を作っている邦画界とは役者層の厚さが違うところが羨ましい。2010年代ほどではないにしろ、2024年も韓国映画には期待して良さそうである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

apartment

いわゆるマンション、集合住宅を指す。ちなみに英語の mansion は大邸宅を指す。apartmentは一室を指し、集合住宅全体は apartment house と言う。一応区別して覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』
『 ブルーバック あの海を見ていた 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ビョンホン, サスペンス, パク・ソジュン, パク・ボヨン, パニック, 監督:オム・テファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 コンクリート・ユートピア 』 -人間社会の汚穢を描く-

『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

Posted on 2023年11月22日 by cool-jupiter

デシベル 65点
2023年11月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・レウォン
監督:ファン・イノ

 

韓国映画お得意のサスペンスものということでチケット購入。

あらすじ

とある家に爆弾が届けられ爆発。そのニュースを知った潜水艦の元副長カン・ドヨン(キム・レウォン)のもとに犯人からの電話が入る。次のターゲットがサッカースタジアムだが、そこに仕掛けられた爆弾は一定以上の音量に反応すると起爆までの時間が半減するというもので・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の潜水艦シーンは『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』そっくり。もちろん真似たわけではないだろうが、韓国映画はハリウッド映画的な文法を忠実に実行することがある。この時点で期待が盛り上がってきた。

 

一年後、謎の爆破事件が勃発。そこから元副長のカン・ドヨンの苦闘が始まる。途中でなし崩し的に仲間になる記者のオ・デオがめちゃくちゃ良い奴。韓国映画界には味のある三枚目がよく出てくるが、彼もそんな感じ。コミックリリーフが存在するおかげで、そのコントラストとしての爆弾テロリストの恐怖が倍増している。

 

一定以上のデシベルを感知すると爆弾のカウントダウンの残り時間が半減するというのはなかなか怖い。日常の街中の声や音がそのまま凶器と化すからだ。潜水艦の隠密性も音を出さないことから得られるので、潜水艦乗りのカン・ドヨンが音に苛まれるのは観ていて本当に痛々しかった。

 

謎の爆弾魔が犯行に及ぶ動機が明らかになるにつれ、サスペンスが盛り上がる。真相を知ったところから、さらにもう一歩踏み込んでその深層部分を非常に硬質なドラマとして見せつけてくる。ストーリーはカン・ドヨンの家族をも巻き込んで進む。奥さんと娘がとことん追いつめられる本作だが、逆に新しい家族観を提示したとも言える。記者オ・デオが最終盤に放つ質問に対するドヨンの答えは、その場では語られない。しかし、彼の思いが最後の最後に回想される。子曰く「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」。人間、ドヨンのように強く生きねばならんなと思わされた。

 

ネガティブ・サイド

爆弾が絡むシークエンスはすべて緊張感がみなぎっているが、終盤の肉弾アクションになると急にクオリティが低下する。細かいカットの連発で、ここはもっと頑張れただろうと思う。軍人同士の格闘戦で、韓国の成人男性のほとんどが兵役経験者ということを考えれば、もっと攻めた演出を監督には施してほしかった。

 

明らかに無関係な一般人をも巻き込むような爆弾設置は、犯人の思想信条上どうだろうか。カン・ドヨンの関係者を徹底的に排除しようとする方が、彼の失ったものとのバランスがとれていると思うのだが。

 

最後に、これは映画の中身とは関係ないが、一言だけ。なんで日本の配給会社や宣伝会社は販促物で盛大なネタバレをかますの?パネルのビジュアルが全部ネタバレしているではないか。のみならず、某映画情報サイトもキャラクター紹介欄でネタバレをかます始末。いや、本作はミステリではないが、だからといってサイトや販促物でネタバレをしていい理由は一つもない。日本の宣伝・配給会社にはもう少し考えてほしいものだ。

 

総評

韓国映画らしいサスペンス。警察をとことんコケにすることに定評がある韓国映画界だが、本作では軍上層部の怠慢や無責任さも堂々と批判している。潜水艦ものだと本邦では『 沈黙の艦隊 』が上映中だが、自衛隊は映画製作にきょぅ力してくれるもので、映画によって批判される対象ではない。それが良いかどうかはさておき、政治や軍事、司法を容赦なくエンタメの形で批判する韓国映画と日本映画のコントラストがここにも見て取れる。単なるサスペンスとしてもなかなかの面白さ。『  白鯨との闘い 』的なサスペンスも楽しめる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

配偶者への呼びかけに使われる。男女どちらが使っても良い。日本語にすると「あなた」や「ねえ」あたりになるだろうか。ドラマでもしょっちゅう聞こえるし、なんなら日本人・韓国人の夫婦YouTuberもよく使っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 花腐し 』
『 首 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・レウォン, サスペンス, 監督:ファン・イノ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

Posted on 2023年10月5日 by cool-jupiter

ハント 75点
2023年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ジョンジェ チョン・ウソン
監督:イ・ジョンジェ

 

簡易レビュー。

あらすじ

1980年代。安全企画部の海外班長パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内班長キム・ジョンド(チョン・ウソン)は、機密情報が北朝鮮に漏洩していることを知る。そして組織内にスパイがいると告げられる。パクとキムは互いのチームを探り始めるが・・・

ポジティブ・サイド

1983年という、韓国民主化前夜の時代。その3年前に「光州事件」という、韓国版の天安門事件とも言うべき事態が引き起こされており、アメリカ系韓国人が韓国大統領の訪米に対して抗議のデモを起こすところから物語が始まる。

 

そこで勃発する要人暗殺未遂事件。パクとキムの二人は反目しあいながらも事件を解決。しかし謎のスパイ「トンニム」によって次々に機密情報が漏洩。一息つく暇もなく、二人はトンニムの追跡に乗り出すが成果なし。このあたりの展開の疾走感がたまらない。元々浅からぬ因縁のある二人だが、その過去の語られ方がめちゃくちゃ。まるで昭和の任侠映画のよう。というか時代背景的に昭和か。

 

二人のスペシャリストの対決は、それこそハリウッドでは撮り尽くされた印象があるが、そこに北朝鮮というファクターを混ぜるだけでサスペンスとミステリのレベルが一段上がる。トンニムとは誰か?パクとキムの捜査と虚々実々の駆け引きにぐいぐいと引き込まれる。本作が上手いのは、トンニム探しをゴールとするのではなく、そこから先に更なるクライマックスを持ってくるところ。冷酷非情な諜報員と情に厚い面を併せ持つ二人の男の極限の対決の結末には茫然自失。

 

韓国のみならずアメリカ、日本やタイをも破壊しつくす気か?と思わせる作品。と思いきや、撮影はすべて韓国内で完結したとのこと。国策で映画を作っている国は違いますなあ・・・

 

ネガティブ・サイド

全編を通じてまさにストーリーが疾走するが、説明不足の感も否めない。特に韓国近現代史の知識がある程度ないと、キム班長の苦悩の回想シーンの意味を理解できないだろう。当時の韓国の置かれていた政治的状況をもう少し上手く物語の展開の中で自然に説明できなかっただろうか(Jovian妻はここでつまずいていた)。

 

最終盤の怒涛の展開の中で、韓国の政府組織はどれだけ北朝鮮スパイに跳梁跋扈を許しているのか?というシーンがある。ここだけは、ちょっと北朝鮮の脅威を過大に描き過ぎだと感じた。

 

総評

こりゃまた血生臭い韓国映画。血の臭いだけではなく、男臭さもムンムンと漂ってくる。『 ビースト 』や『 ただ悪より救いたまえ 』といった、男二匹の対決をテーマにした作品が好きだという向きはチケット購入をためらってはならない。そうそう、中盤に思わぬ大スターが出演して、ケレンミたっぷりの演技を見せてくれる。これは嬉しい不意打ちである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

インミン

劇中で突如登場する大物俳優がこの言葉を何度も口にする。意味は「人民」である。「人民のため」などと為政者が口にする時は、だいたい嘘をついている時だと思っていい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ほつれる 』
『 まなみ100% 』
『 オクス駅お化け 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, イ・ジョンジェ, チョン・ウソン, 監督:イ・ジョンジェ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

『 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 』 -微グロ耐性は必須-

Posted on 2023年8月21日 by cool-jupiter

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 50点
2023年8月19日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:ビゴ・モーテンセン レア・セドゥ クリステン・スチュワート
監督:デビッド・クローネンバーグ

クローネンバーグ作品は『 スキャナーズ 』、『 ザ・フライ 』、『 イグジステンズ 』だけ観た。

 

あらすじ

人類は痛みという感覚をなくし、新しい臓器が発生するという病のある未来に暮らしていた。加速進化症候群に侵されたソール・テンサー(ビゴ・モーテンセン)は相棒のカプリース(レア・セドゥ)と共に、内臓にタトゥーを施して、それを摘出するというショーで人気を博していた。しかし、こうした進化を好ましくないと感じる政府は、ティムリン(クリステン・スチュワート)を派遣し、ソールとカプリースの動向を注視していて・・・

ポジティブ・サイド

内臓摘出ショーを新しい形のセックスだと捉えるのは凄い視点だと感じた。たしかに人類の進化が悪い方向に進んでしまえば『 JUNK HEAD 』のような世界が到来するだろう。本作は現代と『 JUNK HEAD 』の中間地点の世界を提示しているように感じられた。

 

臓器の摘出=新しい形のセックスという見方も面白い。恥骨をぶつけ合うのではなく、互いを切り刻み、血を流すソールとカプリースの姿は確かに官能的と言えなくもない。レア・セドゥはヌードを披露。クローネンバーグに情念を一身に受け止めてしまったか。臓器摘出マシーンを操作する手つきのエロティシズムを表現できる女優はなかなかいないだろう。

 

進化する人類と、それを好ましくないと見なす政治的権力の対立という構図はSFでは珍しくもなんともないが、プラスチックを消化してしまう臓器の存在が、俄然本作を興味深いものにしている。言うまでもなくプラスチックによって汚染されてしまった海域とそこに住まう生物、さらにマイクロプラスチックに汚染されていると言われる現代人をグロテスクに映し出しているわけだ。悪趣味な変態映画人が鬼才と呼ばれる所以である。

ネガティブ・サイド

英語で一言で評するなら graphic となるだろうか。ビゴ・モーテンセン演じるソールの内臓摘出ショーは悪趣味の一語に尽きるし、臓器にもリアリティはない。骨や筋肉、腹膜、脂肪が一切ないのは、低予算映画ゆえか?製作やキャスティングを見るに、予算不足とは考えづらいが。

 

あの妙な食事介助椅子は何なのだろうか。結局自分で食べてるし。加速進化症候群患者に反応してあのように動くようだが、呈示される判断材料がちょっと少なすぎではないだろうか。

 

It’s time to listen. のダンサーは何のシンボル?痛みに対して悲鳴を上げるべき人体が、もはやその悲鳴を上げることができない云々を表しているのかと思うと、そうでもなく・・・ 特にストーリーに起伏やアクセントを与えるでもなく・・・ 

 

Graphicな作品である一方で、クリステン・スチュワート演じるティムリンがかなり饒舌(=説明好き)だったり、あるいはショーの観客が結構な長広舌を振るったりするのが気になった。『 A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー 』でもバーで延々としゃべる男がいてノイズに感じたが、それと同じだった。

 

総評

間違ってもデートムービーだと思ってはならない。アートな映画だという雰囲気に騙される大学生カップルが出ないことを祈る。『 スキャナーズ 』や『 ザ・フライ 』のような人体破壊に耐性がないと鑑賞は厳しいだろう。上映中の『 ビデオドローム 4K ディレクターズカット版 』も観るべきだろうか。ただ、同僚の急死および会社が欠員補充を当面はしない方針、かつ大学の後期が開講間近ということで土日も半日もしくは全日出勤になりそう。映画観る時間とれるんかな?

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You’d be surprised.

あなたは驚くだろう、というのが直訳だが、実際は文脈によって意味するところが変わる。

X: Cooking seems hard.
「料理は難しそうだ」
Y: You’d be surprised.
「(そんなに難しくないから、実際に料理をしてみれば)驚くかもね」

のように使う。こういうフレーズをサラっと使えるようになれば英会話中級者以上、CEFRでB1+だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, カナダ, ギリシャ, クリステン・スチュワート, スリラー, ビゴ・モーテンセン, レア・セドゥ, 監督:デビッド・クローネンバーグ, 配給会社:STAR CHANNEL MOVIES, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 』 -微グロ耐性は必須-

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