Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: ホラー

『 WEAPONS/ウェポンズ 』 -Where are the children?-

Posted on 2025年12月16日 by cool-jupiter

WEAPONS/ウェポンズ 65点
2025年12月14日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジュリア・ガーナー ジョシュ・ブローリン ケイリー・クリストファー
監督:ザック・クレッガー

 

子どもが消える、というあらすじ以外なにも知らずに鑑賞。メアリ・クラークの『 子供たちはどこにいる 』的なテイストを期待したが、全然別物だった。

あらすじ

深夜2時17分、17人の子どもたちがベッドを抜け出し、夜の闇の中へ走り去っていった。姿を消したのは、みな同じクラスの子たち。そして一人、アレックス(ケイリー・クリストファー)だけが残された。親たちに疑惑の目を向けられた担任教師ジャスティン(ジュリア・ガーナー)は調査を始めるが、街では奇妙な出来事が起こり始め・・・

ポジティブ・サイド

子どもたちが消えたという事象とその後の余波を、街の様々な人間の視点から見つめていく構成が面白い。最初は教師のジャスティン、次に保護者のアーチャー、続いて警察官のポールと視点が目まぐるしく変わっていく。登場人物ごとに同じものを見ていながら、異なる視点からそれを見ているというのが面白い。

 

一人の視点が別の視点に切り替わる際、常に驚きと恐怖をもたらしてくれるのが新鮮。特にハサミが出てくるシーンはかなりの恐さを感じさせてくれた。また、トレイラーでも特徴的だった子どもたちの走り方だが、あれを大人がやるとかなり怖い。そうそう、その人物絡みで『 ミッドサマー 』以上の人体破壊描写があるので、耐性がない人は鑑賞しない方がよい。

 

途中の人物でギャグもしくはコメディ担当のような人物がいるが、これは必要な措置。普通に考えれば17人もの子ども、それも小学生が一斉に消えたのなら、その行先というか潜伏先は・・・おっと、これ以上は無粋か。ただ観ている側としては「普通に考えれば□□は△△だ」と考えるが、その理由や背景が皆目見当がつかない。そこは終盤に明かされるので、楽しみにしてほしい。

 

ネガティブ・サイド

うーむ、それにしても本作も『 シェルビー・オークス 』同様にかなりの竜頭蛇尾。『 フィールド・オブ・ドリームス 』のレイの奥さんが登場してきたあたりから、ストーリーが一気にきな臭くなる。いや、本当はアーチャーが巨大な幻を空に見た瞬間から「あ、これはアカン」と感じたが、それをもっと確信させられたのが某シーンのテレビで解説されている生き物と、それと同じ発音の属性を持つ人物の登場シーン。そんなんありかと思わせてくれる。No pun intended. 

 

ここから物語は一気に『 ロングレッグス 』的かつ『 ゲットアウト 』的になる。アメリカ人はこういうのが好きなのか?こちとら散々、『 イノセンツ 』的な展開、あるいは小説の『 スラン 』や『 アトムの子ら 』の正反対を行くような展開(それならWEAPONSという不穏なタイトルの説明もつく)を予想していたのに、裏切られた気分である。またはシオドア・スタージョンの『 人間以上 』や映画化もされた『 光る眼 』のように、子どもが子どもだけで何か特別にすごいことをする、あるいは邪悪なことをするという展開にならなかったのは残念で仕方がない。

 

最後の展開はホラーとギャグの紙一重。個人的にはギャグかな。ただ、教育や政治、あるいは戦争に関するメタファーだと言えなくはない。が、それはないか。

 

総評

結局のところ作り手と波長が合うかどうかなのだが、序盤から中盤にかけては文句なしに面白いし、否応なく引き込まれる。記事の副題にさせてもらった Where are the children?=『 子供たちはどこにいる 』も中盤までは超一級のサスペンスかつミステリで、終盤で失速する。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Woe is me.

「自分はなんてかわいそうなのだろう」という非常にアルカイックな表現。『 はじまりのうた 』での終盤で歌われる Lost Stars の歌詞の一部に Woe is me. があり、そこで知った表現。普通に学習していても、まずお目にかからない表現だが、Subzinなどで調べると映画の台詞では結構ヒットする。ただし、古風かつ大げさな表現であることには注意。わざとらしく自虐する時にだけ使うべし。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ナイトフラワー 』
『 ナタ 魔童の大暴れ 』
『 消滅世界 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ケイリー・クリストファー, ジュリア・ガーナー, ジョシュ・ブローリン, スリラー, ホラー, 監督:ザック・クレッガー, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 WEAPONS/ウェポンズ 』 -Where are the children?-

『 シェルビー・オークス 』 -クリシェ満載の竜頭蛇尾-

Posted on 2025年12月14日2025年12月14日 by cool-jupiter

シェルビー・オークス 40点
2025年12月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:カミール・サリバン
監督:クリス・スタックマン

 

個人的に大好きで、英語の勉強の参考にさせてもらっていた映画批評家YouTuberのクリス・スタックマンの脚本および監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

YouTube配信グループのひとり、ライリーがシェルビー・オークスで疾走した。仲間の惨殺死体が発見されるも、ライリーの行方は不明なまま。12年後、思いがけない形でライリーの失踪と彼女の仲間の死の真相に迫るテープを手にした姉のミア(カミール・サリバン)はライリーを探し出すためシェルビー・オークスへと向かう・・・



以下、本作品および他作品のマイナーなネタバレあり

ポジティブ・サイド

序盤は面白い。YouTubeでの配信というアイデアはリアルだし、そうした人間はどんどん過激なコンテンツを追い求めていく傾向にあるのも事実だ。

 

ヒントの出し方も巧み。いきなりマイルズが死亡するが、その最後の台詞が She finally let me go. であり、この She が誰を指すのかで観る側は疑心暗鬼になる。パラノーマルな現象が起きるシーンで気温が下がるのを吐く息が曇ることで表現するのもうまい。

 

より興味深いシーンはビデオ映像。序盤のライリーのビデオでは、窓の反射に重要なものが移っていることが後に分かるが、それは中盤のライリーのビデオでも窓の反射に注意を払えというヒントになっている。なかなか凝った趣向で、見方を必要最低限だけ提示するという、ある意味で観客を信頼した演出であると言える。

 

そうそう、最後のクレジットで出資者名がずらりと表示されるが、中に Shelby Begayさんというシェルビーの名を冠した人がいる。目に自信があれば探してみよう。

ネガティブ・サイド

ライリーをはじめとしたパラノーマル・パラノイズの面々が遭遇していた超常現象が本物なのか偽物なのかをもっと曖昧に見せるべきだった。誰もいない廃墟の小学校でいきなりドアが閉まるシーンも、カメラをドンピシャのタイミングでそっちに向ければ、「ああ、仕込みね」と思われても仕方がない。そのあたりの虚実をうまく曖昧なままにしておかないと、ホラーやスーパーナチュラル・スリラーの要素が一気に萎む。そして、本作はまさにその愚を犯した。

 

ミアがいきなりシェルビー・オークスに旅立つあたりから一気に物語は陳腐化する。基本的にすべてどこかで観たことのあるシーンや展開のパッチワークで、

 

『 ブレア・ウィッチ・プロジェクト 』
『 オーメン 』
『 ローズマリーの赤ちゃん 』
『 エクソシスト 』
『 へレディタリー/継承 』

 

のようなメジャーどころが頭に思い浮かぶ人が多いはず。

 

突っ込みどころは数々とあるが、ネタバレになるのでやめておく。ただ、どうしてもこれだけは言いたい。クリス・スタックマンは『 ミスター・ガラス 』のネタバレ・レビューで 

 

One of them should have realized he could just cover their eyes 

 

とまっとうな批判をしていたが、同じように言わせてもらえば、 

 

Either Mia or Riley should have realized she could just close the curtains 

 

となるだろうか。

 

街の衰退をひとりの人物に結び付けるのはあまりにも非合理的。そして、その理由が悪魔に憑かれていたというのはもっと非合理。そして、ミアがそう信じる契機が囚人のコメントって・・・

 

また冒頭で死亡するマイルズの刑務所入りの期間を2002年~2007年の5年間としているが、これは6年間の間違いでは?単純ミスではすまない。なぜなら、この期間にライリーの夜驚症が収まっていたことになっているから。なんでこんな設定レベルのところでミスるかな・・・

 

謎の老婆というホラーでは見飽きた設定をここでも採用。悪魔よ、本当にことを為したいなら、使うのは老婆ではなくもっと若い女性もしくは男性だぜ・・・

 

総評

料理評論家が料理の達人でないのと同様、映画のレビュワーが必ずしも優れた映画監督とは限らない・・・と結論付けるのは早い。クリスが自分の我を通した結果がこうだったのか、それとも手慣れたスタッフたちの意見に耳を貸してこうだったのかで、評価は大きく分かれるはず。ただ、いずれにしろ、映画の出来についての評価を最終的に負うのは脚本家であり監督。その意味で決して良いデビュー作であるとは言えない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

abandon

捨てる、の意味。ごみを捨てるのではなく希望や乗っている乗り物、住んでいる土地などを捨てるという文脈で使う。『 果てしなきスカーレット 』でも地獄門にラテン語でRelinquite omnem spem, vos qui intratis と刻まれていたような。英語にすると Abandon hope, all ye who enter here. で「ここに入る者は希望を捨てよ」となる。 戦争映画などでは Abandon ship! や Abandon Area 3! のように使われる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ナイトフラワー 』
『 WEAPONS/ウェポンズ 』
『 ナタ 魔童の大暴れ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, カミール・サリバン, ホラー, 監督:クリス・スタックマン, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 シェルビー・オークス 』 -クリシェ満載の竜頭蛇尾-

『 ハンサム・ガイズ 』 -ホラーとコメディの融合作-

Posted on 2025年10月17日2025年10月17日 by cool-jupiter

ハンサム・ガイズ 60点
2025年10月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ソンミン イ・ヒジュン コン・スンヨン
監督:ナム・ドンヒョプ

 

シリアスな作品を連続で鑑賞したので、箸休めに本作のチケットを購入。

あらすじ

強面のジェピル(イ・ソンミン)と筋骨隆々のサング(イ・ヒジュン)は山奥に夢のマイホームを購入。しかし、近くに遊びに来ていた大学生グループのミナ(コン・スンヨン)を湖から助けたことから、大学生たちに殺人鬼だと勘違いされ・・・

ポジティブ・サイド

おっさん二人で家を買うという関係性がいい。「ハンサムな俺たちがモテないのは、モテようとしていないからだ」という発言も笑ってしまう。なるほど、この映画は一見して冴えない二人がモテるようになるストーリーなのだな、と分かりやすく予感させてくれる。

 

対するは、よくあるイケイケの大学生グループ。これが車で黒山羊を轢き殺してしまったことで、悪魔がよみがえってしまう。何を言っているのかわからないかもしれないが、『 破墓 パミョ 』みたいなものだと思えばよろしい。

 

ミナが殺人鬼に捕らえられたと勘違いした一団が、一人、また一人とアホな死に方をしつつ、死ぬことで悪魔の手先として復活する展開には笑った。と、同時にとある大学生の死にざまと復活は極めてまっとうなホラーになっていたりもする。バランスがいい。序盤の家のリフォーム作業や、その際に見つかった以前のオーナー神父の所有物も、終盤にしっかり効いてくる。

 

最後はほのぼの。モテるとは、不特定多数の異性から人気抜群になることではない。得難い異性の友を得ること、それができれば、そいつらはきっとハンサムだ。

 

ネガティブ・サイド

大学生がミナの奪還に乗り出す理由が弱い。もっと『 愚行録 』的な内容だったら、その後の言動との整合性がより強くなったと思うのだが。

 

ジェピルが理不尽にボコボコにされるシーンは、何らかの方法でもっとシリアスさを減じることはできなかったか。かなり胸が痛むシーンだった。男子大学生は、このシーンがあろうとなかろうと、すでに十分に嫌な奴。なので、彼にヘイトを集めるという意味も薄かった。

 

I don’t know English. と言っていた神父が(文字通りに)大きく成長して登場。なので、本当の意味での成長も見てみたかった。ラテン語を読めると思えるシーン(病室の床頭台の上のテクスト)があったのだから、『 エクソシスト 』のカラス神父よろしく、ラテン語を話すぐらいはしてほしかった。

 

総評

最初の30分ぐらい、本気でジェピル=イ・ソンミンだと気付かなった。それぐらいメイクも濃かったし、表情の作り方も違う。本当にカメレオン俳優だと思う。ホラーというにはコメディでありすぎ、コメディというにはホラーでありすぎる。ジャンル・ミックスの成功作品で、韓国宗教に関する知識がなくとも問題なく楽しめるライトな作品。度を越したグロ描写はないが、想像するのもはばかられるような死に方が一つあるので、そこだけは注意のこと。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヌグセヨ

韓国ドラマや映画でしょっちゅう聞こえてくる。意味は「どちら様ですか」で、ドア越しでも電話でも使える。意味としては Who is it? もしくは Who are you? である。次に韓国のドラマや映画を観る時には、ぜひ耳を澄ましてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 恋に至る病 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ソンミン, イ・ヒジュン, コメディ, コン・スンヨン, ホラー, 監督:ナム・ドンヒョプ, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 ハンサム・ガイズ 』 -ホラーとコメディの融合作-

『 8番出口 』 -平々凡々な脚本-

Posted on 2025年9月8日2025年9月8日 by cool-jupiter

8番出口 40点
2025年9月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:二宮和也 河内大和 浅沼成
監督:川村元気

 

鑑賞予定はなかったが、本作のモデル駅がJR大阪天満宮駅だという説に興味を惹かれた。なぜならJovianは毎日同駅の8番出口から会社に向かっているから。というわけでチケット購入。

あらすじ

地下鉄で派遣先へ向かっていた男(二宮和也)は、不思議な空間に迷い込み、出られなくなってしまう。異変がなければ進み、異変があれば引き返し、そして8番出口から出ることという謎のルールに従って、男は前へ進んでいくが・・・

ポジティブ・サイド

なんといっても謎のおじさんを演じた河内大和が抜群の存在感を放っている。あの歩き方、曲がり方、表情の作り方、止まり方、そのすべてがリアル。ここでいうリアルとは、こんなおじさんは絶対に存在しないはずなのに存在してしまっているという意味。

 

ゲームに忠実で、異変のあるべき場所もだいたい同じ(だった気がする)。通路の雰囲気も確かに大阪天満宮駅の8番出口脇から伸びて左に曲がっていくやや上りのスロープの場所とよく似ていた。9番出口を出てちょっと北に進むと某専門学校がある。KOTAKE CREATEはこの学校出身なのかもしれない。

ネガティブ・サイド

最初の5分でストーリーの展開と着地点が見えてしまった。ある程度映画を見慣れている人の多くがそう感じたのではないだろうか。そうしたキャラクターの背景を一切抜きにして、理不尽かつ意味不明なゲームの世界をまず最初に提示する。そして通路のポスターなどを、たとえば病院主催のパパママ教室にするなどして、主人公の葛藤を言葉ではなく主人公の表情やたたずまいから感じ取らせる。そういう演出は不可能だったか。

 

主人公のキャラクターがほとんどそのまま『 グーニーズ 』のマイキーだったり、異変とともに出てくるクリーチャーが古今東西でおなじみの姿だったり、異変の一つが『 シャイニング 』のパクリだったり、とにかくオリジナリティがない。

 

そもそも基のゲームに存在した理不尽なゲームオーバーがない。おじさんがいきなり目の前に迫ってくるという異変に対して背を向けることができずにゲームオーバー、そして → 0番出口 の掲示の前からリスタート・・・のような理不尽さがないと、異変の危険度というか、異変をどれくらい真剣に捉えなければならないかといった真剣度が高まらない。

 

異変を見逃さないということは、逆に言えば我々はそれだけ世の中の変化を見逃している、あるいは世の中の変化を拒んでいるとも言える。それを一つのテーマに挙げるのは結構だが、そのことを主人公が悟るのではなく、まったく別のキャラクターの口から語らせるのは、凡百の邦画がやってしまう安易な方法で、本作もその陥穽にはまってしまっている。やたらけばけばしい女子高生キャラクターは不要だった。もっと言えばおじさんのパートも不要だった。

 

本作は二宮やら小松やらの名のある俳優が出てくるが、それがノイズになっているように感じた。『 侍タイムスリッパー 』や『 最後の乗客 』のように、無名だが実力あるキャストをそろえて撮影してほしかった。そうすれば観ている側も感情移入できるし、代り映えのしない駅のコンコースにもより注意を向けられるようになると思うのだが。

総評

Jovianは原作は未プレイ。だが、Jovian妻がHIKAKINの配信動画を観ていたのを時々横から眺めてはいた。映画にするならゲームに忠実に作りつつ、オリジナルなアイデアを盛り込んでほしかった。本作は残念ながら原作の再現度もオリジナル要素もどちらも中途半端。駄作とまでは言わないが、面白いとも言えない。貯まっているポイントを消化して無料鑑賞するのはあり。配信やレンタルを待つのもありだ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

anomaly

異変や異常を指す単語。はじめて知ったのは小説『 星を継ぐもの 』の原著 “Inherit the Stars”でだった。解剖学的異常など、医学の分野で使うことが多いが、同小説では月のレゴリスの放射性同位元素の不均衡な分布を指してアノマリーという言葉を使っていた。調べてみたところ、『 8番出口 』の異変も anomaly と訳されている。英語学習者はこれを機に本単語も覚えてみよう。

次に劇場鑑賞したい映画

『 蔵のある街 』
『 侵蝕 』
『 ブロークン 復讐者の夜 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, スーパーナチュラル・スリラー, ホラー, 二宮和也, 日本, 河内大和, 浅沼成, 監督:川村元気, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 8番出口 』 -平々凡々な脚本-

『 近畿地方のある場所について 』 -見るも無残な映画化-

Posted on 2025年8月10日 by cool-jupiter

近畿地方のある場所について 20点
2025年8月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:赤楚衛二 菅野美穂
監督:白石晃士

 

小説『 近畿地方のある場所について 』の映画化ということでチケット購入・・・ではなく、ポイントで無料鑑賞。この判断は結果的に正解だった。

あらすじ

オカルト雑誌の編集長が特集記事の校了を前に失踪した。編集者の小沢(赤楚衛二)は旧知のライターの千紘(菅野美穂)と共に編集長の行方と彼の追っていた対象の謎を探ろうとするが・・・

 

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

首吊り屋敷の和室や子ども部屋は、活字だけでは出せないおどろおどろしさがあった。

 

団地の子供たちの遊びのシーンからは原作同様の不穏さが感じられたし、自分で想起していた真っ白様(小説では真っ白様なのである)のイメージにもマッチしていた。

 

ネガティブ・サイド

小説と異なる構成になるのは仕方がないが、再構成の仕方を派手に間違えている。

 

第一に、原作の有していた断片的なエピソードの数々が少しずつ重なり合っていく過程がすっとばされてしまったこと。第二に、雑誌の読者が編集部に送ってくる多数の気味の悪いエピソードが全カットされてしまったこと。第三に、原作が何度も繰り返す「近畿地方のとある場所についてはこれで終わりです」という不穏なフレーズに代わるシーンあるいはセリフが用意できなかったこと。

 

原作では行方不明なのは小沢だが、まあ、それはいいだろう。問題は編集長。私用PCに仕事の情報を全部詰め込んでいるなどというのは、普通なら懲戒ものだ。というか私用でも会社用でもいいからクラウド使わんかい。脚本家は二重の意味でアホなのだろうか。また編集長の残した膨大なデータのごく一部だけしかないと言いながら、そのどれもが核心に迫るものばかりだというのはご都合主義すぎないか。

 

原作ではじいさんが語るまさるのエピソードをばあさんが語る昔話にしてしまったが、それはもう昔話ではなく怪談。しかも別に怖くない。原作のエピソードを再現しようとすると『 犬鳴村 』の亜種になるので変更したのだろうが、そこは『 福田村事件 』を参考にすればいいだろう。

 

その後、どこかで見たようなシーンや演出のオンパレード。編集長の死に方に脚本家も監督も分かっていないと慨嘆させられた。そこは頭ではなく目を貫くところ。その描写から逃げている時点でホラーとして失格。ほかにも中途半端なシーンのオンパレード。最後も『 NOPE / ノープ 』と『 トゥルース・オア・デア 殺人ゲーム 』のパクリかな。

 

漫画家の芦原妃名子氏が亡くなる前の日テレかどこかのドラマ脚本家たちの座談会で、ひとりが「私は原作者ではなく原作さえあればいい」というような発言をしたとされている。今回の監督および脚本家も似たような意識を持っていたのでは?ヒットした小説がある。それを映画にできる。割のいいビジネスだ。ぐらいにしか感じていなかったのかな。原作者は本作を観て何を思うのだろうか。

 

最後の最後も脱力させられた。エンディング曲がなぜか東京を事細かく描写。近畿地方がテーマちゃうんかい・・・

 

総評

映画化ではなくドラマ化した方がよかったのでは?一話30~45分の全6~8話程度の深夜ドラマにすればよかったのでは?その方が原作の持つ、断片的な情報が徐々に輪郭を成していく過程をもっと上手く描き出せただろう。まあ、夏恒例の糞ホラーのひとつとして割り切ろうではないか。原作を読んだのなら本作の鑑賞は必要なし。本作を観て納得がいかなければ、竜頭蛇尾ではあるが原作を読んでみよう。途中のサスペンスは間違いなく小説の方が上である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

sacrifice

犠牲、身代わりの意味。旧約聖書の昔からあった概念で、最も古く、かつ有名なのはアブラム(後のアブラハム)のイサク献供だろう。本作の陳腐さの大部分はオリジナリティの無さに起因することを記録する意味で、この語を紹介しておきたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 桐島です 』
『 エレベーション 絶滅ライン 』
『 ジュラシック・ワールド/復活の大地 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ホラー, 日本, 監督:白石晃士, 菅野美穂, 赤楚衛二, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 近畿地方のある場所について 』 -見るも無残な映画化-

『 28年後… 』 -ツッコミどころ満載-

Posted on 2025年7月2日 by cool-jupiter

28年後… 30点
2025年6月29日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:アルフィー・ウィリアムズ アーロン・テイラー=ジョンソン ジョディ・カマー レイフ・ファインズ
監督:ダニー・ボイル

 

『 28日後… 』と『 28週後… 』の続編ということでチケット購入。

あらすじ

レイジウィルスによってイギリス全土が隔離されて以来、28年。ある島で細々と生き残っていた人々がいた。ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)は12歳の息子スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)を連れて、本土のゾンビ刈りに同行させるが・・・

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

新型ゾンビ・・・ではなく感染者が環境に適応しているというのは、それはそれで面白かった。森に生きる感染者と平原で生きる感染者が異なった生態を示していたのは説得力があった。また異種感染しないという『 28週後… 』の設定も引き継がれていたことが確認できた。感染者を生化学的に分析・攻略するシーンもあり、人間が生きるためにはサイエンスが物を言うことを再確認した。

 

アルファというボスゾンビ・・・ではなくボス的感染者はゲーム『 バイオハザード 』のタイラントあるいはネメシスみたいな感じで、割とすんなり受け入れられた。

 

ネガティブ・サイド

いくら前作で米軍が同士討ちもあって壊滅したとはいえ、世界がイギリスをここまで放置するか?いや、本土はいいとして、離島で生き残った人は保護されてしかるべきだろう。それとも、多くのブリティッシュが自認するようにイギリスは嫌われていることを殊更に明示しているのか。

 

島の人々が Tom Jones の Delilah の大合唱をしていたが、いったい時代はいつなのか。仮に2025年だとしても、さすがに60年前の歌を年寄りだけではなくそれなりに若い世代まで歌えるのか?レコードなどの機械はいっさい見当たらなかったが。

 

そもそも何故に安全な島から出て、本土を目指すのか。もちろん医薬品やら衣料品やら日用品やら使える物は色々と見つかるだろうが、28年も経過してしまうとそれも望み薄だろう。だったら男子のイニシエーションなのか?学校はなくても、子どもを軍事教練に駆り出しているシーンがあったが、学校でこそ感染者の実態を教え込むべきだろう。ジェイミーが実地でスパイクに色々と教え込んでいたのは、フィールドワークならありだが、サバイバルでは愚の骨頂。

 

島そのものが天然の要害になっているが、干潮時の防御がなにもないとはこれ如何に。アルファが矢を10本食らっても倒れなかったというデータがあるなら、矢を20本打つとか、あるいはボーガンを作って威力を上げる、トラバサミのような罠を使うなど、色々と対策はあったはず。それが全くなかったというのは28年あれば人間はアホになるということか。

 

感染者の妊娠というのは中盤で明示されていたし、アイデアとしては誰でも思いつく。漫画『 寄生獣 』で似たようなアイデアはすでに出ていたし。問題はその子どもが〇〇〇だということ。胎盤の奇跡とは・・・仮に胎盤がウィルスをシャットアウト(できるわけないが)したとして、普通に分娩時に経産道感染するはず・・・ なので子どもは『 28週後… 』同様に無症候型キャリアで良かった。また、子どもの父親はアルファであると暗示されていたので、それを元に280年後あるいは28世紀後の地球をゾンビ・・・じゃなかった多数の感染者と本当に細々とだけ残った原始人的人類の物語につなげられただろうに。

 

スパイクが医者を求めてドクター・ケルソンのもとを目指すのは分からんでもないが、まともな教育を一切受けていないスパイクがケルソン先生の診察過程や診断内容を理解できたようには到底思えない。にもかかわらず、あの結末を母親だけではなくスパイクが受け入れる?ちょっと考えづらいのだが。

 

というかケルソン先生も感染者に効くモルヒネとかを、どこでどう調達して28年も維持できたのか。医者というよりも薬学者、それも西洋ではなく漢方薬寄りの学者である。トリカブトやらスズランやら、普通に感染者を安全に殺せそうな毒をこの先生なら調合できそうだが、そういうわけでもないらしい。というか、アルファをストップさせたのなら、そこでもっと大量にモルヒネをぶち込んで殺さんかい、と思ってしまう。

 

島民以外の人間の存在も示唆されていたが、それがラストのあいつら?いくらなんでもあの世紀末軍団があんな見せしめ的な行為に走るだろうか。というか、感染者とのバトルで使う武器が貧相で泣けてくる。普通に体液をまき散らす武器および戦い方で、よくこれで生き延びてこれたなと感心した。

 

続編がありそうな雰囲気だが、たとえ制作されても見ない。コレジャナイ感が非常に強い作品だった。

 

総評

当初から各方面のレビューが賛否両論だった。ということは波長が合えば面白く、波長が合わなければ面白くないわけで、こういう丁半を賭けたばくちも時には必要だ。英語レビューでも賞賛はたくさんあるので、本当に監督や脚本家との相性次第だと思う。ひとつ言えるのはデートムービーではないということ。またファミリーで観るのもお勧めできない。カップルあるいはお一人様での鑑賞が無難である。

 

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

Memento amare

直訳すると、Remember to love となる。Memento は singular の imperative で、amare は to love という英語のto不定詞的な形。合わせて Remeber to love となる。有名な Memento mori は Remember to die だが、ラテン語には形は受動態しかないが意味は能動態という動詞が、loquor, sequor, morior, utorなど、いくつもある。20年以上前の授業の内容でも結構覚えているもので、自分でもびっくりしている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 フロントライン 』
『 この夏の星を見る 』
『 愛されなくても別に 』

 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーロン・テイラー=ジョンソン, アメリカ, アルフィー・ウィリアムズ, イギリス, ジョディ・カマー, ホラー, レイフ・ファインズ, 監督:ダニー・ボイル, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 28年後… 』 -ツッコミどころ満載-

『 近畿地方のある場所について 』 -やや竜頭蛇尾か-

Posted on 2025年6月29日 by cool-jupiter

近畿地方のある場所について 60点
2025年6月24日~26日にかけて読了
著者:背筋
発行元:KADOKAWA

 

ずっと積読にしていた作品。映画がもうすぐ公開されるらしいので、それに先んじて読んでみた。

あらすじ

取材の過程で消息を絶った小沢君の仕事を追っていく中で、私は彼が近畿地方のある場所を中心とした怪異を追っていることを知り・・・

 

ポジティブ・サイド

普通の小説とはかなり趣が異なる。登場人物がいて、時間が設定されていて、行動範囲がある程度特定されていて・・・ということがない。というのも、しばしばネットの書き込みが挿入されるから。言ってみれば、珍談奇談怪談風味の四方山話の寄せ集めなのだが、それがだんだんと近畿地方のある場所に収束していく流れは面白い。

 

怪異の始まりがアングラ系サイトというのも現代的。貞子がVHSから様々なメディアに乗り換えてたり、『 シライサン 』がネットの大海原を漂うように、怪異も時代に合わせてアップデートが必要。それを説得力ある形で提示できているところが素晴らしい。

 

個人的に面白かったと感じたのは林間学校、シール、そしてキャンプ場か。特にシールは、実際にありそうな話、というか、トクリュウ系の強盗の下見としてシールが使われているという報道があってから、街中であちこち目が行くようになってしまったので、余計にリアリティを感じた。

 

巻末に綴じられた取材資料があるのだが、これがなかなかに興味深い。個別のエピソードのネタバレ満載なので決して読了前に開くこと勿れ。

 

ネガティブ・サイド

近畿地方のある場所とぼかされてはいるが、近畿=二府四県で狭義の「県境」が存在するのは奈良と和歌山の間しかない。かつ、山があってダムもあるとなると奈良しかない。もっと廃寺やら廃小学校やら、ありふれた舞台を使えば、読みながらもっと疑心暗鬼になれるのに、と少しもったいなさを感じた。

 

怪異に関する謎が収束していく過程は楽しめたものの、収束していく先は正直なところ拍子抜け。

 

近畿地方の方言が最後のインタビュー以外、ほとんど出てこない。その最後のインタビューも、相手はかなりの年配者のはずだが、その特徴がない。おそらく取材もしていないのだろう。奈良や和歌山、あるいは大阪でも河内長野あたりを越えると明らかに標準関西弁とは異なってくる。そうした雰囲気を文字だけで伝える努力はすべきだった。

 

総評

途中まではまさにページを繰る手が止まらないが、終盤でとある調査が行われるあたりで???となり、最後のオチにはドン引き、かつ溜息が出る。でも、これはこれでいいではないか。我々は往々にして最後に残った印象で作品を判断しがちだが、そこに至るまでのゾクゾクやハラハラドキドキも評価しなければならない。そういう意味では十分に佳作以上。映画の脚本がどこを削って、どこを膨らませたのか、非常に気になる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Now that I’ve come this far,

作中に何度も出てくる「ここまで来たら」の私訳。ここまで来たら〇〇〇に行ってみる=Now that I’ve come this far, I am going to go to 〇〇〇. のように言える。come this far は物理的な距離についても使えるし、比喩的にも使える。仕事もしくはキャリアの上で飛躍できた歳に、I never imagined I could come this far. と呟いてみようではないか。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』
『 28年後… 』
『 フロントライン 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 書籍Tagged 2020年代, C Rank, ホラー, 日本, 発行元:株式会社KADOKAWA, 著者:背筋Leave a Comment on 『 近畿地方のある場所について 』 -やや竜頭蛇尾か-

『 サブスタンス 』 -エログロ耐性を要する秀作-

Posted on 2025年5月31日2025年6月3日 by cool-jupiter

サブスタンス 75点
2025年5月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:デミ・ムーア マーガレット・クアリー
監督:コラリー・ファルジャ

 

『 金子差入店 』のタイミングが合わなかったので、急遽こちらのチケットを購入。見え見えの展開が続いたが、それでも面白かった。

あらすじ

元人気女優だったエリザベス(デミ・ムーア)は、TVプロデューサーの本音に触れてしまい絶望する。そして、より若く、美しい、完璧な自分を得られるというサブスタンスに手を出してしまう。新しく生まれたスー(マーガレット・クアリー)は栄光を掴んでいく。しかし、サブスタンスの使用に不可欠な厳格なルールを徐々にスーは破り始めて・・・

ポジティブ・サイド

観終わった直後の感想としては、アンソニー・ホプキンス主演の『 マジック 』のように、自分が自分に侵略されるストーリーを、ゲーテの『 ファウスト 』や百田直樹の『 モンスター 』など若さと美への執着で彩りつつ、映像的には『 遊星からの物体X 』、『 プロメテウス 』、『 ザ・フライ 』などのグロ要素も織り交ぜて、最後はスティーヴン・キングの『 キャリー 』でフィニッシュという、色々な作品の文字通りのパッチワークを見せられたという印象。しかし、つまらないことはなく、むしろ非常に面白かった。

 

サブスタンスに手を出してしまうまでのエリザベスの心情は決して言葉では語られない。デミ・ムーアはただ静の演技でそれを描出した。彼女自身のキャリアがエリザベスと同じで、自分でもプロローグ部分では、「そういえばデミ・ムーアって、『 ア・フュー・グッド・メン 』以降は何に出演してたっけ?」となってしまった。

 

若さや美に執着するのは、何も老いた女優だけではない。大学で授業をしている時には「大学生は若くていいなあ」と思うだけだったが、先日たまたま実家で大学の卒業式の時の写真が見つかり、あまりの自分の若々しさに愕然と、そして愕然としてしまった自分にショックを受けた。人間は他人の若さには普通に嫉妬するだけだが、自分自身の若さには異様に激しく嫉妬してしまうらしい。

 

ハリウッドだけではなく男社会全般に根強く蔓延る視線の暴力と、アメリカ的などんぶり勘定の薬の服用習慣、それらの当たり前ではない当たり前を人間のちょっとした妄執とかけあわせることで、オリジナリティには欠けるものの非常に上質なエログロのエンタメに仕上がったのが本作。金曜日のレイトショーで鑑賞したが、意外にというか、それとも予想通りと言うべきなのか、30歳前後ぐらいの女性のお一人様の割合が高かった。それだけ訴求力のあるテーマなのだろう。

ネガティブ・サイド

なぜアメリカ人は成功するとパーティーとセックスに走るのだろうか。いや、それはアメリカに限らず、どこの国の人間でもそうだろうという反論はあろうが、スーはいわばエリザベスの人生2周目。若さを謳歌するためではなく、キャリアに邁進する中でクレイジーになっていく、という展開が見たかった。

 

バイオレンスのシーンでは、いささか荒唐無稽なワイヤーアクションまがいの動きまであり、そこで白けてしまった。普通に若者が老人を力任せにいたぶるだけで十分に痛みは伝わる。

 

総評

観る人を選ぶ作品ではあるが、波長さえ合えばかなり面白いと感じられる作品。エリザベスの苦悩は女性に限定されないし、その懊悩は中高年にしか理解できないものでもない。judgemental という言葉があるが、エリザベスの目に映るプロデューサーの姿に冷や汗をかく男性も多いのではないだろうか。ゲーテやニーチェの言う通り、今という瞬間を肯定することの大切さと、それがいかに困難であるかを教えてくれるエンタメ作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

That’s what I’m talking about.

直訳すれば、それが私が話題にしていることだということだが、実際は目の前の出来事が自分の思い通りに展開した時に言う決まり文句。会議で誰かが我が意を得たりという意見を述べてくれたりしたときに言ってみよう(ただし自分が相手より役職が上の時に限る)。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 新世紀ロマンティクス 』
『 金子差入店 』
『 か「」く「」し「」ご「」と「 』

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イギリス, デミ・ムーア, フランス, ホラー, マーガレット・クアリー, 監督:コラリー・ファルジャ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 サブスタンス 』 -エログロ耐性を要する秀作-

『 28週後… 』 -初鑑賞-

Posted on 2025年5月12日 by cool-jupiter

28週後… 40点
2025年5月8日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ロバート・カーライル キャサリン・マコーマック イモージェン・ブーツ ジェレミー・レナー
監督:ファン・カルロス・フレスナディージョ

 

『 28日後… 』の間接的な続編ということでレンタル。今回が初鑑賞となる。

あらすじ

ウィルス発生から28週後。アメリカによるウィルス根絶宣言が出されたロンドンは、一部の街区に住民を呼び戻し始める。そこには子どもとの合流を待つドン(ロバート・カーライル)の姿もあった。しかし、彼はそこにたどり着くまでに妻アリス(キャサリン・マコーマック)を犠牲にしていて・・・

 

ポジティブ・サイド

前作が赤の他人同士の連帯の物語だとすれば、今作は家族の連帯が試されるという物語。それも、細部に注目すれば悲劇だが、巨視的に見ればとんでもないコメディという構成になっている。ここらへんは『 マギー 』などの後発作品にしっかり受け継がれており、新しいテーマを追求できていたと思う。

 

ジェレミー・レナーがスナイパー役だったり、イドリス・エルバが司令官役だったりと、キャストもそれなりに豪華。ドッグアイランドの軍監視の元での日常復帰は、どこかコロナの緊急事態宣言明けを思い起こさせてくれた。

 

『 28日後… 』から『 28週後… 』という流れは、韓国の『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』から『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』とそっくりで、本フランチャイズの影響力を物語っているように思う。

 

ネガティブ・サイド

家族というテーマ以外に、特に目新しいものはなかった。ごく少数の人間が未知の脅威と戦うというプロットが、次作では軍 vs 脅威になるというのは、まんま『 エイリアン 』から『 エイリアン2 』への流れと同じ。

 

前作では明らかにされなかった感染者の餓死までの日数は本作でも明らかにされず。しかし、冒頭の字幕では20週ぐらいかかっていた?ということは、感染者は共食いする?ロンドンが平穏に戻る過程がきわめて不明瞭だった。

 

驚異の感染力のウィルスがなぜか特定の人間には効かないというのは、マイケル・クライトンの古典的小説『 アンドロメダ病原体 』の基本プロットそのまんま。この点でもオリジナリティには欠けていた。

 

イドリス・エルバが「異種間感染しない」と断言していたが、前作でチンパンジーからヒトに移った事実はどこに行った?

 

無症候キャリアが無造作に処置室に放置されていたが、こんな貴重なサンプルはすぐさま厳重に保管されるはずではないか。米軍もコード・レッドを事前に策定しておくのは構わんが、ワクチン研究のためのサンプルの確保のプロトコルを作る必要性は想定できなかったのか。

 

最大の疑問、つまり感染者は何を材料に感染者と非感染者を区別しているのかは本作でも謎のまま。夜間の襲撃等もあったので視覚だけではありえない。聴覚も喧噪の中で非感染者を選択的に襲ったりしているので、これもありえない。では嗅覚か?だとすると香水やら化粧をつけている女性の方が襲われる率は低そうだが、実際そうなっていない。このあたりのヒントになるような情報がないと、28年後の世界、すなわち28年間、人間がかろうじて生存できるという世界につながることが想像しがたいのだが・・・

 

総評

感染封じ込めの失敗はプロットの都合上仕方ないことではあるが、その過程が非現実的すぎる。家族の絆が軍人の使命感に勝るような展開を構想すべきだった。それでこそジェレミー・レナーの行動にも説得力が出たはず。ここから『 28か月後… 』ではなく『 28年後… 』につながるとすれば、日本やインドネシア、フィリピンのような島国が舞台になるか、あるいは英国の片田舎が舞台になるのだろうか。楽しみなような、不安なような・・・

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be pleasantly surprised

良い意味で驚かされる、の意味。ネイティブ連中が結構よく使う表現。I did a pop quiz today, and some of the students booed me, but I was pleasantly surprised by the test results. 今日は抜き打ちテストをして、何人かの学生がブー垂れたが、テスト結果には良い意味で驚かされた、のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』
『 ゴーストキラー 』
『 新世紀ロマンティクス 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, D Rank, イギリス, イモージェン・ブーツ, キャサリン・マコーマック, ジェレミー・レナー, スペイン, ホラー, ロバート・カーライル, 監督:ファン・カルロス・フレスナディージョ, 配給会社:20世紀フォックスLeave a Comment on 『 28週後… 』 -初鑑賞-

『 28日後… 』 -復習再鑑賞-

Posted on 2025年5月7日2025年5月7日 by cool-jupiter

28日後… 60点
2025年5月4日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:キリアン・マーフィー ナオミ・ハリス
監督:ダニー・ボイル

 

『 28年後… 』の復習のために、約20年ぶりに鑑賞。たしか東京で一人暮らししている時に、近所のTSUTAYAで借りた記憶がある。

あらすじ

動物愛護活動家が研究所を襲撃、チンパンジーを脱出させるが、そこから人間を狂暴化させる未知のウィルスが蔓延した。28日後、病院で目覚めたジム(キリアン・マーフィー)は、人っ子一人見当たらないロンドンの街を彷徨するが・・・

 

ポジティブ・サイド

「ゾンビ(実際は違うが)が走るのは反則やろ」と思ったことぐらいしか覚えていなかったが、観ているうちにだんだんと思い出した。人気(ひとけ)の絶えたロンドンをとぼとぼと歩くジムが妙に絵になる。

 

2020年前半のコロナ禍を経た上で本作を再鑑賞すれば、我々が未知の病原菌のキャリアや感染者に対して抱く本質的な恐れの感情は、時代や地域によって変わるものではないということがよく分かる。

 

地球の歴史からすれば人間が存在してきた時間の方が圧倒的に短く、人類が滅んでも、それは地球が平常運転に戻るだけだという考え方は西洋的というよりも東洋的で、個人的にはこの上なく首肯できる。一方で感染の前でも後でも、この世界では人が人を殺す、homo homini lupus あるいはbellum omnium contra omnesな世界であるというイングランド哲学者のホッブス的な観念も開陳されていたのは面白かった。

 

生き残った者たちの連帯の儚さ、そして無秩序の中で秩序を確立しようとする軍人たちとの戦いは、暴力ではなく知力の戦いがメインでそこそこ説得力を感じることができた。

 

ネガティブ・サイド

色々と細かい設定があるのだろうが、それがあまり追究されなかったのは残念。個人的には感染者の認知能力をもっと深掘りしてほしかった。感染者は非感染者を視覚、嗅覚、聴覚の何で区別しているのか。また鏡を効果的に使うシーンでは、感染者には鏡像認知能力が保たれていることがうかがえたが、そうしたシーン(感染者にも一定の知性がある)を序盤もしくは中盤に少し見せてくれていれば、なお良かった。また感染者がどれくらいで餓死するかを観察するのは超がつくほど重要だが、だったら雨水が飲めてしまうような場所に閉じ込めておくのはおかしい。隊の誰も突っ込まなかったのか。

 

最終盤にジムが覚醒するのが、かなり唐突に感じられた。確かに途中で野球バットをぶん回すシーンはあったが、あれをきっかけに軍人相手に大立ち回りができるほどに開き直ったというのは考え難かった。

 

総評

感染ジャンルの中では平均的な面白さか。コロナを経験してから見ると、人間がいかに疑心暗鬼に陥りやすいか、他者を攻撃あるいは排除しやすいかが分かる。平和な時に見ればゾンビものの変化球扱いされるのだろう。映画の評価は時代によって大きく変わりうることを証明する作品の一つ。復習再鑑賞したいという向きも多いはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

in a heartbeat

直訳すれば「心臓の一回の鼓動の内に」となる。心臓は1分あたり65~85回ぐらいの鼓動を刻むとされるので、一回の鼓動は1秒以下となる。つまり、「あっという間に」「一瞬で」の意味となる。

A: If you took this job offer, you’d have to move.
この内定を受諾するということは引っ越ししなければなりませんよ。

B: In a heartbeat!
すぐに引っ越します!

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』
『 ゴーストキラー 』
『 新世紀ロマンティクス 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, C Rank, イギリス, キリアン・マーフィー, ホラー, 監督:ダニー・ボイル, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-

投稿ナビゲーション

過去の投稿

最近の投稿

  • 『 WEAPONS/ウェポンズ 』 -Where are the children?-
  • 『 シェルビー・オークス 』 -クリシェ満載の竜頭蛇尾-
  • 『 TOKYOタクシー 』 -見え見えの結末とそれなりの感動-
  • 『 桂米朝・米團治と行く大坂むかしまち巡り ~商家の賑わい篇~ 』 -大阪人なら一度は観るべし-
  • 『 ネタニヤフ調書 汚職と戦争 』 -他国のスキャンダルと思うことなかれ-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年12月
  • 2025年11月
  • 2025年10月
  • 2025年9月
  • 2025年8月
  • 2025年7月
  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme