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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ホラー

『 28日後… 』 -復習再鑑賞-

Posted on 2025年5月7日2025年5月7日 by cool-jupiter

28日後… 60点
2025年5月4日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:キリアン・マーフィー ナオミ・ハリス
監督:ダニー・ボイル

 

『 28年後… 』の復習のために、約20年ぶりに鑑賞。たしか東京で一人暮らししている時に、近所のTSUTAYAで借りた記憶がある。

あらすじ

動物愛護活動家が研究所を襲撃、チンパンジーを脱出させるが、そこから人間を狂暴化させる未知のウィルスが蔓延した。28日後、病院で目覚めたジム(キリアン・マーフィー)は、人っ子一人見当たらないロンドンの街を彷徨するが・・・

 

ポジティブ・サイド

「ゾンビ(実際は違うが)が走るのは反則やろ」と思ったことぐらいしか覚えていなかったが、観ているうちにだんだんと思い出した。人気(ひとけ)の絶えたロンドンをとぼとぼと歩くジムが妙に絵になる。

 

2020年前半のコロナ禍を経た上で本作を再鑑賞すれば、我々が未知の病原菌のキャリアや感染者に対して抱く本質的な恐れの感情は、時代や地域によって変わるものではないということがよく分かる。

 

地球の歴史からすれば人間が存在してきた時間の方が圧倒的に短く、人類が滅んでも、それは地球が平常運転に戻るだけだという考え方は西洋的というよりも東洋的で、個人的にはこの上なく首肯できる。一方で感染の前でも後でも、この世界では人が人を殺す、homo homini lupus あるいはbellum omnium contra omnesな世界であるというイングランド哲学者のホッブス的な観念も開陳されていたのは面白かった。

 

生き残った者たちの連帯の儚さ、そして無秩序の中で秩序を確立しようとする軍人たちとの戦いは、暴力ではなく知力の戦いがメインでそこそこ説得力を感じることができた。

 

ネガティブ・サイド

色々と細かい設定があるのだろうが、それがあまり追究されなかったのは残念。個人的には感染者の認知能力をもっと深掘りしてほしかった。感染者は非感染者を視覚、嗅覚、聴覚の何で区別しているのか。また鏡を効果的に使うシーンでは、感染者には鏡像認知能力が保たれていることがうかがえたが、そうしたシーン(感染者にも一定の知性がある)を序盤もしくは中盤に少し見せてくれていれば、なお良かった。また感染者がどれくらいで餓死するかを観察するのは超がつくほど重要だが、だったら雨水が飲めてしまうような場所に閉じ込めておくのはおかしい。隊の誰も突っ込まなかったのか。

 

最終盤にジムが覚醒するのが、かなり唐突に感じられた。確かに途中で野球バットをぶん回すシーンはあったが、あれをきっかけに軍人相手に大立ち回りができるほどに開き直ったというのは考え難かった。

 

総評

感染ジャンルの中では平均的な面白さか。コロナを経験してから見ると、人間がいかに疑心暗鬼に陥りやすいか、他者を攻撃あるいは排除しやすいかが分かる。平和な時に見ればゾンビものの変化球扱いされるのだろう。映画の評価は時代によって大きく変わりうることを証明する作品の一つ。復習再鑑賞したいという向きも多いはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

in a heartbeat

直訳すれば「心臓の一回の鼓動の内に」となる。心臓は1分あたり65~85回ぐらいの鼓動を刻むとされるので、一回の鼓動は1秒以下となる。つまり、「あっという間に」「一瞬で」の意味となる。

A: If you took this job offer, you’d have to move.
この内定を受諾するということは引っ越ししなければなりませんよ。

B: In a heartbeat!
すぐに引っ越します!

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』
『 ゴーストキラー 』
『 新世紀ロマンティクス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, C Rank, イギリス, キリアン・マーフィー, ホラー, 監督:ダニー・ボイル, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-

『 ロングレッグス 』 -誇大広告に騙されることなかれ-

Posted on 2025年3月18日 by cool-jupiter

ロングレッグズ 35点
2025年3月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マイカ・モンロー ニコラス・ケイジ
監督:オズグッド・パーキンス

 

『 羊たちの沈黙 』以来の傑作なる評に惹かれてチケット購入。Don’t believe the hype…

あらすじ

FBI捜査官のリー・ハーカー(マイカ・モンロー)は連続殺人事件を捜査していた。すべての事件で、父親が家族を殺害した後に自殺しており、現場には謎の暗号文が残されていて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 イット・フォローズ 』で主役を張ったマイカ・モンローが主人公ではないか。気弱だが、芯の強さを感じさせる。しかし、どこか壊れてしまいそうな脆さを常に漂わせるキャラクターを好演した。

 

ニコラス・ケイジもB級映画への出演が相次いでいるが、これは役としては当たりではないか。ニコラス・ケイジは(ある意味トム・クルーズのように)常にニコラス・ケイジを演じているが、今回の車の中での絶叫シーンはニコケイっぽさがなく、新鮮に感じられた。

 

ラストの余韻もなかなか。自分の〇〇と△△を☆してしまったわけで、バッドエンドを選ぶのか、それともワーストエンドを選ぶのかは、ある意味で観る側の解釈次第というわけか。それもありだろう。

 

ネガティブ・サイド

ジャンプ・スケア多過ぎ。序盤からガンガン使われて、「あれ、これはそういう映画か?」と思ったあたりから、そろそろ来るなというところでギャン!・・・白けるで、ホンマ。

 

殺人犯が潜伏している可能性のある家に、単独で「FBIだ!」と叫んで訪問するアホがいるのか?

 

あの猫はどうやって生きていた?一月ほど飲まず食わずで放置されていたのではないのか。それとも捜査の直前に自分からケージに入ったとでもいうのか。

 

暗号の解き方も呆気ないというか、こちらはそこを知りたいのに特に深い考察もなく終わってしまう。まあ、ジャンルがサスペンスやミステリではなくホラーあるいはスーパーナチュラル・スリラーなので仕方ないのだが、だったら何故に『 羊たちの沈黙 』や『 セブン 』を引き合いに出して宣伝するのだ?こういうのは公正取引委員会に訴えられないのだろうか。

 

閑話休題。

 

一番の疑問が、呪いの人形の運搬および搬入。これまでの被害者家族のだれ一人として「教会の方から来ました」と言われて、こんな人、地元の教会にいたっけ?と感じなかったのか。そもそもある程度信心深い=定期的に教会に行く人でないと、教会側も誕生日や住所を把握できないだろう。コスプレだけで住民が信用してしまうという設定を当の脚本家は何も感じなかったのだろうか。

 

またアメリカには信教の自由があるから悪魔崇拝を止められないというのも笑った。いや、信教の自由は保護されてしかるべきだが、それと殺人教唆や殺人の共謀は完全に別の話。そこを混同するFBIの面々には笑わされると同時に頭を抱えざるを得なかった。

 

とにかく珍品というのは一番しっくりくる作品である。

 

総評

人間同士の頭脳戦と見せかけてスーパーナチュラル・スリラーで、ポップな感じのエンディングが『 アイム・ノット・シリアルキラー 』を髣髴させた。同作が好きだという向きは本作も口に合うかもしれない。ニコラス・ケイジのファンにもお勧めする(出番は少ないが)。そうでなければ、わざわざチケットを購入する必要はない。配信・レンタルを待つか、それもスルーして構わない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

So they say.

彼ら彼女はそのように言う、転じて「世間ではそう言われているね」、「そうらしいね」の意。

A: Baseball is a national pastime in Japan.
    野球は日本の国民的娯楽だって。

B: So they say. 
    らしいね。


A: It takes inspiration to be an artist.
    芸術家になるにはインスピレーションが必要だよ。

B: So they say.
   そうみたいですね。

のように使う。これがパッと言えれば、英会話中級者以上だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ゆきてかへらぬ 』
『 Flow 』
『 ミッキー17 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アメリカ, ニコラス・ケイジ, ホラー, マイカ・モンロー, 監督:オズグッド・パーキンス, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 ロングレッグス 』 -誇大広告に騙されることなかれ-

『 バンパイアハンターD 』 -孤高の戦士像の頂点-

Posted on 2025年3月4日 by cool-jupiter

バンパイアハンターD 80点
2025年3月2日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:田中秀幸
監督:川尻善昭

 

念願の theatrical re-release ということでチケット購入。

あらすじ

遥かなる未来。科学文明は衰退し、人類は貴族と呼ばれるバンパイアの食料だった。しかし、バンパイアにも種としての寿命が来つつあり、人類はバンパイアを刈るハンターの存在を渇望した。そこにバンパイアと人間の混血児、ダンピールのD(田中秀幸)が現れ・・・

ポジティブ・サイド

たしか小学生ぐらいの頃に最初の映像化作品をテレビで観た記憶がある。Dが気絶していて、左手が地面をザクザク掘って、空中に向かってビームを発射してたかな。その場面の前後だけを見て、後で新聞のテレビ欄で『 吸血鬼ハンターD 』だと知った。ということで、実は本作は今回初めて観たが、素晴らしいクオリティだった。

 

まず天野喜孝のDのデザインのクオリティが高い。青白い顔に全身黒ずくめ、そして漆黒の馬を駆る姿はゴシック的ファッションの一つの極致だ。半人半妖または半人半魔という存在はゲゲゲの鬼太郎からデビルマンまで数多くいるが、そうしたキャラクターの中でもトップクラスに、というかダントツで一番のカッコよさである。また、謎の人面瘡に規制された左手は、寄生獣を想起させるし、悠久の時の中を孤独に彷徨し続けるという点で『 BLAME! 』の霧亥にも影響を与えていてもおかしくない。漫画『 CLAYORE 』の元ネタも本作(というか『 吸血鬼ハンターD 』)なのではないかと個人的に思っている。

 

アニメーションは美麗で、CGなどは当然なし。古いと言えば古いのだが、科学文明の退廃した世界と中世暗黒時代の社会を融合させた世界観は、CGというテクノロジーでは再現できないように思われる。

 

マイエル=リンクとシャーロットの関係も深い。食う側と食われる側で深い友情や愛情が成り立つのか、もっと言えば搾取する側の上級民と搾取される側の下級民が結ばれるのかというテーマを内包していて、今という時代に劇場再公開される意味がここにもある。

 

シャーロット奪還を目指す別のバンパイアハンターのマーカス兄弟も、咬ませ犬と見せかけて相当な実力者。マイエル=リンクやバルバロイの手練れたちの激闘は見応えがあった。Dと闘い、時にはDと共闘関係にもなる中で、レイラとDが絶妙の距離感に落ち着く展開も味わい深い。その伏線も馬を売ってくれる爺さんと言う存在によって巧妙に張られているなど芸が細かい。

 

マイエル=リンクとDの決着も実に興味深かった。ダンピールという半分人間、半分バンパイアが人間と駆け落ちしようとするバンパイアを討とうとする。そこには大きな矛盾があるが、その矛盾を超えた敵の存在と、その矛盾が矛盾ではなくなる筋立てには唸らされた。

 

エンディングも印象深い。死ぬべき人間と半不死のD、交わることはできなくとも、尊重し合う、理解し合うことはできるのだという終わり方は、現代日本社会の在りように対してのメッセージになっているのではないだろうか。

ネガティブ・サイド

Dと馬の関係を見てみたかった。どんな悪路も踏破し、どんな場所でも果敢に突っ込んでいく名驥に育っていくのかという描写がほしかった。

 

黒幕のカーミラがちょっと呆気なかった。もっと重々しいキャラでいてほしかった。

 

総評

ファンタジーとSFのマリアージュにして、ゴシックホラーの傑作。貴族と人間という階級差、そして混血児としてどちらの出自にも完全に属すことができない男という設定は、現代において更に深みを増している。日本語吹き替え版では数々の名優の演技も堪能できる。上映が延長になったというニュースも聞こえてくるほど好評なので、ぜひ多くの方に鑑賞いただきたいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

bounty hunter

賞金稼ぎの意。考えてみれば、仕事を通じて金を得ているという意味では我々はみな賞金稼ぎだと言えるかもしれない。特にITや教育といった分野は独立しやすく、かつ様々な案件を他の同業者たちと奪い合うという意味ではまさに賞金稼ぎと言えるかもしれない。そんな風に働いてみたいと思ったり思わなかったり・・・

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 プロジェクト・サイレンス 』
『 コメント部隊 』
『 ゆきてかへらぬ 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2000年代, A Rank, SF, アニメ, ファンタジー, ホラー, 日本, 田中秀幸, 監督:川尻義昭, 配給会社:日本ヘラルド映画Leave a Comment on 『 バンパイアハンターD 』 -孤高の戦士像の頂点-

『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

Posted on 2024年11月9日 by cool-jupiter

破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン

 

チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。

あらすじ

巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。

 

「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。

 

改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。

 

日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。

 

ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。

 

日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。

 

まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。

 

総評

土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

トッケビ

超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』
『 オアシス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イ・ドヒョン, キム・ゴウン, チェ・ミンシク, ホラー, ユ・ヘジン, 監督:チャン・ジェヒョン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

『 風が吹くとき 』 -アポカリプス後の世界を描く-

Posted on 2024年8月17日 by cool-jupiter

風が吹くとき 80点
2024年8月15日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:森繫久彌 加藤治子
監督:ジミー・T・ムラカミ

 

8月15日ということで、リバイバル上映されている本作のチケットを購入。本作はたしか小学6年生ぐらいの時に、公民館で無理やり見せられたような記憶がある。

あらすじ

ジェームズ(森繫久彌)とヒルダ(加藤治子)の老夫妻は英国の郊外でのんびり暮らしていた。ある日、国際情勢が急速に悪化し、戦争が不可避となる。ジェームズは政府と州議会が発行している手引きに従って、屋内シェルターを作る。その後、ソ連による核ミサイルが本当に発射され・・・

ポジティブ・サイド

様々な事柄がユーモアたっぷり、皮肉たっぷりに描かれている。たとえばヒルダが食器を洗剤で洗った後、水ですすぐことなく布巾で拭くのは、1980年代や1990年代の国際結婚を特集したテレビ番組などではお馴染みの光景だった。また、ジェームズの恐妻家としての面もたびたび描かれ、日常パートでもサバイバルパートでも、そこだけを見れば既婚者としては面白い。

 

もちろん、本作の眼目はそこではなく核戦争の恐怖こそが主眼。ただ単に核の威力を描くのではなく、核爆発後の社会のありようをリアルに描き出した点こそ本作の特長だ。

普通に考えれば地下ではなく一階に作るシェルターにどれほどの効果があるかは不透明だし、そもそもコンクリートではなく木造のドアでそれを作るのは滑稽ですらある。しかし、ジェームズはそんなことはお構いなし。何故か?一つには先の戦争(第二次世界大戦)を生き残ったという生存者バイアスのせい。もう一つには、最後には政府が何とかしてくれるという楽観主義。しかし、これは単なる楽観主義ではなく、もはや国家主義あるいは全体主義ともいうべき思想に昇華している。国家が危急存亡の秋であれば男性はすべて召集されるというのは、現代のウクライナやロシアをも超えた非常態勢で、それを半ば常識のように語るジェームズには怖気を振るってしまう。妻のヒルダも、戦争を生命や財産の危機ではなく、思い出のように語ってしまう能天気ぶり。「私はスポーツと政治には興味がありません」というのは、地球の反対側の島国にも半分ぐらい当てはまっている。そうした国民を多数要する国の末路は推して知るべし。

 

核爆発後の世界でも、ある意味でのんきに二人だけの完結した世界で暮らすジェームズとヒルダ。その二人が徐々に衰弱していく様子は見るに堪えない。水道、電気、ラジオ、新聞配達に牛乳配達まで止まっているのに、すぐに政府のレスキューチームがやってくると信じるのは、やはりこの世界ではそれだけ国家主義あるいは全体主義が浸透しているからなのか。家の外に出るのはまだしも、放射性物質をたっぷり含んだ雨水を貯水して生活用水にするとは。いや、トイレに使うのは可だが、飲むのはアカンよ・・・

 

国家を頼りにすれども、救助は来ない。衰弱して、どんどん弱気になっていく妻に対してジェームズができることは祈ることだけ。その祈った先に、果たして神はいるのか。

 

一定以上の世代からすれば、漫画『 はだしのゲン 』や絵本『 おこりじぞう 』、アニメ映画『 トビウオのぼうやはびょうきです 』などで核兵器および核爆発後の被害の大きさや悲惨さは周知されていたが、『 はだしのゲン 』が悪書扱いされるようになった現代は相当に剣呑と言うか、本当に戦争前夜、戦争まで十数年という感覚すら覚える。そんな中で本作がリバイバル上映されたことの意味は決して小さくないと考える。ややエロティシズムを感じさせるシーンがあるが、小中学生でも十分に理解できる内容と構成になっている。英国だけでなく、世界中で定期的に上映してほしいと切に願う。

 

ネガティブ・サイド

ジェームズの知識の偏りや欠落具合が気になった。冒頭の図書館で、ジェームズが他者と話す、あるいは新聞以外の雑多な書籍などに目を通しながらも、本当の意味では興味もないし、理解してもいないという描写が欲しかった。

ソ連を途中でロシアを表現するようになっていたが、ソ連結成は1922年なのでジェームズの記憶の混濁?それとも日本側の翻訳ミス?

総評

8月15日は敗戦日。終戦日でも終戦記念日でもない。大学時代、ドイツ人に「ドイツだと敗戦日と言うぞ」と言われて、終戦記念日という表現に違和感を抱き始めたことを今でも覚えている。戦争に巻き込まれることはあっても、戦争を自分から起こしてはいけないし、核を撃たれる前に降伏しないといけない。というか、核を許容してはいけない。テアトル梅田はだいたい五分の入りだった。戦争、就中、核戦争に対する意識を持つ人がそれだけいると見るべきか、それだけしかいないと見るべきか。Jovianは前者だと思いたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

shelter

避難所の意。take shelter =避難する、という形で使われる。しばしば take refuge と混同されるが、take shelter は「安全な場所(文字通りにシェルター)に逃げ込む」という意味であるのに対し、take refuge は危険から逃れて安全な場所まで行くという意味。英検準1級、TOEIC800を目指すなら違いを理解しておくこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』
『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, A Rank, アニメ, イギリス, ヒューマンドラマ, ホラー, 加藤治子, 森繫久彌, 監督:ジミー・T・ムラカミ, 配給会社:チャイルド・フィルムLeave a Comment on 『 風が吹くとき 』 -アポカリプス後の世界を描く-

『 関心領域 』 -歴史は繰り返すのか-

Posted on 2024年6月9日 by cool-jupiter

関心領域 75点
2024年6月8日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリスティアン・フリーデル サンドラ・ヒュラー
監督:ジョナサン・グレイザー

 

興味のあった作品なので、チケット購入。

あらすじ

ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)とヘートヴィヒ・ヘス(サンドラ・ヒュラー)の夫妻は、多くの子どもたち、そして召使いとともに郊外で幸せに暮らしていた。しかし、家のすぐ隣にあるのはアウシュビッツ収容所だった・・・

 

ポジティブ・サイド

まるで『 2001年宇宙の旅 』を思わせるオープニング。真っ黒の画面に音だけがあり、そこからしばらくして幸せいっぱいの家族の場面へ。状況説明してくれるようなナレーションや説明のスーパーインポーズも一切なし。ただ淡々とヘス一家の暮らしぶりを描いていく。

 

ドイツ軍の将校であるヘスは中間管理職を務めるサラリーマンさながらに職務に精勤し、家族サービスも忘れない。一方で男として共感できない(あるいは非常に共感できる)一面も持っており、否応なしに血肉の通った人間として描かれている。それゆえに一切映されることのない塀の向こうの収容所およびそこにいる人々への想像を掻き立てられる。序中盤では特に背景にうっすらと煙が立ち上っていることが多く、生理的な嫌悪感を催さずにはおれない。

 

本作にはBGMがほとんどないが、たまに聞こえてくる音楽それ自体がホラーである。特にエンド・クレジットのBGMは『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』の「謡」、または『 ウィッチ 』のエンド・クレジットのBGMをもっと不気味にしたものと言えば伝わるだろうか。新しいホラー映画の形態と言えるのかもしれない。

 

最後の最後に左フックをチンにきれいにもらったかのような衝撃を受けた。この作品を観ているあなたも、結局はこの歴史を「鑑賞」または「消費」しているんでしょ?と言われたかのように感じられた。そして、そのことを否定できる現代人もほとんどいないのではないだろうか。

ネガティブ・サイド

あの白黒でところどころ出てきた女の子は誰だったのだろうか。『 ジョジョ・ラビット 』におけるエルサのようなものだろうか。何かもう少し明示してくれるような映像が欲しかった。

 

あのおばあちゃんが出て行った真相は?これももう少し何かヒントが欲しかった。

 

総評

一言、怪作である。ヘス一家の何気ない(ことはないシーンもあるが)数々の日常を映し出しながら、観る側に不安や嫌悪、恐怖を催させる手法にはお見逸れしましたと言うしかない。『 落下の解剖学 』のサンドラ・ヒュラーも印象に残ったが、それ以上に本作での犬(ラブラドール・レトリーバー?)の演技が光っていた。年末には犬に Supporting Role of the Year を贈るかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント独語レッスン

アウフヴィーダーゼーエン

ドイツ語で「さようなら」の意。劇中ではほとんど「ヴィーダーゼーエン」という形で発話されていた。英語でも Good bye はフォーマルかつ、ちょっとシリアスに聞こえかねない時があるので、しばしば Bye とか Bye now とうちの同僚たちは言っている。ドイツも語もおそらく同じような理由でアウフを省いていると思われる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』
『 かくしごと 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, イギリス, クリスティアン・フリーデル, サンドラ・ヒュラー, ポーランド, ホラー, 伝記, 歴史, 監督:ジョナサン・グレイザー, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 関心領域 』 -歴史は繰り返すのか-

『 変な家 』 -変なストーリー-

Posted on 2024年4月25日 by cool-jupiter

変な家 20点
2024年4月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈
監督:石川淳一

 

ポイント消費のために鑑賞決定。変な映画だった。

あらすじ

動画配信業の雨宮(間宮祥太朗)はマネージャーから購入予定の一軒家について相談される。間取りに奇妙な点があると感じた雨宮は、ミステリー愛好家の設計士・栗原(佐藤二朗)を尋ねる。雨宮と栗原は様々な仮説を立てていくが・・・

以下、ややネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

YouTuberが話題性を求めて不法侵入やら何やらをするのは、まあ分からんでもない。その話題性を家の不可思議な間取りに求めるのもそれなりに説得力がある。赤穂城や姫路城、彦根城や二条城などを訪れれば、たいていはボランティアのおっちゃんが城郭の防御の仕組みや城内の間取りの糸などを詳しく教えてくれる。城にはパッと見では意味の分からないあれやこれやに意味があるものだ。そうした個人的な経験を下敷きに鑑賞したので、最初の20分程度まではそれなりに楽しめた。

ネガティブ・サイド

原作となった動画や小説は未見だが、この映画と同じくらい ( ゚Д゚)ハァ? という展開の連続なのだろうか。

 

だいたい何故にそんな変な設計図が通るのか。そして、それを業者が素直に作るのか。いや、それもすべて本家の息のかかった設計士や施工業者だったのだと言ってしまえばそれまでだろうが、だったら何故にそんな設計図を残すのか。そして家ごと売りに出してしまうのか。秘密裏に作って秘密裏に壊せばいいだけの話だろう。

 

また佐藤二朗演じる栗原の仮説も道理がまったく通らない。謎の家の間取りを利用して殺人代行をしていたというが、何故に子どもにそんな真似をさせるのか。殺したい相手も大人だったのなら大人がやればいい。それに風呂場で凶行に及ぶというのも合点がいかない。相手が背を向けている状態で風呂の床を抜いて上がり込むというのか。そんな馬鹿な。いや、それ以前に殺人を代行するための家だというのなら、そこに殺したい人間を招く必要がある。ということは住人はターゲットの知り合いか、それ以上の関係性を持っていなければならない。つまり、ターゲットが死んだ時、あるいは行方不明になった時、高確率で警察の捜査の対象になる。そんなアホな殺人代行業が存在していいのか。

 

実はこのあたりから少しうつらうつらしてしまった・・・

 

まあ、他にも都合の良い幻覚剤だったり、他人の家を勝手に盗撮して、しかもそれをどこの馬の骨とも知れない人間にほいほい見せてしまう都合の良い隣人だったりと、デウスエクスマキナを乱用してくれる。そして行き着く先が『 犬鳴村 』的な因習村。どこまでワンパターンなのか。明治時代の呪いを昭和だか平成だかの霊媒師の助言で解こうというところが腑に落ちない。というか、まずはその妾さんを丁重に弔いなさいよ。そのうえで当主自らお供え物や供養の祈りを捧げなさいよ。そのうえで神主あるいは坊主に相談しなさい。それもせず霊媒師にアドバイスを求めるようなメンタリティで、どうやって富を蓄積できるというのか。リアリティがさっぱり感じられないし、呪いに対するアプローチがそもそも的外れだ(その意味で『 リング 』はよくできていたと感じる)。

 

公開から1か月以上経つが、劇場の入りは凄まじかった(その分、ずっと喋り続ける女子中学生ぐらいの集団、スマホをいじり続ける若い女性、いびきをかいて寝る男性など、客層も終わっていたが)。まあ、客層と映画の出来に相関があろうはずもないが、邦画の現状および未来に対して一抹の不安を抱かせる劇場体験だった。

 

総評

端的に言ってクソ映画。原作を散々レ〇プして生まれた作品だろうと感じる。ミステリならミステリ、ホラーならホラーとその特徴を打ち出すべきだが、初っ端からホラー風味→ミステリ風味→ホラー風味→ミステリ風味と行き来するものだからイマイチ物語世界に入っていけなかった。案の定というか、大学の教え子たちと少し雑談する中で「あれ、意味分からないですよね?」と言われ、然りとしか答えられなかった。中高生をビビらせるだけのチンプンカンプン物語がヒットするという邦画の現状は喜ぶべきではなく憂うべきである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I need to forget about this awful film ASAP.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ホラー, ミステリ, 佐藤二朗, 川栄李奈, 日本, 監督:石川淳一, 配給会社:東宝, 間宮祥太朗Leave a Comment on 『 変な家 』 -変なストーリー-

『 SMILE スマイル 』 ーもう少しキャラに肉付けをー

Posted on 2024年2月25日2024年2月25日 by cool-jupiter

SMILE スマイル 50点
2024年2月22日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ソシー・ベーコン
監督:パーカー・フィン

 

劇場予告編か何かで観て、気になっていた作品。面白さはまあまあといったところ。

あらすじ

精神科医のローズ(ソシー・ベーコン)は、カウンセリングをしようとした患者が奇妙な笑顔を浮かべながら自殺するのを目撃する、それ以降、ローズは奇妙な笑顔を浮かべる人物を目撃するようになり、そして彼女自身も不可解な行動を取ってしまうようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

明るいところが怖いという点を売りにした『 ミッドサマー 』の如く、本作は笑顔が恐怖の対象になりうることを示した点でユニーク。

 

何じゃそりゃ?という不可解な死に方、それに不釣り合いな奇妙な笑顔というアンバランスが不快感を催させる。冒頭の5分でこの世界に引き込まれてしまった。

 

この笑顔を見せる怪異の正体が不明で、次々に異なる人間の姿で主人公に迫ってくるというのは『 イット・フォローズ 』的で、個人的には好みである。単なる偶然だが、猫の日に本作を鑑賞して、これほど嫌な気分にさせられるとは、脚本兼監督のパーカー・フィンはやり手である。

 

笑顔の怪異の謎を元カレと共に突き止めようとする中盤以降、謎の自殺の連鎖から逃れた者がいるという情報、そしてその方法が結構えぐい。ただ、そこから論理を突き詰めて、怪異と対決しようというローズの姿勢は精神科医然としていて頼もしい。

 

本作はカメラワークが良い。ローズが同棲中の婚約者と元カレと一緒にいる時のカメラのズームイン、ズームアウトのタイミングでスリルとサスペンスを生み出している。できれば劇場で鑑賞したかったと感じた。

 

ネガティブ・サイド

序盤はかなりジャンプ・スケアが多い。そんなものを使わずとも、カメラワークで充分に恐怖感を生み出せることを証明しているのに、何故に安易な方法に走ってしまうのか。笑顔というのは日常でよく見るものなので、その笑顔が本物なのか、それとも怪異なのかとローズおよび観客を疑心暗鬼にさせるシーンはいくらでも撮れるはず。音響で驚かすのではなく、映像で怖がらせる、あるいは不安がらせてほしい。

 

ローズにはローズのトラウマがあるのだろうが、それでもここまで嫌なキャラに描く必要があったのだろうか。特にFワードの連発には正直辟易した。いや、four-letter word の使用そのものは否定しないが、医師という職業とマッチしていない。加えて、精神科医という仕事のしんどさを丁寧に描くこともしていないせいで、ローズが胸の奥底に抱えている闇のせいだけで嫌な人間になってしまっているように見える。

 

終盤に出てくる怪異が、まんま『 IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』の中盤に出てくるCGモンスターのパクリ。これはオマージュとは呼べないだろう。

 

ローズの婚約者も、もっとローズに寄り添ってほしかった。ナチュラルに無礼な発言を繰り返して、そらローズも元カレの方に行くわなと感じた。いや、それはプロット上の必然だからしゃーないとしても、トラウマは病気で、その病気は遺伝する発言は行き過ぎ。ドン引きした。

 

元カレの背景も謎。なにが彼をそこまで献身的にさせるのか。主要キャラたちをもう少しだけ深掘りしてほしかった。

 

総評

低予算ホラーだが、スプラッタ映画的なグロシーンもあって、見応えはそれなりにある。笑顔が怖いという新機軸もそれなりに楽しめた。キャラとの波長が合うかどうかは観る人次第だが、序盤と中盤は結構怖いので、ホラー耐性のない人にはお勧めできない。ホラー愛好家には傑作たりえないだろうが、話のタネに鑑賞しておいても損はしないだけのクオリティはある。

 

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the cold shoulder

冷たい肩ではなく「冷たい態度」の意。しばしば give ~ the cold shoulder で、~に冷たい態度をとる、~にそっけなく接する、のような意味で使われる。My supervisor has been giving me the cold shoulder since I disagreed with her at the meeting. =「会議で異議を述べて以来、上司は私に冷淡な姿勢を取り続けている」のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜明けのすべて 』
『 犯罪都市 NO WAY OUT 』
『 ソウルメイト 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, ソシー・ベーコン, ホラー, 監督:パーカー・フィンLeave a Comment on 『 SMILE スマイル 』 ーもう少しキャラに肉付けをー

『 みなに幸あれ 』 -邦画ホラーの珍品-

Posted on 2024年2月4日 by cool-jupiter

みなに幸あれ 20点
2024年2月3日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:古川琴音
監督:下津優太

簡易レビュー。

 

あらすじ

祖父母の家を久しぶりに訪れた看護学生の孫(古川琴音)は、2階の奥の部屋に何かの存在を感じ取る。やがてその存在が姿を現して・・・

 

以下、軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

登場人物すべてに等しく名前がないというのは印象的だった。『 グレート・インディアン・キッチン 』でもそうだが、そうした設定では主題がよりいっそう抽象的かつ一般的になり、観る側の想像力を喚起する。

ホラーとしては凡百あるいはそれ以下だが、弟の痙攣シーンはなかなかに味わい深かった。

 

ネガティブ・サイド

雰囲気的に『 リゾートバイト 』そっくり。だが『 リゾートバイト 』が先行ホラーのモチーフに加えてオリジナルのアイデアを盛り込んでいたのに比較すると、本作は先行ホラーのオマージュで終わってしまったという印象。というか、ホラーですらない。

 

冒頭の回想シーンの引きは思いっきり『 アス 』の少女が暗闇で息をのむシーンのパクリ。その後も『 ヘレディタリー/継承 』や『 ミッドサマー 』を思わせるシーンに、Jホラー降霊の暗い廊下に立つ人影など、雰囲気だけは怖いけれど、その実、何も怖くないシーンが続く。監禁老人の存在はまだしも、祖父母の奇行がギャグにしか見えない。

 

自家製味噌とか、想像力を刺激して恐怖心を呼び起こすガジェットは無数にあったのに、それらをまったく有効活用できていなかった。看護師=患者の存在を前提に成り立つ職業という、主人公のアイデンティティを揺るがすような展開もなし。脚本段階で色々と破綻していたか、あるいは編集が下手くそだったか。まあ、その両方だろう。

 

総評

個人的に期待していた映画で、あらすじもトレーラーも何も目にせず臨んで大失敗。総じて大学の映画同好会レベルの作品。本作をお勧めできるのは、珍品が好きだという一部も好事家だけだと思われる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I need to forget about this movie right now.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ガーディアン 守護者 』
『 哀れなるものたち』
『 熱のあとに 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ホラー, 古川琴音, 日本, 監督:下津優太, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 みなに幸あれ 』 -邦画ホラーの珍品-

『 エクソシスト 』 -信じる者は救われる-

Posted on 2024年1月8日 by cool-jupiter

エクソシスト 85点
2024年1月7日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エレン・バースティン リンダ・ブレア ジェイソン・ミラー マックス・フォン・シドー
監督:ウィリアム・フリードキン

 

『 怪物の木こり 』の口直しが必要と思い、劇場からの帰り道にTSUTAYAで本作と『 Sダイアリー 』をレンタル。3回目の鑑賞。1回目は多分、小学生ぐらいで、ほとんど覚えていない。2回目は大学4年の頃に仲間数人で観た。なので2001年だったか。

あらすじ

女優クリス・マックニール(エレン・バースティン)の娘リーガン(リンダ・ブレア)は突然、暴力的かつ攻撃的な言動を呈し始める。精神科医に検査・診察させても原因がはっきりしない。途方に暮れるクリスに、医師は悪魔祓いの秘儀を提案して・・・

 

ポジティブ・サイド

『 レイダース 失われたアーク《聖櫃》 』的な発掘現場で見つかる、不思議な像。イラクの古代の遺物を邪教として描くのは時代が時代だからしゃーない。

 

場面変わってアメリカでは、ベトナム戦争末期。『 シカゴ7裁判 』や『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』に近い時代。政治や科学に対する不信が広がっていた時期と言える。そこに信仰という宗教的な営為の是非を問おうとしたのは非常にタイムリーであったはずだし、科学がきわめて高度に発達した現代においても、一定のテーマとして在り続けている。そこらへんが本作が古典たる所以だろう。

 

ディレクターズ・カットを観たが、時代や社会をていねいに描いているという印象を受けた。キャラの台詞やナレーションなどは一切使わず、映像でていねいに見せるという手法に好感を抱く。

 

その後のホラー映画の多くが本作にインスパイアされたと言われているが、ホラー以外も本作に触発されたはず。『 ロッキー 』のトレーニング・シーンのモンタージュの一部はカラス神父のジョギングへのオマージュに見えるし、馬車に乗る老婆は『 スター・ウォーズ 』シリーズのパルパティーン皇帝のモデルになったのではないかとも感じる。ラテン語を話す悪魔という設定は『 エミリー・ローズ 』が借用した。クリス邸の前の階段は『 ジョーカー 』でホアキン・フェニックスが踊り狂った階段、こちら側とあちら側を隔てる境界のように見えた。

 

悪魔に憑りつかれたリーガンを丹念に科学・医学の面からアプローチしていくことで、これが単なる疾患ではなく超常現象なのだということが明らかになっていく。一方でクリスの友人でもあるバークが死亡してしまうこと、医学を超えた警察沙汰にもなる。このあたりのバランスの取り方も上手い。ホラーとサスペンスの間を巧みに行ったり来たりすることで、観る側も信仰と理性の間を行ったり来たりすることになる。バークの死の真相についても、カラス神父の壮絶な最後のシーンから、別の可能性が浮かび上がってくる。このあたりの何が真実なのか惑わせる作風、理性的に考えるのか、それとも超常現象を認めるのかというのが本作の一貫したテーゼになっている。

 

本作をホラーの金字塔たらしめる数々の印象的なシーン、たとえばリーガンが緑色の吐しゃ物を吐くシーンや首をぐるりと180度回転させるシーン、さらに空中浮遊するシーンや、劇場公開時にはカットされてしまったスパイダー・ウォークのシーンなどは今見ても十分に怖い。むしろ過剰な効果音やCGが一切使われていないことで不気味さが増しているとすら言える。

 

冒頭のメリン神父の再登場によって、ついにカラス神父も悪魔祓いに参加。二人でリーガンに対峙するも、精神疾患によって息子を認知できなくなった母親の幻影を見せられたカラスが退場、一人残ったメリン神父は死亡。カラス神父の母の旧姓を答えられなかったリーガンが、その母の幻影を見せてくるという精神攻撃、さらに元々持病で服薬が欠かせなかったメリン神父の死因な何かなど、観る側の理性をとことん揺さぶる展開には恐れ入った。

 

最後にカラス神父の同僚のダイアー神父が、例の階段を下りることなく振り返るシーンで物語は締めくくられる。ダイアーは信じたのだろうか?見上げるメリン神父、見下ろすダイアー神父という対比から考えれば信じなかったのだろう。しかし、カラス神父の最後の懺悔を聞いたのもダイアー神父だった。彼が振り返った先にいるのが我々鑑賞者だとすると、ベタな表現ではあるが、解釈は観る側に委ねられたのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド 

ほとんど非の打ち所がない作品だが、リーガンが十字架で局所を思いっきり刺すシーンの後、医者を呼ばなかったのだろうか。精神科ではなく小児科あるいは外科をも巻き込むシーンがあっても良かったのにと思う。

 

総評

人間ドラマとしてもホラーとしても素晴らしい。続編の『 エクソシスト 信じる者 』がホラーよりも人間ドラマを重視したのは、オリジナルへのオマージュと、ホラーとしては勝てないという二つの理由からだったのか。また20年後に鑑賞してみたい。その頃には悪魔は宇宙開発ではなくゲノム編集などを呪っているのだろう。本作はそういう見方ができる、つまり時の経過にも充分に絶えうる作品で、だからこそ古典と呼んで差し支えないと思う。

 

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I beg your pardon?

劇中で2~3回使われたかな。意味は「もう一度おっしゃっていただけますか?」という、丁寧なもの。しかし、相手に復唱をお願いする意味以外に、文脈によっては「今何て言ったコノヤロー」的なニュアンスにもなるので注意。使うならフォーマルな場に限定しよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』
『 ブルーバック あの海を見ていた 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

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Posted in 映画, 海外Tagged 1970年代, A Rank, アメリカ, エレン・バースティン, ジェイソン・ミラー, ヒューマンドラマ, ホラー, マックス・フォン・シドー, リンダ・ブレア, 監督:ウィリアム・フリードキン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 エクソシスト 』 -信じる者は救われる-

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