Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: カナダ

『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-

Posted on 2025年5月6日2025年5月6日 by cool-jupiter

異端者の家 65点
2025年5月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ヒュー・グラント ソフィー・サッチャー クロエ・イースト
監督:スコット・ベック ブライアン・ウッズ

 

元・宗教学専攻として是非観てみたかった作品。途中でオチは読めたが、なかなかに楽しめた。

あらすじ

モルモン教のシスターであるバーンズ(ソフィー・サッチャー)とパクストン(クロエ・イースト)は布教のために家々を訪問していた。そんな中、気のいいリード(ヒュー・グラント)は二人の話に興味を示す。妻がパイを焼いているというので、二人は家に入る。しかし、リードは宗教に関する自論を語り始め・・・

 

ポジティブ・サイド

導入部で卑猥な話に興じる若い女子二人。なんのこっちゃと思わせて、思いがけない結論にたどり着くのが面白かった。と同時に、これは実はプロット上のとある伏線でもあるのだった。掴みは完璧である。

 

それなりに生きていれば宗教家の訪問を受けたことのある人もいるだろう。Jovianも若い頃は玄関先でエホバの証人やモルモン教を撃退したことがある。まあ、あれこそが若気の至りというものか。

 

本作は逆に、布教活動する側が訪問先で囚われの身にされてしまう。宗教を説きに来たら、逆に宗教の定義を問われた。うまく答えられずにいると、相手がモノポリーやらポップ・ミュージックやらを例にして、既存の宗教はオリジナルの模倣であると自説を懇々とぶってきた。これは怖い。一つには、その指摘が半分は当たっているから。もう一つには、ミスター・リードを演じるヒュー・グラントが底知れなく薄気味悪いから。

 

この気味の悪さをさらに助長するかのように、キリストの復活を模したイベントまで行われる。この脚本兼監督の二人は、なかなか悪趣味かつ手練れである。

 

外部からの助けが来そうになったり、あるいは二人の問答がリードを揺さぶりそうになったりとサスペンスフルな展開が続く。そして監禁された地下室の奥深くでシスターが見たものとは・・・ このあたりもホラーとスリラーの境目というか、スーパーナチュラルスリラーとスリラーの間を行き来する作劇は興味深かった。

 

ラストはかなり観る側の想像力に働きかけるものになっている。以下、ネタバレなので白字で書く。あの蝶は胡蝶の夢の蝶のシンボルなのか、それとも生まれ変わりの象徴としての蝶なのか。後者だとすれば死んでから卵、幼虫、さなぎ、羽化に要する時間と矛盾するが、魂の転移的に考えれば説明できないことはない。そんな宗教的教義は劇中でも触れられていなかったが。また蝶が指先ではなく手首のところに止まっていたのも何かを示唆しているのか。シスターは「指先」(台詞ではfingertip)と言っていなかったか。またこの蝶は幻だったという解釈の余地もある・・・

 

ネガティブ・サイド

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教をビッグスリーと呼ぶのは構わんが、その他の宗教もぜひ俎上に載せた議論をしてほしかった。それをするときりがないというのは分かるが、新規は模倣の産物だという理論で行くと、結局はユダヤ教が正統性を持ってしまう。その旧約聖書も、たとえば「大雨と言えばノアの方舟」と言われていたが、洪水伝説自体はメソポタミアのギルガメッシュ叙事詩が明らかに先行テクストだし、ヨブ記の天地の描写はまんまギリシャ神話だったりする。ビッグスリー、特にユダヤ教を(ご時世的にも)特別扱いしないでほしかった。

 

また仏教や道教が一切言及されないのはご都合主義ではなかっただろうか。あらゆる収容を研究したと豪語する割にインド以東のアジアの宗教が議論されなかったことについて、なにか理由が欲しかった。シスターが「しかし、仏教のような宗教もあります」と言ったところにリードが「モルモン教徒が仏教を論じるのか?」のように言い返すだけで充分だったろう。

 

総評

日本でも宗教二世という言葉が一般化され、宗教(カルト)によって家族を奪われ、人生を壊された人々の存在がようやく可視化された。また40歳以上であればオウム真理教を思い出せる人も多いはず。しばしば無宗教とされる日本人にとって、宗教とは何かを考えるひとつのきっかけに本作はなれるかもしれない。ちなみに宗教とは、民主化=脱王権によって神話を必要としなくなった人々が、神話の代わりに・・・ おっと、これ以上は一部の宗教学者からクレームをもらうかもしれないので黙っておく。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

With great power comes great responsibility.

「大いなる力には大いなる責任が伴う」という意味。劇中でシスターが「スパイダーマン 」と呟いた瞬間、「違うぞ、アンクル・ベンの言葉だぞ」と思ったが、実はヴォルテールの言葉だったとは不勉強にして知らなかった。昔、WOWOWで見た『 アンダーカバー・ボス 』でユタ・ジャズのオーナーが

With that promotion comes a raise.

と同じような倒置用法で言っていたのが印象に残っている。探してみたら動画があったので、気になる人は37分59秒から視聴してみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』
『 ゴーストキラー 』
『 新世紀ロマンティクス 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, カナダ, クロエ・イースト, スリラー, ソフィー・サッチャー, ヒュー・グラント, 監督:スコット・ベック, 監督:ブライアン・ウッズ, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』 -ナードのビルドゥングスロマン-

Posted on 2024年12月31日2024年12月31日 by cool-jupiter

I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 70点
2024年12月31日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:アイザイア・レティネン
監督:チャンドラー・レヴァック

 

2024年の締めくくりにテアトル梅田へ。大晦日の夕方でも結構な客の入りだった。

あらすじ

トロント郊外で母親と暮らすローレンス(アイザイア・レティネン)は無類のシネフィルで、NYUで映画を学ぶための学費のため、地元のレンタルビデオ店でアルバイトを始めた。そのために唯一の親友マットとの時間が減り、また高校の卒業式に上映する記録映画の製作にも遅れが出て・・・

 

ポジティブ・サイド

これはおそらく『 ルックバック 』同様に、監督の自伝的な作品なのだろう。コミュニケーションが下手というか、あまりにも直球過ぎるところがナード気質満開で、顔、表情、体型、仕草などとも併せてオタクの典型とも言うべきキャラを生み出した。それが映画オタクで、自分でも学校のプロジェクトで映画を撮っているという導入はパーフェクト。

 

この年齢の若者が時々陥る肥大化した自我の罠に、ローレンスも見事にはまっているのはオッサン視点から面白くもあり、物悲しくもある。今すぐにでも思考を改めないと、そのまま大人になってしまうと矯正が難しいから。ここでバイト先のレンタルビデオ店のマネージャーと母親が中盤以降に大活躍。凡庸ではあるが、元SMAPメンバーのやらかしが報じられる今だからこそ刺さるエピソードも盛り込まれている。

 

ローレンスが家を離れてから見せる成長には、我あらず涙が。『 ライオン・キング

ムファサ 』でタカが犯した失敗を繰り返さなかった。これもやはり母とアラナのおかげか。実家や故郷を離れれば殻を破れるわけではない。自分というものを抑えることで破れる殻もある。10代の時に本作を観てみたかったなとしみじみ思う。

 

ネガティブ・サイド

ローレンスとマットの creative differences をほんの少しで良いので見せてほしかった。「女だけは自分が一番大事にしてきたものの隣にあっさり座る」と喝破したのは柴田ヨクサルだったか。マットにとってのローレン・Pがまさにそれで、そこには説得力があった。しかし、彼女の編集の腕が一切示されなかったので、マットが思い出動画の作成に取り組む姿勢がどう変わったのか分からず、ローレンスと疎遠になってしまう契機がやや不明瞭だった(まあ、決定的なのは jerk off ninety-eight times だろうが)。

 

総評

舞台が2003年ということで、まさにJovianの20代前半、TSUTAYAが日本を席巻していた頃で、デジカメも普及しつつある、まさに映画と普通の人間の距離が近くなっていった時代だった。一方でスマホやSNSなどはなく、人と人とが直接的につながっていた時代でもあった。AIによって文章や画像、音楽や映像ですら手軽に生み出せる時代になったが、そんな時に古き良き時代を思い起こさせてくれる一本だった。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

school night

翌日に学校がある夜、登校日の前夜の意味。映画などでしばしば親が夜更かしする子に 

It’s a school night!
明日は学校でしょ!

と言っている。学校に行った当日の夜ではない点に注意が必要である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』
『 港に灯がともる 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アイザイア・レティネン, カナダ, ビルドゥングスロマン, 監督:チャンドラー・レヴァック, 配給会社:イーニッド・フィルムLeave a Comment on 『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』 -ナードのビルドゥングスロマン-

『 デス・ストーム 』 -a typhoon day DVD-

Posted on 2024年5月17日 by cool-jupiter

デス・ストーム 40点
2024念5月14日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ゾーラ・バーチ
監督:リンジー・ゴスリング

 

C級ディザスター・ムービーかと思い、近所のTSUTAYAでレンタル。

あらすじ

アメリカの片田舎のミニンワには、様々な問題を抱える人々が暮らしていた。そこに超大型の竜巻が迫りつつあり・・・

 

ポジティブ・サイド

片田舎にこそ社会の縮図が存在するのだなと感じさせられた。

 

低予算ゆえに肝心のトルネードの脅威はほとんど間接的にしか描かれない。ただ、それが逆に想像を掻き立てる。

 

厳しい現実、救いのない現実が容赦なく展開するが、最後に小さな命が助かるのは救いか。

 

ネガティブ・サイド

群像劇だが、やや取っ散らかりすぎ。もう少し登場人物は減らせたように思う。特に、とあるクズ男の存在は不要に感じた。

 

TVアナウンサーの男性(名前忘れた・・・)の家族愛は麗しいが、被災地にのこのこやってきて、けが人を車で運んで、そして家族と再会・・・を喜ぶ前に、自分の報道の誤りと向き合う必要があるんちゃうの?

 

低予算映画ゆえか、誰も彼も演技が過剰。セリフ回しも拙い。また意味の分からないカメラワークも随所に見られた(投げられた車のカギを受け取るシーンなど)。

 

総評

ディザスター・ムービーかと思ったら、意外や意外、ヒューマンドラマだった。『 ヘヴィ・ドライブ 』並みのカバー詐欺。ただ小さな町の複雑な人間模様を眺めるのは、それなりに面白い。手持ち無沙汰の雨の日、あるいは台風の日の暇つぶしにはいいのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

issue

issue は多義語だが、劇中では A tornado warning has been issued. = 竜巻警報が発令されました、のように使われていた。issue = 発する、である。名詞でも a special issue = 雑誌の特別号のように使われる。TOEIC600点レベルなら知っていないとおかしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 不死身ラヴァーズ 』
『 関心領域 』
『 バジーノイズ 』

https://amzn.to/4dNIRUv 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, カナダ, ゾーラ・バーチ, ヒューマンドラマ, 監督:リンジー・ゴスリングLeave a Comment on 『 デス・ストーム 』 -a typhoon day DVD-

『 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 』 -微グロ耐性は必須-

Posted on 2023年8月21日 by cool-jupiter

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 50点
2023年8月19日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:ビゴ・モーテンセン レア・セドゥ クリステン・スチュワート
監督:デビッド・クローネンバーグ

クローネンバーグ作品は『 スキャナーズ 』、『 ザ・フライ 』、『 イグジステンズ 』だけ観た。

 

あらすじ

人類は痛みという感覚をなくし、新しい臓器が発生するという病のある未来に暮らしていた。加速進化症候群に侵されたソール・テンサー(ビゴ・モーテンセン)は相棒のカプリース(レア・セドゥ)と共に、内臓にタトゥーを施して、それを摘出するというショーで人気を博していた。しかし、こうした進化を好ましくないと感じる政府は、ティムリン(クリステン・スチュワート)を派遣し、ソールとカプリースの動向を注視していて・・・

ポジティブ・サイド

内臓摘出ショーを新しい形のセックスだと捉えるのは凄い視点だと感じた。たしかに人類の進化が悪い方向に進んでしまえば『 JUNK HEAD 』のような世界が到来するだろう。本作は現代と『 JUNK HEAD 』の中間地点の世界を提示しているように感じられた。

 

臓器の摘出=新しい形のセックスという見方も面白い。恥骨をぶつけ合うのではなく、互いを切り刻み、血を流すソールとカプリースの姿は確かに官能的と言えなくもない。レア・セドゥはヌードを披露。クローネンバーグに情念を一身に受け止めてしまったか。臓器摘出マシーンを操作する手つきのエロティシズムを表現できる女優はなかなかいないだろう。

 

進化する人類と、それを好ましくないと見なす政治的権力の対立という構図はSFでは珍しくもなんともないが、プラスチックを消化してしまう臓器の存在が、俄然本作を興味深いものにしている。言うまでもなくプラスチックによって汚染されてしまった海域とそこに住まう生物、さらにマイクロプラスチックに汚染されていると言われる現代人をグロテスクに映し出しているわけだ。悪趣味な変態映画人が鬼才と呼ばれる所以である。

ネガティブ・サイド

英語で一言で評するなら graphic となるだろうか。ビゴ・モーテンセン演じるソールの内臓摘出ショーは悪趣味の一語に尽きるし、臓器にもリアリティはない。骨や筋肉、腹膜、脂肪が一切ないのは、低予算映画ゆえか?製作やキャスティングを見るに、予算不足とは考えづらいが。

 

あの妙な食事介助椅子は何なのだろうか。結局自分で食べてるし。加速進化症候群患者に反応してあのように動くようだが、呈示される判断材料がちょっと少なすぎではないだろうか。

 

It’s time to listen. のダンサーは何のシンボル?痛みに対して悲鳴を上げるべき人体が、もはやその悲鳴を上げることができない云々を表しているのかと思うと、そうでもなく・・・ 特にストーリーに起伏やアクセントを与えるでもなく・・・ 

 

Graphicな作品である一方で、クリステン・スチュワート演じるティムリンがかなり饒舌(=説明好き)だったり、あるいはショーの観客が結構な長広舌を振るったりするのが気になった。『 A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー 』でもバーで延々としゃべる男がいてノイズに感じたが、それと同じだった。

 

総評

間違ってもデートムービーだと思ってはならない。アートな映画だという雰囲気に騙される大学生カップルが出ないことを祈る。『 スキャナーズ 』や『 ザ・フライ 』のような人体破壊に耐性がないと鑑賞は厳しいだろう。上映中の『 ビデオドローム 4K ディレクターズカット版 』も観るべきだろうか。ただ、同僚の急死および会社が欠員補充を当面はしない方針、かつ大学の後期が開講間近ということで土日も半日もしくは全日出勤になりそう。映画観る時間とれるんかな?

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You’d be surprised.

あなたは驚くだろう、というのが直訳だが、実際は文脈によって意味するところが変わる。

X: Cooking seems hard.
「料理は難しそうだ」
Y: You’d be surprised.
「(そんなに難しくないから、実際に料理をしてみれば)驚くかもね」

のように使う。こういうフレーズをサラっと使えるようになれば英会話中級者以上、CEFRでB1+だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, カナダ, ギリシャ, クリステン・スチュワート, スリラー, ビゴ・モーテンセン, レア・セドゥ, 監督:デビッド・クローネンバーグ, 配給会社:STAR CHANNEL MOVIES, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 』 -微グロ耐性は必須-

『 グリーン・ナイト 』 -エスクワイアの旅物語-

Posted on 2022年12月19日 by cool-jupiter

グリーン・ナイト 55点
2022年12月17日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:デブ・パテル アリシア・ヴァイキャンダー ジョエル・エドガートン
監督:デビッド・ロウリー

古代や中世のファンタジーは定期的に観たくなる。DQやFFといったゲームで育ったJovian世代なら尚更である。

 

あらすじ

アーサー王の甥であるサー・ガウェイン(デブ・パテル)は、クリスマスの日、円卓の騎士たちが集う王の宴に招かれた。そこに緑の騎士が現れ、自分の首を切り落とす者はいないかという遊び事を持ちかけてきた。ガウェインはその遊び事に乗り、緑の騎士の首を落とす。しかし、騎士はガウェインに「1年後にミドリの礼拝堂へ来い。その時、自分がお前に同じことをする」と言い残し、去っていった・・・

ポジティブ・サイド

中世(といっても古代に近い中世か)の英国の雰囲気が画面全体に溢れている。石造りの建造物はやはりエキゾチックに感じる。ガウェインの旅路の大自然の豊饒さと荒々しさも素晴らしい。

 

ガウェインが行く先々で経験するイベントが非常に王道RPG的。『 アクアマン 』とは違い、これらのイベントが物語の侵攻を助けるのではなく、あくまでもエスクワイア=騎士見習いであるガウェインの成長や内省につながっている。

 

最後にたどり着く緑の礼拝堂で再会する緑の騎士との対話、そこでガウェインの脳裏を駆け巡るビジョンは、まさに騎士としての生き様の成就だったのだろう。そこまでなら普通の中世ファンタジーなのだが、面白いのはガウェインが追い求めた名誉。名誉とは他者からの称賛なしには得られない。しかし、旅路の中で出会う人々は騎士としての名誉を時に傷つけ、時に無理解、無関心を示す。そう、本当の騎士は認められるものではなく、自らそうあろうとする者なのだ。

 

ネガティブ・サイド

ダークファンタジーだからといって、本当に画面を暗くしてどうする。一部、本当に何も見えないシーンがあった。映画ファンが不満たらたらだった『 GODZILLA ゴジラ 』のMUTOとゴジラの夜の決戦シーンよりも暗い。誰が何をやっているのか見えない。何故にこんな画を複数も撮ってしまったのか。

 

肝心のグリーン・ナイトに関する知識をもっと共有してほしかった。緑に関する哲学的な問答が終盤にあるのだが、もっとグリーン・ナイトそのものに関してキャラクターたちに語って欲しかった。『 MEN 同じ顔の男たち 』のグリーン・マンもかなり謎の存在だったが、彼らには何か共通点があるのだろうか。アーサー王の物語なら解説は不要に思うが、英国とグリーン・ナイトやグリーン・マンといった超常的な存在については説明不足に感じた。

 

主演のデブ・パテルは『 ホテル・ムンバイ 』でははまり役だったが、今作では今一つ。この時代のグレート・ブリテン島にインド人はいないはず。デブ・パテルは悪い役者ではないが、このキャスティングが最適だったとは思えない。

 

総評

ある程度アーサー王伝説について知っておく必要がある・・・とまでは言わないが、その知識があることが望ましいのは間違いない。その意味で、間口が広い映画とは言えない。ただ古典的なRPGゲーム程度の知識があれば、ガウェインが行く先で経験するあれやこれやのイベントを楽しむことはできる。GOGのグルートのモデルはグリーン・ナイトなのかな?といったような疑問を楽しみながら鑑賞すればいい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

believe in ~

劇中では “Do you believe in magic?” =「あなたは魔法を信じますか?」という感じに使われていた。

believe ~ = ~を(良いもの、または正しいものだと)信じる
believe in ~ = ~の存在・能力・価値などを信じる

としっかり区別して覚えよう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』
『 ケイコ 目を澄ませて 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アイルランド, アメリカ, アリシア・ヴァイキャンダー, カナダ, ジョエル・エドガートン, デブ・パテル, ファンタジー, 監督:デビッド・ロウリー, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 グリーン・ナイト 』 -エスクワイアの旅物語-

『 アンチ・ライフ 』 -クソ映画・オブ・ザ・イヤー決定-

Posted on 2021年11月22日 by cool-jupiter

アンチ・ライフ 10点
2021年11月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:コディ・カースリー ブルース・ウィリス
監督:ジョン・スーツ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211122214725j:plain

今年の1月に大阪ステーションシティシネマで上映していて、一瞬だけ「面白いかも」と感じたのを覚えている。近所のTSUTAYAで準新作になっていたのでレンタル。これは大失敗だった。

 

あらすじ

西暦2242年。人類はパンデミックにより地球を捨て、ニューアースへと旅立っていた。密航者のノア(コディ・カースリー)は、元軍人のクレイ(ブルース・ウィリス)の下で清掃係となる。だが航行中、船内に謎の生物が侵入。乗員がゾンビと化していき・・・

 

ポジティブ・サイド

一応、ジョン・スーツ監督のやりたいビジョンはしっかり見えた。監督の顔がよく見えない作品というのは、監督が手練れだからという場合と監督に芯がないからという場合があるが、本作のパッチワークにはジョン・スーツの映画愛が見て取れた。

 

なんと、撮影はコロナ前の2019年の9月から10月にかけて行われたらしい。ウィルスによって人類が云々というのはSFの常道だが、一応はその先見性も認めておく。

 

ネガティブ・サイド

以下、ネタバレあり

 

よくもここまでオリジナリティのない作品が作れるものだと感心する。最後まで鑑賞した自分を褒めてやりたい。パッと観ただけで

 

『 エイリアン 』

『 遊星よりの物体X 』

『 プロメテウス 』

『 ゴーストバスターズ 』

『 ブロブ 』

 

などなど・・・

 

それこそ本物のSF映画マニアが本作を鑑賞したら、類似先行作品を300本ぐらい挙げられるのではないだろうか。それぐらいオリジナリティに欠ける映画である。

 

まず宇宙船の外観のCGがしょぼい。また宇宙船の中身のセットもしょぼい。ごく限られた場所しか映さず、仮にも恒星間宇宙船であるのに、その広さや奥行きが全く伝わってこない。またカメラワークもお粗末の一言。とにかく宇宙船内部のセットが作りこまれていないので、そこを映せないし、CGに割ける予算もなかったのだろう。編集も問題だらけ。なぜそこでカットして、そこにつながるのか、というシーンのオンパレード。最初はコロナ禍の真っ最中に撮影したので、大人数が近距離でいっぺんに喋れないからかと思っていたが、そうではない。単に編集および監督が無能だからだろう。それこそENBUゼミナールの卒業生の方がよい仕事をするのではないだろうか。

 

外は虚無の宇宙。船内にはエイリアン。寄生された人間はゾンビと化す。もうこれだけでオリジナリティが欠片もないことが分かるが、狭い通路をグイグイ進んでいくという、まんま『 エイリアン2 』まで見せつけられる。さらに謎の規制エイリアンを倒すための武器が洗剤と妙なレーザーガンときた。『 ブロブ 』ネタはまだしも、『 ゴーストバスターズ 』ネタをぶっこんでくるか?意味が分からない、

 

分からないと言えば、脚本も無茶苦茶で理解に苦しむ。とにかく、色々なキャラクターが場面場面で選択する行動に合理性がまったく見られない。この宇宙船はもうだめだ。脱出ポッドで逃げよう。ここまでは良い。だが、宇宙船の方を爆破する必要は果たしてあったのか?5000人ぐらいが乗船していたのでは?原子炉閉鎖、あるいはエンジン停止ではダメだったのか?

 

エンディングも意味不明の一語に尽きる。『 ミスト 』や『 ライフ 』など、バッドエンディングは普通にOKである。問題は、そのあまりの画面の暗さと不明瞭さ。さらに走ってくるゾンビ少女は完全無視?さっぱり訳が分からん・・・

 

総評

間違いなく2021年の外国映画でもワーストである。珍作であり、怪作であり、駄作である。こんなクソ作品に時間と金を使ってはならない。コロナ禍で新作がなかなかリリースされない中で全米首位を獲得した『 ウィッチサマー 』よりも、さらに酷い。ブルース・ウィリスのファンには悪いが、敢えて言う。スルーせよ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

look on the bright side

(物事の)良い面を見る、の意。look の後には at や for が来ることが多いが、他にも look through や look over、look to など、look の句動詞は数多くある。この look on the bright side は句動詞ではなく、一つの成句として覚えてしまおう。

You broke your phone? Look on the bright side. You can stop playing games. 

ケータイを壊した?良い面を見ろよ。ゲームを辞められるじゃないか。

のように使う。クソ映画にも何らかの美点を見出さねば・・・

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, F Rank, SF, カナダ, コディ・カースリー, ブルース・ウィリス, 監督:ジョン・スーツ, 配給会社:プレシディオLeave a Comment on 『 アンチ・ライフ 』 -クソ映画・オブ・ザ・イヤー決定-

『 CUBE 』 -シチュエーション・スリラーの極北-

Posted on 2021年10月5日2021年10月5日 by cool-jupiter

CUBE 80点
2021年10月3日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:モーリス・ディーン・ウィント ニコール・デ・ボア アンドリュー・ミラー
監督:ビンチェンゾ・ナタリ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211005002118j:plain



Jovian嫁は本作を観たことがないというので、自宅で鑑賞。コロナ収束の兆しは喜ぶべきだが、映画館およびその周辺での無節操な輩が明らかに増加しているため、逆に映画館通いがしにくくなった。Give me a goddamn break…

 

あらすじ

男は目覚めると謎の立方体の中にいた。周りの部屋の人間も合わせて男女6人だが、なぜ、どのようにして立方体に閉じ込められたのか皆目見当がつかない。そんな中、アッティカの鳥の異名を持つ脱獄王が先導するが、彼はある部屋に仕掛けられた死のトラップにかかって命を落としてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭いきなり男が死亡する。しかもただの死に方ではなく、鋼線が格子状に張り巡らされたトラップによって一息で人間サイコロステーキにされてしまう。Jovian嫁は「うげ」という言葉を発したが、Jovianも大学生の時にレンタルビデオで借りてきて鑑賞したときに同じような声を発したと記憶している。それほど強烈なシーンで、タイトルにもなっているキューブという立方体の危険さが観る側に一発で伝わってくる。この人間サイコロステーキは映画『 バイオハザード 』でもレーザーの形で登場している。悪く言えばパクリ、上品に言い換えればオマージュだろう。

 

サイコロステーキのシーンという顔に酸のシーンといい、低予算映画ながらどこにカネと手間をかけるべきか、よく分かっている。グロとバイオレンスは忌避されるテーマであるが、そうであるがゆえにそのジャンルの熱心な愛好家というものが存在する。ビンチェンゾ・ナタリ監督はそのことをよく理解している。

 

キャストが無名なのもいい。次に誰が死ぬか分からないからだ。また役者としての知名度や格付けなどを演じる側も観る側も気にする必要がないし、監督も演出を好きなようになれるだろう。『 ディープ・ブルー 』のサミュエル・L・ジャクソンや『 ザ・ハント 』のエマ・ロバーツのような例もあるが、低予算映画は売れていない俳優を起用して、そこから逆にスターを生み出すべきだ。日本でも『 カメラを止めるな! 』という超低予算映画から濱津隆之やどんぐりといった役者が売れるようになった。役者>ストーリーという構図に陥りがちな邦画は、このようなアイデア一発で勝負する映画から学んでほしい。

 

グロとバイオレンスを序盤で強烈に見せつけるが、本作が優れているのは、そうした視覚的な恐怖の演出の軸を、キャラクターの変容へと変えていくところ。特に警察官クエンティンが、法執行官としての意志と責任を忘れ、暴力に物を言わせるように変貌していくのは正にホラーである。怪物の誕生である。精神科医のハロウェイや大学生のレブン、謎の男ワースなどが織りなす奇妙なチームワークと対立の構図は、ミステリでおなじみの吹雪の山荘や絶海の孤島の屋敷に閉じ込められた哀れなモブキャラたちのそれ。ここでの疑心暗鬼の様相は、『 遊星からの物体X 』にも共通するサスペンスがある。

 

数学を武器にしてキューブの謎に迫る過程、その数学が誤っていたと分かった時の絶望、そこに現われる意外な救世主など、最後の最後まで息をつかせぬハラハラドキドキ展開で突っ走る。Jovian嫁は「これって『 インシテミル 』にそっくりやな」という感想を述べたが、エンタメとしては本作が圧勝であろう。日本版リメイクの公開前に多くの方々に復習鑑賞してほしいと思う。

 

ネガティブ・サイド

キューブの中で動く部屋が存在するわけだが、それを可能にするためには立方体の中にかなりの隙間が必要である。クエンティンらのパーティーはかなりあちこちキューブ内を巡っているが、早い段階で「動く部屋」の通り道を発見できなかったのは少し考えづらい。

 

レブンが一の位が2や5の3桁の数字を数秒考えて「素数じゃない」というシーンは、やはり何度見ても奇妙だ。2以外の偶数は絶対に素数ではないし、一の位が5の二桁以上の数字は必ず5の倍数で、すなわち素数ではありえない。

 

デカルト座標も、「動く部屋」には割り振れないだろうし、「動く部屋」の通路=何もない空間や、「動く部屋」を通すために動かされる部屋にも割り振れないだろう。数学はネタに使えばキャラが一気にスマートに見えるが、そこで失敗すると一気にキャラが陳腐化してしまうという諸刃の剣である。

 

総評

観るのは3度目だが、やはりこれは傑作である。謎の密室状の構造に閉じ込められ、理不尽なストーリーが展開するというジャンルを確立し、その影響は公開から20年以上が過ぎた2020年代でも健在。『 プラットフォーム 』などは一例だろう。本作が気に入ったという人は『 CUBE 2 』は華麗にスルーして、『 CUBE ZERO 』を鑑賞しよう。クオリティは落ちるものの、思いがけない連環の物語になっていることにアッと驚くことだろう。日本版のリメイクには正直なところ不安9、期待1であるが、是非ともJovianの予想を裏切ってほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Let’s face it.

直訳すれば「それに直面しよう」となるが、少し意訳すれば「そのことを直視しよう」となる。なにか都合が悪いが、それでも真実であるということを述べる前に言う。 Let’s face it. He is a good man, but he’s a bad sales rep. = 「現実を見よう。彼は良い人だが、営業マンとしてはダメだ」のように使う。  

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, A Rank, アンドリュー・ミラー, カナダ, シチュエーション・スリラー, ニコール・デ・ボア, モーリス・ディーン・ウィント, 監督:ビンチェンゾ・ナタリ, 配給会社:クロックワークス, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 CUBE 』 -シチュエーション・スリラーの極北-

『 リアム16歳、はじめての学校 』 -親離れと子離れと-

Posted on 2020年7月30日 by cool-jupiter

リアム16歳、はじめての学校 60点
2020年7月28日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ダニエル・ドエニー ジュディ・グリア シボーン・ウィリアムズ
監督:カイル・ライドアウト

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200730205415j:plain
 

シネ・リーブル梅田で去年(2019年)に見逃した作品。カナダの映画というのは、アメリカ映画とは違って、外部の日常生活に劇的な変化が起きるというプロットよりも、キャラクターの内面の変化やキャラ同士の関係性の変化を丹念に追うプロットが多い気がする。そういう意味では本作は典型的なカナダ映画である。

 

あらすじ

リアム(ダニエル・ドエニー)は物理学を愛する16歳。学校には行かず、ホームスクーリングで育った。ケンブリッジ大学に入学して天文学者になるという目標は、しかし、高卒認定試験を受けるために訪れた公立高校で変更となる。彼はそこで義足の少女アナスタシア(シボーン・ウィリアムズ)に恋をしてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

どことなく『 ミーン・ガールズ 』に似ている。大自然の中で育った少女が、高校という独自の生態系でも食物連鎖の上位者となっていく過程が面白かった。本作の主人公のリアムは逆で、自宅で温室栽培されていた。にもかかわらず、男子のダメなところをしっかりと学校で体現してしまう。リアムがアナスタシアの行動パターンを掴み、何度も何度も偶然を装って廊下ですれ違うシーンに共感する、あるいは自らの(情けない)過去を思い出す男性は多いに違いない。アナスタシアに恋焦がれながらも、アプローチができない。行動が小学生レベルなのだ。リアムの行動にもどかしさを覚えながらも共感してしまうという絶妙な仕掛けである。

 

何がユニークで面白いかと言えば、リアムがマリア・サンチェスという優等生の代わりになるというところ。普通におかしい展開なのに、あれよあれよという間にリアムがマリアとして学校に受け入れられるのには笑ってしまう。

 

母親とリアムの関係も多少の毒を孕みながらも真に迫っている。『 母が亡くなった時、僕は遺骨を食べたいと思った。 』でも存分に描かれていたが、男というのはどこまで行っても本質的にはマザコンである。息子と母親の距離感にも共感することしきりである。これはリアムの初恋を描くと同時に母親からの旅立ち、そして母親への回帰、そして更なる自立への一歩を描く物語だからである。

 

シングルマザーとして過剰なまでにリアムの教育に注力する母親クレアもなかなかの味わいだ。夫、つまりリアムの父親との離婚については詳しく触れられないが、その部分にドラマを求めなかったのは正解である。リアムは極めて共感しやすいキャラクターであるが、自分と同一視してしまうという人はあまりいないはず。それはリアムと母クレアの関係の近さと強さが普通ではないからだ。お祖母ちゃんが常にそこに鎮座ましましているが、この祖母の距離と視点が我々ビューワーの距離と視点だ。実際にクレアが自宅の黒板にリアム教育プロジェクトのマイルストーンを一つ一つ書き出し、そして達成の暁には一つ一つ消していく。クレア視点ではなく第三者視点でそれが描写される。息子に「どうせ学校で覚えるのだから」とマリファナを吸わせたり、パーティーでの酔い方を積極的に学ばせようとしたりするなど、この母親への共感のしづらさがリアムへの共感のしやすさと絶妙なバランスを作り出している。

 

個人的に本作を最も面白くしているのはアナスタシアのパーソナリティだと感じる。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 』の主人公と同じ名前というところで笑ってしまうが、最も目を引くのは義足である。なぜ義足なのか。いつから義足なのか。そうした疑問の答えをマリア・・・ではなくリアムが得るまでに、一筋縄ではいかない初恋および青春の「あるある」が待ち受けている。初恋の相手は清純な乙女だった・・・というのは多くの男が抱く幻想であろう(だからといって女性がみんな百戦錬磨の恋愛強者だと言っているわけではない)。カナダ人や西洋人全般の文化やメンタリティだろうか。『 建築学概論 』に近い展開があり、我々ならここで心が折れてしまうかもしれないが、リアムはそうはならない。カナダ制作映画『 もしも君に恋したら 』のD・ラドクリフ演じる主人公と共通するメンタリティである。アナスタシアとの距離を徐々に、しかし確実に縮めていくリアムの姿はやはり男心を疼かせる。リアムの初恋は実るのか?固唾をのんで見守ってしまうこと請け合いである。アッと驚く展開あり、運命を予感させる展開もあって、なかなかに飽きさせない作りである。

 

それにしてもカナダというのはずいぶん進んでいる国だなとあらためて感じる。2017年にカナダ旅行中に見た子供向け番組の『 Super Ruby 』は主人公が眼鏡着用・・・だけなら別に驚かないが、なんと補聴器も装用している。そして補聴器の新品をゲットするために尋ねた言語聴覚士が義手装備。この記事の『 チョコレートドーナツ 』の項をよくよく読んでいただきたい。これがほぼ同時期の日本の現実である。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200730205108j:plain

 

ネガティブ・サイド

母親クレアのキャラクターに一貫性が欠けている。息子を愛してやまないのだが、ギャグやユーモアを前面に押し出しているシーンと、そうではないシーンを対比させた時に、ギャップがあり過ぎる。普段優しい人ほど怒ると怖いという感じではなく、息子の一番の親友という役を演じているテンションのまま母親として怒る、というのがどうにもチグハグに見えてしまった。

 

校長先生がリアムの母親にアプローチする展開が蛇足であるように感じた。もしもそうしたサブプロットを追求したいのなら、チャランポランな人物に設定すべきでない。しかし、チャランポランでなければリアムがマリアにはなれない。プロットとキャラクターのパーソナリティであれば、プロットを優先すべきだ。

 

キャラのちぐはぐさやプロットとの不整合は他にもある。学校でリアムをいじめてくるキャラになんらかの因果応報があってしかるべきだと思うが、なかった。うーむ、ベタでもいいから、何かこのいじめっ子にして恋敵の男にギャフンと言わせるような展開が欲しかった。また、リアムのお祖母ちゃんは存在感あり台詞なしというキャラで、最後に見せ場があるかと期待したが、これも無し。うーむ・・・

 

総評

妥当性確認が今もって為されていない「全国一斉休校」によって、日本各地で図らずもホームスクーリングが大規模に行われた。その意味では本作は自宅学習(の狙いや難しさ)をシミュレーションできる作品である。同時に親離れと子離れのプロセスを描く一種のセミドキュメンタリー的でもある。親バカの自覚のある人、または大学進学などで子どもが家から出ていくことが不安でならないという向きにお勧めしたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You had it coming.

「自業自得」の意である。直訳すれば「あなたがそれをやって来るようにした」である。 I had it coming. や We had it coming. など主語を変えて使うこともできる。

 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, カナダ, シボーン・ウィリアムズ, ジュディ・グリア, ダニエル・ドエニー, ヒューマンドラマ, 監督:カイル・ラウドアウト, 配給会社:エスパース・サロウ, 青春Leave a Comment on 『 リアム16歳、はじめての学校 』 -親離れと子離れと-

『 ゾンビーノ 』 -人間とゾンビの共生は可能か-

Posted on 2020年6月4日 by cool-jupiter

ゾンビーノ 65点
2020年6月3日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:キャリー=アン・モス ビリー・コノリー クサン・レイ
監督:アンドリュー・カリー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200604222657j:plain
 

間もなく「withコロナの時代」になると言われている。コロナは未知のウィルスであり、それはゾンビや魔女に例えられるだろう。そうした異形の存在と人類が平和共存できるかどうか。さらには高度に発達したAIと人類の共生は可能か。陳腐なテーマであるが、今という時代においては重要な問いである。

 

あらすじ

放射能のせいで死者がゾンビとしてよみがえる世界。だがゾムコム社の開発した首輪により、ゾンビは無害・無力化された。そうした世界で、ティミー(クサン・レイ)は母親が見栄で手に入れてきたゾンビによっていじめっ子たちからたまたま救われる。ティミーはゾンビ(ビリー・コノリー)にファイドと名付け、奇妙な友情を育んでいくが・・・

 

ポジティブ・サイド

ゾンビは元々ブードゥーの呪いによる産物とされているが、普通に考えればそれはない。かなりの確率で、脳血管障害で仮死状態に陥った者が息を吹き返した、だがその時に構音障害や構語障害、あるいは片麻痺などを発症したのだろう。そうした人物が都合の良い単純労働力と見なされ、生かされていた。それがゾンビのルーツだろう。本作のゾンビはもちろん人を襲うのだが、それがゾンビの主たる属性にはなっていない。ゾンビが労働力として、あるいは愛玩動物として扱われる社会を描いており、これは極めてユニークな世界観だ。

 

ティミーとファイドの友情は、abnormalでありながらも美しい。ゾンビというある意味で絶対服従してくれる危険な存在と友情を育むのは、どこかロボットと疑似父子・疑似親友関係を結ぶ『 ターミネーター2 』のジョン・コナーとT-800のようであり、異形の存在者との奇妙な友情という点では『 グーニーズ 』のチャンクとスロースを思い起こさせる、ほっこり系でもある。それだけなら動物との友情やロボットとの友情と特に変わりはない。本作の貢献は、キャリー=アン・モス演じるティミーの母とゾンビであるファイドとの、奇妙な関係とその劇的な帰結にある。その脇には、女性ゾンビのタミーとの関係を深める脇役もいる。ゾンビと共存する世界というのは、ある意味でゾンビと本当の家族になることだ。家族がゾンビ化して葛藤する映画はおそらく2000本ほど存在するだろうが、ゾンビと家族になる映画というのは、おそらく20本以下ではないだろうか。本作はその貴重な一本である。

 

本作はほのぼの映画である反面、強烈な社会風刺でもある。ゾンビという物言わぬ、思考力を持たぬ、搾取される側であり、なおかつ人間性を喪失した存在という属性の諸々が、人類そのものに一挙に投影されることになるからである。これには恐れ入った。冒頭のコメディックなナレーションと白黒映像は大いなる伏線である。本作は多くの男性諸氏の心胆を寒からしめるのではないか。同時に、人間と非人間の関係性、その境目を大いに揺さぶってくる。コメディでありならがコメディの枠を大いに超えた良作である。

 

ネガティブ・サイド

コメディとして『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』のような突き抜けた面白さがない。ティミーの父親の抱えるトラウマがそもそも面白くないのだ。葬式にこだわる気持ちは分からないでもないが、そうした気持ちがこれだけ持続するからには、ゾムコム社も当初はテクノロジーに欠陥があって、ゾンビを飼いならすことにはしばしば失敗した、そして多くの犠牲がその過程で出た。そうした歴史的な経緯が必要だっただろう。

 

政府ではなく企業がでかい顔をする世界というのは確かに近未来的であるが、本作の世界観とは合わない。経済=金銭の授受が絡むと、様々な境目がそれだけで揺らぐからだ。人はカネのためならプライドも捨てられるし、衣服だって脱ぐ。近未来SFの要素は歓迎だが、あまりにも現実社会とリンクした要素は不要である。そうした経済優位の社会を描くのなら、それこそゾンビという労働力をいかに搾取できるかが社会的地位の高さにつながっているというディストピアを描くべきだったと思う。

 

グロいシーンは不要だったように思う。真夜中に月を背景に立ち上がる老婆のシルエット、のように序盤から中盤にかけてはボカした描写だけで良かった。そうすることで、後半のストーリーがよりカラフルになったはずだし、タミーを愛するナード男の怒りにも共感しやすくなったことだろう。

 

総評

多様性の重要さが叫ばれて久しい。その一方で差別問題の根深さが浮き彫りになる事件も頻発している。Homo homini lupusな世界が現出する一方で、橋や塔や動物やゲームのキャラクターと結婚する者も出てくる時代である。そして、新型コロナウィルスの出現で、ソーシャル・ディスタンスなる概念と行動まで生まれた。人間同士の関係がまさに揺らいでいる。本作は10年以上前の作品であるが、人間と非人間との奇妙な関係の醸成にフォーカスしている。今こそ再鑑賞すべき時を迎えていると言えるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

There is no such thing as ~

~などというものは存在しない、の意である。劇中では There is no such thing as a stupid question. = マヌケな質問なんてないんだよ、というふうに使われていた。

 

There is no such thing as a perfectly safe drug.

There is no such thing as a foolproof plan.

 

といった感じで使う。職場であなたの提案が上司や同僚の抵抗にあったら、“There is no such thing as a risk-free investment/project!”と反論しよう。

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2000年代, C Rank, カナダ, キャリー=アン・モス, クサン・レイ, コメディ, ビリー・コノリー, 監督:アンドリュー・カリー, 配給会社:ショウゲートLeave a Comment on 『 ゾンビーノ 』 -人間とゾンビの共生は可能か-

『 スキャンダル 』 -セクハラおやじ、観るなかれ-

Posted on 2020年2月24日2020年9月27日 by cool-jupiter
『 スキャンダル 』 -セクハラおやじ、観るなかれ-

スキャンダル 70点
2020年2月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ニコール・キッドマン シャーリーズ・セロン マーゴット・ロビー ジョン・リズゴー
監督:ジェイ・ローチ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200224132117j:plain
 

日本でも2000年あたりから、焼肉屋や居酒屋から女性の水着グラビアつきのカレンダーが消えていったと記憶している。あれはビール会社から店へのプレゼントだった。女性をセックス・オブジェクトとして見る傾向は徐々になくなってきてはいるが、今でも外国人(西洋人だろうが東洋人だろうが)は、日本のコンビニに並ぶ漫画雑誌や週刊誌の表紙が一様にグラビアになっていることに衝撃を受けるようだ。何がセクハラかは定義しづらい。しかし、曖昧であればいいわけではない。本作は日本の中年おやじにはどう映るのだろうか。

 

あらすじ

TVネットワークの巨人、FOXニュースの元キャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)はCEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リズゴー)をセクハラで提訴した。カールソンはその他の被害女性たちが立ち上がるのを待つ。主要キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は女性を蔑視するD・トランプ大統領候補との論戦の中、自身とロジャーの関係を思い起こしていた。そして野心を秘めたケイラ・ボスビシルはロジャーと面会するチャンスを得るが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200224132138j:plain
 

ポジティブ・サイド

冒頭でシャーリーズ・セロン演じるメーガン・ケリーが第四の壁を突き破って、FOXニュースとはどんな組織であるのかを懇切丁寧に説明してくれる。つまりは究極のトップダウンな組織なわけである。権力者が長く居座るとろくなことがない。星野仙一が中日ドラゴンズの監督を辞した時に、そうした旨のことを言っていた。ここに抑圧された個の存在を容易に嗅ぎ取ることができる。

 

アナウンサーは、ニュースを正確に読み、ニュースに適宜にコメントをつけ、あるいは専門家から適宜にコメントを引き出す。その仕事に性別は本来は関係ない。それでも日本でも女子アナ相手にこんな質問が飛ぶ土壌が今でもあるのだ。女子アナという言葉はあるが、男子アナあるいは男性アナとは普通は言わない。つまりはそういうことである。

 

脚本家が『 マネー・ショート 華麗なる大逆転 』のチャールズ・ランドルフなので、ストーリーの進行の仕方がよく似ている。つまり、説明的なセリフもナレーションもなく、淡々と進んでいく。観る側はいきなりテレビ局の真ん中に放り込まれた気分になる。そこは完全なる別世界だ。異なる論理の支配する世界。組織の構造を知ったら、あとはキャラクターを追う。そうしないとストーリーについていけない。非常に上質な、大人向けの作りと言える。

 

本作ではロジャー・エイルズを単純なセクハラ大魔王として描いていないところが興味深い。彼の妻は彼をとことん信じているし、FOX内部にはチーム・ロジャーの一員であることを自認する女性も数多く存在する。彼女らに名誉男性というレッテルを貼ることはたやすい。だが、それは安直に過ぎる。『 ウルフ・オブ・ウォールストリート 』でジョーダン・ベルフォートから多額の金を前借した女性社員は、涙を流して彼に感謝していた。極悪人であっても人を重用することはできるし、人に好かれること、リスペクトされることもある。いや、むしろ巨大な帝国を築いた人間なのだからカリスマ性があって当然なのだとも考えられる。「英雄色を好む」と古今東西で言われるが、我々は人間をあまりにも性別や貧富などの属性で見ることに慣れすぎて、人間そのものを見なくなってしまっているのではないか。ロジャー・エイルズの没落は痛快である一方で、苦い味も残す。そのバランス感覚が良い。彼を全面的な悪に描くのではなく、その背後にトランプ現大統領のような人間がいることを描くことで、権力を持った男の危険性や組織論への新たな見方も提供しているからだ。

 

ニコール・キッドマンの不退転の決意を示す表情、弱気になりながらも子供たちの前では気丈に声を振り絞る様、そしてケリー・メーガンの同調に目を丸くする様は堂に入っている。セクハラの告発はやはり勇気がいるのだ。復讐に燃える女ではなく、個の強さを信じる個人を演じるからこそ、これほどの強さを感じさせてくれるのだろう。次に素晴らしいと感じたのは、ケイト・マッキノン。完全なる男社会におけるゲイなのだが、こういった存在に光を当てられる監督ジェイ・ローチや脚本家チャールズ・ランドルフの感覚は素晴らしいと思う。単純な男女の物語に二分化されてもおかしくないストーリーが、彼女の存在によって強者とマイノリティの対立の構図になっているからである。

 

後味は苦い。まるで『 ブラック・クランズマン 』のエンディングのようである。伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之相手の裁判で実質勝利を収めたのが昨年の2019年。本作が描くストーリーはトランプ政権誕生前夜の2016年。これは記録映画ではない。現在進行形の物語である。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200224132200j:plain
 

ネガティブ・サイド

ストーリーのその後がもっと知りたかった。カールソンらが多額の示談金を得たこと、そしてロジャーらがさらに高額の退職金を得たことが字幕で示されたが、その後についてもう一言二言触れてほしかった。例えば、#MeToo運動との関連だとか、他局や他の会社、他国にもこうした運動が広まったということなど。

 

主役がカールソンなのかケリーなのかが少々分かりにくい。歴史的(と言うほど昔ではないが)にはカールソンなのだろうが、物語的にはケリーなのだろう。であれば、ケリーの存在感をさらに際立たせるためにD・トランプ候補との舌戦などにもう少し尺を割くべきだったと思う。例えば、トランプのツイッター連投をしっかり時系列順に画面に表示し、いかに彼の投稿が支離滅裂であるかを示すこともできたはず。

 

あとは視聴者側からの視点がほんの数か所で良いので挿入されていれば、もう少しわかりやすくなったはずである。ほとんどすべてがFOXの局内で完結してしまうストーリーであるため、市井の人の反応が分からない。テレビのニュースというのは報じる側と視聴する側の両方が存在してこそ成立するのだから、ニュースの受け手が「ロジャー・エイルズ提訴される」の報にどのように反応したのか、そうした声をもう少しつぶさに拾う必要があったのではないか。

 

総評

これは決して対岸の火事ではない。いや、火事という言い方をしてしまうこと自体が当事者意識の欠如になるかもしれない。狭義のセクハラとは性的な関係の強要なのだろうが、広義に解釈すれば性的な機能を人間性よりも上位に置く関係の構築という、人間性の否定となる。セクハラとはスケベな言動ではなく、無礼・失礼な言動であるということを、Jovianをはじめアホな中年男性はまず思い知る必要がある。セクハラはすまいと心に決めた男性はぜひ本作を鑑賞しよう。「俺はセクハラなんかしたことないよ」と無自覚に胸を張れる男性は、本作を観ても無意味であろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

A fish rots from the head.

「魚は頭から腐る」の意。日本語なら「鯛は頭から腐る」だが、元はロシアのことわざであるようだ。魚を鯛に置き換えたのが日本らしい。上等な魚に言い換えることで、上等な組織ほど、トップから腐敗していくことを端的に表している。某議員が某総理にあてた言葉がまさにこれである。偶然だろうが非常に良いタイミングで英語の同じ意味のことわざが本作で使われている。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, カナダ, シャーリーズ・セロン, ジョン・リズゴー, ニコール・キッドマン, ヒューマンドラマ, マーゴット・ロビー, 伝記, 監督:ジェイ・ローチ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 スキャンダル 』 -セクハラおやじ、観るなかれ-

投稿ナビゲーション

過去の投稿

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme