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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 共謀家族 』 -中国映画の本領発揮-

Posted on 2021年7月27日 by cool-jupiter

共謀家族 75点
2021年7月23日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:シャオ・ヤン タン・ジュオ ジョアン・チェン
監督:サム・クァー

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英語タイトルはSheep without a shepherd、羊飼いなき羊(たち)の意。イエス・キリストを欠いた迷える信者集団の謂いなのだが、本作では単純に父を欠いた家族は無力であるということらしい。

 

あらすじ

中国からタイへの移民であるリー・ウェイジェ(シャオ・ヤン)は小さなネット回線会社を営んでいて、地域にも溶け込んでいた。映画好きで、「映画を1000本見れば、この世に分からないことはない」とも豪語していた。ある日、娘がサマーキャンプで一服盛られ、そのことで脅迫を受ける。脅迫相手を思わぬ形で殺害してしまった娘を守るため、ウェイジェは映画の知識を生かして・・・

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ポジティブ・サイド

オリジナルのインド映画は未鑑賞だが、これを中国でリメイクすることになったのは、中央に対する批判、権威への反抗の意味合いが強かったからだと思われる。ただし、それを中国の都市部でやるとまずい(かつての中国人の教え子によると、中国都市部で「打倒、共産党!」と叫ぶと10分以内に連行されるとのこと)。なので舞台を中国国境に近いタイに持って行ったと思われる。

 

冒頭で鮮やかな推理を披露する警察局長。しかし、推理は的を射ていても、証拠品はでっち上げ。そのことを悪いとも何とも思っていない。なるほど、この人がヴィランなのかとすぐに分かる。なんと『 ラスト・エンペラー 』の皇后様ではないか。母親としての情念から悪魔的なまでの警察局長としての権威を体現している。天海祐希や木村多江でも、こんな演技はできるかどうか。

 

対するウェイジェ役のシャオ・ヤンの存在感も大したもの。パッと見は矢本悠馬と亀田大毅を足して2で割ったような普通のオッサン顔なのだが、そこに家族愛と狡猾さの両方を同居させるという複雑なキャラクター。映画の知識を巧みに援用して、アリバイ工作を行う様は、一見すると何をやっているのか意味不明。しかし、その種明かしがなされてみれば、なるほどと膝を打ってしまった。人間心理の盲点を上手くついたトリックで、北村薫や有栖川有栖が思いつきそう。警察の捜査や取り調べの方法を映画で学んでおり、それに対する対抗策を家族全員に叩き込む様には、日本が忘れて久しい「頼もしい父親像」を見出した。わざとらしいカメラワークや音響、そしてBGMがやたらと自己主張をしてくるが、これらは全て狙ったもの。物語、特にトリック部分の構造と映画の演出が一致しているという憎らしい構成である。

 

1940年代から1960年代ぐらいの日本の横暴警察官を彷彿させるサンクンという警察官のめちゃくちゃぶりが、そのまま中国本土の警察官のイメージを喚起させる。彼の暴れっぷりが逆説的な当局への批判になっているだけではなく、物語の重要な部分を補強してくれているというところもポイントが高い。

 

警察のめちゃくちゃな取り調べとそれに耐えるウェイジェ一家の構図は、決して「中国だから」で済ませてはいけない。共謀罪などという「犯罪を構想しただけ、相談しただけ」で罪になるという法律がまかり通っている現代日本で、いつかどこかで起きるであろう抑圧の絵図であると本作を観ることもできるはずだ。

 

ラストの展開で多少モタモタを感じさせるが、『 ショーシャンクの空に 』へのオマージュのためと考えれば納得できるというもの。

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ネガティブ・サイド

肝腎かなめの長女ピンピンのトラウマ克服過程が一切描かれていない。これは大いに不満である。睡眠薬を使って女を手篭めにするような男は有罪確定である。ぶっ殺したくなるのは当然である。しかし、本当に殺してしまったことで、「こいつは死んで当然」という気持ちと「こんな奴でも殺してしまうのはやりすぎだ」という気持ちの葛藤が一切描かれなかった。これがないと、家族総出で完全犯罪を目論んで、実行していこうとする過程のリアリティが出てこない。

 

父・ウェイジェの cinephile としての描写も甘かった。普段のちょっとした街の人々とのやりとりで色んな名作映画のセリフを引用する(そして、コアな映画ファンは気付くが、町の人は気付かない、など)といった演出が欲しかった。またウェイジェの映画鑑賞数(もちろん配信のみだろうが)1000本以下というのも少々興ざめ。配信だけで1000本観ていたという設定でも良かったはず。

 

総評

一言、面白い。中国映画は今が過渡期なのだろう。韓国と同じく、中国の映画人も今や大卒だらけらしい。看護師歴数十年のJovian母も「専修学校卒の看護師の方が現場ですぐに活躍してくれるが、すぐに成長が頭打ちになる」と言っている。日本の大学も映画学科をもっと作ってほしい。そうしなければ、エンタメ要素と社会的メッセージの両方を併せ持った作品を生み出せるクリエイターを輩出できない。

 

Jovian先生のワンポイントタイ語レッスン

サワディーカップ

タイ語で「こんにちは」の意味。男性が使う。女性の場合は「サワディーカー」となる。あいさつは何か国語で言えてもいい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, シャオ・ヤン, ジョアン・チェン, タン・ジュオ, 中国, 監督:サム・クァー, 配給会社:アーク・フィルムズ, 配給会社:インターフィルムLeave a Comment on 『 共謀家族 』 -中国映画の本領発揮-

『 SNS 少女たちの10日間 』 -並みのホラー映画より怖いので注意-

Posted on 2021年7月25日 by cool-jupiter

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SNS 少女たちの10日間 75点
2021年7月21日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:テレサ・チェズカー アネジュカ・ピタルトバー サビナ・ドロウハー
監督:バーラ・ハルポバー ビート・クルサーク

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シネ・リーブル梅田での公開時に見逃してしまった作品。ドキュメンタリー好きのJovianは意気揚々と劇場に向かったが、凡百のホラー映画よりもはるかに怖い映画を観てしまった。

 

あらすじ

チェコで、18歳以上の童顔女性3人に、SNS上で12歳の少女に成りすましてもらうとどうなるのかという実験が行われる。そこで起きたのは、少女たちを性的に搾取しようとする男性たちからのおぞましいコンタクトの数々だった・・・

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ポジティブ・サイド

ドキュメンタリー作品は、しばしばプロの俳優ではなく普通の人間が主役になるが、本作もごく普通の女性に焦点を当てている。ユニークなのは、その女性が「少女」を演じるところ。しかも、その演技を見せる対象がFacebook上でコンタクトしてきた相手という点が独特だ。スタジオ内に巨大な子ども部屋セットを組み、リアリティを感じさせる小物を配置していくという念の入れよう。演者たちの話し方も、チェコ語が分からない人間にも、どこか舌足らずで幼く聞こえた。迫真の演技と評してもいいだろう。

 

次々にコンタクトを取ってくる男性たちには漏れなくモザイクがかけられている。しかし、目と口以外の部分がぼやけていることで、逆に彼らの不気味さや醜悪さが際立っている。これは狙った演出なのだろうか。それとも個人情報保護の思わぬ産物なのだろうか。まあ、前者だろう。ホラー映画の怖さは、幽霊やら怪物やらの実在しないものから生み出されるのではない。それに恐怖する人間の姿に共感することから生まれる。ただ、これは二流のホラーのテーマであり手法。本当のホラーとは、たとえば『 悪魔のいけにえ 』のように、恐るべき人間が存在すると知ること、そしてそのような人間に遭遇してしまうことだ。そうした意味で、本作はホラー映画の様相を呈している。ホラーに出てくる人間の何が怖いかというと、人間を残酷に殺すからではない。他の人間を徹底的に「物象化」するからである。人間同士の人間らしい交流ではなく、人間存在の属性(例えば女性性あるいは女性機能)だけを他者に求めるようになる。これは怖い。我々は「カネさえもらえりゃ、別に仕事はなんだっていいんだ」という投げやりな態度になってしまうことがある。これは人間と仕事の関係である。しかし「セックスさせてくれさえすれば誰でもいい。なんなら相手が未成年でも、ローティーンでもOK」という姿勢は、空恐ろしさを感じる。Child predatorだから怖いというのもあるが、それ以上に相手を人間として見ていないという点で、PC画面上に次から次へと現れる男たちが、だんだんと「人間」に見えなくなってくる。

 

本作の怖さとしてもう一つ挙げられるのは、ネットを介してコンタクトしてくる人物が自分の知り合いである可能性があるということだ。事実、スタッフの知人が少女役の一人にコンタクトしてくる。これは怖い。ネット上での交流というのは、どこかフワフワしたところがある。つまり、現実的な感覚が弱いのだが、この変態を「直接に知っている」という感覚は恐怖以外の何物でもないだろう。

 

救いがあるとすれば一人だけ「聖人君子か、この男は」という男性が登場すること。もちろん、聖人君子でも何でもなく、ごく普通の男性なのだが、まるでモンスターが徘徊する廃墟となった世界でまともな人間に巡り合えたかのような錯覚にすら陥ってしまう。この男性の何が良いかと言えば、性を否定しないところ。性的なことに蓋をかぶせないのだ。結構あっけらかんと「ネット上には無料でポルノがいっぱいある」と語ったりするところが逆に好感を持てる。

 

クライマックス前はモンスターたちご対面。公共の場でも臆面なく、いきなり相手をセックスに誘おうとする男たち。少女役たちの電話上でのとある一言で、そそくさと退散していく様は滑稽千万であるが、これはチェコに限らす日本でもロシアでも中国でもメキシコでも、世界中どこでも同じだろう。そしてラストではスタッフの知人モンスターと対面。

 

本作を観て「チェコは怖い国」、「チェコ人男性、やばい」などの印象を受けたとすれば、それは間違いである。だからといって「SNSやばい」という反応も正解とは言えない。引き出すべき教訓は「大人は子どもを守らなくてはならない」という原理原則だろう。自分で自分を成熟した大人であると認識できるかどうか。自分を含めた多くの人が、本作を他山の石にしなければならないだろう。

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ネガティブ・サイド

やっていることはsting operation = おとり捜査なので、これが合法か違法かで、警察に通報できるかどうかが変わってくる。そういったチェコ国内の事情を最初に知らせておいてくれると親切だった。

 

エンディングあるいはポストクレジットのシーンで、本作によりチェコ国内で何がどう変わったのか、あるいは何をどう変えていかなければならないかが議論されるようになったというナレーションなどが欲しかった。『 トガニ 幼き瞳の告発 』公開後、韓国ではトガニ法という法律が新たに制定されたというが、チェコでも同じような動きがあったのか、それとも動きが生まれつつあるのか。そういったところを知りたかった。

 

総評

猛暑酷暑の夏であるが、本作を鑑賞すれば、老若男女問わず背筋が凍る思いをすること請け合いである。このようなシリアス一辺倒のドキュメンタリー作品が大ヒットするチェコという国の市場(=映画ファン層)は素晴らしいと思う。インドにおける『 パッドマン 』、韓国における『 トガニ 幼き瞳の告発 』のように、自国の暗部をさらけ出し、なおかつそれを力を持った作品に仕上げるクリエイター、およびそうした作品をしっかりと受け止める客層の存在というのは、残念ながら日本に欠けたものである。劇場でなくともよいので、機会があれば多くの人に鑑賞してほしい。

 

Jovian先生のワンポイントチェコ語レッスン

Ahoj

「アホイ」と発音する。意味は英語でいうところの”Hi”に相当する。ビデオチャットの開始時に全員がこう言うので、軽めのあいさつなのだと分かる。あいさつだけは何か国語を覚えても損はしないだろう。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アネジュカ・ピタルトバー, サビナ・ドロウハー, チェコ, テレサ・チェズカー, ドキュメンタリー, 監督:バーラ・ハルポバー, 監督:ビート・クルサーク, 配給会社:ハークLeave a Comment on 『 SNS 少女たちの10日間 』 -並みのホラー映画より怖いので注意-

『 SEOBOK ソボク 』 -韓流・サイキックアクション-

Posted on 2021年7月23日2021年7月23日 by cool-jupiter

SEOBOK ソボク 70点
2021年7月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:コン・ユ パク・ボゴム
監督:イ・ヨンジュ

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シネマート心斎橋以外で韓国映画を観るのは久しぶりな気がする。きっと『 The Witch 魔女 』とは趣が異なるサイキックアクション映画だった。

 

あらすじ

元国家情報局エージェントのギホン(コン・ユ)は、人造クローンのソボク(パク・ボゴム)の護衛の任に就くが、ソボクは不死の秘密を解明する鍵だとして、何者かの勢力から襲撃を受けた二人は逃走を図る。ギホンとソボクは衝突しながらも、互いへの理解を深めていくが・・・

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ポジティブ・サイド

『 トガニ 幼き瞳の告発 』の気弱でありながら芯の通った父親、『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』の嫌味な父親、『 82年生まれ、キム・ジヨン 』の無自覚な夫など、作品ごとにガラリと変わるコン・ユの表現力、演技力が今作でも遺憾なく発揮されている。どこか陰影を秘めた俳優で、それが感情を素直に、爆発的に吐露させる際に鮮やかなコントラストを成す。そうしたシーンに敢えてBGMを用いない、あるいは極めて抑制的に使うのが韓流の特徴で、ここは日本の映画人も見習うべきところだろう。

 

コントラストという意味では、逃亡劇のバディとなるソボクを演じたパク・ボゴムが対極に来る。与えられた命令の意味を考えず、ただそれに従おうとするだけのギホンと、自分の生まれた意味、存在する意味を常に問いかけてくるソボクという図式は、これがSFアクション映画でありながら、ヒューマンドラマでもあるのだということを素朴に、しかし確実に強調している。何をどう問いかけても、しかし、人間、腹は減る。腹が減ったら食うしかない。禅問答も一興だが、腹が減っては戦はできぬ。こうした「食べる」演技と演出も韓流の真骨頂である。現実離れした設定が極めて現実的に見えてくる。

 

アクションにも抜かりはない。『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』あたりからCGのレベルも如実に上がってきた韓国映画だが、本作の終盤でソボクが荒ぶる超能力で殺戮と破壊をもたらすシーンはなかなかの説得力。漫画『 AKIRA 』にインスピレーションを得ていると思しきシーンもあり、また銃火器を使うシーンでも徴兵制の国であるというリアリティを感じさせた。暴力から目を背けない、暴力を描き切るという姿勢に関しては韓国はぶれない。

 

ソボクという名前が、秦の始皇帝が不死の霊薬を手に入れるために派遣した徐福であるというのは面白いと感じた。同時に、中国や日本へのサラリとしたアピールにもなっていて、韓国エンタメ界は、自国ではなく世界をマーケットにしていることも見て取れた。『 ゴジラvs.コング 』の小栗旬の扱いの酷さにはがっかりしたが、ハリウッドで活躍する大谷級の俳優の出現を待ちたい。韓国やインドに抜かれる前に・・・

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ネガティブ・サイド

クローン人間なのか、それとも超能力人間なのか、不死の存在なのか。ソボクといういくらでも深めていけるキャラの属性がイマイチはっきりしなかった。クローン人間というのは技術的には難しくないとかつての教え子(阪大の学生)に教わったことがある。障壁になるのは法律や倫理。ゲノム編集やデザイナー・ベイビーが現実味を帯びつつある中、クローンという設定はやや拍子抜けである。

 

ソボクのテレキネシスが序盤と終盤にしか発揮されないが、中盤の市井のシーンでも見てみたかった。社会性の欠落したソボクが、色々とやらかして、それを兄貴分たるギホンが色々と諭していく。その過程でギホンは自らの主体性の無さに気が付く・・・というのはあからさま過ぎるだろうか。

 

科学的な意味でのソボクの生みの親である女性研究者の姉的、母性的な面をもっと強調していれば、ギホンの兄的、父性的な面とのコントラストが際立って、ソボクという極めて抑制的なキャラクターに逆説的に人間味を与えることができたと思う。この博士の思考や行動の軸がやや定まっていなかったように見えたのは残念。

 

総評

荒唐無稽なプロットながら、役者の演技力とそれをさらに強調する演出によって、見応えのあるストーリーに仕上がっている。大企業、官僚機構、そして超大国のアメリカを軸に壮大なスケールで描こうとしたことが成功しているのかどうかは怪しい。しかし、気宇壮大な物語を中で個人がいかに生きるべきかを模索しようするという点で、映像化できそうな漫画や小説ばかりを映画化する邦画界は大きく差をつけられている。久々に韓国を映画を観て、あらためてそう感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

invalidate 

無効にする、の意。手元にクレジットカードがあれば有効期限のところに、good through または valid through の表示があると思われる。この valid に接頭辞 in と接尾辞 ate をくっつけて出来上がった語、割と難しめに見える語も、身近なところでその語源(形態素)が使われていたりするものである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アクション, コン・ユ, パク・ボゴム, 監督:イ・ヨンジュ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 SEOBOK ソボク 』 -韓流・サイキックアクション-

『 ゴジラvs.コング 』 -劇場再鑑賞-

Posted on 2021年7月17日 by cool-jupiter

ゴジラvs.コング 70点
2021年7月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アレクサンダー・スカルスガルド ミリー・ボビー・ブラウン レベッカ・ホール ブライアン・タイリー・ヘンリー 小栗旬
監督:アダム・ウィンガード

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ゴジラとコングのどつき合いを再鑑賞。良かった面と物足りない面の両方が浮き彫りになったと感じた。

 

あらすじ

キングギドラが倒されてから3年。一切姿を見せていなかったゴジラが突如米国のエイペックス社を襲撃する。同社従業員のバーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は会社の陰謀を暴くべくポッドキャストで放送を繰り返していた。その一方で、モナークは髑髏島にコングの収容基地を作っていたが、巨大に成長したコングをこれ以上には収容できそうになかった。アイリーン(レベッカ・ホール)は島から出すとゴジラがコングを襲撃してくると主張するが・・・

 

ポジティブ・サイド

あらためて思うのは、肉弾戦の面白さ。昭和の怪獣プロレスは今の目で見ると極めて campy であるが、そこにはCG全盛の今には出せない味があった。もちろんコングもゴジラもフルCGの本作であるが、そのバトルは基本的にすべてフィジカル・コンタクトを伴うもの。MarvelやD.C.のスーパーヒーローものでは最終的にはレーザービームの打ち合いからの大爆発になることが多いが、やはり視覚的にも聴覚的にも、ドシン、ドスン、ドカンのような擬音語が聞こえてきそうなバトルは楽しい。噛みつきからの一本背負いからストンピングに移行するところなど、WWEのヒールを思わせるムーブ。このシーンのためだけにもう一度劇場に行ってみたい。

 

ゴジラが四つん這いになって、それこそオオトカゲのように動くシーンは記憶にない。これもコングという霊長類とゴジラという爬虫類・両生類のコントラストを大いに強調していた。コングが武器を持つのもまさにプロレス。令和ではどうか分からないが、昭和のプロレスに凶器は欠かせないのである。

 

KOMよりも破壊の迫力が増していたのもポイントが高い。モンスター・ゼロ=キングギドラとゴジラの初顔合わせが南極だったこともあり、人工物の破壊が足りなかった。今作ではゴジラとコングの顔合わせが洋上だったが、巡洋艦から艦載機、空母まで撃沈と、ゴジラのもたらす破壊を堪能することができた。

 

香港の街には悪いが、ひたすらゴジラ(と少しだけコング)に破壊されるのを観るのも楽しかった。最初はなぜ香港?という疑問に、つい最近まで西洋文明に属し、今では東洋文明に属しているという、The Battle of East and Westにふさわしい舞台だからとも感じられた。

 

カイル・チャンドラーやミリー・ボビー・ブラウンの人間パートの薄さに初回は眉をひそめたが、再鑑賞で「モナークのあれやこれやのドラマは要らないか」と思えた。

 

ネガティブ・サイド

KOMとの一番の違いというか、最も残念だったところは伊福部サウンドのゴジラのテーマ音楽がなかったところ。もちろん、よく似たサウンドは挿入されていたが、それは『 ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 』でジョン・ウィリアムスによるテーマ曲のパロディが使われていたのと同様の感覚を受けた。

 

ゴジラとコングの最初の遭遇で、ゴジラの放射熱線で空母が撃沈されてしまったが、あれではあの海域は思いっきりフクシマ状態では?

 

レン・セリザワ(敢えてこう書く)が何故anti-Godzillaなのか。その部分の説明が不足していた。1954年の『 ゴジラ 』の芹沢博士も実は結構マッドな発言をしていたが、それは科学者として純粋すぎるあまりのものだった。レンについても何か一つ、背景を物語るもの、たとえば渡辺謙が『 GODZILLA ゴジラ 』で見せたような懐中時計のようなものがあれば良かったのだが。

 

総評

ヒューマンドラマ要素を期待してはいけない。怪獣が大暴れして、人間の造形物が次から次へと壊れていく様を楽しむための映画である。コロナ禍が続く中、人類の叡智の結晶であるワクチンが自然の脅威であるコロナウィルスへの切り札になるのかという想いを、メカゴジラに託して観てみるのも興味深い。そうした現実世界を下敷きに本作を鑑賞すれば、渡辺謙の言った”We will be his.”=我々人類がゴジラのペットになるのだ、というセリフが味わい深くよみがえってくる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

duke it out

スラングとまではいかないが、かなりinformalな表現。日本語にすれば「どつき合う」となる。

Godzilla duked it out with Kong. = ゴジラがコングとどつき合った。

Godzilla and Kong duked it out with each other. = ゴジラとコングがどつき合いをした。

のように使う。まあ、こんな表現を知っているなら英会話スクールに通う必要はない。Camblyなどを使って、ひたすらネイティブと話せるレベルだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, アレクサンダー・スカルガルド, ゴジラ, ブライアン・タイリー・ヘンリー, ミリー・ボビー・ブラウン, レベッカ・ホール, 小栗旬, 監督:アダム・ウィンガード, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ゴジラvs.コング 』 -劇場再鑑賞-

『 1秒先の彼女 』 -台湾ロマンスの佳作-

Posted on 2021年7月14日 by cool-jupiter

1秒先の彼女 65点
2021年7月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:リー・ペイユー リウ・グァンティン
監督:チェン・ユーシュン

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『 あの頃、君を追いかけた 』と同じく台湾映画。変則ロマンスというのは大体ハズレがない。本作も腑に落ちない点はあれど、恋愛映画としての面白さを保っている。

 

あらすじ

郵便局職員のシャオチー(リー・ペイユー)は、仕事もプライベートも充実していない。しかしある日、公園でたまたま参加したダンスレッスンで、イケメン講師に声を掛けられ、七夕バレンタインにデートの約束をする。しかし当日、シャオチーが目を覚ますと、バレンタインデーは終わっていて、自分にはその一日の記憶がない。消えた一日の謎を探るべくシャオチーは動き出すが・・・

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ポジティブ・サイド

リー・ペイユーの魅力にいつの間にか絡めとられる。パッと見でそこまでの美人ではないのに、いつの間にかチャーミングに見えてくる不思議。『 はちどり 』のキム・セビョクの凛とした女性像とは異なり、アラサー女子に突如モテキがやってきたぜ、ひゃっほー!のような笑顔。何を浮かれてるんだ?という気持ちにならず、微笑ましくなってくるのは、それだけリー・ペイユーが共感を呼ぶ演技をしているからだ。表情、そして全身で喜びを表現すれば、それだけ本人の魅力も増す。ある意味で『 アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング 』などと同系統の作品とも言える。

 

けれど本当の主役は実はもう一人のなんでもワンテンポ遅いグアタイだった。詳しくは語れないのだが、この主人公の行動は多くの男性の共感を呼び、そして多くの女性をドン引きさせることだろう。Jovianはグアタイにシンクロし、Jovian嫁はグアタイを白眼視していたからだ。しかし、よくよく考えてほしい。こういう好きな人を遠くから見守っているだけで満たされるというキャラクターは確かに気持ち悪い。だからといって、そうした人物が突如ヒロインを口説いてきて、上手くいくだろうか。いかない。男の願望キモイと思うのは勝手であるが、プラトニックな願望をキモイと思うということはどういうことであるのか。そのように感じる人、特に女性はよくよく自分の胸に手を当てて自問してみるべきだろう。

 

分類上は時間系ファンタジー・ロマンスになるかな。『 ぼくは明日、昨日のきみとデートする 』や『 夏への扉 ーキミのいる未来へー 』を楽しめる向きならチケットを買うべし。

 

ネガティブ・サイド

あまり真面目に「時間」について考察するのは無意味だとわかっているが、やはり海がザバーンとなっているシーンは気になった。同じく、この世界の描写の方法からすると、七夕バレンタインデーを失くしているのはシャオチー以外の多くの人も当てはまるのではないか。シャオチーが「今日は何曜日?」と街中の人に尋ねて「月曜日」と返ってくるのは、その瞬間は良いが、物語が進み、真相が見えてくるにつれて、「ん?」と思わざるを得ない。ここはシャオチーがなんでもワンテンポ早いからで説明できるものではない。

 

グアタイとシャオチーの因縁というか、すれ違いの歴史をもう少し丁寧に描写してほしかったと思う。いや、十分に丁寧なのだが、どれだけのテンポのずれが積もり積もると空白の一日が生じるのかというヒントのようなものが欲しかった。

 

シャオチーが気に入っている深夜ラジオ番組のDJも、終盤にもう一度登場してよかったのにと思う。

 

総評

普通に良い話である。といのは男性目線の感想か、女性から見ると極めてキモイ話のようである。けれど、その生々しさこそが人間を描いている証ではないか。原作は少女漫画でござい、という映画が氾濫している邦画界はキャラクターは描けても人間が描けていない。人間模様が見たいという映画ファンは、チケットを買って台湾映画に投資しようではないか。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

的

中国語であるが、日本語にも取り入れられている表現。名詞にくっつけて「~な」という形容詞的用法にできたり、「~の」という所有格的な用法にもできる。Jovianの大学1年生時代に同じ寮で暮らしたオーストラリア系中国人が持っていたCDアルバムが台湾のバンド、動力火車の『 明天的明天的明天 』だった。意味を尋ねたところ、”Tomorrow’s tomorrow’s tomorrow”との答え。中国語も面白いなと感じた瞬間だった。その友人とは今でもFacebookでつながっている。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, ファンタジー, リー・ペイユー, リウ・グァンティン, ロマンス, 台湾, 監督:チェン・ユーシュン, 配給会社:ビターズ・エンドLeave a Comment on 『 1秒先の彼女 』 -台湾ロマンスの佳作-

『 ゴジラvsコング 』 -ゴジラ映画というよりもコング映画-

Posted on 2021年7月4日2021年7月6日 by cool-jupiter

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ゴジラvsコング 70点
2021年7月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アレクサンダー・スカルスガルド ミリー・ボビー・ブラウン レベッカ・ホール ブライアン・タイリー・ヘンリー 小栗旬
監督:アダム・ウィンガード

 

待ちに待っていた一作。可能な限り事前情報はシャットアウトし、当日はゴジラTシャツとゴジラキャップでMOVIXあまがさきへ出陣。本当はTOHOシネマズなんばあたりへ向かいたかったが、コロナが落ち着くまでは繁華街は避けねば・・・

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あらすじ

キングギドラが倒されてから3年。一切姿を見せていなかったゴジラが突如米国のエイペックス社を襲撃する。同社従業員のバーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は会社の陰謀を暴くべくポッドキャストで放送を繰り返していた。その一方で、モナークは髑髏島にコングの収容基地を作っていたが、巨大に成長したコングをこれ以上には収容できそうになかった。アイリーン(レベッカ・ホール)は島から出すとゴジラがコングを襲撃してくると主張するが・・・

 

以下、ネタバレあり

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ポジティブ・サイド

ハリウッド版ゴジラ(*ジラを除く)の属性がしっかりと引き継がれている。すなわち、ゴジラは人間の活動は基本的に歯牙にもかけない怪獣王であるということ。これは良かった。今作のゴジラの新しい面としては、爬虫類的に這いまわる動きが、ゴジラとは思えないほどに俊敏であること。昭和ゴジラまでにしか見られなかったストンピング攻撃もポイントが高い。

 

コングの設定も伝統的なもの。動きも1930年代コングを踏襲していて、ピーター・ジャクソン版と見た目の共通点も多い。素手では何をどうやってもゴジラには勝てないので武器を持たせてあげたが、これぐらいはハンデとしてちょうどいい。電気の力でパワーアップする、あるいは復活するというのもコングのお約束であり、そこもしっかり踏襲されている。美女ではなく少女と交流するというのも時代の流れか。耳の聞こえない少女ジアの自然で、それでいて力強いたたずまいは、確かにコングをして「守ってやらねば」と思わせるに足るものがあった。

 

怪獣映画というのは基本的にプロレス的な肉弾戦で、『 アベンジャーズ 』シリーズの中でも『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』をJovianが最も面白いと感じるのは、ヒーロー同士の戦いがプロレスのそれで、最後の最後のキャップとアイアンマンの戦いが電撃やらビームがメインではなく、肉弾戦になっているからだ。ゴジラとコングが『 キングコング対ゴジラ 』並みのプロレスを形だけでも見せてくれたことに個人的には満足している。ゴジラがコングを踏みつけながら咆哮する様は「負けを認めんかいゴルァ!」のように聞こえて面白かった。まあ、これは予想通りの結果。何をどう考えても、コングがゴジラに敵うわけがないのである。

 

『 GODZILLA ゴジラ 』や『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』でさらりと触れていた地球空洞説を本作は追究。『 ザ・コア 』などのように定期的に出てくるネタだが、衛星によって地表が丸裸にされている現代、地下に目を向けるのはごく自然な発想であろう。地下世界が単なる地底旅行ではなく、文字通りに別世界、漫画『 HUNTER×HUNTER 』で言うところの暗黒大陸のようで、これも面白い。ここから新たにキングギドラ級の別の怪獣が現われてくる可能性も感じさせてくれた。

 

メカゴジラの出現情報は事前にシャットアウトできなかったが、今作のようなどちらが勝ってもどちらが負けても賛否両論が生まれるような対決には、両者に共通する第三の敵を登場させるのが常道。『 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 』もそうだった。メカゴジラもお約束通り。宇宙人ではなく人類がメカゴジラを作ると暴走してしまうのは、『 ゴジラ×メカゴジラ 』や『 GODZILLA 決戦機動増殖都市 』でお馴染みである。そしてメカゴジラは基本的にクソ強い。アホみたいな火力を有して、プロレスでも強いという反則キャラである。本作でもその強さを遺憾なく発揮し、ゴジラを圧倒。そのメカゴジラをコングとゴジラの共闘で倒す流れは、これまた予想通りとはいえ、楽しむことができた。

 

あまり小難しいことは考えず、巨大怪獣たちが激突するところを観たいという向きにお勧めしたい。

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ネガティブ・サイド

ゴジラのパートとコングのパートがアンバランス。というか、これはゴジラ映画ではなくコング映画。アメリカの制作会社が作ったものとはいえ、もう少しゴジラに尺を与えてくれ。伊福部サウンドも権利関係か何かで使えなかったのか?

 

KOMの続きにも見えない。前作のキーパーソンの一人だったラッセル(ミリー・ボビー・ブラウン)もほとんど何もしていないし、父親カイル・チャンドラーに至ってはKOMで芹沢から渡されたバトンをどこにやったのか分からない。サリー・ホーキンスを死なせていなければ代役が見事に務まっていただろうに。芹沢の息子の小栗旬も、なぜモナークではなくエイペックスに属しているのかが謎。父親の遺志を受け継ぎたくない事情があるのなら、それを説明すべきだ。あるいは、それをほのめかすべきだった。

 

怪獣たちの通った後で自然が復活したという前作の終わりから今作に至るまで、世界がどう復興してきたのか。その過程でゴジラという怪獣王の君臨する世界で人間が大自然に対してどのように振る舞ってきたのかを見せる描写が一切なかったのが悔やまれる。エイペックス、あるいは世界のどこかの国が「怪獣?SDGs?知るか!この世界は人間がexploitしてナンボなんじゃいヨッシャー!」みたいな考え方をしているということが見せられていれば、メカゴジラの開発にもっと説得力が生まれる。

 

そのメカゴジラ自身の強さの見せ方も微妙。スカルクローラーを倒しても、今さら誰も感銘を受けたりなどしない。コングとゴジラが壮絶なプロレスに興じている中、KOMのごとく、ラドンやMUTOなどの怪獣が誰が王の座に座るのかを見届けるために集まってきた。そこにメカゴジラが登場。『 ゴジラvsメカゴジラ 』のようにあっさりとラドンを病院送りにする。次の生贄は・・・という瞬間に小栗旬が変調。メカゴジラが暴走を始める・・・であれば、メカゴジラの強さがもっと具体的に伝わってきたはず。

 

総評

モンスターバースのことを考えずに、単独作品としてゴジラとコングがdick-measuring contestをプロレス的にやっていると割り切って観るべし。小栗旬のファンならば、その扱いのひどさに天を仰ぐことだろう。けれど日本人俳優がハリウッドに行くというのはこういうこと。筒香や秋山を見るべし。誰もがイチローや大谷になれるわけではないのだ。本当は60点ぐらいなのだが、ゴジラというキャラに5点、コングというキャラにも5点を与えたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Who’s your daddy?

劇中で実際に使われているセリフではないが、ゴジラがコングに対して「負けを認めろ」と迫るシーンの咆哮の意味を考えてみた。私的に英語字幕を付けるとするならば、これで決まりである。直訳すれば「お前の父ちゃんは誰だ?」となるわけだが、ここでの意味は「俺の方が強いだろう?」のような感じである。相手にこちらの優位を見せつける時の言葉である。もちろん本当の親子の間で使うこともある。同僚アメリカ人が自分の娘に対して説教するときに、これを言っているのを聞いたことがある。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, アレクサンダー・スカルガルド, ゴジラ, ブライアン・タイリー・ヘンリー, ミリー・ボビー・ブラウン, レベッカ・ホール, 小栗旬, 監督:アダム・ウィンガード, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ゴジラvsコング 』 -ゴジラ映画というよりもコング映画-

『 クワイエット・プレイス 破られた沈黙 』 -第3作に続くか-

Posted on 2021年6月27日 by cool-jupiter

クワイエット・プレイス 破られた沈黙 75点
2021年6月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:エミリー・ブラント キリアン・マーフィー ミリセント・シモンズ
監督:ジョン・クラシンスキー

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『 クワイエット・プレイス 』の続編。音を立てると化け物がすっ飛んでくるという設定の妙葩今作でも健在。さらにホラーでありながら、見事なファミリードラマにしてビルドゥングスロマンに仕上がっている。

 

あらすじ

エヴリン(エミリー・ブラント)は生まれたばかりの赤ん坊と娘のリーガン(ミリセント・シモンズ)、息子のマーカスと共に新たな家を求めて旅をしていた。そこで偶然にもかつての友人、エメット(キリアン・マーフィー)と出会う。しかし、彼は「生き残っている人間に救う価値などない」と言ってエヴリンへの助力を断る・・・

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ポジティブ・サイド

すべての根源である Day 1 も適度に謎めいていて良い。超巨大宇宙船の全貌を見せないのは、まだまだ続きがあるという予告のようでもある。またリーガン視点(聴点と言うべきか)で物語が描写されるシーンでは、違う意味でのサスペンスが生まれる。音が一切聞こえなくなるため、死角の出来事に対して無防備になってしまう。「志村、うしろー!」的なアレである。単純だが、この演出は効果的だった。

 

エミリー・ブラントが今作でも戦う母親像を好演。『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』や『 ボーダーライン 』のような戦う女性として輝きを放っていたが、今シリーズではそこに母親属性が加わった。それもPolitically correctな理由で戦っているのではなく、生存のために戦っている。しかし、元々強い女性だから生き残っているのではなく、その強さを夫から受け継いだという設定もいい。

 

前作は『 死の谷間 』のように一つの場所、一つのコミュニティでの物語だったのが、今作では世界が一気に広がった。前作で生まれた赤ん坊がいつ泣き出すか分からないというスリルの元だが、泣き声を予防・防止する方法も現実的。ミリセント・シモンズ演じる長女リーガンと頼りない長男マーカスの壮大なるビルドゥングスロマンになっている点にも感銘を受けた。positive male figureがいなくとも家族は大きく育つようにも見えるが、やはりpositive male figureの存在が必要だ。しかし、安易に新しい男を迎えるのではなく、死んだ夫・父親の精神を受け継いでいくという筋立ては、陳腐ながら、なんと説得力があるのか。

 

二ヵ所で同時進行するクライマックスはまさに手に汗握る鳥肌もののスリルとサスペンス。知恵と勇気で怪物に立ち向かうエミリー・ブラントは美しいの一語に尽きるし、雄々しく立ち上がる長男の姿は感涙もの。単純明快にして非常にpredictableな展開であるにも関わらず、ここまで心が揺さぶられるのは何故か。その仕組みを知りたい人は、前作を鑑賞の上、劇場へ赴かれたし。

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ネガティブ・サイド

序盤のところどころでジャンプ・スケアが使われるのが気に入らない。そういうこざかしい演出は不要である。

 

荒廃した世界で怖いのは生き残った人間、というのは映画に限らず創作物の文法に等しいが、それでも今作の生き残り組のワル達にはリアリティがない。いったいあの方法で何を手に入れたいのか。どうせなら『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』並みに怪物を飼って遊んでいるといったぶっ飛んだ描写が観てみたかった。

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総評

『 ZOOM / 見えない参加者 』という珍品も制作される当世だが、ハウリングがいかに耳障りなものであるかを体感した人も多いことだろう。ビデオ会議が極めて一般的になった今という時代に鑑賞することで、逆にリアリティを増している。「音を立てたら超即死」という極めてドギツイ宣伝文句も、「咳やくしゃみをしたらアウト」という現代に重なるところがあり面白い。三作目も作られそうだ。期待して待ちたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

How do you say ~ ?

「~はどう言う?」という意味。物語の序盤で何気なく出てくるが、実は非常に重要な伏線になっている個所で使われている表現。How do you say otsukaresama? や、How do you say ittekimasu?というのは英語話者が日本語を習い始めた時に言う定番表現である。What do you call ~? もよく使う。よくこの二つを混同して、What do you say ~?やHow do you call ~?と言ってしまう人がいるので、そこだけは注意のこと。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エミリー・ブラント, キリアン・マーフィー, サスペンス, ホラー, ミリセント・シモンズ, 監督:ジョン・クラシンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 クワイエット・プレイス 破られた沈黙 』 -第3作に続くか-

『 アナと世界の終わり 』 -コロナ禍にフィットするミュージカル-

Posted on 2021年6月3日 by cool-jupiter

アナと世界の終わり 65点
2021年5月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エラ・ハント
監督:ジョン・マクフェール

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土日は映画館が閉まっているため、読書かYouTube、またはレンタルDVD鑑賞。最近、YouTubeでたまたま上がってきたTim Minchinによる『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』のユダ役が素晴らしかったので、ミュージカルでも観るかと近所のTSUTAYAで本作をチョイス。ゾンビ要素が濃いめかなと思いきや、意外にも本格的なミュージカル映画だった。

 

あらすじ

アナ(エラ・ハント)は父と二人暮らし。オーストラリア旅行のためにバイトしていることが、友人のジョンのせいで父にばれてしまい口論に。翌日、学校へ向かうアナとジョンの前に突如ゾンビが現れる。辛くもゾンビを撃退したアナだが、街はいつの間にかゾンビだらけ。アナたちは皆がいるはずの学校へ向かおうとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

ゾンビワールドとコロナ禍の現在は、人との接触を避けなくてはならないという意味で、よく似ている。ゾンビ物を観るたびに、脚本家や監督といったアーティストのビジョンには感心させられる。愛する人であっても、無理やり離れなければならないという状況は、まさにコロナが蔓延する今という時代そのままである。

 

それよりも本作で堪能すべきはミュージカル・パートだろう。冒頭からどこか満たされないティーンたちが歌う”Break Away”がなかなかの名曲。正直、このナンバーだけでレンタル代の元は取れたと感じた。アップテンポの明るいメロディでありながら、歌詞は現状からの脱却を力強く渇望する歌。それを歌うエラ・ハントたちの歌声が力強く、それでいて哀し気だ。ゾンビ蔓延世界の登校風景で颯爽と歌われる”Turning My Life Around”でも主演エラ・ハントの歌唱力が光る。 Hey, it’s a brand new day. のHeyを高音域で伸びやかに歌えるのが素晴らしい。また、陽気に絶望的な状況を歌っているのも、背景のシュールさと絶妙なコントラストになっている。エラ・ハント以外では悪の校長サヴェージ先生が、”Nothing Gonna Stop Me Now”でひときわ目立つ輝きを放っている。『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』のカヤパをほうふつとさせる。 

 

ゾンビ映画というのは、それこそ星の数ほど制作されてきており、またミュージカルもそれなりの数が生み出されてきた。しかし、ゾンビ・ミュージカルというのは、ありそうでなかったジャンル・ミックスだ。ミュージカル形式で感情を爆発させる登場人物たち。そして「え、このキャラ、ここで死ぬの?」という意外な展開の組み合わせで、ぐいぐいと引き込まれてしまう。グロ描写はそこまで多くないが、田舎町で鬱屈した気分のティーンたちによる人間関係と恋模様は結構ドロドロである。案外、梅雨の時期の室内デートにも使えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

コメディとして振り切れていないところが惜しい。ボーリング場での対ゾンビのバトルなど、もっと面白くできるはず。ボウリングの球でゾンビの頭を潰したシーンでは、「お、ゾンビをボウリングのピンに見立てて、遊びながら倒していくか?」と期待させたが、それはなし。その一方で、ゾンビの頭がボールリターンにゴロゴロゴロと帰ってくるという茶目っ気ある演出。コメディとして振り切るパートは全力でコメディに徹してほしかった。

 

ミュージカル・パートの楽曲の良さと反比例するかのように、ゾンビ・パートの展開があまりに陳腐だ。人間社会の規範が壊れることで人間の本性が明らかになるというのはゾンビ映画文法にあまりにも忠実すぎる。意外性が欲しい。無茶苦茶だと自分でも思うが、アナの父がゾンビの群れの中に亡き妻の幻を見出して・・・のようなサブプロットがあれば、個人的には大満足だったのだが。

 

アナの親友のリサを演じたマルリ・シウにもう少し見せ場が欲しかった。ステージで彼女が歌う歌は、ダブル・ミーニング満載である。字幕でも面白さは伝わるが、英語が分かる人はぜひ聞き取って、色々と調べてほしい。この歌の暗喩するところ、ゾンビ・パートでもう少し実現してしかるべきではなかったか。

 

総評

究極的には好みの問題だが、『 ラ・ラ・ランド 』の楽曲よりも本作の楽曲のほうが個人的には楽しめたし感銘を受けた。愛する人々を助けたい一心で行動するのはゾンビ映画としては陳腐だが、その過程の描写が『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』のようにスタイリッシュだ。イギリスのどこか陰鬱な空気が全編を覆っているが、それを吹き飛ばす楽曲のパワーも全編に満ち溢れている。ゾンビ映画と敬遠するなかれ。ミュージカル好きなら要チェックだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be lost in ~ 

「~に夢中になる、没頭する」の意。序盤早々の歌唱シーンで使われているが、字幕に盛大な誤訳があるので注意。

 

There’s a world out there, why does no one care? Are they lost in the game they play?

外には広い世界が待ってるのに みんな諦めちゃってるの?

 

となっているが、正しくは

 

There’s a world out there, why does no one care? Are they lost in the game they play?

すぐそこに世界が広がってるのに みんなは目の前のゲームに夢中なの?

 

が正しい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, イギリス, エラ・ハント, ミュージカル, 監督:ジョン・マクフェール, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 アナと世界の終わり 』 -コロナ禍にフィットするミュージカル-

『 ローグ 』 -密猟、ダメ、絶対-

Posted on 2021年5月22日 by cool-jupiter

ローグ 60点
2021年5月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ミーガン・フォックス
監督:MJ・バセット

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MOVIXが平日の日中限定で営業再開。溜まっている有給の消化も兼ねて、久しぶりに映画館へ向かう。座席の間隔を空ける。飲食をしない。しゃべらない。これを徹底すれば、映画館はかなり安全安心な環境であると感じた。

あらすじ

傭兵部隊のキャプテンであるサム(ミーガン・フォックス)は、テロリストに誘拐された州知事の娘を救出するため、隊員を率いてアフリカにやってきた。人質と人身売買されていた少女たちを辛くも救出するが、敵の追撃により救援のヘリを失ってしまう。そして逃亡した廃村でさらなる救援を待つサムたちだが、そこには追手が迫っているだけではなく、凶暴なライオンも潜んでおり・・・

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以下、マイナーなネタバレあり

ポジティブ・サイド

ストーリーなどはあってないようなものである。密漁者がライオンを殺しそこねて、逃げられた。逆にライオンの反撃を食らってしまう冒頭のシークエンスは雑もいいところだが、製作者が描きたいのはそこではない。早く主人公たちを登場させたい。ドンパチさせたい。そして、ライオンが暴れるところを描きたい。観る側も、早くミーガン・フォックスが暴れるところを観たい。ライオンに襲われるところが観たい。作り手と観客の思いがシンクロして、序盤の救出シーンから廃墟での銃撃戦&ライオンとのバトルまで、あっという間である。1時間50分ほどの映画だが、体感では1時間30分ちょうどぐらいだった。

ストーリーがないと言ってしまったが、実はそれなりに練られたメッセージも込められている。一つにはライオン密猟の問題。もう一つに欧米列強によるアフリカの侵略と支配。さらに、イスラム過激派の侵入。こうした事情が複雑に絡み合った先に、各キャラクターの設定や物語の背景が見えてくる。

傭兵映画らしさ全開で、随所に one-liner が炸裂する。最も印象的だったのは、 クライマックスのサムの放つ”You get to decide which bitch is going to kill you.”という台詞。bitchを含む名セリフとしては『 エイリアン2 』のシガニー・ウィーバーの”Get away from her, you bitch!”に次ぐインパクトだ。

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ネガティブ・サイド

人質および人身売買されていた少女たちがひたすらにうざい。有能な敵よりも無能な味方のほうが怖いと言われるが、まさにそういう存在だ。問題なのは、プロ中のプロである傭兵団のキャプテンであるサムが、いつまで経っても彼女らにルールを叩き込もうとしないこと。自分の言うことに従わなければ殴る・・・まではいかなくとも、何らかの不利益を被る。そういう躾のようなものが序盤にあってしかるべきだったと思う。そのせいか、序盤でいきなり少女の一人が退場させられた時には、心の中で「よっしゃ!」と思ってしまったほどである。

上の退場シーンとの関連で感じたのが、サムの仲間の傭兵団の一人である地元出身のアフリカン。ライオンのことに異様に詳しいのに、ワニについては何の知識もなかったのだろうか。そんなはずはないと思うが。

サムの戦闘力にはそれなりの説得力があったが、キャプテンシーの面ではどうか。序盤でガキンチョたちにルールを教え込まないのも問題だと思ったが、自分のチームの隊員が、地元アフリカ出身、元過激派の一員だったということで非常なる口激を食らうが、それに対する擁護もなし。そら何人かのチームメンバーからキャプテンとは認められんわな。何故にここまで中途半端なキャラクターにしたのか。

総評

ストーリー性やキャラクターの深堀りを求めてはいけない。派手なガンファイト、忍び寄るライオンの恐怖。それらを堪能するだけでよい。製作者側はホラーやスリラーの要素を強めに作りたかったのだろうが、『 コマンドー 』や『 プレデター 』といった面白系One-linerが目立つアクション映画である。そういった系統の作品が好きな人なら、存分に楽しめることだろう。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

bitch

いわゆる swear word である。意味はあまりにも多彩で、名詞にもなれば動詞にもなる。この語が正しく使えれば、英検マイナス2級、TOEIC L&R で1800点だと判定する。「あばずれ女」や「売女」の意味でも使うが、現代的には(本当はもっと前から) a bitch = やばい人、酷い事柄のような意味がある。1970年代にはロッド・スチュワート御大がすでに”Ain’t love a bitch”(邦題は『 あばずれ女のバラード 』)をリリースしていた。興味がある向きはググられたし。また、ボクシングやプロレスを観る人なら、ボクサーやレスラーがリベンジマッチに臨む前に、”Payback is a bitch!”と咆えるのを聞いたことがあるだろう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, イギリス, ミーガン・フォックス, 南アフリカ, 監督:MJ・バセット, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 ローグ 』 -密猟、ダメ、絶対-

『 ビューティー・インサイド 』 -韓流ファンタジーの秀作-

Posted on 2021年5月18日 by cool-jupiter

ビューティー・インサイド 80点
2021年5月15日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:ハン・ヒョジュ イ・ドンフィ
監督:ペク

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ファンタジーといっても剣と魔法と竜の世界ではない。実験的なラブロマンスと言った方が正しいかもしれない。ハン・ヒョジュの魅力が存分に堪能できるが、それ以上に恋愛や人間関係の本質についての深い考察がある。

 

あらすじ

キム・ウジンは18歳の頃から、寝て起きるたびに顔かたちが変わってしまうようになった。以来、人と会うことができず、交流があるのは母親と親友のサンベク(イ・ドンフィ)だけ。家具のデザイナーとして、ネットを使ってビジネスで生計を立てていた。ある時、家具屋で働くイス(ハン・ヒョジュ)に一目惚れしたウジンは、彼女にふさわしい顔になるのを待って、イスをディナーに誘うが・・・

 

ポジティブ・サイド

ハン・ヒョジュがひたすらに魅力的である。ドラマ『 トンイ 』は全話リアルタイムで観たが、ドラマよりも映画の方が映えるように思う。びっくりするような美人ではないが、いつまでも眺めていたくなる美しさがある。どこか上流階級の匂いを放っているが、嫌味なところが一切ない。Jovianも大昔のガールフレンドに「女の子はいつも不安でいっぱいなんだぞ」と説教されたことがあるが、そうした不安を表す表情も素晴らしいと思う。ハン・ヒョジュを指して清純派女優と評する日本の映画レビューサイトやライターが多いが、何か思い違いをしているように思う。濡れ場を演じないのが清純派ではない。濡れ場を演じても、色気よりも美しさや気高さを感じさせる。清純派とは、そういう女優を指す。その意味では、ハン・ヒョジュは『 ただ君だけ 』でも本作でも証明したように、間違いなく清純派であろう。まあ、濡れ場といっても肝心なところは何も見えない非常にソフトな描写なんだけれどもね。

 

他の主要キャラとしては、ウジンの親友のサンベクがクッソ面白い。邦画のロマンスでは、主人公の男の親友は往々にして物分かりの良い理解者で、非常に清い友情を保っている。だが、このサンベク。中年おばちゃんになってしまったウジンとの会話で、「俺の好きな日本の女優は?」と問い、しかもその答えが「蒼井そら」。笑うしかない。さらに、ウジンとイスのALX事務所でのお寿司デートの現場で、ラブチェアを揺らしながら「やめて、やめて」と日本語で言う。こんなん笑うしかないやん。しかし、この男、バカではない。親友をイスに取られたことの悔しさを隠そうとしない男らしさがある。本物の友情がある。そして、イスに対して本当自分が感じていることを告げるだけの度胸と、イスにどう思われても構わないというだけの度量がある。なぜ邦画はこういう脇役を生み出せないのか。

 

順調に見えたウジンとイスの関係だが、ちょっとしたことをきっかけに綻びが生まれてしまう。だが、ウジンは男というアホな生き物なので、不安な女子であるイスの気持ちが分からない。このあたりのすれ違いには純粋に胸が痛くなる。『 ただ君だけ 』でも、終盤にハン・ヒョジュが主人公に気づかずに行ってしまうという、胸が潰れそうになるシーンがあるが、本作はそれをなぞっている。いや、ある意味では『 ただ君だけ 』以上に辛く悲しい。なぜなら、ウジンには顔がなく、イスもウジンの顔を思い出せないから。触ったり、声を聴いたりしたら認識できるわけではないということがウジンの悲劇性を高めている。

 

しかし、よくよく考えてみれば、我々の顔だって年月とともに変わる。20歳と40歳で全然違う顔になっている者もいれば、40歳と70歳で別人になる者だって珍しくない。人を愛するとは、人を愛することであって顔を愛することではない。『 君の名は。 』で少し述べたが、夫婦とはお互いにしか通じないジェスチャーやパロールを作り上げる過程と言えなくもない。そういう意味で、ウジンとイスの関係は、恋人同士よりも夫婦になってこそ輝くものであるように思う。これは素晴らしい恋愛ファンタジーだ。

 

ネガティブ・サイド

素朴な疑問として、ウジンはどうやって運転免許を取ったのだろうか。18歳で寝るたびに顔が変わってしまうようになったというが、その時は制服を着ていた。つまり高校生だったわけで、車の免許はいつ取ったのだろう。何かそのあたりの描写が欲しかった。

 

終盤でウジンは韓国の外に行ってしまうわけだが、パスポートはどうやって取得したのか。日本ではどんなに早くても申請から受け取りまでは1週間はかかるはず。韓国は1~2日で発行されるのだろうか。仮に同じ顔で受け取れたとしても、渡航先のチェックをどうやって潜り抜けたのだろうか。国内のどこか別の都市で良かったのではないかと思う。

 

総評

韓国映画の極端さが良い方向に出た秀作。超極端な設定ながら、人間関係・男女関係の普遍的な芯は外していないという丁寧なつくり。主役を100人以上が演じながら、違和感を抱かせない演出力。日本ネタや日本語セリフもあるので、韓国映画ファンのみならず、邦画ファンにも堪能してほしい。若いカップルの巣ごもり鑑賞にも適しているし、ベテラン夫婦も大いに楽しめるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

There’s no one here by that name.

「ここにそのような名前の者はおりません」の意。電話での応答にも使える。ついつい with that name と言いたくなってしまうが、こういう場合の前置詞は by である。 go by the name of  ~ =「~という名前で通っている」または go by the nickname of ~ =「~というニックネームで通っている」というような時にも by を使う。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, イ・ドンフィ, ハン・ヒョジュ, ファンタジー, ラブロマンス, 監督:ペク, 配給会社:ギャガ・プラス, 韓国Leave a Comment on 『 ビューティー・インサイド 』 -韓流ファンタジーの秀作-

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