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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』 -韓国産ゾンビ映画の傑作-

Posted on 2020年5月17日 by cool-jupiter

新感染 ファイナル・エクスプレス 75点
2020年5月16日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:コン・ユ チョン・ユミ マ・ドンソク チェ・ウシク シム・ウンギョン
監督:ヨン・サンホ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200517120849j:plain
 

COVID-19のおかげでゾンビ映画的な世の中が現実化してしまった。だが、いち早くCOVID-19を抑え込んだ(ように現時点では見える)国もある。そう、韓国である。その韓国が生んだ傑作ゾンビ映画を、今というタイミングで見直す意味はきっとあるはずである。

 

あらすじ

ファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)は離婚調停中。一人娘のスアンが釜山に向かうのに随行するため高速鉄道KTXに乗る。その頃、各地では謎のゾンビが出現していた。そして、KTX車内にもゾンビの影が迫って・・・

 

ポジティブ・サイド

『 トガニ 幼き瞳の告発 』のコン・ユが嫌な奴に見える。これはすごいことである。もちろん、そうした人間が変化していく様を描くことが本作の眼目の一つであるが、コン・ユという俳優の高い演技力を大いに堪能できるのが本作の収穫である。子役のスアンと顔立ちが似通っているという点もポイントが高い。親子であるという説得力が生まれ、だからこそコン・ユのダメな父親としての演技が光る。演技力という点ではKTX車内にゾンビウィルスを持ち込むシム・ウンギョンの演技も見逃せない。ゾンビ映画の文法に忠実に乗っ取りながらも、動けるゾンビを新しい形で提示した。特に子泣き爺的に標的にかぶりつく動作は、かまれている女性の火事場の馬鹿力的な描写とあいまって、妙なリアリティがあった。だが、なんといっても娘スアンの魂の泣き声の悲痛さよ。日本でもこれぐらいの金切り声で泣ける子役が欲しい。

 

ゾンビが跋扈する世界の恐ろしさは無論、襲い掛かって来るゾンビにある。だが、それ以上の恐怖は人間同士が疑心暗鬼になることだ。もっと言えば、その人間の本性が露わになることと言ってもいい。主人公のソグが自分と娘だけが助かればいいと身勝手な考えに囚われている中で、周囲の人間も自己中心的になる者、利他的になる者と分断されていく。

その過程の描写がねちっこい。特に必死で最前線を潜り抜けてきた者たちに対して容赦なく浴びせられる罵詈雑言は聞くに堪えない。胸が痛む。まるで現今の日本の医療従事者の家族へのいじめのようではないか。こうした、必死に戦う者への差別的な言動は普遍的に見られるもののはずである。なぜなら世界中のゾンビ映画に共通する文法だからである。クリシェと言えばクリシェであるが、今という時代に見返すといくつも発見がある。

 

ゾンビ発生の原因の一端を主人公ソグが担っていたという設定もなかなか良い。本作は詰まるところ、韓国社会における富裕層と中流層、そして下層社会民の分断を遠回しに批判しているのだ。マネーゲームに興じられるような強者の横暴が、巡り巡って大多数の庶民に多大な迷惑と被害を与えているのだぞ、というのが本作の脚本家と監督のメッセージである。いやはや、これはかなりの傑作である。

 

ネガティブ・サイド

走るゾンビは世界的にもだんだんと描かれるようになってきているが、本作でも健在。だが、上空のヘリコプターから落ちてきたゾンビやどう見ても脚や背骨が損傷しているだろうゾンビまでもが走りまくるのはいかがなものか。腕が異様な方向に曲がったまま走るゾンビは面白かったので、もっと足を引きずるゾンビ、高速で這うゾンビなど、走る以外の方法で迫りくるゾンビも見たかった。これは贅沢か。

 

途中、コン・ユ、マ・ドンソク、チェ・ウシクでパーティーを組むところで何故か上着を抜き出す男たち。いや、皮膚の露出は抑えろ。それに、携帯を使ってのトラップはなかなか良かった。であるならば、各車両に残された荷物を漁って、もっと使えそうなアイテムを探すべきではないか。女性もののカバンにはかなりの確率でスマホが入っているだろうし、旅行客の荷物ならタオル類などもあるだろう。力業以外の知恵の部分がもう少し見たかった。

 

ラストはかなり評価が分かれるところだろう。『 殺人の追憶 』や『 母なる証明 』のように、「え?」と思わせるエンディングの方が結果的によりドラマチックに、よりシネマティックになったのではないだろうか。

 

総評

本邦でも『 カメラを止めるな! 』や『 アイアムヒーロー 』、『 屍人荘の殺人 』など、近年でもゾンビ映画は制作され続けている。おそらくゾンビ映画もしくは未知のウィルス系の作品はメジャーやインディーを問わず今後も世界的な需要があるだろう。そこで日本はどんな作品を世に問うことができるか。本作は邦画が乗り越えるべき一つのハードルを示していると言える。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

クロニカ

「だから」の意味。「パパは自部勝手だ。だからママも逃げたんだよ」というセリフがあったが、話の文脈がはっきりしていると、どんな言葉もインプットしやすい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, コン・ユ, シム・ウンギョン, スリラー, チェ・ウシク, チョン・ユミ, パニック, マ・ドンソク, 監督:ヨン・サンホ, 配給会社:ツイン, 韓国

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