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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 2010年代

『 となりの怪物くん 』 -孤独な怪物のビルドゥングスロマン-

Posted on 2018年5月16日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:『となりの怪物くん』 55点
場所:2018年5月4日 MOVIXあまがさきにて観賞
主演:菅田将暉 土屋太鳳 池田エライザ 浜辺美波
監督:月川翔

原作の漫画の方では怪物である春はもっとぶっ飛んでいて、雫の方はもっと冷淡だったように思うが、そこは映画という枠組みに上手く嵌め込むためか、キャラ設定がややトーンダウンしていたようだ。

菅田将暉はさすがの安定感で、奇声を上げてニカッと笑うキャラが良く似合う。またはシリアスさの中に無邪気さを織り交ぜることにも長けている。けれど、なにか影が薄いのだ。存在感が無いというわけではなく、精神に陰影を持つキャラをなかなか演じる機会がないせいか、その高い演技力のポテンシャルはこれまで十全に引き出されてこなかった。そして本作でも従来通りの菅田将暉だ。

相対する土屋太鳳もややマンネリ気味か。同世代のフロントランナーの一人、広瀬すずがやや迷走を見せているが、土屋はいつになったら新境地に挑戦していくのか。こんなことを言うと完全にオッサンの世迷言か妄想になるのかもしれないが、いつの間にやら一定の年齢に達していて、ある時突然「脱いでもOK」になった蒼井優みたいになってしまうのでは?それはそれで歓迎する向きも多かろうが。それでも保健室で夕陽を浴びながら春に迫っていくシーンは、これまでにない色気があった。撮影監督や照明、メイクさんの手腕もあるだろうが、土屋本人の役者としての成長を垣間見れたような気がした一瞬でもあった。

少し残念だったのは委員長の浜辺美波の出番がかなり少なかったこと。「え、これでお役御免?」みたいな感じでフェードアウトしてしまう。『君の膵臓をたべたい』から着実なステップアップを見せてくれるかと期待したが・・・ それでもこの子の眼鏡姿は西野七瀬の眼鏡っ子ver並みに似合っている(と個人的に確信している)。池田イライザは反対にほとんど印象に残らなかった。

ストーリーは分かりやすく一本調子とも言えるが、春が家族に対して抱える苦悩を、なぜ雫は素直に共感できなかったのか。母親の不在とその距離、その穴埋めが、春の境遇への理解を妨げたというのなら、もう少しそれを感じさせるシーンが欲しかった。周囲の人間がさせてくれること、してほしいと思うことは、往々にして自分のやりたいこととは一致しない。必ずしも一致したから良い結果になるわけではないのだが、春という怪物の居場所が家庭にあるのだと雫が確信できるようなショットが一瞬でもあれば、物語全体の印象も大きく変わっていたはずだ。編集で泣く泣く監督もカットしたのかもしれないが。

月川監督は小説や漫画の映画化を通じて着実にキャリアを積み重ねている。オリジナルの脚本に出会って、それをどのように料理してくれるのか、今後にも期待できそうだ。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, ロマンティック・コメディ, 土屋太鳳, 日本, 監督:月川翔, 菅田将暉, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 となりの怪物くん 』 -孤独な怪物のビルドゥングスロマン-

『 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 』 -真実と事実の狭間へ-

Posted on 2018年5月15日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 65点
場所:2018年5月4日 TOHOシネマズ梅田にて観賞
出演:マーゴット・ロビー アリソン・ジャネイ ボビー・カナベイル
監督:クレイグ・ギレスピー

30歳か、それ以上の年齢の人ならリレハンメル五輪でのトーニャ・ハーディングの泣き顔と右足を上げての必死のアピールを覚えていることだろう。そしてあの忌まわしきナンシー・ケリガン襲撃事件を。今作はその事件の真相に迫る・・・わけではない。この映画はドキュメンタリー風の始まりと思わせておいて、いきなり第四の壁を破って来るのだ。つまり、観客が見せられるのはありのままの事実ではなく、あくまでトーニャやその母、トーニャの夫やその友人の視点からの物語なのだ。第四の壁を破るとはどういうことか、古畑任三郎が真相を解き明かす前に視聴者に話しかけるのが好例だ。最近だとデッドプールが分かりやすいか。マニアックな説明をするとすればエースコンバット2というゲームのとあるエンディングもそうだったりする。何が言いたいかというと、この物語は事実の描写ではなく、解釈ですよ、と製作者はのっけから宣言しているということだ。

話はトーニャの幼少期から始まる。マッケナ・グレース演じる幼少トーニャのスケートとの出会い、父との別離、母親の虐待と見分けのつかないしごきが非常にテンポよく映し出されていく。『ギフテッド』で天才的ともいえる演技を見せたマッケナは本作でも健在。くれぐれも『シックス・センス』の天才子役ヘイリー・ジョエル・オズメントのような尻すぼみ役者にならないように、彼女のハンドラー達にはくれぐれもお願いしたい。

しかし、この段階で観る者に最もショッキングなのは母親を演じるアリソン・ジャネイだろう。2017年年間ベスト級映画だった『スリー・ビルボード』の主演フランシス・マクドーマンドも強すぎるキャラクターだったが、こちらの母親も全く見劣りしない。鬼気迫る演技、という形容ではぬるいほどの衝撃を与えてくる。まず言葉が恐ろしく汚い。そして我が子をモノか何かのように扱う態度。他人は道具、さもなければ障害物ぐらいにしか思っていないサイコパスで、それが本人と瓜二つなのだ。ジャネイは『ガール・オン・ザ・トレイン』でも威圧感たっぷりの刑事を演じていたが、あの風貌で眼をクリント・イーストウッド並に細くすることで全く違う種類の迫力を醸しだす。恐ろしい女優である。そしてそれ以上に恐ろしい母親を演じている。

またスケート一筋だったトーニャが何かの間違いで恋に落ちる男が典型的なクズ。友人にキャプテン・アメリカがいれば、容赦なく盾でぶん殴られているであろうクズ。その友人もやはりクズ。というか、普通に犯罪者だ。そしてこいつらもびっくりするぐらいに本人にそっくり。メイクさんはさぞかし腕の振るい甲斐があったことだろう。

そして『スーサイド・スクワット』のハーレイ・クイン役で一気にスターダムにのし上がったマーゴット・ロビーによるトーニャ。観るべきはスケートではなく、私生活の方。それはカメラワークにも表れている。リンクの上を所狭しと滑り、怖いものなど何もないという具合にフィギュアに興じるトーニャ本人を、最も魅力的に見せるための角度や距離から映さないのだ。あっけらかんと「スケート映画ではないですよ」と言っているわけだ。

事実、最後の最後はスケートではないスポーツで締めくくられる。そしてトーニャが血反吐を滴らせながら、こう言うのだ。“There is no such thing as truth. Everyone has their own truth. And life just does whatever the fuck it wants. That’s the story of my life. And that’s the fucking truth!” 「真実なんてものは存在しない。誰もが自分の真実を抱えているんだ。人生ってやつは好き放題やってくれる。それが私の人生の物語。それが真実ってもんでしょ!」(英語は記憶、日本語は意訳)

この映画が本当に伝えようとしていることは、トーニャの夫の友人の言葉なのだろう。”But you don’t.” “But I do.” “But you don’t.” “But I do.”と不毛すぎる問答が行われるシーンがあるのだが、これが事実 ≠ 真実、という不等式を見事に表わしたシーンだと思う。そこまで小難しく考えなくとも十分に楽しめる作りになっているし、観終ってからじっくり考えたい、またはリサーチをするのが好きだという向きにも安心してお勧めできる佳作である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, ヒューマンドラマ, マーゴット・ロビー, 監督:クレイグ・ギレスピーLeave a Comment on 『 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 』 -真実と事実の狭間へ-

『 パティ・ケイク$ 』 -A White Trash Girl Lashes Out !!!-

Posted on 2018年5月14日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:パティ・ケイク$ 60点
場所:2018年4月29日 シネリーブル梅田にて観賞
主演:ダニエル・マクドナルド
監督:ジェレミー・ジャスパー

プロのラップミュージシャンになることを夢見る女の物語、と書いてしまうといかにもサクセス・ストーリーを予感させてしまうかもしれない。実際はそんなに単純な話ではなく、祖母と母と娘の関係、男友達、ストリートで知り合った男、偶像視している男など、主人公のパティを取り巻く人間模様は多様で複雑だ。

この物語をどこまで受容できるかは、ラップに対する理解というよりも、現状への満たされ無さ、不満の心をラップを通じてどこまで昇華できるのかという度合いに比例するように思う。なぜストリートで即興のラップバトルに興じるのか、それはストリートでブレイクダンスに明け暮れるB-BoyやB-GIrlと同じで、生き残るための場を確保するための必然的な努力なのだ。ある意味で非常に動物的な、本能的な生存競争なのだ。

主役のパティはまさにそうした存在だ。若い白人女性になんのディスアドバンテージがあるのかと、人によっては訝しむのかもしれない。しかし、太っていて定職もなく、父親のいない家庭に暮らし、同性の親友がいない、と彼女の属性を少し取り上げるだけで、いかにマイノリティなのかが浮き彫りになる。これはそういう物語なのだ。

それにしてもアメリカ映画に出てくる役者というのは、基本的に台詞回しが日本の役者のそれよりも遥かにスムーズだ。元々ローコンテクストな言語なので、声のテンポやピッチ、間の取り方、表情、身振り手振りも交えてのコミュニケーションが発達した結果というか副産物なのだろうが、日本の場合は演技以前の声の出し方からして未熟なままの役者がちらほら見られる。MLBとNPBではないが、やはり差というものはあるものだと実感させられる。

この映画の大きな特徴として、音楽の効果的な使い方にある。もちろん、BGMや効果音を使わない映画というのは一部のPOVぐらいで、本作にも音楽はふんだんに取り入れられている。注目すべきは劇中音楽の全てを監督のジェレミー・ジャスパーが手掛けたという点。ドキュメンタリー映画『すばらしき映画音楽たち』でも言及されていたが、ほとんどの映画監督はシーンに合った音楽を自分で生み出すことができないものだ。しかし近年は『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 』のジェームズ・ガン然り、『 ベイビー・ドライバー 』のエドガー・ライト然り、シーンと音楽を自在に組み合わせられる監督も増えてきている。ジェレミー・ジャスパーもスコット・スピアらと同じく、そうした新時代の映画監督の道を往くのかもしれない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, ジェレミー・ジャスパー, ヒューマンドラマ, 監督:ジェレミー・ジャスパー, 配給会社:GEM Partners, 配給会社:カルチャヴィルLeave a Comment on 『 パティ・ケイク$ 』 -A White Trash Girl Lashes Out !!!-

『 ラプラスの魔女 』 -奇想、天を動かさない-

Posted on 2018年5月14日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:ラプラスの魔女 40点
場所:2018年5月4日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:桜井翔 広瀬すず 福士蒼汰 豊川悦司
監督:三池崇史

悪い予感はしていた。個人的には東野圭吾の小説とは全く波長が合わないのだ。これまでに2冊試しに買って読もうとしてみたものの、その両方とも最初の20ページで放り出してしまった。とにかく文章の波長が合わない。そうとしか言いようのない相性の悪さがある。さらに三池監督が手がけた東野小説の映画化作品では『麒麟の翼』は普通に面白いと感じられたが原作東野、監督大友啓史の『プラチナデータ』は控えめに言って珍作、率直に言えば駄作だった。豊川悦司が無能すぎる刑事を好演していたから尚更だ。だからこそ悪い予感を抱いていたのだ。その予感は裏切られなかった。

まず主演の片方、広瀬すずの魅力を引き出せていない。広瀬自身、『第三の殺人』や『先生! 、、、好きになってもいいですか?』で、これまでの天真爛漫一辺倒キャラ(もちろん『海街diary』のような例外というかキャリア初期作品もあるが)からの脱皮を模索しようとしているようだが、残念ながらその試みはここまで実を結んではいない。小松菜奈や中条あやみに抜かれてしまうかも?

さらに主役の桜井の演技力が絶望的なまでに低い。彼の場合は当たり役に出会えていないだけかもしれないが、それなりの長さのキャリアを積み重ねてきてこの体たらくでは、今後も事務所、グループの看板だけでしか勝負できない三流役者のままだ。厳しい評価だが、そう断じるしかない。TVドラマ『謎解きはディナーの後で』の頃から演技のぎこちなさは際立っていたが、もう伸び代はなさそうだ。ただ同テレビドラマおよび原作小説は、そのお嬢様の推理、執事の推理ともに噴飯物だったのだが。

その他、福士蒼汰、リリー・フランキーや志田未来などのキャストは完全に予算の無駄使いだろう。脇を固めるキャラはそれに長けたベテラン、もしくは今後に期待できる若手に任せるべきだ。

脚本に目を向けると、元ネタであるラプラスの悪魔を何か捉え違えているように思えてならない。森羅万象を知りうる、計算しうる知性というものが存在するとしても、それが人間の心理を読めるものと同義ではないだろうし、ましてや知能や知識が向上するわけでもないだろう(”知能”と”知性”の違いについては山本一成著『人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?』参照のこと)。こうした新人類、超知性の描き出し方については高野和明の『ジェノサイド』という大傑作の小説が存在するわけで、素手で乱闘する公安などを劇中に登場させては、かえってサスペンスやリアリティを失わせるという逆効果になる。知性をテーマに物語を組み立てるなら、徹頭徹尾そこに拘るべきで、ちょっと格闘シーンも入れておくか、という気持ちで脚本を作ったのなら大間違いだ。原作未読者にこんなことを言う資格はないかもしれないが、小説を映像化するのなら、原作の描写に忠実である必要などない。原作が伝えようとしているエッセンスの中で、映像の形で最も上手に伝えられる、見せられるものを映像化すべきなのだ。

その他に気になったシーンとしては、サイコロの目を予測するシーン。計算に必要なデータ全てがあれば、超知性のリソースならサイコロの出す目を計算で導き出すことも可能だろうが、明らかにサイコロそのものが見えない状態から振られたサイコロの出目まで言い当てるのは矛盾だ。紙飛行機のシーンは建物全体の空調や、場合によっては外の風の流れまで計算しなくてはならないし(そしてそのデータは得られない)、鏡を使うシーンでは、日光の強さや角度は密室の中でも時計さえあれば計算できるとして、雲やその他の人工的遮蔽物の可能性はどのようにして除外できたのか。途中から全てがご都合主義になってくる。

ただ、こうした酷評は全てJovianの個人的感性が原作者や映画製作者の感性と波長が合っていないことから来ているので、異なる人が観れば異なる感想を抱いても全く不思議はない。主要キャストや原作者、監督のファンだという人にとっては良いエンターテインメントに仕上がっているのかもしれない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, ミステリ, 広瀬すず, 日本, 桜井翔, 監督:三池崇史, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ラプラスの魔女 』 -奇想、天を動かさない-

『 ママレード・ボーイ 』 -ダメ映画の作り方を学びたければ本作を観るべし-

Posted on 2018年5月14日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:ママレード・ボーイ 15点
場所:2018年5月3日 MOVIXあまがさきにて観賞
主演:桜井日奈子 吉沢亮
監督:廣木隆一

本来ならこの映画のレビューをもっと早くすべきだったのかもしれない。なぜなら、よほど原作もしくは俳優陣に思い入れのある方でなければ、この映画を観賞することはお金と時間の浪費になるからだ。もしくはダメ映画の教材として、大学の映画サークルなどがDVD/ブルーレイ、その他デジタルメディアであーだこーだと分析しながら観る分には良いのかもしれない。

主役の二人の演技は可もなく不可もなくといったところ。吉沢亮の方は随所にポテンシャルを感じさせる若さゆえの脆さや弱さ、不安定さを感じさせるところもあった。彼の女性ファンならその点だけでも観る価値はあるかもしれない。

この映画を駄作にしている要因は主に2つ。第一に、意図の読めないカメラワーク。3~4か所ほどかなり長めのワンショットを使っていたが、カメラが無意味にズームイン、ズームアウトを行っていた。主役2人しかそこにいないということを強調したかったのかもしれないが、そこで映す=見せるべきは2人の表情や息遣いであって、監督や撮影監督の自己満足ではない。

第二に、前後のつながりを一切欠いた杜撰な脚本。主役2人がどのタイミングで相手に好意を持ったのか、そんなものは一切描かれないまま突如、2人が付き合うようになる。また朝と思わせて昼、昼と思わせて夕方だったというシーンがあったり、わずか数分で季節を一つ二つ飛ばしたシークエンスもあった。登場人物の服装や街並みのちょっとしたワンショットなどから受け手に季節の移り変わりや時間の経過を見せるのは当たり前過ぎる手法だが、今作はそれらをほぼ一切拒否。非常に斬新だ。惜しむらくはこのメソッドを取り入れよう、と思う同業者は皆無であろうと予想されること。またクライマックスの真実が明らかになるシーンでは、明らかにそこに言及する必要のない人名や人間関係が語られる。両親が語るその内容は観客に向けてのもので子どもたちに必要なものではなかった。監督、脚本家、編集担当者の誰もこのことに気づかなかったのだろうか。

とにかく脚本が致命的に悪い。そしてところどころで使われるロングのショットが物語の進行を異様にスローテンポにし、さらに主役2人の心の動きを観る者に一切読み取らせないようにするという誰も得しないカメラワーク。努々この作品を映画館で観るなかれ。時間とカネを浪費するだけに終わってしまうであろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, F Rank, ロマンス, 廣木隆一, 日本, 桜井日奈子, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 ママレード・ボーイ 』 -ダメ映画の作り方を学びたければ本作を観るべし-

『 孤狼の血 』 -円熟期を迎えた役所広司の面目躍如-

Posted on 2018年5月13日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:『孤狼の血』 75点
場所:2018年5月13日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:役所広司 松坂桃李 真木よう子
監督:白石和彌 

役所広治 の刑事役で印象的なものと言えば個人的には『 CURE キュア 』と『 渇き 』を挙げるが、今作でそれらを超えたと評しても良いだろう。広島を舞台にしたやくざ同士の抗争前夜、と聞けばそれだけで実録シリーズの高倉健が想起されるが、白石監督がそれらを言わば先行テクストとしたのは明白だ。ちょうど2016年の『シン・ゴジラ』が『日本のいちばん長い日』のオマージュだったように。刑事なのかヤクザなのか見分けがつかない二課の暴れん坊ガミさんに、なぜかタッグを組まされる松坂桃李 演じる新米刑事の日岡のコントラストがまず観る者を物語世界に引き込んでいく。何がガミさんを駆り立てるのか、そのガミさんに振り回される日岡の狙いは・・・ というところまで話は一気に進んでいく。組同士の対立構造を初めのうちに頭に入れておかないと、あまりのテンポの良さにヤクザ映画を見慣れていない人は戸惑ってしまうかもしれない。ただ見るべき個所は対立の構図ではなく、ガミさんの行動原理。ガミさん自身が語る”正義”と”法”の在り方は今現在の日本の闇を実に開けっ広げにえぐっている。

脇を固める役者陣では真木よう子 が白眉。『 新宿スワン 』の山田優の役をそっくりそのまま受け継いで再撮影できないだろうか、とまで思えた。そして滝藤賢一は安定の滝藤賢一。『 SCOOP 』での人情味と激情の両方を宿した副編集長役も良かったが、この男の本領は顔芸と狼狽にある。阿部純子は今作で初めて目にしたが、何という色気だろうか。セクシーさではなく色気。特に最初に日岡をアパートに連れ込んだところで、日岡の方を一瞬振り返るシーンがあるのだが、あれは相当監督に指導されたか、そうでなければ本人の勘の良さか。とにかく非常に印象に残る場面の一つだった。

反対に残念だったのは、中村獅童の新聞記者と竹野内豊のヤクザ。前者のポジションに獅童を持ってくる必然性は無かったし、後者の役どころは残念ながら開始2分でショボさが際立っていた。同じ白石作品の『彼女がその名を知らない鳥たち』ではクズを無難に演じてはいたが、ヤクザを演じるには本人に声の張りやそもそもの迫力が足りない。

それにしても、このところの松坂桃李の出演作はすべて彼自身のビルドゥングスロマンになっているものが多い。『 娼年 』然り、『 不能犯 』然り、『 ユリゴコロ 』然り。俳優として脱皮を目指そうという心意気やよし。しかしやや方向性を見失いつつあるような気がしないでもない。エキセントリックな役もしっかりモノにできるということは『ピースオブケイク』で証明済み。そろそろ松坂桃李というキャラの映画を観てみたい。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ミステリ, 役所広司, 日本, 白石和彌, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 孤狼の血 』 -円熟期を迎えた役所広司の面目躍如-

『 ミッドナイト・サン タイヨウのうた 』 ーシュワちゃん2世を堪能せよー

Posted on 2018年5月13日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:『 ミッドナイト・サン タイヨウのうた 』 65点
場所:2018年5月12日 MOVIXあまがさきにて観賞
主演:ベラ・ソーン / Bella Thorne
監督:スコット・スピア / Scott Speer

原題は”Midnight Sun、観賞後に日本の映画『 タイヨウのうた 』(2006)のリメイクだと知る。設定を見るに一部細かい部分の改変はあるようだが、ストーリーとして破綻しているところはなかった。主人公のケイティ(ベラ・ソーン)の普通であることへの執着と周囲との微妙なズレ、しかしそこがパトリック・シュワルツェネッガー(言わずと知れたアーノルドの息子)演じるチャーリーに、そして観客にも微笑ましく心地よく映る。スコット・スピア監督はミュージック・ビデオ畑出身で、音楽を劇中に効果的には配置することに長けているという印象。順調にキャリアを積み重ね、ジェームズ・ガンやエドガー・ライトの領域に達してほしいと思う。

演技者として観るべきはケイティの父親役のロブ・リグル/Rob Riggle。『インターンシップ』では数分の登場ながら老人ホームのトンデモ職員か何かの役で強烈な印象を残していたが、今作では苦悩する父親を好演。『逮捕なんかしないよ』(”I’m not a cop.”)という台詞は、ガールフレンドや妻の父親が警察官だったりするとロマンティックとは正反対の意味でドキリとさせられてしまうだろう。実際、自分は一瞬座席から跳ね上がった。

主人公の持つ病気のせいで必然的に夜を舞台に物語が描かれるが、暗さは感じられず、かといって邦画で時折見られるような「夜の不自然な明るさ」なども感じられなかった。それはクライマックス・シーンに「明るさ」を思い切りブチ込むためだったからか。物語の進行上、釈然としない部分も残るものの、画としての美しさは充分に表現されていた。

若い男一人で週末に1800円を投じるのはつらいかもしれないが、連れ合いがいるならお勧めできる。中年男性でもロブ・リグルに自分の人生を投影させることができるだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, ロマンス, 主演:ベラ・ソーン, 監督:スコット・スピア, 配給会社:オープン・ロード・フィルムズLeave a Comment on 『 ミッドナイト・サン タイヨウのうた 』 ーシュワちゃん2世を堪能せよー

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