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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 2010年代

『 ミッドナイト・イン・パリ 』 -劇場鑑賞-

Posted on 2024年5月2日 by cool-jupiter

ミッドナイト・イン・パリ 75点
2024年4月28日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

出演:オーウェン・ウィルソン レイチェル・マクアダムス マリオン・コティヤール レア・セドゥー
監督:ウッディ・アレン

 

『 ミッドナイト・イン・パリ 』が劇場にて再上映ということでチケット購入。

あらすじ

脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とその両親と共にパリに旅行に来ていた。深夜のパリで偶然に乗り込むことになったクルマは、なんとギルを1920年代のパリに連れて行き、多くの歴史上の作家や芸術家と交流することに。それ以来、ギルは夜な夜なパリの街に繰り出しては、不思議な時間旅行に出かけて・・・

ポジティブ・サイド

『 マリの話 』の高野徹監督はホン・サンスから多大な影響を受け、そのホン・サンスは韓国のウッディ・アレンと呼ばれることもある。インテリ男性が女性と恋に落ちるが、なんだかんだで失恋してしまう。男の願望と現実が絶妙にブレンドされた作品を産み出すのがウッディ・アレン。そのストーリーテリングの妙味は本作でも遺憾なく発揮されている。

 

ポールとギルを通じて知識と教養の違いが明らかにされている。すなわち前者はそれ自体を蓄積するもの、後者はそれを使って仕事や趣味を充実させるもの。ギルの文学者や芸術家への憧憬があり、それが彼の葛藤にもなっているが、逆にそれによってパリを堪能できている。対するポールはパリを解説するばかり。男たるもの(という表現は不適切かもしれないが)、ギルのように生きたいものだ。

 

不思議なタイムスリップをしながらも「黄金時代症候群」は現代特有の病ではなく、いつの時代の文化人も罹患した、ある意味で普遍的な病理だったということが分かる展開は秀逸。

 

Jovian妻は冒頭から最終盤まで、パリの街を堪能したとのこと。以前に一人旅をした時にあちこちを歩いたことがあり、映画のままのパリを思い出したという。俺もパリジャンの友達にいつか会いに行きたいなあ。

 

ネガティブ・サイド

何回観てもレイチェル・マクアダムス演じるイネズが必要以上に不愉快なキャラに見えてしまう。もっと普通の、もっと stereotypical な嫌な女でよかったのに。何故にここまで不快な女性に仕立ててしまったのだろうか。 

 

総評

暗転した劇場、大画面、大音響で鑑賞するだけで物語の面白さが一割増しになる気がする。DVD鑑賞時は70点だったが、77点に感じられたので75点としておく。中年カップルや女性のおひとりさまが多く、総じて客層は良かった。ゴールデンウィークのデート・ムービーにぴったり・・・かどうかは結婚しているかどうかによる。未婚向けか既婚向けかは、実際に鑑賞して感じ取ってほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

by day, by night

アドリアナの台詞に “I don’t know if Paris is more beautiful by day or by night” のようなものがあった。by day と by night はしばしばセットで使用される。意味は「昼は、昼に」と「夜は、夜に」だが、対称性を表現したい時に使われることが多い。

He is Bruce Wayne by day and Batman by night. 
彼は昼間はブルース・ウェインで夜はバットマンだ。

のように使う。He is Bruce Wayne during the day and Batman at night. と言ってもいいが、あまりナチュラルには感じない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 キラー・ナマケモノ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, オーウェン・ウィルソン, スペイン, ファンタジー, マリオン・コティヤール, レア・セドゥー, レイチェル・マクアダムス, 監督:ウッディ・アレンLeave a Comment on 『 ミッドナイト・イン・パリ 』 -劇場鑑賞-

『 INFINI インフィニ 』 -古今のSFとホラーのパッチワーク-

Posted on 2023年11月18日 by cool-jupiter

INFINI インフィニ 30点
2023年11月16日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ダニエル・マクファーソン
監督:シェーン・アベス

 

近所のTSUTAYAで、いかにもC級SFという本作を見かけて、ついつい借りてしまった。予想通り、オリジナリティの欠片もない作品だった。

あらすじ

23世紀。地球は荒廃し、人口の95%は貧困層になり、スリップストリームという瞬間移動技術によって他の惑星に趣き、過酷な環境で働くことを余儀なくされていた。ある時、辺境の惑星でウイット・カーマイケル(ダニエル・マクファーソン)を残して部隊が全滅。スリップストリームで救助に向かった部隊が目にしたのは、奇妙な死体の数々だった・・・

 

ポジティブ・サイド

特殊メイクは結構頑張っている。血と汗と油と埃にまみれた男たちの姿が印象的だった。役者が発狂するシーンが多く、まるで韓国映画のよう。これは褒めている。オーストラリア人の演技へのアプローチはハリウッドとはちょっと異なっているようで、そこが面白い。

 

オーストラリアは元々はイギリスの流刑地だったという歴史を背景に本作を鑑賞すれば、流れ着いた先がどこであれ、そこで逞しく生きていくというオーストラリア人の矜持が見て取れる。

 

ネガティブ・サイド

まるで古今東西のSFスリラーのごった煮的な作品。約2時間の作品だが、体感ではその半分近くのシーンで「ああ、これ〇〇で観たわ」と感じてしまった。本格的なSF映画ファンなら、本作の7~8割のシーンに既視感を覚えるのではないだろうか。

 

パッと思い浮かぶのは『 エイリアン 』に『 遊星からの物体X 』。体内から何かが出てきたことを思わせる遺体となると、どうしても思い起こさずにはいられない。スリップストリームのアイデアは『 スタートレック 』の転送装置そのまんま。そしてスリップストリームする際に生じる顔面ブルブルは『 マトリックス 』から借りてきた演出。終盤の映像と展開も『 アビス 』と『 スフィア 』とそっくり。他にも『 サンシャイン2057 』や『 イベント・ホライゾン 』、また数多くのゾンビ映画、ウィルス蔓延型パニック映画のタイトルがたくさん脳裏に浮かんできた。とてもオマージュでは済まされない量で、正直なところ中盤以降はかなり眠気と格闘していた。

 

総評

典型的な a rainy day DVD だろうか。配信サービスで無料だったら、手持ち無沙汰の雨の日にのんびり鑑賞するぐらいがちょうどいい。そのうちあなたの知らないワゴンセールの世界様で紹介されるのではないだろうかと予測している。つまりはそういう作品であるということである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Identify yourself.

しばしば Who are you? とセットで発話される。主に軍人さんが使うイメージ。直訳すれば「自分の身元を明らかにしろ」ということだが、これに対する反応はほとんどの場合、名前、所属部隊、階級であることが多い。映画だと他には警察が使うぐらいか。しかし、ほとんどの場合は軍人が使うと思っていい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 デシベル 』
『 花腐し 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, E Rank, SF, オーストラリア, シェーン・アベス, ダニエル・マクファーソン, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 INFINI インフィニ 』 -古今のSFとホラーのパッチワーク-

『 カランコエの花 』 -あなたの心に澱みは残るか-

Posted on 2023年11月7日2023年11月7日 by cool-jupiter

カランコエの花 70点
2023年11月6日 神戸学院大学有瀬キャンパス951号室にて鑑賞
出演:今田美桜
監督:中川駿

 

非常勤講師を務めている大学でダイバーシティ映画上映会の案内が届いたので、会社で後半休を取って(まあ、同日の夜に働くのだが)上映会に行ってきた。その理由は監督が秀作『 少女は卒業しない 』の中川駿だったからである。

 

あらすじ

とある高校2年生のクラス。ある日唐突に『LGBTについて』の授業が行われた。しかし他のクラスではその授業は行われておらず、生徒たちに疑念が生じる。「うちのクラスにLGBTの人がいるんじゃないか?」生徒らの日常に波紋が広がっていき・・・

 

ポジティブ・サイド

構成が絶妙だ。主人公の月乃(今田美桜)が学校や家庭で過ごす一日一日の経過を映し出していく。幕間=日の移り変わりの暗転の間も絶妙で、一日ごとの月乃の心境の変化を観る側も考えてしまう。

 

本作がユニークなのは、LGBTではない人の目線で物語を追っていく点にある。たとえば『 彼女が好きなものは 』や後述する作品などではLGBTが主役あるいは準主役である。しかし、本作の月乃はいたって普通の女子高生で、その彼女の目から見る世界がいかに自分たちが知覚する社会と近いのかが再確認される。つまり、月乃の感じる精神的な動揺が観る側にダイレクトにつながる。

 

本作は固定カメラを使わず、ほとんどすべての画面に手振れがある。それによって、まるで自分がその場にいるかのような臨場感が感じられるという、思わぬ副産物的効果もある。同時に自分がLGBTとどう接するべきなのかという問題(issueであってproblemではない)に対して傍観者であるとも感じさせられる。

 

これから本作を鑑賞する方々は、ぜひ月乃の属する仲良し4人組の人間関係を観察されたい。そして、明かされるカランコエの花言葉の意味と、月乃がそのシュシュを身に着ける、そしてそのシュシュを取り外すことの意味を、よくよく考えてみてほしい。

 

以下、中川監督と神戸学院大学の中山文(なかやまふみ)教授との対談の中で触れられた内容とそれについての所感を挙げていく。

 

中川監督:

社会問題を扱う上で、高校生は子どもではないが、大学生や社会人は大人。大人は上手いこと嘘をつく。

 

これはその通りで、本作でもいけしゃあしゃあと嘘をつく日本史の教員が登場する。また、そもそもの問題の発端である授業を実施した保健のハナちゃん先生もそうだ。彼女の、まったく心のこもっていない授業をぜひ聞いてほしいと思う。一方で、嘘がつけない男子が印象的だった。どこかで見たことのある顔だと思ったら、『 リング・ワンダリング 』の主人公ではないか。この悪ガキの良い意味でも悪い意味でも嘘がつけない性質が本作の物語に深みを与えていることにも注目してほしい。

 

中川監督:

本作は2018年に公開されたが、撮影は2016年に行った。2018年の教育関係者の感想は「怖い、自分もこんなミスをやってしまいそう」というものが多かったが、2023年になるとそうした感想はかなり減ってきた。

 

これは邦画の世界にもしっかり反映されている。たとえば2016年の映画『 怒り 』と2023年の映画『 エゴイスト 』、この両作品におけるLGBTの描き方を比較すれば明らかである。中川監督は「7年で本当に世の中が変わった」と何度か言っていたが、それは本当にその通りだと感じる。

 

本作はカミングアウトをテーマにしているが、そこには以下の3種類の怖さがある。

1.同性愛だと思われるのが怖い
2.同性愛者の自分が否定されるのが怖い
3.自分自身が否定されるのが怖い

以下はJovianの私見だが、この3段階は別個の心的事象ではなく、1→2→3と連続するものであると思う。つまり、同性愛であることそのものがストレートに自己否定になりかねない。このことは社会全体で知っておくべきことであると思う。これは同性愛の部分を「障がい者」に置き換えてみればよく分かるであろう。

 

中川監督:

カミングアウトには条件がある。それは「カミングアウトしても帰っていける居場所を確保しておくこと」である。

 

これも非常に重要な指摘であると思う。これはLGBTや障がい者、あるいは在日外国人などに限ったことではない。誰もが何らかのコミュニティに属して生きていくのが人間だが、属すことができるコミュニティは別に一つとは限らない。会社に居場所がないサラリーマンは、居酒屋が居場所になるかもしれないし、英会話スクールやカルチャー教室が居場所になるかもしれない。

 

中川監督:

(どのシーンが一番好きですか?と問われ)どのシーンが好きかとは自分では言えないが、エンドロールが一番好きだと言われることが多い。

 

この言葉通り、本作のエンドロールはユニークである。『 おと・な・り 』のエンドロールそっくりだと言えば分かる人には分かるかもしれない。それよりもびっくりさせられたのは、あのエンドロールはほとんどあの役者のアドリブだということ。これこそ演出というもの。そういう意味では『 ゴジラ-1.0 』で佐々木蔵之介に「これからの日本はお前らに任せるぜ」などと安易に喋らせてしまう山崎貴監督は、やはり人間ドラマを描く力が弱いと言わざるを得ない。

 

中山教授: 

「私たちの大学、明石にあるんですよ」(正確には神戸市有瀬、明石までは数十メートルだが、れっきとした神戸市である。大学の名前も神戸学院ですよ!)とのことだが、その明石市には同性パートナーシップ条例がある。つまり、同性カップルの移住が促進され、それも人口増に寄与しているとのこと。

 

これも面白い指摘。泉房穂元市長が何かとお騒がせというか話題を提供しているが、人口減少社会において、同性カップルを許容することの意味はここにもある。余談だが、同性カップルは当然ながら子孫(養子除く)を残すことができない。しかし、人類の一定数は必ず同性愛者である。ということは、同性愛者には生物学的な意味での raison d’etreがあるはず。誰かを好きになるという感情を説明することは難しいが、同性を好きになるという人が存在することは、いつか説明できるようになると思われる。

 

中川監督:

(次回作の構想を問われ)子どもの車中置き去り事件に関心があり、色々とリサーチをしている。映画においては、観客の気づきに勝るものはない。こちらから押し付けるのではなく、気付いてもらえるような作品を作りたい。

 

うーむ、これもなかなか社会的なテーマ。車中置き去りで幼児あるいは子どもが死亡するというのは、うっかりで説明できない事件あるいは事故である。次回作のリリースを首を長くして待ちたい。なにもかもをキャラのセリフで説明してしまうのではなく、観客の気づきを促す。これは教育の在り方に通底するものがある。

 

中川監督:

(なぜ映画監督になったのかを問われ)最初はイベント企画会社に就職したが、リーマンショックによる大不況で毎月毎月社員が辞めていく。新入社員だった自分は、その送別会用のムービーを毎月毎月作っていた。そのうちに映像制作を面白いと思うようになり、映画の世界に足を踏み入れた。映画監督の売り物は何を美しいと思うかという感性。カメラマンなどは手振れなく撮影する技術が必要な専門職だが、映画監督の売り物である感性は誰でも何歳からでも磨くことができる。だから皆さんも今からでも映画監督になれる。自分は20代半ばから映像作家になったが、映画監督の中には小さな頃から映画があまりにも好きなあまり「映画は素晴らしい」という思いが強すぎて、「お客さん、感じ取ってくれよ」という押しつけになりがち。今後も映画を過信せず、しっかりとリサーチすることが大事だと思って活動していきたい。

 

以下、出席者(教員の方?)から中川監督に質問2点。

Q1.

どういうふうに対応すれば正解だったのか?

 

A1.

どうしてほしい、どうしてほしくないかは当事者によって異なる。本作では誰も〇〇〇〇に「どうしたい?どうしてほしい?」と尋ねていない。

 

Q2.

カミングアウトがなされた時にどのように行動すべきだったのか?

 

A2.

〇〇〇〇自身はLGBTであることを隠していない。なので「あ、そう」「だから、何?」でよかった。

 

これはあくまで本作の世界観での話であることに注意。現実は監督の言う通りに、当事者によって配慮の仕方や、あるいは配慮の必要性の有無そのものも異なってくる。ただひとつ言えることはLGBTの性的志向もストレートの性的志向も「対象は非常に限定的」という意味では同じである。この記事の読者の sexual orientation がなんであるかは知る由もないが、たとえば30代男性だとしよう。その人が道行く女性全員に欲情するのか?という話である。断言する。しない。LGBTも同じである。たとえばLが道行く女性すべてを好きになるはずなどない。

 

中川監督:

(ワークショップの最後にメッセージをとお願いされて)年月を経るごとに『 カランコエの花 』が扱うテーマがどんどん古いと捉えられ、レビューサイトの星の数がどんどんと減っていっています。それは主として若い世代の感想。それは世の中にとっての好ましい変化。今後、若い人たちがどんどん社会を変えていってほしい。

 

これはまさに哲学者ジャン・ポール・サルトルの言うところのアンガージュマン!英語で言うなら engagement だ。大学という一種の象牙の塔で得た知識や技能を使って、社会をより良い方向に変化させていく。非常勤講師兼サラリーマンのJovianもまったく同じことを学生諸君に期待している。

 

ネガティブ・サイド

月乃のお父さんが登場しないのは何故?お母さんだけではく、お父さんという世代も性別も違う大人が月乃からの相談にどう対処するのか、お父さん世代のJovianは非常に気になってしまった。

 

保健室の養護教諭が勝手に授業することなど現実にあるのだろうか。学校というのはかなりガチガチにカリキュラムが組み立てられている。そしてそのカリキュラム(この科目は授業〇時間、予習と復習が週に△時間etc)は文科省様によって厳密に定められていたりする。なので英語の自習ならまだしも、そこに唐突に道徳の授業的な時間を設けるというのは考えづらい。善意からの不注意で済ますにのは、説明としてはちょっと苦しい。

 

総評

パッと見たところ、200名近くの学生が参加していた。演劇とジェンダー・スタディーズの講座の一環らしいが、授業に映画鑑賞を取り入れるという試みは、高校や大学でもっと広まっていいと思う。Amazon Prime Video でも視聴可能で、時間も39分とコンパクトなので、通勤通学の時間や寝る前などに鑑賞することも可能だろう。もちろん親子での鑑賞にも十分に耐えうる作品だ。本作を観て「うーむ」と考えさせられたら、それは自分がそれだけ古い価値観の人間だということ。ちなみにJovianは古いと新しいの中間ぐらいだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント・レポート・レッスン

こんなブログを見ている神戸学院大学の学生がいるのかどうかは分からないが、dotCampusあるいは Moodle に提出しなければならないレポートの書き方のヒントとして以下を挙げておく。中山教授もこれぐらいは許してくださるだろう。

・登場人物の行動や、その背景にある心理を想像する
・それらを同じシチュエーションに置かれた自分の行動や心理と比較する
・その比較から自分とキャラクターの共通点を書く(反省的な内容)
・その比較から学べること、今後に実践できることを書く(思考変容・行動変容)
・上記を講座で学んだ理論、事例、ケース・スタディと比較対照して、自分の思考変容・行動変容の理論的な裏付けを書く
・監督と教授のやり取りで印象に残った点についても触れる

これをある程度しっかりしたプレゼンテーション(レポートの体裁=段落分けや引用文献の明記etc)と一定以上の語数(日本語なら800~1200字だろうか)で書ければ、悪い点数にはならないはずである(保証はしないけど)。幸運を祈る。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 今田美桜, 日本, 監督:中川駿, 配給会社:ニューシネマワークショップLeave a Comment on 『 カランコエの花 』 -あなたの心に澱みは残るか-

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

Posted on 2023年9月25日2023年9月25日 by cool-jupiter

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 80点
2023年9月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フランキー・フェイソン
監督:デビッド・ミデル

 

妻が「面白そう」というので、チケットを購入。ハズレが少ないシネ・リーブル梅田の上映作品だが、本作は年間ベスト級の面白さだった。

あらすじ

心臓病を抱えるケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、誤って救命救急サービスのアラームを作動させてしまう。それによってケネスの自宅に警察官が急行し、ケネスの安否を確認しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

舞台はケネスの自宅室内とアパートのホールウェイ。主な登場人物は、ケネスと最初に現場に急行する警察官3名、ライフ・ガード社の女性オペレーター1名、そしてケネスの姪っ子一人と、非常に小規模な作品。しかし、そこに流れる空気の濃密さはそんじょそこらの映画の比ではない。

 

最初は職務に忠実にケネスの安否を確認しようとする警察官たち。しかしケネスが黒人、元海軍兵、さらに精神障害の既往歴ありという属性を知るにつれて、どんどんと過激化していく。黒人ということは犯罪者予備軍ではないか。海軍ということは武器を所有しているのではないか。まるで『 福田村事件 』のように、疑心暗鬼がいつの間にか確認に変わり、法執行官の代表たる警察官がいとも簡単に法を破っていく。そこに至るまでの過程が『 デトロイト 』そっくりだが、『 デトロイト 』では銃声というトリガーがあった。しかし、本作では警察官の暴力性を引き出す契機は何もなし。そのことが観る側に恐怖感を呼び起こす。単に暴力的になっていくから怖いのではない。職務に忠実であろうとする姿勢が、いつの間にか他者を傷つけることを厭わない姿勢に変わっていくことが恐ろしい。そういう意味では本作は『 ヒトラーのための虐殺会議 』に近いものがある。これは極端な例かもしれないが、哲学者ハンナ・アーレントが見抜いたように、人は凡庸な悪にこそ支配されてしまう。その過程をわずか数十分で臨場感たっぷりに描いた点が本作の一番の貢献と言えるかもしれない。

 

ケネスを演じたフランキー・フェイソンの迫真の演技には息を呑むばかり。双極性障害の持ち主にして、軽いPTSD持ちにも見えた。彼の脳裏に去来したであろう様々な体験を一切映像化することなく、観る側にそれをありありと想起させる演技力と監督の手腕は見事の一語に尽きる。ライフ・ガード社のオペレーターの女性の声だけの迫真の演技も印象的。中学校教師上がりの警察官ロッシの個人としての信条が、警察という階級組織の中で簡単に押しつぶされていく様もリアルだった。

 

タイトルの通りに最後にケネスは殺害されてしまうわけだが、その結末には慄然とさせられる。法とは何か。人命とは何か。何が我々を狂わせるのか。何が我々を思考停止に陥らせるのか。本作が示唆する問題はアメリカだけに限定されたものでは決してない。

 

ネガティブ・サイド

エンドロール時に本物のケネスや警察官たちの声が聞こえるが、警察官たちは暴力的というよりも、ケネスをおちょくるような口調だったと感じた。であるならば、そのような口調を再現し、それをケネスが威圧的、高圧的、威嚇的と受け取ってしまう、のような演出を模索できなかったか。あるいは、エンドロールの実在の人物たちの声はすべてカットしてしまうのも一つの選択肢だっただろう。

 

総評

間違いなく年間ベスト候補の一つ。非常に限定的な時間と空間、そして人間関係だけで圧倒的なドラマを生んでいる。大量破壊兵器を持っていないのに、あたかも持っているかのように振る舞ったイラクは空爆されてしかるべきだった。ウクライナ戦争以降、このような言論が耳目に入ってくるが、どう考えてもアメリカの方が悪い。疑わしきは罰せずというのが人類のたどり着いたひとつの結論であるはずだが、個人レベルでも国家レベルでも疑惑を確信に変えて行動してしまうアメリカには決して倣ってはならない。やることなすこと全てアメリカの猿真似の本邦も、本作や『 福田村事件 』を直視しなければならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make sure

しばしば S1 make sure that S2 + V のような形で使う。意味は、S2がVするとS1が確認する。まあ、これは例文で覚えたほうが早い。

 

She made sure that the door was locked and the windows were closed.
彼女はドアが施錠されていて、窓も閉じられているということを確認した。

I want to make sure that this assignment is due next month.
この課題は来月が締め切りであると確認したい。

 

のように使う。初級者から上級者まで日常でバンバン使う表現なので、ぜひ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 BAD LANDS バッド・ランズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, スリラー, フランキー・フェイソン, 伝記, 監督:デビッド・ミデル, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

『 ミッション・インポッシブル フォールアウト 』 -シリーズの最高作-

Posted on 2023年7月29日 by cool-jupiter

ミッション・インポッシブル フォールアウト 80点
2023年7月19日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:トム・クルーズ 
監督:クリストファー・マッカリー

大学の前期が終了しつつあり、また繁忙期になってきたが、本作を復習鑑賞する時間は確保した。

 

あらすじ

プルトニウム回収のミッション達成間際、イーサン・ハント(トム・クルーズ)と仲間たち何者かにプルトニウムを奪われてしまう。「シンジケート」の残党によって構成される「アポストル」の関与が疑われ、ジョン・ラークという男が捜査線上に浮上する。ラークと接触するという謎の女、ホワイト・ウィドウに接近しようとするハントに、CIAのエージェントのウォーカーが監視目的で同行してきて・・・

 

ポジティブ・サイド

本作の売りは息を呑むようなアクション・シークエンスの数々。パリでのバイクチェイスは隠密を命とするスパイにあるまじき行動だが、最後にはスパイらしくちゃっかりと逃げ延びてしまう。ロンドンでの建物の屋上をひたすら全力疾走するシーンはトム・クルーズの真骨頂。パキスタンのヘリコプターアクションはマーヴェリック並みの操縦の腕前を発揮。最後の山肌での決闘では『 M:I-2 』の謎の冒頭シーンの伏線回収と、まさにシリーズの集大成とも言うべき作品だ。

 

とにかくアホかと言うぐらいにアクションがてんこ盛り。CGには極力頼らず、スタントマンもほとんど使わず、トム・クルーズがトム・クルーズ自身をプロデュースする作品なのだが、それでもべらぼうに面白い。理由は簡単でイーサン・ハントの人間性がこれまでよりもはるかに鮮明になったから。はからずも長官自身が語るように、世界の命運よりも一人の仲間の命を重んじてしまうがゆえに、エージェントとして、一人の人間として信頼できる。観ているこちらもIMFの一員になった気持ちにさせられる。これまでの作品もそうなのだが、本作は特にそうだ。


終盤のパキスタンでは人間イーサン・ハントを最も色濃く出してしまう人物が登場する。この瞬間に、イーサン・ハントの使命感ではなく生き様が爆発する。絶対不可能なミッションを達成したハントが満足するのは、数十億の命が救われたことよりも、自らに近しい数名が救われたことだった。冒頭のマッド・サイエンティストを騙すシーンとの対比になっている点も素晴らしい。修身斉家治国平天下という言葉がある。自分を律して自分の周囲を安全安心にしていけば、それが最終的に世界平和につながる。イーサンは確かに英雄的な人物だが、その生き様は実は多くの人間にとって、実は achievable なのではないか。

 

ネガティブ・サイド

CIAが間抜けすぎる。というか、何をシレっと美味しいとこどりをしているのか。普通に考えれば長官のクビが飛ぶ案件では?『 グレイマン 』でも感じたが、CIA長官はアメリカ大統領より偉いのか? 

 

総評

これまでも仲間想いだったイーサンというキャラクターが、明確に仲間 > 任務という姿勢を明確にする。その一方で、仲間というファミリーと本当のファミリーの対比も描かれ、スパイとしてのスーパーアクションと人間としての内面の葛藤の対比も浮き彫りになった。アクションとドラマという二つの異なる要素が互いを引き立て合うという素晴らしい脚本と演出。新作は本作を超えられるのだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crystal

結晶という意味だが、会話の中では crystal clear = 結晶のようにクリアである、という風に使うことがある。あるいは省略して crystal とだけ答えることもある。劇中では

ハント:Is that clear?
ウォーカー:Crystal.

と使われていた。そういえば『 ア・フュー・グッドメン 』でアンソニー・ホプキンスに “Are we clear?” と詰め寄られたトム・クルーズも “Crystal.” と返答していたなあ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』
『 658km、陽子の旅 』
『 神回 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, 監督:クリストファー・マッカリー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 ミッション・インポッシブル フォールアウト 』 -シリーズの最高作-

『 ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション 』 -無国籍テロ軍団を止められるか-

Posted on 2023年7月24日 by cool-jupiter

ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション 75点
2023年7月17日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ レベッカ・ファーガソン
監督:クリストファー・マッカリー

 

最新作鑑賞前の復習。簡易レビュー。

あらすじ

IMFのロンドン支部でメッセージを受け取ったイーサン・ハント(トム・クルーズ)。しかし、メッセージはIMFではなく「シンジケート」という謎の組織からだった。囚われの身となったハントだったが、謎の女性イルサ(レベッカ・ファーガソン)に救われ・・・

 

ポジティブ・サイド

トム・クルーズが空に水中にと縦横無尽のアクションを魅せる。さらにウィーンのオペラ公演の舞台裏で各勢力が暗躍。スパイ映画らしい隠密作戦の要素も復活して、これは高く評価できる。

 

シリーズお馴染みの何らかのガジェットを追い求める展開は健在。今回はそれがUSBなのだが、それを追う謎の美女イルサの存在が物語をすこぶる面白くしている。敵なのか味方なのか。虚々実々の駆け引きとアクションで緊張感が途切れない。

敵が国家あるいは国家組織から、明確な無国籍になったのも本作の特徴か。MI6上がりのソロモン・レーンは、一歩間違えればイーサン・ハント自身の将来像にもなりうるという点で、これまでのヴィランとは一線を画していた。インテリ系の見た目とやや高い声ながら、常に冷徹さを醸し出している。

 

シリーズの中でも屈指の面白さだと感じる。

 

ネガティブ・サイド

スリリングな展開が続くのだが結局IMFのメンバーは無事、というのが予定調和になっていて、スリルはあるがハラハラドキドキはしない。このあたりが長期シリーズの弊害か。

 

最後の最後がなあ・・・ どう考えても跳弾でレーンは大怪我をするのでは。

 

総評

スパイ映画や小説の華やかなりし時代から、確実に時代の変化に合わせてシリーズも変化を遂げている。走りまくるトム・クルーズを見て「俺も頑張らなあかんな」と感じる同士諸賢も多いはず。年を取ることは避けられないが、本作を鑑賞して、せめてトム・クルーズのように年を取ろうと心がけようではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

keep a low profile

目立たないようにしておく、の意味。スキャンダルのあった芸能人は往々にして keep a low profile して、ほとぼりが冷めるのを待つものだったが、最近の芸能人は自分から火に油を注ぐ = add fuel to the fire しているように思える。こちらのフレーズも覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』
『 658km、陽子の旅 』
『 神回 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, レベッカ・ファーガソン, 監督:クリストファー・マッカリー, 配給会社:パラマウントLeave a Comment on 『 ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション 』 -無国籍テロ軍団を止められるか-

『 ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル 』 -世界を股にかけるスパイ-

Posted on 2023年7月7日 by cool-jupiter

ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル 70点
2023年6月29日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ
監督:ブラッド・バード

簡易レビュー。

 

あらすじ

クレムリン爆破の嫌疑をかけられてしまったイーサン・ハント(トム・クルーズ)とチームの面々。ホワイトハウスはゴースト・プロトコルを発動し、IMFを米政府から切り離してしまった。孤立無援となったイーサンたちは潔白を証明するために動き出すが、そこには恐るべき核テロリストの陰謀が秘められていて・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭のスパイ大脱出成功と見せかけて、いきなり暗殺者に始末されてしまうシーンは good 。レア・セドゥが、まるで劇画『 ゴルゴ13 』に出てきそうな女暗殺者を好演した。

 

イーサン・ハントのモスクワの刑務所大脱走からクレムリンの大爆発まで、これでもかというアクション・シークエンスの連続で、まさに出血大サービス。トム・クルーズを愛でるならココですよ、というアピールがすごい。

 

今回はIMFの公式なバックアップなしでのミッションとなり、まさにチームとしての知恵と力、チームワークが試された。その中でも Guy in the chair であるはずのサイモン・ペッグ演じるベンジーが偽装フロアでの取引に登場。シリーズの中でも一味違うサスペンスとユーモアを生み出している。

 

ウクライナ侵攻によってロシアの意外な弱さと、それによって逆に浮き彫りになった核兵器の恐怖を本作は巧みに描き出している。

 

前作で結婚したジュリアは?というところもプロットに組み込んだのは上手いと感じた。

 

ネガティブ・サイド

本作あたりから明確にスパイ映画からアクション映画に舵を切ってしまったという印象。ブルジュ・ハリファの宣伝も兼ねているのだろうが、こんな超高層ビルの外壁を登ったり、その上層階から人間を突き落としたりしたら大騒ぎになるはず。隠密行動でもってサスペンスを生み出すという初期作品の様式に立ち返ってほしいのだが。

 

総評

スパイらしさをどんどんなくしていくが、トリックとアクションはそれに反比例するかのように豪華になっていく。宙吊り状態のハラハラドキドキよりも、こちらの路線の方が単純に楽しめるのは確か。9.11以後は観客がリアリティを求めるのではなく、カタルシスを求めるようになってきた。そうしたトレンドに上手く乗った作品とも言えるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

glue

糊付けする、の意。Blue is glue は確かに分かりやすい。映画では Stay glued to me. =俺から絶対に離れるな、という台詞がよく聞こえる気がする。そして、たいていヒロインが離れていってしまう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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『 ソフトボーイ 』 -ソフトボールそのものに焦点を-

Posted on 2023年6月11日 by cool-jupiter

ソフトボーイ 50点
2023年6月5日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:永山絢斗 賀来賢人 波瑠
監督:豊島圭介

 

簡易レビュー。

あらすじ

佐賀の男子高生オニツカ(永山絢斗)は幼馴染のノグチ(賀来賢人)から、ソフトボール部創設を呼び掛けられる。ノグチは県内に男子ソフトボール部が存在しないことから、予選なしで全国大会に出場できると言う。二人は部員集めに奔走するが・・・

 

ポジティブ・サイド

上野由岐子の登場はなかなかのサプライズ。

 

大倉孝二演じる監督がある意味一番の見どころか。部員たちに厳しく辛くあたるのは自身の不完全燃焼だった青春の裏返しだが、それがどんどん愛情のある厳しさに変わっていくのが漫画『 タッチ 』の柏葉監督らしくて良い。

 

ネガティブ・サイド

主役がオニツカなのかノグチなのか分かりにくい。もっと青春に悩むオニツカにフォーカスをすべきだったと思う。

 

いくらなんでもサードとセンターの守備範囲が広すぎ。Jovianも大昔、ソフトボールの三鷹市民リーグの益荒雄というチームで一部まで上がったことがあるが、内野守備の定石は三塁線を締めて長打にはさせない、三遊間と二遊間はショートが極力カバーではなかったか。経験者がサードだからといって、そいつに三遊間をカバーさせるならショートにコンバートした方が良かったのでは?

 

総評

日本のスポーツものの中では割と良い出来であるように思う。波瑠や賀来賢人の演技が若さゆえか相当に粗削りだが、それも今の目で見ると一種のアクセントか。泥だらけの青春というのは今は称揚されないかもしれないが、不格好な青春の方が年を取ってからは好ましく感じられる。そういう意味ではオッサン向けの映画と言えるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

underestimate

監督がしばしば口にする「全国大会なめるな」のなめるは、underestimate = 過小評価する、になるだろうか。小説やら何やらでは時々 unnerestimate と綴られることもある。これで早口と荒っぽさを表すことができる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 渇水 』
『 水は海に向かって流れる 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, スポーツ, 日本, 永山絢斗, 波瑠, 賀来賢人, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 ソフトボーイ 』 -ソフトボールそのものに焦点を-

『 最後まで行く 』 -悪徳警官同士のバトル-

Posted on 2023年5月26日2023年5月26日 by cool-jupiter

最後まで行く 65点
2023年5月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:イ・ソンギュン チョ・ジヌン チョン・マンシク
監督:キム・ソンフン

 

公開当時に見逃した作品。日本版リメイク鑑賞の前に近所のTSUTAYAでレンタル。

 

あらすじ

殺人課の刑事ゴンス(イ・ソンギュン)は警察署へ向かう途上で、男をはねてしまった。ゴンスは男の遺体をトランクに隠し、母の葬儀場で遺体の隠ぺい工作を図ろうとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 パラサイト 半地下の家族 』でスタイリッシュな金持ち父さんを好演したイ・ソンギュンが、その数年前には小悪党かつ小市民な刑事を演じている。飲酒運転しているにもかかわらず、自分を刑事だと知った相手の交通課の警察官を、これでもかといじめる。ホンマに警察か?と思わされる。この役者の演技の幅広さと極端さが韓国らしい。対するチョ・ジヌンの強面かつにじみ出る暴力性もすごい。『 悪魔を見た 』のチェ・ミンシクの刑務所仲間的な風貌で、一目見ただけでヤバい奴というオーラが感じられる。この二人があの手この手でやりあうのだが、とても警察官とは思えない。まさにチンピラ同士の対決。そんなもん観て何が面白いの?と思うことなかれ。これがべらぼうに面白い。

 

まず主人公以外の警察官連中も小悪党だらけ。「俺たちは善人じゃない」と嘯きながら、しかし職務はそれなりに忠実に果たしていく。それにより主人公のゴンスが追い詰められていくというサスペンス。さらに自分を脅迫してくるパク警部補との争いもスリリング。男子トイレで乱闘して、便器で窒息させられそうになるなど、邦画では絶対に描かれることのない乱闘シーンも見られる。その後にも「なんじゃそりゃ?」という展開も待っていて、とにかく観る側を飽きさせない。

 

日本だけではなく、様々な国でリメイクされているというのも頷ける。

 

ネガティブ・サイド

匍匐前進人形を使ったトリックは、いくらなんでも無理があるのではないか、死後硬直もあるだろうから、角は曲がれないだろうと思う。

 

また現役の警察官たちが、同僚や上司と音信不通のまま、あれほど色々と行動することができるのだろうか。特にパク警部補は、タクシー運転手に後から通報されてもおかしくないように思うのだが。

 

とある武器のデモンストレーションはあまりにも唐突で、かえって分かりやすすぎる伏線だった。せっかく(?)徴兵制度のある国なのだから、もっと自然な形で武器の類を物語に導入してほしかった。

 

総評

普通に面白い。韓国映画らしく、警察をこれでもかとコケにしながら、笑いとスリルとサスペンスを与えてくれる。とことん運の悪い男が、さらに窮地に追い込まれながら、逆転を求めてあがく姿には悲壮感が漂う。だからこそ観る側はゴンスに感情移入してしまう。彼は最後まで行けるのか?行きついたその先に待つものは?ぜひ見届けてほしい。日本版リメイクも楽しみである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ミヤネ

ごめん、の意。韓国映画でしばしば聞こえてくるし、この言葉が使われるシチュエーションもはっきりしているので、簡単に覚えられる。何語であろうとも、言語は状況・文脈とセットで理解したいものである。

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アクション, イ・ソンギュン, サスペンス, チョ・ジヌン, チョン・マンシク, 監督:キム・ソンフン, 配給会社:アルバトロス・フィルム, 韓国Leave a Comment on 『 最後まで行く 』 -悪徳警官同士のバトル-

『 マジック・マイク XXL 』 -青春に別れを告げるロードトリップ-

Posted on 2023年3月4日 by cool-jupiter

マジック・マイク XXL 70点}
2023年3月1日 WOWOW録画にて鑑賞
出演:チャニング・テイタム ドナルド・グローヴァー アンバー・ハード
監督:グレゴリー・ジェイコブズ

『 マジック・マイク 』の続編。やはり『 マジック・マイク ラストダンス 』への備えとして再鑑賞。

 

あらすじ

ストリップの世界からは足を洗い、家具職人として慎ましく生活するマイク(チャニング・テイタム)に、かつての仲間から「ダラスが旅立った」と告げられる。通夜に訪れたマイクだが、ダラスはアダムと共に天国ではなく中国に旅立っていた。一同はそれぞれの人生を歩み始めるために、最後にストリップの大会に参加しようと、マートル・ビーチに向けてロードトリップに出るが・・・

 

ポジティブ・サイド

前作のラストで踊ることを拒否したマイクが、今作では自分の職場でBGMに乗せられて不意に踊りだす。家具職人として汗水たらして働きながらも、マイクはやっぱりマジック・マイクだった。ストリッパー、本作の言葉を借りれば男性エンターテイナーとしての残り火が残っていた。夜の世界で1ドル札の雨を降らすのではなく、昼間の世界でこつこつと働く。その姿に我々はホッとすると同時に、ちょっぴりガッカリもさせられる。誰もが大人にならなければならないが、青春と決別するのはなかなかに難しい。本作は、マイクだけではなく、かつての仲間たちすべてが青春に別れを告げる物語である。

 

フローズン・ヨーグルトを売って生計を立てるティトに、芸能プロダクションに履歴書を送りまくるケンなど、前作でそれほどフォーカスされなかった個性豊かなキャラたちの背景が見えてくる。また、ロードトリップの中でマイクと各キャラが個別に話していく中で、彼らの関係についても様々な側面が見えてくる。じっくり話したことはなかったが、実は互いに深くリスペクトしていたことが分かったり、実はわだかまりを抱いていることが判明したりと、陽キャは陽キャで色々あったんだなと感じる。

 

旅の途中で出会う人々も、それぞれにドラマがある。仏頂面のコンビニ店員を「お前のダンスで笑顔にしろ、それができれば新作ダンスだって生み出せる!」というマイクの力強い提案と、それに乗ったリッチーがバックストリートボーイズの ”I Want It That Way.” を背景に披露する渾身のダンスが本作の見どころの一つ。また、一晩泊めてもらうことになる家で、マダム達の様々な悩みに耳を傾け、励ましの言葉を掛けて、自己効力感を与えるシークエンスもハイライトの一つ。ダラスとアダムは金のために中国へ行ってしまったが、マイクをはじめ残された面々は、自分たちが癒しを提供する存在であったことに気付いていく。

 

マートル・ビーチの大会で踊ったからとて、何かが劇的に変わるわけではない。結婚を夢見たり、妻子のいる生活に憧れたり、堅実な職業を得ようとしたり、あるいは華々しい芸能の世界にしがみつこうとしたり、進路は様々だ。そう、進路。つまり、大学生が院に進んだり、あるいは就職したり、ニートになったりと、色々あるが、マイクとその仲間たちは派手なバカ騒ぎをすることで、モラトリアムの終わりを受け入れたのだ。今回のロードトリップは彼らなりの卒業旅行なのだ。

 

ラストのステージ・パフォーマンスは圧倒的。Jovianが自分の結婚式で使ったブルーノ・マーズの “Marry You” をドナルド・グローヴァーが歌うシーンが個人的には最も盛り上がった。マイクが道中で知り合ったストリッパー仲間と最後に見せるパフォーマンスも圧巻。最後に打ち上げた大きな花火は、彼らの旅の終わりを締め括るにふさわしい。歳をとってから思い起こして、ふっと笑うことができる。そうした瞬間を持つことが青春の醍醐味だし、そうした瞬間を共有できる仲間を戦友と呼ぶのだろう。

 

ネガティブ・サイド

トバイアスが事故で out となってしまったために、急遽、マイクの古い伝手でローマにMCを頼むことになる。そこは良いとして、そのローマのMCがそれほどシャープだとは感じられない。レディをクイーンと言い換えるぐらいで、何か特別にMCの才能があるようには感じられなかった。これなら前作のマシュー・マコノヒー演じるダラスの方が遥かにMCとしては上だろう。”All right, all right, all right.” だけでその場の空気を全て自分色に染め上げるマシュー・マコノヒーのオーラを上回るような決め台詞を用意すべきだった。

 

あとは、ほんの少しでいいのでブルックの出番も欲しかった。ケリー・マクギリスは『 トップガン マーヴェリック 』にとても出演できないと自己判断したそうだが、コディ・ホーンはギャラで揉めたりしたのだろうか。

 

総評

青春との盛大な決別、そのほろ苦さが存分に味わえる。一方で、修学旅行的な楽しさもある。ロードムービーとしても青春映画としても、非常に良い仕上がりになっている。女性のみならず、30代以上の男性も、本作を通じて自分の人生を見つめ直すことができる。もちろん単純に男性ストリッパーが大いに羽目を外す映画として観賞しても構わない。むしろ、若い世代はそういう見方をすべきかもしれない。そこから10年後に本作を観ることで、自らの成長や成熟を感じることもあるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

ride

仮面ライダーのライダーは ride から来ている。意味は「乗る」だが、これは名詞。劇中ではしばしば last ride という形で使われていた。プロレスラーのアンダーテイカーの決め技の一つだが、実際は You’re in for a ride. の ride に「最後の」の last がついたもの。ride には「何か楽しいこと、エキサイティングなこと」という意味もある。 マイクたちの言う our last ride というのは、みんなでやる最後のバカ騒ぎ的な意味なのだ。 

 

次に劇症鑑賞したい映画

『 シャイロックの子供たち 』
『 マジック・マイク ラストダンス 』
『 湯道 』

 

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