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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 松坂桃李

『 居眠り磐音 』 -“陽炎の辻”前日譚、または坂崎磐音は如何にして脱藩して浪々の身になったか-

Posted on 2019年5月19日2020年10月18日 by cool-jupiter

居眠り磐音 75点
2019年5月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松坂桃李 芳根京子 南沙良
監督:本木克英

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山本耕史から松坂桃李へと確かにバトンは受け渡された。長谷川平蔵や水戸光圀など、役者を変えながらシリーズを存続させていく、あるいはリメイクし、あるいはリブートするというのは古今東西で用いられてきた手法である。それが奏功する場合もあれば、盛大に失敗することもある。テレビドラマから銀幕へと移ってきた本作はどうか。成功である。

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あらすじ

江戸勤番を終えた坂崎磐音(松坂桃李)とその仲間達。幼馴染であり、これからは祝言を挙げて義理の兄弟にもなろうという時に、ちょっとした行き違いから互いに斬り合うことに。親友を斬ってしまった磐音は、妻となるべき奈緒(芳根京子)の元をも去り、江戸で浪々の身になっていた。そんな時、磐音に両替屋の用心棒にならないかとの誘いがあり・・・

 

ポジティブ・サイド

まずは何をおいても、ピエール瀧の代役を務めた、というよりも取り直しによって作品の質をさらに高めてくれた(勝手にそう断言させてもらう)奥田瑛二に満腔の敬意を表したい。『 ゲティ家の身代金 』で、ケビン・スペイシーの代役を務めたクリストファー・プラマーと同じく、彼の仕事は本作の骨格をより太くしてくれた。

 

そして芳根京子と奥田瑛二が相対するシーンでの彼女の涙。喜怒哀楽は演技の基本にして究極だが、芳根がこのロングのワンカットで流す涙は、『 君の膵臓をたべたい 』で北村匠海が桜良の家で流す涙のドラマチックさに匹敵する。芳根には、今後はあまり女子高生役などは引き受けることなく、本格路線を目指してほしい。その時は、Joviam一押しの南沙良も一緒に連れて行ってあげて欲しい。

 

そして山本耕史からのバトンを見事に受け継いだ松坂桃李も称えたい。ドラマ版では柄の部分をシャキーンと持ち変えて開眼するスタイルだったのを、剣をまるで杖であるかのように扱う様が妙にシネマティックで銀幕に映えたのは、松坂の雰囲気と撮影監督の手腕であろう。また磐音が強すぎないのも良い。ドラマ版を毎回欠かさず観ていたわけではないが、昼行灯の磐音の描写は映画版の本作の方がより説得力があった。鰻を黙々と捌く手つきに職人気質がありありと感じられながら、長屋暮らしには生活感が欠けており、生活力がありそうなのに無い、しかし仕事はきっちりやるという、磐音の本質が見事に描写されていた。そんな磐音のチャンバラでも、適度に負傷するのも良い。何食わぬ顔で「浅手じゃ」と、おこんに告げるところでも、実はこの男が木刀剣術、道場剣術のみの男ではないことを間接的に告げており、心憎い演出。今、日本映画における侍ヒーローと言えば、坂崎磐音か緋村剣心だろう。

 

監督は『 空飛ぶタイヤ 』で、巨大な組織と個人との関わりについて非常に大きな示唆を残した本木克英。今作では江戸幕府や豊後藩という巨大な体制と、江戸の町人連中の中に生きる浪々の侍を活写した。会社勤めのサラリーマンが思わぬ形で同期を危地に追いやってしまい、それを苦にした本人も退職。フリーター生活を送るうちに、大企業や政府の巨大な陰謀を巡る、一般庶民の代理権力闘争に巻き込まれていくという具合に読み替えていくこともできた。それもこれも、磐音の剣の実力と、実直さ、誠実さ、勤勉さといった人間力に依るところが大きい。腕は立つが決して無敵ではなく、頭は切れるが、決して利得のみを計算することはしない。この新時代のヒーローは、社畜サラリーマンの心にかなりの確率で突き刺さるだろう。

 

ネガティブ・サイド

まずはトレーラーや予告編がよろしくない。ほとんど全部、話の筋がばれてしまっているではないか。特に奈緒を花魁にするシーンなどは、予告編には無用だろう。また、その奈緒が豊後の国家老の宍戸文六の“援助交際”の申し出を断るシーンは剣劇さならがの迫力だったが、全体を通して見ればノイズだったのかもしれない。

 

銭の妖怪と化した柄本明も凄みを見せつけるが、断末魔が間延びしすぎだ。磐音のトラウマを抉るような発言などしなくとも、観る側は人を斬るたびに磐音がトラウマを呼び起こされることなど百も承知である。受け手をもっと信頼した作りにしてもらいたい。熱演すればするほど、ストーリーテリングを壊してしまっていた。

 

また磐音と幼馴染たちの一人称が一定していないところも少し気になった。冒頭では「オレ」なのに、その後は「ワシ」になっていた。

 

総評

細かい部分に不満はあるものの、素晴らしい作品に仕上がっている。奈緒とおこんを巡る続編も観てみたいし、その時はパラレルワールドな展開を夢想したいと思う。芳根京子に奥田瑛二と来ると、どうしても『 散り椿 』を思い出されるが、侍のパトスとエートスについては本作の方が上質な描写をしている。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 南沙良, 日本, 時代劇, 松坂桃李, 監督:本木克英, 芳根京子, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 居眠り磐音 』 -“陽炎の辻”前日譚、または坂崎磐音は如何にして脱藩して浪々の身になったか-

『図書館戦争 THE LAST MISSION』 -この恐るべき想像のパラレルワールドでいかに生きるか-

Posted on 2018年6月18日2020年2月13日 by cool-jupiter

図書館戦争 THE LAST MISSION 55点

2015年10月18日 大阪ステーションシネマおよびWOWOWにて観賞
出演:岡田准一 榮倉奈々 松坂桃李
監督:佐藤信介

*『図書館戦争』および本作に関するネタバレあり

 子どもたちのために有害図書を追放する。耳障りは確かに良い。だが、例えばごく最近の新幹線内での無差別殺傷事件の犯人が読んでいた本がハイデガーやドストエフスキーだったということに対して、識者からは特に何も聞こえてこない、少なくとも宮崎勤事件の時のような欺瞞と偏見に満ちたようなコメントは。

前作が追求したテーマが思想の対立であったとすれば、今作が追求するテーマは対立を解消するために思想を捨てられるか、ということだ。言い換えれば、命と信念、どちらをより大切に感じるのかということでもある。3秒以内にどちらかを選べ、と言われればたいていの人は「命」を選ぶのではないか。だが、ちょっと待て。人類の歴史、なかんずく戦争という視点から見れば、人間は命よりも大切なものをずいぶんとたくさん見出してきたようである。「命より大切なものがあるというのが戦争を始める口実で、命より大切なものは無いというのが戦争を終える口実」というのは誰の言葉だったか。けだし本質を突いた言葉であろう。本作で図書隊タスクフォースの面々は、本を読む自由、思想の自由、検閲に対抗するための力の存在の必要性のために勇敢に戦う。だが図書隊員の中には、命よりも尊い守るべき価値のあるものに対して疑念を抱くものがいた。そしてそれは元図書隊エリートにして現文科省職員、そして手塚(福士蒼汰)の兄(松坂桃李)の思惑によるもので、彼の次なる狙いの矛先は笠原(榮倉奈々)へと向かい・・・

相変わらず現実の日本社会と乖離した世界が物語世界では展開されている。しかし、笑えないのはその現実離れの度合いではなく、その現実離れが映し出す現実の残酷さ、冷酷さである。前作のフィナーレは、メディア良化委員会と図書隊の戦闘の様子が遂にメディアで大々的に報じられ、国民の関心が検閲を可能にしたメディア良化法に厳しく向けられる可能性を示唆するものだった。だが続編たる今作では、またも国民は図書隊の闘いに無関心であった。そしてそれは現実の日本に生きる我々にも当てはまってしまうことではないのか。国会で議論が尽くされていない自衛隊のイラク・サマワ派兵(派遣ではなく派兵と書くしかない)に関して、また南スーダン派兵に関しても現地で戦闘行為があったことは、もはや隠しようの無い事実である。そしてそのことがどうして斯くの如く長期に隠蔽されてきたのか。それは結局、国民が無関心だったからに他ならない。記者会見でアホのように泣き喚いた兵庫県西宮市の市議会議員が、政務活動費を不正にじゃんじゃん使いまくれたのはなぜか。そして彼以降、メディアや市民が目を光らさせたことで同様の問題が激減したのはなぜか(もちろんその過程で10人以上が辞職せざるを得なかった富山市議会のような自治体も出てきたが)。

大切だと思えることを必死で守ろうとする。それを実行に移せることこそが自由なのではないか。笠原が任務を全うしようと走るのは、自らの思想信条のためではなく、愛する堂上(岡田准一)のためであり、仲間のためであろう。思想と命、どちらを選ぶのが正解なのかではなく、どちらを選ぶにしろ、その選択が自由意思によって為されることが真に大切なのではないかと思う。哲学者のE・カントは自由を「先立つ一切の前提に囚われないこと」と定義した。与えられた選択肢以外を選ぶ者がいてもよいではないか。そうしたテーマ性を感じさせてくれた佳作である。

ひとつ不満に思えるのは、岡田准一と松坂桃李の対面シーン。「直接来い」という岡田の挑発に「兵隊は辞めました」という松坂。もちろんここで観る者は「ははーん、そんなことを言いながらも、最後はこの2人の一騎打ちか」と期待する。しかし、そんな展開は訪れなかった。残念至極である。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, アクション, ラブロマンス, 日本, 松坂桃李, 榮倉奈々, 監督:佐藤信介, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『図書館戦争 THE LAST MISSION』 -この恐るべき想像のパラレルワールドでいかに生きるか-

『 娼年 』 -性愛を通じての承認-

Posted on 2018年5月26日2020年2月13日 by cool-jupiter

娼年 65点
2018年4月30日 大阪ステーションシティシネマにて観賞
主演:松坂桃李
監督:三浦大輔

賛否両論入り乱れる本作だが、自分としては好意的に評価したい。この作品が焦点を当てているのは様々なセックスではなく、様々な満たされない人、様々な日蔭者、様々な虐げられている者たちではないか、と感じたからである。これはまさに『 シェイプ・オブ・ウォーター 』が是々非々の意見にぴったりと別れてしまったように、観る側が何を見るのか(何を見たがっているのか)によって、作品そのものの見え方も大きく変わってしまう好個の一例と言える。作品の多面性や奥深さの証明になるからだ。

松坂演じるリョウはバーでバイトしながら、大学にもあまり顔を出さず、特に決まった交際相手も持たず、お気楽に暮らしていた。そこへ中学の同級生が御堂静(真飛聖)を伴ってバーへやって来る。そしてひょんなことから御堂にスカウトされたリョウは娼婦ならぬ娼年としての生き方を模索するようになる・・・

ここで「なんだ、松坂桃李が次から次に客を抱いていくだけの話か」と思うなかれ。彼が出会う女性は皆、心の隙間とも言うべきものを抱えており、セックスはそれを埋めるための一つの手段にすぎない。最も分かりやすいのは最初の顧客、大谷麻衣演じるヒロミだろう。課題は、年上の女性に欲情できるかではなく、年齢と魅力は決して反比例するわけではない、ということを再確認させてやることなのだ。某レビューで「出来の悪いAVを見せられているようだ」というものがあったが、それはあまりにも皮相な見方であると思う。

松坂桃李の大学生役というのは少々無理があるのではないかと思ったが、不思議のもので桜井ユキと並ぶことで、かなり違和感が緩和された。『 今日、恋をはじめます 』で武井咲と並んだ時には、どう頑張っても高校生に見えなかったが、このあたり、まさにキャスティングの妙であると言える。

もしもあなたが自分の心に空虚さを感じるのであれば、性別・年齢を問わず、本作が何某かの正の影響を与えてくれるだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, ロマンス, 松坂桃李, 監督:三浦大輔, 配給会社:ファントム・フィルムLeave a Comment on 『 娼年 』 -性愛を通じての承認-

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