水は海に向かって流れる 40点
2023年6月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:広瀬すず 大西利空
監督:前田哲
簡易レビュー。
あらすじ
高校生の直達(大西利空)は、通学のため叔父・茂道の家に引っ越すことに。しかし最寄り駅に迎えに来たのは、見知らぬ女性・榊さん(広瀬すず)だった。案内された先はシェアハウスで、漫画家の叔父や女装の占い師たちとの奇妙な同居生活が始まった。そんな中で、直達はいつも不機嫌な榊さんと自分の間に思わぬ因縁が存在したことを知り・・・
ポジティブ・サイド
広瀬すずがムーディーな20代女子を演じきった。天真爛漫女子校生役からは確実に脱却しつつあるようだ。中身が未成熟なままに大人になってしまったという難しい役だったが、代表作とは言えないまでも、近年の出演作の中では上位に来る好演だったと思う。
北村有起哉のキャラが良い意味で悪い印象を残してくれる。情けない男なのだが、それでも同じ中年のオッサンとしてはこの男を応援せずにはおれない。そんなキャラ。『 終末の探偵 』に続いて応援したくなった。
ネガティブ・サイド
主役の脇を固めるキャストも豪華だが、それらが全く活かしきれていない。高良健吾が脱サラして漫画家になっているのは良いとしても、今どきあんな格好で漫画描くか?生瀬勝久の大学教授役というのも単に都合のいい狂言回し。色々なキャラが登場しまくるが、役割が一つしかないか、あるいは全くない。
直達が榊さんに惹かれていく必然性を感じさせるシーンや描写が不足している。たとえば女ものの下着を同居の占い師のものだと思って見ていたら榊さんのものだったとか、トイレにある見慣れない置物の正体を知って一人赤面してしまうだとか、15歳のガキンチョらしさが全くなかった。その逆に、何故にその年齢でそこまで老成、達観しているのかという背景の描写もなかった。原作の小説にはおそらく丹念な描写があるのだろうが、本作は映像でそれを物語ることを一切放棄してしまっている。
と同時にキャラクターの心情を時に台詞ですべて説明してしまっている。小説なら文字に頼るしかないが、映画でこれはアカンでしょ。最も典型的だったのは直達のクラスメイト、當真あみの演じた楓だろう。そこでそれを台詞にするか?他にも表情や映像で物語るべきシーンがいくつも説明台詞に取って代わられていた。小説を映画にすることは否定しないが、小説を映像化することには反対である。
総評
ほとんどのキャラクターの深堀りが上手く行っておらず、主役の二人の複雑な関係が徐々にほぐれていく過程に特に寄与しない。なので、シェアハウスという舞台そのものに魅力も必然性も感じない。直達も鈍さと鋭さの両方が際立つ変な少年で感情移入が難しかった。広瀬すずのファンなら彼女の新境地を楽しめるのだろうが、普通の映画ファンには少々勧め辛い。貯まったポイントの消化を本作でする、というのは一つの手かもしれない。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
shared house
日本語で言うところのシェアハウスの意。分詞の前置修飾というやつである。a used car =中古車、a broken pencil =折れた鉛筆、の仲間である。share house という言い方もあるらしいが、shared house の方が遥かに一般的なので、こちらを使おう。
次に劇場鑑賞したい映画
『 ザ・フラッシュ 』
『 告白、あるいは完璧な弁護 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』