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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ヒューマンドラマ

『 クリード 過去の逆襲 』 -父親殺しに失敗-

Posted on 2023年6月4日 by cool-jupiter

クリード 過去の逆襲 50点
2023年5月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マイケル・B・ジョーダン ジョナサン・メジャース テッサ・トンプソン
監督:マイケル・B・ジョーダン

好物のボクシングもの。スタローンが出演しないのが吉と出るか凶と出るか。

 

あらすじ

アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)は世界王者として引退し、家族と共に幸せに暮らしながら、ジムの後輩の面倒を見ていた。ある日、刑務所から出てきた幼なじみのデイム(ジョナサン・メジャース)が現れ、かつての夢だった世界王者を目指したいと言う。負い目のあるアドニスはデイムをジムに招き、世界王者のフェリックスのスパーリングパートナーにするが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 クリード 炎の宿敵 』でドラゴの息子との二度の激闘を経て、これ以上語るべきドラマがあるのかなと思っていたところ、確かにあった。『 クリード チャンプを継ぐ男 』で、引き取られる前のアドニスは荒くれ非行少年だった。ここに物語の鉱脈を見出した脚本家は did a good job だろう。

 

デイムを演じたジョナサン・メジャースのヴィランっぷりが素晴らしかった。『 アントマン&ワスプ クアントマニア 』のカーンには「ギャグかな?」と感じたが、本作では根っからの悪人ではなく正当性のある悪人、執念の悪人を演じきった。監督でもあるジョーダンの演出なのか、本人の役作りなのか。凄みのある演技だった。売れてきたところで、いきなりキャリア終了の危機だが・・・ 

 

デイムがいきなり世界戦というのは荒唐無稽にもほどがあるが、作中で述べられていた通り、『 ロッキー 』自体がそういう荒唐無稽な話だったし、その元ネタであるチャック・ウェプナーの経歴がデイムとよく似ている。色々な意味でクリードの物語ながら、ロッキーへのオマージュも忘れていない。

 

スタローンが出てこない=『 ロッキー 』シリーズからの独立、とも言える。もちろん、権利関係でスタローンが色々と主張していて、残念ながらそこに法的根拠がないことは明白。ならばと、アポロ・クリードの息子たるアドニス・クリードが前二作を通じて、アポロという父を失い、ロッキーという父を得て、さらに本作で自らが父となり、そして精神的・文学的な意味でロッキーという父親を敢えて殺すために、自らの少年時代と決別する、つまり完全に大人になる、というプロットは筋が通っていた。

 

ネガティブ・サイド

フェリックスの線が細すぎて、とてもヘビー級とは思えない。せいぜいスーパーミドル級ぐらいにしか見えない。もっといかにもヘビー級然とした役者をキャスティングできなかったのか。

 

少年時代の過ちに決着をつける必要があるというのは分かるが、デイムに耳を傾けてもらう方法がリングの中で戦うことだけだとは思えない。たとえば、アドニスにメディアの前で過去の罪を自白させるとか、あるいはF・メイウェザーがやっていたようなエキシビション・マッチを提案することもできただろう。それでは一般大衆が納得しない、ということでアドニスの現役復帰というストーリーなら納得できたのだが。

 

二人の対決が観客を置き去りにした、監獄の中での殴り合いになる演出は悪くないと思うが、そこに至るまでのドラマがリングの中にない。アドニスが引退試合でデイムから得た観察力を発揮していたり、あるいはデイムが獄中でもアドニスのすべての試合をつぶさに観ていた、ということが感じられるようなシーンがなかった。そうした二人だけが理解できるボクシングの世界から、観客やセコンドを置いてきぼりにした殴り合いの世界に没入するという流れは構築できなかったのか。

 

Going the distance を流すのも中途半端。ロッキーには敬意を表しつつも、クリードの物語だということを徹底して欲しかった。

 

総評

面白いと思える部分と、イマイチだなと感じる部分が同居する作品。スタローンが出てこないことで、あらためて『 ロッキー 』というシリーズの重みが感じられた。ただ、マイケル・B・ジョーダン演じるアドニスというキャラの魅力は全く損なわれていないし、『 トップガン マーヴェリック 』のように次世代への継承を大いに予感させる終わり方も悪くない。20年後にアマラがボクサーになって、『 ケイコ 目を澄ませて 』的なドラマを盛り込みつつ、レイラ・アリ vs ジャッキー・フレイジャー、またはレイラ・アリ vs クリスティ・マーティンのような試合を見せてくれるのなら、それはそれで歓迎したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a Creed

学校では「人名には不定冠詞 a はつけない」と教えるが、実はつけることもある。一番よくあるのは a + 名前 = その一族の一人という意味。『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』のカイロ・レン “You are a Palpatine.” がその代表例か。他には「そういう名前の人」という用法。I’m looking for a Ken Smith. = ケン・スミスという人を探しているのですが、のように使う。もう一つは「その名前のような偉大な人」という用法。We need a Steve Jobs now. = 我々には今こそスティーブ・ジョブズのような異能の人が必要だ、のように使う。英語教師を目指す人だけ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 怪物 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, アメリカ, ジョナサン・メジャース, スポーツ, テッサ・トンプソン, ヒューマンドラマ, ボクシング, マイケル・B・ジョーダン, 監督:マイケル・B・ジョーダン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 クリード 過去の逆襲 』 -父親殺しに失敗-

『 TAR/ター 』 -虚々実々の指揮者の転落-

Posted on 2023年5月31日 by cool-jupiter

TAR/ター 65点
2023年5月27日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:ケイト・ブランシェット
監督:トッド・フィールド

『 アイズ・ワイド・シャット 』のトッド・フィールド監督作品。仕事がしばらく繁忙期なので簡易レビュー。

 

あらすじ

ベルリンフィル初の女性首席指揮者となったリディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、その地位に見合った数多くの仕事に忙殺されながらも充実した日々を送っていた。しかし、かつての劇団員に関する不穏な情報が入ったことで、彼女のキャリアに曇りが生じ始めて・・・

以下、ネタバレあり

ポジティブ・サイド

ケイト・ブランシェットの演技が光る。キャリアの絶頂からの転落が、公私両面から緻密に描かれており、そのディテールへのこだわりが観る側を引き付ける。

 

途中で加わるロシア人チェリストがなかなかの曲者。一種のスパイなのか、それとも本当にターに心酔する者なのか。そのあたりが虚々実々に描かれていて、ミステリおよびサスペンス要素が大いに盛り上がる。

 

最後の最後がゲーム『 モンスターハンター 』のコンサートなのには笑ってしまった。『 蜜蜂と遠雷 』で触れた通り、Jovianは作曲家の裏谷玲央氏と懇意にさせて頂いているので、モンハンはプレーはしていないが、サントラは買っている。

 

リディア・ターには転落なのかもしれないが、新しい発見の旅への one for the road とも言える展開だろう。ターを英雄的にも悪人としても、一色に染め上げないという両義性に満ちた作品である。

 

ネガティブ・サイド

ピークが序盤のインタビューとジュリアード音楽院でのレクチャーに来ていて、肝心の演奏シーンに来ていない。マーラーでもバーンスタインでも何でもよいので、一曲まるまる聞かせてくれても良かったのではないか。

 

私生活では様々なものがターを蝕んでいくが、メトロノームはやりすぎに思える。こんなもん、犯人1人しかおらんやんけ。それに気付かぬリディア・ターではあるまいに。

 

総評

指揮者ものとしては、個人的には『 セッション 』の方が好きかな。ターという女傑キャラの強烈さだけは『 セッション 』のJ・K・シモンズや『 女神の見えざる手 』のジェシカ・チャステインに匹敵する。ケイト・ブランシェットの演技を存分に堪能すること主目的に鑑賞しよう。

 

Jovian先生のワンポイントドイツ語レッスン

danke

ドイツ語でいうところの thank だが、Danke! となると Thanks! または Thank you! となる。Danke schön! とすれば、Thanks very much! または Thank you very much! である。何語に依らず外国語の語彙学習は「ありがとう」から始めるのが良いように思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 クリード 過去の逆襲 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ケイト・ブランシェット, さすp, ヒューマンドラマ, 監督:トッド・フィールド, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 TAR/ター 』 -虚々実々の指揮者の転落-

『 帰れない山 』 -悠久の山と永遠の友情-

Posted on 2023年5月18日 by cool-jupiter

帰れない山 70点
2023年5月14日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ルカ・マリネッリ アレッサンドロ・ボルギ
監督:フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン シャルロッテ・ファンデルメールシュ



山好きの嫁さんが観たいというのでチケット購入。なかなか見応えのある人間ドラマだった。

 

あらすじ

両親とともに山を訪れた少年ピエトロは、同い年の牛飼いの少年ブルーノと出会い、山を二人で巡るうちに無二の親友となる。しかし運命のいたずらで、二人の別れは唐突に訪れた。時は流れ、大人になった二人は、以前のように友情を育んでいくが・・・



ポジティブ・サイド

男二人の物語といっても『 エゴイスト 』のような関係性ではなく、純粋な友情物語。特に都会育ちで山という大自然に魅せられるピエトロと、山育ちで、それでいて都市への憧憬を秘めているブルーノという、非常に対照的な二人の描き方が秀逸だ。自分の親が自分よりも友人の方を褒めてしまう。そうした経験をしたことのある人は存外に多いはず。本作でも、ピエトロとブルーノは互いにリスペクトしながらも、そうした少し危うい友情を育んでいく様がこの上なくリアルだ。

 

二人が大人になって再会するシーンもリアルである。すぐさま再会を喜んで意気投合・・・しない。互いに一瞥をくれるだけ。これは二人が大人になったということ。小学校、中学校の親友と別々の高校に行くことになり、いつの間にやら疎遠になるのは非常にありふれたこと。それは世界が広がるから。しかし、そうした広い世界で、20代後半以降に友人関係に慣れれば、それは子どもの頃の友人とは全く違う意味での友人になれる。ブルーノとピエトロはまさにそれ。大人になった彼ら二人だが、それでも世界を見聞して教養もあるピエトロと、誰よりも山を知っているが俗世の垢にまみれていないブルーノの対比が際立っていく。奥さんに怒鳴りつけられるブルーノには、ひたすらに感情移入してしまった(Jovianもよく浮世離れしていると言われる)。

 

山小屋を立てるという行為は、一つには山に生きるというマニフェストだろう。もう一つは、その山には帰る場所がある、というメッセージでもあるはずだ。世界に山は数あれど、俺とお前にとっての山とは、ここなんだ。そういうことなのだと思う。

 

それにしても序盤の少年二人が遊ぶ山の美しさに、大人になった二人が対峙する山の厳しさよ。Jovianは新婚旅行で数年前にカナダのバンフに行ったが、ロッキー山脈の氷河は永久不変に見えて、実は年間数センチずつ動いている。同じように山脈も少しずつ削られながらも隆起することで、不変であるように映る。人間関係、就中、友情も様々な変化を経ながらも永続していくのだろう。人間の一生は山の命に比べればとてつもなく短いが、その友情の雄大さや悠久さは山に劣ることはない。

 

ネガティブ・サイド

アスペクト比が4:3だったのは何故だ?通常の2.35:1では不都合があったのだろうか。人間だけを映すなら前者でもいいのだろうが、アルプスの大自然を映し出すには不適切だった。監督あるいは撮影監督にはどのような意図があったのだろう。

 

2時間30分はかなり長く感じた。2時間ちょうどにまとめられなかったか。編集でカットできそうなシーンがいくつかあった。街でのメールチェックのシーンなどはもっと短くするか、あるいはバッサリとカットできただろうと思う。

 

総評

男同士の関係性を描く映画としては『 君の名前で僕を呼んで 』に次ぐかもしれない。大自然の美しさとある意味での残酷さ、その中に垣間見える崇高さを余すところなく映し出した、ヨーロッパらしい作品。デートムービーには向かないが、夫婦でじっくり鑑賞するのはありだろう。

 

Jovian先生のワンポイントイタリア語レッスン

Come stai

コメ・スタイと発音する。意味は How are you? である。おそらく Ciao = チャオと並んで最もポピュラーなイタリア語だろう。知っておいて損はない表現だ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 放課後アングラーライフ 』
『 高速道路家族 』
『 最後まで行く 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アレッサンドロ・ボルギ, イタリア, ヒューマンドラマ, フランス, ベルギー, ルカ・マリネッリ, 監督:シャルロッテ・ファンデルメールシュ, 監督:フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン, 配給会社:セテラ・インターナショナルLeave a Comment on 『 帰れない山 』 -悠久の山と永遠の友情-

『 不思議の国の数学者 』 -韓流ヒューマンドラマ-

Posted on 2023年5月14日2023年5月15日 by cool-jupiter

不思議の国の数学者 75点
2023年5月13日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ドンフィ チェ・ミンシク チョ・ユンソ
監督:パク・ドンフン

 

『 オールド・ボーイ 』のチェ・ミンシクが数学者に。嫁さんも是非観たいというのでチケット購入。

あらすじ

国内上位1%のみが集まる進学校に特例入学したハン・ジウは、寮の仲間の不祥事を黙秘したことで1か月間の大量処分を受けてしまう。その発端となった脱北者の警備員、通称”人民軍”がひとかどの数学者であることを知ったジウは、彼に数学を教えてほしいと頼み込んで・・・

 

ポジティブ・サイド

中国が『 少年の君 』で常軌を逸した学歴偏重主義の学校生活を描き出していたが、韓国も似たようなものらしい。学校に居場所のない劣等生が、同じく社会に居場所のない脱北者と交流をしていく・・・という単純なプロットではない。疑似的な家族関係の追求あり、南北の社会や思想の在り方の違いの描写ありと、ヒューマンドラマと社会派ドラマを高度に融合させたストーリーになっている。

 

まず主人公ジウの置かれた境遇が切ない。学校に馴染めず、寮にも馴染めず。寮のルームメイトをかばっても、友情ではなくカネが差し出される。経済力と成績はある程度比例するのは日本も韓国も同じなようで、経済力と人間性は必ずしも比例しないのも同じらしい。そんなジウが、ふとしたことから人民軍に数学を教えてほしいと頼み込む。その奇妙な師弟関係が、ジウにとってはある意味で初めての positive male figure、つまりは疑似的な父親を得ることにつながり、人民軍にとっても疑似的な息子を得ることにつながっていく。このあたりの見せ方に韓国と北朝鮮の情勢を絡めており、非常に巧みであると感じた。

 

ヒロイン的な位置に立つボラムも、この二人の関係にちょっとしたスパイスを与えている。割と唐突に告白してくるのだが、変にジウと恋愛関係に入っていかず、主役二人の静かで奇妙な関係を遠くで見守るというポジションだった。ボラム自身も家族に似たような問題を抱えており、韓国社会全体が抱える”父親像”という問題は『 息もできない 』の時から変わっていないのだなという印象を受けた。逆に、そうした問題を常に映画という媒体で世に問い続けるのが韓国映画の強みの一つか。

 

悪役が教師というのは、個人的には見ていてキツイ。が、こんな先生は確かにJovianの中学校の理科の先生にもいた。確か人工衛星は無重力空間を回っているみたいな説明に対して、「もっと遠い月は地球の重力で回っている。人工衛星も月も無重力ではなく無重量空間にいると雑誌のニュートンで読んだ」みたいなことを言ったら、えらく怒られた。そしてこれをテストに出すが、正解は無重力。だけどお前は無重量と書け、みたいに言われた。実際にテストに出て、無重量と書いて、✖をもらった記憶がある。ジウが数学教師に敢然と立ち向かったシーンでは30年越しにリベンジを果たしたようで気分がスカッとした。

 

天才であるがゆえの政治的な立ち位置の危うさ、そしてジウとの別離が、チェ・ミンシクの迫真の演技によってこれ以上ないリアリティを獲得している。チェ・ミンシク=強面の悪役のようなイメージがあるが、打ちひしがれる中年を演じても素晴らしい。ジウの窮地に現れて、その弁舌だけで状況をひっくり返したのは『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』のアル・パチーノを彷彿とさせた。

 

血生臭い韓国映画もいいが、ベタベタなヒューマンドラマもいいなあ。

 

ネガティブ・サイド

円周率が音楽になるというのはアイデアとしては悪くないが、厳密な数学としてはどうなのだろうか。奥泉光の『 鳥類学者のファンタジア 』に似たようなアイデアがあるが、こういうのはファンタジーというジャンルだけに留めておくべきでは?

 

人民軍の通院できないから薬をくれ、という冒頭のシーンは結局何だったのか。持病を抱えていて、それがいつか一気に増悪してしまうのか?と思ったが、そんなことは一切なし。この最初のシーンはカットすべきだった。

 

ボラムとジウは、結局どうなったのよ?

 

総評

『 グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 』と『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』を韓流で合成、再解釈したようなストーリー。真新しさこそないが、韓国の家族像、北朝鮮との関係、そして教育への眼差しが盛り込まれた良作。本作を観たらバッハを聞こう、同志諸君。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アジョシ

おじさんの意。傑作『 アジョシ 』は元々ソン・ガンホあるいはチェ・ミンシクのようなオッサンのキャスティングを予定していたそうだ。韓国映画やドラマではしょっちゅう聞こえてくる言葉なので、知っている人も多いだろう。ちなみにおばちゃんはアジュマである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 帰れない山 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 高速道路家族 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, キム・ドンフィ, チェ・ミンシク, チョ・ユンソ, ヒューマンドラマ, 監督:パク・ドンフン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 不思議の国の数学者 』 -韓流ヒューマンドラマ-

『 ザ・ホエール 』 -珠玉の人間ドラマ-

Posted on 2023年5月1日 by cool-jupiter

ザ・ホエール 80点
2023年4月29日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

出演:ブレンダン・フレイザー セイディー・シンク ホン・チャウ
監督:ダーレン・アロノフスキー

 

元同僚のカナダ人友人の強い勧めで鑑賞。今年の海外映画のベストの一作であることは間違いない。

あらすじ

チャーリー(ブレンダン・フレイザー)は過去のある出来事から、過食に走ってしまい、歩行器なしでは歩けないほどの肥満になってしまった。友人であり看護師のリズ(ホン・チャウ)に支えられながら生活していたが、うっ血性心不全の発作から自らの死期が近いことを悟る。チャーリーは、かつて自らが捨ててしまった娘のエリー(セイディー・シンク)と再会するが・・・

 

ポジティブ・サイド

クジラ=巨体、クジラ=脚がない、クジラ=鯨飲馬食(馬は違うか・・・)のようなイメージをそのまま演じきったブレンダン・フレイザーに拍手。男同士のまぐわうポルノ動画を観ながら、突如心臓発作を起こし、偶然に尋ねてきた宗教勧誘員にエッセイを音読してくれと頼む姿に、一気に物語世界に引き込まれてしまった。

 

チャーリーと親友リズの心地よい関係とその関係の反転、娘エリーとの縮まらない距離感、執拗に宗教に勧誘してくるトーマスとの距離感、そして元妻との間にある断絶と、しかしエリーという娘の存在によってつなぎとめられる絆。2時間の中でチャーリーと彼を取り巻く人間たちのドラマが大きなうねりとなって観る側を飲み込んでいく。

 

娘エリーがとんでもないクソガキなのだが、彼女の取る行動の一つが思いもかけない福音となる。人間、何が救いになるのか分からない。同時に、とあるキャラクターのとある行動がチャーリーを大いに苦しめる。まあ、そらそうなるわな。人間、何が攻撃になるかなんて分からない。

 

虎は死んで皮を残すと言われるように、クジラの死骸は海底で独自の生態系を形成する媒体となる。チャーリーの職業は大学の講師で、時々大学の正課・課外授業を担当するJovianとそっくり。人間が死後に残せるのは言葉。そしてその言葉の力は時に奇跡を起こす。リズの言う “I’ll wait downstairs.” という台詞が非常に寓意的だ。死を迎えんとするチャーリーが起こす奇跡に我あらず涙してしまった。

 

ネガティブ・サイド

宗教批判をするなら、ニューライフではなく、普通のキリスト教のセクトか、あるいはモルモン教(これは一瞬だけ言及されていたか)やエホバの証人の名前を使えばよかったのに。なにか不都合があったのだろうか。

 

総評

主な登場人物は5人。舞台はほとんどすべてチャーリーのアパート内。時間にしてわずか1週間足らず。それでこれだけ濃密な人間ドラマが描けるのだから、やっぱり脚本というのは大事だなと実感。同時にその脚本の文字を映像に昇華させる監督の演出力。そして監督のビジョンを体現する役者と裏方スタッフの努力。『 ザ・メニュー 』で強烈な印象を残したホン・チャウは本作でも素晴らしかった。間違いなく今年のベストの一作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

debt

借金の意。デットと発音する。序盤でリズがチャーリーに Being in debt is better than being dead. =死ぬより借金の方がましよ、と告げるシーンが印象的だった。debt と dead が韻を踏んでいることにも注目したい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 不思議の国の数学者 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, セイディー・シンク, ヒューマンドラマ, ブレンダン・フレイザー, ホン・チャウ, 監督:ダーレン・アロノフスキー, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 ザ・ホエール 』 -珠玉の人間ドラマ-

『 オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景 』 -芸術に走りすぎ-

Posted on 2023年4月19日2023年4月19日 by cool-jupiter

オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景 50点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:福島拓哉 田中玲
監督:吉村元希

あらすじ

ある夫(福島拓哉)と妻(田中玲)の関係から、オトコのカタチとオンナのカタチについて考えていく・・・

 

ポジティブ・サイド

「見ないで」と女性たちが叫ぶシーンの男性の視線の映し方はリアルだったと思う。男性として白状するが、街中を歩く女性を見る際に何らかの品定め的な目になることは確かにある(毎回ではない)。まあ、イエス・キリストの時代から「情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである」と言われるぐらいなので、オトコの視線そのものに真新しいことはない。(一部の)女性はそうした男を顔ですらなく、目だけで認識するというのは何となく理解できる。男=視線と記号化されたわけだ。

 

最後に歩道で踊るバレリーナからは『 気狂いピエロ 』や『 ジョーカー 』を想起させられた。過剰ともいえる化粧は本心を隠す、あるいは他者からの理解を拒絶する姿勢の表れだろう。往来で無言で踊るバレリーナはシュールで、それゆえにシネマティックだった。

 

ネガティブ・サイド

全編にわたって開陳される吉村監督の思想は、正直なにも新しさがない。全部、栗本薫が『 タナトスの子供たち―過剰適応の生態学 』で喝破していたことである。見せ方はかなり斬新だと感じたが、見せられたものは陳腐だった。

 

オトコのカタチにかなり露骨な性的イメージを押し付けてくるが、これは必要だったか?オンナを記号として消費する視線は明確に拒絶しながら、男性=男性器というイメージを押し付けるのは politically correct なのだろうか。とてもそうは思えないが。

 

総評

物語性もエンタメ性も希薄。芸術に走りすぎだが、これなら映画ではなく舞台でやったらどうか?という出来映え。悪いとは思わないが、演出が映画ではなく舞台になっている。名もなき夫婦の生活の中に搾取され消費される女性像を読み取るのなら、(短編と長編を比較するのは愚だが)『 グレート・インディアン・キッチン 』の方が遥かに映画的かつ啓蒙的。4作の中で本作だけは波長が合わなかったようだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

shape

カタチの私訳。エド・シーランの代表的楽曲 “Shape of You” でも、男女それぞれに特徴的なカタチは shape が訳語にふさわしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 search #サーチ2 』
『 ヴィレッジ 』
『 ザ・ホエール 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 田中玲, 監督:吉村元希, 短編, 福島拓哉, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景 』 -芸術に走りすぎ-

『 Doll Woman 』 -ホームレスから目を背けるな-

Posted on 2023年4月17日 by cool-jupiter

Doll Woman 60点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:大原とき緒
監督:大原とき緒

あらすじ

人形と暮らすホームレス女性(大原とき緒)は、ある日、耳が聞こえず話すことができないホームレス男性と出会う。彼もまた、彼女と同じく、人形を愛でる人で・・・

 

ポジティブ・サイド

東京の割と都心で描かれるホームレス女性とホームレス男性の one night stand(one day stand と言うべきか?)というだけで、相当な希少価値がある。

 

ホームレスが捨てられた、しかしまだ食べられる食べ物よりも人形をゲットすることを喜ぶ、という姿はショッキングだ。人間が求めているのは人間関係で、社会から捨てられたホームレスはその関係を人形に求める。日本がダイバーシティだとかインクルーシブネスという言葉を自国後に上手く翻訳できないのも分かる気がする。

 

ネガティブ・サイド

ホームレス男女二人は徹底的に筆談でコミュニケーションした方がリアルだったと思う。画面に映し出される言葉の語彙レベルや筆跡などから、二人の教育や教養の程度が浮き彫りになってくるだろうし、普通の女性で普通の教育的な背景があっても、一度の不運(たとえばコロナ禍)で社会のセーフティネットを軽々と突き破って転落してしまう社会の現実を見る側に突き付けることもできたはずだ。

 

総評

間接的にセックスを描いているので中学、高校などでは教材にしにくいが、大学なら可能だろう。『 覚悟はいいかそこの女子。 』や『 82年生まれ、キム・ジヨン 』を学内で上映していた神戸〇〇大学や、夕方の課外授業で色んな映画を鑑賞している京都△△大学などで本作をぜひ上映してほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

one night stand

一夜限りの関係、の意味。日本語でも「ワンナイト」とか言ったりすることがある?ドラマや漫画だけか? have a one night stand with ~ = ~と一夜限りの関係を持つ、という形で使う。この表現を知っている人は多いだろうが、実際の会話でこれを使える人は少ないはず。こういう話をできる友人がいるということは、その時点で英会話上級者だろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 大原とき緒, 日本, 監督:大原とき緒, 短編, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 Doll Woman 』 -ホームレスから目を背けるな-

『 世界の終わりから 』 -2023年の邦画ベスト候補-

Posted on 2023年4月9日 by cool-jupiter

世界の終わりから 80点
2023年4月8日 梅田ブルク7にて観賞
出演:伊東蒼 毎熊克哉 朝比奈彩
監督:紀里谷和明

 

大学の開講週を迎えて残業と休日出勤がピークに達しているため、簡易レビュー。

あらすじ

祖母と二人暮らしのハナ(伊東蒼)だったが、祖母は亡くなってしまう。学校に居場所もなく、進学の資金もない。そんなハナに警察警備局の江崎(毎熊克哉)と佐伯(朝比奈彩)が現れ、ハナが見る夢について尋ねてくる。何の心当たりもないハナだが、その夜の入浴中に戦乱の世に巻き込まれる夢を見て・・・

ポジティブ・サイド

あらすじも何も見ず、タイトルだけでチケットを購入。これが大当たり。

 

単純に光量が足りないのではなく、意味と意図のあるダークな画作りは韓国映画的。主人公の置かれた境遇にも救いがない。『 さがす 』の伊東蒼が、同作よりもさらに深い世界の暗部、世界の終わりへと誘われていく様は見応え抜群。

 

夢を媒介に過去と現在を行き来するのは『 リング・ワンダリング 』的でJovian好み。白黒の映像も美しい。

 

『 レッドシューズ 』でイマイチだった朝比奈彩と、名バイプレーヤーの毎熊克哉も魅せてくれる。監督の演出がドンピシャだったのだろう。

 

ダメなのか?ダメなのか?で、やっぱりダメだったという『 日本沈没 』とは違い、本作は非常にユニークな運命論を展開する。こちらの世界観の方が『 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』のそれより、理解も納得もしやすい。

 

ネガティブ・サイド

湯婆婆かな?と思ったら湯婆婆だった。もっとオリジナリティを捻り出すべきだろう。

 

炎のCGがしょぼかったな。

 

総評

個人的にはめちゃくちゃ楽しめた。事前の情報ゼロで臨んだのも大きい。伊東蒼は、南咲良と並んで、出演しているだけでチケット購入決定の女優に認定したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a kitkat bar

お菓子のキットカットがちょっとしたガジェットになっている。英語ではしばしば a kitkat bar のように bar がつく。チョコレートは不定形だが、お菓子になる時はだいたい板状あるいは棒状で、いずれも bar と呼ぶ。豆知識として知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ノック 終末の訪問者 』
『 search #サーチ2 』
『 ヴィレッジ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, SF, ヒューマンドラマ, 伊東蒼, 日本, 朝比奈彩, 毎熊克哉, 監督:紀里谷和明, 配給会社:ナカチカLeave a Comment on 『 世界の終わりから 』 -2023年の邦画ベスト候補-

『 湯道 』 -もっと銭湯そのものにフォーカスを-

Posted on 2023年3月15日 by cool-jupiter

湯道 55点
2023年3月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:生田斗真 濱田岳 橋本環奈
監督:鈴木雅之

 

温泉や銭湯の愛好家なら要チェックに見える本作。Jovianも風呂は大好きである。したがってチケット購入。

あらすじ

東京で建築家として働く三浦史朗(生田斗真)だが、仕事が来ない。そんな中、父の訃報が入るが、多忙を理由に帰郷もしなかった。しかし、いよいよ実家の銭湯「まるきん温泉」を畳むべきだと考えた史朗は、実家を訪れる。住み込みで働くいづみ(橋本環奈)と弟・悟朗(濱田岳)と出会った史朗は、なりゆきでしばらく銭湯で働くことになり、個性豊かな常連客たちと触れあっていき・・・

ポジティブ・サイド

生田斗真と濱田岳が兄弟に見える。雰囲気が、というよりも見た目が。ヘアドレッサーやメイクアップ・アーティストの方々が素晴らしい仕事をしたのだろう。トレイラーの時点では「この二人が兄弟?」と感じたが、実際に鑑賞して違和感はゼロだった。

 

昭和は昔になりにけりと思うことが多い令和の時代だが、確かに昔の銭湯は男湯と女湯の距離が近かった。Jovianも小さなころはたまに家族で銭湯に行っていたが、そういう時は親父に「もうそろそろ上がるって、お母さんに言うてきて」と言われて、番台前ののれんをくぐって、女湯に入って、伝言していたなあ。育った地域にもよるだろうが、40代以上の世代なら、子供の頃にそうした経験をしたことがある人が多いのではないだろうか。本作はそうしたノスタルジーも呼び起こしてくれる。

 

常連客も多士済済。寺島進や笹野高史はベテラン夫婦の味わい深いやりとりを披露してくれるし、天童よしみは意外な人物とのデュエットを披露、その美声が健在であることを教えてくれる。

 

こうした愉快で人情味あふれる地元の常連たちとの触れ合いと、銭湯をやめさせたい兄と銭湯を続けたい弟の確執のコントラストがドラマのひとつの軸になっている。そこにいづみが絡むことで、深刻なはずの対立が緩和される。いづみは番台に花を活けているが、いづみ自身がしっかりとまるきん温泉の花になっている。

 

本作の表のテーマをそのまま湯道とするなら、裏のテーマは時代に取り残された遺物をどうすべきか、ということになるのだろう。色々な撮影上の制約もあるのだろうが、本作では銭湯に入ろうとする子どもがいない。客はごく一部を除けば、すべて中高年である。つまり、若い世代は昔ながらの銭湯に魅力を感じていないのだ。そして、高齢者ばかりが銭湯で憩う。そうした現状は憂うべきなのか、それとも理の当然と受け入れるべきなのか。

 

ひとつ確かなのは、風呂は入る人間を幸せにするということだ。そして、幸せとは今まで気づくことがなかった小さなことを喜べることがその本質である。トレイラーに出てきた五右衛門風呂には、Jovianも二度ほど入ったことがある。友人の実家の広島の田舎に五右衛門風呂があったのでそこで入った。さらに、大学生時代に寮の裏庭で先輩や同級生たちとドラム缶を調達してきて、そこで入った。広島では貴重な体験をしたぐらいにしか思わなかったが、大学時代に寮の裏庭で五右衛門風呂に浸かった時は確かに気持ち良かった。ただ、次の瞬間に、まさに生田斗真がポツリと呟く台詞と同じことをJovianも感じた。その後の某キャラの教えも印象的。太陽ほど身近な存在はないが、その光に我々は実はどれほど多くを負っているのか。当たり前のことを当たり前と受け取るのではなく、蛇口をひねれば清潔で安全な水が出るということが、どれほど有難いことなのかを思い起こす必要がある。

ネガティブ・サイド

冒頭から刺青入りのヤクザが登場する。尼崎市民のJovian的には杭瀬あたりの銭湯でかつてよく見た光景だが、映画でやることか?ヤクザがかっこいいなどと思う若者が出てこなければいいが・・・

 

映画の根本を否定するように聞こえてしまうかもしれないが、湯道のパートは必要か?日米首脳会談の裏に湯道があったとか言われても、面白くもなんともないし、寒い親父ギャグの連発にも笑えない。風呂に入る時の所作が云々というのも、それを小日向文世が実際に自宅の風呂やまるきん温泉で実践するシーンを見せてくれないと意味がないのでは?撮影しなかった?それとも編集で削った?いずれにせよ『 湯道 』というタイトルながら湯道パートがまったくもって必要であるとは感じられなかった。

 

源泉かけ流し至上主義というのも意味不明。吉田鋼太郎のキャラ自体、必要か?各家庭に風呂がついていることと公衆浴場が存在することは全く矛盾しない。どの家にもキッチンがあるのだから外食産業は無意味だ、と言っているのに等しい。この温泉評論家の先生は完全なる蛇足に感じられたし、この先生抜きでもまるきん温泉の常連客たちと史朗、悟朗、いづみが一致団結できる展開は描けたはず。

 

全体的にもうちょっと銭湯らしさおよび銭湯愛好家の風情を出してほしかったとも思う。役者も忙しいのだろうが、風呂上りで頭をふきふきしているシーンがいくつかあったが、明らかに濡れていない。というか風呂上がりに見えない。もっと入浴後という心も体も温まっているというシーンを視覚的にアピールすべきだった。風呂場のケンカで二人ともずぶ濡れのはずなのに、次の瞬間には完全に乾いているのには苦笑した。

 

総評

鈴木雅之監督の作品としては『 プリンセス・トヨトミ 』に次いで面白い作品。ただし、風呂そのものへのフォーカスという点では『 テルマエ・ロマエ 』の方が優れている。Jovianは「古き良き」という形容があまり好きではないが、銭湯はスーパー銭湯よりも番台のある昭和型の銭湯の方が好きである。我が尼崎は一時期は150以上の銭湯が営業していたが、今では30と少しらしい。近所の昭和温泉には月一程度で通おうと思う。昭和にノスタルジーを感じる中年以上の世代にお勧めしたい映画。もちろん、若い世代の鑑賞も歓迎である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

retirement money

 

読んで字のごとく退職金の意。retireは定年退職するという動詞で、その名詞はretirement。それにmoneyをつければ、そのまま退職金となる。我々の世代は退職金はもらえるのか?もらえても、アホみたいに課税されるのだろうか?

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Winny 』
『 シン・仮面ライダー 』
『 シャザム! 神々の怒り 』

 

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『 シャイロックの子供たち 』 -カタルシスとディテールが弱い-

Posted on 2023年3月11日 by cool-jupiter

シャイロックの子供たち 50点
2023年3月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:阿部サダヲ
監督:本木克英

仕事が繁忙期なので簡易レビュー。

 

あらすじ

東京第一銀行・長原支店に務めるお客様係の西木(阿部サダヲ)は、同支店で発生した100万円の現金紛失事件を密かに調査していた。そこには支店の不可解な融資が絡んでいるらしいと気付いた西木は、やがて支店を超えた銀行の闇に迫っていく・・・

ポジティブ・サイド

銀行のブラック体質がよくよく描けている。Jovianの大学の先輩、同級生、後輩は銀行員だらけだが、だいたい皆ソッコーで辞めていく(まあ、ICU卒はだいたいどんな職場ですぐに辞める傾向が強いのだが)。とある先輩が銀行での業務を「毎日がクロイワとファイナル前だよ」とおっしゃっておられた、その空気が本作からありありと感じられる。

 

*クロイワというのは、まあ、大昔のICU第一男子寮のイニシエーションの一環。興味のある方はここにその一端が書かれているので、読んでみるのも乙かもしれません。

 

出演する俳優たちの多くに力があり、演じているのではなく、もともとそういう人なのだと感じられるぐらいにハマっていた。特に橋爪功と忍成修吾は最高だった。古典の名作と、そこに込められたメッセージを上手く融合させた佳作。

ネガティブ・サイド

銀行は15時ピッタリに窓口が閉まって、現金やら伝票の照合をして、それを本店に報告して、本店はさらにお上に報告する。何かが足りなければ、それこそシュレッダーの紙クズすら丹念に見ていくと聞いたことがある。そうした銀行の実態からすると、あるキャラのある行動はあまりにも軽率。というか、ご都合主義的。

 

担保もないのに億のカネを融資するというのもリアリティに欠ける。不動産会社の取引先となるデベロッパーについても、よくよく調べてこそ銀行。そのあたりを全部すっ飛ばすのは尺の関係で仕方がないのかもしれないが、結果として綿密に練られた悪事が最後にすべて白日の下に晒されるというカタルシスではなく、当事者だけがダメージを受ける展開に矮小化されてしまった。

 

総評

池井戸潤作品としてはカタルシスが弱い。『 七つの会議 』や『 空飛ぶタイヤ 』の方が個人的には波長が合った。ただ『 アキラとあきら 』が銀行と大企業の話だったのに対して、本作は銀行と市井の人々の話。その意味で、こちらの方が親しみやすいし共感しやすいという人も多くいるだろう。苦みのあるエンディングとはいえ、勧善懲悪ものとして見れば悪い作品ではない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Payback is a bitch!

たしか『 ローグ 』でも紹介した表現。「やられたら倍返し!」の私訳(というかWWEなどからのパクリ)。I’ll pay you back double! は字義的かつお上品に聞こえる。別に文字通りに2倍をお返しするというわけではなく、やられた以上にやり返すという意味なので、上の表現でいいと思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 湯道 』
『 少女は卒業しない 』
『 Winny 』

 

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