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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:UIP

『 ミッション:インポッシブル 』 -現代的スパイ活劇-

Posted on 2023年7月30日 by cool-jupiter

ミッション:インポッシブル 70点
2023年6月8日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ
監督:ブライアン・デ・パルマ

最新作公開前に予習。簡易レビュー。(アップし忘れていた・・・)

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あらすじ

諜報機関IMFのミッション遂行中に、仲間が次々に死亡。唯一生き残ったイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、真相を突き止めるために動き出すが・・・

 

ポジティブ・サイド

スパイ映画の王道。誰が敵で誰が味方か分からない。そんな緊張感が全編を覆っている。

 

トム・クルーズのアクションもデ・パルマ・タッチのスローモーションで映える・・・ではなくて冴える。

 

宙吊りによる潜入と精巧なマスクによる変装という、シリーズの特徴がはっきりと決定づけられた記念碑的な作品。Jovianの父親などは公開当時、「テレビと違う」とやや文句を言っていたが、テレビはテレビ。映画は映画。本作こそが新しいフォーマットなのだ。

 

ネガティブ・サイド

ルーサーは良いキャラなのに、ただのハッカー扱いだけでやや不憫。当時も今も腕っこきのハッカーは希少。チームメンバーを失ってしまったハントが新たな仲間を求める中で、唯一信用できるのがルーサー。このキャラをもう少し深掘りできなかったか。

 

総評

文句なしに面白いアクション作品。単なるドンパチと格闘だけではなく、スパイとしての潜入ミッションが否が応でも緊張感と緊迫感を盛り上げる。『 トップガン 』のマーベリックに勝るとも劣らない、トム・クルーズの当たり役の誕生作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

disavow

拒否する、の意味。有名な「当局は一切関知しない」は The Secretary will disavow all of knowledge of you. である。英検1級を目指すのでなければ、普通は触れることのない語だろう。The company disavowed any responsibility for the defective products. =その会社は欠陥商品に対する一切の責任を認めなかった、のような感じでたまに使われる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 渇水 』
『 水は海に向かって流れる 』

 

 

Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, 監督:ブライアン・デ・パルマ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 ミッション:インポッシブル 』 -現代的スパイ活劇-

『 M:i:III 』 -スパイの私生活-

Posted on 2023年6月29日 by cool-jupiter

M:i:III 70点
2023年6月21日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ フィリップ・シーモア・ホフマン
監督:J・J・エイブラムス

簡易レビュー。

 

あらすじ

エージェントだったイーサン・ハント(トム・クルーズ)は教官として新人育成に日々勤しんでいた。恋人ジュリアとの結婚も間近で、穏やかな日々を過ごしていた。ある日、教え子リンジーが敵に捕らえられたとの報に触れたイーサンは、自ら救出に乗り出す。そこには武器商人デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)のある思惑も絡んでいて・・・

 

ポジティブ・サイド

今回の悪役も魅力的。『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』の悪役少年が、アダルトな悪人になって帰ってきた。前作『 M:I-2 』で強調された、ヒーローを際立たせる存在としての悪が、本作でさらに極まった感がある。

 

現役バリバリから教官へ、そしてまたミッションに復帰と、まるで『 トップガン マーヴェリック 』のようなストーリー。というか、TGMがこっちを参照したのかな?

 

今回も裏切りに次ぐ裏切りで、ブライアン・フリーマントル的な世界を存分に堪能できる。また鼻からマイクロ爆弾を射ち込むというのもスパイもしくは武器商人的でよい。派手なドンパチではなく、隠密行動や目立たない武器こそスパイの華だ。

 

トム・クルーズはたいていの作品で走っているが、走る男のイメージを決定づけたのは本作なのではないかと思う。

 

ネガティブ・サイド

ラビット・フットとは結局何なのか。再鑑賞しても断片的なヒントからでは推測すらできない。『 世にも奇妙な物語 』のズンドコベロンチョかいな。

 

本作あたりからシリーズの方向性がスパイ大作戦というよりもアクション活劇になってきた。もっとゲームの『 メタルギアソリッド 』的な展開が見たいのだが。

 

総評

サイモン・ペッグが本格的に加わって、ミッション・インポッシブル的になってきた。アクションもサスペンスも盛り上がるが、謎解き的な要素が弱い。恋多きイーサン・ハントが、ここでいったん落ち着くのかなと思わせる終わらせ方は個人的には嫌いではない。悪役が強かな作品というのは、やっぱり面白い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

stand for ~

~を意味する、の意。The USA stands for the United States of America. のように使う。What does IMF stand for? への答えは、本作を鑑賞して確かめられたい。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・フラッシュ 』
『 告白、あるいは完璧な弁護 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, フィリップ・シーモア・ホフマン, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 M:i:III 』 -スパイの私生活-

『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』 -アドベンチャー映画の金字塔-

Posted on 2023年6月27日 by cool-jupiter

インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 85点
2023年6月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ハリソン・フォード ショーン・コネリー
監督:スティーブン・スピルバーグ

最新作公開前に復習再鑑賞。

 

あらすじ

考古学者のインディ(ハリソン・フォード)は富豪ドノヴァンから、キリストの血を受けたとされる聖杯の捜索を依頼される。半信半疑のインディだったが、前任者が行方不明になり、なおかつそれが父ヘンリー(ショーン・コネリー)だと知らされ、父と聖杯の両方を捜索する旅に出ることなり・・・

 

ポジティブ・サイド

若き日のインディをリバー・フェニックスが好演。また、偏屈なインディの父親を名優ショーン・コネリーが時にコミカルに、時に堂々たる演技で魅せる。確かにこれはインディの父親だわ。インディらの盟友ブロディやサラーもコミックリリーフとして抜群の存在感。アクションの中にもユーモアを織り交ぜてくるスピルバーグの手腕も光っている。

 

聖杯=The Holy Grail を探し求めるという、ある意味で究極のアドベンチャー。日本で言えばオリジナルの三種の神器を探し出そうという試みに匹敵するだろうか。そこにナチスの思惑も絡み、聖杯探しが人類全体の命運を懸けた冒険につながっていくというプロットがこれ以上なくスリリングだ。

 

あのテーマソングと共に夕陽に向かって馬を駆る4人のシルエットは、聖地を去っていく Four Horsemen。人類に対する希望は維持されたのだ。

 

ネガティブ・サイド

インディと聖杯の騎士がラテン語またはギリシャ語で言葉を交わしても良かったのではないか。若き日に、そういう伏線らしきシーンもあったのだから。

 

総評

まさに大冒険。密林から砂漠へ飛び出し、空中戦あり、地上戦あり。馬を駆って戦車と戦う。謎を解いてお宝をゲットする。学者としてのインディと冒険家としてのインディ、頭脳派インディと肉体派インディのバランスは本作が最も優れていると感じる。本シリーズは、ここできれいに幕を引いておくべきだったと再鑑賞してつくづく感じる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

mark the spot

その場所にマークを付ける、の意。劇中では X never ever marks the spot. =✖印に宝などないのだ、と冒頭の講義で言っていたが、中盤に X marks the spot という展開があって、インディならずともニヤリ。このシーンは実にユーモアたっぷりで、冒険と謎解きの合間に息抜きをさせてくれるのがありがたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・フラッシュ 』
『 告白、あるいは完璧な弁護 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, A Rank, アドベンチャー, アメリカ, ショーン・コネリー, ハリソン・フォード, 監督:スティーブン・スピルバーグ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』 -アドベンチャー映画の金字塔-

『 M:I-2 』 -バイオテロを防げ-

Posted on 2023年6月19日 by cool-jupiter

M:I-2 70点
2023年6月12日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ダンディ・ニュートン ダグレイ・スコット
監督:ジョン・ウー

最新作公開前に復習のため再鑑賞。簡易レビュー。

 

あらすじ

IMFのエージェントであるイーサン・ハント(トム・クルーズ)の次なる任務は、元IMF諜報員であるアンブローズ(ダグレイ・スコット)の持つ殺人ウィルスと解毒剤を奪取すること。魅力的な女泥棒ナイア(ダンディ・ニュートン)と共にミッションに挑むハントだが・・・

 

ポジティブ・サイド

殺人ウィルスによるバイオテロは映画や小説ではお馴染み過ぎるネタだが、コロナ禍を経験した今の目で見ることで、逆に新鮮味が増している。

 

真の英雄を求めんとするなら、その対極に位置に来る悪役が必要という考え方には説得力がある。最も強力な例は『 ダークナイト 』におけるジョーカーだろう。彼の言う You complete me. という台詞は、実はバットマンからジョーカーに向けて言っても成立してしまうセリフだ。

 

スパイvs元スパイというのは、漫画『 ゴルゴ13 』でお馴染みの構図だし、最近でも『 グレイマン 』の序盤がそうだった。本作はスパイ同士のスペシャリスト対決で、巧みに施設に侵入するハントと、ド派手なアクションで敵を倒していくハントの二つの面が味わえる。人間同士の飽くなき闘争の根源を追求するジョン・ウー監督とアクション俳優トム・クルーズの面目躍如たる快作。

 

ネガティブ・サイド

ナイアの立ち位置がころころ変わる(ように見える)のはややこしい。

 

ヴィランたるアンブローズがかなり間抜け。元IMFのエージェントなら、そこはもっと早く気付けよと言いたくなるシーンが終盤にある。

 

総評

The pharmaceutical industry does not create cures, they create customers. = 製薬業界は治療法を作り出すのではない。奴らは顧客を生み出しているのだ、という言説は定期的に取り上げられてきたし、実際にコロナ禍、特にワクチン開発の前後にこの言葉が再び注目を集めた。まさにそうした製薬業界の闇に娯楽要素をけれんみたっぷりに加えて出来上がったのが本作である。20年以上前の作品だが、再鑑賞するなら今だろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a walk in the park

公園内をひと歩き、転じて「極めて簡単なこと」の意。アンソニー・ホプキンスが劇中で言う “Well, this is not mission difficult, Mr. Hunt. It’s mission impossible. Difficult should be a walk in the park for you.” = これは困難なミッションではないのだよ、ハント君。これは不可能なミッションなのだ。困難は君にとっては簡単だろう、という台詞がイーサン・ハントのプライドをくすぐる。ちなみにこの a walk in the park は『 トップガン 』の冒頭でマーベリックがクーガーに対して言うセリフでもある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 水は海に向かって流れる 』
『 M3GAN/ミーガン 』
『 ザ・フラッシュ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, アクション, アメリカ, ダグレイ・スコット, ダンディ・ニュートン, トム・クルーズ, 監督:ジョン・ウー, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 M:I-2 』 -バイオテロを防げ-

『 宇宙戦争(2005) 』 -人間ドラマが中途半端-

Posted on 2023年2月5日 by cool-jupiter

宇宙戦争(2005) 55点
2023年2月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ダコタ・ファニング ティム・ロビンス
監督:スティーブン・スピルバーグ

『 そばかす 』で言及されていた作品。当時、東京の劇場で観たのを覚えているが、結末以外の中身を完全に忘れていた。

 

あらすじ

レイ(トム・クルーズ)は離婚した妻との間の子どもであるロビーとレイチェル(ダコタ・ファニング)たちと面会していた。だが、街は突如謎の嵐と落雷に見舞われた。その直後、地面の下から巨大マシーンが現れ、人々を消し去っていく。レイは子どもたちを連れて必死に逃げようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

マーヴェリックでもなくイーサン・ハントでもなく、ジャック・リーチャーでもないトム・クルーズが、何かに向かっていくのではなく何かから逃げ惑う姿は新鮮だった。トム・クルーズは爽やか系だけではなく、『 レインマン 』や本作のように嫌な奴も演じられる。感情移入しづらいタイプの主人公に、どういうわけか徐々に共感させられてしまうのは、元の『 宇宙戦争(1953) 』になかった人間ドラマの要素のおかげ。ダメ親父がダメ親父なりに必死になるシーンの連続に、中年で胸を打たれずにいるのは難しい。

 

娘役のダコタ・ファニングも、栴檀は双葉より芳し。割とエキセントリックな役を演じることが多いが、子役の時からしっかりした演技派やったんやね。

 

訳が分からないままにひたすら蹂躙されていく展開はSFというよりもホラー。前作で家の中に侵入してきたチューブを切り落とすシーンを、ひたすら隠れて逃げるというシーンに改変したのもその流れに沿ったもので適切だったと感じた。9.11がアメリカ人の精神に生じさせた陰影は、当時はまだまだ濃かったということが思い出された。

 

唐突に(科学的にではなく政治的に)コロナ禍を終わらせようとする日本政府的な終わり方も、それなりに味わい深い。

 

ネガティブ・サイド

主人公レイの背景が物語にほとんど生きてこない。せいぜいクルマのコイルを交換しろというアドバイスくらい。港湾リフトを凄腕で操作する男という背景が、彼が逃げる、あるいは闘うシーンで活かされなかったのは残念。

 

原作は隕石の飛来から侵略が始まったが、本作ではマシーンは太古の昔から地中に埋まっていたという。だったらなぜ『 ”それ”がいる森 』と同じ失敗をしているのか。いや、正しくは『 ”それ”がいる森 』が失敗を繰り返したと言うべきか。いずれにしても火星人が過去に地球に来たことがあるという設定は蛇足である。

 

火星人のマシーンを内側から爆破するシーンは不要であるように感じた。日本でマシーンの撃退に成功したのが東京ではなく大阪だったのには笑わせてもらったが、アメリカ本土は徹頭徹尾逃げ惑う展開にした方がホラーやサスペンスの要素がさらに強まったように思う。

 

長男のロビーが父親に反発するのは良いとして、なぜに自ら死地に赴こうとするのか。そこがよく分からなかった。また、最後にはシレっと生存していて、このあたりは究極のご都合主義に感じられた。

 

総評

ホラーやサスペンスとして鑑賞すればそこそこ面白いが、SFやパニックものとして鑑賞すると凡庸に感じられる。原作通りに人間ドラマを極めて薄くするか、あるいは振り切って人間ドラマに全振りするかだったように思う。ただ、近年の天文学の発達で太陽系が実は豊かなオーシャン・ワールドだったと明らかになった。さらに地球外生命体が発見された時、本作はそれにどうコンタクトすべきかを考えるきっかけとして再評価されるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be careful with ~

be careful と来たら of を思い浮かべる人が多いだろう。be careful of ~ = ~に気を付ける、という意味だが、be careful with ~ は、~を大事に扱う、という意味。劇中では Be careful with the glove. = そのグローブ、大切に扱えよ、という感じで使われていた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, SF, アメリカ, ダコタ・ファニング, ティム・ロビンス, トム・クルーズ, ホラー, 監督:スティーブン・スピルバーグ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 宇宙戦争(2005) 』 -人間ドラマが中途半端-

『 トップガン 』 -4Kニューマスター上映-

Posted on 2022年9月19日 by cool-jupiter

トップガン 90点
2022年9月18日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:トム・クルーズ アンソニー・エドワーズ ケリー・マクギリス ヴァル・キルマー
監督:トニー・スコット

『 トップガン マーヴェリック 』の記録的な大ヒットを受けて、前作と新作の二作連続上映。こういった試みは、今後も続けていってほしいと思う。

 

あらすじ

F-14パイロットのマーベリック(トム・クルーズ)は無鉄砲な操縦を繰り返す海軍の問題児。そんな彼と相棒のグース(アンソニー・エドワーズ)はエリート養成機関「トップガン」に送り込まれる。他の部隊の腕利きや教官との衝突や、民間人アドバイザーのチャーリー(ケリー・マクギリス)とのロマンスを通じて、マーベリックは成長していくが・・・

ポジティブ・サイド

夕陽と戦闘機、そして Kenny Loggins の “Danger Zone” のシーンが都合3回出てくるが、これらのシーンが最も『 トップガン 』らしいと感じた。『 トップガン 』自体は多分10回以上観ているが、初めて劇場で鑑賞したことで、大画面と大音響でしか感じ取れないものがあると分かった気がする。

 

若きトム・クルーズが、無鉄砲なパイロット、無邪気な青年、孤独と焦りを抱えた男など、様々な面を多彩に演じ分けた。レオナルド・ディカプリオ同様に、ルックスだけの人ではなく、若い頃から実は演技派だったわけやね。レイバンのアビエイター仕様サングラスを駆ける時の笑顔は反則級に charming だし、グースを失って打ちひしがれる姿は heart-wrenching としか言いようがない。

 

今作の時点で父と息子というネタが仕込まれていて、アメリカが持つ positive male figure への幻想の強さをあらためて再確認した。同時に、”You look good.” のように、次作に受け継がれていく数々のネタ的な台詞や演出が発見できたのも楽しかった。

 

迫力に欠けると一部で言われた高空での戦闘シーンは、逆にオーガニックに感じられて好感を持った。サイズが実物の何分の一かのモデル機を使って撮影したというのは、精巧なCGがない時代ゆえの特撮。けれど、CGで何でもありになってしまった現代人の目には逆に非常に新鮮に映った。F-14が単純にメチャクチャかっこいい飛行機ということも再確認した。

 

新作鑑賞後にあらためて観ると、全体的な作りは非常にチープというか、1980年代定期なテイストで彩られている。すなわち、ベトナム戦争よりも後で、湾岸戦争よりも前という、ある意味で軍がリアルではなくファンタジーでいられた時代。本作の影響で米海軍への入隊志願者が増えたと言われる。フィクションとしてのエンタメは、時に現実に強く作用するという好個の一例だろう。

 

ネガティブ・サイド

F-14がジェット後流に巻き込まれるシーンは山岳地帯だったが、イジェクトしたマーベリックとグースは海に着水した。機を海に向けるなどのシーンが一瞬でよいので欲しかった。

 

総評

劇場の入りはイマイチだったが、このような試みはもっと行ってほしい。コロナ禍の2020年にジブリ映画がリバイバル上映されたように、続編がヒットしたら、その前作を劇場で再公開するというのは、今後のビジネスモデルとして研究されてしかるべきと思う。ラブシーンがあるので、子供の年齢にはちょっとだけ注意が必要だけれども、 親子で劇場鑑賞してほしいと心から思える作品。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fall for someone

誰かに惚れる、誰かを好きになる、の意。『 イソップの思うツボ 』でも紹介した表現。劇中ではチャーリーがマーベリックに対して使っていた。fall in love with someone は少々ロマンチックすぎる表現なので、こちらを使おう。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1980年代, S Rank, アクション, アメリカ, アンソニー・エドワーズ, ヴァル・キルマー, ケリー・マクギリス, トム・クルーズ, 監督:トニー・スコット, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 トップガン 』 -4Kニューマスター上映-

『 トップガン 』 -戦闘機+友情+ロマンス+音楽=Top Gun-

Posted on 2020年1月22日 by cool-jupiter

トップガン 90点
2020年1月22日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:トム・クルーズ
監督:トニー・スコット

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200122220448j:plain
 

『 ティーンスピリット 』が個人的にイマイチだったので、なにか音楽+ドラマで盛り上がれそうなものをAmazonで漁っていたら、本作に行き着いた。確か親父が買ってきたVHSを一緒に観ていたら、ラブシーンを早送りされたんだったか。今年は続編も公開予定なので、ちょっと早めの復習鑑賞を。

 

あらすじ

F-14パイロットのマーベリック(トム・クルーズ)は無鉄砲な操縦を繰り返す海軍の問題児。そんな彼と相棒のグースはエリート養成機関「トップガン」に送り込まれる。他の部隊の腕利きや教官との衝突や、民間人アドバイザーのチャーリーとのロマンスを通じて、マーベリックは成長していくが・・・

 

ポジティブ・サイド

本作も通算では6~7回は観ているように思う。確か二度目に観たのは大学4年生ぐらいの時で、戦闘機のカッコよさにしびれて、ゲームの『 ACE COMBAT 04 shattered skies 』を衝動的に買って、かなりハマってしまったんだった。さらにつられて、漫画『 エリア88 』や『 ファントム無頼 』も古本屋で全巻買ったんだったか。

 

MiGがA-4スカイホークなのはご愛敬。本作の面白さの一つは、戦闘機のリアルさにある。ゲームのAce Combatさながら(というか、ゲームが映画を真似ているのか)、本物の戦闘機のジェットエンジン音を使うことで臨場感が増す。そのおかげで、本物のF-14やA-4の飛行シーンと模型を使った撮影シーンが混在していても違和感がない。近年の映画では戦闘機などもCGで描かれるが、その挙動に空気感がない。空気抵抗と言ってもいい。泳ぐように空を飛ぶと言うと変だが、実際の飛行機で戦闘機動(combat maneuver)を行えば、そういう挙動になるものだ。本作はCGが発達していない1980年代の制作ゆえに逆に臨場感と迫真性が生まれている。撮影に協力したアメリカ空軍と海軍のパイロットに満腔の敬意を表したい。また、空母から飛び立つF-14を誘導するクルー、カタパルトをチェックするクルーなど、空を飛ばない人たちの存在もしっかりとフィーチャーされているところもポイントが高い。『 エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー 』の空母ケストレルからの最初の発艦シーンは、本作へのオマージュであることは間違いない。

 

酒場でのパーティーやビーチバレーなども刹那的な青春を感じさせる。いつ死ぬか分からないパイロットの生態を上手く表していると感じたし、中盤まではゲイなのかと思うほど互いにベッタリなマーベリックとグース、アイスマンとスライダーのコンビは、『 ファントム無頼 』の神田と栗原のようである。彼らの友情と衝突と別れ、そしてチャーリーとのロマンス、父の死の真相など、ドラマパートも大いに盛り上がる。それらに主に80年代のヒットソングが彩りを加えている。特に“Take My Breath Away”、“Danger Zone”、“Mighty Wings”、“Top Gun Anthem”は本作のトーンに絶妙にマッチしている。マイケル・ジャクソン以来、音楽と映像の関係は密接不可分なものに昇華したが、これほど歌と映像が見事にコラボしている作品80年代では、『 ロッキー 』シリーズの“Eye of the Tiger”と“Burning Heart”ぐらいだろうか。

 

クライマックスの空中戦の迫力と臨場感は圧巻である。友の死、父の死、そして自らの死の恐怖を乗り越えて、数で勝る敵機に立ち向かっていくマーベリックの雄姿に、アドレナリンが過剰分泌される。そしてオーバーシュートさせてからの敵機撃墜で、血圧と心拍数はマックスとなる。軍事的な考証などは考えなくていい。戦闘機映画としても、ビルドゥングスロマンとしても、音楽と映像のコラボレーションの面でも、20世紀の映画作品の中でも最高峰の一つと言えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

せっかく戦闘機の挙動が真に迫っているのだから、訓練や実戦の際にもパイロットやRIOにGを感じるシーンや演出が欲しかった。それがあれば更にリアリティが増したことだろう。

 

あとはMiG-28にもっと似た飛行機を採用できていれば・・・。

 

総評

頭を空っぽにして2時間楽しめる映画である。音楽もいい。40代以上なら、ノスタルジーを感じさせる楽曲が多いだろう。様々な要素を詰め込みながら、テンポが緩まず、ドラマもしっかり盛り上がる。続編の『 トップガン マーヴェリック 』も2020年7月に公開予定とのこと。Jovianは、親父を誘って観に行こうと思っている。父親が息子を誘ってもよいし、祖父が孫を映画館に連れて行ってやるのもありだろう。たとえ続編が駄作だったとしても、本作の価値はいささかも減じることはない。世代を超えて観られるべき作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

This is what I call ~

That is what I call ~ もある。「これでこそ~だ」のような意味合いで頻繁に使われる表現である。とても美味しい寿司を食べて、「これぞ寿司だ」と思ったら、

“This is what I call sushi.”

「これこそ正にアクション映画だ!」と思ったら、

“This is what I call an action movie!”

会議でブレストが上手く行っていたら

“This is what I call brainstorming.”

何度か使えば身につくので、状況に応じて使ってみよう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ロマンス, 監督:トニー・スコット, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 トップガン 』 -戦闘機+友情+ロマンス+音楽=Top Gun-

『 真実の行方 』 -若き日のエドワード・ノートンに刮目せよ-

Posted on 2019年7月5日 by cool-jupiter

真実の行方 70点
2019年7月2日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:リチャード・ギア エドワード・ノートン フランシス・マクドーマンド
監督:グレゴリー・ホブリット

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190705000511j:plain
映画でも小説でも、多重人格ものは定期的に生産される。一人の人間が複数のパーソナリティを持つというのだから、そこから生まれるドラマの可能性が無限大である。しかし、多重人格ものは同時に、それが詐術である可能性を常に孕む。多重人格が本当なのか演技なのかの境目を行き来する作品といえばカトリーヌ・アルレーの小説『 呪われた女 』や邦画『 39 刑法第三十九条 』などがある。本作はと言えば・・・

 

あらすじ

カトリック教会で大司教が殺害された。容疑者としてアーロン(エドワード・ノートン)が逮捕され、マーティン(リチャード・ギア)が弁護を請け負うことになる。その過程でマーティンは徐々にアーロンとは別に真犯人が存在するのではないかと考え始め・・・

 

ポジティブ・サイド

『 アメリア 永遠の翼 』や『 プリティ・ウーマン 』ではやり手のビジネスマンを、『 ジャッカル 』では元IRAの闘士を演じ、今作ではBlood Sucking Lawyerを演じるリチャード・ギアは、日本で言えば世代的には大杉漣か。そのリチャード・ギアが嫌な弁護士からプロフェッショナリズム溢れる弁護士に変わっていく瞬間、そこが本作の見所である。

 

しかし、それ以上に観るべきは若きエドワード・ノートンであろう。栴檀は双葉より芳し。演技派俳優は若い頃から演技派なのである。そしてこの演技という言葉の深みを本作は教えてくれる。

 

題材としては『 フロム・イーブル 〜バチカンを震撼させた悪魔の神父〜 』、『 スポットライト 世紀のスクープ 』などを先取りしたものである。多重人格というものを本格的に世に知らしめたのは、おそらくデイヴ・ペルザーの『 “It”と呼ばれた子 』なのだろうが、本作はこの書籍の出版社にも先立っている。Jovianは確か親父が借りてきたVHSを一緒に観たと記憶しているが、教会の暗部というものに触れて、当時宗教学を専攻していた学生として、何とも言えない気分になったことをうっすらと覚えている。

 

本作の肝は事件の真相であるが、これには本当に驚かされた。2000年代から世界中が多重人格をコンテンツとして消費し始めるが、本作の残したインパクトは実に大きい。カトリーヌ・アルレーの『 わらの女 』やアガサ・クリスティーの『 アクロイド殺し 』、江戸川乱歩の『 陰獣 』が読者に与えたインパクト、そして脳裏に残していく微妙な余韻に通じるものがある。古い映画と侮るなかれ、名優エドワード・ノートンの原点にして傑作である。

 

ネガティブ・サイド

少しペーシングに難がある。なぜこのようないたいけな少年があのような凶行に走ったのかについての背景調査にもう少し踏み込んでもよかった。

 

ローラ・リニーのキャラクターがあまりに多くの属性を付与されたことで、かえって浮いてしまっていたように見えた。検事というのは人を有罪にしてナンボの商売で、法廷ものドラマでもイライラさせられるキャラクターが量産されてきているし、日本でも『 検察側の罪人 』などで見せつけられたように、人間を有罪にすることに血道を上げている。それはそういう生き物だからとギリギリで納得できる。だが、マーティンの元恋人という属性は今作では邪魔だった。『 シン・ゴジラ 』でも長谷川博己と石原さとみを元恋人関係にする案があったらしいが、没になったと聞いている。それで良いのである。余計なぜい肉はいらない。

 

よくよく見聞きすれば、アーロンの発言には矛盾があるという指摘も各所のユーザーレビューにある。なるほどと思わされた。本当に鵜の目鷹の目で映画を観る人は、本作の結末にしらけてしまう可能性は大いにある。

 

総評

これは非常に頭脳的な映画である。多重人格ものに新たな地平を切り開いた作品と言っても過言ではない。もちろん、その後に陸続と生み出されてきた作品群を消化した者の目から見れば不足もあるだろう。しかし、多重人格もののツイストとして、本作は忘れられてはならない一本である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アメリカ, エドワード・ノートン, サスペンス, スリラー, フランシス・マクドーマンド, リチャード・ギア, 監督:グレゴリー・ホブリット, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 真実の行方 』 -若き日のエドワード・ノートンに刮目せよ-

『 ミーン・ガールズ 』 -高校という生態系の派閥権力闘争物語-

Posted on 2019年4月17日2020年2月2日 by cool-jupiter

ミーン・ガールズ 65点
2019年4月15日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:リンジー・ローハン レイチェル・マクアダムス アマンダ・セイフライド
監督:マーク・ウォーターズ

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高校に限らず、小学校の高学年くらいから女子は独特の群れを形成し、行動する習性が観察され始める。そしてそこには必然的に中心 vs 周辺、または頂点 vs 底辺といった序列が生まれる。本作は女子高生の闘争物語であり、アマンダ・セイフライドの映画デビュー作であり、その他の中堅キャストの若かりし頃を振り返ることもできる作品である。

 

あらすじ

ケイディ・ハーロン(リンジー・ローハン)はアフリカ育ちの16歳。動物学者の両親の仕事の関係でホームスクーリングを受けていたが、16歳にしてアメリカの高校に入学することに。そこには様々な種類の動物たち・・・ではなく、人間関係のグループが存在していた。当然のように底辺グループに属すようになったケイディは、ひょんなことからレジーナ(レイチェル・マクアダムス)とその取り巻きのカレン(アマンダ・セイフライド)のグループ、頂点グループの“プラスティックス”に属することになり・・・

 

ポジティブ・サイド

『 THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法 』でも描かれた学校という舞台、いや、本作風に言えば学校という生態系におけるカースト制度が、もっとどぎつく描写される。『 ステータス・アップデート 』ではカーストの頂点捕食者の交代劇が行われたが、本作のプロットも似たようなものである。ただし本作のユニークさは、主人公のケイディがダブル・エージェントであるところだ。底辺グループの仲間に頼まれ、頂点グループの情報を流しつつ、自身はしっかりと栄光の階段を上って行くところは『 アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング! 』のようである。2004年の作品ということで、これらすべての要素の始祖が本作であるはずはないのだが、本作が現代の視点で観ても充分に面白いと感じられる要因は、学校裏サイト的なガジェットを有しているところである。これは古くて新しいネタである。

 

中盤から終盤にかけて、このガジェットが原因で騒動が勃発する。それにより、アメリカの学校もアフリカのサバンナと同じく、弱肉強食の生態系であることが漫画的に露呈する。だが、この騒乱を収める大人たち=教師たちのやり方には感心した。日本でも最近、校則をすべて廃止するに至った高校がニュースになったが、そこの高校の校長先生は、きっと本作の校長先生と多くの共通点を持つに違いない。日本でもアメリカでも、良い教師は往々にしてプライベートな属性、例えば父親であったり母親であったり、あるいは夫であったり妻であったりという顔を見せることで、生徒から異なる認知を受けるようになることが多い。実際に『 スウィート17モンスター 』で使われた手法は、大体それであった。だが、本作の教師たちはどこまでも教師に徹する。教師が主人公でもない映画にしては珍しい。校長先生と数学教師にはJovian個人として最大限の敬意を表したい。

 

本作はまた、アマンダ・セイフライドの映画デビュー作でもある。その他、レイチェル・マクアダムスの若い頃にお目にかかることも可能だ。アン・ハサウェイのファンなら『 プリティ・プリンセス 』を見逃せないように、アマンダのファンは本作を見逃すべきではないだろう。

 

ネガティブ・サイド

主人公のケイディが学校に馴染むのが少し早すぎるように感じた。学校、なかんずくアメリカのそれには冷酷非情な生態系が存在することは『 ワンダー 君は太陽 』などで充分に活写されてきた。アフリカ帰りのweirdoであるケイディが“プラスチックス”のメンバーになるまでに、もう少しミニドラマが必要だったように思う。彼女の狡猾さは生まれ持ったもの、もしくはアフリカで身に付けたものではなく、生来の頭の良さを無邪気に、なおかつ意図的に悪い方向に使ったものであるという描写は、リアリティに欠けていたからだ。

 

後はケイディの父と母の存在感がもう一つ弱かった。ホームスクールをしていたということは、父と母が教師でもあったわけで、初めての学校でケイディの感じる戸惑いが、アフリカとの違いばかりというのもリアリティに欠ける。親に教わることと他人に教わること。その違いも学校という舞台のユニークさを際立たせる演出として必要だったように思う。

 

総評

普通に良作ではなかろうか。邦画が学校を舞台にすると、往々にして恋愛または部活ものになってしまう。ちょっと毛色が違うかなというものに『 虹色デイズ 』があった。野郎同士の友情にフォーカスするという点では本作の裏腹。女同士の人間関係に着目した作品では『 リンダ リンダ リンダ  』があった。これらの作品を楽しめたという人なら、本作も鑑賞して損をすることは無いだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, C Rank, アマンダ・セイフライド, アメリカ, コメディ, リンジー・ローハン, レイチェル・マクアダムス, 監督:マーク・ウォーターズ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 ミーン・ガールズ 』 -高校という生態系の派閥権力闘争物語-

『 ロッキー4 炎の友情 』 -政治的なメッセージ以上のメッセージを持つ作品-

Posted on 2019年1月1日2019年12月7日 by cool-jupiter

ロッキー4 炎の友情 65点
2018年12月25日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シルベスター・スタローン タリア・シャイア カール・ウェザース ドルフ・ラングレン
監督:シルベスター・スタローン

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12月25日はクリスマスである。クリスマスと言えば、『 ホーム・アローン 』や『 ナイトメア・ビフォア・クリスマス 』ではなく『 ロッキー4 炎の友情 』なのである。どこかに昔、WOWOWで録画したロッキーシリーズのDVDがあるはずだが、探すよりも借りてきた方が早いと思い、近所のTSUTAYAに行ってきた次第。

 

あらすじ

かつて死闘を繰り広げたロッキー(シルベスター・スタローン)とアポロ(カール・ウェザース)は友情を育み、悠々自適の生活を送っていた。そんな中、ソビエト連邦からイヴァン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)がアメリカにやって来て、ロッキーと戦いたいとの意向を表す。アポロはロッキーではなく自分こそがドラゴと闘うとリングへ復帰、エキシビションに臨むもドラゴの強さの前に沈み、リング禍となってしまった。ロッキーはアポロとの友情に応えるべく、妻エイドリアン(タリア・シャイア)の制止を振り切り、ドラゴの待つソビエトに向かう・・・

 

ポジティブ・サイド

あらためて見返して、ドルフ・ラングレンがスタローンよりもボクシングの型が整っていることに感心する。もちろんアマチュアのバックグラウンドがあるというキャラ設定によるものだが、普通にボクシングをやっていてもアメリカで8回戦ぐらいまではいけたのでは?と思わせる。昔も今も、ロシア人のボクサーは得体の知れない雰囲気を纏っている。日本と縁の深いボクサーで言えば、勇利アルバチャコフや、長谷川穂積も対戦を避けたサーシャ・バクティンなどが当てはまる。例外は池原信遂に貫禄勝ちしたウラジミール・シドレンコぐらいか。そうした不気味なソビエト人を、その図体と表情と無骨な喋りで演じ切ったラングレンに喝采。

 

ロッキーのトレーニングシーンも良い。もはや定番、クリシェと化しているトレーニング・シーンのモンタージュであるが、最新科学理論に基づき、機器を用いての効率的トレーニングを積むドラゴと、あくまで原始的なトレーニングに打ち込むロッキーのコントラストが、 ”Heart’s on Fire” に実にマッチする。ここでのロッキーのトレーニング風景は、Jovianが勝手にヘビー級プロボクサー史上最強(≠最高)と認定しているビタリ・クリチコのトレーニングとそっくりである。腹筋、雪中のランニング、丸太運び、薪割りと、笑ってしまうほどのシンクロ率である。ウクライナ人のビタリとアメリカ人のロッキーの不思議なトレーニング風景の一致は、現実(リアル)と映画(フィクション)の境目を曖昧にし、2018年という時代に見返してみた時、映画に更なる説得力(リアリティ)を持たせることに成功している。もちろん、“Burning Heart”はこれまでも、今も、これからも多くのプロボクサーに愛される名曲である(亀田興毅除く)。

 

本作の持つテーマには実に危ういものがある。友情は命に勝るのか。そして、アスリートは代理戦争を闘うべきなのか。前者に関しては分からない。しかし、後者に関しては今ならYesと言える気がする。イディ・アミンはある意味で正しかったと思う。紛争であれ戦争であれ、何らかの形で大規模な軍事力の衝突を引き起こすのなら、それらの国の首脳が殴り合えばよい。Jovianは大学時代にデンマーク人の友人から、「サッカーってのは疑似戦争なんだ!」と熱弁を振るわれたことがある。それはボクシングにも当てはまることで、近年の例で言えば、やはりフィリピンの英雄マニー・パッキャオ。彼がメキシコ人(フィリピン人からするとメキシカンはスペイン人のようなものらしい)やアメリカ人をぶっ倒すたびに国中がお祭り騒ぎになっていた。それはフィリピンがスペイン、日本、アメリカの実質的な植民地、属国になっていたという歴史と大いに関係がある。アメリカのアクション映画や戦争映画は9.11を境に大きく変わったと言われる。アンジェリーナ・ジョリーの『 トゥームレイダー 』が無邪気なアクション映画としては最後の作品であると考えられている。本作はもちろん、無邪気な映画。しかし、そんな無邪気な映画であるからこそ、あちこちに火種の燻る現代の世界を考えるに際して、ヒントになるものがあるように思えてならない。

 

ネガティブ・サイド

フィラデルフィアのロッキー・ステップが映されないとは何事か。監督スタローンに喝!

 

あのポーリーに贈った家政婦的なロボットはいったい何を象徴しているのだろうか。どう考えても、当時のアメリカの楽天主義丸出しの未来予想図にしか思えない。最新科学をトレーニングにしっかりと反映させるソビエトに対して、ロッキーは原始的なトレーニングに拘る。しかしそれはロッキーがロッキーだからであって、アメリカは決して科学技術においてソビエトに後れをとっているわけではありませんよというポーズなのだろうか。

 

そして日本版の副題をつけた配給会社に喝!なんでもかんでも『 炎の~ 』にするのが当時のトレンドだったのは分かる。音楽シーンでもマイケル・ジャクソンの『 今夜はビート・イット 』のように、何でもかんでも『 今夜は~ 』という日本語をつけてしまう時代だったのは確かだ。映画の『 ランボー 』シリーズにしてもそうで、何でもかんでも『 怒りの~ 』にすればよいというものではない。スティーブン・セガールの映画がやたらと『 沈黙の~ 』になってしまったように、日本の映画配給会社は一度前例ができてしまうとそれを変えたがらない。まるで官僚のようだ。映画本編とは関係のないところで陰鬱な気分にさせられてしまった。

 

総評

シリーズの中でもモスクワで闘うという異色の展開を見せる作品である。ロッキー映画の方程式は維持しているものの、舞台のほとんどがフィラデルフィアでないことに釈然としないファンも多かろう。しかし、『 クリード 炎の宿敵 』の日本公開が間近に迫る今、復習の意味で鑑賞する意義は充分に認められる。

 

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