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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:ディズニー

『 アマチュア 』 -知力で戦え-

Posted on 2025年4月16日2025年4月16日 by cool-jupiter

アマチュア 70点
2025年4月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ラミ・マレック ローレンス・フィッシュバーン
監督:ジェームズ・ホーズ

 

『 ボヘミアン・ラプソディ 』のラミ・マレック出演作ということでチケット購入。

あらすじ

CIAで暗号分析官を努めるチャーリー(ラミ・マレック)は、ロンドン出張中の妻がテロリストに殺されたことを知らされる。妻の復讐を自らの手で果たすため、CIAのトレーニングを受けようとするチャーリーは、教官のヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)と出会うが・・・



ポジティブ・サイド

見始めて少し経つまで、これが小説『 チャーリー・ヘラーの復讐 』だと気付かなかった。『 100冊の徹夜本 』の中で触れられていたので、高校生の時に岡山市内の古本屋で買ってもらって読んだことをうっすら覚えている。とにかく知力だけで戦う話だった。今作でも、舞台が現代で、テクノロジーも当然現代のものだが、チャーリーの戦い方は知力オンリー。そこが『 アメリカン・アサシン 』との違いで、本作のユニークなところ。

 

協力者のインクワラインと共に4人の標的を追っていくが、ド派手アクションに走る前のM:Iシリーズの趣きが感じられ、サスペンスフルだった。実際に女性(テロリストだが)相手にも組み負けてしまうチャーリーは非常にリアルで、だからこそナードやギークの星たりえる。ピッキング動画を視聴しながら、実際に解錠するシーンは笑った。Jovianの友人にも、パソコンの分解動画を見ながら、実際にパソコンを分解する男がいるので、このシーンは可笑しみがありつつも説得力があった。

 

原作小説では確かCIAから見捨てられるような展開だった気がするが、今作ではそのCIAを、ある意味ではテロリスト以上の悪に描いている。その背景も実際にあってもおかしくないような設定で、情報というものに信が置くことが難しい現代という舞台に、原作の設定を見事に着地させているという印象。

 

標的の最後の一人から思わぬ逆襲を食らうチャーリーが、見事な機転で危地を脱する展開には唸らされた。現代は技術全盛で、特にコンピュータ関連の知識とスキルはそのまま金になるし、使い方を変えれば武器にもなる。PCオタクでも愛する人の敵を討つヒーローになれるのだと新しく示してくれたのは一つの功績であると思う。

 

ネガティブ・サイド

偽造パスポートを作った当のCIAが、その偽造パスポートが使われた場所や日時を特定できないとはこれ如何に。

 

また、マスクやサングラスでいくらでも隠しようのある顔をシステムで追うのも疑問。邦画『 プラチナデータ 』はイマイチだったが、歩き方でターゲットを補足しようというアイデアには先見の明があった。実際にCIAは職員のそうしたデータを持っているはずなのに、なぜそれを活用しなかったのか。

 

協力者のインクワラインの出番がもう少し欲しかったと思う。

 

総評

普通に面白い作品。スパイやエージェントでありながら各地でドンパチ(本作にもちょっとそういうシーンはあるが)やる映画とは違い、知識と技術さえあれば圧倒的な暴力にも対抗できるのだ、という物語そのものに爽快感がある。『 ベテラン 』『 プロフェッショナル 』など強そうなタイトルと同時上映されているが、『 アマチュア 』にはアマチュアの良さがあるのだ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Keep your head on a swivel.

『 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 』でも紹介した表現。周囲への警戒を怠るな、の意味。PS2のゲームのAce Combat 04とAce Combat 5で使われている。AIに尋ねたところ、軍事や警察以外でも、文脈さえ正しければ As a sales rep, you really need to keep your head on a swivel to pick up on any business trends. のように使ってもいいそうである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 悪い夏 』
『 片思い世界 』
『 シンシン/SING SING 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, サスペンス, ラミ・マレック, ローレンス・フィッシュバーン, 監督:ジェームズ・ホーズ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 アマチュア 』 -知力で戦え-

『 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 』 -答えは風の中にある-

Posted on 2025年3月16日2025年3月16日 by cool-jupiter

名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 70点
2025年3月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ティモシー・シャラメ エドワード・ノートン エル・ファニング モニカ・バルバロ
監督:ジェームズ・マンゴールド

妻が見たいというのでチケット購入。ボブ・ディランに関する知識はあまりなかったが、それでも興味深く鑑賞できた。

あらすじ

ウディ・ガスリーに傾倒する青年のボブ(ティモシー・シャラメ)は、彼が入院している病院を尋ねる。そこでガスリーとその親友、ピート・シーガー(エドワード・ノートン)に一曲を披露したボブはその才能を見込まれ、ピートの自宅に誘われて・・・

ポジティブ・サイド

ティモシー・シャラメ、意外に歌が上手い。かつ、しゃべり方も田舎から出てきた朴訥な青年が無理して背伸びして喋っています感ありあり。おそらく実際のボブ・ディランがそうだったのだろう。他にもエドワード・ノートンやモニカ・バルバロなど、以外と言っては失礼かもしれないが、歌唱力の高さに驚かされた。

今でこそ才能が誰かに発見される、あるいは才能自身が自らを発信するのは難しくないが、1960年代は話が別。カフェやバーでのライブや、教会のイベントなどでコツコツと地道に活動していくしかない。そうした時代を見つめるのも興味深かった。

ディランが成功を掴んでいく中、シルヴィと付き合いながらもジョーンと二股関係になっていくのは見ていて気持ちのいいものではなかったが、これは史実なのだろう。また、割と高尚なメッセージを直截的な歌詞に乗せて歌い上げるディランだが、同じミュージシャンのジョーンを抱いた直後にも曲作りに精を出す様は、仕事人としてはリスペクトするが、男としてはまったくもってダメダメ。

ところが、もう一人のボブとの偶然の出会いの際に漏らしたディランの本音によって、そうしたハチャメチャなディランの像が一変して見えてくる。ディランの出現と活躍によってフォークが完全に復権を果たそうとすることに多大な期待をかけるピート・シーガーや、JFK暗殺やキューバ危機の中にあっても自らの信念に忠実に勉学と行動に邁進するシルヴィ。そうした人々の期待に応えようとしない、いや敢えて応えない男の美学を見たような気がした。鬱屈とした時代はもう終わったんだと歌って喝采を浴びた男が、前時代の音楽に回帰せよと言われても、それは素直に従えないだろう。太宰治や坂口安吾がフォークを歌えば、日本のボブ・ディランと呼ばれたように思う(この二人の方がディランよりも前だが)。

余談だが、フォークソング=社会批判という構図は現代にも受け継がれていると感じた。第一次トランプ政権の際にバズったサイモンとガーファンクルのThe Sounds of Silence のパロディ、 Confounds the Science や、『 僕らの世界が交わるまで 』のジギーが理知的で政治活動にも熱心な女子とのうまく行かない距離の取り方を、政治的メッセージと共にフォークソングに乗せるというシーンもあった。フォークもジャズと同じで、死にそうで死なない音楽ジャンルなのだろう。

ネガティブ・サイド

1960年代の街並みをCGで作って合成するのはいいが、もう少し丁寧な仕事が求められる。道に立っている女性の髪が風にそよいでいるのに、その真横を歩くシルヴィの髪がまったく動いていないというシーンにはギョッとさせられた。

ディランの作詞作曲のシーンは興味深かったが、その背景にもう少し踏み込んでほしかった。現実世界のどういった事象に心を動かされ、それをどう言葉やメロディにしていくのか。たとえば食事シーンで何かひらめく、街中の看板やポスター、フライヤーなどに一瞬目を奪われる、のようなシーンが欲しかった(本人にそういった逸話がないのかもしれないが)。

シルヴィやピート・シーガー、ジョーン・バエズとは異なり、ジョニー・キャッシュとディランのつながりの描写が弱いと感じた。当時としては手紙は重要なコミュニケーション・ツールだったはずで、その手紙の文言をもっと観る側に刺さる形で呈示する方法はなかったか。

総評

コロナ前にノーベル文学賞を受賞したことが話題になったボブ・ディラン。授賞式を欠席したというのも、彼をよく知るファンからすれば当然なのかもしれない。Jovianは中学生ぐらいだったか、B’zのBlowin’を聴いている時に、親父に「ボブ・ディランの真似か?」みたいに言われて、ビルボード年鑑のようなものを読んで、ボブ・ディランの名前を知ったんだったっけ。ハマることはなかったけれど。時代の変わり目を象徴するような歌い手だったことは如実に伝わってきた。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

turn down ~

いくつかの意味があるが、劇中では「~の音量を下げる」という意味で使われていた。ただし、実際は結構何にでも使える表現。たとえば照明を弱めるなら、turn down the lightと言えるし、コンロの火を弱めるならturn down the fireもしくはturn down the flameとも言える。逆の表現はもちろんturn up ~である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 プロジェクト・サイレンス 』
『 ロングレッグズ 』
『 ゆきてかへらぬ 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エドワード・ノートン, エル・ファニング, ティモシー・シャラメ, モニカ・バルバロ, 伝記, 監督:ジェームズ・マンゴールド, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 』 -答えは風の中にある-

『 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 』 -ドラマ視聴はなしでもOKかも?-

Posted on 2025年2月19日 by cool-jupiter

キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 50点
2025年2月15日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンソニー・マッキー ダニー・ラミレス ハリソン・フォード 平岳大
監督:ジュリアス・オナー

MCUは卒業したつもりだったが、ハリソン・フォードの最後の作品だということで急遽チケットを購入。

 

あらすじ

新たなキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)は、二代目ファルコンのホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)と共にアダマンチウムを奪取しようとするサーペントを撃退。米大統領のロス(ハリソン・フォード)は国際協調の下、アダマンチウムの精製と分配を呼びかける。しかし、その会議の最中、ロスに対する襲撃が行われ・・・

 

ポジティブ・サイド

ファルコンがシールドとキャプテン・アメリカの称号を引き継いだことは『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』で明示されていたが、その後のTVドラマはまったく追いかけていない。それでも何となくその世界に入っていけるのは、キャラがそれだけ立っているからだろう。

 

『 トップガン マーヴェリック 』のダニー・ラミレスが二代目ファルコンというのも興味深い。原作の漫画がどうなっているのかは知らないが、彼が3代目のキャプテン・アメリカを襲名する可能性もあると考えると、白人→黒人→ヒスパニックという米国のマジョリティの変遷と重なるようで面白い。

 

冒頭のサムの格闘シーンも、かなりスティーブ・ロジャーズ寄りで、闘い方までキャップに似せている。しかし強敵とのバトルを経て、一種の強化人間であるスティーブと生身のままのサムの違いに、サムは葛藤する。タイムスリッパ-のスティーブの苦悩とは違い、非常に人間的で、このあたりにも現代的なスーパーヒーローらしさを感じる。また、その懊悩に対して思わぬ人物からのアドバイスも。おそらくドラマを観ていないと背景が分からないが、Jovianの隣の席の若い男性がそのキャラの登場に度肝を抜かれた様子だった。

 

融和協調路線の大統領がレッド・ハルクと化すのも、民主党のバイデン政権から共和党のトランプ政権への移行を見ているようで面白かった。サディアス・ロスという人物も、気難しいことで知られるハリソン・フォードの素を見ているようで楽しかった。ハルクとファルコンでは勝負にならないはずだが、二代目キャプテン・アメリカとレッドハルクなのでそれなりの勝負になっていてもそこまで違和感はなかった。

 

ネガティブ・サイド

『 エターナルズ 』の続きものということで、生まれそうになっていたセレスティアルが石化してそのまま、という世界。そこでヴィブラニウムを超えるアダマンチウムを発見・・・と、ワカンダの超技術を否定するような導入には眉を顰めざるを得ない。キャップから受け継いだ盾よりも強い武器や防具が出てくる?世界観をぶち壊しではないか。

 

平岳大演じる尾崎首相があまりにもファンタジー。流ちょうに英語を操る政治家はちらほらいるが、アメリカ大統領に毅然と立ち向かえる政治家はいない。ロンヤス以降、小泉とブッシュ、安倍とトランプのような蜜月はあったが、決して対等な関係ではなかったし、強気に物申したこともない。加えて日本の自衛隊がアメリカの誤射(と言っていいのかどうか)に対して即座に反撃を決断。艦に防衛大臣が乗っていたとでもいうのか。日本の描かれ方が、いつもとは違う意味でリアリティに欠けていて、はっきり言ってつまらなかった。

 

アベンジャーズの再結成の機運を盛り上げたいのは分かるが、そこでは政治的な意思決定の下で動くべきなのか、それとも自らの正義を執行するために動くのかがテーマになる。それはそのまま『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』のテーマだった。経営者で現代人であるトニー・スタークとは対照的に、独ソ不可侵条約がドイツによって一方的に破られたり、あるいはポツダム宣言が時の日本の内閣によって無視されたりといったことをリアルタイムに目撃し、それらが更なる悲劇につながったこともリアルタイムで経験したスティーブの対立だった。サムにはそうした体験や正義感がないし、対立軸も存在しない。正直なところ、キャプテン・アメリカとしては力不足に感じられて仕方なかった。また、エターナルズという「サノスなんか俺らにかかれば余裕」という連中の後の世界を引き継いだというのも、そうした印象をより強めている。

 

総評

つまらないことはないが、面白くもない。そういう作品である。サム・ウィルソンに欠けている対立軸は、今後登場がほぼ確定のマルチバースの世界のヒーローたちになるのだろうが、マルチバースはもう十分。やるとすればヴィランとの対立ではなく自分との対立ということになるのだろうが、それは『 デッドプール&ウルヴァリン 』でデッドプールが先にやった。続編は見ない可能性の方が高いかな。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

pull the strings

「~について裏で糸を引く」ということ。日本語の慣用表現とそっくりなのは、どちらかがどちらかを訳して取り入れたからか、それとも共通の由来を持つのか。映画やドラマ、小説で ”It was her. She’s been pulling all the strings from the beginning.”  のような感じで普通に使われる表現だが、検定試験には出なさそう。英検準1級または1級の大問1にひょっとしたら出題されるかも?

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 メイクアガール 』
『 Welcome Back 』
『 大きな玉ねぎの下で 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, アンソニー・マッキー, ダニー・ラミレス, ハリソン・フォード, 平岳大, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 』 -ドラマ視聴はなしでもOKかも?-

『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

Posted on 2024年12月30日 by cool-jupiter

ライオン・キング:ムファサ 50点
2024年12月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アーロン・ピエール ケルビン・ハリソン・Jr
監督:バリー・ジェンキンス

 

『 ライオンキング(2019) 』前日譚ということでチケット購入。

あらすじ

シンバは息子キアラの世話を旧知のラフィキ、ティロン、プンバァに託す。ラフィキはそこで、偉大な王ムファサの物語をキアラに語り掛けて・・・

ポジティブ・サイド

CGの美しさは言わずもがな。風景に至っては、最早一部は実写と見分けがつかない。水のシーンは『 ゴジラ-1.0 』の海のクオリティにも決して劣らない。

 

前日譚ではあるが、前作のキャラも大量に登場。やはりプンバァとティロンが出るだけで『 ライオンキング 』の世界という感じがする。ザズーとムファサの出会いが描かれていたのも個人的にはポイントが高い。

 

ライオンの習性というか、オスの旅立ちとはぐれライオンによるプライドの乗っ取り、まったく赤の他人のオス同士が広大なサバンナでたまたま出会い、パートナーになっていくなど、近年の調査で明らかになりつつあるライオンの実像を盛り込んだストーリー構成も悪くない。

 

随所に「おお、これがあれにつながるのか」というシーンが盛り込まれていて、前作ファンへのサービスも忘れていない。

 

命の輪のつながりを実感させるエンディングは予想通りではあるものの、非常にきれいにまとまった大団円だった。

ネガティブ・サイド

楽曲がどれも弱かった。”He lives in you.” や “Can you feel the love tonight?” は再利用不可能だとしても、せめて “Circle of Life” は聞きたかった。命の輪について劇中で何度も触れるのだから、なおさらそう感じた。

 

若き日のスカーであるタカが色々な意味で可哀そう。Like father, like son.という言葉があるが、父親のオバシのある意味で過保護と歪な愛情がタカを作ったわけで、タカそのものは悪戯好きな、よくいる子どもに過ぎない。また母のエシェもムファサに向ける愛情のいくらかを実子のタカに向けられなかったのか。子どもにとって親から信頼されることと親から愛されることは似て非なるもので、前者よりも後者の方が必要なはず。

 

ムファサもタカに命を救ってもらい、プライドにも(中途半端ながら)加入させてもらったことに一度もありがとうと言っていないところも気になった。タカの傷にしても、なにか辻褄合わせのように見えた。Let’s get in trouble もっと幼少期のムファサとの遊びの中で、ムファサの不注意で、あるいはムファサをかばったことで負った傷という設定にはできなかったか。

 

総評

鑑賞後のJovian妻の第一声は「タカが可哀そう」だった。Jovianもこれに同意する。詳しくは鑑賞してもらうしかないが、このストーリーは賛否の両方を呼ぶと思われる。ただし誰にとっても楽しい場面はあるし、楽曲のレベルも低いわけではない。家族で見に行くにはちょうどいい塩梅の物語とも言える。チケット代を損したという気分にはならないはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

steal one’s thunder

直訳すれば雷を盗むだが、実際は「お株を奪う」、「出し抜く」の意。

You’re closing deals with companies A, B, and even C? You’re stealing my thunder!
A社、B社、さらにC社とも契約を結べそうだって?俺の出番を奪わないでくれよ!

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』
『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーロン・ピエール, アメリカ, ケルビン・ハリソン・Jr., ミュージカル, 監督:バリー・ジェンキンス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

『 エイリアン:ロムルス 』 -シリーズ作品全部乗せ-

Posted on 2024年9月7日 by cool-jupiter

エイリアン:ロムルス 75点
2024年9月6日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:ケイリー・スピーニー デビッド・ジョンソン
監督:フェデ・アルバレス

『 エイリアン 』後、かつ『 エイリアン2 』以前を描く『 エイリアン 』シリーズの最新作。オープニング・デーのレイトショーにて鑑賞。

 

あらすじ

ウェイランド・ユタニ社との契約で辺境の星で働くレイン(ケイリー・スピーニー)と、その弟的な存在のアンドロイド、アンディ(デビッド・ジョンソン)は、仲間が偶然に見つけた廃船で新天地を目指すことに。しかし、その船の研究棟ロムルスでは過去に「完璧な生命体」が研究をされていて・・・

ポジティブ・サイド

冒頭の巨大宇宙船からして第一作目のオマージュ(それ自体も『 2001年宇宙の旅 』へのオマージュだが)。そして映し出される一部が欠けたノストロモ号の表記。『 エイリアン 』の惨劇の舞台に帰ってきたなという感慨が得られる最高の導入部だった。

 

その後に映し出される、どこか『 ブレードランナー 』を髣髴させるジャクソン星は、リドリー・スコット御大への忖度か、それともオマージュか。いずれにせよ、こんな環境からは脱出したくなる。一瞬だけ映し出される炭鉱のカナリヤの姿がレインたちのその後を暗示しているようで、惨劇への期待が高まる。

 

乗り込んだ廃船のプロダクションデザインは完璧に近い。ノストロモ号の油臭さに黴臭さと埃っぽさを加え、2で強烈な印象を残した赤のストロボを本作ではオレンジに変更。似て非なる世界ではあるが、確かにエイリアン世界だった。今では古めかしい文字表示型のコンピューターのマザーも、テキスト生成AIのおかげでより現実感が増している。そしてアンドロイドという存在も、現在のボストン・ダイナミクス社製のロボットなどを見ていると100年後には実在しているように感じられる。色々な意味で本作はリリースのタイミングに恵まれた。

 

ストーリーはとにかく全部乗せ。フェイスハガーにチェストバスター、ゼノモーフに、暴走するアンドロイドに人間を守るアンドロイド。そして人間の果てなき欲望。エイリアンの1、2、3、4への数々のオマージュに加え、『 プロメテウス 』への直接的な言及や『 エイリアン:コヴェナント 』のプロット再現もあるなど、とにかく作り手のシリーズへの愛情愛着がひしひしと感じられるし、伝わってくる。『 エイリアン:コヴェナント 』で示されたエンジニア ⇒ 人類 ⇒ アンドロイド ⇒ エイリアン ⇒ エンジニアという奇妙な連関も、ある意味で本作の中で一気に凝縮されていて、小さな舞台ではあるが、世界観は確実に広かった。

 

クライマックスは凄惨の一語。『 エイリアン2 』や『 プロメテウス 』で特に顕著だったが、エイリアンというフランチャイズは母性の追求であるとも言える。一つには、言うまでもなく女性の生殖能力。もう一つは「女は弱し、されど母は強し」。ここで言う母とは必ずしも生物学的な母ではなく、強烈な母性の持ち主ということ。慈母と鬼子母神の両方を体現するレインは、『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』のデイジー・リドリーのようになアイコニックな役を手に入れた(そのせいで役者として伸び悩むかもしれないが・・・)。

 

あらゆるシーンがオマージュで、あらゆる展開が予想通り。しかし、その展開が期待を超える描写をもってなされるところに本作の価値がある。1、2、プロメテウス、コヴェナントだけをチラッと観たことがあるJovian妻は鑑賞中、常に恐怖と緊張感で細目になっていたとのこと。予備知識なしでも鑑賞可能だが、ぜひ予習を行って(最低でも1、できれば1と2を観て)劇場鑑賞されたい。

 

ネガティブ・サイド

途中で一瞬、『 ドント・ブリーズ 』が混ざったのは個人的にはイマイチだった。もしフェイスハガーが〇〇と■■を捉えているのなら、『 エイリアン2 』でリプリーあるいはニュートは犠牲になってしまっていたはず。

 

重力と無重力が重要なキーになるのだが、終盤のシーンはいくらなんでもご都合主義的過ぎる。また無重力状態でスイスイ動くレインにも違和感。慣れない状態で、ぎこちない動きの方がサスペンスは絶対に増したと思われる。

 

総評

こうした作品は往々にして「ぼくのかんがえたさいきょうのエイリアン」のようになってしまうが、そうならなかったというだけでも素晴らしい。シリーズ全作品へのオマージュを取り入れつつ、予想通りなのに期待以上の作品に仕上げるという職人芸をフェデ・アルバレスは成し遂げた。1と2には及ぶべくもないが、シリーズ中では間違いなく堂々の第3位。往年のファンも納得の出来栄えである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

get away from ~

~から離れる、の意。『 エイリアン2 』のあの台詞が意外なシチュエーションで使われるが、これはファンサービスとして素直に受け取っておこう。繰り返しになるが、本作そのものが大予算の公式同人作品なのである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ポライト・ソサエティ 』
『 愛に乱暴 』
『 ナミビアの砂漠 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アクション, アメリカ, ケイリー・スピーニー, デビッド・ジョンソン, 監督:フェデ・アルバレス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 エイリアン:ロムルス 』 -シリーズ作品全部乗せ-

『 デッドプール&ウルヴァリン 』 -マルチバースを笑い飛ばす-

Posted on 2024年7月30日 by cool-jupiter

デッドプール&ウルヴァリン 80点
2024年7月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ライアン・レイノルズ ヒュー・ジャックマン
監督:ショーン・レビ

 

普通のヒーローに飽きてない?の惹句通りに、普通のヒーロー映画の文脈を逸脱しまくる快作に仕上がっている。

あらすじ

ヒーロー稼業を辞めて、ガールフレンドと別れてしまったウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)。友人たちに誕生日パーティーを開いてもらっているところに、時間変異取締局が現われて・・・

 

ポジティブ・サイド

デッドプール作品が他のヒーロー映画と明確に一線を画しているのは、

1)暴力描写
2)スラング使用

 

が主たる要因だが、本作でもそれは健在。冒頭から「それはやったらアカンやろ」というアクションを連発。アベンジャーズにもX-MENにも加入できないのもむべなるかな。特に暴力描写は、中盤のとあるスーパーヒーローの登場と見せかけて、「そっちかい」というキャラの死に様がすこぶる惨い。だが一番の見どころは、デッドプールとウルヴァリンのガチンコ対決。お互いに再生能力持ちなので、アホかというほどに斬り合う。これは確かにR指定である。そして終盤のマルチバースでは、某魔法使いをおちょくりつつ、彼の作品の同プロットをはるかに超えるスケールのバトルを繰り広げる。もちろん血みどろ。バイオレンスが好きな映画ファンも満足できる出来栄えだ。

 

もう一つ、アニメの『 サウスパーク 』かというほどに甲高い声とアップテンポでのスラング連発トークもデッドプールの特徴。中盤で悲惨すぎる死を迎える某キャラが最後の最後にプールのお株を奪う猛烈マシンガントークを見せつけてくれるので楽しみにしてほしい。Do you want to build a snowman? がとある隠語になっているのが個人的には驚きだった。

 

それにしても『 LOGAN/ローガン 』であれだけ従容として死んでいったウルヴァリンをあろうことか復活させて、そのうえでこれまでのX-MENシリーズの延長ではなく、一人のスーパーヒーローものとして成立させていることに度肝を抜かれた。ウルヴァリンはほとんど常になりゆきで戦いにその身を投じてきたが、今作では『 LOGAN/ローガン 』同様に自分からその身を戦いに投じていく。なぜ世捨て人同然の彼がデッドプールと共闘することになったのか知りたい人は、ぜひチケットを購入しよう。

 

それにしても、売れるヒーローあれば売れないヒーローあり。その売れないヒーローでチームを作って大暴れするデッドプール達は微笑ましくもあり、またアンチ・ヒーロー的でもある。ヒーローは世界を救うものだが、デッドプールが救いたいのは両手で数え切れるだけの友人たちだけ。世界の危機?マルチバースの危機?そんなものは知ったこっちゃねえという態度がいっそ清々しい。マルチバースの様々な自分と戦う終盤は、お互いに不死身同士で当然決着などつくはずもない。さて、どうオチをつけるのかと思ったら、そう来るとは。

 

本作のヴィランは、トレイラーにも出ていた謎のスキンヘッド女性。素性を知ってびっくり。なるほど、これもウルヴァリンが帰ってくる理由の一つになっていた。世界を救うにはどうすればいいか。ヴィランと戦うのは一つの手だが、異色のヒーローたるデッドプールは我々にも割と簡単に実現可能な方法を提示する。そう、一人ひとりがズッ友を持てれば、それでその人たちの世界は救われるのだ。

ネガティブ・サイド

アライオスという超存在を出す必要はあっただろうか?今後、アライオスがMCUにおける征服者カーンの代わりになる?そんな展開は要らない。

 

第四の壁の突破ネタが1つ、2つしかなかったのは寂しい。

 

字幕に「オズの魔法使い」とあったが、正しくは「オズの魔法使」ね。

総評

スパイダーマン同様に会社関係の権利が色々と整理されたことで、考えられなかったキャラ同士のクロスオーバーが楽しめる良作。普通のヒーロー映画やマルチバース展開に飽きた人にとっては新鮮に感じられる作品のはず。「世界を救う」ためではなく「愛する人/人々」を救うために戦うデッドプールは異色のヒーローではなく、実は我々が最も目標としやすいヒーローだ。チケットを購入して、劇場でこのヒーローを応援しようではないか。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Come again.

もう一度来い、ではない。これは「もう一度言ってくれ」の意味。文脈次第では「もう一回言ってみろ、テメー!」という意味にもなる。よっぽど仲の良い相手以外には使わない方がいい。映画やドラマでは結構聞こえてくるので、英語の中級者は耳を澄ませてみるのも良いだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 大いなる不在 』
『 ツイスターズ 』
『 先生の白い嘘 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アクション, アメリカ, ヒュー・ジャックマン, ライアン・レイノルズ, 監督:ショーン・レビ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 デッドプール&ウルヴァリン 』 -マルチバースを笑い飛ばす-

『 哀れなるものたち』 -哀れなる者、汝の名は男-

Posted on 2024年2月7日 by cool-jupiter

哀れなるものたち 70点
2024年2月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:エマ・ストーン ウィレム・デフォー マーク・ラファロ ラミー・ユセフ
監督:ヨルゴス・ランティモス

 

簡易レビュー。

あらすじ

天才脳外科医ゴッドウィン・バクスター博士(ウィレム・デフォー)は、学生のマックス・マッキャンドルス(ラミー・ユセフ)を自宅に招く。マックスはそこで、体は成人女性なのに振る舞いは赤ん坊という不思議な女性、ベラ(エマ・ストーン)に出会う。ゴッドウィンは彼女の観察を手伝うようにマックスに言う。マックスは徐々にベラに惹かれていくが・・・

ポジティブ・サイド

ウィレム・デフォー=ヴィクター・フランケンシュタイン、ベラ=フランケンシュタインの怪物に見えるが、これを現代に置き換えて考えてみると、子育ての難しさを物語る寓話となるのだろうか。蝶よ花よと育てても、ビッチになる時はなる・・・ではなく、ちゃんと愛のあるセックスをしなさいよという教訓を垂れているのだ。

 

モノクロからカラーに変わる演出は『 オズの魔法使 』的で悪くない。あれも言ってみればドロシーのビルドゥングスロマンなわけで、本作も幼女ベラが成熟した女性ベラに成長していく物語だと思えばいい。快適な家に閉じ込める父から離れ、外の世界と性の世界を見せてくれる男、世界の残酷さを見せる男との旅路を経て、独立不羈の女性となっていくベラ。それはまるで一人の女性の生涯と同時に、人類史における女性の自立の歴史を目の当たりにするようでもある。

 

最後は「ははあ、これはアレをこうするんだろうな」と予想した内容とは違ったが、これはこれでブラックユーモアの炉火純青と言えるだろう。嗚呼、哀れなる者、汝の名は男。

 

ネガティブ・サイド

エマ・ストーンの非常に直接的なセックスシーンをどう評価するかは意見が分かれるところ。いや、評価しないという声もあるだろう。Jovianはさすがにちょっと見せすぎだと感じた。エマ・ストーンのトップレスは評価せざるを得ないが、好奇心からのセックスや商売としてのセックスの良し悪しを、事後の男たちの表情などで観る側に想像させることはできなかったか。ダンカンの余裕の表情がベッドの外ではなく、ベッドの上でだんだんと崩れていくのを観てみたかったと思う。

 

総評

日本なら手塚治虫あたりが思いつきそうなプロット。だが日本で映画化は無理そう。『 RED 』で中途半端だった夏帆に頑張ってもらうか、または二階堂ふみあたりに奮闘してもらうか。自分がプロデューサーになったつもりであれこれ考えてしまった。一種のウーマン・リブ奇譚なので、デートムービーにはならない。夫婦での鑑賞ならあり。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Poor thing

原題は Poor Things と複数形だが、通常会話では You poor thing. のような形で、ほぼ単数形で使う。以下は使用例。

X: I dropped my phone and broke it.
Y: You poor thing.

相手に何か不運があったりしたときは、You poor thing. と言おう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ガーディアン 守護者 』
『 熱のあとに 』
『 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イギリス, ウィレム・デフォー, エマ・ストーン, ファンタジー, ブラック・コメディ, マーク・ラファロ, ラミー・ユセフ, 監督:ヨルゴス・ランティモス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 哀れなるものたち』 -哀れなる者、汝の名は男-

『 ザ・クリエイター/創造者 』 -イデオロギーではなくテクノロジーを見せろ-

Posted on 2023年10月23日 by cool-jupiter

ザ・クリエイター/創造者 40点
2023年10月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョン・デビッド・ワシントン マデリン・ユナ・ボイルズ ジェマ・チェン 渡辺謙
監督:ギャレス・エドワーズ

 

AIが現実の仕事や学問に巨大なインパクトを与え始めている中でタイムリーな作品が公開されたと思い、チケット購入。

あらすじ

2055年、LAでAIによる核爆発が勃発。以降、アメリカはAIを排除することを決定。ニューアジア共和国に潜伏する謎のAI開発者ニルマータを捉えるために、潜入捜査官のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は組織の女性マヤ(ジェマ・チャン)に近づき、夫婦となるが・・・

以下、軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

日本国内でもChatGPTを禁止する大学(上智など)が出てくるなど、大学レベルですらAIに対する対応が割れるのだから、国家となると尚更のはず。中国がGoogleを遮断したりするという実例もある。本作は冒頭からロボットの発達とそこにAIが搭載されて・・・という歴史の if をダイジェストで見せてくれるが、まさに近現代のテクノロジー史の一端を見せられているようで興味深かった。このイントロがあるからこそ、ある意味荒唐無稽もいいところのメインプロットに説得力が生まれている。

 

舞台がアメリカ国外というのも良い。これまでアメリカ映画におけるアメリカ=全世界的な価値観を、本作は踏襲していない。ゾンビ映画でもモンスター・パニックでもパンデミックものでも、アメリカ=世界という等式が成り立つことがほとんどだったが、AIを拒否するアメリカとAIと共存するニューアジア共和国という対比は新鮮だった。

 

こんな感想を抱いたのはごく少数だと思うが、Jovianは途中からジョシュアがモハメド・アリに見えてきた。本作を楽しむ鍵は、ジョシュアにどれだけ感情移入できるかにあると思う。まあ、マイノリティーの意見・感想です。

ネガティブ・サイド

全体的に意外性がない。死んだと思ったヒロインが実は生きていた、というのは開始10分で分かること。要はそこにたどり着くまでの過程を以下に予想外のものにするかにあるのだが、全体的な世界観が『 ターミネーター 』および『 ターミネーター2 』の裏返しだと感じたし、人間側(というかアメリカ人)の感性も『 アイ、ロボット 』そっくり。結局は技術革新の裏で常に進行するラダイト運動のSF版という感じ。ノマドの外観および内部のデザインやレイアウトも『 エリジウム 』や『 スター・ウォーズ ローグ・ワン 』のビジュアルに酷似している。後者の方は監督が同じだからある意味で当然か。最も意外であるべき、ジョシュアが何故ミッションである最終兵器の破壊ではなく保護を選んだのかという理由についても、『 ブレードランナー2049 』が先行している。

 

舞台のニューアジア共和国というのがハッキリしない。我らが渡辺謙が登場し、やたらと日本語も聞こえてくるから日本?景色からしてラオス、カンボジア、ベトナム?ノマドを見ていると、どうもベトナム戦争時の民間人へのナパーム攻撃を想起させる点からして、やっぱりベトナム?だとするとAIは共産主義?そして最終的に勝利を収めるのも共産主義?イデオロギー的な背景など無しに、純粋にテクノロジーを受容するのか、拒絶するのかというストーリーの方がシンプルで、よりエンターテインメント性を追求できたのではないかと思う。

 

ところで・・・21世紀も半分を大きく過ぎているにもかかわらず、ニューアジア共和国は20世紀半ばの東南アジアのように見えるのは何故なのか?AIやロボットと共存している国家の生活水準があんなに低いはずがないと思うのだが。ただギャレス・エドワーズ監督は『 GODZILLA ゴジラ 』でジャンジラなる珍妙な日本を描いた前科があるからなあ・・・ アジアに対して正しい知識やリスペクトを持っていないように感じられて仕方がなかった。

 

総評

面白いのは面白いのだが、全編どこかで見た構図のパッチワーク。渡辺謙のAIロボも、どこか浮いていた。家族や愛の物語で締め括るのは『 インターステラー 』と同じ。壮大な世代交代のストーリーが、えらく小ぢんまりとまとまってしまったという印象。テクノロジーの話ではなくイデオロギーの話なので、鑑賞するかどうかは自分の嗜好をよくよく確かめて検討すること。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

turn the tide 

「流れを変える」の意。劇中では turn the tide of the war = 戦争を逆転させるのように使われていたと記憶している。日常だと

 

He mentioned the critical evidence and turned the tide of the debate.
彼は決定的なエビデンスに言及して、ディベートの流れを変えた。

 

The sales rep turned the tide of the negotiation by offering the client a big discount.
営業担当は顧客に大幅値引きを提供することで交渉の流れを変えた。

 

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 リゾート・バイト 』
『 月 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, アメリカ, ジェマ・チェン, ジョン・デビッド・ワシントン, マデリン・ユナ・ボイルズ, 渡辺謙, 監督:ギャレス・エドワーズ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ザ・クリエイター/創造者 』 -イデオロギーではなくテクノロジーを見せろ-

『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』 -ホラー風味たっぷりのミステリ-

Posted on 2023年9月24日 by cool-jupiter

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 65点
2023年9月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ケネス・ブラナー
監督:ケネス・ブラナー

 

簡易レビュー。

あらすじ

ベネチアで楽隠居をしていた名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)の元に旧知の小説家が訪ねてきた。彼女の誘いで交霊会に臨むことになったポアロは、子どもの霊に憑りつかれているという妖しい館へと赴く。見事に霊媒師のトリックを暴いたポアロだが、その霊媒師が何者かに殺害されてしまい・・・

ポジティブ・サイド

情緒あふれる古都ベネチアがいい。『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』や『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』のようにアクションの舞台になるよりも、ミステリの舞台となる方が断然映える。

 

原作をかなりいじくっているが、これは脚本家が良い仕事をした。どれだけオカルト色を強めても、原作はアガサ・クリスティー。つまり絶対にミステリ。なので、観ている側も「この作品のジャンルはホラーなのか、ミステリなのか」と迷うことがない。どんなにスーパーナチュラルな事象に見えても、絶対に合理的な説明がつくはずだ、という確信をもって鑑賞できる。これがカトリーヌ・アルレー原作だとこうはいかない。オカルトの可能性が少しあるからだ。

 

人間模様もかなりドロドロで、怖いのはやはり人間なのだと思わされる。恐怖が最高潮に達した瞬間に、快刀乱麻を断つがごとく炸裂するポアロの名推理。ケネス・ブラナー版ポアロの中では本作は一番面白い。

 

ネガティブ・サイド

霊媒師のトリックを暴く序盤は良かったが、声が変わる謎は放置。ここもスッキリさせてほしかった。

 

とある密室のトリックが少々お粗末。時代が時代だけにしゃーないのだが「物的な証拠は?」と開き直られたら終わり。推理は状況証拠だけではなくちゃんとした物証を基に行ってほしかった。

 

総評

アガサ・クリスティーものとしては『 ねじれた家 』に通じるテイストとミステリ、そしてホラー要素が上手く混ざり合っている。4作目がどうなるかは分からないが、次作も楽しみ。そして5作目に『 アクロイド殺し 』を実現してほしい。高校生だったJovian少年は『 アクロイド殺し 』に衝撃を受けて、そこから江戸川乱歩以外のミステリ作品も読むようになったのだ。ケネス・ブラナー版のポアロの今後に期待。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fall victome to ~ 

~の犠牲・被害者になる、の意味。Many passengers fell victim to the water accident due to the captain’s lack of experience. =船長の経験不足のせいで多くの乗客が水難事故の犠牲になった、のように使う。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ケネス・ブラナー, ミステリ, 監督:ケネス・ブラナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』 -ホラー風味たっぷりのミステリ-

『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』 -さらば冒険の日々-

Posted on 2023年7月8日 by cool-jupiter

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 70点
2023年7月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ハリソン・フォード マッツ・ミケルソン カレン・アレン
監督:ジェームズ・マンゴールド

 

インディ・ジョーンズの引退作品。前作の『 インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 』がアレだったせいか、予想以上に楽しめた。

あらすじ

学校を退官したインディ・ジョーンズだが、妻マリオン(カレン・アレン)とは別居中で、俗世にもなじめずにいた。そんな彼の前に教え子のヘレナが現れ、インディが若き日に発見し、紛失したアンティキティラの片割れを見つけることができると言う。インディは、アンティキティラを求めて迫りくる敵から逃れつつ、再び冒険の旅に出ることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

ハリソン・フォードが最後となるインディ・ジョーンズ役を等身大で演じた。ここでいう等身大とはもちろん80歳手前のお爺さんのこと。

 

もちろんいきなり年老いたインディを見せられてもアレなので、デジタル・ディエイジング技術でもって若き日のインディ・ジョーンズをスクリーンに復活させた。シリーズ恒例のノンストップ・アクションが炸裂。ジョン・ウィリアムズの “Raiders March” ともあいまって、一気にインディ・ジョーンズの世界に入っていける。

 

舞台は一転して現在(1969年)。大学も退官し、俗世に馴染めないインディの姿にはどうしたって哀愁が漂う。これまでの作品では学生は皆、熱心に授業を聞いてくれていたし、オフィス・アワーでもないのに質問攻めにあっていた。同じ大学教員の端くれとして、インディの気持ちはよく分かる。

 

その一方でナチスと激闘を繰り広げ、米軍のスパイとしても大活躍したインディが “I like Ike.” はまだしも、“Hell no, we won’t go!” を叫ぶ姿にも違和感を覚えたが、これは計算された伏線であった。なるほどなあ、前作はインディ・ジョーンズというキャラが、インディ・ジョーンズという人間であったという面を掘り下げたが、今作はそうした面をさらに追求したと言える。

 

今回のガジェットは、ちょっとした歴史好き(歴山大王がパッと誰だか分かれば十分な歴史好きだ)なら誰もが知っているアンティキティラ、そしてキーパーソンはアルキメデス。『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』の聖杯以外はフィクション要素満載だったシリーズが、現実に近づいてきた。これもキャラクターとしてのインディ・ジョーンズの人間的側面をより強く描きたいという製作者側の願望もしくは狙いなのだろう。

 

シリーズ恒例の世界を股にかけた大冒険は本作でも健在。謎解きの面白さも維持されているし、 共に冒険に出るヘレナやテディもキャラが立っている。マッツ・ミケルセンがインテリかつ過激思想の持ち主というヴィランを好演。東西冷戦は軍拡競争、すなわち科学力の争い。考古学とは相容れない。だからこそ、芸術や文化、歴史を破壊しようとしたナチスをもう一度敵役に据える、という判断は賢明だった。最初は『 帰ってきたヒトラー 』か、いやいや変化球で『 ブラジルから来た少年 』的なものを狙っているのかと思ったが、このヴィランはさらに違うことを考えていた。

 

クライマックスのインディの決断には涙が出そうになった。厭世家にならざるを得なかったインディならではの心情だろう。

 

そうそう、『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』の数少ないネガティブだった、古典語を話すインディ・ジョーンズが第5作にしてついに実現。ラテン語学習者のJovianは一人歓喜した(インディたちが話したのはラテン語ではなかったが)。

 

ネガティブ・サイド

アンティキティラのもう半分を探す必然性をインディ自身が持っていない。ヘレナを追う敵から、知らない間に一緒に逃げるという、かなり消極的な冒険への旅立ち。もっとインディ自身の探求心を刺激するイベントが必要だった。

 

バンデラスの扱いが雑。『 エクスペンダブルズ 』のドルフ・ラングレンよりも酷い。

 

シリーズ恒例のユーモアとホラー要素が薄かった。前作がアレだったとはいえ、やはりスピルバーグ御大がメガホンをとるべきだったのではないか。

 

総評

意味ありげなラストシーンは、ついに安住の地を見つけたインディが、冒険はやめるけど、インディアナ・ジョーンズであることはやめない、という宣言なのだろう。そこからの爆音レイダース・マーチで、シリーズは本当に終わったのだなと実感した。トム・クルーズが本作鑑賞後に「自分も80歳までイーサン・ハントを演じたい」と言ったそうな。とりあえず、ハリソン・フォード、お疲れ様!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Give’ em hell!

直訳すれば「あいつらに地獄を見せてやれ」だが、実際は激励の言葉として使われる。『 トップガン マーヴェリック 』でも出撃前にハングマンがルースターに You give ‘em hell! =ぶちかませ、と言っていた。状況によって「やってやれ!」「お前ならできる!」のようにも訳せる。デカい勝負(プレゼンや入札など)に出る同僚にかける言葉としてもありだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アドベンチャー, アメリカ, カレン・アレン, ハリソン・フォード, マッツ・ミケルセン, 監督:ジェームズ・マンゴールド, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』 -さらば冒険の日々-

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