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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 日本

『 ゴールド・ボーイ 』 -韓国でリメイク希望-

Posted on 2024年3月19日 by cool-jupiter

ゴールド・ボーイ 60点
2024年3月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:羽村仁成 岡田将生
監督:金子修介

 

『 ガメラ 大怪獣空中決戦 』、『 ガメラ2 レギオン襲来 』、『 ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 』の三部作で名高い金子監督の作品ということでチケット購入。ゴールド・ボーイというのは金子監督の謂いかと思ったが、そうではなかった。

あらすじ

大企業の会長の入り婿である東昇(岡田将生)は、義理の両親の転落事故に偽装して殺害する。しかし、偶然にも安室朝陽(羽村仁成)ら3人の少年少女がその凶行を動画に捉えていた。3人は東を脅迫して、大金をせしめようとするが・・・

 

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

悪 vs 悪という構図は『 最後まで行く 』のように、それ自体はそこまでユニークではない。大人と子どもの対立の構図も『 ぼくらの七日間戦争 』以来のお馴染みのテーマ。ただ、悪 vs 悪の片方を未成年にして、その心の闇を徐々に浮彫にしていくという筋立てはなかなかにユニーク。

 

なにげなくカメラを使っていたら、映ってはいけないものが映ってしまったというのは現代的。不謹慎かもしれないが、本作を鑑賞して天橋立の転落事故(事件と言うべきか?)を思い起こした人も多いことと思う。至る所にカメラがある。あるいは誰もがカメラを持っているという時代であることが冒頭で強く示唆される。この伏線が終盤に効いてくる。

 

舞台が沖縄というのも興味深い。中盤に「どうやってそのアイテムを入手した?」と思わされるシーンがあるが、ここは沖縄。ごくまれに挿入される軍用機の飛行シーンが観る側の想像を膨らませる。

 

未成年3人組が13~14歳という設定も絶妙であると感じた。『 カランコエの花 』の中川監督は、大人は嘘をつく、子どもは嘘をつかないと喝破したが、本作の主人公の朝陽はこの意味ではまったく子どもではない。そこが上手いと感じた。『 終末の探偵 』でもそうだったが、子どもは時に大人の予想を良い意味でも悪い意味でも軽々と超えてくる。さて、本作の子どもは前者なのか、後者なのか。それは実際に鑑賞の上、確認をされたし。

 

ネガティブ・サイド

ストーリー全体のテンポに文句はないが、細部のリアリティがめちゃくちゃである。突っ込みだすときりがないが、特に気になった点だけ挙げれば、まずは浩のカツアゲ。あんなもん、普通は速攻で補導される。高校生が交番に駆け込んだら、おそらくその日のうちに捕まるはず。

 

次に自傷行為。しっかりした監察医が沖縄にいるのかどうかはさておき、警察官もとあるキャラの腕の傷の方向や深さ、犯人と思われる人物の身長や利き手などから、すぐに疑問を抱くに違いない。韓国映画の警察ではないのだから、ここでは明晰とされるそのキャラの頭脳をもっと駆使してほしかった。

 

もう一つはとある死体について。犯行から発見まで1か月半ほど経過していて、あんなにキレイなままでいるか?それ以上に顔がおかしい。なんで無傷?

岡田将生は演技が過剰。羽村仁成は不気味さが不足。金子監督は怪獣は巧みに演出できても、サイコパスは演出できないのだろうか。

 

総評

日本でもだんだんと社会の闇に迫る映画が作られるようになってきたのは好ましい傾向。ただし、本作に関して言えば残念な点も多い。原作は中国のドラマということだが、韓国でもリメイクしてくれないだろうか。彼の国ならもっとバイオレントで、もっとサイコな展開がてんこもりの物語に仕上げてくれそう。某サイトで星4つだが、実際は星3.2といったところだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

chew up the scenery

大げさに演じる、過剰に演技するの意。日常会話で使うかどうかは、その人が芝居や映画、ドラマの話をどれだけするのかによる。使い方としては I love how Nicholas Cage chewed up the scenery in this film. のような感じ。決して岡田将生の演技がニコラス・ケイジのようだと言っているわけではない。念のため。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, クライムドラマ, ノワール, 岡田将生, 日本, 監督:金子修介, 羽村仁成, 配給会社:チームジョイ, 配給会社:東京テアトルLeave a Comment on 『 ゴールド・ボーイ 』 -韓国でリメイク希望-

『 マリの話 』 -Boys be romanticists-

Posted on 2024年3月11日 by cool-jupiter

マリの話 75点
2024年3月9日 シネ・ヌーヴォにて鑑賞
出演:成田結美 ピエール瀧 松田弘子
監督:高野徹

アソシエイト・プロデューサーの一人が大学の卒論ゼミの仲間という本作。その同級生は『 Bird Woman 』にもエキストラで出演していたりする。彼女から鑑賞を依頼されチケット購入。

 

あらすじ

映画監督の杉田(ピエール瀧)は夢の中で理想の女性に出会う。ある夜、自分の夢の中の女性が目の前に現れた。意を決した杉田はその女性マリ(成田結美)に自身の映画への出演を依頼するが・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

本作は上映時間60分という異色のオムニバス構成。そのエピソードの一つ一つが絶妙なバランスで結びついている。上映後の監督あいさつで最初に第4章を独立した一つの作品として仕上げたものの、それだけでは背景が不足するということから、残りの1~3章を作り上げたとのこと。

 

第1章「夢の中の人」ではスランプの映画監督が、夢に見た理想の女優が目の前に現れたところから始まる。監督と女優という距離感が徐々に男と女のそれへと縮まっていくペースが絶妙。高野監督自身「ホン・サンスはかなり意識した」と言っていた通りに、インテリ男が酒の席で美女を口説くシーンはまさにホン・サンス調。ピエール瀧が仕事に行き詰った中年男性のパトスを見事に表現していた。

 

第2章「女優を辞める日」では、女優として活動し始めたマリが監督と本格的な男女の仲になっていく過程が描かれる。といっても生々しいシーンなどはなく、ロマンチックなシーンは海辺のキスぐらい。この章で上手いなと感じたのは、夢か現か幻かを判然とさせない描き方。冴えない中年オヤジが妙齢の美女とベッドインできるか?これもまた夢なのでは?と観る側に思わせるところ。

 

第3章「猫のダンス」はかなり異色。フミコという老女がいなくなった猫を探しているところに、通りかかったマリが手助けをするというもの。そこからいつしか二人は互いの心情を赤裸々に語り始める。この章のラストで描かれるマリとフミコの触れ合いは、まさに二匹の猫のじゃれあい。言葉よりも雄弁に心情を物語る名シーンだった。

 

第4章「マリの映画」は、マリ自身が作成した短編映画。これがマリから杉田への一種のビデオレターになっている。フランスの森で詩を交えて語り合う恋人たち。即物的あるいは身体的にしか女性とつながれない男に比べて、想像力の翼をはためかせる女性という構図のコントラストが映える。

 

上映終了後に監督に「映画監督は、キャラクターを先に考えるのか、それともストーリーを先に考えるのか」と質問させてもらったところ、『今作は第4章から先に作って、そこから残りの章を作った。キャラクターから先に作るかどうかは作家による』という趣旨の答えだった。その後、高野監督のインタビュー記事を見つけたので読んでみると、しっかり「夢の中の人」から構想してるやんけ(笑)と思ってしまった。

 

ロングのワンカットが非常に多く、役者だけではなく録音や撮影のスタッフも相当に監督のわがままに振り回されただろうが、それでもこれだけのクオリティのものが出来上がったのなら納得するだろう。ヨーロッパ風のテイストを前面に出しながら、韓国風でもありつつ。しっかりと日本映画にもなっている。

ネガティブ・サイド

ぶっちゃけキスシーンがイマイチだった。Jovianは『 ロッキー 』で、ロッキーがエイドリアンを自宅に招き入れた時に玄関でするキスのシーンと、『 スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 』で、ミレニアムファルコン修理時のハン・ソロとレイアのキスシーンが all time best だと思っている。そこまでのインパクトは求めないが、杉田とマリのキスも、もう少しロマンチックにできなかっただろうか。

 

総評

本作を鑑賞してつくづく感じたのは「映画とは自分の美意識」という『 カランコエの花 』の中川駿監督の言葉は本当なのだなということ。高野監督のロマンス観が見事に開陳されている。コンテンツとフォームの両面で非常に上質なので、関西周辺の方は是非シネ・ヌーヴォまでご足労を。TOHOシネマズのような大手はこういう映画こそ一日一回で良いので上映してほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

imagination

英語とつづりは同じだが、フランス語の発音はイマジナスィオンに近い。想像力は創造の基本。映画を観て、脚本家や監督がどこからどのように inspiration = アンスピラスィオンを得たのか考察するのも面白いはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ソウルメイト 』
『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ピエール瀧, ラブロマンス, 成田結美, 日本, 松田弘子, 監督:高野徹, 配給会社:ドゥヴィネットLeave a Comment on 『 マリの話 』 -Boys be romanticists-

『 夜明けのすべて 』 -人は生きた星-

Posted on 2024年3月3日 by cool-jupiter

夜明けのすべて 80点
2024年3月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:上白石萌音 松村北斗 芋生悠
監督:三宅唱

 

『 ケイコ 目を澄ませて 』を三宅唱監督の作品ということでチケット購入。国内作品の年間ベスト候補と言ってよい出来栄えであった。

あらすじ

PMSのせいで感情が不安定になってしまう藤沢(上白石萌音)は、上司への反発や薬の副作用から来る居眠りのため会社を退職する。転職先の栗田科学でも同僚の山添(松村北斗)の無気力な勤務態度に怒りを爆発させてしまうが、彼もパニック障害のため生き辛さを抱えていて・・・

 

ポジティブ・サイド

大昔、看護学校でPMSについて習った記憶がある。なぜなら「私、PMSかも」と言い出す女子が大勢いたから。程度の差こそあれ、エストロゲンやらの各種ホルモンのストームが起きれば、それは肉体にも精神にも多大な影響を及ぼす。人類の半分は女性で、女性の10代から50代ぐらいは、誰でもPMS予備軍と言って差し支えない。これを単なる女性特有のイライラやヒステリーで片づけず、れっきとした病気であると真正面から描いた作品は今作が初めてではないだろうか。劇中のモノローグでもあった通り、診断名がつくことでホッとする人も多いはず。

 

同様のことはパニック障害にも当てはまる。Jovianの仕事の大部分は大学等で教える非常勤講師の指導で、間接的にではあるが、毎年のべ数万人(実数だと約12000人)の高校生や大学生に関わっている。近年圧倒的に多いのは、LD、ADHD、鬱病・双極性障害、パニック障害だと感じる。開講直前、あるいは開講直後から3週間ぐらいの間に学校から要配慮申請が届く。パニック障害は一位ではないが、おそらく心理・精神面での配慮だと3位か4位ぐらい。数にすると毎年10人ぐらいだろうか。なので合理的配慮を要すると学校が判断するレベルのパニック障害は10数人に一人。おそらく配慮は必要としないレベルのパニック障害は百数十人に一人ほどの割合で存在すると考えられる。つまり、それほど珍しい病気ではない。

 

主演の二人の自然体の演技は見事だった。同病相憐れむではないが、お互い病気持ちであることを知った藤沢さんのエールを即座に否定する山添君のナチュラルな無礼さ。そして藤沢さんに不用意に髪をバッサリ切られた時の邪気のない反応。このコントラストに、我々は知らず知らずのうちに山添君をパニック障害というフィルターで見ていたことに気付かされる。

 

本作は光と影の使い方が非常に巧みで印象的。栗田科学のオフィス内、街中で自転車に乗る山添君、そして移動式プラネタリウムの中など、人物の心理的な状態が視覚的に表現されている。といっても明るい=明るい精神状態、暗い=暗い精神状態では決してない。むしろ、タイトルの通りに夜明け前の暗さにこそ希望が宿っていることを示してくれていたように感じる。

 

本作に登場する人物は、誰もが目に見えない傷を抱えている、栗田科学の社長然り、山添君の元上司然り。彼らの傷が癒されることはないのだが、しかし彼らが救われることは可能なのだ。それは直接的な救済ではない。むしろ、自分以外の誰かが救われることで自分が救われる。そうしたことを教えてくれる。藤沢さんと山添君の奇妙な関係も、そうした視点から見つめることで理解することができる。

 

本作は観る側の想像力を喚起しようとする。藤沢さんのお母さんが毛糸の手袋を編むのにどれほどの時間がかかったのか。山添君の同僚の大島さんが何故最後に「外で話したい」と言ったのか。ドキュメンタリー制作を行う中学生のダンの母親は、シングルマザーなのか否か。明確な答えは何も提示されない。我々はただ想像するのみである。それこそが本作の発したいメッセージなのではないかと思う。

 

太陽が西の空に沈むことはない。なぜなら太陽は動かず、地球こそが太陽の周りをまわっているからだ。これは厳然たる科学的事実(ただし厳密には太陽も天の川銀河内を超高速で公転しているし、その天の川銀河も超高速で移動しているのだが)。それでも我々は夜空の星々に意味を見出す。信じられないほどの距離を隔てた星々が、信じられないほどの時間をかけて地球に届けた光を見て、我々は星座を見出し、物語を生み出す。それは、どんなに離れた人間同士でも、お互いを照らし、意味ある関係を生み出せるという希望に他ならない。夜だからこそ見える光があるのだ。

 

ネガティブ・サイド

物語冒頭のモノローグの多用はいただけない。藤沢さんというキャラクターの苦悩を、それこそ回想シーンを通じて想像させるべきで、これを真正面から語ってしまったのは何故なのか。

 

個人的には芋生悠の出番がもう少し欲しかったかな。

 

総評

人間の弱さや儚さを映し出すことで、逆説的に人間の強さや優しさを教えてくれる作品。演技・演出、撮影、照明、音楽・音響のすべてがハイレベル。原作小説をかなりアレンジしているそうだが、発しようとするメッセージは同じなはず。他者に向けるまなざしをほんの少し優しくしようと思えた。2024年度のベスト候補の最右翼。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Polaris

北極星の意。元々は stella polaris = 極の星だったが、stellaが省略されて polaris が定着した。ここでソラリスを思い浮かべた人はラテン語の知識またはセンスがある人。これも sol =太陽に、形容詞化の接尾辞 aris がくっついたもの。ただ日常会話では圧倒的に the North Star を使うことが多い。北極星を Polaris と呼ぶのは天文学的な文脈に限られる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ソウルメイト 』
『 落下の解剖学 』
『 マリの話 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, ヒューマンドラマ, 上白石萌音, 日本, 松村北斗, 監督:三宅唱, 芋生悠, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:バンダイナムコフィルムワークスLeave a Comment on 『 夜明けのすべて 』 -人は生きた星-

『 みなに幸あれ 』 -邦画ホラーの珍品-

Posted on 2024年2月4日 by cool-jupiter

みなに幸あれ 20点
2024年2月3日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:古川琴音
監督:下津優太

簡易レビュー。

 

あらすじ

祖父母の家を久しぶりに訪れた看護学生の孫(古川琴音)は、2階の奥の部屋に何かの存在を感じ取る。やがてその存在が姿を現して・・・

 

以下、軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

登場人物すべてに等しく名前がないというのは印象的だった。『 グレート・インディアン・キッチン 』でもそうだが、そうした設定では主題がよりいっそう抽象的かつ一般的になり、観る側の想像力を喚起する。

ホラーとしては凡百あるいはそれ以下だが、弟の痙攣シーンはなかなかに味わい深かった。

 

ネガティブ・サイド

雰囲気的に『 リゾートバイト 』そっくり。だが『 リゾートバイト 』が先行ホラーのモチーフに加えてオリジナルのアイデアを盛り込んでいたのに比較すると、本作は先行ホラーのオマージュで終わってしまったという印象。というか、ホラーですらない。

 

冒頭の回想シーンの引きは思いっきり『 アス 』の少女が暗闇で息をのむシーンのパクリ。その後も『 ヘレディタリー/継承 』や『 ミッドサマー 』を思わせるシーンに、Jホラー降霊の暗い廊下に立つ人影など、雰囲気だけは怖いけれど、その実、何も怖くないシーンが続く。監禁老人の存在はまだしも、祖父母の奇行がギャグにしか見えない。

 

自家製味噌とか、想像力を刺激して恐怖心を呼び起こすガジェットは無数にあったのに、それらをまったく有効活用できていなかった。看護師=患者の存在を前提に成り立つ職業という、主人公のアイデンティティを揺るがすような展開もなし。脚本段階で色々と破綻していたか、あるいは編集が下手くそだったか。まあ、その両方だろう。

 

総評

個人的に期待していた映画で、あらすじもトレーラーも何も目にせず臨んで大失敗。総じて大学の映画同好会レベルの作品。本作をお勧めできるのは、珍品が好きだという一部も好事家だけだと思われる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I need to forget about this movie right now.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ガーディアン 守護者 』
『 哀れなるものたち』
『 熱のあとに 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ホラー, 古川琴音, 日本, 監督:下津優太, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 みなに幸あれ 』 -邦画ホラーの珍品-

『 怪物の木こり 』 -全体的に低調なエンタメ-

Posted on 2024年1月7日 by cool-jupiter

怪物の木こり 20点
2024年1月4日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:亀梨和也
監督:三池崇史

2024年の一本目は昨年に見そびれた本作をチョイス。貯まっているポイントを使用すべきだった。

 

あらすじ

サイコパス弁護士の二宮(亀梨和也)は、怪物の木こりに扮した正体不明の連続殺人鬼に襲われる。かろうじて命拾いした二宮だったが、殺人鬼が襲ってきた人間にはある共通点があり・・・

ポジティブ・サイド

序盤に問答無用で男を殺害する亀梨、さらに噴水のごとく飛び出る血液に驚き。「いやいや、血液はそんなにビチャビチャではないやろ」と思いつつ、「でも一定時間逆さまにされ限界まで血液が上半身に集まってたらこれぐらい行くか?」と思考も軌道修正。邦画には珍しい、血みどろの物語へ期待が高まった。

サイコパスは業か否かという命題に一つの答えを提示しようという意気込みは評価したい。これは原作小説の作者に向けるべき賛辞か。原作を読んでいないので、本作がどれだけ原作に忠実なのかそうではないのかは分からない。

 

ネガティブ・サイド

まずサイコパスの描き方が残念。監修が中野信子で、この御仁は基本的に TV professor なので専門家ではあっても信用度は高くない。まあ、最終的には脚本家や演出した監督、さらには編集の責に着せられるべきなのだろうが、二宮という弁護士のサイコパシーなところが全然描写されない。無表情に人を傷つけるぐらいで、サイコパスのごく一部の側面しか見せていない。もっと弁護士としての頭脳明晰さや弁舌の上手さを見せたり、クライアントの心を掴むような描写がないと、キャラクターとしての深みが生まれない。

そもそも何故に婚約者の父親を殺す必要があるのか。普通に仕事に励んでいれば事務所を継ぐことができるはず。その理由も「サイコパスだから」というのは描写としては乱暴極まりない。

また脳チップというガジェットもつまらない。いや、つまらないというよりも説得力がない。あんな軽い衝撃で壊れる代物なら、それこそサッカーのヘディングでも壊れるだろうし、レントゲンやCTの放射線でも壊れそう。脳チップが埋め込まれているからサイコパスになるということに説得力がないし、脳チップが壊れたからサイコパスじゃなくなりました、というのも説得力がない。これではストーリーが面白くなるはずがない。

アクションシーンも細かいカットの連続で緊張感が生まれていない。襲撃シーンをもっと緊迫感あるものにするために一回ぐらいはロングのワンカットを入れるべきだった。

そもそもキャラが色々としゃべりすぎ。「猫はもう飽きたんだよね」などはその最たるもの。最後の犯人の語りも回想や目線、表情を駆使すればセリフは半分に減らせたはず。説明しないと観る側が分からないだろうと思っているのだろうか。本当ならそれなりに感動的なシーンになるのだろうが、冗長さが勝ってしまった。

最後の疑問は絵本。これは浦沢直樹の某漫画の中の絵本のパクリ・・・?

 

総評

2023年の映画なので今年のクソ映画オブ・ザ・イヤーの候補とはならないが、それでもこの低クオリティは鑑賞するのがしんどい。残念ながら『 一命 』以降の三池崇史は、それ以前の三池崇史ではない。韓国がリメイクしてくれれば(『 殺人鬼から逃げる夜 』+『 最後まで行く 』)÷2的な作品になりそう。日本はサイコサスペンスでは残念ながら韓国にはもう勝てない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

psyche

サイコパスのサイコ=psycoの名詞。哲学に造詣がある向きならプシュケーだと言えば通じるだろう。意味は精神、心理。The major earthquake left a significant impact on the Japanese psyche. =「大地震は日本人の精神に多大な影響を残した」のように使う。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 コンクリート・ユートピア 』
『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, サスペンス, スリラー, 亀梨和也, 日本, 監督:三池崇史, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 怪物の木こり 』 -全体的に低調なエンタメ-

『 市子 』 -それでも静かに生きていく-

Posted on 2023年12月19日 by cool-jupiter

市子 75点
2023年12月16日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:杉咲花 若葉竜也
監督:戸田彬弘

 

簡易レビュー。

あらすじ

市子(杉咲花)は同棲している恋人の長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けて快諾する。しかし、市子は翌日に姿を消してしまう。市子を探し求める長谷川は、市子がかつては月子と名乗っていたことを知り・・・

 

ポジティブ・サイド

本作の扱うテーマはレバノン映画の傑作『 存在のない子供たち 』と同じ。戸籍=身分証明=アイデンティティというのが現代社会だが、そこからこぼれ落ちてしまった者はどう生きていけばよいのか。本作はそれを追究しようとしている。

 

これまで少女役ばかりだった杉咲花がやっと一皮むけたかなという印象。弱さと強かさの両方を併せ持つ女性を演じきったのは見事。傾城の美女ではなくともファム・ファタールにはなれるのだ。

 

市子の過去をめぐって様々な人物の物語を移していく手法は『 正欲 』と同じ。また、エンドロールの際に流れる声で物語を想起させる手法は『 カランコエの花 』と同じ。content ではなく form が重なるのは個人的には全然OKである。

 

ネガティブ・サイド

いくらなんでも最初の事件は簡単に事の真相がばれてしまうと思うのだが。そうなると月子→市子というメタモルフォーゼも無理ということなってしまう・・・

 

また次の事件では死んだ人間の仕事がそちら関係なので、必然的に市子およびその周辺も捜査されてしまうと思われる。

 

総評

ウィリアム・アイリッシュの昔から「消えた女」を追うというプロットはハズレが少ない。本作もいくつかの点に目をつぶればOKだ。作劇の面ではいくつかの先行作品とそっくりだが、中身の点では『 さがす 』に似ていると感じた。邦画の世界でも陰影の深い作品が生み出されつつあるのは好ましいことだと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

hug

ハグするというのは日本語にもなっている。意味は「抱きしめる」である。劇中の長谷川の印象的なセリフに「抱きしめたい」というものがあったが、あれは I want to hug her. となるはず。よりドラマチックかつロマンチックな言い方をするなら I want to wrap her in my arms. となる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』
『 怪物の木こり 』
『 きっと、それは愛じゃない 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 日本, 杉咲花, 監督:戸田彬弘, 若葉竜也, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 市子 』 -それでも静かに生きていく-

『 首 』 -北野武の自伝映画-

Posted on 2023年12月6日 by cool-jupiter

首 65点
2023年12月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ビートたけし 西島秀俊 加瀬亮
監督:北野武

 

Jovianはまあまあ歴史好きで、日本史だと八切止夫の悪影響のせいか、明智光秀が好きである。ちなみに本作を鑑賞するにあたって歴史的な考証や学説を背景にして考えてはいけない。あくまでも北野史観、もしくは北野武の自伝として観るべきである。

あらすじ

天正七年。荒木村重は主君・織田信長(加瀬亮)に反旗を翻した。謀反を平定した織田軍では、重臣の明智光秀(西島秀俊)と羽柴秀吉(ビートたけし)が乱の首謀者の村重を捕縛すれば、信長の跡目になれると伝えられて・・・

 

ポジティブ・サイド

観終わって一番の感想は「これはたけしの自伝だな」だった。やることがすべて石原軍団や東京キッズの猿真似だったピートたけしが、やることすべてが信長の猿真似と言われた秀吉を演じているところからも、そのことがうかがわれる。男しか軍団に入れない「たけし軍団」の思想が本作にも色濃く投影されている。一部でBL色が強いという声もあるようだが、衆道や男色は別に安土桃山時代の専売特許ではなく、それこそ足利将軍時代から現代まで連綿と存在してきたわけで、それを指してBLと呼ぶのは少し違う気がする。むしろ、戦国時代の男たちの関係を描くことで、北野武が自らの思想を開陳したと見るべきなのだろう。火事で死亡したたけしの師匠・深見千三郎が本作における織田信長であることは火を見るよりも明らかだ。

 

映像は北野武作品らしいバイオレンスとユーモアに満ちている。それが命があっさりと消えてしまう戦国時代を非常にリアルに映し出していた。個人的に最も笑わせてもらったのが徳川家康と影武者。三方ヶ原の戦いの頃から影武者が何人もいたのは有名な話で、これでもかと刺客に狙われて、そのたびにどんどん影武者が死んでいく。男しか出てこない本作の中で、数少ない例外が柴田理恵か。夜伽の相手に一番の年増を選ぶ家康に笑ってしまうし、鬼の形相で家康に襲い掛からんとする柴田理恵にも笑ってしまう。もう一つ女性が出てくる場面は備中高松城。退陣していく羽柴軍を見て「メシの種が逃げていく」と焦る遊女たちにも笑ってしまう。

 

本作を別の視点から見る重要キャラに曽呂利新左エ門がいる。芸人の祖にあたる人物でカムイさながらの抜け忍。東西冷戦さなかのダブルエージェントのごとく、あちらこちらへ飛び回り、情報を仕入れてくる。また侍大将を夢見る百姓の茂助のキャラもいい。お笑い界の頂点を目指さんと青雲の志を抱き、アホながら一直線に駆け抜けるも・・・という、まさに現代お笑い界の芸人そのままの生きざま。

 

生え抜きだろうが外様だろうが、有能であればどんどん取り立ててきた信長が晩年には自らの息子たちに甘々になっていたのは近代の歴史学が明らかにしたところ。加瀬亮のキレっぷりばかりがフォーカスされているが、魔王としての信長と人間としての信長の両面を描いた作品は他にはなかなか思いつかない。『 利休にたずねよ 』が近いぐらいか。芸人としての師匠と人間としての師匠を重ね合わせていたのだろう。

 

物語を通じてこれでもかというぐらいに人が死ぬが、首にこだわって死んだ茂助と首に執着せず、結果的に天下を取った秀吉。この残酷なコントラストの意味するところは、誰を殺したかではなく何人を殺したかということ。お笑いで天下を取りたければ、審査員を笑わせるのではなく一般大衆を笑わせろ。ビジネスで天下を取りたいなら、特定クライアントではなく世間を喜ばせろ、ということか。

ネガティブ・サイド

秀吉や家康は信長よりかなり若いのだが、本作ではそこがおかしい。秀吉はビートたけしがどうしても演じたかったのだろうが、家康には40歳ぐらいの俳優で適任を探せなかったのか。

 

一部の役者の演技がワンパターン。というか、西島秀俊は誰を演じても西島秀俊。ニコラス・ケイジやハリソン・フォードと同じタイプの俳優やな。案外、椎名桔平あたりが明智光秀に合っていたかも。

 

秀吉、秀永、官兵衛の三人が喋るシーンはかなりの割合でアドリブが入っていなかったか。明らかにおかしな「間」が散見された。これが北野武流の映画作りだと言われれば納得するしかないが、面白さを増していたかと言われれば大いに疑問である。

総評

歴史的・史料的な正確性を過度に求めなければ十分に楽しめるはず。北野作品ということでグロテスクなシーン、暴力的なシーンもあるので、そこは注意のこと。本能寺の変という日本史上の一大ミステリの真相についても一定の答えを提示している点も興味深い。デートムービーには向かないが、時代劇好き・歴史好きな父親を持っていれば、たまにはご尊父を映画館に誘って、親孝行してみるのもいいだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

successor

跡継ぎ、継承者の意味。知っての通り、織田信長の権力基盤を受け継いだのは形の上では織田信雄だが、実質的な権力を継承したのは羽柴秀吉だった。本作ではしきりに跡目という表現が使われるが、英語で最も一般的に使われる跡目、跡継ぎは successor である。successor to the throne =王位継承者、successor to the business =事業承継者のように、前置詞 to を使うことを覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 市子 』
『 エクソシスト 信じる者 』
『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, C Rank, ビートたけし, 加瀬亮, 日本, 歴史, 監督:北野武, 西島秀俊, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 首 』 -北野武の自伝映画-

『 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 』 -社会批判コメディの良作-

Posted on 2023年11月28日 by cool-jupiter

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 70点
2023年11月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:GACKT 二階堂ふみ 杏 片岡愛之助
監督:武内英樹

 

『 翔んで埼玉 』の続編。前作には劣るものの、コメディの中にも社会批判の精神が垣間見られる良作だった。

あらすじ

埼玉解放戦線の活躍により通行手形が廃止されて3か月。埼玉県人は東京を目指すばかりで、横のつながりを欠きつつあった。麻実麗(GACKT)は埼玉の心をひとつにすべく、海を作ることを画策。和歌山の白浜から良質な真砂を持ち帰るために出航するが・・・

ポジティブ・サイド

埼玉県民がラジオ放送の物語に耳を傾けるという前作のフォーマットを踏襲。しかし、今回は舞台が滋賀ということで今度は関西人をビジネスターゲットにした。そしてそれはかなり成功していると感じた。とにかくローカルネタのオンパレードで関西人の笑いのツボを的確に刺激してくる。尼崎にもなぜか平和堂があり、よく行くところなので、HOPカードには我あらずプッと吹き出してしまった。

 

前作でのネタも適度に引き継いでいるので、埼玉に海を作るという突拍子もないアイデアもすんなりと受け入れられた。また麗がマイアミ帰りという設定がまさかこのような形で説明されるとは思わなかった。左フックをあごに食らったような衝撃だが、これは滋賀県民ならゲラゲラ大笑いしてしまうのかもしれない。

 

そんな麗と仲間たちが、なんだかんだで関西上陸。そこで大阪の横暴と圧政に苦しむ滋賀その他の住民たちと解放戦線を組むというのはワンパターンではあるが面白い。そしてその面白さは、ヴィランがヴィランとして躍動しているからこそ際立つ。

 

本作では吉村大阪府知事の冷酷さや身勝手さが、嘉祥寺というキャラを通じてよくよく表現されていた。タイガースの優勝や大阪万博など、タイムリーなネタも満載。特に大阪府民以外が道頓堀に飛び込むのは許さない、という姿勢には唸った。コロナ爆発の前、かの知事が兵庫県民と京都府民に「大阪に来るな」と発言したことを覚えている関西人は多いだろう。この傲岸不遜な姿勢、心根をとことんパロディ化することに成功した武内監督および脚本家の徳永友一は透徹した人物眼の持ち主であると評したい。

 

この極悪大阪に対して、「琵琶湖の水を止める」という鉄板ネタで立ち向かう滋賀解放戦線には笑うしかない。そして前作でも繰り広げられたご当地出身の有名人合戦もユーモア抜群。特に西宮出身であるにもかかわらず神戸出身を公言していた女優が、実は別の土地と非常に深い関わりを持っていたというシーンには腹の底から笑わせてもらった。

 

最後は「白い粉」で全世界の大阪化を画策する府知事の目論みを、まさかの方法で文字通り粉砕するギャグ漫画かいなという超絶展開。というか元々はギャグ漫画だったな。大阪のシンボルを埼玉の自虐ネタが粉砕するという展開にイライラさせられた大阪人もいたことだろうが、最後に大阪人の面倒見の良さをアピールするという抜かりなさ。生粋の大阪人のJovian妻は「やっぱり大阪人は人情あるわ」と、すっかり製作者の掌の上で踊らされていた。散々大阪をディスりながら、最後にコロッと態度を変えさせる。作り手は大阪人をよくわかっている。大阪人だけではなく、神戸市民以外の兵庫県民、京都市民以外の京都府民、そして滋賀県民や和歌山県民にもお勧めしたい改作である。

ネガティブ・サイド

尼崎の劇中での描かれ方はなんだったのだろうか。大阪市尼崎区と揶揄されることもある我が街であるが、こんな意味不明な描写をされるのならカットしてほしかった。もしくは大阪最強軍団の補欠的扱いで姫路と一緒にむりやり動員される、というのなら笑えたのだが。

 

甲子園を脱出した麗がいきなり京都の祇園にワープしたのは何故なのか。梅田の地下ダンジョンは全カット?うーむ・・・

 

大阪府知事の怪しい儀式は不要だったかな。

総評

前作が東京のジャイアニズムをとことん皮肉ったように、今作では大阪のジャイアニズムをとことんコケにしている。その象徴が片岡愛之助演じる大阪府知事。大阪もしくは関西圏以外の方々には吉村大阪府知事がどのように受け止められているのかは分からないが、彼の本性が本作では非常にコミカルに、しかりリアルに描かれていると思って頂いて結構だ。思えばこうした大都市に搾取される地方という構図は日本の問題の縮図である。ぜひ本作を見て大いに笑ってもらい、最後に少しヒヤッとしてもらいたい(特に都会人)。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take someone away

誰かを連行する、の意味。『 スター・ウォーズ 』の冒頭でダースベイダーがトルーパーにレイア姫を連行するように言う時に “Take her away!” と言っていた。映画でしょっちゅう聞こえてくる表現なので、意識して聞いてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 花腐し 』
『 首 』
『 市子 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, GACKT, ブラック・コメディ, 二階堂ふみ, 日本, 杏, 片岡愛之助, 監督:武内英樹, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 』 -社会批判コメディの良作-

『 正欲 』 -少し語りに頼りすぎ-

Posted on 2023年11月16日 by cool-jupiter

正欲 65点
2023年11月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:稲垣吾郎 新垣結衣 磯村勇人
監督:岸義幸

 

傑作『 前科者 』の岸善幸の監督作ということでチケット購入。悪くはないのだが、期待値を上げすぎたか。

あらすじ

桐生夏月(新垣結衣)は、中学の時に転校していったクラスメイトの佐々木佳道(磯村勇人)と十数年ぶりに再会する。二人には奇妙な共通点があり、夏月は佳道に接近しようとする。一方で、検察官の寺井(稲垣吾郎)は不登校になった息子の教育方針を巡って、妻と徐々に折り合いが悪くなっていき・・・

ポジティブ・サイド

通常とは異なる性的志向を持つ人々に関する映画が近年特に増えてきたと感じる。2018年公開の『 カランコエの花 』、2021年公開の『 彼女が好きなものは 』、2023年公開の『 エゴイスト 』などLGBTに焦点を当てた作品は枚挙にいとまがない。アロマンティックに光を当てた『 そばかす 』も独自の面白さがあったが、本作はさらに突っ込んだ sexual orientation をテーマに持ってきた。

 

ストーリーの中心にいるのは新垣結衣と磯村勇人。中学校の同級生だが、佳道が引っ越して以来、二人の奇妙な縁は途切れていた。しかし、佳道の両親の交通事故死と佳道の帰郷から二人の奇縁が徐々に戻ってくる。その見せ方が非常に巧みだと感じた。田舎特有の人間関係の濃密さ、つまり悪気のないプライバシーの詮索や介入が爽やかに行われる。そんな中で二人が育む奇妙な関係が逆に好ましく、愛らしく思えてくる。

 

その裏側では検察官の稲垣吾郎が不登校の息子の教育方針や子育ての方針をめぐって妻と対立する。いや、対立というよりも拒絶の方が近いか。自分の理解の及ばないものは認めない。不登校YouTuberを詐欺師と切って捨てるが、あまりにも狭量だ。YouTuberの中に詐欺師がいるのは現実だが、普通に学校に行っている、普通に会社勤めをしている者の中にも詐欺師は存在する。けれども、この男の中では世の中は白と黒で割り切れて、自分が黒いと思ったものはすべて黒いのだ。この稲垣吾郎演じる検事が一種のリトマス試験紙になっていて、見る側がどれだけダイバーシティを許容できるか、あるいは許容できないのかを測る物差しになっている。

サイドストーリーとして大学生二人の不思議な関係性もフォーカスされるが、その片方の男性が突如としてメインのプロットに絡んでくるところが非常に現代的と言える。同好の士と出会うことのハードルが下がったことは、間違いなく個人を利している。しかし、そのことが社会を利すかどうかは別問題になるのが難しいところ。

 

多様な登場人物たちの群像劇となっているのは、原作者・朝井リョウの『 桐島、部活やめるってよ 』と同じ。学校という非常に狭いコミュニティから、社会という非常に広大なコミュニティにストーリーの舞台は移っているが、ある人間の言動が別の人間に思いがけず大きな影響を及ぼしていく、という点では共通している。新垣結衣と稲垣吾郎のほんのちょっとした、しかしやや奇妙な会話が、最終盤で非常に大きな意味を持ってくる。というか、稲垣吾郎が処理しきれない意味や情報となって圧し掛かってくる。彼がほんのわずかだけ見せる動揺を我々は見逃さない。それは我々も同じく動揺しているから。常識外の存在、理外の存在と思っていた相手にこそ優しや思いやりといった人間性が宿っていると気付いた時の心情はいかばかりか。それを映し出すためだけに本作は制作されたと言っても過言ではない。

 

それにしても、マジョリティの性的志向者と超マイノリティの性的志向者の違いをあっけらかんと映し出すシーンには恐れ入った。偶然なのだろうが、『 東京ラブストーリー 』かいなというセリフを新垣結衣が口にした瞬間に、最後列の誰かがポップコーンか何かをドサッと落とした音が聞こえた。セリフに動揺したのか?トレーニングみたいというセリフが聞こえたが、慣れないうちは行為の後に筋肉痛になったという男は多いはず。こういうリアルなセリフをサラッと言えるところに異質さを感じたし、だからこそ新垣結衣が検事に託す伝言の重みが増すのだろう。

 

ネガティブ・サイド

ちょっと全体的に説明セリフが多すぎると感じた。目立ってそう感じたのは2つのシーン。一つは稲垣吾郎が不登校YouTuberについて妻と言い争うシーン。もう一つは大学の空き教室のシーン。いずれも思いをストレートに言葉にしすぎ。もっと表情や身振り手振りや立ち居振る舞いで見せてほしい。小説の映画化なので言葉に頼りたくなるのは分かるが、それだと小説を読めばすんでしまう。映像にするにあたって、もっと観客に感じ取ってもらえるような演出をすべき。

 

登場人物の行動でひとつ腑に落ちなかったのは夏月が佳道の家に突撃するシーン。同好の士、あるいは同病相憐れむ仲だと思っていた相手に裏切られたと感じたのか?普通の恋愛感情や異性への性欲が理解できないにしては、部屋の明かりが消えたことの意味を悟ったのは何故なのか?たとえば回転寿司屋で、佳道の連れの女性がセルフサービスの水を持ってくる、そして、その水を美味しそうに飲む、のようなカットが一瞬でもあれば良かったのだが。編集でカットされたのだろうか。

 

あとは夏月と佳道の生活か。卵焼きをシェアするのも良いが、たとえば風呂場やトイレ、台所で二人が恍惚とするシーンが一切なかった。または公共料金の請求書に二人して唖然とする、あるいは大笑いするのようなシーンもなかった。これも編集でカットされたのだろうか。二人がいわゆる「普通」とは違うというシーンをもう少し見せるべきだったと思う。

 

総評

かなり野心的な作品。ストーリーは文句なしに面白いし、演技に関しても安定の磯村勇人や新鋭の東野絢香が堪能できる。ただ、映画的なカメラワークはまったく無いし、とある「物」をきれいに映し出してはいるが、艶めかしさまでは感じさせなかった。物語としては◎だが、映像作品としては△か。ただし、現代的なテーマを扱い、単純なハッピーエンドで終わらせないところは買い。エンドロールの際に胸に去来する想いの強さが、おそらくその人の想像力と共感力の強さだろう。それらを測る映画であると言える。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

-phile

ファイルと読む。これは接尾辞で「~が好き」「~に親しんでいる」という意味を作り出す。Jovianが高校生ぐらいだったかな。雑誌か何かで「Xファイルの熱烈ファンをX-Phileと呼ぶ」のような記事を読んで、それで -phile の意味を学んだことを覚えている。本作の場合だと、aquaphile となるだろうか。パッと見で意味が分かりそうだが、実際に調べるのは映画の鑑賞後にどうぞ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 デシベル 』
『 花腐し 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 新垣結衣, 日本, 監督:岸義幸, 磯村勇人, 稲垣吾郎, 配給会社:ビターズ・エンドLeave a Comment on 『 正欲 』 -少し語りに頼りすぎ-

『 火の鳥 エデンの花 』 -再解釈に失敗-

Posted on 2023年11月12日 by cool-jupiter

火の鳥 エデンの花 20点
2023年11月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:宮沢りえ 吉田帆乃華 窪塚洋介
監督:西見祥示郎

兵庫県宝塚市出身の巨匠、手塚治虫の数ある作品の中でも、おそらく1、2を争うクオリティの『 火の鳥 』シリーズ、その中でも望郷編がアニメ化されたと知り、チケット購入。

 

あらすじ

辺境惑星エデンに降り立ったロミ(宮沢りえ)とジョージ(窪塚洋介)。エデンに根を下ろすべく、ジョージは水資源を探し求めるが、事故によって帰らぬ人となってしまう。身ごもっていたロミは、ロボットのシバと共に子を産み、育てることになるのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 えんとつ町のプペル 』や『 海獣の子供 』のSTUDIO4℃による映像は確かにきれいだった。漫画に描かれていなかったエデンの地上の細部や、あるいは空に浮かぶ近傍惑星の姿、さらに岩船で降り立つ星の奇妙な生態系など、このあたりの描写は漫画を映画にした甲斐があったと評価できる。

 

コム役の声はなかなかの演技。泉下の手塚治虫師も納得のパフォーマンスだったのではないだろうか。

 

ロボットのシバも声とキャラデザ、そして挙動は良かった。

 

ネガティブ・サイド

序盤のストーリー展開を改変、いや改悪してしまったのは何故なのか。手塚治虫が『 創世記 』の一節「カインはその妻を知った」に対して「その妻はどこから出てきた?そうか、こういうことか?」と考えた(かどうかは知らないが、恐らくそうだろうと想像する)その答えが、見事に否定されてしまった。色々と描くのに制約があるのは分かるが、何も直接的な行為を見せる必要があるわけではない。火の鳥という永遠の生命をもつ存在から見れば、人の生き死になど一瞬のこと。しかし、その一瞬の中にも生命は信じられないほどのドラマを生み出すのだというのが『 火の鳥 』という作品のテーマではなかったか。本作は、その信じられないドラマのパートを全部吹っ飛ばしたわけで、以後のシーンはまったく集中して観られなかった。

 

だいたい窪塚洋介の声の演技がひどい。監督は何をどう演出したというのか。宮沢りえも、個人的にはミスキャスト。本作はロミという少女が女性へと変化を遂げ、さらに老境に達しても、性質も話し方も変わらない。そこは演じ分けてほしかった。これも監督の演出なのか。

 

だいたい13年のコールドスリープと1300年のコールドスリープを間違えるか?間違えるにしても、カインもシバも13年間まったく気が付かないことなどありえるか?

 

目覚めたロミが女王として君臨する流れにも違和感ありあり。原作で描かれた禁忌が本作では存在していないため、エデンの繁栄に対してロミが何も寄与していないにもかかわらず女王として崇められるのは不自然過ぎた。

 

その後はイッセー尾形の声のキャラ以外の棒読み演技でじっくりとはとても鑑賞できず・・・ 原作から改変されたエンディングも釈然としなかった。

 

総評

様々な意味で物足りない作品。Jovianは『 火の鳥 』の中では『 未来編 』、『 黎明編 』、『 乱世編 』、『 太陽編 』が好きだが、本作は多分ヒットしないだろうし、他の『 火の鳥 』作品を現代に再解釈しようという機運の醸成にも寄与しないように思われる。うーむ、残念・・・。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

nostalgia

望郷の意味。feel nostalgic for ~ で「~を懐かしく感じる」という形でよく使われる。この語は接尾辞 -ia がついているのがポイント。英検準1級以上を目指すのなら、-iaで終わるのはだいたい、病気、地名、花の名前だと覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 デシベル 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, SF, アニメ, 吉田穂乃華, 宮沢りえ, 日本, 監督:西見祥示郎, 窪塚洋介, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 火の鳥 エデンの花 』 -再解釈に失敗-

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