Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: 日本

『とれ! 』 -平均以上の青春ホラーコメディ-

Posted on 2026年1月18日2026年1月18日 by cool-jupiter

どれ! 60点
2026年1月17日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:中島瑠菜 まいきち
監督:コウイチ

 

『 蔵のある街 』の中島瑠菜主演ということでチケット購入。

あらすじ

母親と二人暮らしの美咲(中島瑠菜)は高校卒業後の進路として心ならずも就職を希望していた。ある日、親友の皐月(まいきち)に触発されて撮影した動画に心霊現象と思しきものを捉えていたことからバズってしまう。これが収益になると思った二人は、さらなる心霊動画を撮ろうと画策して・・・

ポジティブ・サイド

主な登場人物は美咲、皐月、美咲の母、霊能者、これだけ。舞台も学校、家庭、廃墟だけ。非常にコンパクトで、人間関係も理解しやすい。

また物語もシンプル。将来に悩む女子高生が、その悩みは金で解決できると思い、動画収益で一攫千金狙いというもの。バカバカしいがリアルでもある。中島瑠菜とまいきちはそろって童顔なので女子高生っぽさがあった。

 

廃墟のシーンはそれなりに怖さの演出があった。貼り紙はけっこう古典的なネタだが、凝りすぎておらず女子高生が考え付きそうにも思える。神と悪霊、両方が憑くのは珍しい。しかも、悪霊はサラリーマンで、いかにもサラリーマンという無念と呪いに満ちている。それが滑稽というか哀れというか。悪霊に同情して、神様に怒ってしまうというのもユニークだ。

 

最後はちゃんと美咲の成長物語になっていて、ホラーっぽいオチもついた。

 

ネガティブ・サイド

ネタバレぎりぎりのラインで言えば、神様の元ネタは『 千と千尋の神隠し 』のカオナシかな。神様が憑くというアイデアは間違いなく希少性が高いのだから、そのアイデアはもっと独自に発展させてほしかった。

 

看護師の母がいて、看護師の知り合い多数のJovianからすると、奥菜恵演じる美咲の母はかなりエキセントリックに感じられた。普通の会社勤務の女性と比べると、女性看護師の未婚・独身率の低さ、かつ離婚率の高さには驚くべきものがある。さっさと結婚して、気に入らなければすぐに離婚するのが看護師である。そうした多くの看護師の中で、美咲母は草々なマイノリティだろう。

 

子どもが家の経済状態を心配するのは有難迷惑だが、ちょっとネットで看護師の収入を調べれば、音大や美大には行けなくとも、地元の公立なら十分行かせてくれると思うはずだが・・・

 

総評

ホラー風味の青春映画 feat. 家族 という映画である。インディーズっぽさ全開だが、それなりに趣向を凝らしていて楽しめる。霊能者が有能なのも珍しい。また神様が日本的な八百万の神という感じなのも個人的にはポイントが高い。個人的には中島瑠菜で本格ホラーが見たい。というか、誰か中島瑠菜で『 富江 』の新作を撮ってみてはくれないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Evil spirit, be gone!

悪霊退散の意。たしか『 パラノーマル・アクティビティ 』で使われていた。直訳すれば「邪悪な霊よ、消え失せろ」となる。除霊系のホラーでそれなりに使われている表現と思われる。ハロウィーンの時期にホラー映画マラソンをする向きは、この表現が聞こえてくるかどうか耳を澄まされたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 28年後...白骨の神殿 』
『 MERCY マーシー AI裁判 』
『 長安のライチ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, コメディ, ホラー, まいきち, 中島瑠菜, 日本, 監督:コウイチ, 配給会社:KADOKAWA, 青春Leave a Comment on 『とれ! 』 -平均以上の青春ホラーコメディ-

『 万事快調 オール・グリーンズ 』 -閉塞感を吹っ飛ばせ-

Posted on 2026年1月17日 by cool-jupiter

万事快調 オール・グリーンズ 75点
2026年1月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:南沙良 出口夏希 吉田美月喜
監督:児山隆

 

南沙良主演ということでチケット購入。

あらすじ

家ではなく路上のラップバトルに居場所を見出す朴秀美(南沙良)。母親との関係に問題を抱えるシネフィルの矢口美流紅(出口夏希)。漫画という夢を追うことためらう岩隈真子(吉田美月喜)。彼女たちは現状から脱出するために、あるビジネスに手を染めて・・・

ポジティブ・サイド

南沙良が単なる女子高生を演じていないことに安堵。本人もハンドラーたちも、少女漫画の映画化作品に主演することは演技のキャリア的に無意味であることをよくわかっている。家庭環境に問題大あり、本人の性格にも問題大ありというキャラを演じきった。小説好きとしては彼女のビブリオフィルな面は好ましいが、結局それは現実からの逃避。そのネガティブさを夜の路上でラップの即興で吐き出すという、健全とは言い難い方法でのバランスの取り方は痛々しい。が、現実的でもある。ちなみにPG12なのは、彼女が童貞や包茎というワードを口にするからではない。

 

スクールカーストのトップから転落した美流紅のキャラも好ましい。しれっと『 キャリー 』や『 哀れなるものたち 』の軽微なネタバレを挟んでくるのは微笑ましい。「TSUTAYAがなくなったら困る」というのは、最近、近所のTSUTAYAがついに閉店予定というニュースに触れたJovianに刺さった。単に知識豊富なだけではなく、しっかりと映画の台詞も自分のものにしている点がこのキャラの素晴らしいところ。『 ファイト・クラブ 』の台詞をもじって言うシーンには唸らされた。彼女のようなシネフィルが現実に存在すると信じて、Jovian先生のワンポイント英会話レッスンは続けていこうと思う。

 

岩隈子(ニックネーム)のシニカルな性格が、危ない橋を渡りたくない気持ちと、自分自身が漫画のストーリー的な世界に足を踏み入れようとするあたりから変わってくるのが心地よい。目立たないが、本作は彼女のビルドゥングスロマンの一面も持っている。活動に対してビジネスや効率化という言葉を使うことで理性的な計算の上でそうしているのだと自分を納得させているが、心が頭を上回った瞬間の笑顔は、まさに THE 笑顔 だった。

 

東海村という日本初の原子力発電所の稼働場所を舞台に、閉塞感あふれる地域と時代の空気を充満させ、それを呵々と打破しようとする女子高生たちの何と愚かで、しかし羨ましいほどに生き生きとしていることか。朴秀美という在日キャラでありながら、そちら方面のストーリーは一切なし。それもまた潔い。彼女たちの無軌道な青春をぜひ劇場で鑑賞し、その行き着く先を想像されたし。

 

ネガティブ・サイド

第4の壁を超える演出は嫌いではないが、使いどころにもっと一貫性が欲しかった。家庭環境の描写だけに使う、あるいは東海村脱出後のビジョンに対してだけ使う、というように。

 

南沙良のリズム感が残念ながらもう一つ。『 愛がなんだ 』の岸井ゆきののラップは上手かったのだと再認識した。

 

火のついた煙草をくわえながら〇〇〇〇をドバドバは無理がありすぎる。

 

総評

南沙良作品はハズレが少ない。本作は当たり。犯罪ではあるのだが、『 ナイトフラワー 』のようなどっぷり裏社会ではなく、あくまで無軌道な青春ものの範囲に収まっている。なので、ある意味、デートムービーにもなりうる。美流紅の岩隈子に教える「恋愛対象にならない男」の見分け方は、映画だけではなく買い物、食事、料理、化粧、着替えなど数多くの事柄に当てはまる。男子諸君は心して学ぶように。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make money

金儲けする、金を稼ぐの意。仕事を通じて金を得る場合、earn moneyを使う。秀美たちはmake moneyをしたわけだ。earnは earn respect, earn trust, earn credibilityのように、努力や時間を費やして何かを得る場合に使うのだと覚えておこう。make moneyではなく、earn moneyをしたいものである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 とれ! 』
『 28年後...白骨の神殿 』
『 MERCY マーシー AI裁判 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, クライムドラマ, 出口夏希, 南沙良, 吉田美月喜, 日本, 監督:児山隆, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズ, 青春Leave a Comment on 『 万事快調 オール・グリーンズ 』 -閉塞感を吹っ飛ばせ-

『 白の花実 』  -曖昧模糊もほどほどに-

Posted on 2025年12月31日2025年12月31日 by cool-jupiter

白の花実 35点
2025年12月31日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:美絽 池端杏慈 蒼戸虹子 門脇麦
監督:坂本悠花里

 

2025年の締めくくりにテアトル梅田へ。

あらすじ

心ならずも全寮制の女子校に転校してきた杏菜(美絽)は、ルームメイトの莉花(蒼戸虹子)と友達になる。しかし、莉花(蒼戸虹子)はある日、命を絶ってしまう。莉花の日記も見つかり、そこに綴られた思いに触れていく杏菜。そして莉花の魂を目にするようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

思春期の女子たち、それも生活を共にする者たち特有の距離感がよく表されている。二人部屋、三人部屋でも互いに立ち入るべきではないパーソナルなスペース(必ずしも人間のそばである必要はない)は確かにある。

 

一人でいることを好む者、集団に属すことを好む者、大人への反抗を旨とする者、そうした少女たちの思いは、それぞれが杏菜の思いの体験者であり、代弁者でもあったのだろう。

 

若いキャストばかりで浮ついた、表面的なストーリーになりそうなところを、門脇麦や河井青葉らが引き締めてくれた。

 

ネガティブ・サイド

杏菜も莉花も栞も、ちょっと演技が薄っぺらい。「発声」と「動き」を同時にできていない。これは監督の演出力の不足のせいか。

 

杏菜が霊感を有するという設定の見せ方が下手すぎるし、ドアがバタンと閉まったぐらいで大袈裟に動揺する寮生たちもどうなのか。人魂もあまりにもチープ。人魂が存在するのが悪いのではなく、それが青白く光る球体というのが陳腐すぎる。

 

女子校の寄宿舎に、仮にも父兄とはいえ、男がずかずかと上がり込めてしまうのはセキュリティ上、どうなっているのか。

 

そもそも生徒が飛び降り自殺しているわけで、そこに出てくるのが警察ではなく第三者委員会というのがおかしい。

 

門脇麦の思わせぶりな台詞や、読めそうで読めない日記の記述など、こちらが知りたいことについて、ほとんど明確な答えを得られないまま物語が閉じてしまうのは残念。もちろん、謎を謎のまま放置するのが悪いわけではない。が、明かすべき謎とそのまま残しておくべき謎の峻別が本作はあまりうまく行えていないという印象を持った。

 

総評

脚本や演出がもう一つなのだろうが、一番の問題はおそらく編集。必要なところをカットし、不要なところをつなげてしまったせいで、全体的に木に竹を接ぐようなシーンの連続になってしまった。美少女たちのやりとりで瞬間瞬間は絵になるが、観終わってみると???となる。この一作で見切りをつけるのは早計。坂本悠花里の次回作に期待をしたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

boarding school

寄宿学校の意。日本にはほとんど存在しないのではないか。Jovianは大学時代にキャンパス内の寮に4年間住んでいたので、なんとなく寄宿学校の雰囲気は分かる気がする。本作とも共通する寄宿学校の雰囲気を味わいたい向きは、ヘルマン・ヘッセの『 車輪の下 』がお勧めである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 ボディビルダー  』
『 YADANG ヤダン 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, サスペンス, 日本, 池端杏慈, 監督:坂本悠花里, 美絽, 蒼戸虹子, 配給会社:ビターズ・エンド, 門脇麦Leave a Comment on 『 白の花実 』  -曖昧模糊もほどほどに-

『 ナイトフラワー 』  -その母性は罪か-

Posted on 2025年12月22日2025年12月22日 by cool-jupiter

ナイトフラワー 70点
2025年12月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:北川景子 森田望智
監督:内田英治

 

アングラな雰囲気に惹かれ、チケット購入。

あらすじ

シングルマザーの夏希(北川景子)はバイトを掛け持ちするも生活に困窮。ある夜、違法薬物の売人から偶然に薬物を手に入れた夏希はそれを一万円で売ってしまう。そして、ふとしたことから知り合った格闘家の多摩恵(森田望智)と共に薬物の売人になることを決意して・・・

ポジティブ・サイド

シングルマザーの貧困率が5割だと報じられて久しい。そして(主に)元夫側の養育費未払い率も統計によっては9割に達するという。2024年に法改正され、今年2025年から養育費の未払い・不払いには強制執行がなされるようになったのは、蓋し良い変化だろう。しかし、本作の夏希の夫は逃げた。つまり書類上は夫婦のまま。これでは養育費は取れない。本作はそんな夏希の窮状と子育てのストレスを序盤から存分に見せつける。同じシングルマザーでも『 レッドシューズ 』とはそこが違った。

 

本作の一つのテーマに、貧困家庭と恵まれた家庭、そしてそうした家庭の親と子の関係性の対比がある。貧しい家の子がなんらかの才能に秀でていても、それを伸ばせる環境を与えるには結局財力がものを言う。芸術でも格闘技でもおなじこと。この世は結局カネなのか。本作はそれに対して明確にYesと答えつつも、カネでは決して得られないものがあることも鮮烈に描き出す。『 ヤクザと家族 THE FAMILY 』では現代に昭和的なヤクザの家族観をある意味で復活させたのが新鮮だったが、そうした価値観が普通の人々にまで及んできている、新しい形の連帯が望まれている、あるいは生まれていることを活写したのは本作の貢献の一つ。

 

メインのキャラクターの背景を掘り下げず、観る側の想像に委ねるのは吉と出れば凶と出ることもある。本作は吉。たとえば夏希が高校中退なのは何故か。明確な答えはない。ただし妊娠・出産のために中退したわけではない(年齢的に合わない)ことは分かるし、おそらく『 愛されなくても別に 』の宮田の母的な母親に育てられたであろうことは、実家に頼れないことからも想像がつく。そしてスーパーで働けば日用品や食品が従業員割引で買えることも知らない、つまりそんなバイト経験を持つ同級生や知り合い(地域の気の良いおばちゃんなど)とのつながりも持てなかったことが分かる。

 

そうした想像力を働かせることで、田中麗奈演じるもう一人の母親の心理が逆に手に取るようにわかる。非常に抑制された演技が、逆に過剰に見えるほどだった。このあたりの演出はさすがだと感じた。

 

自分および家族の幸せのためなら他者を不幸にすることを厭わないのは罪なのか。他者を不幸にする者は、別の他者によって不幸にされても文句は言えないのだろうか。そうしてまで追い求める幸福は現実なのか、それとも薬物が生み出す多幸感同様に虚構なのか。答えは月下美人のみぞ知る・・・

 

ネガティブ・サイド

母性をテーマにするのは結構だが、内田監督自身が一種のバイアスを今でもかなり引きずっているのだろうか。母性を婉曲的にではあるが、神話的に扱っているのはどうかと思う。ドラッグ製造と密売のボス的存在が「母親がまともなら自分はこうはならなかった」的に述懐するのは興ざめ。裏を返せば母親のせいで犯罪者になったと言っているのに等しく、それはもう母原病と同じで根拠がない、ただの難癖だ。

 

そんなボス的存在が素人の夏希にアジトの場所や顔を晒す?迂闊すぎるやろ・・・

 

田中麗奈演じる母親も、普通は探偵に調査プラス救出、または自分をそこに連れていってほしいと依頼するのが筋。渋川清彦演じる探偵も、なんでその写真をチョイスするのか。ホンマに元警察かいな・・・

 

総評

公開からしばらく経つのに劇場の入りはなかなか。ほとんどが女性で、10代はゼロ、20代はまばら、30~60代が大勢を占めていた。男性客は非常に少ない。それだけ本作および本作のレビューが訴えかける層がはっきりしているのだろう。社会の不条理と様々な母性を映し出す佳作であることは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

protect

多摩恵が夏希に言う「守ってやるよ」を英訳すると、I’ll protect you. となる。守るには、defendやguardなどの似た動詞があるが、protectは危険から守る、defendは攻撃から守る、guardは安全のために守るということ。野球の捕手や主審がプロテクターをつけるのは投球や打球が危ないから、サッカーやバスケのディフェンスは敵の攻撃に対する守備、ガードレールは交通安全ためにある、という感じで覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ナタ 魔童の大暴れ 』
『 星と月は天の穴 』
『 ボディビルダー  』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 北川景子, 日本, 森田望智, 監督:内田英治, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 ナイトフラワー 』  -その母性は罪か-

『 TOKYOタクシー 』 -見え見えの結末とそれなりの感動-

Posted on 2025年12月12日2025年12月12日 by cool-jupiter

TOKYOタクシー 65点
2025年12月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:倍賞千恵子 木村拓哉 蒼井優
監督:山田洋次

 

『 こんにちは、母さん 』は吉永小百合だったのでスルーしたが、こちらは倍賞千恵子なのでチケット購入。

あらすじ

タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は高野すみれ(倍賞千恵子)を神奈川の施設まで送ることになった。すみれの頼みで道中、二人は東京の各地に寄り道をしていく。そんな中で、すみれは徐々に自らの過去を語り始めて・・・

 

ポジティブ・サイド

東京の柴又から出発するロードムービーというのがいい。『 男はつらいよ 』へのリスペクトになっているではないか。長逗留しては去っていき、また戻ってきては長逗留して、という風来坊の寅さんと、柴又から恒久的に去っていくさくら・・・じゃなかったすみれの姿に、それだけでウルっときてしまった。

 

タクシーの客と運転手が、いつしか人生を振り返り、語り合い、忘れえぬ時間を作っていく。陳腐ではあるが、その人生が激動の昭和そのものと重なったとき、多くの不幸が襲ってくる。Jovianが小学生の時に昭和は終わったが、それでも学校教師などの理不尽な暴力は中学生ぐらいまでは普通にあった。ということは、家庭内では言わずもがな。

 

すみれの若い頃を蒼井優が好演。男に頼って生きるのが既定路線だった時代、女性が自分というものを持てなかった時代に、それでも自分の生きざまを守ろう抗った姿には素直に胸を打たれた。反撃シーンでは観ているこちらの息が止まりそうになった。男性諸氏は、このシーンを息を止めて観られたし。

 

倍賞千恵子の矍鑠とした語り口とたたずまいが、木村拓哉のどこか疲れた中年男との対比を際立たせていて、それがゆえに見え見えの結末ではあるものの、そのインパクトがより強くなっている。終活なる言葉があるが、人生を終えようかという老境に差し掛かると、人はどうしても自分の人生を振り返りたくなるものらしい。自分の人生は、誰かに、あるいはこの世界に何かを残せるだろうか。そんなことを考えさせられた。

 

ネガティブ・サイド

すみれの男を見る目の無さが気になった。どう見ても地雷なのに・・・ 観客の方にも好青年然とした姿を見せておき、結婚後に本性を現す、という形にすべきだったのでは。

 

タクシーの中で若き日のすみれと老いたすみれが向き合うシーンは、正直蛇足に思えた。

 

キムタクが父親として、ちょっとだらしなさすぎ。夫としてだらしないのはいい。ただ、父親として、娘の学費その他もろもろに関してあまりに感度が低い。高校の入学金と授業料でたじろいでどうする?3年後には大学も待っているのに・・・ だからこそ結末が光ると言えば光るのだが。

 

総評

最初の10分でほとんど結末まで見えてしまうのだが、それでもそれなりに心動かされてしまう。脚本の力、もっと言えばオリジナルのフランス映画にそれだけの力があるのだろう。戦後80年というが、ちょっと前まで大学生相手に教えていた身からすると、大学生たちは2000年以降生まれということに衝撃を覚えたものだった。そんな若い世代にこそ観てほしい、時代の移り変わりを見事に切り取った作品だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

liberation

劇中で語られるウーマン・リブとは Women’s Liberation のこと。1960年代のアメリカから全世界に伝わったとされる。解放の度合いが高いものから順に freedom, liberation, emancipation となる。これらの単語をパッと使って口頭英作ができれば、英検準1級以上である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ナイトフラワー 』
『 WEAPONS/ウェポンズ 』
『 シェルビー・オークス 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 倍賞千恵子, 日本, 木村拓哉, 蒼井優, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 TOKYOタクシー 』 -見え見えの結末とそれなりの感動-

『 果てしなきスカーレット 』 -チンプンカンプン物語-

Posted on 2025年11月23日 by cool-jupiter

果てしなきスカーレット 20点
2025年11月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:芦田愛菜 岡田将生
監督:細田守

 

男性看護師の異世界転生ものだと思い、チケット購入。

あらすじ

父王を陰謀で処刑し、王位を簒奪した叔父クローディアスの暗殺に失敗したスカーレット(芦田愛菜)は、逆に毒を盛られ、死者の国で目覚める。だが、そこにクローディアスもいることを知ったスカーレットは復讐のために旅立つ。そして、その途上で看護師の聖(岡田将生)と出会い・・・

 

ポジティブ・サイド

アニメーターが描きたいと思ったシーンを詰め込んだことはよくわかった。砂漠、星空、中世風の建築物など、グラフィックは美麗だった。

 

後はアクションがスピーディーで多彩だったぐらいか。

 

以下、メジャーなネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

とにかく全体的にストーリーも、キャラの設定もよくわからない。

 

序盤に出てくる婆さんは『 幻魔大戦 』冒頭の謎のテレポーテーション婆さんそっくりで、思わせぶりな台詞ばかり吐くところも同じ。つまり面白くない。死者の国と言いながら、生と死が溶けあうと矛盾することを言い、生と死が溶けあうと言いながら、生者は限られた時間しか存在できないと言う。いやいや、過去も未来も時間もない世界ちゃうんか?

 

復讐の鬼のスカーレットが、聖が手当てをするために服の袖をハサミで切るシーンで、顔を赤らめて「恥ずかしい・・・」などと言う演出は必要か?触手のような無数の腕に体を絡めとられて絶叫する場面は必要か?執拗に「生きたい、生きたい」と大声で何度も叫ぶシーンも必要か?

 

そもそもスカーレットと聖の関係の変化を描く具体的なエピソードがまったくないままに、いつの間にやら距離が縮まっているように見えるのは編集のミスなのか、それとも脚本段階でのミスなのか。

 

聖の歌を聞いて、なぜか意識が別世界へワープするスカーレットには( ゚Д゚)ハァ?である。しかもそのシーンが完全に『 2001年宇宙の旅 』のスターゲイトのパクリ。SFならオマージュと言えるが、ファンタジー。それもアニメでやるならそれはパクリだ。しかも、たどり着いた先で、訳の分からんダンスを見せられても困惑させられて、困惑させられるのはスカーレットではなく観客だ。

 

訳の分からん巨大竜が空を飛び、雷で悪人を消し去っていくのも、あまりにもご都合主義。そして刺客が次々に味方になってくれるのもご都合主義。大軍勢が山を守っているという情報に途方に暮れながら、どういうわけかそれ以上の民主の大群があっさり防衛線を突破するのもご都合主義。ここでこそスカーレットが、亡き先王の遺志を継ぐものとして、ジャンヌ・ダルクよろしく救世主として烏合の衆を一軍にまとめあげるか?と思わせて、それもなし。

 

王として即位する時、ほとんど何の抵抗もなく民衆の支持を手に入れるが、実力とカリスマを披露をすることなく、きれいごとで民の信頼を得るという流れは、一庶民としては( ゚Д゚)ハァ?である。

 

『 フロントライン 』のDMATとドクターカーは別物だが、緊急性の高い現場に向かうという点では同じ。そこで主力となるのは30代、40代。聖には悪いが若すぎる。『 いのちの停車場 』で広瀬すずが訪問看護師をやっていたのも( ゚Д゚)ハァ?だったが、それと同じ。聖に関しては異世界の戦闘で傷ついた人にもすぐに駆け寄り、治療や看護を提供できるという意味でドクターカーナースという設定にしたのだろうが、あまりにも安易。40歳ぐらいの脂ののったナースが、徐々に父の代わりになっていくという筋立てを追求すればよかった。安易にロマンス要素を混ぜるからおかしくなる。こうして見ると同じファンタジーアニメでも『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』のMTJJは、ルーイエについて極めて正しい描写をしたと言える。 

 

観終わって妻と二人で何とも言えない気持ちになった。

 

総評

散髪屋のラジオでDJが「試写会で観て面白かった」というのでチケットを購入したのだが、クソDJめ、騙しやがったな・・・というのはお門違い。結局、自分の見る目がなかったということ。封切の日のレイトショーで観客が10人以下、そのうちの半分がエンドクレジットで席を立ったところから、本作のクオリティは推して知るべし。賢明なる映画ファンにおかれては、本作を鑑賞して時間とカネの両方を無駄にすることなかれ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

No lessons. I need to cleanse my palate right away.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ひとつの机、ふたつの制服 』
『 ある精肉店のはなし 』
『 栄光のバックホーム 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, アニメ, ファンタジー, 岡田将生, 日本, 監督:細田守, 芦田愛菜, 配給会社:ソニー・ピクチャーズ, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 果てしなきスカーレット 』 -チンプンカンプン物語-

『 もののけ姫 』 -4Kデジタルリマスター上映-

Posted on 2025年11月13日2025年11月13日 by cool-jupiter

もののけ姫 90点 
2025年11月9日 Tジョイ梅田にて鑑賞 
出演:松田洋治 石田ゆり子 
監督:宮崎駿


4Kデジタルリマスター上映ということで、少々値は張るが迷わずチケットを購入。

あらすじ

東国の勇者アシタカ(松田洋治)は、村を襲ったタタリ神を討ち、呪いをもらってしまった。掟に従い村を去ったアシタカは、呪いを解く術を求めて西国に旅立つ。その旅先で、森を切り拓き、鉄を作るたたら場とそこに生きる人々、そして山犬と共に生きる少女サン(石田ゆり子)と出会う・・・

ポジティブ・サイド

詳細は『 もののけ姫 』を参照のこと。

DolbyCinemaの追加料金600円で、チケット一枚2800円だったが、劇場は半分ぐらいは埋まっていた。しかも若い世代が多い。10代、20代のカップルの姿も。

イーマの6階のトイレ前で妻を待っている間、多くの観客が感想を口にしながらエスカレーターを降りていった。「美輪明宏さんの収録、YouTubeで観たけどすごかった」とか「あの歌手の人、こめよしさん?歌声やばい」とか。『 ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 』の時も大きな声で感想を述べ合うグループがいたが、傑作を観ると人はどうしても語りたくなってしまうのだろう。

『 羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来 』、『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』ともに傑作だが、本作はやはりそれよりも上の作品だと感じた。妖精と人間の共存か併存か、森の精と人間の共生か。テーマは似通っているが、その見せ方は全く異なる。人間に師事する妖精のシャオヘイと、山犬を親と慕う人間サンは、人間に対して全く異なるアプローチを見せる。シャオヘイの言う「僕は正しい者の味方だ」というのは強者の論理。サンが言う「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない。」という矛盾こそが、共生の本質なのではないかと思う。すなわち互いに憎み合い、傷つけ合うことも含めて、共に生きていく。生きることは傷つけ、傷つけられること。しかし、生きていれば何とかなる。なんという矛盾。しかし、なんという真理だろうか。

ネガティブ・サイド

詳細は『 もののけ姫 』を参照のこと。

総評

コロナ禍の折、「一生に一度は、映画館でジブリを」というキャンペーンがあったが、5年に1度はそうした取り組みがあってもいい。午前10時の映画祭みたいに、過去の名作や傑作を大スクリーンと大音響で蘇らせることには大きな意義がある。『 羅小黒戦記 』は中国の力というよりは制作会社の力が飛び抜けているらしいが、そのあたりもジブリと似ている。二作を見比べるのも面白いだろう。Jovianも近々、小黒2の字幕版を観に行く予定である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

win out

最後に勝つ、の意味。ジコ坊の「馬鹿には勝てん」の私訳として、Fools win out in the end. としてみたい。馬鹿に勝てないのは誰かというよりも、馬鹿が最後に勝つというニュアンスにしてみた。win には win against や win back、win over などの句動詞がある。これらを使えれば英検準1級、使いこなせれば英検1級である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 ミーツ・ザ・ワールド 』
『 ひとつの机、ふたつの制服 』
『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 <字幕版> 』.

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, S Rank, アニメ, ファンタジー, 日本, 松田洋治, 監督:宮崎駿, 石田ゆり子, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 もののけ姫 』 -4Kデジタルリマスター上映-

『 爆弾 』 -佐藤二朗のベストアクト-

Posted on 2025年11月2日 by cool-jupiter

爆弾 75点
2025年10月31日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:佐藤二朗 山田裕貴 渡部篤郎 染谷将太 
監督:永井聡

 

『 死刑にいたる病 』的な面白さを期待してチケット購入。その望みは叶えられた。

あらすじ

酔って暴れた酔っ払いの鈴木田吾作(佐藤二朗)を逮捕、取り調べしていく中で、刑事の等々力(染谷将太)は鈴木の言動に不穏な気配を感じとる。そんな中、鈴木が予言した爆発が実際に起こってしまい・・・

ポジティブ・サイド

東京各地にストーリーそのものは展開するも、大部分は取調室の内部で進行していく。その中で行われる刑事と被疑者の演技対決が心地よい。染谷将太、渡部篤郎、山田裕貴が佐藤二朗に対峙していき、全員が見事に立ち向かいつつ、巧みに佐藤二朗を引き立てた。といっても、佐藤自身も今回の役は『 さがす 』や『 あんのこと 』以上にダークで、自身の代表作になったと自負しているに違いない。

 

意味不明な問答の繰り返しに謎解きと心理戦を織り交ぜていく。それ自体はよくある手法だが、そこから導き出される「心の形」には唸らされた。警察官が家族や友人など、私=プライベートの部分を突かれると弱かったり、あるいは闇落ちしたりするのはハリウッドでは常套手段套手段だが、警察としての使命感や正義感の歪みをストレートに指摘してくる作品は珍しい。小説の映画化とはいえ、それが邦画で達成されたことは素直に喜びたいと思う。

 

いつも何かあれば怒鳴るだけの染谷将太が、非常に陰のあるキャラを演じていたのも好印象。何を考えているのかわからないが、職務上でリスペクトできる相手にはしっかりと向き合うという、一種のプロフェッショナリズムというか、ダンディズムを備えたキャラを演じきった。

 

対照的に、上司を立てつつも本当は自分の方が有能だという自負を隠さない類家というキャラも味わい深かった。「自分以外の人間が馬鹿に見える」という指摘を受けても、それを否定せずに飄々と受け流す。丸メガネをかけても、その炯々たる眼光はいっさい隠せていない。感情移入するには難しいキャラだが、だからこそ観る側は類家と鈴木の対決を文字通りに傍観者として見守るしかない。そこから生まれる謎とサスペンスは近年の邦画の中でも出色。

 

1回戦、2回戦、3回戦と対決を経るごとに謎が明かされ、そして謎が深まっていく。サスペンスがまったく途切れず、2時間超でもスイスイと鑑賞できた。類家と等々力の二人で続編というか、スピンオフを作ってほしい。そう思えるほど、ストーリーだけではなくキャラの魅力にもあふれた逸品だった。

 

ネガティブ・サイド

警察は事件の話を外でもしないし、家庭内でもしない。もちろん刑事も人の子で、家族には一般的な捜査の手法ぐらいは話すかもしれない。しかし警察という組織がどのような手順で動くのかなどを話すわけがない。

 

そもそも某キャラも家族を想っている描写を見せつつも、やってしまったことは家族を追い詰める行為。こんな警察官いるか?

 

爆弾についても同じで、かなり不自然。爆弾そのもののアイデアはなかなか洒落ているが、それらがあのタイミングであんな風に爆発するわけがない。

 

総評

よくよく考えればおかしい点はいくつもあるものの、謎とサスペンスが矢継ぎ早に提示されていくので、鑑賞中はとにかくストーリーに没頭できる。佐藤二朗は50代にしてキャリアの代表作が生まれたし、山田裕貴は次は経済ヤクザか殺人犯役かな。一部でグロいシーンがあるが、気になる向きはそのシーンだけ片目をつぶればよい。案外、デートムービーに良いかもしれない。恋人あるいは恋人未満の相手と一緒に見たら、間違いなく心拍数が上がるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go down in history

歴史に名を残す、の意。Jovianの元同僚の英検1級保持者(予備校講師上がり)が知らなかった表現。世間では早くもクリスマスケーキの予約が始まったが、とあるクリスマスソングを英語で歌えば、この表現が出てくる。街中のBGMに耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 羅小黒戦記2 』
『 代々木ジョニーの憂鬱な放課後 』
『 ミーツ・ザ・ワールド 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ミステリ, 佐藤二朗, 山田裕貴, 日本, 染谷将太, 渡部篤郎, 監督:永井聡, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 爆弾 』 -佐藤二朗のベストアクト-

『 恋に至る病 』-近年まれにみる駄作-

Posted on 2025年10月28日 by cool-jupiter

恋に至る病 15点
2025年10月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山田杏奈 長尾謙杜
監督:廣木隆一

 

『 ミスミソウ 』や『 屍人荘の殺人 』、もしくは『 死刑にいたる病 』のようなテイストを期待していたが、全然違う作品だった。端的に言って残念な出来である。

 

あらすじ

親の転勤のため転校を繰り返してきた望(長尾謙杜)は、隣家の住人で新しい学校のクラスメイトの景(山田杏奈)と出会う。二人の距離は近づいていくが、それを快く思わない人物もいて・・・

ポジティブ・サイド

序盤で景が万物流転やら諸行無常など、理解しているのか怪しい概念を口にするが、サルトルのアンガージュマンの考え方を述べたのにはびっくりした。対象は限られると思うが、哲学専攻の大学生は鑑賞時に耳を澄ましてみよう。

ネガティブ・サイド

キャラクター同士の関係の始まり、その変化や深化がまったくと言っていいほど描けていない。たとえば望がクラスの女子を下の名前で呼んだりする契機を景と絡めて描けば、それも景というキャラの深堀りにつながっただろうに。

 

ブルーモルフォの設定も意味不明。なるほど、ソシャゲでログインボーナスをもらい続けているうちにやめられなくなるということはある。しかし、デイリーミッションをこなしているうちにやめられなくなるというのは、何らかの reward なしには考えられない。そのリワードが何であるのかが暗示すらされないのでは、ブルーモルフォの恐怖が伝わってこない。

 

そのブルーモルフォ絡みの殺人事件でも、クラスメイトばっちりニュース映像に映し出されているのに「クラスターが云々」やら「何でも知ってるね!」やら、アホかな?いや、それが景の人心掌握術だというならいいが、だったらそういうシーンを事前に入れておいてくれ。たとえば額の傷の治りが不安になって、それを女子連中にLineか何かで打ち明けて、取り巻き女子たちも同じような傷を自分でつけて・・・のような描写があれば、クラスが狂っていくスタートとしては悪くなかっただろう。

 

いじめのシーンもえらい中途半端。せっかくのPG12なのだから、もっと陰湿かつ痛みを感じさせる描写が欲しかった。それよりも、根津原の頭が悪すぎて呆れるしかなかった。自分でいじめの証拠を写真にして、それを自分で拡散するとかアホかな。前田敦子演じる刑事も、望に色々尋ねる前に現場(防犯カメラの映像や結婚のような証拠が死ぬほど残っていると思われる)の周辺をくまなく洗え。とことん無能臭を放つ刑事だったな。

 

兎にも角にも望と景の関係の描写があまりにも薄く、足りない。その一方で無駄なシーンが多すぎ。先輩の話とかいらんやろ。その先輩も、あんな小さな凶器であんな凶行は無理。ペーパークラフトではなく、せめて彫刻でも作らせておくべきだった。

 

引きのカメラからのロングのワンカットを多用していて、なにか作劇的な意味があるのかと思ったが特になし。カメラワークには意図を込めるべし。また、イッてしまったキャラは皆、アップで顔を映していたが、そこで瞬きするキャラとしないキャラ、また瞬きしないキャラも耐え切れずに最後に瞬きしてしまうなど、演技・演出の両面で課題を残した。

 

総評

観ていて苦痛を感じるほどつまらなかった。山田杏奈は好きな役者だが、今回はミスキャスト。血なまぐさい役は似合うが、一種のカリスマ性というか、魔性の女としては弱い。望を演じた役者もアイドルか?セリフ回しが拙すぎる。童顔だけで起用されたのだろうか。中高生ならそれなりに楽しめるのかもしれないが、大人にはきつい。チケット購入の前に、よくよく検討のこと。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

morpho

作中では蝶の名前として言及されるが、これはギリシャ語で「形」の意味。蝶といえば卵→幼虫→さなぎ→成虫と形を変える代表選手である。ちなみに英語学習界隈で時折見られる「語源から単語を覚えよう」で言われる語源とは、ほとんどの場合、実は語源ではない。それらはたいてい接頭辞、語幹、接尾辞で、これらは morpheme = 形態素の仲間である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 羅小黒戦記2 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, F Rank, サスペンス, 山田杏奈, 日本, 監督:廣木隆一, 配給会社:アスミック・エース, 長尾謙杜Leave a Comment on 『 恋に至る病 』-近年まれにみる駄作-

『 秒速5センチメートル(2025) 』 -男の女々しさを描き出す-

Posted on 2025年10月21日2025年10月21日 by cool-jupiter

秒速5センチメートル 70点
2025年10月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松村北斗 高畑充希 上田悠斗 白山乃愛
監督:奥山由之

 

妻の「これ観たい」の一言でチケット購入。

あらすじ

プログラマーとして働く遠野貴樹(松村北斗)は、常に過去にとらわれていた。それは東京の小学校に転校してきた篠原明里(白山乃愛)との記憶だった。同じく転校生だった貴樹(上田悠斗)は彼女と交流を深めていく。しかし、明里はまたも引っ越すことになり・・・

ポジティブ・サイド

よくあんな気持ち悪い(思春期男子的に)アニメを実写化しようとしたなと思うが、これがいい感じに仕上がっているのだから大したもの。脚本と監督が原作に必要以上に忠実にならなかったことが成功の要因であるように思う。

 

大人になった貴樹と明里の対称的な日常への向き合い方を淡々と描写していくのが良かった。基本的には貴樹の物語は『 僕の好きな女の子 』で、乃愛の物語は『 ちょっと思い出しただけ 』だと思えばいい。

 

ただし、そこに思春期特有の甘酸っぱさと、ちょっとしたファンタジー要素というか、セカイ系的な要素が混じっている。ひたすら内省的になりがちな貴樹を、上司が適度に現実につなぎとめている。このあたり、松村北斗出演の傑作『 夜明けのすべて 』の上司や彼女未満の同僚との関係性にそっくりで、大人になり切れない男の典型というか、普遍的な在り方の一つなのだろう。

 

では、大人とは何か?この問いが発せられる文脈によって答えは様々だが、思い出に執着することなく、感謝できるようになることではないだろうか。プラネタリウムで見せる貴樹の涙は彼の成長のひとつの証であり、『 君の膵臓をたべたい 』の春樹の涙に匹敵するシーンだったと感じた。

 

電車、ロケット、探査機など、常に境界を越えて移動していくギミックが、貴樹と明里の関係を象徴化している。一度は忘れかけていた存在を、時速5キロメートルで思い出すシーンは印象的だった。確実に前に進む女と一向に前に進めない男の対比。そんな貴樹が遅ればせながらも前に進んでいくことを決意するシーンは白眉。「好きだった」と伝えられるのは、好きではなくなったからではなく、好きだったという気持ちを客観視できるようになったから。切なくもさわやかなビルドゥングスロマンだった。

 

ネガティブ・サイド

ペーシングに難あり。種子島をもう少し圧縮(煙草のエピソードなんかあったか?)したり、本屋でのニアミスを削ったりして、全体を1時間50分にまとめられれば、間延びしているという印象は生まれなかったのでは?

 

上田悠斗→松村北斗は理解できるが、上田悠斗→青木柚と青木柚→松村北斗はつながらない。もっとビジュアル的に適した役者はいなかったのか。白山乃愛→高畑充希も、ちょっと無理があった。

 

総評

矛盾するように聞こえる、かつセクシストにも聞こえかねないが、男が本来的に持つ女々しさを原作アニメ以上に巧みに、しかし控えめに、かつ確実に描出していると感じた。男は「名前を付けて保存」、女は「上書き保存」とはよく言ったもので、そのコントラストをやや冗長ながらもロマンチックに、かつドラマチックに描いている。デートムービーに向くかはわからないが、おっさん世代には刺さるのではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

railroad crossing

踏切の意。物語の中で踏切をフィーチャーしたシーンが2つある。あちら側とこちら側をへだてる象徴で、非常に印象的なシーンである。都市部では高架化あるいは地下化が進んでいるとはいえ、鉄道大国日本にはまだまだたくさんの踏切がある。これを機に覚えておこう。ちなみに横断歩道は pedestrian crossing と言う。併せて覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 恋に至る病 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ラブロマンス, 上田悠斗, 日本, 松村北斗, 白山乃愛, 監督:奥山由之, 配給会社:東宝, 青春, 高畑充希Leave a Comment on 『 秒速5センチメートル(2025) 』 -男の女々しさを描き出す-

投稿ナビゲーション

過去の投稿

最近の投稿

  • 『 長安のライチ 』 -すまじきものは宮仕え-
  • 『 Osaka Shion Wind Orchestra ドラゴンクエストコンサート in 大津 』  -DQ Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ-
  • 『とれ! 』 -平均以上の青春ホラーコメディ-
  • 『 万事快調 オール・グリーンズ 』 -閉塞感を吹っ飛ばせ-
  • 『 悪魔のいけにえ 』 -4Kデジタルリマスター鑑賞-

最近のコメント

  • 『 桐島です 』 -時代遅れの逃亡者- に ヒフミヨのヒンメリの歌灯に より
  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より

アーカイブ

  • 2026年1月
  • 2025年12月
  • 2025年11月
  • 2025年10月
  • 2025年9月
  • 2025年8月
  • 2025年7月
  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme