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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: サスペンス

『 悪鬼のウイルス 』 -細かい点には目をつぶるべし-

Posted on 2024年6月6日 by cool-jupiter

悪鬼のウイルス 50点
2024年5月19日読了
著者:二宮敦人
発行元:TOブックス

 

特急「こうのとり」の車内で読了。



あらすじ

智樹断ち高校生は夏休みに陸の孤島の石尾村を訪れた。そこは、子どもたちが武装し、大人たちを地下に監禁する恐怖の村だった・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤から目をそむけたくなるようなシーンのオンパレード。殺人シーンだけではなく、汚物まみれの部屋での残飯食いや死体処理など、一歩間違ったら・・・ではなくて、もう一段描写力を上げれば和製クライヴ・バーカーになれるのでは?このシーンで読むのをやめない物好きな読者なら、最終盤までの一気読みはほぼ確定だろう。

 

また中盤以降はキャラクターのセリフと心情描写を多めにして、readabilityをアップさせている。特に主人公側の某キャラが発狂していく過程はぐいぐい読ませる。

 

さらに強固なシステムに支えられた村が一挙に崩壊していく様も迫力満点。こういったところに着目すれば、低予算でもそれなりにスペクタクルな映画を作れるのでは?と考えてしまうのも無理からぬことかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

智樹が高校生離れした数々の知識とスキルの持ち主であることに白けてしまう。お前は小林少年なのか?

 

あらすじにある「村の壮絶な過去を知るとき、日本中が鬼の恐怖に侵される!」などという展開は存在しない。それともこれはまだ公開前の映画版のあらすじなのか?いずれにしろ、編集者はまともな仕事をすべし。

 

また「たった一度、嘘をついただけで人生のすべてが崩れ落ちる恐怖」という帯の惹句も壮大なネタバレ。編集者、ちゃんと仕事しろ。

 

後は「腐り鬼」の真相かな。〇〇を一人にするのではなく、△世代にわたって□□していた、のような設定なら、もう少し真実味を増せただろうに。

 

総評

実写映画化よりも、むしろ深夜アニメ化すべきでは?超絶グロ描写をどう撮ったのか?秀作ホラー小説『 水霊 ミズチ 』を凡作ホラー映画『 水霊 』に変えてしまったように、坂東眞砂子の土着ホラー『 狗神 』の同名映画化作品のように、内容も表現もマイルドにしてしまったのだろうか。おそらくだが「読んだら観るな、観てから読むな」になるような気がする。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

endemic

パンデミックが世界的流行というのは今や常識。こちらのエンデミックは風土病の意味。これらの語に含まれる dem はデモクラシーの dem、つまり demos = 人々の意。democrasy = 民主主義にも、dem がしっかり見て取れる。

 

悪鬼のウイルス (TO文庫)

悪鬼のウイルス (TO文庫)

  • 作者:二宮敦人
  • TOブックス
Amazon

 

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Posted in 国内, 書籍Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, ミステリ, 日本, 発行元:TOブックス, 著者:二宮敦人Leave a Comment on 『 悪鬼のウイルス 』 -細かい点には目をつぶるべし-

『 オッペンハイマー 』 -伝記映画の傑作-

Posted on 2024年4月7日 by cool-jupiter

オッペンハイマー 80点
2024年4月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キリアン・マーフィー
監督:クリストファー・ノーラン

 

『 ソウルメイト 』や『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』を立て続けに鑑賞して、やや面白不感症気味になっていたが、本作はめちゃくちゃ面白かった。

あらすじ

物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、第二次世界大戦中のアメリカでマンハッタン計画の責任者に任命される。職務に邁進するオッペンハイマーだが、複雑な人間関係や敵対国ドイツ、同盟国ながら共産主義国家であるソ連との競争にもその身を投じていくことになり・・・

ポジティブ・サイド

なんとも重厚かつ長大な物語だった。オッペンハイマー目線での過去と現在が頻繁に行き来し、なおかつ科学者としてのオッペンハイマーだけではなく家族人(だが決して典型的なファミリー・マンではない)として実像や、一人の男として、あるいは軍事や政治におけるポスター・ボーイとして、あらゆる面が映し出されていた(ちなみに本作が鑑賞しづらかったという向きには『 インセプション 』を観てからの再鑑賞をお勧めする)。まさに伝記映画の超大作だった。

 

冒頭から原子の世界のイメージや恒星の活動や死滅のイメージがオッペンハイマーの頭の中でありありと生起されていくところが観客に共有される。これだけ想像力豊かな人物が広島や長崎で起きたことを想像できなかったということの重みは計り知れない。「原爆被害に対する描写がないのはけしからん」と気色ばむ方々は、まず第一に本作はオッペンハイマーの伝記であって、彼は戦時中、あるいは戦争直後に日本を訪れていないということを知るべきだ。また作中でも色濃く描かれているが、オッペンハイマーは非常に想像力豊かな人間で、外国に対して関心と敬意を抱き、自らのユダヤ系のルーツから差別に対しても寛容ではなかったと描かれている。そんな彼がヒロシマやナガサキの惨状を頭の中で思い描けなかったということは、繰り返しになるが、それだけ重いことなのだ。

 

実は国際基督教大学の第一男子寮の一つ上の先輩がロスアラモスで研究員をやっている(ちょっとググれば出てくるし、ご本人も全く隠していない)。2023年11月にその先輩たちとZoom飲み会をした際に、本作の出来(≠内容)やアメリカでの受け止められ方を少しだけ聞くことができた(が、それは興味のある人が自身で調べればいいだろう)。

 

Jovian自身は大学時代に多くの留学生たちと一緒に『 火垂るの墓 』を鑑賞した後、とあるアメリカ人から “Why did you not surrender earlier?” と言われたこと、そして前の職場の同僚アメリカ人に “If Japan had nuclear weapons, they would have used them.”(アメリカ人は仮定法を正しく使えないのだ)と言われたことは、今でもはっきり覚えている。 一部の日本人は自分たちが戦争の被害者として正しく扱われていないと感じたいようだが、自分たちに自分たちなりの歴史認識があるように、相手にも相手なりの歴史認識がある、ということは理解すべきだ。

 

あまり映画の感想になっていないが、ヒロシマ、ナガサキに続いて福島がフクシマになりかけた日本は、オッペンハイマーの想像した破滅のビジョンに対してもっと敏感であってしかるべきと思う。批判する前に鑑賞しよう。鑑賞してから批判しよう。

ネガティブ・サイド

当時のロスアラモスにも間違いなく「研究できればそれでいいや」というマッドサイエンティストがいたはず。そうした無邪気な(だからこそタチが悪い)科学者とオッペンハイマーの対比が欲しかった。そこの描写は不十分であったように感じた。

 

アカデミーが助演男優賞を送るとしたら、ダウニー・Jr よりマット・デイモンの方がふさわしかったのではないだろうか。

 

総評

180分という上映時間も2時間程度に感じられた。それだけ密度の濃い映画だった。オッペンハイマーの生涯を描いた本作からは様々な教訓が得られる。それは観る人の年齢、性別、職業、問題意識によって異なる。一つ言えるのは「想像力を持つこと」の重要性。より良い未来を想像するのか、より悪い未来を想像するのか。自分の仕事や人生について深く考えるきっかけをもたらしてくれる傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Your reputation precedes you

直訳すれば「あなたの評判はあなたに先行しています」で、あなたがここに来るより先にあなたの評判が届いていますよ、ということ。『 トップガン マーヴェリック 』でもサイクロンがマーヴェリックに全く同じセリフを言っていた。ちょうど異動の季節なので、噂の新戦力がやって来た時などに使ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 変な家 』
『 パスト ライブス/再会 』
『 あまろっく 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, キリアン・マーフィー, サスペンス, 伝記, 歴史, 監督:クリストファー・ノーラン, 配給会社:ビターズ・エンドLeave a Comment on 『 オッペンハイマー 』 -伝記映画の傑作-

『 落下の解剖学 』 -真実を知るは犬のみ-

Posted on 2024年3月9日2024年3月9日 by cool-jupiter

落下の解剖学 70点
2024年3月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ザンドラ・ヒュラー ミロ・マシャド・グラネール スワン・アルロー
監督:ジュスティーヌ・トリエ

 

『 ある閉ざされた雪の山荘で 』は地雷臭がプンプンしていたが、こちらは面白そうだと思ったのでチケット購入。実際にかなり面白かった。

あらすじ

雪山の山荘で視覚障がいを持つダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は転落死した父親を発見。当初は事故死かと思われたが、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻である作家サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に疑いがかけられて・・・

 

ポジティブ・サイド

少ない登場人物でミステリーやサスペンスを生み出すのはカトリーヌ・アルレーやボワロー=ナルスジャックが得意としたところでフランス小説のお家芸。そうしたエッセンスは本作にも見られる。

 

注目すべきキャラは息子ダニエル、母サンドラ、弁護士のヴァンサン、検事、そして犬のスヌープ。これだけ。法廷以外のパートで夫の死の真相を暗示するようなシーンなどは見当たらなかったので、本作はミステリーではなくドラマとして見るべきだろう。それも上質な法廷ドラマで、その法廷の弁論の中で、夫婦の確執が次々に明らかになっていく。

 

この二人、元々は国際結婚。ドイツ人妻とフランス人の夫が英語でコミュニケーションを取っているが、そこで交わされる会話から、夫と妻のそれぞれが抱えていたストレスが露になっていく。Jovianは正直、夫にかなり感情移入したが、Jovian妻は終始妻サンドラ側に立って見ていたとのこと。何を言ってもネタバレになるのでこれ以上は書けないが、法廷で録音が再生されるシーンがめちゃくちゃ面白いということだけは強調しておきたい。

 

もう一つ本作で注目すべきは犬。犬にここまでの演技ができるとは驚異的の一語に尽きる。特にとあるシーンで臥せったスヌープがいわくありげな上目遣いをするシーンには震えた。『 落下の解剖学 』というタイトルの落下は、第一義的には夫の転落を指すのだろうが、上から下に落ちたものはそれだけなのか。今は上にあって、これから下に落ちることになるものは何であるのか。そうした視点で本作を鑑賞してみてほしい。

 

解剖学というタイトルの言葉通り、人間、就中、夫婦の内面に鋭くメスを入れる秀作である。それ以上に、事実は一つ、真実は複数。では、それらの真実の中から自分はどれを選ぶのか。ある意味で本作は究極のビルドゥングスロマンとも見なしうるのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

序盤が少々退屈。もちろん夫のDIYや妻のインタビューなど、どれも必要なシーンなのだが、ここをもう少し速いテンポで映し出してほしかった。

 

検事が妻の小説のプロットを持ち出して、殺意の証拠にしようとしたのにはさすがにドン引きした。検察を悪に描こうという意図でもあったのだろうか。悪ではなく暗愚というか

 

総評

法廷ものとファミリードラマのハイレベルの融合。日本社会は、特にネット空間で顕著だが、「疑わしきは罰せず」という原則を忘れているように思う。疑わしい=疑われる方が悪いという理屈で、誹謗中傷が行われるのはいかがなものか。本作はある意味で観る者の法感覚を測る格好の題材であると言えるかもしれない。ぜひ夫婦で鑑賞をどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

One for the road

劇中では One more for the road. という使われ方をしていた。松本孝弘の楽曲に ONE FOR THE ROADがある。意味は「場を離れる前の最後の一杯」の意。Jovianのオールタイムベストの小説『 星を継ぐもの 』に下のような描写がある。参考にされたし。

Hunt took a cigarette from his case and lit it. “You know,” he said at last, blowing a stream of smoke slowly toward the glass wall of the dome, “it’s going to be a long voyage to Jupiter. We could get a drink down below—one for the road, as it were.”

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ソウルメイト 』
『 マリの話 』
『 デューン 砂の惑星 PART2 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ザンドラ・ヒュラー, スワン・アルロー, フランス, ミロ・マシャド・グラネール, 監督:ジュスティーヌ・トリエ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 落下の解剖学 』 -真実を知るは犬のみ-

『 コンクリート・ユートピア 』 -人間社会の汚穢を描く-

Posted on 2024年1月12日 by cool-jupiter

コンクリート・ユートピア 70点
2024年1月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ビョンホン パク・ソジュン パク・ボヨン
監督:オム・テファ

 

簡易レビュー。

あらすじ

突如発生した天変地異により、韓国社会は崩壊した。唯一崩落しなかった皇宮アパートには生存者が押し寄せるが、住民は団結し、彼らを排除することを決定。住民のリーダーとして、冴えない中年のヨンタク(イ・ビョンホン)が選ばれるが・・・

ポジティブ・サイド

韓国の苛烈な経済格差および移民問題を痛烈に皮肉った序盤、そして民主主義の正の面と負の面が露になる中盤、そして閉鎖・孤立したコミュニティが民主主義の負の面から自壊していく終盤と、非常にテンポよく物語が進んでいく。

 

韓国映画あるあるなのだが、まったくもって普通の一般人に見える人が、突如発狂するシーンが何度もあって、緊張感も持続する。男性のほとんどが兵役経験者ということで、住民とその他の争いにもリアリティがある。

 

能登半島地震の被災現場の本当の悲惨さは知るべくもないが、「人間社会はこうあってはならない」という韓国映画のメッセージは、ある意味でこれ以上ないタイミングで届けられたと思う。

 

ネガティブ・サイド

細かいところだが、男性陣の誰もひげが伸びないのは何故?韓国成人男性はもれなくひげの永久脱毛済み?そんなはずはないと思うが・・・

 

ラストは正直なところ、賛否両論あるだろう。自分はやや否かな。最後まで狂気で突っ走ってほしかった。

 

総評

韓国映画の佳作。災害ものでは人間の本性があらわになるが、韓国映画はそこで人間のダーティーな面を映し出すことを恐れないところが素晴らしい。イ・ビョンホン以外のキャストの演技力も申し分なく、いつも同じメンツで映画を作っている邦画界とは役者層の厚さが違うところが羨ましい。2010年代ほどではないにしろ、2024年も韓国映画には期待して良さそうである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

apartment

いわゆるマンション、集合住宅を指す。ちなみに英語の mansion は大邸宅を指す。apartmentは一室を指し、集合住宅全体は apartment house と言う。一応区別して覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』
『 ブルーバック あの海を見ていた 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ビョンホン, サスペンス, パク・ソジュン, パク・ボヨン, パニック, 監督:オム・テファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 コンクリート・ユートピア 』 -人間社会の汚穢を描く-

『 怪物の木こり 』 -全体的に低調なエンタメ-

Posted on 2024年1月7日 by cool-jupiter

怪物の木こり 20点
2024年1月4日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:亀梨和也
監督:三池崇史

2024年の一本目は昨年に見そびれた本作をチョイス。貯まっているポイントを使用すべきだった。

 

あらすじ

サイコパス弁護士の二宮(亀梨和也)は、怪物の木こりに扮した正体不明の連続殺人鬼に襲われる。かろうじて命拾いした二宮だったが、殺人鬼が襲ってきた人間にはある共通点があり・・・

ポジティブ・サイド

序盤に問答無用で男を殺害する亀梨、さらに噴水のごとく飛び出る血液に驚き。「いやいや、血液はそんなにビチャビチャではないやろ」と思いつつ、「でも一定時間逆さまにされ限界まで血液が上半身に集まってたらこれぐらい行くか?」と思考も軌道修正。邦画には珍しい、血みどろの物語へ期待が高まった。

サイコパスは業か否かという命題に一つの答えを提示しようという意気込みは評価したい。これは原作小説の作者に向けるべき賛辞か。原作を読んでいないので、本作がどれだけ原作に忠実なのかそうではないのかは分からない。

 

ネガティブ・サイド

まずサイコパスの描き方が残念。監修が中野信子で、この御仁は基本的に TV professor なので専門家ではあっても信用度は高くない。まあ、最終的には脚本家や演出した監督、さらには編集の責に着せられるべきなのだろうが、二宮という弁護士のサイコパシーなところが全然描写されない。無表情に人を傷つけるぐらいで、サイコパスのごく一部の側面しか見せていない。もっと弁護士としての頭脳明晰さや弁舌の上手さを見せたり、クライアントの心を掴むような描写がないと、キャラクターとしての深みが生まれない。

そもそも何故に婚約者の父親を殺す必要があるのか。普通に仕事に励んでいれば事務所を継ぐことができるはず。その理由も「サイコパスだから」というのは描写としては乱暴極まりない。

また脳チップというガジェットもつまらない。いや、つまらないというよりも説得力がない。あんな軽い衝撃で壊れる代物なら、それこそサッカーのヘディングでも壊れるだろうし、レントゲンやCTの放射線でも壊れそう。脳チップが埋め込まれているからサイコパスになるということに説得力がないし、脳チップが壊れたからサイコパスじゃなくなりました、というのも説得力がない。これではストーリーが面白くなるはずがない。

アクションシーンも細かいカットの連続で緊張感が生まれていない。襲撃シーンをもっと緊迫感あるものにするために一回ぐらいはロングのワンカットを入れるべきだった。

そもそもキャラが色々としゃべりすぎ。「猫はもう飽きたんだよね」などはその最たるもの。最後の犯人の語りも回想や目線、表情を駆使すればセリフは半分に減らせたはず。説明しないと観る側が分からないだろうと思っているのだろうか。本当ならそれなりに感動的なシーンになるのだろうが、冗長さが勝ってしまった。

最後の疑問は絵本。これは浦沢直樹の某漫画の中の絵本のパクリ・・・?

 

総評

2023年の映画なので今年のクソ映画オブ・ザ・イヤーの候補とはならないが、それでもこの低クオリティは鑑賞するのがしんどい。残念ながら『 一命 』以降の三池崇史は、それ以前の三池崇史ではない。韓国がリメイクしてくれれば(『 殺人鬼から逃げる夜 』+『 最後まで行く 』)÷2的な作品になりそう。日本はサイコサスペンスでは残念ながら韓国にはもう勝てない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

psyche

サイコパスのサイコ=psycoの名詞。哲学に造詣がある向きならプシュケーだと言えば通じるだろう。意味は精神、心理。The major earthquake left a significant impact on the Japanese psyche. =「大地震は日本人の精神に多大な影響を残した」のように使う。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 コンクリート・ユートピア 』
『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, サスペンス, スリラー, 亀梨和也, 日本, 監督:三池崇史, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 怪物の木こり 』 -全体的に低調なエンタメ-

『 市子 』 -それでも静かに生きていく-

Posted on 2023年12月19日 by cool-jupiter

市子 75点
2023年12月16日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:杉咲花 若葉竜也
監督:戸田彬弘

 

簡易レビュー。

あらすじ

市子(杉咲花)は同棲している恋人の長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けて快諾する。しかし、市子は翌日に姿を消してしまう。市子を探し求める長谷川は、市子がかつては月子と名乗っていたことを知り・・・

 

ポジティブ・サイド

本作の扱うテーマはレバノン映画の傑作『 存在のない子供たち 』と同じ。戸籍=身分証明=アイデンティティというのが現代社会だが、そこからこぼれ落ちてしまった者はどう生きていけばよいのか。本作はそれを追究しようとしている。

 

これまで少女役ばかりだった杉咲花がやっと一皮むけたかなという印象。弱さと強かさの両方を併せ持つ女性を演じきったのは見事。傾城の美女ではなくともファム・ファタールにはなれるのだ。

 

市子の過去をめぐって様々な人物の物語を移していく手法は『 正欲 』と同じ。また、エンドロールの際に流れる声で物語を想起させる手法は『 カランコエの花 』と同じ。content ではなく form が重なるのは個人的には全然OKである。

 

ネガティブ・サイド

いくらなんでも最初の事件は簡単に事の真相がばれてしまうと思うのだが。そうなると月子→市子というメタモルフォーゼも無理ということなってしまう・・・

 

また次の事件では死んだ人間の仕事がそちら関係なので、必然的に市子およびその周辺も捜査されてしまうと思われる。

 

総評

ウィリアム・アイリッシュの昔から「消えた女」を追うというプロットはハズレが少ない。本作もいくつかの点に目をつぶればOKだ。作劇の面ではいくつかの先行作品とそっくりだが、中身の点では『 さがす 』に似ていると感じた。邦画の世界でも陰影の深い作品が生み出されつつあるのは好ましいことだと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

hug

ハグするというのは日本語にもなっている。意味は「抱きしめる」である。劇中の長谷川の印象的なセリフに「抱きしめたい」というものがあったが、あれは I want to hug her. となるはず。よりドラマチックかつロマンチックな言い方をするなら I want to wrap her in my arms. となる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ 』
『 怪物の木こり 』
『 きっと、それは愛じゃない 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 日本, 杉咲花, 監督:戸田彬弘, 若葉竜也, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 市子 』 -それでも静かに生きていく-

『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

Posted on 2023年11月22日 by cool-jupiter

デシベル 65点
2023年11月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・レウォン
監督:ファン・イノ

 

韓国映画お得意のサスペンスものということでチケット購入。

あらすじ

とある家に爆弾が届けられ爆発。そのニュースを知った潜水艦の元副長カン・ドヨン(キム・レウォン)のもとに犯人からの電話が入る。次のターゲットがサッカースタジアムだが、そこに仕掛けられた爆弾は一定以上の音量に反応すると起爆までの時間が半減するというもので・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の潜水艦シーンは『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』そっくり。もちろん真似たわけではないだろうが、韓国映画はハリウッド映画的な文法を忠実に実行することがある。この時点で期待が盛り上がってきた。

 

一年後、謎の爆破事件が勃発。そこから元副長のカン・ドヨンの苦闘が始まる。途中でなし崩し的に仲間になる記者のオ・デオがめちゃくちゃ良い奴。韓国映画界には味のある三枚目がよく出てくるが、彼もそんな感じ。コミックリリーフが存在するおかげで、そのコントラストとしての爆弾テロリストの恐怖が倍増している。

 

一定以上のデシベルを感知すると爆弾のカウントダウンの残り時間が半減するというのはなかなか怖い。日常の街中の声や音がそのまま凶器と化すからだ。潜水艦の隠密性も音を出さないことから得られるので、潜水艦乗りのカン・ドヨンが音に苛まれるのは観ていて本当に痛々しかった。

 

謎の爆弾魔が犯行に及ぶ動機が明らかになるにつれ、サスペンスが盛り上がる。真相を知ったところから、さらにもう一歩踏み込んでその深層部分を非常に硬質なドラマとして見せつけてくる。ストーリーはカン・ドヨンの家族をも巻き込んで進む。奥さんと娘がとことん追いつめられる本作だが、逆に新しい家族観を提示したとも言える。記者オ・デオが最終盤に放つ質問に対するドヨンの答えは、その場では語られない。しかし、彼の思いが最後の最後に回想される。子曰く「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」。人間、ドヨンのように強く生きねばならんなと思わされた。

 

ネガティブ・サイド

爆弾が絡むシークエンスはすべて緊張感がみなぎっているが、終盤の肉弾アクションになると急にクオリティが低下する。細かいカットの連発で、ここはもっと頑張れただろうと思う。軍人同士の格闘戦で、韓国の成人男性のほとんどが兵役経験者ということを考えれば、もっと攻めた演出を監督には施してほしかった。

 

明らかに無関係な一般人をも巻き込むような爆弾設置は、犯人の思想信条上どうだろうか。カン・ドヨンの関係者を徹底的に排除しようとする方が、彼の失ったものとのバランスがとれていると思うのだが。

 

最後に、これは映画の中身とは関係ないが、一言だけ。なんで日本の配給会社や宣伝会社は販促物で盛大なネタバレをかますの?パネルのビジュアルが全部ネタバレしているではないか。のみならず、某映画情報サイトもキャラクター紹介欄でネタバレをかます始末。いや、本作はミステリではないが、だからといってサイトや販促物でネタバレをしていい理由は一つもない。日本の宣伝・配給会社にはもう少し考えてほしいものだ。

 

総評

韓国映画らしいサスペンス。警察をとことんコケにすることに定評がある韓国映画界だが、本作では軍上層部の怠慢や無責任さも堂々と批判している。潜水艦ものだと本邦では『 沈黙の艦隊 』が上映中だが、自衛隊は映画製作にきょぅ力してくれるもので、映画によって批判される対象ではない。それが良いかどうかはさておき、政治や軍事、司法を容赦なくエンタメの形で批判する韓国映画と日本映画のコントラストがここにも見て取れる。単なるサスペンスとしてもなかなかの面白さ。『  白鯨との闘い 』的なサスペンスも楽しめる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

配偶者への呼びかけに使われる。男女どちらが使っても良い。日本語にすると「あなた」や「ねえ」あたりになるだろうか。ドラマでもしょっちゅう聞こえるし、なんなら日本人・韓国人の夫婦YouTuberもよく使っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 花腐し 』
『 首 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・レウォン, サスペンス, 監督:ファン・イノ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

Posted on 2023年9月25日2023年9月25日 by cool-jupiter

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 80点
2023年9月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フランキー・フェイソン
監督:デビッド・ミデル

 

妻が「面白そう」というので、チケットを購入。ハズレが少ないシネ・リーブル梅田の上映作品だが、本作は年間ベスト級の面白さだった。

あらすじ

心臓病を抱えるケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、誤って救命救急サービスのアラームを作動させてしまう。それによってケネスの自宅に警察官が急行し、ケネスの安否を確認しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

舞台はケネスの自宅室内とアパートのホールウェイ。主な登場人物は、ケネスと最初に現場に急行する警察官3名、ライフ・ガード社の女性オペレーター1名、そしてケネスの姪っ子一人と、非常に小規模な作品。しかし、そこに流れる空気の濃密さはそんじょそこらの映画の比ではない。

 

最初は職務に忠実にケネスの安否を確認しようとする警察官たち。しかしケネスが黒人、元海軍兵、さらに精神障害の既往歴ありという属性を知るにつれて、どんどんと過激化していく。黒人ということは犯罪者予備軍ではないか。海軍ということは武器を所有しているのではないか。まるで『 福田村事件 』のように、疑心暗鬼がいつの間にか確認に変わり、法執行官の代表たる警察官がいとも簡単に法を破っていく。そこに至るまでの過程が『 デトロイト 』そっくりだが、『 デトロイト 』では銃声というトリガーがあった。しかし、本作では警察官の暴力性を引き出す契機は何もなし。そのことが観る側に恐怖感を呼び起こす。単に暴力的になっていくから怖いのではない。職務に忠実であろうとする姿勢が、いつの間にか他者を傷つけることを厭わない姿勢に変わっていくことが恐ろしい。そういう意味では本作は『 ヒトラーのための虐殺会議 』に近いものがある。これは極端な例かもしれないが、哲学者ハンナ・アーレントが見抜いたように、人は凡庸な悪にこそ支配されてしまう。その過程をわずか数十分で臨場感たっぷりに描いた点が本作の一番の貢献と言えるかもしれない。

 

ケネスを演じたフランキー・フェイソンの迫真の演技には息を呑むばかり。双極性障害の持ち主にして、軽いPTSD持ちにも見えた。彼の脳裏に去来したであろう様々な体験を一切映像化することなく、観る側にそれをありありと想起させる演技力と監督の手腕は見事の一語に尽きる。ライフ・ガード社のオペレーターの女性の声だけの迫真の演技も印象的。中学校教師上がりの警察官ロッシの個人としての信条が、警察という階級組織の中で簡単に押しつぶされていく様もリアルだった。

 

タイトルの通りに最後にケネスは殺害されてしまうわけだが、その結末には慄然とさせられる。法とは何か。人命とは何か。何が我々を狂わせるのか。何が我々を思考停止に陥らせるのか。本作が示唆する問題はアメリカだけに限定されたものでは決してない。

 

ネガティブ・サイド

エンドロール時に本物のケネスや警察官たちの声が聞こえるが、警察官たちは暴力的というよりも、ケネスをおちょくるような口調だったと感じた。であるならば、そのような口調を再現し、それをケネスが威圧的、高圧的、威嚇的と受け取ってしまう、のような演出を模索できなかったか。あるいは、エンドロールの実在の人物たちの声はすべてカットしてしまうのも一つの選択肢だっただろう。

 

総評

間違いなく年間ベスト候補の一つ。非常に限定的な時間と空間、そして人間関係だけで圧倒的なドラマを生んでいる。大量破壊兵器を持っていないのに、あたかも持っているかのように振る舞ったイラクは空爆されてしかるべきだった。ウクライナ戦争以降、このような言論が耳目に入ってくるが、どう考えてもアメリカの方が悪い。疑わしきは罰せずというのが人類のたどり着いたひとつの結論であるはずだが、個人レベルでも国家レベルでも疑惑を確信に変えて行動してしまうアメリカには決して倣ってはならない。やることなすこと全てアメリカの猿真似の本邦も、本作や『 福田村事件 』を直視しなければならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make sure

しばしば S1 make sure that S2 + V のような形で使う。意味は、S2がVするとS1が確認する。まあ、これは例文で覚えたほうが早い。

 

She made sure that the door was locked and the windows were closed.
彼女はドアが施錠されていて、窓も閉じられているということを確認した。

I want to make sure that this assignment is due next month.
この課題は来月が締め切りであると確認したい。

 

のように使う。初級者から上級者まで日常でバンバン使う表現なので、ぜひ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 BAD LANDS バッド・ランズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, スリラー, フランキー・フェイソン, 伝記, 監督:デビッド・ミデル, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

Posted on 2023年9月11日 by cool-jupiter

あしたの少女 70点
2023年9月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・シウン ペ・ドゥナ
監督:チョン・ジュリ

簡易レビュー。

 

あらすじ

高校生のソヒ(キム・シウン)は大手ISPの下請けコールセンターで実習生として働き始める。ソヒはオペレーターとしてストレスフルな仕事を何とかこなしていた。しかし、厳しくも優しかった男性上司が会社の駐車場で自殺したことを知ったソヒは、徐々に精神的に摩耗していき・・・

 

ポジティブ・サイド

キム・シウンがいかにも韓国女子高生という気の強い役を見事に演じている。好きなダンスに真摯に打ち込む姿勢、友達との友情とその友情に徐々に入っていく亀裂、そして徐々に自分を失っていく様など、どれもリアリズムたっぷりに演じていた。こういう役者を抜擢して、妥協のない演出を施すあたりが韓国映画界らしい。邦画はいつになったら追いつけるのか。

 

実習生と聞けば、日本でも技能実習制度を思い起こさずにはいられない。ほっこりするエピソードが報じられることもあるが、過労死が疑われるケースや雇用側の暴力、被用者の逃亡など、ネガティブなニュースの方が圧倒的に多い気がする。それは隣国でも同じらしい。

 

後半はソヒの死を捜査する刑事オ・ユジンが主役となる。もっとも観ている側はソヒがどのように追い詰められていったのかをつぶさに見ているわけで、捜査で何の真実が明らかになるのかと思う。そこが本作の味噌で、学校や企業、役所、果ては家庭に至るまで無責任の構造が浸透していたことが明らかになる。これはショッキングだ。しかも、ユジンとソヒの意外な接点も明らかになり、刑事としてのユジンではなく一個人としてユジンも、ソヒの死に激しく揺さぶられることになる。

 

前半と後半の実質的な二部構成と、それぞれの主役である二人の女優の演技に圧倒される。そして物語そのものがもたらす苦みを忘れることは難しい。

 

ネガティブ・サイド

全体的にやや冗長な印象。ソヒのパートを70分、ユジンのパートを50分の合計120分にできなかっただろうか。

 

ソヒの父ちゃんがなんとなく『 焼肉ドラゴン 』のキム・サンホ的で、なんだかなあ・・・ もう少しちゃんと子どものことを見ようぜ、と思わされた。

 

ソヒの親友、ボーイフレンド、別の男の先輩との関係をもう少し丹念に描いてくれていれば、ソヒが特殊な境遇の女の子ではなく、どこにでもいる普通の高校生であるという事実がもっと強調されたと思われる。

 

総評

重厚な映画。『 トガニ 幼き瞳の告発 』のような後味の悪さというか、社会全般への怒りと無力感の両方が強く感じられる。ヘル・コリアなどと揶揄されることが多い韓国だが、日本社会も似たようなもの。韓国映画界は社会の暗部をさらけ出す映画を製作することを恐れないが、日本はどうか。『 福田村事件 』のような気骨のある作品を今後生み出せるだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。韓国映画やドラマではよく聞こえてくる。ソンベニム=先輩様という使われ方もあるらしい。「先輩」という概念はあっても、それが実際に言葉として存在するのは日本と韓国ぐらいではないだろうか。中国映画もある程度渉猟して中国語ではどうなのか、いつか調べてみたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 兎たちの暴走 』
『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・シウン, サスペンス, ヒューマンドラマ, ペ・ドゥナ, 監督:チョン・ジュリ, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

Posted on 2023年7月2日 by cool-jupiter

告白、あるいは完璧な弁護 75点
2023年6月25日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ソ・ジソブ ナナ キム・ユンジン
監督:ユン・ジョンソク

簡易レビュー。

 

あらすじ

IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)の不倫相手キム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺害された。第一容疑者となったミンホは犯行を否認。弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自身の無実を証明しようとする。シネは弁護のために事実を知る必要があると主張し、ミンホに情報提供を迫る。その過程で、ミンホは殺人事件前日の交通事故について語り始め・・・

ポジティブ・サイド

これは快作。いや、怪作か。ほとんどすべてが室内の会話劇で、これほどミステリとサスペンスの両方を盛り上げるとは。無実を訴える殺人事件の容疑者と、その無罪判決を勝ち取るためには事実を知る必要があると主張する弁護士の会話劇がたまらなくリアルだ。Jovianの過去の受講生には弁護士の先生が数名おられたが、一様におっしゃっていたのは「黒の人を灰色にすることはできる。だが、自分は灰色だと主張する人を白にはできない」ということだった。シネがミンホに迫るのは、このようなプロフェッショナリズムから来るもので、だからこそあの手この手でミンホの口を割らせようとする。

 

そのミンホの語る事件および前日の交通事故についても、何が事実なのかが分からない。供述は二転三転し、それによって殺害されたセヒが哀れな被害者にも見えてくるし、その逆に稀代の悪女のようにも見えてくる。演じたナナは韓流アイドルらしいが、あちらのアイドルの演技力というのは高いのだなあと感心。めちゃくちゃ美人なのだが、その顔つきがミンホの回想シーンとシネの推理シーンで、別人かと見まがうほどに変わる。素晴らしい演技力である。

 

最後のドンデン返しの連発には鳥肌が立った。いや、最初のドンデン返しには割と早い段階で予想がついていたが、その後の展開には茫然自失。自分はいったい何を観ていたのか。脚本も務めたユン・ジュンソク監督自らがオリジナルのスペイン映画を大幅に改稿したそうだが、『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』のように、邦画界もリメイクに乗り出そうではないか。

 

ネガティブ・サイド

『 最後まで行く 』でも感じたが、韓国のクルマにはエアバッグがないのか?

一部の推測が荒唐無稽すぎで、まるで『 謎解きはディナーのあとで 』のようだった。理論的に可能なことと現実的に可能なことの間には、実際はとんでもない開きが存在する。ここのところにもっと説得力ある仮説が提示できていれば、さらに一段上の評価になったはず。

 

総評

韓国映画お得意の恨に基づくリベンジ・ストーリーで、大傑作『 オールド・ボーイ 』的な用意周到さ。観ている最中は「ははーん、これはアレだな」と割とすぐにピンとくるのだが、それすらも製作者の罠。久々に清々しく騙されたというか、作り手の意図にまんまと引っかかってしまった。悔しいが、爽快な悔しさである。ぜひ多くの人に鑑賞してもらい、見逃してしまった数々の伏線の鮮やかさに地団太を踏んでほしい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チンシル

真実の意。ちなみに事実はサシル。Jovianは大学の恩師の影響か、事実はひとつ、真実は複数あると思っている。なので本作による真実の描き方には感じいるものがあった。チンシルやサシルは韓国映画では割と頻繁に聞こえる語彙なので、耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ユンジン, サスペンス, スリラー, ソ・ジソブ, ナナ, ミステリ, 監督:ユン・ジュンソク, 配給会社:シンカ, 韓国Leave a Comment on 『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

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