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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: サスペンス

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

Posted on 2023年9月25日2023年9月25日 by cool-jupiter

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 80点
2023年9月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フランキー・フェイソン
監督:デビッド・ミデル

 

妻が「面白そう」というので、チケットを購入。ハズレが少ないシネ・リーブル梅田の上映作品だが、本作は年間ベスト級の面白さだった。

あらすじ

心臓病を抱えるケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、誤って救命救急サービスのアラームを作動させてしまう。それによってケネスの自宅に警察官が急行し、ケネスの安否を確認しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

舞台はケネスの自宅室内とアパートのホールウェイ。主な登場人物は、ケネスと最初に現場に急行する警察官3名、ライフ・ガード社の女性オペレーター1名、そしてケネスの姪っ子一人と、非常に小規模な作品。しかし、そこに流れる空気の濃密さはそんじょそこらの映画の比ではない。

 

最初は職務に忠実にケネスの安否を確認しようとする警察官たち。しかしケネスが黒人、元海軍兵、さらに精神障害の既往歴ありという属性を知るにつれて、どんどんと過激化していく。黒人ということは犯罪者予備軍ではないか。海軍ということは武器を所有しているのではないか。まるで『 福田村事件 』のように、疑心暗鬼がいつの間にか確認に変わり、法執行官の代表たる警察官がいとも簡単に法を破っていく。そこに至るまでの過程が『 デトロイト 』そっくりだが、『 デトロイト 』では銃声というトリガーがあった。しかし、本作では警察官の暴力性を引き出す契機は何もなし。そのことが観る側に恐怖感を呼び起こす。単に暴力的になっていくから怖いのではない。職務に忠実であろうとする姿勢が、いつの間にか他者を傷つけることを厭わない姿勢に変わっていくことが恐ろしい。そういう意味では本作は『 ヒトラーのための虐殺会議 』に近いものがある。これは極端な例かもしれないが、哲学者ハンナ・アーレントが見抜いたように、人は凡庸な悪にこそ支配されてしまう。その過程をわずか数十分で臨場感たっぷりに描いた点が本作の一番の貢献と言えるかもしれない。

 

ケネスを演じたフランキー・フェイソンの迫真の演技には息を呑むばかり。双極性障害の持ち主にして、軽いPTSD持ちにも見えた。彼の脳裏に去来したであろう様々な体験を一切映像化することなく、観る側にそれをありありと想起させる演技力と監督の手腕は見事の一語に尽きる。ライフ・ガード社のオペレーターの女性の声だけの迫真の演技も印象的。中学校教師上がりの警察官ロッシの個人としての信条が、警察という階級組織の中で簡単に押しつぶされていく様もリアルだった。

 

タイトルの通りに最後にケネスは殺害されてしまうわけだが、その結末には慄然とさせられる。法とは何か。人命とは何か。何が我々を狂わせるのか。何が我々を思考停止に陥らせるのか。本作が示唆する問題はアメリカだけに限定されたものでは決してない。

 

ネガティブ・サイド

エンドロール時に本物のケネスや警察官たちの声が聞こえるが、警察官たちは暴力的というよりも、ケネスをおちょくるような口調だったと感じた。であるならば、そのような口調を再現し、それをケネスが威圧的、高圧的、威嚇的と受け取ってしまう、のような演出を模索できなかったか。あるいは、エンドロールの実在の人物たちの声はすべてカットしてしまうのも一つの選択肢だっただろう。

 

総評

間違いなく年間ベスト候補の一つ。非常に限定的な時間と空間、そして人間関係だけで圧倒的なドラマを生んでいる。大量破壊兵器を持っていないのに、あたかも持っているかのように振る舞ったイラクは空爆されてしかるべきだった。ウクライナ戦争以降、このような言論が耳目に入ってくるが、どう考えてもアメリカの方が悪い。疑わしきは罰せずというのが人類のたどり着いたひとつの結論であるはずだが、個人レベルでも国家レベルでも疑惑を確信に変えて行動してしまうアメリカには決して倣ってはならない。やることなすこと全てアメリカの猿真似の本邦も、本作や『 福田村事件 』を直視しなければならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make sure

しばしば S1 make sure that S2 + V のような形で使う。意味は、S2がVするとS1が確認する。まあ、これは例文で覚えたほうが早い。

 

She made sure that the door was locked and the windows were closed.
彼女はドアが施錠されていて、窓も閉じられているということを確認した。

I want to make sure that this assignment is due next month.
この課題は来月が締め切りであると確認したい。

 

のように使う。初級者から上級者まで日常でバンバン使う表現なので、ぜひ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 BAD LANDS バッド・ランズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, スリラー, フランキー・フェイソン, 伝記, 監督:デビッド・ミデル, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

Posted on 2023年9月11日 by cool-jupiter

あしたの少女 70点
2023年9月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・シウン ペ・ドゥナ
監督:チョン・ジュリ

簡易レビュー。

 

あらすじ

高校生のソヒ(キム・シウン)は大手ISPの下請けコールセンターで実習生として働き始める。ソヒはオペレーターとしてストレスフルな仕事を何とかこなしていた。しかし、厳しくも優しかった男性上司が会社の駐車場で自殺したことを知ったソヒは、徐々に精神的に摩耗していき・・・

 

ポジティブ・サイド

キム・シウンがいかにも韓国女子高生という気の強い役を見事に演じている。好きなダンスに真摯に打ち込む姿勢、友達との友情とその友情に徐々に入っていく亀裂、そして徐々に自分を失っていく様など、どれもリアリズムたっぷりに演じていた。こういう役者を抜擢して、妥協のない演出を施すあたりが韓国映画界らしい。邦画はいつになったら追いつけるのか。

 

実習生と聞けば、日本でも技能実習制度を思い起こさずにはいられない。ほっこりするエピソードが報じられることもあるが、過労死が疑われるケースや雇用側の暴力、被用者の逃亡など、ネガティブなニュースの方が圧倒的に多い気がする。それは隣国でも同じらしい。

 

後半はソヒの死を捜査する刑事オ・ユジンが主役となる。もっとも観ている側はソヒがどのように追い詰められていったのかをつぶさに見ているわけで、捜査で何の真実が明らかになるのかと思う。そこが本作の味噌で、学校や企業、役所、果ては家庭に至るまで無責任の構造が浸透していたことが明らかになる。これはショッキングだ。しかも、ユジンとソヒの意外な接点も明らかになり、刑事としてのユジンではなく一個人としてユジンも、ソヒの死に激しく揺さぶられることになる。

 

前半と後半の実質的な二部構成と、それぞれの主役である二人の女優の演技に圧倒される。そして物語そのものがもたらす苦みを忘れることは難しい。

 

ネガティブ・サイド

全体的にやや冗長な印象。ソヒのパートを70分、ユジンのパートを50分の合計120分にできなかっただろうか。

 

ソヒの父ちゃんがなんとなく『 焼肉ドラゴン 』のキム・サンホ的で、なんだかなあ・・・ もう少しちゃんと子どものことを見ようぜ、と思わされた。

 

ソヒの親友、ボーイフレンド、別の男の先輩との関係をもう少し丹念に描いてくれていれば、ソヒが特殊な境遇の女の子ではなく、どこにでもいる普通の高校生であるという事実がもっと強調されたと思われる。

 

総評

重厚な映画。『 トガニ 幼き瞳の告発 』のような後味の悪さというか、社会全般への怒りと無力感の両方が強く感じられる。ヘル・コリアなどと揶揄されることが多い韓国だが、日本社会も似たようなもの。韓国映画界は社会の暗部をさらけ出す映画を製作することを恐れないが、日本はどうか。『 福田村事件 』のような気骨のある作品を今後生み出せるだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。韓国映画やドラマではよく聞こえてくる。ソンベニム=先輩様という使われ方もあるらしい。「先輩」という概念はあっても、それが実際に言葉として存在するのは日本と韓国ぐらいではないだろうか。中国映画もある程度渉猟して中国語ではどうなのか、いつか調べてみたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 兎たちの暴走 』
『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・シウン, サスペンス, ヒューマンドラマ, ペ・ドゥナ, 監督:チョン・ジュリ, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

Posted on 2023年7月2日 by cool-jupiter

告白、あるいは完璧な弁護 75点
2023年6月25日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ソ・ジソブ ナナ キム・ユンジン
監督:ユン・ジョンソク

簡易レビュー。

 

あらすじ

IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)の不倫相手キム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺害された。第一容疑者となったミンホは犯行を否認。弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自身の無実を証明しようとする。シネは弁護のために事実を知る必要があると主張し、ミンホに情報提供を迫る。その過程で、ミンホは殺人事件前日の交通事故について語り始め・・・

ポジティブ・サイド

これは快作。いや、怪作か。ほとんどすべてが室内の会話劇で、これほどミステリとサスペンスの両方を盛り上げるとは。無実を訴える殺人事件の容疑者と、その無罪判決を勝ち取るためには事実を知る必要があると主張する弁護士の会話劇がたまらなくリアルだ。Jovianの過去の受講生には弁護士の先生が数名おられたが、一様におっしゃっていたのは「黒の人を灰色にすることはできる。だが、自分は灰色だと主張する人を白にはできない」ということだった。シネがミンホに迫るのは、このようなプロフェッショナリズムから来るもので、だからこそあの手この手でミンホの口を割らせようとする。

 

そのミンホの語る事件および前日の交通事故についても、何が事実なのかが分からない。供述は二転三転し、それによって殺害されたセヒが哀れな被害者にも見えてくるし、その逆に稀代の悪女のようにも見えてくる。演じたナナは韓流アイドルらしいが、あちらのアイドルの演技力というのは高いのだなあと感心。めちゃくちゃ美人なのだが、その顔つきがミンホの回想シーンとシネの推理シーンで、別人かと見まがうほどに変わる。素晴らしい演技力である。

 

最後のドンデン返しの連発には鳥肌が立った。いや、最初のドンデン返しには割と早い段階で予想がついていたが、その後の展開には茫然自失。自分はいったい何を観ていたのか。脚本も務めたユン・ジュンソク監督自らがオリジナルのスペイン映画を大幅に改稿したそうだが、『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』のように、邦画界もリメイクに乗り出そうではないか。

 

ネガティブ・サイド

『 最後まで行く 』でも感じたが、韓国のクルマにはエアバッグがないのか?

一部の推測が荒唐無稽すぎで、まるで『 謎解きはディナーのあとで 』のようだった。理論的に可能なことと現実的に可能なことの間には、実際はとんでもない開きが存在する。ここのところにもっと説得力ある仮説が提示できていれば、さらに一段上の評価になったはず。

 

総評

韓国映画お得意の恨に基づくリベンジ・ストーリーで、大傑作『 オールド・ボーイ 』的な用意周到さ。観ている最中は「ははーん、これはアレだな」と割とすぐにピンとくるのだが、それすらも製作者の罠。久々に清々しく騙されたというか、作り手の意図にまんまと引っかかってしまった。悔しいが、爽快な悔しさである。ぜひ多くの人に鑑賞してもらい、見逃してしまった数々の伏線の鮮やかさに地団太を踏んでほしい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チンシル

真実の意。ちなみに事実はサシル。Jovianは大学の恩師の影響か、事実はひとつ、真実は複数あると思っている。なので本作による真実の描き方には感じいるものがあった。チンシルやサシルは韓国映画では割と頻繁に聞こえる語彙なので、耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ユンジン, サスペンス, スリラー, ソ・ジソブ, ナナ, ミステリ, 監督:ユン・ジュンソク, 配給会社:シンカ, 韓国Leave a Comment on 『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

『 M3GAN/ミーガン 』 -古い革袋に新しい酒-

Posted on 2023年6月22日2023年6月22日 by cool-jupiter

M3GAN/ミーガン 65点
2023年6月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アリソン・ウィリアムズ バイオレント・マッグロウ
監督:ジェラルド・ジョンストン

簡易レビュー。

 

あらすじ

玩具メーカー勤務のジェマ(アリソン・ウィリアムズ)は交通事故で両親を亡くした姪のケイディ(バイオレント・マッグロウ)を引き取った。しかし、仕事に忙殺される自分と両親喪失を乗り越えられないケイディはすれ違うばかり。そこでジェマは密かに開発していたAIロボット、Model 3 Generative ANdroid、通称M3GAN(ミーガン)をケイディに与えて・・・

ポジティブ・サイド

まあ、色んな先行作品のいいとこどりをしているなあ、というのが第一印象。姪っ子ケイディが元々ゲームやおもちゃにハマりやすい性格というのもあるが、対話型インターフェースと違和感なくコミュニケーションが成立するのは『 her 世界でひとつの彼女 』だし、おもちゃが恐怖の対象になるのは言わずもがなの『 チャイルド・プレイ 』、終盤のアクションの某シーンは『 エイリアン2 』&『 リアル・スティール 』そのまんまで、直後のシーンは思いっきり『 ターミネーター 』と『 ターミネーター3 』へのオマージュ。以前からよくある要素を現代風に味付けし直しており、ある意味で非常に鑑賞しやすくなっている。最後のオチも『 エクス・マキナ 』と『 モーガン プロトタイプL-9 』そっくり。

 

アンドロイドが実用化される日は遠そうだが、ChatGPTやGoogle Bard、Bing Chatが人間と verbal communication を取る日は近そう。人型ロボットが暴走する未来は遠いが、本作が提示する世界観は確実に真実味を帯びつつある。

ネガティブ・サイド

工業用ロボットあるいは災害救助用ロボットでもないミーガンが、なぜにあれほどパワフルなのか。『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』の草薙素子でもあるまいに。開発者のジェマの設計思想が知りたい。さらにT3のT-Xばりの無敵のハッキング能力。こんなAIを開発できるのなら、玩具メーカー勤務ではなくアメリカの国防総省が直々にスカウトしてくるでしょ。

 

総評

ホラーというよりはSF、サスペンス、スリラーか。暴力的なシーンがいくつかあるが、それよりもミーガンのくねくねダンスが恐怖感を呼ぶ。案外、スカイネットは軍ではなく民間から生まれるのかもしれない。色々と?と感じるシーンはあるものの、緊張感を上手く盛り上げ、最後にはカタルシスと不安の両方を感じさせてくれる。高校生や大学生は、漫画原作の邦画よりも本作のような

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be off to a good start

幸先の良いスタートを切れている、の意。劇中では、I’m not off to a very good start. のように使われていた。ちなみに「幸先の良いスタートを切る」は get off to a good start と言う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 水は海に向かって流れる 』
『 ザ・フラッシュ 』
『 告白、あるいは完璧な弁護 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, アメリカ, アリソン・ウィリアムズ, サスペンス, スリラー, バイオレント・マッグロウ, 監督:ジェラルド・ジョンストン, 配給会社:ジェラルド・ジョンストンLeave a Comment on 『 M3GAN/ミーガン 』 -古い革袋に新しい酒-

『 怪物 』 -視点によっては誰もが怪物-

Posted on 2023年6月7日 by cool-jupiter

怪物 75点
2023年6月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太
監督:是枝裕和

 

簡易レビュー。

 

あらすじ

シングルマザーの早織(安藤サクラ)は一人息子の湊(黒川想矢)が、学校の教師にいじめられていると感じ、学校に抗議に出向く。しかし、校長やその他の教師、当事者の保利(永山瑛太)は形式的な謝罪を繰り返すばかりで・・・

 

ポジティブ・サイド

モンスターペアレントという言葉があるが、小中校だけではなく大学でもたまに出てくるから始末に困る。普通、成績の疑義照会というのは学生本人が申請してくるものだが、そこに親が乗り込んできて「こっちは授業料を払ってるんだ!」と主張する。学校や授業を委託された弊社としては粛々とこれはこうであれはああで・・・と対応するしかないが、そもそも親が出てきている時点で納得するはずがない。普通なら親が我が子を叱り飛ばして終わりなのだが、そうならなかった時点でモンペ確定である。

 

夏でもかたくなに長袖を着続ける。教室内でもバンダナや帽子を取らない。講師と目を合わせられない。ペアワークもできない。要配慮学生というのは学校から通知があるからすぐに分かるが、それ以外の教室で授業をしてみて「ん?何だこの子は?」という学生もたまにいる。Jovianは本作を観ていて、自分の授業風景を思い出した。最初から保利先生側で本作を観てしまった。こういう鑑賞者はかなりマイノリティなのではないかと思う。

 

湊と依里の淡い友情、その関係の発展、そして結末。そうしたものすべてを明示しない。ある意味で、観る側に解釈を委ねる、あるいは突きつけると言ってもいいかもしれない。それを心地よいと感じるか、不快に感じるか。それはその人の持つ人間関係の濃さ(あるいは薄さ)によって決まるのかもしれない。



ネガティブ・サイド

一番最初のシーンはばっさりカットしても良かったのでは?冒頭のとある出来事とそれを見つめるキャラクターたちを意識することによって、誰が何に関わっていて、逆に誰が何に関わっていないのかを徐々に明らかにしていく構成だが、最初の部分をトイレに行って見逃したJovian妻と鑑賞後にあれこれ語り合ったところ、Jovian妻の方が明らかに物語の謎に引き込まれ、楽しんでいた。

 

校長も湊を相手に自白する必要はなかったように思う。スーパーでのさりげない行為だけで、キャラクターがどういったものかが十全に分かる。

 

総評

非常に複雑な映画。世の中は白と黒にきれいに分けられる訳ではない。わが師の並木浩一と奥泉光風に言えば「現実は多層である」になるだろうか。人間関係は傍目から見ても分からない。教師と生徒でも、親と子でも、分からない時には分からない。そうした現実の複雑さと、一種の美しさや清々しさを描いた非常に複雑で上質な作品。親子や夫婦で鑑賞すべし。人の見方とはかくも難しい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fix

依里の父親が依里に「俺がお前を治して(直して)やる」と言うが、これを英訳すれば I will fix you. となるだろうか。fix は色々なものを直す/治すのに使えるが、これには性格や性質も含まれる。英語の映画やドラマでは時々 “Fix your character!” =「その性格を直せよ!」という台詞が聞こえてくる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 アムリタの饗宴/アラーニェの虫籠 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ヒューマンドラマ, 安藤サクラ, 日本, 柊陽太, 永山瑛太, 監督:是枝裕和, 配給会社:ギャガ, 配給会社:東宝, 黒川想矢Leave a Comment on 『 怪物 』 -視点によっては誰もが怪物-

『 最後まで行く(2023) 』 -リメイク成功-

Posted on 2023年5月28日2023年5月28日 by cool-jupiter

最後まで行く(2023) 70点
2023年5月21日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:岡田准一 綾野剛
監督:藤井道人

同名韓国映画のリメイク。かなり見応えがあった。

 

あらすじ

年末の夜、刑事の工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに駆けつける途中で、ひとりの男をはねてしまう。男の遺体をトランクに入れた工藤は、検問に引っかかってしまうが、偶然に居合わせた県警本部の監察官の矢崎(綾野剛)によって通過することができた。しかし、母の葬儀と死体の処理に頭を悩ます工藤のもとに、謎のメッセージが送られて・・・

 

ポジティブ・サイド

岡田准一は『 ヘルドッグス 』よりも、本作のようなちょっと間抜けな警察官がよく似合っていた。ヴィランたる綾野剛の演技は、その岡田を完全に喰ってしまうだけの迫力があった。スターが演じる悪役としては『 ミュージアム 』の妻夫木聡に次ぐものだと感じた。この二人のトップスターが、これでもかという泥臭く、そして血生臭いバトルを繰り広げる。

 

オリジナルの『 最後まで行く 』と異なり、優男風の綾野剛が突如として岡田准一をボコボコにするシーンから、一気にサスペンスとミステリが盛り上がっていく。同時に、監察官の矢崎のストーリーが展開され、オリジナルよりも遥かにダークな社会の裏面が現れてくる。日本の警察の腐敗っぷりは『 Winny 』がやや消化不良気味に描いてくれたが、本作の県警の腐りっぷりはいかにもザ・日本という感じ。クソ無能政治家のボンクラ息子が家系図をアピールして大炎上したが、日本の権力構造というのは、本作のような形でも維持・継承されているのか。こういうのは韓国ドラマでよく見る構図だが、藤井監督の抱く問題意識の表れとみる方が実情に近そう。

 

警官二人のバトルのスケールもオリジナルよりもアップしている。また原作ではほとんど存在感のない裏社会の勢力が、本作では地場のヤクザとして大きな役割を果たしている。『 デイアンドナイト 』や『 ヴィレッジ 』でも、地域に根差した闇が描かれていたように、これまた藤井監督の好物テーマなのだろう。

 

工藤と矢崎の息詰まる駆け引きとバトルが延々と続き、さすがにこれは決着がついただろうというところから、さらに粘り腰でバトルが続く。まるでナ・ホンジン監督の『 チェイサー 』や『 哀しき獣 』を観ているかのようだ。最後まで行く、というタイトル通りの展開、そしてその救いのないエンディングには逆説的な意味での爽快感がある。これはリメイク成功と言っていいだろう。こうした毒のある作品が邦画にはもっともっと必要だ。

 

ネガティブ・サイド

原作のゴンスが思いつく死体隠蔽工作は、本作ではまったく無効だろう。通夜の番を一人っきりでしたいというのは分からんでもないし、実際にそういう例もうちの親戚であった。ただ、日本は火葬してから土葬する国なので、原作で可能だったトリックが活かせない。ここを有耶無耶にするしかない展開にしたのはご都合主義的か。

 

最後の最後になんだかなあ、と思わされた。とあるキャラが仕込みだったということで、すべては壮大な茶番に。ヤクザは脇役で、チンピラ警察同士の救いのない対決がどうしようもなくエスカレートしてしまった、というプロットで最後まで行ってほしかった。

 

あと、これは映画そのものの出来とは関係ないことなのだが、トレーラーをもっと慎重に作れないのだろうか。観客をびっくりさせるはずのシーンのいくつかがトレーラーでバラされている。もっとさりげない、それでいてインパクトのあるトレーラーというのは作れるはずなのだが。

 

総評

『 ブラインド 』が『 見えない目撃者 』に良い感じでリメイクされたように、本作もリメイクとしては成功と言える。社会のダークな一隅を照らすことに手腕を発揮する藤井道人監督は、韓流ノワールや韓流サスペンスと相性が良さそうだ。ただし彼には彼で独自の路線を走ってもらわねば。本当は園子温みたいなテイスト(人格ではない)の監督が日本に3~4人いれば面白いのに。まあ、そんな愚痴を言いたくなるほど、本作は邦画がなかなか持てない物語の暗さとエンタメとしての面白さを両立させているのだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a safe house

「隠れ家」の意。house という語を含んでいるが、必ずしも家である必要はない。廃工場でも山小屋でも洞窟でも、隠れ家になりそうなものなら何でも a safe house と呼ぶことができる。この表現はあくまでも犯罪者が逃げ込んだり、あるいは犯罪者から追われている者が逃げ込むような場所を指す。一般人が隠れ家として使うカフェやレストランのことは、a hideaway cafe や hideaway restaurant のように言う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 クリード 過去の逆襲 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, あやの, サスペンス, 岡田准一, 日本, 監督:藤井道人, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 最後まで行く(2023) 』 -リメイク成功-

『 最後まで行く 』 -悪徳警官同士のバトル-

Posted on 2023年5月26日2023年5月26日 by cool-jupiter

最後まで行く 65点
2023年5月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:イ・ソンギュン チョ・ジヌン チョン・マンシク
監督:キム・ソンフン

 

公開当時に見逃した作品。日本版リメイク鑑賞の前に近所のTSUTAYAでレンタル。

 

あらすじ

殺人課の刑事ゴンス(イ・ソンギュン)は警察署へ向かう途上で、男をはねてしまった。ゴンスは男の遺体をトランクに隠し、母の葬儀場で遺体の隠ぺい工作を図ろうとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 パラサイト 半地下の家族 』でスタイリッシュな金持ち父さんを好演したイ・ソンギュンが、その数年前には小悪党かつ小市民な刑事を演じている。飲酒運転しているにもかかわらず、自分を刑事だと知った相手の交通課の警察官を、これでもかといじめる。ホンマに警察か?と思わされる。この役者の演技の幅広さと極端さが韓国らしい。対するチョ・ジヌンの強面かつにじみ出る暴力性もすごい。『 悪魔を見た 』のチェ・ミンシクの刑務所仲間的な風貌で、一目見ただけでヤバい奴というオーラが感じられる。この二人があの手この手でやりあうのだが、とても警察官とは思えない。まさにチンピラ同士の対決。そんなもん観て何が面白いの?と思うことなかれ。これがべらぼうに面白い。

 

まず主人公以外の警察官連中も小悪党だらけ。「俺たちは善人じゃない」と嘯きながら、しかし職務はそれなりに忠実に果たしていく。それにより主人公のゴンスが追い詰められていくというサスペンス。さらに自分を脅迫してくるパク警部補との争いもスリリング。男子トイレで乱闘して、便器で窒息させられそうになるなど、邦画では絶対に描かれることのない乱闘シーンも見られる。その後にも「なんじゃそりゃ?」という展開も待っていて、とにかく観る側を飽きさせない。

 

日本だけではなく、様々な国でリメイクされているというのも頷ける。

 

ネガティブ・サイド

匍匐前進人形を使ったトリックは、いくらなんでも無理があるのではないか、死後硬直もあるだろうから、角は曲がれないだろうと思う。

 

また現役の警察官たちが、同僚や上司と音信不通のまま、あれほど色々と行動することができるのだろうか。特にパク警部補は、タクシー運転手に後から通報されてもおかしくないように思うのだが。

 

とある武器のデモンストレーションはあまりにも唐突で、かえって分かりやすすぎる伏線だった。せっかく(?)徴兵制度のある国なのだから、もっと自然な形で武器の類を物語に導入してほしかった。

 

総評

普通に面白い。韓国映画らしく、警察をこれでもかとコケにしながら、笑いとスリルとサスペンスを与えてくれる。とことん運の悪い男が、さらに窮地に追い込まれながら、逆転を求めてあがく姿には悲壮感が漂う。だからこそ観る側はゴンスに感情移入してしまう。彼は最後まで行けるのか?行きついたその先に待つものは?ぜひ見届けてほしい。日本版リメイクも楽しみである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ミヤネ

ごめん、の意。韓国映画でしばしば聞こえてくるし、この言葉が使われるシチュエーションもはっきりしているので、簡単に覚えられる。何語であろうとも、言語は状況・文脈とセットで理解したいものである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アクション, イ・ソンギュン, サスペンス, チョ・ジヌン, チョン・マンシク, 監督:キム・ソンフン, 配給会社:アルバトロス・フィルム, 韓国Leave a Comment on 『 最後まで行く 』 -悪徳警官同士のバトル-

『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』 -イラン社会特有の病理と思うなかれ-

Posted on 2023年4月30日 by cool-jupiter

聖地には蜘蛛が巣を張る 70点
2023年4月26日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:メフディ・バジェスタニ ザーラ・アミール・エブラヒミ
監督:アリ・アッバシ

 

監督の名前だけでチケット購入。

あらすじ

イランの聖地マシュハドで、娼婦だけを狙うスパイダー・キラーという連続殺人鬼が出現。住民は不安に慄くが、犯行を支持する者もいた。女性ジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)は独自に事件を追っていくが・・・

ポジティブ・サイド

娼婦ばかりを狙う殺人鬼では『 チェイサー 』が思い出されるが、本作は社会の底辺で繰り広げられる追跡劇ではなく、広く社会全般に蔓延する空気の淀みに息が詰まる。そしてその空気とは女性蔑視。

 

ただのオッサンが淡々と娼婦を買い、淡々と殺しては淡々と捨てていく。それを追うジャーナリストの女性が周囲から受ける奇異の眼差しが突き刺さる。

 

一見して普通の人が大量殺人犯だったという真相の裏に、戦争で死ねなかった、あるいは戦争がもっと続けば功成り名遂げるチャンスもあったという想いがあったのではないか、という仮説を提示しているところが、なんとなく『 殺人の追憶 』を彷彿させる。

 

サイードの宗教観と、彼の家族の事件の受け止め方に戦慄させられる。これをイスラム社会およびムスリムの特異性と受け取るか、それともあらゆる文化は相対的に特異であると受け取るかで、本作の評価はガラリと変わるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

サイードの家族だけが異様に映ってしまうが、サイードのかつての軍隊仲間の家族たちの様子や、治安の悪化を不安がっていた近所の人々のサイード逮捕後の反応なども描いていれば、イラン社会の不安定さと、それゆえの変化への希望と絶望の両方が表せたのではないだろうか。

 

裁判シーンか、それに関連するシーンをもう少し増やして、イスラム法がどのようなものなのかを観る側に知らせてくれても良かったと思う。あるいは傍聴人同士の会話や新聞、ニュース番組、SNSのやりとりなど、何故かくもサイードが支持されるのか非イスラム圏にも、もう少し伝わりやすくしてほしかった。

 

総評

『 ボーダー 二つの世界 』で描かれた、人間と人間とは異なる存在が交わることなく存在する世界同様に、本作では男と女という交わるのだが交わらない存在、その位相の非対称性が強く打ち出されている。殺害シーンはかなりショッキングなので注意のこと。本作を他山の石にできるかどうかが、その文化圏あるいは視聴する個人の一種のテストであるかのように感じられる。

 

Jovian先生のワンポイントペルシャ語レッスン

キー

誰、の意味。劇中に何度も何度も聞こえてくるので、さすがに分かる。ラテン語の qui が元になっているのかな、などとあらぬことを一瞬考えた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ザーラ・アミール・エブラヒミ, サスペンス, スウェーデン, デンマーク, ドイツ, フランス, メフディ・バジェスタニ, 監督:アリ・アッバシ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』 -イラン社会特有の病理と思うなかれ-

『 ヴィレッジ 』 -ムラ社会のダークサイド-

Posted on 2023年4月23日 by cool-jupiter

ヴィレッジ 75点
2023年4月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:横浜流星 黒木華
監督:藤井道人

藤井道人監督ということでチケット購入。

 

あらすじ

片山優(横浜流星)は、死んだ父の犯した罪と母親の借金のために、故郷の霞門村で肩身を狭くして生きていた。ある日、ゴミ処理場で働く優は、東京から帰ってきた昔馴染みの美咲(黒木花)と再会することになり・・・

ポジティブ・サイド

能の場面、そして『 三度目の殺人 』を彷彿させる火から始まるオープニングに、剣呑な空気が充満している。

 

村で生きる優の能面のような表情と、その内に封じ込められた激情の対比が序盤と中盤の分かれ目。霞門村のシステムに取り込まれることで豊かな表情を取り戻していく優の姿に、観る側は非常にアンビバレントな気持ちにさせられる。

 

この「閉鎖社会から出ていこうにも出ていけない」あるいは「出ていったはいいものの、結局帰って来るしかなかった」というジレンマは、大都市の人間には分からないのではないか。過去数十年の日本の行政の地方創生戦略が機能したためしがないのは、都市の人間がムラに関する施策を決定するという構図が原因ではないか。地方に交付金やら補助金やらを恵んでやる一方で、ゴミ処理場や原子力発電所などを押し付けるのは大きな間違いだったということは、過去10年を見れば分かることだ。

 

Jovianは霞門村ほどのド田舎に住んだことはないが、それでも30年以上前に住んでいたO県B市ぐらいの田舎だと、同級生だった市長の孫が中学校でむちゃくちゃデカい面していて、教師も腫れ物に触れるような扱いをしていたものだった。その市長の苗字が、本作の村長と同じで笑ってしまった。こういう閉鎖社会の権力者とその一族あるいは取り巻きは、その依って立つ基盤が砂上の楼閣とはいえども、周囲に多大な影響力を行使することはある。その点を藤井道人はよくよく見抜いている、あるいは取材しているなと感じた。

 

横浜流星以外で目立った役者は一ノ瀬ワタル。『 宮本から君へ 』同様の暴力キャラが良く似合う。「この村にはハラスメントなんか存在しねえ」という台詞はリアルだった。仕事で奈良や滋賀のかなりの田舎の学校にまで教えに行くこともあるが、そうしたところはコロナ禍真っただ中でも隣近所の人間とノーマスクで話していることなどザラだった。中央や都市部があーだこーだ言っても、本当の田舎は大昔から何も変わらないものである。

 

環境センターという昼の顔と不法投棄現場という夜の顔が、そのまま村および村民たちの二面性になっているのが興味深い。エンドロール後のラストショットに仮託されているのは、希望なのか絶望なのか。それは是非、自身の目で確かめて頂きたい。

 

ネガティブ・サイド

中村獅童演じる刑事が無能すぎる。杉本哲太演じるヤクザも無能すぎる。ここら辺のキャラにはリアリティが欠けていた。

 

最大のツッコミどころは「そこにそれを捨てるか?」というものと、「なんでそれを破壊しないの?」というもの。後者はクラウドが云々かんぬんというのがあるかもしれないが、前者についてはお粗末すぎる。『 藁にもすがる獣たち 』を見習えと言いたい。

 

総評

『 デイアンドナイト 』と同工異曲の秀作。共同体の伝統を壊そうとする者は排除するか、あるいは共同体に取り込んでしまうのが日本社会のお家芸。つまりはダイバーシティなどというものはお題目に過ぎないのだ。自国の闇をエンタメに仕上げられるのは、問題意識とクリエイター意識の両方を併せ持った人。藤井道人は邦画界に置ける数少ないそのような作り手の一人、かつ第一人者だろう。ぜひ鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

History repeats itself.

歴史は繰り返す、の意。優の父の犯した罪や、村長の「そうやってこの村は続いてきたんだ」という発言が印象的。歴史はいつでもどこでも繰り返されるものだが、日本の地方は特にその傾向が強いようである。History has repeated itself. や Will history repeat itself? のようにも使うことがある。英語中級者なら既に知っている表現だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 日本, 横浜流星, 監督:藤井道人, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:スターサンズ, 黒木華Leave a Comment on 『 ヴィレッジ 』 -ムラ社会のダークサイド-

『 search #サーチ2 』 -珠玉のスリラー-

Posted on 2023年4月21日 by cool-jupiter

search #サーチ2 75点
2023年4月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ストーム・リード
監督:ウィル・メリック ニック・ジョンソン

簡易レビュー。

 

あらすじ

ジューン(ストーム・リード)は、恋人とコロンビア旅行に出かけた母が予定日に帰国しないことから、犯罪に巻き込まれたことを危惧し、連邦警察に連絡する。一方でジューンはSNSや各種ネットの情報を使い独自に母を探そうとするが・・・

ポジティブ・サイド

『 search サーチ 』の続編的な作品。正直なところ、同じ手法でもう一度びっくりさせるのは無理だろうと思っていたが、こちら側のそうした予想を軽く超えてきた。

 

コロナ禍で一気に浸透したZoomやGoogle Meetのおかげで、PC画面上で様々な事象が展開されることに全く違和感を覚えなくなった。前作は今思えば、少々強引な自宅内のショットや音声もあったが、今作のPCカメラ映像や音声には不自然なところは一切ない。

 

人間、誰でも秘密を抱えているもの。本作はPCからあらゆるサービスやサイトに侵入していき、様々なキャラの秘密が次々に明かされていく。『 スマホを落としただけなのに 』とは比較にならないサスペンスだ。

 

そんな中でも現地コロンビアの協力者ハビエルがすごく良い人。ネットの先にこそリアルな人間関係がある。

 

ネガティブ・サイド

大活躍のGoogle様だが、普段使っていないデバイスからアクセスされると本人に通知が行くはずだが。ジューンがあそこまで好き勝手できたことに「Google、仕事しろ」と思ってしまった。

 

いくらコロンビアでも、あそこで発砲するか?ここも納得いかなかった。

 

総評

『 search サーチ 』に負けず劣らずの秀作。form は同じながら、content をガラリと変えてきた。あまり書くとネタバレになってしまうが、前作を見た人ほど製作者側の思惑に引っかかってしまうのではないだろうか。Jovianはかなり早い段階で「ああ、黒幕はこいつだろうな」と目星をつけて大失敗。いやはや、こういう感覚は何度味わっても楽しい。本作から鑑賞して、前作に行くのも可能。今春の見逃すべからざる逸品だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

itinerary

アイティネラリィと発音する。TOEICに頻出する語で、意味は「旅程表」や「旅行の行き先」のこと。普通に実生活でも使うので、ビジネスパーソンならずとも知っておきたい語彙である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴィレッジ 』
『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ストーム・リード, スリラー, ミステリ, 監督:ウィル・メリック, 監督:ニック・ジョンソン, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 search #サーチ2 』 -珠玉のスリラー-

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