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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: サスペンス

『 アマチュア 』 -知力で戦え-

Posted on 2025年4月16日2025年4月16日 by cool-jupiter

アマチュア 70点
2025年4月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ラミ・マレック ローレンス・フィッシュバーン
監督:ジェームズ・ホーズ

 

『 ボヘミアン・ラプソディ 』のラミ・マレック出演作ということでチケット購入。

あらすじ

CIAで暗号分析官を努めるチャーリー(ラミ・マレック)は、ロンドン出張中の妻がテロリストに殺されたことを知らされる。妻の復讐を自らの手で果たすため、CIAのトレーニングを受けようとするチャーリーは、教官のヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)と出会うが・・・



ポジティブ・サイド

見始めて少し経つまで、これが小説『 チャーリー・ヘラーの復讐 』だと気付かなかった。『 100冊の徹夜本 』の中で触れられていたので、高校生の時に岡山市内の古本屋で買ってもらって読んだことをうっすら覚えている。とにかく知力だけで戦う話だった。今作でも、舞台が現代で、テクノロジーも当然現代のものだが、チャーリーの戦い方は知力オンリー。そこが『 アメリカン・アサシン 』との違いで、本作のユニークなところ。

 

協力者のインクワラインと共に4人の標的を追っていくが、ド派手アクションに走る前のM:Iシリーズの趣きが感じられ、サスペンスフルだった。実際に女性(テロリストだが)相手にも組み負けてしまうチャーリーは非常にリアルで、だからこそナードやギークの星たりえる。ピッキング動画を視聴しながら、実際に解錠するシーンは笑った。Jovianの友人にも、パソコンの分解動画を見ながら、実際にパソコンを分解する男がいるので、このシーンは可笑しみがありつつも説得力があった。

 

原作小説では確かCIAから見捨てられるような展開だった気がするが、今作ではそのCIAを、ある意味ではテロリスト以上の悪に描いている。その背景も実際にあってもおかしくないような設定で、情報というものに信が置くことが難しい現代という舞台に、原作の設定を見事に着地させているという印象。

 

標的の最後の一人から思わぬ逆襲を食らうチャーリーが、見事な機転で危地を脱する展開には唸らされた。現代は技術全盛で、特にコンピュータ関連の知識とスキルはそのまま金になるし、使い方を変えれば武器にもなる。PCオタクでも愛する人の敵を討つヒーローになれるのだと新しく示してくれたのは一つの功績であると思う。

 

ネガティブ・サイド

偽造パスポートを作った当のCIAが、その偽造パスポートが使われた場所や日時を特定できないとはこれ如何に。

 

また、マスクやサングラスでいくらでも隠しようのある顔をシステムで追うのも疑問。邦画『 プラチナデータ 』はイマイチだったが、歩き方でターゲットを補足しようというアイデアには先見の明があった。実際にCIAは職員のそうしたデータを持っているはずなのに、なぜそれを活用しなかったのか。

 

協力者のインクワラインの出番がもう少し欲しかったと思う。

 

総評

普通に面白い作品。スパイやエージェントでありながら各地でドンパチ(本作にもちょっとそういうシーンはあるが)やる映画とは違い、知識と技術さえあれば圧倒的な暴力にも対抗できるのだ、という物語そのものに爽快感がある。『 ベテラン 』『 プロフェッショナル 』など強そうなタイトルと同時上映されているが、『 アマチュア 』にはアマチュアの良さがあるのだ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Keep your head on a swivel.

『 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 』でも紹介した表現。周囲への警戒を怠るな、の意味。PS2のゲームのAce Combat 04とAce Combat 5で使われている。AIに尋ねたところ、軍事や警察以外でも、文脈さえ正しければ As a sales rep, you really need to keep your head on a swivel to pick up on any business trends. のように使ってもいいそうである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 悪い夏 』
『 片思い世界 』
『 シンシン/SING SING 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, サスペンス, ラミ・マレック, ローレンス・フィッシュバーン, 監督:ジェームズ・ホーズ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 アマチュア 』 -知力で戦え-

『 教皇選挙 』 -2020年代を予見した作品-

Posted on 2025年3月25日2025年3月25日 by cool-jupiter

教皇選挙 80点
2025年3月23日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レイフ・ファインズ
監督:エドワード・ベルガー

 

元・宗教学専攻として興味を惹かれ、チケット購入。

あらすじ

教皇が亡くなり、新たな教皇を選出するため世界各地から枢機卿がバチカンに集った。教皇選挙=コンクラーベを取り仕切るローレンス(レイフ・ファインズ)は旧知のベリーニを推そうとする。そんな中、カブールからベニテスという枢機卿がやって来て・・・

 

ポジティブ・サイド

礼服を身にまとった聖職者たちが一堂に会し、選挙という名の一種の派閥構築と権力闘争に勤しむ姿は、それだけで非常に cinematic だった。英語、ラテン語、イタリア語などが飛び交うのも楽しめた。

 

有力者が票を伸ばしながらも得票多数には至らず、逆にスキャンダルの発覚により失脚していく。『 スポットライト 世紀のスクープ 』を思い出す人も多いだろう。聖職者は性職者などと揶揄されても仕方がないスキャンダルだった。また権謀術数も駆使され、米大統領選でもここまでほじくり返すかと思われるような過去の詮索もあり、選挙=戦争であるというベリーニの叫びは真実であると実感させられる。

 

主人公のローレンスはコンクラーベを恙なく執り行うために奔走するが、その様子をつぶさに見るにつけ、結局は人種や地域の壁を人間が超えることは難しいのだと思わされる。序盤で「英語を話す者は英語を話す者と、イタリア語を話す者はイタリア語を話す者とくっつく」と言われるが、結局はカトリックもバベルの塔の崩壊後の姿のままということか。

 

ローレンスは「確信こそが最大の敵であり、確信してしまえば mystery が存在せず、すなわち信仰も存在しなくなる」と語る(mysteryの字幕は何だったのだろう)。これは多くの現代人が肝に銘じておくべき言葉だと感じた。「公職選挙法に違反していないと認識している」とアホの一つ覚えのように繰り返す兵庫県知事などはこの最たる例で、確信=思い込みは罪になりうるのだ。

 

終盤に大事件が起き、外部から遮断されるべきコンクラーベも中断を余儀なくされる。そこで枢機卿たちによって交わされる議論が本作の核心。ローマ・カトリックの繁栄はレコンキスタや十字軍、さらには大航海(という名の間接的侵略と武器の売買)によってもたらされたものだという歴史的事実を完全に無視した妄言、そしてそれを静かに打ち砕く言説には震えた。

 

最後にローレンスはとある秘密を知ってしまう。その秘密を彼はどう受け止めたのか。奇妙な舞台装置がここに投入されるが、劇中でのとある会話とローレンスが最後に取った行動を合わせて考えれば、その真意は推察できる。

 

10年前のテイラー・スウィフトの東京ドームでのコンサートに行ったが、そこでテイラーは “You are not your mistakes.” だと語ってくれた。今やっとその意味が分かったような気がする。劇中でとある人物が言う “I am *******” と、本質的に同じ意味だったのだ。 

ネガティブ・サイド

アジア系の枢機卿もいたが、ほんの一瞬映ることが2回あったぐらい。もう少しアジアもフォーカスしてくれ。

 

先代教皇は結局、何者だったのか。どこまで見通して死んでいったのか。何かヒントになるような情報がまったく呈示されなかったので、モヤモヤした気持ちだけが残った。

総評

聖職者としての建前と人間としての本音が交錯し合う非常にスリリングな会話劇。トランプ米大統領の二度目の就任の際に、アメリカの司教が慈悲を求めた説教が話題になった。おそらく米国の聖職者たちの中でも政治的にデリケートな話題について我々の目に見えないところで相当に深く議論がされていたのだろうと想像される。そうした言葉のやりとりを楽しめる人は楽しめるだろうし、楽しめない人は楽しめないだろう。Jovianは波長がピタリと合った。今年のイチ押しの作品である。

 

Jovian先生のワンポイントイタリア語レッスン

Come stai

英語でいうところの How are you? にあたる表現。おそらくイタリア語会話の本の最初の3ページ以内に必ず出てくる表現。これから鑑賞するという人は、どこでこの台詞が出てくるか注目してみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Flow 』
『 ミッキー17 』
『 ケナは韓国が嫌いで 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, イギリス, サスペンス, ミステリ, レイフ・ファインズ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 教皇選挙 』 -2020年代を予見した作品-

『 嗤う蟲 』 -村八分の恐怖-

Posted on 2025年2月1日 by cool-jupiter

嗤う蟲 60点
2025年1月31日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:深川麻衣 若葉竜也 田口トモロヲ
監督:城定秀夫

 

『 アルプススタンドのはしの方 』、『 愛なのに 』の城定秀夫が監督ということでチケット購入。

あらすじ

杏奈(深川麻衣)と輝道(若葉竜也)の夫婦は都会から田舎に移住。杏奈はイラストレーターとして、輝道は農家として働いていた。地域の顔役の田久保(田口トモロヲ)をはじめ、村人たちは二人を歓迎するが・・・

ポジティブ・サイド

移住者に対する村の歓待がエスカレートしていく前半、そして村の闇が垣間見える中盤、そしてタイトルの意味がはっきりとする終盤と、非常にテンポよく進んでいく。しかし、細部の描写はかなりねっとりしている。人間関係の力学が都会のそれとはかなり違い、ここまで大袈裟ではないにしろ、ド田舎で似たような状況を目撃してきたJovianは結構なリアリティを感じた。

 

徐々に村のシステムに取り込まれていく夫と、リモートで働く妻のコントラストも際立っていた。そして妻の妊娠と、村を挙げての不穏なまでの歓迎ムードが否が応にも観る側の不安を掻き立てる。そしてその不安は現実として襲い掛かってくる。鑑賞後にJovian妻は開口一番、「田口トモロヲはいつも顔と名前が一致せんわ」と言っていたが、本人が聞けばガッツポーズをするだろう賛辞である。それぐらいキレッキレの演技だったし、杉田かおるの行き過ぎた近所のおばさん感や、片岡礼子の壊れた中年女性感、そして松浦祐也の絶望で暴走した中年男性像など、役者の演技が本作を引き締めていた。

 

タイトルにある蟲の意味は終盤ではっきりする。我々は虫を農薬で殺したり、手でつぶしたり踏みつぶしたりするが、それが中央と地方の構図に非常に似通っていることに慄然とする。特に能登半島の復旧の遅さなどは、地理的な難しさもあるが、それ以上に政治的な力学が要因になっているように思えてならない。エンドクレジット後にも短い映像があるので見逃すことなかれ。それが何のメタファーなのか、というよりも何のメタファーだと解釈するのかで自身の感性や思考が見えてくるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

杏奈と輝道がなぜ田舎移住を決断したのかがよく見えなかった。無農薬に対するこだわりの背景などが描かれていれば、輝道が田久保に屈していくという過程に観る側がもっと杏奈に同調して切歯扼腕できたのにと思う。

 

また移住して2~3年は経過したと思われるが、そのあたりの描写がもう少しあっても良かった。たとえば畑や田んぼの様子だったり、あるいはどんな虫がどんな植物についていたり、あるいは虫がまったく姿を消してしまったりといった描写を要所で入れていれば、それだけで季節の移り変わりを明示できたはず。

 

総評

『 ヴィレッジ 』には及ばないが、『 変な家 』や『 みなに幸あれ 』といった珍品よりは遥かに面白い。今後ますます人口減少が進んで、地方はさらに衰退していく。本作で描かれたような村が生まれてきても驚きはない。同時に都市部でも経済格差や人種・国籍などで「こちら側」と「あちら側」に住民が分断されていく。行き着くところは日本という国家が世界から村八分にされること。製作者の意図ではないだろうが、そんなことまで考えさせられた作品。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

rural migration

田舎移住の私訳。というか、田舎移住はしばしば rural migration と表現される。あるいは urban-to-rural migration のように、都市から田舎への移住と明確にすることもある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アット・ザ・ベンチ 』
『 怪獣ヤロウ! 』
『 雪の花 ―ともに在りて― 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, 日本, 深川麻衣, 田口トモロヲ, 監督:城定秀夫, 若葉竜也, 配給会社:ショウゲートLeave a Comment on 『 嗤う蟲 』 -村八分の恐怖-

『 #彼女が死んだ 』 -社会の闇の一端を覗く-

Posted on 2025年1月19日 by cool-jupiter

#彼女が死んだ 70点
2025年1月18日 kino cinéma 心斎橋にて鑑賞
出演:ピョン・ヨハン シン・ヘソン イエル
監督:キム・セフィ

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

不動産業を営むク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)は顧客から預かった鍵で家に入り込み、最も不要そうなものを失敬するという趣味の持ち主。彼はある時、インフルエンサーとして振る舞うハン・ソラ(シン・ヘソン)に興味を抱く。そのハン・ソラが引っ越しするということで、ジョンテは部屋の鍵を託される。留守を見計らって侵入したジョンテが見たのは、腹部から大量出血してピクリとも動かないソラだった・・・

 

ポジティブ・サイド

不動産屋に対しての信頼がゼロになりそうな冒頭ながら、他人のスマホやSNSを覗き込む主人公ジョンテに対して、徐々にシンクロしてしまうという現代人は多いのではないだろうか。そのような巧みな掴みから、ハン・ソラの死亡シーンの遭遇、そして消えた死体と刻々送られてくる謎めいた脅迫状と、中盤まで怒涛のスピードで展開される疾走感は、まさしく韓国映画。

 

中盤以降、ハン・ソラの見えざる顔が見えてくるあたりから、社会の闇が浮かび上がってくる。そんな中でも、極めて異質な個人として浮かびあってくるのは・・・おっと、ここから先は言ってはいけない。

 

中盤から登場するオ刑事の存在感が素晴らしい。本邦だと『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』で北川景子が長髪をくくりもせずに捜査現場に出向いていたが、無能揃いで知られる韓国警察も、女性刑事となるとリアリティが格段に増す。いかつい顔、長身、肩幅広い、気が強い、結構な武闘派という刑事で、彼女の登場シーンは一か所を除いて全てが絵になっていた。

 

それにしても韓国映画は、女優の発狂シーンを描くのが本当にうまい。人間の感情を視覚的に表現することにかけては韓国の俳優陣は世界でもトップレベルではないだろうか。そしてエンタメ作品ながらも、最後に苦味を残すのも『 目撃者 』同様に、韓国映画のお約束。主演の二人は『 エンドレス 繰り返される悪夢 』でも共演していた。確かに、二人ともうっすらと記憶にあった。

 

ネガティブ・サイド

お客さんから預かっている鍵の保管方法が緩すぎではないだろうか。ダイヤル式の金庫に入れておいてもいいと思うのだが。

 

詳しくは書けない(何故なら詳しく描写されていない)が、現代社会において取り扱いに厳重な注意を要する二つの対象が abuse されていたというのが本作の一つの肝。しかし、その部分の描写が必要最低限を下回っているように見えた。『 トガニ 幼き瞳の告発 』とまでは言わないが、1~2分で良いので、とある対象への虐待シーンは入れてほしかった。

 

とある殺人シーンがあまりにも非合理的。滑車が使われていたわけでもあるまいに、あそこまで物理的な力が作用するか?

 

総評

陰鬱かつ凄惨なサスペンスである。以下、ビミョーにネタバレっぽく言うなら、ビル・S・バリンジャーの小説『 歯と爪 』と、デビッド・フィンチャー監督の映画『 ゴーン・ガール 』、アニーシュ・チャガンティ監督の『 search サーチ 』に韓国テイストを加えたような感じと言えば伝わるだろうか。つまり、古典的・典型的な要素を盛り込みながらも、現代風にアップデートされた作品ということ。観て損はしない一作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Love what you do

スティーブ・ジョブズのスピーチの一節として知られる。当時はこれをどう訳すのかで英語界隈で結構な議論が巻き起こった。loveは愛せ、大好きになれ、惚れ込め、などで良いのだろうが、what you do を果たして仕事と訳してよいのかどうか。文脈的には仕事で問題ない。ただし、 What do you do? = お仕事は何ですか?と暗記するのは間違い。中学の同級生と10年ぶりに再会して、「久しぶり、今は何してるの?」というのが、What do you do?の意味。答えは「大学院に通ってる」かもしれないし、「サラリーマンやってる」かもしれないし、「バイトしながら投資の勉強してる」かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アット・ザ・ベンチ 』
『 港に灯がともる 』
『 怪獣ヤロウ! 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, B Rank, イエル, サスペンス, シン・ヘソン, ピョン・ヨハン, 監督:キム・セフィ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 #彼女が死んだ 』 -社会の闇の一端を覗く-

『 スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 』 -テロパート以外は見え見え-

Posted on 2024年11月6日 by cool-jupiter

スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 40点
2024年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:成田亮 千葉雄大 クォン・ウンビ 大谷亮平
監督:中田秀夫

 

『 スマホを落としただけなのに 』、『 スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 』の続編。

あらすじ

殺人鬼にして天才ブラックハッカーの浦野(成田亮)は、韓国の地下組織ムグンファからの依頼で日韓首脳会談の妨害工作に動いていた。一方、内閣官房サイバーセキュリティ室に出向中の刑事・加賀谷(千葉雄大)に内通者バタフライの存在も伝えて・・・

 

ポジティブ・サイド

日韓首脳会談を狙ってテロを起こすというのは、ありえなくもない話。そこで使われる手法(それが現実的かどうかはさておき)も、なかなか意表を突くものになっていた。浦野のそうした天才っぷりと同時に、今でも麻美に執着する変人っぷりも描き方のバランスも悪くなかった。

 

主人公が加賀谷ではなく浦野になっていたのも、これはこれでありだろう。『 ボーダーライン 』では主役はエミリー・ブラントだったが、『 ボーダーライン ソルジャーズ・デイ 』では主役はベニシオ・デル・トロに変わっていた。

 

日本人が韓国語を、韓国人が日本語をしゃべりまくる映画。個人的には大谷亮平と佐野史郎は頑張っていた。成田亮の韓国語は普通。つまり上手い。韓国人のクォン・ウンビの日本語は『 新聞記者 』、『 ブルーアワーにぶっ飛ばす 』のシム・ウンギョンより少し下手、という程度。つまり、まあまあ上手かった。

ネガティブ・サイド

バタフライの正体やら加賀谷の妻の思わせぶりな言動など、作り手が観る側をミスリードしたいのは分かるが、何もかもがバレバレで笑ってしまう。冒頭のシーンでも、普通に無名の俳優を使えなかったのか。

 

内閣官房サイバーセキュリティ室もお粗末。Jアラートが発令されながら、室長が「うち?外務省?」と出所を確認するのは二重の意味で滑稽。ひとつはアラートの内容>アラートの発令者という関係を取り違えているところ。もう一つは外務省がJアラートなど出すわけがないということ。

 

公安やら警察の面々が日韓首脳の警護を仰せつかりながら、その真っただ中、しかもフェイクテロに引っかかった直後に別の任務を帯びて韓国に飛ぶなどということがあるものか。元大阪府警のJovian義父が観れば憤慨するか、あるいは頭を抱えることだろう。

 

スミンというキャラとの関係を通じて浦野の人間性を追究しようとする試みは悪くないが、そこにソーシャルエンジニアリングの天才という一面が見られなかった。なぜそこまで早い段階でスミンは組織ではなく浦野に従ってしまったのか。逆にスミンが組織を裏切るような伏線が、実際に裏切った後に出てくるのもおかしい。

 

佐野史郎が出てきたあたりで、エンディングはだいたい予想できた。それは別にいい。問題は、肝心のブツのクオリティがさっぱりだったこと。道具係に時間と予算がなかったのか。それとも単に腕が今一つだったのか。

総評

もはや「スマホを落とす」とは関係のないストーリーだが、浦野と加賀谷の物語に一応の決着はつくので、それを見届けるのはありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国レッスン

フェジャン

会長の意。ちなみに社長はサジャン。漢字と音がなんとなく結びつくのが感じられるはず。韓国語の面白いところは、フェジャンニム、サジャンニムのように役職の後にニム=様をつけるところ。Jovianも大学によっては Sir と呼ばれたり、ソンセンニム=先生様と呼ばれたりしていた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 破墓 パミョ 』
『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, クォン・ウンビ, サスペンス, 千葉雄大, 大谷亮平, 成田亮, 日本, 監督:中田秀夫, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 』 -テロパート以外は見え見え-

『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

Posted on 2024年11月4日 by cool-jupiter

トラップ 50点
2024年11月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョシュ・ハートネット
監督:M・ナイト・シャマラン

 

Jovianのカナダ人の友人は ”I gave up on him.” と語ったが、Jovian自身はまだ少しシャマランに期待しているためチケット購入。

あらすじ

クーパー(ジョシュ・ハートネット)は愛娘ライリーが学校で好成績を収めたご褒美に、人気の歌姫レディ・レイブンの追加コンサートに連れて行く。しかし、会場は異様なまでの厳重警備。実はコンサートそのものが連続殺人鬼ブッチャーを捉えるための仕掛けだったのだ・・・

以下、逆説的なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

あまりに色々と感想を書くと、それだけでネタバレに近づく。なのでJovianが鑑賞前に予想していたプロットをいくつか下に紹介してみたい。

 

1.実はサイコパスは父親ではなく娘の方。父親は何も知らない娘を必死で逃がそうとしているだけ。

2.実はトレイラーにある口の軽い従業員の話はジョーク。レディ・レイブンが用心深い人物なので本当に会場が厳重に警備されているだけで、クーパーは独り相撲を取っている。

3.実は『 デビル 』と同じ世界で、シリアル・キラーが悪魔に追い詰められていく。 

 

仮説1はたいていの人が思いつきそう。2はフレドリック・ブラウンのとある小説とそっくり。興味のある人は短編以外の中から探してみよう。3は『 アイム・ノット・シリアルキラー 』に着想を得た。

 

本作は視点操作がユニークで、スマホやカメラ、果ては銃のスコープなど、何かを通じて何かを見るという行為の危うさが示唆されている。また『 ザ・サークル 』のようなSNSの力がこれでもかと示されるのも現代的。

 

サスペンスとして観れば間違いなくアベレージ以上の作品。

 

ネガティブ・サイド

警察がかなり無能。というか、現場に入る心理学の博士が無能というべきか。もちろん、そうしないことには脱出は無理ゲーになるのだが、クーパーが機転を利かすというよりは博士の手腕に疑問符が付くという展開が多かったと感じた。

 

娘の同級生とその母親とのいざこざのくだりはバッサリとカットしてよかったのでは?

 

コンサート会場以外にも、車や家などからも脱出しまくる。ここまで来るとギャグの領域。

 

総評

映画や小説を楽しむ方法は、1)事前にストーリーを予測する、と2)事前情報一切なしで臨む、の二つに大別される。本作はどちらのアプローチも可能だが、できれば2)の方が望ましいのかな。理想は本作がシャマラン映画の初体験であること。まあ、そんな観客は圧倒的少数派だろうけれど。楽しむためにはシャマランらしさ=大どんでん返しを期待しないことが肝要である。できるだけ頭を空っぽにして、深く考えずライトに楽しもう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crispy

元々は食べ物がサクサク、パリパリのような意味で、Longman Dictionary では food that is crispy is pleasantly hard on the outside = クリスピーな食べ物は外側が心地よい硬さであると定義されている。一方、urban dictionary では if something or an act that someone does is good or looks cool (by BigSexyBuffalo April 3, 2017)となっている。Jovianは大学でも教えていたので、現代日本の若者言葉にはそれなりについていけていたが、英語の現代スラングとなると少々弱い。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 破墓 パミョ 』
『 スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 』
『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, サスペンス, ジョシュ・ハートネット, 監督:M・ナイト・シャマラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』 -国家の対立と個人の友情-

Posted on 2024年10月22日 by cool-jupiter

工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 85点
2024年10月20日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ファン・ジョンミン イ・ソンミン
監督:ユン・ジョンビン

シネマート心斎橋に別れを告げるための一本として本作をチョイス。当日券もガンガン売れていて、劇場は満員だった

あらすじ

軍の情報部に所属するパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北朝鮮の核開発の実態を探るべく、黒金星というコードネームの工作員として北朝鮮に潜入する。ビジネスマンとして北で活動するパクは、遂に北の外貨獲得の責任者であるリ所長(イ・ソンミン)からコンタクトされ・・・

ポジティブ・サイド

上映開始直前、『 ソウルの春 』の感想を述べあうオッサン二人が後ろの席にいたが、『 殺人女優 』と同じく韓国映画は合う人には合う。その中でも本作は一級品。上映終了直後の劇場内やロビーでも「圧倒された」、「すごい」、「韓国の現代史を勉強せな」という感想が漏れ聞こえてきた。自分の感想も「まるでブライアン・フリーマントルの『 消されかけた男 』の韓国版だな」というものだった。

まず、スパイ映画にありがちな変装や秘密裏の侵入などがほとんどない。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズのような派手さは一切ない。しかし、本作が全編にわたって産み出す緊迫感はM:Iシリーズのどれよりも上だと感じた。

まず第一に北の核施設に近づくために、まずは外貨獲得に血眼になっている北朝鮮にビジネスマンとして近づくというアプローチが秀逸。その下準備として、中国産の野菜が北朝鮮産と偽って売られていることをパク自身が当局にリーク。中国にある北朝鮮拠点をまんまと一つ潰してしまう。そして在日の朝鮮総連系のあやしげな男(このキヨハラ・ヒサシにもモデルはいるのだろうか?)とのビジネスもシャットアウト。あくまでも狙いは北朝鮮の中枢。

そして遂に有力者のリ所長に接触することになるが、明らかにその筋の人、早い話がインテリヤクザの雰囲気を漂わせるイ・ソンミン演じるリ所長と、番犬的存在のチョン課長が、当時の(そしておそらく今も)北朝鮮がならず者国家 = rogue nation であることをひしひしと感じさせる。一歩間違えれば命が危うい。のみならず、国家間の緊張がそれ以上の状態に発展してしまう恐れなしとはしない。

そんな中でもパクはビジネスマン然として振る舞い続ける。しかし、テープレコーダーその他の小道具も駆使して諜報活動も行う。この陽気で少し短気なビジネスマンの顔と敏腕のスパイとしての顔を劇中でファン・ジョンミンは見事に使い分けた。北朝鮮側に見せる顔と韓国側(上司)に見せる顔が明らかに違う。つまり北朝鮮側に向けては演技している演技をしていた。ファン・ジョンミンの卓越した演技力なくして、この二重性・二面性は出せなかった。

徐々にリ所長の信頼を得て、奇妙な友情すら育んでいくパク。国は異なれど民族は同じだし、話す言語も同じ。しかし都市部を離れれば北朝鮮の人民はなすすべもなく餓死していくという惨状がある。このシーンは下手なホラー映画よりも遥かに怖かった。リ所長が北の惨状に挙げていた子どもが10ドルで売られるという現実は、奇しくもチェ・ミンシクが『 シュリ 』で涙ながらに訴えたもの。まさに1990年代にニュース23で見ていた北の農村が思い起こされた。

映し出されるのは北のどす黒い現実ばかりではない。南の腐敗した政治にも焦点が当てられる。国政選挙のたびに北が武力挑発し、南の人民の不安をあおることで与党の後押しになるのだという。まるでどこかの島国が北のミサイル発射を支持率アップの道具にしているようではないか。北は北で金王朝を維持したいし、南は南で現体制を維持したい。そのためには仮想敵国、いや現実の敵国が存在し続けることが望ましいという、もはや政治とは何なのか分からなくなってくる現実が、パクにもリ所長にも、そして当然我々にも突きつけられてしまう。

しかし、そんな現実に屈せず危険を冒して最後の冒険に出る二人が奇跡を起こす様は胸が張り裂けんばかりになる。国と国は分断されていても、個人と個人は分かり合える。それは南北朝鮮だけの問題ではなく、あらゆる国と個人が直面しているテーマではないだろうか。

ネガティブ・サイド

リ所長のガッツポーズは、そこら中に間諜がいる北京のホテルでは軽率ではなかっただろうか。辺境の死体置き場にまで監視役がおる国やで。

韓国側のもう一人の工作員のコード・ワンが迂闊というか間抜けすぎではないか。どうやって北に潜伏し続けられていたのか。このコード・ワンはさすがに架空の存在だと思うが、このシーンは滑稽に過ぎた。

総評

なぜ劇場公開当時にリアルタイムで観なかったのかが悔やまれる。同時に、なぜこれほど多くの人がシネマートを訪れていたのかも理解できた。本当は『 サニー 永遠の仲間たち 』が観たかったのだが、こちらも負けず劣らずの大傑作。韓国映画のサスペンスのレベルの高さをあらためて思い知らされた。ファン・ジョンミンはソン・ガンホやソル・ギョングに並んだ、いや超えたと評してもいいのかもしれない。

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャングン

将軍のこと。本作では将軍・金正日との対面が一つの山場となっている。また物語の冒頭のニュース映像では、日本でもお馴染みの女性アナウンサーが一瞬だけ映るが、彼女がしばしばチャングンニムと言っていたのを一定以上の世代なら覚えていることだろう。

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 破墓 パミョ 』
『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, イ・ソンミン, サスペンス, ファン・ジョンミン, 歴史, 監督:ユン・ジョンビン, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』 -国家の対立と個人の友情-

『 殺人女優 』 -殺るか殺られるか-

Posted on 2024年10月20日2024年10月21日 by cool-jupiter

殺人女優 60点
2024年10月19日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ジヨン
監督:ユ・ヨンソン

 

妻の「面白いんかなあ?」の一言でチケット購入。邦画では絶対作れないであろう作品だった。

あらすじ

女優のスヨン(ジヨン)は、ある出来事がきっかけで業界を干されていた。ファンがほとんど集まらなかったサイン会の夜、同居している後輩女優と言い争いになってしまう。目覚めたスヨンは、その後輩が死んでいるのを発見してしまう。果たしてこれは自分の仕業なのか・・・

ポジティブ・サイド

韓国映画でいつも感心するのが、女優が発狂する瞬間。本作でもスヨンは様々なストレスを抱えているが、それが爆発するシーンの迫力は見もの。国民性の違いもあるのだろうが、純粋に演技に対する考え方の違いも大きいはず。

 

また流血描写に殺人描写など、暴力シーンも本作の特徴の一つ。日本の女優やアイドルなら絶対に拒否するであろうシーンが次々に出てくる。ジヨンではないが、別の女性キャラの用便シーンなどもある。韓国映画はそうした描写から決して逃げない点もポイントが高い。

 

死体が移動したり、謎のメッセージが届いたりと、謎解き要素もふんだんにちりばめられていて、それが上質なサスペンスにもつながっている。冒頭から女子高生の回想シーンがたびたび挿入され、それがジヨンの現在とどう結びついてくるのかという点も、ミステリアスかつサスペンスフルだ。

 

原題は Wannabe だが、これを『 殺人女優 』としたのは配給サイドの隠れたファインプレーである。

 

ネガティブ・サイド

攻撃的な知的障がい者のキャラは蛇足だったかな。本筋に全く関係なく、ただ単にバイオレンスとサスペンス、そして警察を呼び込むという装置にしか見えなかった。何かもっと説得力のある筋立てが欲しかった。

 

代表が家に帰り着くのが遅すぎる。おそらく酒席で酔っていて酔い覚ましが必要だったのもあるのだろうが、事務所の期待の星を都市部からあれほど離れた片田舎に住まわせるのかというのも大いに疑問だ。

 

スヨンの不祥事というのが普通に重犯罪で、いくら呑み助だらけの韓国社会といえど、とても許容できるものではない、つまり芸能界に留まれるものではないと思われる。もう少しソフトな不祥事(たとえば政治家もしくは財界人の愛人疑惑があったetc)を設定できなかったのか。

 

総評

ショッキングな展開が多く、バイオレンスも激しい。人によっては拒絶反応が出るだろうが、本作のポスターを見れば内容はともかく展開の予想は容易につく。なので耐性のある人だけが鑑賞するようになっているはず。鑑賞後、ロビーで大きな声で展開の仕方や真相を絶賛するおっさん二人(Jovianより15~20歳は上だったかな)が印象的だった。韓国映画は波長が合う人にはとことん合うのだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アラッチ

アラッチ⤴という上り調子で使われることが多い。「分かった?」という意味で、ややくだけた表現。韓国映画を観ていると頻繁に使われる表現なので、知っているという人も多いはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 若き見知らぬ者たち 』
『 破墓 パミョ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, ジヨン, 監督:ユ・ヨンソン, 配給会社:「殺人女優」上映委員会, 韓国Leave a Comment on 『 殺人女優 』 -殺るか殺られるか-

『 シュリ 』 -南北の融和は見果てぬ夢か-

Posted on 2024年10月19日 by cool-jupiter

シュリ 75点
2024年10月14日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ハン・ソッキュ キム・ユンジン ソン・ガンホ チェ・ミンシク
監督:カン・ジェギュ

 

シネマート心斎橋に別れを告げるためにチケット購入。といっても、もう1~2回は行きたい。

あらすじ

韓国情報部のユ・ジュンウォン(ハン・ソッキュ)は、相棒イ・ジョンギル(ソン・ガンホ)とともに、国防関連の要人の連続暗殺事件を追っていた。北朝鮮の女性工作員が捜査線上に浮上する一方で、韓国が極秘に開発した液体爆弾を用いたテロが計画されていて・・・

ポジティブ・サイド

1990年代後半というと太陽政策の前、つまり南北がまだまだ普通ににらみ合っていた時代で、38度線がうんたらかんたらというニュースは中学生、高校生の頃のニュースでJovianもよく耳にしていた。そんな時代の映画だけに古さもあるが、逆に新鮮さもあった。

 

スーパースターと言っても過言ではないチェ・ミンシクやソン・ガンホの若かりし頃の熱演が見られるし、主演のハン・ソッキュは近年でも『 悪の偶像 』でカリスマ的な悪徳政治家

で強烈な印象を残したし、お相手のキム・ユンジンも『 告白、あるいは完璧な弁護 』で弁護士役として非常に印象的な演技を見せたのが記憶に新しい。

 

作劇上の演出も光っていた。特に女性工作員の正体を映し出すシーンは暗闇の中、無音かつ無言、そして効果音もBGMも無しで淡々と進んでいくワンカット。このシーンは震えた。また、スタジアムで彼女が銃を構えるポーズは『 悪女 AKUJO 』や『 聖女 MAD SISTER 』に確実に受け継がれていると感じた。

 

全編にわたって銃撃アクションに、スパイは誰なのかというサスペンス、そして常に敵に先回りされるのは何故なのかという謎解きミステリもあり、さらにそこに悲恋の要素も盛り込んだ全部乗せ状態。それだけたくさん詰め込みながら、緩む瞬間がないという驚き。ヒューマンドラマの名手、カン・ジェギュ監督の最高傑作という評価は揺らぐことはないだろう。

 

ネガティブ・サイド

サッカーのスタジアムに仕込まれた液体爆弾の起爆方法はユニークだが、あまりにも偶然の要素に頼りすぎでは?たとえば天気。他にも、保安・警護上の理由で首脳たちが座る位置などが直前まで明らかにならないということは?あまり突っ込むのも野暮だが、こうした疑問は公開当時からあったはず。

 

あとは爆発までのカウントダウンか。それこそ外気温や湿度、風速など、液体の温度に影響を与える要素は数多くあるわけで、爆発までのカウントダウンが正確にできるわけがない。この部分は鼻白みながら観ていた。

 

総評

突っ込みどころは多々あれど、緊迫感や緊張感、猜疑心などが途切れることがなく、2時間をノンストップで突っ走る。国のために、愛する人のために、という想いは共通だが、それによって敵味方に分かれてしまうという不条理は今の時代でも残念ながら真理のまま。地政学的に見れば38度線はベルリンの壁よりも強固な分断の象徴だが、だからこそ、それを乗り越えようとする人間のドラマがこの上なく熱くなるのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イルボン

日本のこと。韓国の映画やドラマでは割と日本が出てくる。近いから当たり前と言えば当たり前だが、日本と韓国は文化的・経済的には38度線のような線は不要だと個人的には思っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 若き見知らぬ者たち 』
『 破墓 パミョ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アクション, キム・ユンジン, サスペンス, ソン・ガンホ, チェ・ミンシク, ハン・ソッキュ, 監督:カン・ジェギュ, 配給会社:ギャガ, 韓国Leave a Comment on 『 シュリ 』 -南北の融和は見果てぬ夢か-

『 ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ 』 -フォーカスが散逸している-

Posted on 2024年10月16日 by cool-jupiter

ジョーカー:フォリ ア ドゥ 40点
2024年10月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ホアキン・フェニックス レディー・ガガ
監督:トッド・フィリップス

 

『 ジョーカー 』の続編。ただし前作の良かった点を薄め、さらに物語の焦点がぼやけてしまったという意味で非常に残念な出来に仕上がっている。

あらすじ

裁判を前に州立病院に収容されたアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は模範囚であるとして音楽療法への参加が認められた。そこでハーリーン・クィンゼル(レディー・ガガ)と出会ったアーサーは、すぐに彼女に惹かれていき・・・

以下、前作と本作の軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

最初は何故かアニメで始まるが、これは大いなる伏線なので、飽きずに鑑賞してほしい。

 

不気味で不安感を煽り立てるBGMという前作からの特徴は踏襲。暗澹かつ陰鬱な病院の中でも、時折見られる極彩色の色遣いが、アーサーという凡人とジョーカーという悪の道化の二面性をうかがわせる。

 

ホアキン・フェニックスの怪演も健在。ギスギスにやせ細った体と、笑いたくないのに笑ってしまう症状。見るからに哀れな男で、だからこそ観る側も同情しやすい。いや、もっと踏み込んで言えば、自身と同一視しやすい。かかる弱さがアーサーの魅力で、フェニックスはその弱さを前作に続いて完璧に体現している。そんなアーサーが世間ではアニメ化され、偶像化され、裁判を前に熱狂的なシンパも形成されている。前作で生まれた救世主はその後も健在だったのだ。

 

レディー・ガガ演じるハーリーン・クィンゼルとのデュエットやダンスはそれなりにシネマティック。ビージーズの “To Love Somebody” のデュエットは特に良かった。また劇中で『 ザッツ・エンターテインメント 』も上映される。これも小学生ぐらいの時に自宅でVHSで観たのを懐かしく思い出した。前作のアーサーのカメラに向かってのセリフが “That’s life!” だったとすれば、今作のテーマは That’s entertainment というわけかと期待が膨らむ。

 

が、楽しめたのは作品の中盤までだった。

ネガティブ・サイド

まあ、結局は作り手と受け手の波長が合うかどうかなのだが、Jovianには本作は合わなかった。前作と監督も主演俳優も同じなので、少し裏切られた気分である。

 

まず本作はフォーカスがはっきりしない。州立病院の劣悪な環境に置かれるアーサーの苦痛を描くのか。その州立病院内でのハーレイ・クインの誕生と彼女との関係の進展を描くのか。それともジョーカーの裁判とジョーカー信奉者の暴走を描くのか。本作はこれらの全てを等しく扱おうとして、全体的なトーンがバラバラになってしまっている。

 

Jovianはミュージカルは好物ジャンルで、本作の楽曲やダンスもそれなりに楽しめた。ただ本作がミュージカル形式を導入した動機が、前作で分かりにくいとされた現実と妄想の境目をはっきりさせることだとすれば、それは余計なお世話というもの。厳しい言い方をすれば、アーサーの妄想(全部でなくともよい)を読み解けなかった方のリテラシーの問題。もう一つは、前作でアーサーが若者3人を殺害した直後、トイレで踊ったダンスや、マレー・フランクリンのショーに出演する直前の階段でのダンスが好評だったからというのも理由にありそう。だったらアーサーが個室や食堂で悲哀のダンスや喜びのダンスを踊ればいいではないか。また妄想シーンも前作を予習していれば何がそうで何が現実か、見分けるのは容易いはずだ。

 

ハーリーン・クィンゼルとの関係の描き方も中途半端。彼女の語る話の内容を、それこそアーサーの妄想にしてしまえばいい。弁護士からハーリーン・クィンゼルの真実を聞かされて茫然自失するアーサーだが、そのショックをもっと大きくする方法はあったはずなのだ。

 

また裁判のシーンも冗長というか、争点がつまらない。弁護士はアーサーとジョーカーを別人格ということにしようとするが、前作から我々はアーサーとジョーカーは同一人格だということを知っている。幼少期のトラウマは確かに事実だろうが、それがすべてDID = Dissociative Identity Disorder につながるわけでもない。弁護士もそれは無理筋だと分かっていて半ば誘導尋問しようとするが、そもそもそんな事実はないのだから、そのプロットは追求しようがない。

 

結局アーサーは弁護士をクビにして、自分で自分を弁護することになる。ジョーカーのコスチュームとメイクアップで法廷に臨むアーサーに、裁判そのものを前作と同じくショーに変えてしまうのかという期待が盛り上がったが、そうはならず。唯一、面白くなりそうだったのは前作のミジェットのゲイリーの登場シーン。彼はアーサーと同じく、社会に存在を認識されない男。その男の叫びをアーサーは遂に・・・ おっと、これはさすがにネタバレが過ぎるが、ここで観る側は壮大な肩透かしを食らわされる。というか、その先の展開はもはや漫画。最後の最後に全てをうっちゃる展開に開いた口が塞がらない。フォリ・ア・ドゥって、そっちの意味かい。

 

総評

悪い作品ではないが、良作とは到底言えない。前作を観ることなく本作を観れば意味不明だろうし、前作を観たうえで本作を観れば、肩透かしを食うだろう。アーサーが支持されたのは社会への復讐を果たしたから。そのアーサーがさらに社会を擾乱するのを期待すると本作には裏切られる。これが『 ジョーカー 』の看板を背負わず、B級C級映画なら感想はかなり異なるのだろうが、残念ながら『 ジョーカー 』映画であるからには、ジョーカーのジョーカー性を否定してはならないのである。その点が非常に残念でならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You’re fired.

お前はクビだ、の意。fire には様々な意味があるが、ここでは解雇の意味となる。I fire you. または I’m firing you. よりも、You’re fired. が圧倒的に多く使われる。WWEの元会長の瓶ス・マクマホンおよび彼とのプロレスで名を一気に売ったドナルド・トランプの得意とする台詞でもある。サラリーマンとしては言われたくない言葉の筆頭だろう。

 

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