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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アドベンチャー

『 テリー・ギリアムのドン・キホーテ 』 -Let’s go crazy!-

Posted on 2020年1月27日 by cool-jupiter

テリー・ギリアムのドン・キホーテ 70点
2020年1月24日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:アダム・ドライバー ジョナサン・プライス ステラン・スカルスガルド オルガ・キュリレンコ
監督:テリー・ギリアム

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アダム・ドライバーと『 2人のローマ教皇 』のジョナサン・プライスの競演を、テリー・ギリアムが監督する。見逃す理由はない。

 

あらすじ

若手CM映画監督のトビー(アダム・ドライバー)はスペインでドン・キホーテの映画を撮影していた。ある時、トビーはDVDを渡される。収録されていたのは10年前にトビーが作った『 ドン・キホーテを殺した男 』だった。ドン・キホーテを演じた老人ハビエル(ジョナサン・プライス)とトビーは再会するが、ハビエルは自分が本当にドン・キホーテだと思い込んでいた。かくしてハビエルはトビーを従者サンチョだと勘違いし、二人は何故か冒険の旅に出ることになってしまった・・・

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ポジティブ・サイド

『 パッドマン 5億人の女性を救った男 』や『 バジュランギおじさんと、小さな迷子 』などのインド映画の持つ色彩感覚と、『 荒野の用心棒 』や『 続・夕陽のガンマン 』といったウェスタンの乾いた世界観が、ほどよくブレンドされている。目に優しいというわけではないが、entertainingでinspiringな世界を切り取ることは、映画作りにおいて重要なパートである。

 

アダム・ドライバーも新境地を切り拓いたかもしれない。『 パターソン 』での妻を愛する平々凡々な男から『 マリッジ・ストーリー 』での泥沼離婚調停中の舞台演出家まで、基本的に何でもこなせる男だが、今作では現実と妄想の間を揺れ動く役を見事に演じきった。自分が狂っているのであれば自分で自分を狂っているとは認識できない。眼前で起こる不可思議な事態の数々が事実であるのか虚構であるのか、その虚実皮膜の間に囚われた男の混乱を、非常にシリアスに、また非常にコメディックに表現した。特に、アンジェリカが炎にその身を今まさに焦がされようとしているシーンは、とてつもないサスペンスを感じつつも、不謹慎にも笑ってしまった。悔しい!舞台演劇などで、ちらほら目にする演出なのに!それでも、トビーのリアクションのクソ真面目さによって逆にコメディの色合いがより濃くなっている。真面目にやればやるほど馬鹿馬鹿しくなるのである。その塩梅が素晴らしいと感じた。

 

だが、それでも本作はジョナサン・プライスの独擅場であると言わねばならない。「我こそは崇高なる騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ!」と高らかに宣言し、愛馬と共に時に荒野を、時に宮廷(に見せかけた修道院)を堂々と闊歩する姿はいっそ神々しい。自身とサンチョの旅をアドベンチャーともクエストとも表現するが、それは実に正しい。冒険の旅は、しばしば冒険そのものが目的になる。『 アクアマン 』や『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』でも、Aという目的のためにはBというアイテムが必要、しかしそのアイテムはCという人物にしか在処が分からず、そのCはDという街に住んでいて・・・ という構造になっていたが、これは我々が慣れ親しんできたゲーム『 ドラゴンクエスト 』の典型的なパターンである。魔王を倒すでも巨人を倒すでもいい。しかし、冒険の旅というものは旅立ち、放浪し、各地を巡り、未知なる人と邂逅するだけで目的のほとんどを遂げていると言っていい。まるで人生のようだ。盲目的に自分の使命を信じるハビエルは滑稽ではあるが、リスペクトに値する。その思いにおいて、いつしか我々観る側はトビーの思いとシンクロしてしまう。ドン・キホーテという世界で最も有名な狂人を、これほどまでに血肉化させてくれたジョナサン・プライスの姿に、ますますアカデミー賞助演男優賞獲得の予感が強まった。

 

ネガティブ・サイド

ロシアのウォッカ王の迫力と言うか、貫禄と言うか、存在感がもう一つだった。財力にモノを言わせて、ある意味でとても無垢な老人を引っかけて笑い者にしてやろうという企みは、映画の作り手としても人生においても老境に入った自分を笑う人間を、さらに笑ってやろうというメタメタな構造のユーモアなのかもしれない。だが構想30年、企画と頓挫が9回にしてやっと作品が完成し日の目を見たのだから、出資者をパロディにするにしても、もう少し敬意を持ったやり方はなかったのだろうか。まあ、テリー・ギリアム御大には何を言っても無駄かもしれないが。

 

ペーシングにやや難がある。序盤のトビーの監督シーンなどはもう少し圧縮できると思われる。また、荒野を放浪するシーンや行き倒れそうになるシークエンスも、もう少し圧縮できたと思う。全体的にテンポが一定しておらず、一部のシーンでは眠気を誘われてしまった。

 

総評

ドゥルシネア姫への忠節、愛、敬慕の念で動くドン・キホーテが恐ろしくカッコ悪く、逆にそれがカッコ良く見えてくるのだから不思議なものである。そのキホーテが狂乱の喧騒から目覚める時に、確かにバトンは受け渡された。周囲の声に惑わされることなく、自らの信じる道を突き進めという、ギリアム御大の、ある意味での遺言なのかもしれない。ドン・キホーテに関する基礎的な知識が必要とされるが、冒険譚であると思えば、多少の意味不明な旅路のイベントも消化できるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I feel it in my bones.

劇中で三回ぐらい使われるセンテンスである。「直感的にそれが分かる」の意で、それはしばしば直前に言及された事柄を指す。I know it in my bones. またはI knew it in my bones.とも言う。it以外を目的語に取ることも可能である。映画で用例を確認している暇はないという大多数の向きは、One Directionの“Story of My Life ”か作詞作曲エルトン・ジョン、歌唱ロッド・スチュワートの“Country Comfort ”を視聴してみてはどうだろうか。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アダム・ドライバー, アドベンチャー, イギリス, コメディ, ジョナサン・プライス, スペイン, フランス, ベルギー, ポルトガル, 監督:テリー・ギリアム, 配給会社:ショウゲートLeave a Comment on 『 テリー・ギリアムのドン・キホーテ 』 -Let’s go crazy!-

『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Fifth Viewing-

Posted on 2020年1月16日2020年4月20日 by cool-jupiter

スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 85点
2020年1月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:デイジー・リドリー アダム・ドライバー
監督:J・J・エイブラムス

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色々とニュースやレビューやインタビュー内容や考察に接しているうちに、また観たくなってしまった。なので5度目の鑑賞へ。もっと時間とカネを有効活用せねばとは思うが、引き寄せられてしまうのだから仕様がない。

 

『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』で、BB-8はどうやって崖を越えたのかという疑問を呈したが、よく見ると越えていなかった。一度向こう側へジャンプしたレイを、こちら側でずっと待っていたのを確認できた。やはり何事もよく目を凝らして見なければならない。

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今回は主にベン・ソロを鑑賞。確かに人差し指を立てて「黙れ」の意思を相手に伝えるのは、『 スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 』のハン・ソロっぽかった。またブラスターのノー・ルック射撃も、『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』のハン・ソロへのオマージュなのだろう。

 

日本語のレビュー・感想でも英語のレビュー・感想でも、多くの人が共通して不満、または不可解に思っているのは、最後の最後にやってくる援軍。クレイトの戦いでの呼び掛けに応じなったのに、今回は何故だ?ということのようだ。素直に考えれば、自分のミニ脅威が迫っていることが分かったからだろう。『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』のスター・キラーも相当にヤバい代物だったが、今作のスター・デストロイヤーは本当に星を破壊してしまう。それが何百隻、何千隻と建造されて、出撃の時を待っていると聞かされれば、普通は「はあ?」だろう。だが、惑星キジーミが実際に破壊されたとの報は銀河を駆け巡ったことだろう。そうなると、明日は我が身。座して死を待つよりは、義勇軍として立ち上がり、乾坤一擲の勝負に出る。そのように考える者は何千、何万、何十万人と存在するはずだ。

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レイとベン(≠レン)のキスに異議を唱える人も多い。別にええやんけ・・・と思う。本編ではカイロ・レンの台詞としては出てこなかったが、トレイラーにあった

レイ “People keep telling me they know me. No one does.”

レン “But I do”

というやりとりが全てだろう。アダム・ドライバーも出演していた『 フランシス・ハ 』で、フランシスが自身の恋愛観を開陳するが、それは以下のようなものだ。

 

I want this one moment. It’s – it’s what I want in a relationship…which might explain why I am single now. Ha, ha. It’s, uh – It’s kind of hard lo – it’s that thing when you’re with someone…and you love them and they know it…and they love you and you know it…but it’s a party…and you’re both talking to other people…and you’re laughing and shining…and you look across the room…and catch each other’s eyes…but – but not because you’re possessive…or it’s precisely sexual…but because…that is your person in this life. And ifs funny and sad, but only because…this life will end, and it’s this secret world…that exists right there…in public, unnoticed, that no one else knows about.It’s sort of like how they say that other dimensions exist…all around us, but we don’t have

the ability to perceive them. That’s – That’s what I want out of a relationship. Or just life, I guess. Love.

 

Read more: https://www.springfieldspringfield.co.uk/movie_script.php?movie=frances-ha

 

かいつまんで言うと、「皆がいる公共の場で、それでも誰にも気付かれることなく、他の人々には知覚できないが確かに実在する別次元で目と目を合わせることができるような関係」をフランシスは「愛」と定義し、そうした関係を人生で手に入れたいと願っている。これはまさにレイとレンの関係そっくりである。文字通り、別次元で語らい戦う二人なのである。キスぐらい大目に見てやろうではないか。

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コリン・トレヴォロウの手によるEP9のスクリプトがYouTube経由でRedditにリークされたというニュースが入った。このバージョンではランド・カルリジアンが密輸業者の勢力を糾合する役割を担うとされていたらしい。2019年12月29日の『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』のレビューで

 

>マズやランド、チューバッカがその人脈を活かして地下勢力や非合法勢力を糾合し、

>それに民間人も呼応した。そのような筋書きは構想できなかったのだろうか。

 

という疑問を呈したが、トレヴォロウと似たようなことを考え付いた自分を褒めてやりたいと思う。

 

何か新しいニュースや考察が出てきたら、また劇場で鑑賞したいと思う。5回観たので、普通の『 スター・ウォーズ 』ファンの義理は果たしたと思いたい。

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

up and running

元気である、正常である、順調である、などの意味で、人やモノ、システムなどを対象に使われる。しばしば

have / get + O + up and running

という形で使われる。ポーがミレニアム・ファルコン号の修理が完了したかどうか尋ねる際に“Did you get it up and running?”のように言っていた(台詞はうろ覚え)。ビジネス英語では、まあまあよく使われるので知っておいて損はないだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アクション, アダム・ドライバー, アドベンチャー, アメリカ, デイジー・リドリー, ファンタジー, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Fifth Viewing-

『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Fourth Viewing-

Posted on 2020年1月3日2020年4月20日 by cool-jupiter
『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Fourth Viewing-

スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 85点
2020年1月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:デイジー・リドリー アダム・ドライバー
監督:J・J・エイブラムス

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新年早々、また観に行ってしまった。中毒症状を呈している・・・とまでは思わないが、義務感に駆られているわけでもない。正月にすることがない。だからチケットを買い、劇場に行く。そこでたまたま『 スター・ウォーズ 』が上映されているだけのことである。

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久々に父と母に会ってきた。父は『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』を観て、卒業したとのことである。父は元々、筋金入りのトレッキーである。SF好きではあるが、そのルーツは劇場でリアルタイムで観た『 2001年宇宙の旅 』であり、『 エイリアン 』であったという御仁である・映画好きではあるが、『 ハリー・ポッター 』や『 ロード・オブ・ザ・リング 』はシリーズ途中で離脱している。『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』を観る気にならないというのなら、それも善哉である。

 

母は、本作にいたく感動していた。シークエル三部作にはオリジナル三部作に共通するものが多く、それが良いと語っていた。最も気に入ったのは、CGがあまり使われていない、ということらしいが、それは母の目が曇っている。CGだらけである。だが、事の本質はそこではない。オーガニックな雰囲気が良いのである。オールドファンは着ぐるみに安心するのである。

 

今回もいくつかのこと考えながら鑑賞した。

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  • 楽しめた点

輸送船は確かに二隻あった。盲点というのは怖いものである。

 

エンド・クレジットにElisa Kamimoto(だったような気がする)という名前を発見。日系人も頑張っている。

 

スター・デストロイヤーは初代『 スター・ウォーズ 』の冒頭から登場している馴染みの戦艦だが、ついにその名の通り、星をデストロイする性能を手に入れた。このぶっ飛んだ発想は嫌いではない。

 

キジーミの酒場のJohn Williams、確認。2018年に大阪・福島のシンフォニーホールで【 Enjoy!オーケストラ ~オーケストラで聴く映画音楽の世界!~ 】を聴いたが、指揮者の尾高忠明氏はジョン・ウィリアムズを評して「生まれるのが200年早ければ、ベートーベンになっていたかもしれない人」と言っていた。『 スーパーマン 』や『 E.T. 』のテーマも唯一無二だが、『 スター・ウォーズ 』を『 スター・ウォーズ 』たらしめる最大の要素は、ジョン・ウィリアムズの音楽、そして各種の効果音(タイ・ファイターの飛行音やライトセーバーのバズ音など)かもしれない。それほど、『 スター・ウォーズ 』における音は特徴的である。そのことが本作で十二分に確かめられた。

 

最近、立て続けにアダム・ドライバーの出演作品を鑑賞していたせいか、本作を観る時にも主人公のレイ以上にカイロ・レンに注目してしまう。そして見れば見るほどに、この稀代の悪役にして正義のヒーローというキャラクター造形から、『 ハリー・ポッター 』シリーズのセブルス・スネイプに並ぶ愛憎入り混じる複雑な人物に仕上がったように思えてくる。奇しくも、黒を基調とした服装に、髪型や顔の造りにも共通点があるように思うが、いかがだろうか。彼がベン・ソロに回帰し、レイからライトセーバーを受け取る直前の険の消えた表情は、アダム・ドライバーのこれまでの役者人生のハイライトだろう。もちろん、この男のピークはここで終わりではないはずである。

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  • 疑問点

序盤のレイの修行シーン。BB-8はどうやって崖を超えたのだろうか。『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』でR2-D2が飛んだ時は、驚嘆したと同時にとてつもない後出しジャンケンを喰らった気持ちになったことを覚えている。どこか迂回路があったのであろう。

 

レンのスター・デストロイヤーに乗り込んだ際に、フィンが覚醒しつつあるフォースを使って、「どっちか分からないが、ついてこい!」というシーンでは、何故かレイの方が先に走り出している。フィンの見せ場は・・・ まあ、レイのフォースの方が格段に強く、正確だというふうに受けとめておきたい。

 

巷であーだこーだ言われているレイの妊娠説について。私見では、それはない。が、その可能性を追究しようとする人は世界中にいるようである。このことは実は、THE CANTINAやRedditで映画の公開初日から議論されていることである。Jovianがレイ妊娠説を否定する根拠は主に二つ。一つには、J・J・エイブラムスは「スカイウォーカー家のサーガを終わらせる」と宣言していたこと。またルークも“Some things are stronger than blood.”と明言していた。もう一つには、『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』でレイはカイロ・レンを、“ベン・ソロ”と呼ぶことはあったが、“ベン・スカイウォーカー”とは一度も呼ばなかった。そのベンの子を身ごもったことを理由にスカイウォーカー姓を名乗るだろうか。またレイを蘇らせようと手を胸ではなく腹に置いたこと根拠にする人もいるようだが、卵巣も子宮もそこにはない。まあ、ライフ・フォースは手を当てた位置の少し先に作用する(地下の巨大蛇やカイロ・レン)ようであるが、それを基に考えても、やはり純粋に蘇生の為にわき腹に手を置いたと考えるのが自然なような気がする。レイの妊娠説は仮説としては面白いが、仮説の域を決して出ない。

 

もう1~2回ぐらいは劇場鑑賞してみたいと思う。親父を無理やり連れて行こうかな。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アクション, アダム・ドライバー, アドベンチャー, アメリカ, デイジー・リドリー, ファンタジー, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Fourth Viewing-

『 ぼくらの7日間戦争 』 -前作には及ばない続編-

Posted on 2019年12月31日2020年4月20日 by cool-jupiter

ぼくらの7日間戦争 50点
2019年12月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:宮沢りえ 北村匠海 芳根京子
監督:村野佑太

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『 ぼくらの七日間戦争 』の30年後を描いている。まるで『 スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還 』と『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』のようである。だが、前作が持っていたスピリットは弱められてしまっていた。

 

あらすじ

鈴原守(北村匠海)は歴史好きの内向的な高校生。隣に住む千代野綾(芳根京子)に密かな恋心を抱いていた。夏休み直前、綾が突然引っ越しすることになる。そんな綾に守は逃避行を提案する。なんだかんだで一週間の家でキャンプを張ることになった綾は、他にもメンバーを集め、旧石炭採掘工場に集まり・・・

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ポジティブ・サイド

本作は「大人とは何か」という問いに一つの興味深い回答を提示している。これは、いわゆる就職氷河期やゆとり世代に対して当てはまることなのかもしれない。というのも、この世代のサラリーマン(正規であれ非正規であれ)は、平成を通り越して昭和の残り香が漂う職場で、新世代たちとしのぎを削っているからである。自分たちに決定権はない。全ては上に従うばかり。しかし、時代、そして次代の突き上げは確実に迫っており、どうすべきか途方に暮れている。そんな世代の悲哀が透けて見える。王道楽土に連れて行ってくれると信じられるような上の世代が存在しない。そんな作り手たちの思いと、そんな奴らはぶっ潰せという気概の両方が感じられる。これはアラフォーに向けてのエールである。

 

「戦争」という物騒な単語を使うことの意味も認められた。戦争とは、国と国の争いである。つまり、異なる民族の戦いである。そして日本ほど異物を排除する論理および仕組みが強烈に働く文化圏は少ない。とあるキャラクターを通して、本作は日本社会の均質性や人権意識の希薄さを撃つ。これは爽快である。『 国家が破産する日 』で描かれた韓国社会に押し付けられた性急な構造改革は、日本の20年先を行っていた。今、日本と韓国の政治・経済摩擦以外で何が起きているのか。ベトナム人移民労働者の奪い合いである。そして、今後確実に激化するのはフィリピン人花嫁の輸入(何という表現だろうか)である。本作は、北海道の片田舎を通して、確かに日本社会の縮図を描いた。これは褒められるべきであろう。

 

たいしたネタばれではないと判断して書いてしまうが、TM NETWORKの“Seven Days War”は良いタイミングでplaybackされるので期待してよい。

 

ネガティブ・サイド

アニメーション映画にそれほど造詣が深いわけでもなく、外国映画も基本的にすべて字幕派のJovianにとって、一部のキャラクター達の声がとにかくキャンキャンうるさかった。特に女子連中の、まるで何かに媚びるような甲高い声というのは、一体どういった層に訴える効果があるのだろうか。

 

中盤の対大人撃退作戦のテンポが良くない。『 ぼくらの七日間戦争 』は、荒唐無稽ではあるが、スピード感あるカメラワークと演出でそこを巧みにごまかした。本作では、肝心のアクションシーンがもっさりしてしまっている。致命的とは言わないまでも、面白さをマイナスしてしまっていることは否めない。

 

現代的なガジェットも効果的に使用されたとは言い難い。炭鉱から熱気球によって脱出というのは、確かに我々世代には『 ドラゴンクエストIV 導かれし者たち 』を思い起こさせるが、現実に実行したとしてもヘリコプターやドローンに追跡されてオシマイではないか。またはあれだけ目立つものであれば、警察その他のネットワークでいとも簡単に捕捉されてしまうはずだ。どうやって無事に逃げ切った?

 

『 ぼくらの七日間戦争 』にあった体制への不満という要素が消え、非常に私的な領域で物語が進むようになった。それはそれで良いのだが、あまりにも個々のキャラクターの背景描写が弱いために、クライマックスの展開がとってつけたような皮相なものにしか映らない。各キャラクターに、ある意味では現代的なメッセージを託してはいるが、それがどうにもご都合主義に見える。唯一、綾と荘馬というキャラに伏線が二つ張られていたのみで、他キャラの背景は完全に後出しジャンケンである。それではカタルシスは生まれない。少なくとも、すれっからしの中年映画ファンには。そして、中年映画ファンこそ、本作がアピールすべきデモグラフィックであるはずだ。本作が企画され、製作され、公開されたのは、Jovianの同世代がクリエイティブな現場での主力になってきたからであろう。であるならば、若年世代だけではなく、中年世代にも刺さるストーリーを志向すべきである。そしてそれは、日本社会に蔓延する“空気”を晴らすような物語であるべきだ。

 

総評

『 ぼくら 』シリーズの精神を現代に蘇らせているとは言い難い。それでも、ジュブナイル物として観れば、平均的な仕上がりになっている。逆に本作を鑑賞してから『 ぼくらの七日間戦争 』を観るというのもありだろう。昭和と令和の“空気”の違いを如実に感じ取れることだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

How long have you been in love?

劇中で守のチャット相手のジジババが「いつから懸想しておった?」と尋ねてきたときの台詞である。自分の高校生、大学生の教え子たちは「懸想=けそう」という日本語を知っているだろうかとあらぬことも考えた。be in loveで、「恋をしている」の意である。B’zも“I’m in love?”と歌っているし、『 ベイビー・ドライバー 』でもケビン・スペイシーが“I was in love once.”と語っていた。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, アドベンチャー, アニメ, 北村匠海, 宮沢りえ, 日本, 監督:村野佑太, 芳根京子, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 ぼくらの7日間戦争 』 -前作には及ばない続編-

『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -3rd and DolbyCinema Viewing-

Posted on 2019年12月29日2020年4月20日 by cool-jupiter

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スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 85点
2019年12月26日 梅田ブルク7(ドルビーシネマ)にて鑑賞
出演:デイジー・リドリー アダム・ドライバー
監督:J・J・エイブラムス

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劇場鑑賞3度目。今度はドルビーシネマで。英語の批評サイトなどをひとしきり渉猟してみたところ、否定的なレビュー7、肯定的なレビュー3といったところか。面白い傾向として(英語で)読み取れるのは、肯定派と否定派の視点。肯定派はお約束の展開を楽しみ、否定派はお約束の展開を毛嫌いしているようである。『 スター・ウォーズ 』に何を望むのかを通して見えてくるのは、それを観る人間の心の在りようなのだろう。

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個人的には、『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』は何度観ても楽しめる。おそらく、あと3~4回は観るだろう。何故か。それは、童心に帰ることができるからだ。まだ自分が生まれていなかった頃に劇場公開された『 スター・ウォーズ 』と実質的に同じような作品をリアルタイムに、自分のお金を使って、自分のスケジュールを調整して観に行くことができる。やっていることは(一応)大人だが、劇場内にいる自分は子どもである。おとぎ話の世界に浸っているのである。

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『 スター・ウォーズ 』が新しい地平を切り拓いたのは間違いない。だからといって、続編が全て新しい地平を切り拓かなければならないわけではない。それに芸術の分野における「新しい地平」は、しばしば古くからある手法を新しい対象に適用した時、もしくは全く新しい手法を古くからある対象に適用した時に現れるものである。前者の好例はヨーロッパの技法でアメリカの風景を描いたトーマス・コール、後者の好例はアクション・ペインティングのジャクソン・ポロックだろう。『 スター・ウォーズ 』は、古くからある普遍的な要素を持つおとぎ話を、銀河にまたがる冒険譚風に味付けし直したものだ。よく知られていることだが、そこにはテレビドラマの『 フラッシュ・ゴードン 』や黒澤映画『 隠し砦の三悪人 』、さらに児童文学『 オズの魔法使 』の影響がある。というか、これらの作品は『 スター・ウォーズ 』の紛うことなき先行テクストである。『 スター・ウォーズ 』の革新性は対象ではなく、手法にあることは明らかである。どこからどう見てもSF映画なのに、それをおとぎ話的に語るという手法が『 スター・ウォーズ 』の革新性だったはずだ。

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ジョージ・ルーカスが構想していた物語が何であれ、エピソード1、2、3のような世界観は個人的には勘弁願いたい。おとぎ話世界の神秘性を、政治だの経済だの生物学だので剥ぎ取らないでほしい。その一方で、初めて『 スター・ウォーズ 』を初めて観た時に子どもだった者も、42年を経ればどうしたって大人になる。大人になるということは、色々な物事に距離を取ってしまう、もしくは客観視してしまうようになる。それは自然なことである。だが、たまには童心に帰っても良いのではないだろうか。桃太郎に向かって「犬、猿、キジではなく犬、犬、犬を連れて行けよ」だとか、笠地蔵の物語に「そんなことしても意味はないよ」だとか突っ込まないだろう。Rotten TomatoesやYouTubeあたりでネガティブ・レビューをしている者たちは、頭でっかちになりすぎている。普段から鵜の目鷹の目のJovianであるが、自分が好きなものを見る時には片目をつぶるくらいでちょうどよい。『 結婚前には両目を大きく開いて見よ。 結婚してからは片目を閉じよ 』と言われる。『 トレイラーは両目を大きく開いて見よ。 本編を観る時は片目を閉じよ 』が、本作への望ましい接し方ではないだろうか。

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  • 楽しめた点

3度目の鑑賞で感じたのは、『 アクアマン 』のようであるということ。つまり、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのように、「目的地はあそこ。しかし、そこへ行くためにはこのアイテムが必要。そのアイテムはあの洞窟にあって、あの洞窟の敵を効果的に倒すには、この種類の武器を調達するべきだ」という、非常にRPG的な展開をしている。目まぐるしくはあるが、分かりやすくもある。

 

キャリー・フィッシャーが他のキャラクター達と対話するシーンは非常によく練られている。3度目となれば冷静に観察も出来るようになったが、不自然さが感じられない。これらのシーンを完成させたスタッフに最大限の敬意を表したと思う。

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  • 疑問点

マズ・カナタは何故にレジスタンスに加わっているのか?というよりも、レジスタンスでどういう役割を担っているのか。そこが今一つ分からない。前作のラストで銀河中に助けを求めたが、誰も来てくれなかった。反乱軍の将軍ではあるが、一方で亡国の姫でもあるレイアの助けを呼ぶ声には、応じたくても応じられないという勢力がいた。だが、マズやランド、チューバッカがその人脈を活かして地下勢力や非合法勢力を糾合し、それに民間人も呼応した。そのような筋書きは構想できなかったのだろうか。

 

シスのウェイファインダーへのヒントが刻まれた短剣は、いつ作られたのだろう?そもそも、デス・スターの残骸に合わせて作られていて、なおかつルークもそれを追っていたということは、エピソード6とエピソード7の間に作られたということで、その時点で皇帝は蘇っていた?というか、デス・スターは、文字通りに木っ端みじんに吹き飛んだのではなかったか?なぜ、あのように綺麗な断面を保った巨大な残骸が、エンドアの大気圏との摩擦熱で燃え上がった痕跡もなく、存在できているのか?

 

などと考えてはいけない。一見不合理な事象に意味ある説明をしようとすると、暗黒面に囚われてしまう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I could use your help.

レイが惑星キジーミでゾーイに対して言う台詞である。意味は「あなたの助力があれば有り難い」である。could use ~は、「~を使うことができた」ではなく「~があれば助かる」、「~を有り難く思う」である。『 スター・ウォーズ 』でも、デス・スターへの攻撃前にハン・ソロとルークが

“Why don’t you come with us? You’re pretty good in a fight. We could use you. Come on. Why don’t you take a look around?”

“You know what’s about to happen, what they’re up against. They could use a good pilot like you.”

という言葉を交わす。

“I could use some beer!”

“I could use your advice.”

など、色々なものを対象に使える表現である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アクション, アダム・ドライバー, アドベンチャー, アメリカ, デイジー・リドリー, ファンタジー, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:デイズニーLeave a Comment on 『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -3rd and DolbyCinema Viewing-

『 ぼくらの七日間戦争 』 -昭和の空気漂う青春賛歌-

Posted on 2019年12月27日 by cool-jupiter

ぼくらの七日間戦争 65点
2019年12月25日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:宮沢りえ 笹野高史 大地康雄 佐野史郎 賀来千香子
監督:菅原比呂志

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30年ぶりの続編というか、地続き世界の物語が公開されている。鑑賞前にオリジナルを見返しておきたいと思い、近所のTSUTAYAで借りてきた。Jovianも嫁さんも、若い頃は宗田理の本は何冊も読んでいた。今回あらためて夫婦で鑑賞し、色々と感じるところがあった。

 

あらすじ

青葉中学の男子生徒菊池ら8人が集団エスケープした。横暴な学校教師や親への反発からだった。彼らは大蔵省管轄下の廃工場で密かに暮らし始めた。そこへ学級委員のひとみ(宮沢りえ)たちも加わり、共同生活は11人に。だが、居場所を嗅ぎつけた教師たちが廃工場にやって来て・・・

 

ポジティブ・サイド

確か劇場でリアルタイムに観るのではなく小学校6年生ぐらいに当時の友人宅のVHSで観た。その友人が本作を好きで、確か彼の家で3回ぐらい観たことを覚えているし、小室サウンドのある意味で原型とも言えるTM NETWORKの“SEVEN DAYS WAR”は、同級生たちの何人もがカセットテープを持っていた。二十数年ぶりに見返したが、まるでタイムマシーンのような作品である。なにしろ冒頭が、宮沢りえが閉まる校門にギリギリセーフで駆けこむシーンなのだから。『 ニセコイ 』で酷評させてもらった閉まる校門のシーンは今考えても論外中の論外だが、本作は実際の校門圧死事件よりも前なのだから。

 

魅力の第一は、宮沢りえだろう。はっきり言って、荒削りもいいところの演技だが、それでも同時代、同世代の榎本加奈子のドラマ『 家なき子 』での大根役者っぷりに比べれば、遥かに高く評価できる。

 

意外なところで笹野高史も印象的だ。『 岸和田少年愚連隊 』で教師役だったが、1980年代に既に今の好々爺の面影が相当に濃い。その一方で佐野史郎は「若返りの泉」の場所でも知っているのだろうか。冬彦さんよりも前の作品である本作では理不尽な教師役を好演。確かにJovianの行った小学校や中学校にも、こういう嫌な大人は存在していた。そして対照的に健康的な色気(色香でも艶でもなく色気)を放つ賀来千香子。テレビドラマ『 ずっとあなたが好きだった 』の冬彦さん同様に、こちらも老化スピードが極端に遅いのか。本当に30年という時が経過しているのだろうか。

 

その賀来千香子にも怒声を放つ大地康雄。本作では、理不尽、暴力的、権威的、頑固一徹、それでいて窮地に陥ると弱いという、まさに日本のダメおやじのネガティブ要素を凝縮したかのようなキャラクターで、観る者を大いに憤らせ、また笑わせてくれる。彼の最終的なコスチュームは、津山三十人殺しの都井睦雄を思わせる出で立ちである。ビデオで何度目かの鑑賞をした後、テレビドラマの『 お父さんは心配症 』を観て、そのキャラクターの落差にびっくりしたことを覚えている。大地康雄は順調に老けていて何故か安心する。

 

倉田保昭演じるジャージの体育教師もどこか懐かしい存在だ。漫画『 ろくでなしBLUES 』の竹原みたいな教師(こちらの方が後発だが)そっくりで、菊池ら男子を蹴散らしていく様は痛快であり滑稽であり、非常に腹立たしくもある。今は体罰がすぐに通報される良い時代である。昔は体育の授業のサッカーやバスケ、ひどい時には柔道の時間に、気に入らない生徒に指導と称した折檻をする教師がいた。中学生たちも反抗したくなろうというものだ。

 

教師や機動隊とのバトルはアクションにしてコメディである。爽快にして笑いの坪も心得ている。教師を追い返すことはできたとしても、機動隊を追い返すのは不可能だろう。『 警察密着24時 』で、全国の祭りに装束で現れる愚連隊数十人を、警棒、盾、ヘルメットその他で装備した同人数程度の機動隊が一瞬で制圧していくのを見たことがある人も多いだろう。爆竹やタイヤでパニックに陥る機動隊員など、リアリティ欠如も甚だしい。だが、そこを巧みなカメラワークと各種ガジェット、そしてコメディタッチの活劇でごまかしきった菅原監督の手腕は認めなければならない。そして、一切何も解決していないが、全てに意味があり、全てが報われたかのように錯覚させる圧倒的にシネマティックなクライマックス。『 グーニーズ 』や『 スタンド・バイ・ミー 』と並んで、Jovian少年の心に与えたインパクトは大だった。

 

ネガティブ・サイド

全体的に演技者のレベルが低すぎる。特に子役連中は、宮沢りえを含めて、基本的な発声や表情の作り方の練習が不足していることがすぐに分かる。その証拠は、彼ら彼女が現代まで生き残っていないからである。

 

また原作と大いに異なる「戦争」シーンは賛否両論あるべきだろう。菅原監督はコメディ色とアクション色を絶妙に配合したが、「ぼくらシリーズ」の骨子である“子どもが大人に挑む”のではなく、子どもが大人をからかう、もしくは翻弄するように見えてしまうのはマイナスだろう。七日間戦争はどう見ても全共闘のミニチュア版で、そのことは校長の「これは国家を揺るがす事態です!」という台詞に端的に表れている。つまり、『 主戦場 』と同じく“思想戦”のパロディもしくはコメディ化なのである。戦争シーンのアクションは痛快ではあるが、大人の醜さ、汚さ、酷さを子どもが大人にそのまま見せつけるというプロットを本作は映像化できなかった。だからこそ、わけのわからんパワーのあるエンディングで押し切ったのだろう。その判断は正しい。しかし、30年後に見返した時に粗が見えてくることも否めない。つまり、時代の空気を醸し出すことはできても、時代の課題や問題意識までもが反映できているわけではない。そのあたりが、友情の普遍性にフォーカスした『 スタンド・バイ・ミー 』などの古典的な作品に比べて劣ると言わざるを得ない。

 

総評

2019年時点の小学校高学年や中学生が観ると、どのような感想を抱くのだろうか。理不尽さとバイオレンスで、途中で観るのをやめてしまうような気がする。だからこそ、アニメーションにして続編を作るのだろう。そして、「ぼくらシリーズ」の持っていた一種の反骨心を現代風に味付けし直すのだろう。本作は懐古趣味をくすぐる出来であったが、さすがに不惑になって観ると粗が目立つ。だが、復習鑑賞してみる価値も色々と見出せた。まずは既に公開されている続編アニメを観に行くのが楽しみになったという意味では、良い作品なのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Let’s talk it out.

佐野史郎が言う「話し合おうじゃないか」の私訳。基本的にtalkとくれば、

talk about ~   ~について話す

talk to / with ~   ~と話す(会話する)

だが、

talk it out = 話し合いで結論を出す、話し合いで決着をつける、不満や納得いかないことについて語り合う

という使い方をすることもある。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1980年代, C Rank, アドベンチャー, 佐野史郎, 大地康雄, 宮沢りえ, 日本, 監督:菅原比呂志, 笹野高史, 賀来千香子, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ぼくらの七日間戦争 』 -昭和の空気漂う青春賛歌-

『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Second Viewing-

Posted on 2019年12月22日2020年4月20日 by cool-jupiter
『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Second Viewing-

スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 85点
2019年12月21日 東宝シネマズなんば(MX4D・3D・字幕版)にて鑑賞
出演:デイジー・リドリー アダム・ドライバー
監督:J・J・エイブラムス

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『 スター・ウォーズ 』が完結してしまった。けれど、おとぎ話の世界は残る。劇中のとあるキャラクターではないが、“記憶”の中に美しいイメージを残しておきたいと思う。なので二度目の鑑賞では、楽しめた点と疑問に思った点を整理したい。

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以下、マイルドなネタばれあり

 

  • 楽しめた点

『 ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 』で、“自分にとってのスター・ウォーズとは、John Williamsの音楽とドロイド、ミレニアム・ファルコン号の三者から成るものである”と認識することができたが、その思いは今でも変わらない。様々なクリーチャーも魅力的ではあるが、やはりドロイドだなと思う。R2-D2、C-3PO、BB-8といった魅力的な面々にD-Oというマスコットが加わった。『 最後のジェダイ 』のポーグも悪くないが、やはりドロイドである。

 

また、ミレニアム・ファルコン号の活躍はもちろんのこととして、ラストの大団円でXウイングとファルコン号が対話をしていたように感じられた。

 

ファルコン「 久しぶりだな。えらいボロボロじゃねーか 」

Falcon: “Been a long time, dude. You’ve become a peace of junk.”

Xウイング「 人のことは言えないだろ、お前 」

X-Wing: “Damn you, Look what you look like.”

 

宇宙船というのも、『 スター・ウォーズ 』世界に欠かすべからざる重要なガジェットである。その宇宙船たちの発する声にも我々は耳を傾けるべきだろう。

 

『 スター・ウォーズ 』映画に皆勤しているC-3POの台詞から毒々しさが薄まって。ユーモアが強まった。あらゆるクリーチャーやドロイドとコミュニケーションを取ることが可能なこのドロイドは、グローバル化しつつある世界におけるコミュニケーションの在り方を示唆しているように思えてならない。

 

この完結作は、これまでの『 スター・ウォーズ 』の要素を随所に取りこんでいるが、基本的には『 スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還 』のリメイクであると言える。

『 用心棒 』が『 荒野の用心棒 』や『 ボディガード 』になったようなものである。したがって基本的な意味で新しさはない。それをどう評価するかは人による。Jovianは普段は鵜の目鷹の目で映画を観てはいるものの、『 スター・ウォーズ 』はおとぎ話だと思っている。おとぎ話の中身をあーだこーだと精査してもしょうがない。楽しむのみである。『 ピープルVSジョージ・ルーカス 』に出てきたような、極端なまでの naysayer にはなりたくない。彼ら彼女らはシスである。J・J・エイブラムスが、今作で無理やりとも言えるストーリーのまとめ方を選んだのは、そうした人々への意趣返しなのだろう。個人的には拍手喝采を彼には送りたいと思っている。

 

レイのキスについて。賛否両論どころか否の意見が全世界的に渦巻いているが、Jovianは一度目の鑑賞では???、二度目の鑑賞では「これもありだろう」と思えるようになった。一つには、ジェダイは恋愛禁止であるということ。これは取りも直さず、ジェダイの終焉を意味している。ハン・ソロと結婚し子どもも生んだレイア・オーガナは、フォースを使うことはあっても、ジェダイとは決して名乗らなかった。もう一つには、この完結作では“Two That Are One”=「二つで一つ」がテーマにもなっている。光と闇、陰と陽(男と女)、ジェダイとシス。レイが見つめる先の二つの太陽は、かつてはルークとレイアの象徴だった。レイはジェダイの志を受け継ぎながらも、自分探し=自分のパートナー探しを夢想しているのだと考えれば、それもおとぎ話の終焉にふさわしいだろうと個人的には思う。

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  • 疑問点

『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』で焼かれたはずの聖なるジェダイ・テキストが何故ファルコン号に積み込まれていたのか。その説明は、少なくとも二回見た限りではなかった。

 

同じく『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』のカント・バイトでは、武器商人たちがファースト・オーダーとレジスタンス、両方に兵器・武器の類を売っていることが皮肉たっぷりに描かれた。であるならば、あれほど巨大な規模の艦隊を構成するのには、文字通り天文学的なカネが動いているはず。それを誰も察知できなかったというのか。

 

翻訳のミスのようなものも見受けられた。『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』劇場版ではカイロ・レンの“The one from the village”が、「あの村の出身」という、トンデモ誤訳になっていたが、今作でも皇帝パルパティーンの

 

“I made Snoke.”

 

という台詞が

 

「 スノークは余の作り出した幻 」

 

という訳になっていた。その一つ前にレジスタンスの科学者が、闇の科学やらクローン技術(『 スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃 』への言及か)やらシスの秘術やらに触れていて、なおかつカイロ・レンがエクセゴルで死者を蘇らせようとしている、あるいは死者から生者を培養しようとしている装置(『 スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還 』のルークが入れられていたような装置そっくり)を見ているにもかかわらず、幻はないだろう。だったら、『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』のルークの秘術は何だったのか。ブルーレイでは間違いなく修正されるだろうが、それでは遅い。ここで“幻”などという訳語を選定した林完治氏の罪は重い・・・は言い過ぎか。だが、一定の責任を負うことは免れないだろう。

 

ポー・ダメロンの前身が少し明らかになったが、別に眉をひそめるものでもないだろう。ハン・ソロとチューバッカの方がはるかに悪者でならず者だった。キジーミの存在は否定しないが、このサブプロットは少々ノイズ気味である。

 

MX4Dで鑑賞してみたが、水しぶきが思ったほどではなかった。もちろん、一回当たりにシートに貯蓄可能な水量や、あまりにも観客を濡らしてはクレームが出るなどの懸念もあるだろう。しかし、フォースが距離を超えて、互いに物理的に作用しあう領域まで来ているのだから、荒れ狂う海に囲まれたデス・スターの残骸上でのレイとレンのライトセーバー・バトルでは、もっと激しく水しぶきを出してほしかった。まあ、これは映画ではなく劇場への注文か。

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総評

海外のレビューサイトやプロ・アマの批評家は、本作におおむね厳しい評価を下している。だが、かつての、旧世代の『 スター・ウォーズ 』ファンも、プリクエル三部作には厳しい評価を下していたが、新世代ファンにはそのことが理解できなかった。『 スター・ウォーズ 』をどう評価するのか。それは自分の幼年期にどのように向き合うのかとも言い換えられるだろう。そうした意味では、大人になり映画批評を職業にしてしまうと、子どもの頃のような接し方が難しくなる。何度でも言うが、『 スター・ウォーズ 』はおとぎ話である。それが娯楽作品や芸術作品として高く評価されているが、本質的にはおとぎ話なのである。鑑賞においては、このことを念頭に置かれたし。

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I’ll finish what he started.

レイがルークの後を継いで、とある人物を探すミッションに出る時の言葉である。『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』でカイロ・レンがベイダーのマスクに“I’ll finish what you started.”と誓っていた台詞と同じ構造である。【 what S + V =SがVするもの・こと 】である。

 

what I like =私の好きなもの

what I hate about this film =この映画で私の嫌いなもの

what they want to get =彼らが手に入れたがっているもの

what she has to fight for =彼女がそのために戦うもの

 

whatという関係代名詞は日常会話でもビジネスでもバンバン使うので、マスターすることは必須である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アクション, アダム・ドライバー, アドベンチャー, アメリカ, デイジー・リドリー, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Second Viewing-

『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Here comes my childhood.-

Posted on 2019年12月20日2020年4月20日 by cool-jupiter
『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Here comes my childhood.-

スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 85点
2019年12月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:デイジー・リドリー アダム・ドライバー
監督:J・J・エイブラムス

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『 スター・ウォーズ 』が完結してしまった。そして批評家やファンの評価は割れている。それはとても良いことだと思う。なぜなら、好きな人はとことん好きになれて、好きになれない人には決して好きになれない。これはそんな物語だからである。Jovianは、これを素晴らしいフィナーレであると感じた。少年時代に帰れた、おとぎ話の世界に戻れた。そのように感じたからである。

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あらすじ

死んだはずの銀河皇帝パルパティーンが復活した!ファースト・オーダーの最高指導者カイロ・レン(アダム・ドライバー)は、銀河の覇権を争う相手としてパルパティーンと対立。彼を追っていた。一方、レイ(デイジー・リドリー)は来る最終決戦に向けて、レイアから課された修行に励んでいた・・・

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以下、ネタばれ部分は白字

 

ポジティブ・サイド

人によってはこれら全てをネガティブに捉えるのだろうが、Jovianはポジティブに捉えた。すなわち、本作はエピソード1、2、3、4、5、6、7、8のごった煮である。なおかつ『 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 』や『 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 』の要素まで盛り込まれている。どこかで見た風景、どこかで見たキャラクター、どこかで見たプロット、どこかで見たイベント、どこかで見た光と影のコントラスト、どこかで見たカメラアングル、どこかで見たガジェット。それらがジョン・ウィリアムズの音楽と共に観る者に迫ってくる。それを肯定的に捉えるか、否定的に捉えるかは各人の自由である。

 

新しい要素に全く欠けるのかと言えば、さにあらず。『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』がフォースの新たな地平を開拓したように、今作もフォースのさらなる可能性を追求した。しかも、それがミディ=ファッキン=クロリアン的な要素を持ちあわせている。それを受け入れられた自分に驚いている。

 

『 スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ 』に散りばめられていたユーモアの要素と『 スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 』の恐怖の要素が適度な割合で配合されているところでも、J・J・エイブラムス監督の手腕を称賛したい。オリジナル三部作とシークエル三部作が見事に地続きになっている。『 スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還 』で、パルパティーンがルークを暗黒面に誘った時よりも、遥かに強い誘惑をレイに対して行う。愛する者を救うために負の感情にその身を任せよという誘引は、プリクエル三部作、特に『 スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 』が放った強烈なメッセージだった。それがパワーアップして帰ってきた。しかも、確たる意味を伴っている。ずっと謎に包まれてきたレイの出自と絡めた、絶妙の演出である。

 

そのレイをレイアがトレーニングするというアイデアも良い。前作ではカリスマ的な指導者から、ジェダイにしてフォースの使い手であることを体現した。そして演じるキャリー・フィッシャーの死そのものまでも物語に組み込むという大胆不敵なプロットに、フィッシャーはきっと満足しているに違いない。

 

エンディングは涙なしに見ることはできない。『 スター・ウォーズ 』を愛した全ての人は、それぞれに思い入れのある風景を持っていることだろう。だが、J・J・エイブラムスとJovianはこの点で波長が完全に合っていた。『 スター・ウォーズ映画考および私的ランキング 』で、自分にとっての『 スター・ウォーズ 』の原風景を語ったが、J・J・エイブラムスも同じだったようだ。光と闇、陰と陽、ジェダイとシス、そしてスカイウォーカー家のサーガは、見事な円環と共に閉じた。

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ネガティブ・サイド

なぜ2時間22分なのだろうか。きりよく2時間30分の物語にできたはずである。もっともっと語られるべきことを、徹底的に語り、見られるべきものを見せて欲しかった。

 

パルパティーン復活の経緯が完全に不明である。『 スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 』の最後に、ヨーダとメイス・ウィンドゥは「シスは常に師匠と弟子の二人」と語っていたが、スノークとパルパティーンの関係をこれで説明してもよかったのではないだろうか。

 

新キャラに元トルーパーが出てくるが、最終盤にランドが引き連れてくる大援軍に元トルーパーの脱走兵らがいれば、なお良かったのだが。存在していたが、編集でカットされたのだろうか。

 

カイロ・レンの物語も見事に閉じるが、母レイアとのツーショットはついに実現せず。これはブルーレイの特典映像、もしくはディレクターズ・カットに収録されるのだろうか。

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総評

“スカイウォーカーの夜明け”という副題は、実は正しかった。なるほど、そうだったのかと感じた。日は沈むが、また昇る。それこそがフォースにバランスをもたらすということなのかもしれない。様々な物語の予感を残しつつも、一つのおとぎ話が幕を下ろした。けれども、少年時代の感動は消えないし、これからも、その“記憶”は続いていく。

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Don’t be afraid of who you are.

be afraid of ~ =~を恐れる、である。レイアはレイに「自分が何者であるかを恐れるな」と伝える。ヨーダは

 

“Fear is the path to the dark side. Fear leads to anger. Anger leads to hate. Hate leads to suffering.”

 

と語った。レイは恐怖に屈しなかった。be afraid of ~という表現自体はそこまで大仰なものではない。I am afraid of dogs. = 私は犬が恐いんです、のように日常会話レベルで頻出する。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アクション, アダム・ドライバー, アドベンチャー, アメリカ, デイジー・リドリー, ファンタジー, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』 -Here comes my childhood.-

『 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 』 -お下劣面白フランス映画-

Posted on 2019年12月16日2020年4月20日 by cool-jupiter

シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 80点
2019年12月15日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:フィリップ・ラショー エロディ・フォンタン
監督:フィリップ・ラショー

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よくよく思い返してみれば、週刊少年漫画誌で平気で「もっこり」や「君と一発やりたい」などのネタがよく掲載OKになっていたものだ。『 シティーハンター 』や『 ジャングルの王者ターちゃん 』、『 BASTARD!! -暗黒の破壊神- 』などは当時の少年たち(自分含む)に強烈なイメージを植え付けていた。そうしたかつての少年たちをデモグラフィックにした作品の中でも、本作は出色の出来である。フランス映画界、恐るべしである。

 

あらすじ

シティーハンターのリョウ(フィリップ・ラショー)は裏の世界の凄腕ガンマンとして、相棒のカオリと共に数々の依頼を請け負っていた。ある時、究極の惚れ薬である「キューピッドの香水」が奪われた。その香りを嗅いでいたカオリやその他の者たちは48時間以内に解毒剤を服用できるのか・・・

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ポジティブ・サイド

作り手の原作に対する愛とリスペクトがスクリーンから直接伝わってくる。脚本・監督・主演の全てを務めたフィリップ・ラショーは漫画『 シティーハンター 』を再解釈するのではなく、“再現”することを試みた。そして見事に成功した。フランス人がリョウやカオリを演じているのに違和感を覚えない。これはすごいことである。

 

まずオープニングからして親切だ。というのも、シティーハンターとは誰で、どんな仕事をしているのかを一切説明することなく物語が始まるからである。この作品を観に来る人を作り手が最初からスクリーニングしている。これが心地好い。たとえば『 アメイジング・スパイダーマン 』でピーターがクモに咬まれるシークエンスや『 バットマン・ビギンズ 』でブルースの両親が強盗に殺されるシークエンスなどは、正直なところ多くのファンが「ああ、このシーン要らないよね・・・みんな知ってるし」と感じていたはずである。本作は、当たり前のように『 シティーハンター 』の世界に入って行ける。招かれるのではなく、いきなりその世界に存在している。そんなオープニング・シークエンスが待っている。

 

その冒頭のアクション・シーンも、映画ではなく漫画である。『 アクアマン 』も漫画的だったが、本作は漫画そのものである。まず、モザイクの代わりにジャンプのあのカラスがそのまま使われている。何のことか分からない人は残念ながら本作の対象外だ。何のことか分かる人は、一刻も早く劇場へGo!!!である。そして本来ならば緊迫感溢れるバトルのはずが、非常にユーモラスで、それでいてサスペンスフルでありスリリングでもある。そんな人は少数派だろうと思われるが、たとえシティーハンターを全く知らないままに劇場に来た人でさえ、冒頭の10分で冴場リョウというキャラクターが理解できる。このオープニングの疾走感とユーモアは『 デッドプール 』のそれに匹敵する。

 

ストーリーの要所をアクションで語るのも良い。話の展開はシンプルそのもので、ヤバい惚れ薬を、それを濫用している男から取り戻すということである。惚れ薬が使われる一方で、リョウたちはアクションを見せてくれて、その配分が適切だ。また、非常に珍しいPOV視点の格闘シーンがあり、『 ALI アリ 』や『 クリード 炎の宿敵 』などのボクシング映画の試合シーンで使われることはあっても、その他ジャンルではあまり見ない撮影技法である。このシーンのhand to hand combatと狙撃のシーンはかなり楽しかった。

 

終盤のド派手ファイトとガンアクションも『 マトリックス 』に迫る出来である。この場面ですら容赦のないギャグが放り込まれ、シリアスな展開にもかかわらず漫画世界にいるという安心感すら漂う。そして、この原作へのリスペクト溢れる漫画世界にいるという安心感を、ぶち壊しながらも確保するという離れ業のクライマックス。漫画を映像化しているのに、これほど漫画に見えてしまうのは何故なのか。実写であるにも関わらず、まるでアニメーションのようにすら感じてしまうのは何故なのか。その絶妙な仕掛けは、ぜひ劇場で自身の目でお確かめ頂きたい。

 

ネガティブ・サイド

大きく不満と言えるものは二つだけ。

 

一つは、リョウの「もっこり」シーンがなかったこと。といってもベッドシーンやラブシーンというわけではなく、下半身を隆起させる一コマがなかったということ。編集でカットされたのだろうか。

 

もう一つは、原作で最高の名場面である「ガラス越しのキス」がなかったことである。話の流れやエンディング直前のとある台詞のためにも、原作そのままに再現することが難しいのは理解できる。しかし、それを何とか実現する脚本は書けなかったものか。

 

総評

『 シティーハンター 』愛に満ちた作品である。のみならず亀仙人にしか見えないおじいさんや、『 らんま1/2 』ネタ、『 キャプテン翼 』や『 聖戦士星矢 』のネタなど、ジャンプ漫画へのオマージュも多数ある。30代後半以上でこれらの漫画をリアルタイムで楽しんでいた人には、チケット代と2時間という時間の投資を惜しむ理由は何もない。事実、Jovianは行こう行こうと思いながらも、チケット予約でいつも後手に回り、嫁さんと二人並んで座れる席の確保に苦労した。そして、実際の劇場も40歳前後か、それ以上のカップルがマジョリティだった。原作ファンならば本作を見逃してはならない。

 

Jovian先生のワンポイント仏会話レッスン

Je t’aime

挿入歌で繰り返しこのセンテンスが聞こえてきた。“I love you.”の意であることはよく知られている。Je t’aime, je t’aime, je t’aime comme ca.のように聞こえたが、だとすればI love you, I love you, I love you like this.の意である。知っている言葉ならリスニングはたやすい。逆に言えば、リスニングできなければ、まだ理解できていないということ。これはおそらくどんな言語を学習していても真理だろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アクション, アドベンチャー, エロディ・フォンタン, フィリップ・ラショー, ロマンス, 監督:フィリップ・ラショーLeave a Comment on 『 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 』 -お下劣面白フランス映画-

『 ルパン三世 THE FIRST 』 -Lupin is back in action!-

Posted on 2019年12月11日2020年4月20日 by cool-jupiter

ルパン三世 THE FIRST 65点
2019年12月8日 東宝シネマズなんばMX4Dにて鑑賞
出演:栗田貫一 小林清志 浪川大輔 沢城みゆき 山寺宏一 吉田鋼太郎 藤原竜也 広瀬すず
監督:山崎貴

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フランスのアルセーヌ・ルパンに、日本の和のテイストと鼠小僧のエッセンスを加えてルパン三世が帰ってきた。小栗旬バージョンの実写はどのキャストも頑張っていたものの、峰不二子役の黒木メイサが残念ながらノイズだった。ならばと3DCGアニメでルパンたちを蘇らせた。この判断は正解である。『 ドラゴン・クエスト ユア・ストーリー 』の傷も少しは癒された。

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あらすじ

時は第二次大戦。稀代の考古学者ブレッソンは、ある宝のありかを示した日記、“ブレッソン・ダイアリー”をナチスに狙われていた。時は流れ、パリにてお披露目されるそのダイアリーをルパン三世(栗田貫一)が狙って現れる。レティシア(広瀬すず)という考古学者の卵の少女と共に、ルパンは宝の謎解きに乗り出すが・・・

 

ポジティブ・サイド

ルパン三世とは何か。それは大泥棒にして義賊、犯罪者にして正義漢、破廉恥にして紳士、そうした非常に矛盾に満ちたキャラクターである。かかる複雑な属性がルパンの大いなる魅力になっていて、そのことは本作でもいかんなく発揮されている。例えば不二子に対しては「報酬は俺の体で」と下品なオファーをする一方で、レティシアには「いい女になれ」と優しく諭す。元々の漫画では、割とすぐにすっぽんぽんになって不二子に襲いかかっていたが、一般大衆アニメになるにつれて、そうしたエロ要素が薄れてきた。本作はルパンのそうしたスケベ属性を残している。山崎監督のルパン三世へのリスペクトは本物だと思える。

 

他のキャラも立っている。常にルパンに先んじて、しかし途中でルパン一味に合流しながらも、最後には美味しいところを奪っていく峰不二子。今回はつまらないものを斬らずに、斬るべきものを一刀両断に斬る石川五ェ門。超絶ドライブ・テクニックと超絶射撃テクニックを披露する次元大介。そして、おそらくララ・クロフトよりも強くてセクシーな峰不二子。まさに役者がそろっている。彼ら彼女らが生き生きと銀幕上を動くだけで、実に楽しく感じられる。

 

ストーリーも悪くない。ナチス第三帝国の復活ネタは古くは小説では『 ブラジルから来た少年 』、近年の映画でも『 アイアン・スカイ 』や『 帰ってきたヒトラー 』など、いつの時代でも掘り起こされるテーマだ。それこそ、ヒムラーやゲッベルスが映画化される日も近いはずである。また戦後70数年になんなんとする今、ナチス・ドイツは日本の若い世代にはファンタジー的な存在になりつつもある。そうした世界でルパンという架空のキャラクターを活躍させることで、かえってリアリティを増しているようにすら感じられた。

 

ストーリーはテンポよく進むし、スリルとサスペンスとユーモアの配分も見事である。ルパン三世とその仲間たちは見事に復活したと言えるだろう。なによりも名曲“ルパン三世のテーマ”が流れてくるだけで、少年時代が蘇ってくる。“ゴジラのテーマ”や“ロッキーのテーマ”と並んで、それが聞こえてくるだけで物語世界に一気に引き込まれるように感じる。THE FIRSTと副題にあることから、THE SECONDやTHE THIRDへの期待もふくらむ。

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ネガティブ・サイド

アクションシーンやプロットのあまりにも多くの部分がクリシェである。クリシェという言葉が辛辣に過ぎるなら、過去の名作へのオマージュが多過ぎると言い換えればよいだろうか。パッと思い浮かぶだけでも

 

映画『 インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 』

映画『 ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル 』

映画『 ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション 』

映画『 天空の城ラピュタ 』

映画『 ルパン三世 』(実写版)

TVアニメ『 未来少年コナン 』

TVアニメ『 ふしぎの海のナディア 』

 

などが挙げられる。特にお宝の封印は、びっくりするほど『 インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 』のそれにそっくりである。正直なところ、本作にはオリジナリティは認められない。

 

またヒロインであるレティシアの年齢はいったいどうなっているのだ?物語冒頭では赤ん坊で、その後十年だか十二年が経過したところで、美術館のキュレーター的ポジションについているというのか。大学への進学を夢にしているところからも10代後半であると思われるが、それでもやはりこのヒロインは年齢不詳である。

 

総評

個人的にはアクションに胸が躍り、ユーモアには笑顔にさせられたが、ストーリーそのものには驚きはなかった。劇場鑑賞後、Jovianの嫁さんは「サイコー!」と言っていた。そこまで良かったか?と思ったが、同じく観客にいた6人組アラサー女子たちが滂沱の涙を流しながら、シアター内でも劇場ロビーでも称賛の言葉を次々に述べていた。観る人によって異なる感想を抱くということの好例である。ルパン三世のファンであってもそうでなくても、チケット代に見合うエンターテインメント作品にはなっている。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

If you are an archaeologist, you have got to be a romanticist.

レティシアの「考古学者ならロマンチストじゃないと」という台詞である。ロマンチストは英語ではromanticist=ロマンティシストである。このように一般論を語る時は、しばしば主語をyouに設定するのが英語の特徴である。Jovianがアメリカ人の友人から聞いたこれと同じ構文として“If you don’t know about Harriet Tubman, you are not American.”というものがある。ここでは彼はyouを使ったが、これがJovianを指すものではないことは明らかである。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, アドベンチャー, ミステリ, 小林清志, 広瀬すず, 日本, 栗田貫一, 浪川大輔, 監督:山崎貴, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 ルパン三世 THE FIRST 』 -Lupin is back in action!-

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