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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』 -革命はテレビで放送されない-

Posted on 2025年10月13日2025年10月13日 by cool-jupiter

ワン・バトル・アフター・アナザー 75点
2025年10月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レオナルド・ディカプリオ ショーン・ペン ベニシオ・デル・トロ チェイス・インフィニティ
監督:ポール・トーマス・アンダーソン

 

3時間近い上映時間ということで、しっかり昼寝をしてからレイトショーに出陣。

あらすじ

パット(レオナルド・ディカプリオ)は過激派フレンチ75の一員として活動していた。同志のペルフィディアとその娘と共に暮らすようになるが、ある時、仲間が銀行強盗に失敗。一転して追われる身となったパットは、まだ若い娘のウィラと共に新たな戸籍を得て逃亡する亡するが・・・

ポジティブ・サイド

D・トランプが激怒しそうな作品。もうそれだけで面白い。ある意味でアメリカ版の『 桐島です 』の桐島聡が『 ハリエット 』のハリエット・タブマンと出会ってしまった、という物語だった。

 

あるきっかけによりハリエット、ではなくペルフィディアを執拗に追い回すことになる狂った警察官をショーン・ペンが怪演。個人的には『 アイ・アム・サム 』のイメージの強い俳優だったが、こんな頭のイカれたオヤジ役もやれることに軽く感動させられた。ストーリーが進むほどに狂気の度合いがどんどん増していき、見ているこちらが心配になるほどだった。

 

対照的に、ディカプリオは頭のイカれたオヤジというよりも、腑抜けてしまったオヤジが父親として強さを取り戻していくストーリー。序盤は常に頭がラリっていて、言動も不穏、動きもヨレヨレ。しかし、娘のウィラに魔の手が迫っていることを知ってからは徐々に革命の闘士として再覚醒していく。その過程の描写もサスペンスとユーモアの配分が絶妙。ポール・トーマス・アンダーソンのキャリアの中の演出でも、これはベストではないか。

 

そのボブを手助けするベニシオ・デル・トロ演じるセンセイのキャラも非常に味わい深い。ヒスパニックであり、英語とスペイン語を話し、空手の指導者でありながら教え子のウィラはなぜか韓国語を話すという、劇中で誰よりもアメリカ的と言えるキャラである。かつ現代版のハリエット・タブマンと言える男である。彼が用意しているトンネル(実際にはtunnnelと発音されていた)の字幕が地下鉄道となっていることに気付かれただろうか。これはまさに『 ハリエット 』が車掌を務めた地下鉄道へのオマージュ。字幕翻訳担当の松浦美奈は great job である。警察に逮捕されたボブが見事に脱走できたのも、まさに現代版の地下鉄道の力によるもの。決してご都合主義ではない。もちろん本物の「地下鉄道」にも言及される場面があり、それに言及する人々がどのような人種であるかにも注目してほしい。

 

アメリカのリベラルを強烈に支持しているようにも嘲笑っているようにも見える。受け取り方は様々だろうが、アメリカはしばしば建国の父たちを称揚する。ボブとウィラという一種のいびつな親子関係をアメリカという非常に若い国家の歴史と重ねて合わせて見るとよいだろう。たとえば建国の父たちが定めた One man, one vote. =一人一票という原則は平等に見えて実は違う。これは実はアメリカに限った話ではなく、たとえばアジアの中で最も急速に近代化に成功した日本も、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の精神を発揮したが、これも実は「天は日本人の上にアジア人を造らず欧米人の下に日本人を造らず」というのが福沢の本音だったりする。本作はアメリカ特有の問題を扱った上質なサスペンスというだけではなく、それが実は先進国の近現代史のダークな精神性の発露とそれへの批判という意味にも捉えられるべきである。

 

ネガティブ・サイド

ペルフィディアのキャラがイマイチよくわからない。序盤早々に姿を消してしまうが、そこは何らかの最後っ屁をかましてほしかった。

 

賞金稼ぎの突然の変心の理由が弱いというか、”I don’t do kids.”と言いながら、ロックジョーの提案にあっさり乗ってしまうのは何故なのか。握手の前に数秒の躊躇なり、一瞬の表情の曇りなどを見せてくれれば、変心のシーンはご都合主義には映らなかっただろう。

 

ウィラにはジャン=クロード・ヴァン・ダムのハイキックをロックジョーにお見舞いしてほしかった。その上でケロッとしているロックジョーというのは、かなりシネマティックなシーンになったはず。

 

総評

3時間近い上映時間に身構えていたが、最初の30分あたりを過ぎてしまえば、後はストーリーに引き込まれるのみ。アクションあり、サスペンスあり、スリルあり、ユーモアありの濃密な時間だった。日本はアメリカの30年遅れだとよく言われるが、外国人人口が全体の3パーセントを占めるようになった今、本作は日本社会の在り方を考えるための大きなヒントにもなりうるエンタメ大作だと言える。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fight fire with fire

直訳すれば「火を使って火と戦う」だが、実際のニュアンスは「やられたらやり返す」というもの。劇中では火炎瓶を投げてくるモブに対して、Let’s fight fire with fire. のセリフと共に催涙弾が撃ち込まれた。別に火炎放射器で反撃しても、意味としてはおかしくないが。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 シークレット・メロディ 』
『 恋に至る病 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ショーン・ペン, チェイス・インフィニティ, ベニシオ・デル・トロ, レオナルド・ディカプリオ, 監督:ポール・トーマス・アンダーソン, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』 -革命はテレビで放送されない-

『 君の声を聴かせて 』 -王道の恋愛映画かつ家族映画-

Posted on 2025年10月7日 by cool-jupiter

君の声を聴かせて 70点
2025年10月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ホン・ギョン ノ・ユンソ キム・ミンジュ
監督:チョ・ソンホ

 

『 あの夏、僕たちが好きだったソナへ 』と同じく、台湾映画の韓国リメイク。そうとは知らずにチケット購入したが、かなり面白かった。

あらすじ

ヨンジュン(ホン・ギョン)は定職に就かず、実家の弁当屋を嫌々手伝っていた。ある日、配達先のプールでろうあ者の水泳選手ガウル(キム・ミンジュ)を世話する姉のヨルム(ノ・ユンソ)に一目惚れして・・・

 

ポジティブ・サイド

哲学専攻ゆえに就職に難儀するというのは、宗教学専攻ゆえ同様の経験をしたことがあるJovianにはいたく共感できた。自分がある程度、社会不適合者であるという自覚は当然あったが、いかなる分野であれ学問をそれなりに収めてきた人間を冷遇する社会は息苦しいではないか。

 

本作はしかし、ヨンジュンに手話を授けていた。手話を学んだ理由も終盤に明かされるが、純朴青年そのものという感じでほっとする。プールサイドで見かけた美女の妹に速攻で姉の名前を聞きに行くという行動がキモいと感じられないのは、彼のピュアさが垣間見えるからか。

 

互いにソウル在住の26歳だとは思えないほどのスローな関係の進展に全くやきもきしない。それは本作が恋愛映画ではなく家族の物語だから。ヨンジュンの両親は、本当なら息子を家からたたき出してもおかしくないのに、優しく見守る。ヨルムとガウルの両親も、木の上に立って見るの例えではないが、遠くから娘を信じて見守っている。

 

本作にはとある仕掛けがあり、気付く人は最初の10分で気付くだろう。普通の人でも中盤で、どんなに鈍い人でも終盤には分かるはず。たとえば『 マローボーン家の掟 』のように、登場人物同士の・・・おっと、これ以上は興ざめになる。しかし、本作が優れているのは、その仕掛けが分かっていても楽しめる構成にある。両片思いの変則バージョンとでも言おうか。

 

全編ほとんど手話で、しかもその手話のほとんどが韓国ローカルの手話。したがって、日本の手話を解する人なら、たとえば『 ケイコ 目を澄ませて 』のカフェでの会話シーンが理解できただろう。しかし、本作は無理。だが、どういうわけか通じるように感じられるのだ。それは、手話を使うヨンジュン、ヨルム、ガウルがとても表情豊かだから。しかも、それが演技ではなく、本当に恋する男女が互いの心を図らずもさらけ出しているかの如く。いや、それも監督の演出、役者の演技なのだが、観ている側が「いい演技だなあ」ではなく、「いいやつだなあ」、「かわいい子だな」と素直に思えるキャラクター像を作り上げている。本質は家族の物語なのだが、ラブロマンスとしても非常に味わい深い作品に仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

クレームおばさんが実際にペナルティを食らうシーンが5秒でいいから欲しかった。

 

クラブのシーンはとある伏線なのだが、その伏線は別のシーンでも張られていて足りていた。個人的にはもっと『 ベイビー・ドライバー 』でジョーが骨伝導スピーカーで音楽を楽しんだような、もっと少人数で屋内で音楽を楽しむようなシーンが欲しかった。

 

とある事件をきっかけに姉妹がギクシャクする展開になるが、この前のシーンから姉妹の間の思いのズレに関する描写を小出しにしていってくれていれば、ガウルの涙の訴えがもっとドラマチックになったのではないだろうか。

 

総評

エンタメとして普通に面白く、ロマンスとしてもさわやかで、ヒューマンドラマとしても申し分ない出来栄え。デートムービーに最適だが、中高年カップルが息子や娘が交際相手を連れてくる現代的シミュレーション物語として鑑賞するのもいい。スルーしていた『 ぼくが生きてる、ふたつの世界 』や、小説が面白かった『 レインツリーの国 』あたりを鑑賞してみたくなった。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャンカンマン

ちょっと待って、の意。これもパリパリ=早く早く、と並んで非常によく聞こえてくる表現、かつパリパリ同様に2回連続で発話されることが多い。ドラマや映画で必ずと言っていいほど聞こえてくるので、ぜひ耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』
『 ブラックバッグ 』
『 RED ROOMS レッドルームズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ミンジュ, ノ・ユンソ, ヒューマンドラマ, ホン・ギョン, ラブロマンス, 監督:チョ・ソンホ, 配給会社:KDDI, 配給会社:日活, 韓国Leave a Comment on 『 君の声を聴かせて 』 -王道の恋愛映画かつ家族映画-

『 侵蝕 』 -サイコパスをいかに受容するか-

Posted on 2025年9月22日2025年9月22日 by cool-jupiter

侵蝕 65点
2025年9月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クァク・ソニョン キ・ソユ イ・ソル クォン・ユリ
監督:キム・ヨジョン イ・ジョンチャン

 

謎の体調不良が少しマシになったので、久々に映画館へ。前情報一切なしで本作のチケットを購入。

あらすじ

水泳インストラクターのヨンウン(クァク・ソニョン)は、幼い娘のソヒョン(キ・ソユ)が動物や他人を平気で傷つけていく様に戦慄しながらも、必死にわが子を育てていた。しかし、ある時、ソヒョンが同い年の女の子を決定的に傷つける事件が起こり・・・

ポジティブ・サイド

子役が怖すぎ。どう演技指導したのだろうか。台詞も不穏なものばかりで、演じていたキ・ソユのケアがどう行われていたのか心配になるほどだった。子ども特有の無邪気な残酷さなのか、それともその子だけの悪魔的な性質なのかをあいまいにせず、いきなり後者の路線で描いていたのは潔いと感じた。母を演じたクァク・ソニョンの幸の薄さも、娘の異常性をより際立たせていた。

 

娘に精神的に侵蝕されていく母親の話かと思っていたが、物語は一転して思わぬ方向へ。過去の不明な女と、もう一人の過去の不明な女が織りなすサスペンスとスリラーが始まる。特殊清掃業を営む人たちに家族として拾われていく展開が面白い。特殊清掃=孤独死した人の住居の清掃なわけで、畢竟、家族がいない、あるいは家族と疎遠な仏様ばかりとなる。そこに、家族ではないものが家族的な関係になっていくプロットが対照的に展開され、元々いたミン(クォン・ユリ)の居場所がヘヨン(イ・ソル)に侵蝕されていくことになる。家族の絆をかなり変則的に描いた『 パラサイト 半地下の家族 』とは同工異曲のサスペンスは面白かった。

 

観客側には上記のサスペンスに加えてミステリも提示される。舞台は当初の20年後なのだが、ソヒョンはどうなったのか、誰がソヒョンなのかという謎だ。このあたりは第一感に従えば問題ない。問題は、ソヒョンがヨンウンから得た「人間でも動物でも、寝食を共にすれば家族なのだ」という教えがどれほど彼女に浸透していたのかという点で・・・おっと、これ以上は書かない方がよいだろう。

 

エンディングには賛否両論あるだろうが、Jovianは賛である。なにが救いなのか、それとも救いがそもそもあり得るのかは、それこそ人によるだろう。

 

ネガティブ・サイド

ソヒョンの父親のいい加減さに辟易させられた。子どもから真っ先に逃げ出しておいて、都合のいい時だけ父親面。最初から登場させなくてよかったのでは?

 

精神科医と同様に牧師による説法あるいはヨンウンの告解のシーンが欲しかった。それらがあって、かつ的外れか、全然救いにならない内容であれば、ヨンウンが心理的に追い詰められていく様にもっとリアリティが生まれたはず。

 

某施設は大火災に遭ったはずだが、なぜあのような資料が残っていたのだろうか。そこが腑に落ちなかった。

 

総評

本作を鑑賞して、佐世保の女子高生による同級生殺人事件を思い出した人は多いのではないだろうか。ダイバーシティだとかインクルージョンだとか言われて久しいが、他者に危害を加える存在を「どのように」許容するかは難しい問題。家族は最も小さな社会の単位だが、そこへの所属を争うという『 パラサイト 半地下の家族 』とは別の意味でのサスペンスが盛り上がる異色作。日本では絶対に書かれない脚本なので、興味のある向きはぜひ鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンセンニム

ソンセン=先生、ニム=様である。韓国は役職や肩書の後にも尊称をつける文化なのである。大学で講師をしていた時、たまに勘違いした学生がプロフェッサーと呼んでくることはあったが、高校の英検対策課外授業だと、明らかにふざけてソンセンニムと言ってくる男子高生がいたりした。女子としゃべるためには英語よりも韓国語の時代か。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 蔵のある街 』
『 ブロークン 復讐者の夜 』
『 宝島 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ソル, キ・ソユ, クァク・ソニョン, クォン・ユリ, サスペンス, スリラー, 監督:イ・ジョンチャン, 監督:キム・ヨジョン, 配給会社:シンカ, 韓国Leave a Comment on 『 侵蝕 』 -サイコパスをいかに受容するか-

『 あの夏、僕たちが好きだったソナへ 』 -青春を追体験する物語-

Posted on 2025年8月12日 by cool-jupiter

あの夏、僕たちが好きだったソナへ 65点
2025年8月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ダヒョン ジニョン
監督:チョ・ヨンミョン

 

台湾映画『 あの頃、君を追いかけた 』の韓国リメイクとは知らずにチケット購入(というかポイント鑑賞)。

あらすじ

高校生のジヌ(ジニョン)は何事にも本気にならず、男友達とつるむ日々を送っていた。皆が学級委員のソナ(ダヒョン)に恋する中、ジヌはあることでソナに助け舟を出す。そこから二人は互いを意識し始めて・・・

ポジティブ・サイド

男子高校生のアホさとクラスもしくは学校のマドンナとの距離感や関係性がうまく描けている。このあたりは古今東西、普遍的なものがあるのだろう。男子校出身だったJovianの周りには確かにいつも寝ている奴、いつもエロいことばかり考えている奴、いつも食べている奴、やたらとまじめに勉強する奴が確かにいた。

 

高校の頃の友情は大学に入ると大体切れてしまうか細くなってしまうが、その細さは強さでも弱さでもある。それを感じさせるエピソードも多彩で、かつ説得力がある。男は幼稚で、女は常にそんな男の幼稚さの先を行っているというのも古今東西に普遍的な真実なのだろう。そのお手本がジヌの父と母というのも笑えるし、また頷ける。

 

原作がそうなのだろうが、決定的なアイテムの使い方が巧みだと感じた。『 SLAM DUNK 』や『 はじめの一歩 』といった日本の漫画が単なるガジェットとしてではなく物語を構成するパーツになっている。その中でも白眉はシャツ。一瞬だけだが、Jovianの心臓は確かに止まった。初恋は実らないとか初恋は甘酸っぱいと言われるが、まさしくビタースイートな記憶を呼び起こしてくれる物語だった。

 

ネガティブ・サイド

災害シーンの描写が弱かった。というか、軍隊の生活がどういうものなのか、いかに俗世と隔絶されてしまうのかを表すシーンを1つか2つ入れておいてくれればよかった。台湾や韓国と違い、世界の多くの国々には兵役などないのだから。

 

ソンビンら、悪友たちの大学生活あるいは野郎同士の横のつながりも見てみたかった。

 

ホラーシーンの完成度が無駄に高く、直近で観た邦画ホラーより怖かった。そこで、ジヌとジニョンの距離が物理的に縮まるというシーンがあってもよかったのでは?

 

総評

テイストとしては『 狼が羊に恋をするとき 』に近い。青春のもどかしさやじれったさが存分に描き出されており、中年には刺さる内容になっている。本作はむしろ高校生や大学生のデートムービー、というか仲が良いけれど付き合うまでに至っていない相手を誘うのにちょうど良いのではないだろか。30年前にこんな映画や小説があったらなあ、と郷愁を覚えた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

the apple of one’s eye

愛する人/物、とても大切な人/物の意。元々はthe pupil of the eye=目における瞳=中心的なものを指す表現だったのが、瞳がリンゴに置き換わったらしい。たしか詩編とかに「我を瞳のごとく守りたまえ」みたいなのがあったな。ということは2000年以上前からヘブライ語圏あるいはそこに影響を与えたオリエントですでにリンゴの効能が知られていたのか。This new house is the apple of my eye. =この新居は僕の宝だ、のように使ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 桐島です 』
『 エレベーション 絶滅ライン 』
『 亀は意外と速く泳ぐ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, ジニョン, ダヒョン, ラブロマンス, 監督:チョ・ヨンミョン, 配給会社:シンカ, 韓国Leave a Comment on 『 あの夏、僕たちが好きだったソナへ 』 -青春を追体験する物語-

『 ジュラシック・ワールド/復活の大地 』 -単なる過去作の焼き直し-

Posted on 2025年8月12日2025年8月12日 by cool-jupiter

ジュラシック・ワールド/復活の大地 20点
2025年8月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:スカーレット・ジョハンソン マハーシャラ・アリ
監督:ギャレス・エドワーズ

 

雨で駅まで行く気にならなかったため、徒歩圏内の劇場へ。昼は超絶混雑していたのでレイトショーを選択。

あらすじ

巨大製薬会社は冠状動脈疾患治療のR&Dのために陸海空の巨大恐竜の組織を必要としていた。その任にあたるのはゾーラ(スカーレット・ジョハンソン)は旧知の傭兵ダンカン(マハーシャラ・アリ)らと共に、赤道付近のとある島へと向かうが・・・

ポジティブ・サイド

映像は美しい。特にブロントサウルスの巨大さは圧倒的。『 ジュラシック・パーク 』を劇場で観た時に近い感覚を再体験できた。

 

とある恐竜の水泳シーンは斬新だった。

 

ジョン・ウィリアムズ作曲のテーマ曲が随所(一か所だけ納得はいかなかったものの)で聞けたのもよかった。

ネガティブ・サイド

前作のイナゴは結局どうなった?『 ジュラシック・パーク 』および初期三部作のメッセージだった “Life will find a way.” は残念ながら『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』と本作で完全に死んだのだと確認できた。恐竜(翼竜や海生爬虫類も含めて便宜的に総称させてもらう)が現代の環境に適応できず、赤道付近だけで細々と暮らしているとなると、雪山を元気に走り回っていたブルーとは何だったのか。

 

ギャレス・エドワーズが『 ジュラシック・パーク 』の大ファンであることは様々なオマージュから伝わってきた。発煙筒やら手やら、いろいろと懐かしいシーンが思い起こされたが、ある時点から食傷気味に。

 

また、この監督は自分のビジョンを別のキャラクターを借りて何度も再構築しようとする癖がある。巨大生物同士の愛情表現は『 モンスターズ/地球外生命体 』でこそ映えたが、『 GODZILLA ゴジラ 』では少しくどかった。本作に至っては既視感ばかりで感動がなかった(ビジュアル面だけはすごかったが)。

 

そもそも冠状動脈疾患を「治療」したいというのがいかにもアメリカ的。治療ではなく予防しろと言いたい。恐竜を研究対象にするのではなく、食習慣や運動習慣を見直せと言いたい。だいたい体が大きければ大きいほど心臓が大きくなり、心臓が大きければ大きいほど心筋が分厚くなる、ってアホかいな。脚本家は生物の循環器系の特徴を少しでも調べたのだろうか。循環の効率で言えば、大きな動物ほど心臓のサイズ比は小さくなる。犬の心臓が体重に占める割合とクジラの心臓が体重に占める割合を比較してみよ!

 

ゾーラもダンカンも恐竜など相手にしたことがないだろうに、やたら「自分たちは専門家」という態度を見せるのは何故なのか。また船内でかつての傭兵仲間や家族について語るシーンがあるが、ここで例のテーマ曲を流すのは何かが違うように思った。仲間を想うゾーラと、家族と仲間の両方を想うダンカンがそれぞれに漂流家族を守ろうとするのが、どこかちぐはぐに感じた。

 

その家族のパパも大海原に娘たちを連れ出すのもいいが、大自然および動物に対する最低限の教育はしておけと言いたい。野生動物にエサをやるな!野生動物を勝手に移動させるな!

 

生物学者のルーミスは Survival is a long shot. とご高説を垂れ流してくれるが、恐竜たち全般が捕食行動が下手すぎ。特にティラノサウルス。あんなに不器用にかみつき失敗を繰り返されると、ルーミスの演説が無意味に感じられた。またルーミスは人間の知性についても云々してくれたが、17年前にD-Rexを逃がした原因がアホみたいなゴミで、なおかつ施設の構造も人間本位ではなく恐竜本位に作られているというアホっぷり。これで人間の知性が云々と論じるのは無理がある。そのD-Rexも、人為的な変異が加えられている=必ずしも太古の環境でしか生きられない、という危険な存在であるにもかかわらず、駆除されず放置されているとはこれ如何に。

 

苦労して手に入れた恐竜の体液サンプルも全世界に公開するという。そんなことをしても、どこの研究者も受け取らないだろう。違法な手段で入手したこと間違いなしの材料で研究しようとするのはマッドサイエンティストぐらいで、マッドサイエンティストは『 ジュラシック・パーク 』でも『 ジュラシック・ワールド 』でも明確に否定された。スピルバーグやマイケル・クライトンは、何らかのアドバイスはしなかったのだろうか。

 

総評

言葉は悪いがゴミ作品である。頭を空っぽにして2時間をそれなりに楽しく過ごすことはできるかもしれないが、シリーズ、特に最初期の作品にリアルタイムに触れて感動した世代からすると、許しがたい内容だ。というか、ギャレス・エドワーズはまさにそういう世代のはずなのだが・・・ 客の入りはかなりよかったのでライトな層には響くのかもしれないが、シリーズの熱心なファンならスルー推奨である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

If you insist

直訳すれば「もしあなたが主張するなら」だが、実践的には「そこまで言うのなら」といったところ。『 トップガン 』のビーチバレーでグースがマーヴェリックに「もう1ゲームやろうぜ」と強く誘うシーンがある。マーヴェリックが受けるとすれば “If you insist, I’ll play only one more game.” のように言ったはず。飲み会で2軒目3軒目に誘われたなど、仕方ねえなあ的なニュアンスで折れる時に使おう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 桐島です 』
『 エレベーション 絶滅ライン 』
『 あの夏、僕たちが好きだったソナへ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, アクション, アメリカ, スカーレット・ジョハンソン, マハーシャラ・アリ, 監督:ギャレス・エドワーズ, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 ジュラシック・ワールド/復活の大地 』 -単なる過去作の焼き直し-

『 入国審査 』 -移住の勧め・・・?-

Posted on 2025年8月4日2025年8月4日 by cool-jupiter

入国審査 70点
2025年8月2日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:アルベルト・アンマン ブルーナ・クッシ
監督:アレハンドロ・ロハス フアン・セバスティアン・バスケス

 

残業weekなので簡易レビュー。

あらすじ

米国移住のためスペインからニューヨークに降り立ったディエゴ(アルベルト・アンマン)とエレナ(ブルーナ・クッシ)は、乗り継ぎの際に空港職員に別室に誘導される。型通りの質問はやがて拒否権のない尋問へと変わっていき・・・

ポジティブ・サイド

単純なプロット、非常に短い時間、そして非常に限定された空間だけで、極めて濃厚なサスペンスとドラマを生み出すことに成功している。

 

本作の尋問の数々に『 港に灯がともる 』のネガティブ・サイドを思い出した。帰化の経験がある人は少ないだろうが、お国というのはしばしば一線を越えた質問をしてくる。書いてしまうと問題になりかねないので書けないのだが、本作を見て思い出したのが帰化前の法務局のお役人様との面談だったということ、それ自体が日本(そしてたいていの国)の本音を雄弁に物語っていると言えよう。

 

印象的だったのはBGM。BGMの使い方ではなく、いかにBGMを使わずに状況を描写するのか。環境音や空港の放送の声が非常に無機質かつ緊迫感を伴ったものになっていくというのは、非常に得難い経験だった。序盤のちょっとした会話が大きな伏線になっていたりと、脚本も上質。劇場鑑賞を逃しても配信やレンタルでぜひ鑑賞されたし。

 

ネガティブ・サイド

ボールペンはどうなった?

 

エレナは色々と迂闊すぎ。ディエゴはもっと色々と迂闊すぎ。もう少し地に足の着いたキャラクターでも同等のサスペンスは生み出せたのではないかと思う。

 

総評

低予算映画のお手本のような構成。77分という短時間ながら体感では105分ほどのボリューム感があった。アメリカがフォーカスされてはいるが、日本に置き換えて鑑賞してもOK。入管といえばウィシュマ・サンダマリ事件が想起されるが、人権意識に欠けた対応が日常茶飯事になっていることは想像に難くない。参院選できな臭い政党が議席数を大幅に伸ばしたが、出入国管理は厳密に、しかし適正に行ってほしいと切に願う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Third time’s a charm.

三度目の正直の意。一度目の挑戦でうまくいかなくても、粘り強く挑戦し続ければいつかは報われるかもしれない。職場や日常生活で  “Don’t give up yet. They say ‘Third time’s a charm.’” のようにサラッと言えれば英検1級以上だろう。知っているというのは passive knowledge、使えて初めて active knowledge と言える。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 桐島です 』
『 エレベーション 絶滅ライン 』
『 近畿地方のある場所について 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アルベルト・アンマン, サスペンス, スペイン, ブルーナ・クッシ, 監督:アレハンドロ・ロハス, 監督:フアン・セバスティアン・バスケス, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 入国審査 』 -移住の勧め・・・?-

『 BAD GENIUS バッド・ジーニアス 』 -カンニングはやめよう-

Posted on 2025年7月29日2025年7月29日 by cool-jupiter

BAD GENIUS バッド・ジーニアス 60点
2025年7月27日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:カリーナ・リャン
監督:J・C・リー

 

休日出勤&残業weekなので簡易レビュー。

あらすじ

移民の子のリン(カリーナ・リャン)は全米トップクラスの頭脳の持ち主。それにより奨学金を得て、名門高校に入学し、グレースと友人になる。リンは試験に呻吟するグレースをアシストしてしまうが・・・

ポジティブ・サイド

原作の天才ふたりに、移民の子かつ有色人種という味付けをほどこしたのは、いかにもアメリカらしい。さらにそうした天才の頭脳をうまく搾取しようとするのは、やはり白人。しかもとびっきり頭が悪そうな奴ら。製作者たちはよく分かっている。

 

クンタ・キンテを持ち出すことで、黒人コミュニティの中の序列を見せつけ、さらにもう一人の天才バンクの背景についても示唆するという手法は見事だった。ボブ・グリーンの『 マイケル・ジョーダン物語 』で、ジョーダンが『 ルーツ 』について熱く語るシーンが印象に残って、岡山の紀伊国屋で『 ルーツ 』を買ってもらい、読んだ記憶がある。上下巻だったかな。

 

閑話休題。

 

第二次トランプ政権は発足早々に不法(とされる)移民を大量に送還し、留学生数にもキャップを設けようとしているが、たとえばアメリカの大学院レベルで情報学やコンピュータサイエンスを学んでいるのは圧倒的にインド人と中国人が多い。こうした学生を減らしてしまうと、後々にシリコンバレー自体が弱ってしまうことに気付いていない、あるいはその可能性から目を背けているのが彼の国の現状。そうした現状を背景に本作を見れば、最後のリンの決意がかなり独特な色彩を帯びたものとして映ってくるだろう。

 

ネガティブ・サイド

リンがクロスカントリーの実力者であるという設定はどこに行ったのか。まったく無用の設定だった。

 

リンが某試験の計算内容を用紙に残してしまうとは、本当に天才か?こんな smoking gun を残してしまうのはあまりにも間抜けだろう。その後の学校生活で要注意人物として教師たちに目を付けられるはずだが。

 

リンがなぜ音楽をそこまで勉強したいのかが、少しわかりにくい。というか説得力に欠けた。母親との大切な思い出であり、辛い現実からの逃避先でもあるのは分かるが、それをカンニングに使おうというのは、いくら子どもとはいえ倫理的にどうなのか。

 

総評

鑑賞後、オリジナルの『 バッド・ジーニアス 危険な天才たち 』と同時に『 ルース・エドガー 』も思い起こした。脚本家が同作の監督兼脚本なのか。アメリカ社会の課題をうまく作品世界に落とし込んでいる。日本でもTOEICの不正受験が最近ニュースになったり、少し前には就活・転職時のSPIの替え玉受験もニュースになった。カンニングについて考えるきっかけになる作品だと言える。

 

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

Resolvere. Provocatio vincere. 

試験の教室の壁に書かれていた標語。直訳すると To solve. To conquer the challenge. となる。ある程度英語に慣れた人なら、resolvereにresolveが見えるだろうし、provocatioにはprovocationが見えるだろう。興味のある人は etymology dictoinaryで調べるとよい。日本語に訳すなら「(問題を)解くこと。(それは)困難に打ち勝つこと」となるだろうか。これはカンニングの手法およびリンの決断の両方を示唆していることに鑑賞後に気づくことだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 桐島です 』
『 入国審査 』
『 エレベーション 絶滅ライン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, カリーナ・リャン, クライムドラマ, サスペンス, 監督:J・C・リー, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 BAD GENIUS バッド・ジーニアス 』 -カンニングはやめよう-

『 ハルビン 』 -歴史的暗殺劇を淡々と描写する-

Posted on 2025年7月18日 by cool-jupiter

ハルビン 60点
2025年7月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ヒョンビン リリー・フランキー
監督:ウ・ミンホ

 

伊東博文暗殺劇に興味がわき、チケット購入。残業続きで余裕がないため簡易レビュー。

あらすじ

大韓義軍のアン・ジュングン(ヒョンビン)は日本軍と交戦し、勝利する。しかし、捕虜として解放した将兵がヒョンビン不在の義軍を襲撃。ヒョンビンは大韓義軍の幹部たちからスパイとしての疑惑の目を向けられることになり・・・

ポジティブ・サイド

特に深い説明もなく、いきなり対日本軍のゲリラ戦が始まる。テンポがいい。

 

アン・ジュングンが英雄として祭り上げられていく映画かと思っていたが、実際はその逆。大韓義軍の中でアン・ジュングンがある意味で孤立化し、それでも一軍を率いて前線に立ち続ける姿は英雄というよりは孤高の人だった。この解釈は面白い。

 

リリー・フランキー演じる伊東博文の韓国の統治論は、真理ゆえにまさに韓国人の最も気に食わないところだろう。

 

韓国、ウラジオストク、満州、ハルビンと国際的なスケールで物語が進行していく。その中にスパイも紛れ込み、緊張感が否応なく増していく。アン・ジュングンがコン夫人にロシア語を尋ねたのは史実だろうか。テロリストではなく義士として国際的にも歴史的にも名を遺す名シーンにつながった。

 

ネガティブ・サイド

日本を悪者にしたいのは分かるが、そもそもアン・ジュングンが捕虜を解放しなければよかっただけの話。これはこれでアン・ジュングンの説く平和論につながるのだろうが、劇中でその側面が強調される効果は生まれていなかった。

 

森という軍人さんは頑張ってはいたものの、日本語に難あり。名のある役者は好感度ダウンを恐れて引き受けなかったのだろうが、無名かつ野心のある日本の役者ならオファーを受けたことだろう。ここは日本人の役者を起用すべきだった。

 

アン・ジュングンの周囲にスパイが送り込まれ、それは誰なのかというサスペンスが盛り上がるが、このハラドキ感は長続きしなかった。容疑者が実質一人しかいないからだ。

 

総評

韓国ではヒット、しかし日本では興行的にはさっぱりだろう。ただ、日本も閔妃暗殺やら張作霖爆殺やら色々とやらかしていることを忘れてはならない。閔妃の悲劇的な最期もそのうち映画化されるだろう。選挙前なので政治的なことを言うが、外国とは別に仲良くする必要はない。ただ、敵に回すようなことはすべきではないということ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

トンジ

同志の意。ロシアや一昔前の日本の過激派左翼と同じで、仲間のことは同志と呼ぶのが韓国でも習わしだったようである。韓国の抗日映画は今後も作られると思うので、そうした作品ではトンジという言葉が飛び交うことだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 この夏の星を見る 』
『 愛されなくても別に 』
『 桐島です 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, ヒョンビン, リリー・フランキー, 歴史, 監督:ウ・ミンホ, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 ハルビン 』 -歴史的暗殺劇を淡々と描写する-

『 スーパーマン(2025) 』 -リブート失敗-

Posted on 2025年7月14日2025年7月14日 by cool-jupiter

スーパーマン(2025) 30点
2025年7月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:デビッド・コレンスウェット レイチェル・ブロズナハン ニコラス・ホルト
監督:ジェームズ・ガン

 

『 ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 』のジェームズ・ガンが、DCEU最強の男をリブート。結果は惨憺たるものだった。

あらすじ

普段は新聞記者のクラーク・ケント、しかしその正体はクリプト人のスーパーマン(デビッド・コレンスウェット)は、他国の紛争に未然に介入する。それにより同僚かつ恋人のロイス・レイン(レイチェル・ブロズナハン)からインタビューを受けるが・・・

ポジティブ・サイド

リブートされた世界ということでスーパーマンのオリジンについてスリム化して、ナレーションで終わり。これには別の狙いもあったのだが、『 スパイダーマン 』や『 バットマン 』がリブートされるたびに謎のクモに咬まれたり、両親が射殺されたりといったシーンを見せられるのにはウンザリしていた。誰もが知るヒーローの物語の導入はこれぐらい軽くても構わない。

 

スーパーマンを演じたデビッド・コレンスウェットは、憂いを帯びたカヴィルとは違い、スーパーマンのスーパーな部分ではなくマンの部分を大いに強調したキャラを打ち出した。それはそれでアメリカの今を映し出しているとも言える。世界の警察を公式にやめたアメリカは、その力をどのように振るうべきなのか、あるいは振るわないでいるべきなのか。

 

ミスター・テリフィックは初めて知ったが、なかなか味のあるキャラだと感じた。

ネガティブ・サイド

スーパーマン&ロイス・レイン&ジャスティス・ギャングのノリが、まんま『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 』で、ちょっとついていけなかった。ここらへんは波長が合うか合わないかの問題で、作品の良し悪しではなくテイストの問題。

 

しかし、開始1分でスーパーマンの敗北が描かれるのは、まあ良いにしても、その相手がウルトラマンとはこれ如何に?さらに次に送り込まれるレックス・ルーサーからの刺客がKaiju?訳が分からん。その怪獣もジャスティス・ギャングによって意味不明な倒され方をする。ジャスティス・ギャングが強いのか弱いのか、まったく伝わってこない。

 

謎のポータルの先にあるポケット・ユニバースも気に食わない。別の次元が云々をやり始めたら、MCUと同じように franchize fatigue = シリーズ疲れを生み出すのは間違いない。このポケット・ユニバースにはブラックホールに流れ込む反陽子の河があり、「ははあ、反陽子(別に陽電子でも何でもいい)があるということは、ここからウルトラマンを連れてきたのか」と一人で納得していたが、実態はさにあらず。種明かしはされたものの、「それはもうジーン・ハックマンが三作目でやったやろ・・・」という内容。

 

そのレックス・ルーサーもなんか違う。ジーン・ハックマンのようなユーモラスなヴィランでもなく、ジェシー・アイゼンバーグのようなナチュラルに狂った天才型でもなく、どこか特徴に乏しかった。ルーサーの本領はビジネスや政治以上に、サイエンスにあるはずだが、恋人関係やら何やかやを盛り込みすぎて、芯のはっきりしたヴィランになっていなかった。

 

スーパーマン自身の葛藤を描くのは全然かまわないのだが、生みの親か、それとも育ての親かというテーマは『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 』のスター・ロードで一度追求した。今回も全く同じテイストでそれをやるというのは、首尾一貫していると見るべきか、それともワンパターンと言うべきか。まあ、後者か。そのスーパーマンは最後の最後に一種の胎内回帰願望というか幼児退行というか、とにかく( ゚Д゚)ハァ?という反応を見せて終わる。ロイス・レインは恋人を手に入れたと思ってはならない。そこにいるのは、頼りになる恋人ではなく、ただのでかい息子である。

 

総評

最初から最後まで訳が分からないままに進み、訳が分からないままに終わった。そんな印象である。アクションも特に目を引くものがなく、ミスター・テリフィック以外に魅力のあるヒーローやメタヒューマンも見当たらない。DCはジャスティス・ギャングではなくジャスティス・リーグの続きを描くべきだった。おそらく次のスーパーマンもリブートになることだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Martian

火星=Marsの形容詞にしてデモニムである。劇中の字幕でルーサーのセリフに火星人が出てくるが、彼はVenusian=金星人と言っていなかっただろうか。ちなみにJovianというのは木星=Jupiterの形容詞にしてデモニムである。なぜJupiterianではないのか。それはラテン語のIuppiter(イウッピテル)が、Iovis, iovi, iovem, ioveと変化することに由来するからである。英語オタクあるいは古代ローマオタク以外には無用の知識である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 この夏の星を見る 』
『 愛されなくても別に 』
『 ハルビン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アクション, アメリカ, デビッド・コレンスウェット, ニコラス・ホルト, レイチェル・ブロズナハン, 監督:ジェームズ・ガン, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 スーパーマン(2025) 』 -リブート失敗-

『 28年後… 』 -ツッコミどころ満載-

Posted on 2025年7月2日 by cool-jupiter

28年後… 30点
2025年6月29日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:アルフィー・ウィリアムズ アーロン・テイラー=ジョンソン ジョディ・カマー レイフ・ファインズ
監督:ダニー・ボイル

 

『 28日後… 』と『 28週後… 』の続編ということでチケット購入。

あらすじ

レイジウィルスによってイギリス全土が隔離されて以来、28年。ある島で細々と生き残っていた人々がいた。ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)は12歳の息子スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)を連れて、本土のゾンビ刈りに同行させるが・・・

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

新型ゾンビ・・・ではなく感染者が環境に適応しているというのは、それはそれで面白かった。森に生きる感染者と平原で生きる感染者が異なった生態を示していたのは説得力があった。また異種感染しないという『 28週後… 』の設定も引き継がれていたことが確認できた。感染者を生化学的に分析・攻略するシーンもあり、人間が生きるためにはサイエンスが物を言うことを再確認した。

 

アルファというボスゾンビ・・・ではなくボス的感染者はゲーム『 バイオハザード 』のタイラントあるいはネメシスみたいな感じで、割とすんなり受け入れられた。

 

ネガティブ・サイド

いくら前作で米軍が同士討ちもあって壊滅したとはいえ、世界がイギリスをここまで放置するか?いや、本土はいいとして、離島で生き残った人は保護されてしかるべきだろう。それとも、多くのブリティッシュが自認するようにイギリスは嫌われていることを殊更に明示しているのか。

 

島の人々が Tom Jones の Delilah の大合唱をしていたが、いったい時代はいつなのか。仮に2025年だとしても、さすがに60年前の歌を年寄りだけではなくそれなりに若い世代まで歌えるのか?レコードなどの機械はいっさい見当たらなかったが。

 

そもそも何故に安全な島から出て、本土を目指すのか。もちろん医薬品やら衣料品やら日用品やら使える物は色々と見つかるだろうが、28年も経過してしまうとそれも望み薄だろう。だったら男子のイニシエーションなのか?学校はなくても、子どもを軍事教練に駆り出しているシーンがあったが、学校でこそ感染者の実態を教え込むべきだろう。ジェイミーが実地でスパイクに色々と教え込んでいたのは、フィールドワークならありだが、サバイバルでは愚の骨頂。

 

島そのものが天然の要害になっているが、干潮時の防御がなにもないとはこれ如何に。アルファが矢を10本食らっても倒れなかったというデータがあるなら、矢を20本打つとか、あるいはボーガンを作って威力を上げる、トラバサミのような罠を使うなど、色々と対策はあったはず。それが全くなかったというのは28年あれば人間はアホになるということか。

 

感染者の妊娠というのは中盤で明示されていたし、アイデアとしては誰でも思いつく。漫画『 寄生獣 』で似たようなアイデアはすでに出ていたし。問題はその子どもが〇〇〇だということ。胎盤の奇跡とは・・・仮に胎盤がウィルスをシャットアウト(できるわけないが)したとして、普通に分娩時に経産道感染するはず・・・ なので子どもは『 28週後… 』同様に無症候型キャリアで良かった。また、子どもの父親はアルファであると暗示されていたので、それを元に280年後あるいは28世紀後の地球をゾンビ・・・じゃなかった多数の感染者と本当に細々とだけ残った原始人的人類の物語につなげられただろうに。

 

スパイクが医者を求めてドクター・ケルソンのもとを目指すのは分からんでもないが、まともな教育を一切受けていないスパイクがケルソン先生の診察過程や診断内容を理解できたようには到底思えない。にもかかわらず、あの結末を母親だけではなくスパイクが受け入れる?ちょっと考えづらいのだが。

 

というかケルソン先生も感染者に効くモルヒネとかを、どこでどう調達して28年も維持できたのか。医者というよりも薬学者、それも西洋ではなく漢方薬寄りの学者である。トリカブトやらスズランやら、普通に感染者を安全に殺せそうな毒をこの先生なら調合できそうだが、そういうわけでもないらしい。というか、アルファをストップさせたのなら、そこでもっと大量にモルヒネをぶち込んで殺さんかい、と思ってしまう。

 

島民以外の人間の存在も示唆されていたが、それがラストのあいつら?いくらなんでもあの世紀末軍団があんな見せしめ的な行為に走るだろうか。というか、感染者とのバトルで使う武器が貧相で泣けてくる。普通に体液をまき散らす武器および戦い方で、よくこれで生き延びてこれたなと感心した。

 

続編がありそうな雰囲気だが、たとえ制作されても見ない。コレジャナイ感が非常に強い作品だった。

 

総評

当初から各方面のレビューが賛否両論だった。ということは波長が合えば面白く、波長が合わなければ面白くないわけで、こういう丁半を賭けたばくちも時には必要だ。英語レビューでも賞賛はたくさんあるので、本当に監督や脚本家との相性次第だと思う。ひとつ言えるのはデートムービーではないということ。またファミリーで観るのもお勧めできない。カップルあるいはお一人様での鑑賞が無難である。

 

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

Memento amare

直訳すると、Remember to love となる。Memento は singular の imperative で、amare は to love という英語のto不定詞的な形。合わせて Remeber to love となる。有名な Memento mori は Remember to die だが、ラテン語には形は受動態しかないが意味は能動態という動詞が、loquor, sequor, morior, utorなど、いくつもある。20年以上前の授業の内容でも結構覚えているもので、自分でもびっくりしている。

 

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『 フロントライン 』
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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーロン・テイラー=ジョンソン, アメリカ, アルフィー・ウィリアムズ, イギリス, ジョディ・カマー, ホラー, レイフ・ファインズ, 監督:ダニー・ボイル, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 28年後… 』 -ツッコミどころ満載-

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