Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

カテゴリー: 海外

『 HELP 復讐島 』 -孤島のリベンジ-

Posted on 2026年2月25日2026年2月25日 by cool-jupiter

HELP 復讐島 50点
2026年2月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レイチェル・マクアダムス ディラン・オブライエン
監督:サム・ライミ

 

サム・ライミ監督作ということでチケット購入。

あらすじ

リンダ(レイチェル・マクアダムス)は勤め先の代替わりで副社長の座を約束されていたが、新社長のブラッドリー(ディラン・オブライエン)はそれを保留。チャンスを与えるためにタイ企業の買収に付き添えとチャーター機にリンダを乗せるが、その機が墜落。二人は島に流れ着くが・・・

 

ポジティブ・サイド

プロットは単純明快。南国の島で文明人二人は生きていけるのか。文明世界の上下関係は維持されるのか、変容するのか。『 キャスト・アウェイ 』を一人ではなく二人でやるとどうなるのか、という感じか。

 

パワハラ描写、暴力描写にエロではないお下劣描写がコミカルに描かれている。一方で恐怖描写もなかなかのもの。ヒグマ並みに怖いイノシシや、ホラー映画的な幻覚でも魅せる。この表現の融合と振れ幅がライミらしい。

 

サバイバル術に長けたリンダとプライドをなかなか捨てられないブラッドリーの上下関係が徐々に逆転していく様が痛快だ。互いに協力関係を築きつつも、虚々実々の馬鹿試合、ならぬ化かし合いもあり、コミカルだ。適度にシリアスになりつつ、アホなテンションで突っ走る作品だ。

 

ネガティブ・サイド

序盤でとある台詞があるが、もう少しうまく誤魔化してほしかった。あるアイテムの入手と同じく、この時点でオチというかクライマックスまで想像できた人は多かったはず。元々ブラッドリーがかなり活発な性格で・・・おっと、これ以上は野暮か。

 

リンダのキャラがにかなり気持ち悪い面があり、パワハラ被害者という側面があまり際立たなかった。普通のシゴデキ女史でよかっただろうに。

 

黒人差別は許されないが、タイ人差別・アジア人差別はOKであるかのような描写はいかがなものか。脚本家および監督の頭の中がアップデートされていない、あるいはそれが差別であると気付けていないのか。

 

総評

少ない登場人物と限られた空間で笑いあり、怒りあり、涙ありのドラマになっている。週末の暇つぶしにはちょうどいい。ただし、前述のようにアジア人差別(というか軽視か)と解釈されうる描写があり、そこをどう捉えるかで印象が少し変わる。パはわら気質の上司や会社に鬱憤がたまっているという向きなら楽しめるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You work for me.

「お前は俺のために働くのだ」という意味で、WWEのビンス・マクマホンがかつてエリック・ビショフやポール・ヘイマン相手にこのフレーズをしょっちゅう使っていた。単に上下関係を表すだけではなく、威嚇や脅迫の意味(You’re fired!)も含まれている。自分で使うことはめったにないだろうが、会社を舞台にしたドラマや映画を観る時に聞こえてくることがあるだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 トゥギャザー 』
『 ブゴニア 』
『 映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, スリラー, ディラン・オブライエン, レイチェル・マクアダムス, 監督:サム・ライミ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 HELP 復讐島 』 -孤島のリベンジ-

『 マーズ・エクスプレス 』 -先行SFへのオマージュ満載-

Posted on 2026年2月18日 by cool-jupiter

マーズ・エクスプレス 75点
2026年2月14日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:レア・ドリュッケール ダニエル・ンジョ・ロベ 
監督:ジェレミー・ペラン 

 

フランスのSFアニメということで、もの珍しさからチケット購入。

あらすじ

探偵のアリーヌ(レア・ドリュッケール)は相棒アンドロイドのカルロス(ダニエル・ンジョ・ロベ)と共に火星の脱獄したアンドロイドの事件を追っていた。その延長線上で、アリーヌは行方不明になった女子大生の捜索を依頼されて・・・

ポジティブ・サイド

なんという疾走感。89分ながら130分ほどに感じた。中だるみしていたからではなく、それだけ多くの情報が詰め込まれていたからだ。それも無理なく。オープニングの時点では意味不明なシークエンスも、物語が進むにつれ、背景が見えてくる。言葉によるテリングが一切ないストーリーテリングが逆に心地よい。

 

女性主人公と男性の相棒の組み合わせは『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』を彷彿させるし、ロボットの脱獄という概念は『 ブレードランナー 』のレプリカントに通じる。またAIおよびロボットが人間に反逆する、あるいは見捨てるというプロットは『 2001年宇宙の旅 』から常に追究されてきたテーマ。そうした先行作品の要素をすべて取り込みながら、非常にユニークな物語に仕上がっている。

 

『 トータル・リコール 』以上に火星に適応した人類、人間の記憶を持つアンドロイド、脱獄するロボット(その意味は観れば分かる)、そしてある意味でゲームの『 エースコンバット3 エレクトロスフィア 』以上にぶっ飛んだ世界観とその結末。プロットを少しでも明かしてしまうのが惜しいほどで、時間があればもう一度劇場鑑賞したい。それほど面白い作品。

 

ネガティブ・サイド

エンディングの手前の結末部分に納得いかない人が多いだろう。結末そのものというより、そこに至る過程でアリーヌが自分の〇〇を●●●●●●していなかったのかという疑問とでも言おうか。そうしたシーンを明示するのではなく、ほのめかしておくだけで良かった。本作ほど後のシーンが先行するシーンを説明する映画はないのだから。

 

総評

かなり観る人を選ぶ作品と思われる。各種のSF、就中、『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』の予習は必須とまではいかないものの、強く推奨される。また邦画および普通にアニメ作品のように台詞やナレーションで説明してくれないと状況が分からないという鑑賞者にも向かない。SFに造詣が深くなくとも、たとえばセバスチアン・ジャプリゾやカトリーヌ・アルレーの小説を面白いと感じる人は本作と波長が合う可能性が高い。

 

Jovian先生のワンポイント仏語レッスン

Oui

ウィ、言わずと知れたYesの意。フランス語に限らず、言語を学ぶときに最初に覚えるべきは肯定と否定の表現。次に代名詞。そして数字。さらに各種のあいさつ。英語の Yes, please. はフランスではOui, s’il vous plaît. となり、No, thank you. はNon, merci. となる。これぐらいは覚えておきたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 トゥギャザー 』
『 ブゴニア 』
『 映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, ダニエル・ンジョ・ロベ, フランス, ミステリ, レア・ドリュッケール, 監督:ジェレミー・ペラン, 配給会社:トムス・エンタテインメント, 配給会社:ハークLeave a Comment on 『 マーズ・エクスプレス 』 -先行SFへのオマージュ満載-

『 ペンギン・レッスン 』 -軍政下の小さな奇跡-

Posted on 2026年2月15日 by cool-jupiter

ペンギン・レッスン 80点
2026年2月11日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:スティーブ・クーガン ビビアン・エル・ジャバー アルフォンシーナ・カロッチオ ビョルン・グスタフソン
監督:ピーター・カッタネオ

 

鳥好き、かつ(元)英語講師としてチケット購入。素晴らしい作品だった。

あらすじ

1976年。英語教師のトム(スティーブ・クーガン)は軍政下のアルゼンチンの名門校に赴任する。しかし、クーデターで学校は一週間閉校。その間に訪れたウルグアイで、ひょんなことからペンギンを拾い、学校の寄宿舎に連れ帰ることになってしまい・・・

ポジティブ・サイド

爆発音で始まる不穏な出だしから一転、校長との出会い、奇妙なお手伝いのマリアや風変りのフィンランド人物理教師のタピオとの出会い、そしてウルグアイでの夜のダンスなど、物語は一転コメディ調へ。そしてひょんなことからペンギンを拾い、それをアルゼンチンに連れ帰る流れは完全なるコント。

 

しかしアルゼンチン国内の情勢は不穏だ。秘密警察的な男たちが跋扈し、市民が問答無用で連れ去られる。まるで戦前・戦中の極東の島国のようだ。子どもたちもそんな変化に敏感で、クラスメイトは親が革命派かどうかでいじめのターゲットを決める。子どもは大人が思う以上に大人を見ているし、社会の動きにも敏感で、悪い意味でそれを模倣してしまうことをあらためて思い知らされる(2020年代前半、高校生や大学生の中にはひろゆきの口調や論理を真似する愚か者が本当に多かった・・・)。

 

そんな彼らを優しく、かつ厳しく指導するトム。基本的に冷淡でどこか厭世的なトムを取り巻く同僚のタピオのキャラが素晴らしい。トムと同様に喪失体験に苛まれているにもかかわらず、それを感じさせない陽気さがあり、しかし心の奥底に闇が秘められている。そんな心根をさらす相手がペンギンのフアン・サルバドール。ペンギンがよもやのカウンセラーとなるのだ。これは非常に面白いと感じた。また授業をまともに聞かない生徒たちにもフアン・サルバドールは効果抜群。ペンギンを使って英語(というか英文学)の授業を行うトムの大きなバックアップとなる。ペンギンとの関わりを通じて、自分たちの姿を知っていくからだ。

 

すべてが上手く回転し始めているようで、実は違う。政治的な状況がアルゼンチン人の活動家たちを抑え込んでいく。ドイツのゲシュタポあるいは日本の特高警察もこのようなものだったのだろうと思わされる。トムの周囲の人間も、トム自身もその活動の渦中に巻き込まれていく。そんな中で起こる悲劇。しかし、その直後に起きる奇跡。ペンギンがもたらしたものではないが、ペンギンがきっかけになったことではある。トムの喪失体験が期せずして癒されることになるこの出来事には涙せずにはいられなかった。

 

以下は英語教育業界よもやま話であるが、すぐに辞めるアメリカ人と異なり、world traveler であるブリティッシュの英語教師という設定はリアルである。実在の人物と出来事に基づいているので当然なのだが、英国は世界各地を植民地化してきた、つまり世界各地で英語教育をしてきた実績があるのだ。トムはこの後、アルゼンチンを去ることになるが、それはフォークランド紛争前夜のこと。人間の愚かな営為を、ペンギンならばどう見つめたのだろうか。

ネガティブ・サイド

魚屋のその後というか、トムがどうやってフアン・サルバドールのえさを調達していたのかが見たかった。そこでトム自身がほんの少しの喪失体験を非常に重く受け止める、そんな自分自身に戸惑うようなシーンが欲しかった。

 

タピオの出番がもう少しあればと思った。タピオの授業にもフアン・サルバドールが登場するが、そこに至るまでの流れをトムとタピオのほんの少しのやりとりの映像だけでも見せてほしかった。

総評

塚口サンサン劇場は完売だった。Jovianも評判の高さにつられる形でチケットを購入したが、予想以上に濃密な人間ドラマを味わうことができた。同時に軍政下における市民生活についても考えさせられた。共謀罪やスパイ防止法を否定するわけではないが、時の権力者が恣意的に適用範囲を広げるような法律が成立した、あるいは今後制定されそうな今の日本と、50年前のアルゼンチンの空気が似通っていることも意識されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

metaphor

隠喩、すなわち直接的な表現を用いずに何かを表すこと。トムの授業はメタファーに満ちている。たとえばある場面での Because I’m a dictator.=「僕が独裁者だからだ」という台詞もメタ的な隠喩である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 マーズ・エクスプレス 』
『 トゥギャザー 』
『 ブゴニア 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アルフォンシーナ・カロッチオ, イギリス, スティーブ・クーガン, スペイン, ビビアン・エル・ジャバー, ヒューマンドラマ, ビョルン・グスタフソン, 監督:ピーター・カッタネオ, 配給会社:ロングライドLeave a Comment on 『 ペンギン・レッスン 』 -軍政下の小さな奇跡-

『 ランニング・マン 』 -実現しそうなディストピア-

Posted on 2026年2月10日2026年2月10日 by cool-jupiter

ランニング・マン 65点
2026年2月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレン・パウエル
監督:エドガー・ライト

シュワルツェネッガーの『 バトルランナー  』を、1989年前後の大みそかに家族や親せきと一緒にテレビで観た記憶がある。リメイクがどんな具合か確かめるためチケット購入。

 

あらすじ

スラムに暮らすベン・リチャーズ(グレン・パウエル)は病気の娘の治療代、さらには家族でスラムから脱出するためのカネを得るため、デス・ゲームであるランニング・マンへの出場を決意する。トライアウトを見事に通過したベンは、30日間をハンターたちから逃げ切ることができるのか・・・

 

ポジティブ・サイド

貧富の格差がさらに広がったディストピアで、下級市民は放射線被ばくのリスクのある仕事に従事するしかない、というのは日本でもアメリカでもありそうな話。スラムと都市部の間に物理的な壁が存在するのもリアル。ハリウッドなどの高級住宅地とその他の地域の間にはゲートが存在するからだ。

 

持たざる者が持てる者に反抗する一つの形としてランニング・マンは、一歩間違えば『 サークル 』のような、全国的な監視ネットワークの構築に資するもののようで恐ろしい。一方で『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』や『 ハリエット 』のように、逃亡を助けてくれる個人が存在するのもアメリカ的と言えばアメリカ的だった。

 

ランニング・マンが定期的に送らねばならない映像が、ネットワークによって好きなように加工されてしまうというのは象徴的。たしか『 バトルランナー 』でもそうだったか。我々がメディア(それがテレビでもラジオでも新聞でもネットでも何でもいい)、つまり中間媒体を通じて情報を得る時、その情報が操作や加工をされていないという保証はないと言っているかのようだ。

 

殺人が娯楽になるとは思いたくないが、『 ザ・ハント 』や『 バクラウ 地図から消された村 』のような世界は着実に近づきつつあると感じる。コメディックに展開し、最後に救いすら感じさせるが、それすらも大衆の消費の対象に過ぎないのかもしれないと思うと、ほんの少しぞっとする。

 

ネガティブ・サイド

お守りの靴下が決定的なアイテムになるかと思ったが、そうはならなかった。また、ベンが他人の苦境を決して見捨てられない男であるという性質もあまり活かされなかった。

 

「スラムには逃げ込むな」というアドバイスがややご都合主義か。自分が主人公ならスラム街の住人同士で結束を固め、誰かがランニング・マンになった時にそのスラムコミュニティ全体で匿ってやり、10億ドルの恩恵に与ろうと画策するが。

 

中盤までは面白いが、終盤に向かって主人公の逃走が極まっていくと、逃走から反撃に転じてしまう点が腑に落ちなかった。『 バトルランナー 』は相打ちというか自爆的な攻撃だったが、本作は『 マトリックス レザレクションズ 』的な終わり方が個人的には合わなかった。

 

総評

悪い作品ではないが、エドガー・ライトに求められる水準に達しているかと言えばそうではない。ディストピアでありながら、どこか『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』的な雰囲気になっているのがノイズに感じられた。ただ、細かいことは考えず、2時間ちょっとポップコーンをほおばりながら楽しみたいという向きには好適かもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

That’s the spirit.

これは決まり文句で「その意気やよし」、「そうこなくっちゃ」、「いい心がけだ」のような意味。若い従業員が「今月1000件テレアポします!」や「Zoomアポを20件獲得します!」のように言ったら、That’s the spirit! と声をかけてあげよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 安楽死特区 』
『 マーズ・エクスプレス 』
『 禍々女 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, アメリカ, グレン・パウエル, サスペンス, 監督:エドガー・ライト, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 ランニング・マン 』 -実現しそうなディストピア-

『 MERCY マーシー AI裁判 』 -推定無罪の原則を忘れるな-

Posted on 2026年1月27日 by cool-jupiter

MERCY マーシー AI裁判 40点
2026年1月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリス・プラット レベッカ・ファーガソン
監督:ティムール・ベクマンベトフ

 

仕事で毎日AIをこき使っている者として、チケット購入。

あらすじ

警察官のクリス・レイブン(クリス・プラット)は目が覚めると、AI裁判官のマーシー(レベッカ・ファーガソン)の前にいた。罪状は妻殺し。自身の犯行ではないと90分以内に証明できなければ処刑される。クリスはデータベースの中で真相を追うが・・・

ポジティブ・サイド

現代のアメリカ社会を(報道を通して)観察する限り、『 シビル・ウォー アメリカ最後の日 』の日に近づいている・・・とまではいかないものの、分断と排斥がかなり進んでいるようだ。本作の冒頭数分で描かれるようなレッドゾーンの設置などは近い将来に現実になるかもしれないと感じさせられた。

 

人間が乗れるタイプのドローンもかっこいい。アメリカや中国なら安全性は別にして一部の場所で実際に飛ばせそうな、リアルなガジェットだ。

 

主人公はなかなかクソ野郎なのだが、警察官としては優秀で、情報を片っ端から線形分離していく。これは秀逸で、情報を非線形分離するAIとのコントラストになっていた(が、マドックス自身は情報を非線形分離していないようだったが)。人間の直感をうまくビジュアル化できていたと思う。

 

真相もまあまあ。いつの時代でも『 コンタクト 』の狂信者みたいな奴はいるのものである。

 

ネガティブ・サイド

構成はほとんど『 search サーチ 』と同じで、大部分はモニター画面上で進行する。残念ながら、そこに目新しさはなかった。

 

筋立てとしては『 マイノリティ・リポート 』と同じく、警察官自身が殺人の嫌疑をかけられるというもの。ただ『 マイノリティ・リポート 』は事件発生前であるため、弁護士も何もない。一方で本作では主人公の妻が殺害されている。にもかかわらず、弁護士もつかず、ろくな捜査もなく、いきなり処刑まで90分。しかも、推定有罪ときた。これが2080年とかなら、まあ分からなくもないが、2029年?3年後?

 

SFだと言われればそれまでだが、推定有罪率92%で処刑というのは誰が決めた?たとえばの話、100回中8回エンジンがかからないクルマ、100回中8回鳴らないインターホン、100回中8回起動しないPCなどがあったとして、誰がそんなものを買って、使うのか。設定があまりにも荒唐無稽すぎて、白けてしまった。

 

そもそもトレーラーが色々と余計な情報を出し過ぎ。さらにハリウッド映画を見慣れている人なら、開始から20~30分で「ははあ、真相は不明だが、多分こいつが犯人または元凶だな」と分かってしまう。Jovianも第一感で怪しいと感じた人物がそれだった。つまらん。

 

途中でAI裁判官のマドックスがグリッチを起こすが、そんな演出は不要だった。

 

総評

AI裁判官というよりも、AIアシスタントだった。また、AIは膨大なデータを非線形分離させるため、新たな判断材料が提示されるたびにアウトプットが揺れ動く。が、本作ではクリスが新たな証拠やデータを見つけても、特に数字を変えないシーンが多く、リアリティは感じられなかった。AIに目をつけるのは良いが、リアリティを求めてはだめ。手持ち無沙汰の週末に暇つぶしのために観るぐらいの気持ちでちょうどいい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

red tape

まさか先日紹介したばかりのフレーズが出てくるとは。AIがとある会社を指して「あそこは手続きが面倒くさい」と言うのだが、そこでこのフレーズが使われていた。弊社もデジタル署名が可能なのに、なぜかそれをプリントアウトして押印しなければならないという理不尽な red tape が一部の役員向けに存在する。そういう日本企業は実はかなり多いのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 28年後...白骨の神殿 』
『 安楽死特区 』
『 マーズ・エクスプレス 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, アメリカ, クリス・プラット, サスペンス, レベッカ・ファーガソン, 監督:ティムール・ベクマンベトフ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズLeave a Comment on 『 MERCY マーシー AI裁判 』 -推定無罪の原則を忘れるな-

『 長安のライチ 』 -すまじきものは宮仕え-

Posted on 2026年1月24日 by cool-jupiter

長安のライチ 75点
2026年1月22日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:ダー・ポン
監督:ダー・ポン

 

『 熱烈 』のダー・ポン監督が主演かつ監督だと知り、チケット購入。

あらすじ

算術を得意とする下級官吏の李善徳(ダー・ポン)は、愛妾・楊貴妃のために生のライチを5000里の彼方から届けよという勅令を受ける。失敗すれば命がないと覚悟しつつ、李善徳は妻子を長安に残し、嶺南の地に向かって旅立つが・・・

ポジティブ・サイド

中国の官僚のストーリーながら、そこには現代のサラリーマンの悲哀ものぞく。『 プーと大人になった僕 』さながらに、上からの命令に従わざるを得ない李善徳に己を重ね合わせてみる者は多いだろう。それがさらに陰謀の一環であったとしたら・・・まさに kiss ass を怠ったサラリーマン。すまじきものは宮仕えか。

 

嶺南の地で出会うライチ農家や商人たちとの友情が見逃せない。特に商人と役人の友情という点で、善徳と蘇諒の奇妙な関係は『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』のパク・ソギョンとリ所長の関係を彷彿とさせた。

 

数学者として論理的に経路を構築し、距離と速度と時間を計算し、それらを表の形にしていく。ガントチャートみたいなもので、サラリーマンならこれもお馴染みだろう。それを見た蘇諒が「真似してもいいか?」と尋ねるのは学習と成長への意欲の表れで、この姿勢が後々に効いてくる。

 

しかし善徳を取り巻く人々の中で最も印象的なのは元奴隷の邑奴だろう。主体性を持たず、言われるがままを行う。そんな男に「長安に来るかどうかは自分で決めればよい」と伝える善徳。突き放しているようで違う。官僚として皇帝の命令には絶対服従な自分とのコントラストを見出したのだろう。邑奴の生き様は感動的ですらあった。

 

最後に長安にたどり着いた善徳はサラリーマンではなく、現代中国の庶民のシンボルだった。彼の叫びは古今東西を問わず、多くの人々の心に突き刺さる。これが中国政府当局の検閲を潜り抜けたのが驚き。中国政府当局もこうした形でなら、権力批判を許してくれるのか。帝国主義的な姿勢を隠さない中国だが、内部的には葛藤があるのかもしれない。

ネガティブ・サイド

字幕で何度か住宅ローンという言葉が出てくるが、ライチやバナナはまだしもローンなどという外来語を唐代中国を舞台にした映画で採用するか?

 

阿僮と善徳の友情、絆が醸成されていく様子をもう少し映し出してほしかった。

 

杜甫や安禄山を出す必要はあったのだろうか。杜甫といえば「国破れて山河在り」で、今はちょうど受験シーズン。安禄山という名前で色々と思い出す人もいるだろう。

 

総評

歴史ものとしてもヒューマンドラマとしても文句なしに面白い。李善徳およびライチ運搬が史実かどうかについて興味がある向きは、こちらの英語記事が非常に読みごたえがあるので、英検2級以上、英検準1級未満の英語力で読めるのでチャレンジしてみてほしい。デレク・ツァンに続いて、非常に楽しみなタレントが出てきた。ダー・ポンの名前はぜひ覚えておこう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

red tape

繁文縟礼の意。といっても、これで意味が通じれば古文・漢文にかなり通じている人である。意味は「形式的かつ煩雑な手続き」のこと。役所に行ったりすると、場合によっては2枚の書類に4回住所や氏名を書かされたりするが、それこそ繁文縟礼の典型だ。英語ではこれをred tapeと言い、I hate having to deal with red tape every time I come to city hall. のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 28年後...白骨の神殿 』
『 MERCY マーシー AI裁判 』
『 安楽死特区 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ダー・ポン, ヒューマンドラマ, 中国, 歴史, 監督:ダー・ポン, 配給会社:Stranger, 配給会社:面白映画Leave a Comment on 『 長安のライチ 』 -すまじきものは宮仕え-

『 悪魔のいけにえ 』 -4Kデジタルリマスター鑑賞-

Posted on 2026年1月13日 by cool-jupiter

悪魔のいけにえ 75点
2026年1月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ガンナー・ハンセン
監督:トビー・フーパー

 

風邪で体調イマイチなので簡易レビュー。

あらすじ

サリー、ジェリー、フランクリン、カーク、パムの5人は、テキサス州のフランクリンの実家を目指す途上で屠殺場で働く男を乗せる。しかし男は不審な言動を見せ、果てはフランクリンをナイフで傷つける。男を放り出した5人は何とか目当ての館に到着するが・・・

ポジティブ・サイド

構成やらショットなど、既視感を覚えるものばかりだが、それは逆に本作がそれらのクリシェを生み出したということ。言い換えればこの分野の古典的な作品になっているということだ。

 

面白いのは、ボロボロの館ではなく、外見がきれいに整った館の方に殺人鬼が潜んでいるのは新鮮だった。

 

効果音もBGMもなく、いきなり殺されていく面々。このテンポの良さよ。グロ描写は一切なし。それでいて観る側が凄惨な殺人シーンを想起するのは、屠殺方法の話、動物や人間の骨、そしてチェーンソーの駆動音によるところが大きい。低予算ゆえの怪我の功名か。

 

結局、最も恐ろしいのは超自然的なホラーよりも、理解できない人間の方なのだ。ラストの荒れ狂うレザーフェイスで、『 母なる証明 』のラストシーンを思い出した。ポン・ジュノ監督が本作からインスピレーションを得ていたとしても何の不思議もない。アカデミー賞で監督賞を受賞した際にテキサス・チェーンソーに言及しているからだ。

ネガティブ・サイド

ほうきでペチペチ叩くシーンはギャグにしか見えなかった。

 

元焼肉屋としては、屠殺場で働く人々に偏見を与えかねない作品になっているところが気になった。

 

総評

4Kリマスターでなければ、おそらく夜の逃走と追跡シーンなどは、かなり見づらい絵になっていたのでは?その意味でも劇場鑑賞する価値はあると言える。『 13日の金曜日 』のジェイソンや『 ハロウィーン 』のマイケル・マイヤーズといった仮面の大男の原点はレザーフェイスにあり。今の目で見るとチープかもしれないが、古典だと思って鑑賞しよう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

have seen better days

直訳すれば「(人・物が)より良い日々をすでに見た」となるが、実際のニュアンスは「(人・物が)ピークを過ぎた」ということ。We’ve got to admit Nishikori has seen better days. =錦織の全盛期は終わったということを認めなければならない、のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 万事快調 オール・グリーンズ 』
『 とれ! 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 1970年代, B Rank, アメリカ, ガンナー・ハンセン, ホラー, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 悪魔のいけにえ 』 -4Kデジタルリマスター鑑賞-

『 YADANG ヤダン 』 -裏切りと逆転の上質クライムドラマ-

Posted on 2026年1月13日2026年1月13日 by cool-jupiter

YADANG ヤダン 70点
2026年1月1月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:カン・ハヌル ユ・ヘジン パク・ヘジュン
監督:ファン・ビョングク

 

風邪でダウン中なので簡易レビュー。

あらすじ

麻薬犯罪者と司法取引を行い、情報を引き出すイ・ガンス(カン・ハヌル)は、地方検事のグァニ(ユ・ヘジン)と義兄弟となり、成果を挙げていく。しかし、警察を出し抜く形である大物を検察が逮捕したことで、事態は大きく動き・・・

ポジティブ・サイド

『 雨とあなたの物語 』の純朴な手紙男が、警察や麻薬の使用者、さらには売人までを手玉に取るヤダンとして大暴れ。副題が The Snitch で、これは密告者の意。『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』のアル・パチーノの最後の長広舌でも悪ガキ三人が snitches と呼ばれていた。とにかく麻薬の所持や使用で捕まった者と一種の司法取引を行い、売人や購入者のネットワーク情報と引き換えに罪を減じる取引を行うのがヤダンである。

 

検察、警察、麻薬常習者、麻薬流通者、そこに財閥の御曹司かつ次期大統領候補の息子が加わり、裏切りの連続と、そこからの大逆転が非常に痛快。脚本家たちはかなりの手練れである。

 

ネガティブ・サイド

『 オールド・ボーイ 』のチェ・ミンシクさながらに体を鍛えたガンスだが、腕っぷしは強くなっていなかったのは残念。

 

皇帝のキャラをもう少し深堀りする必要があったのでは?

 

総評

ユ・ヘジンの出演作はほぼ間違いなく面白いというジンクスは今回も守られた。韓国社会のダークな部分を存分に見せつけられるが、それを許さない人々の意志や、そうした闇に取り込まれた人々を救おうとする人々の善意もしっかりと描かれている。韓国らしい痛快なクライムドラマだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒョン

兄の意。何度か紹介した表現。日本でも兄貴分というように、必ずしも血のつながりがなくても使える。英語でも親しみを込めて brother と相手を呼ぶことがある。ただ英語の brother よりも、韓国語のヒョンの方が、日本語の兄貴、兄貴分には近いだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 この本を盗む者は 』
『 悪魔のいけにえ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, カン・ハヌル, クライムドラマ, パク・ヘジュン, ユ・ヘジン, 監督:ファン・ビョングク, 配給会社:ショウゲート, 韓国Leave a Comment on 『 YADANG ヤダン 』 -裏切りと逆転の上質クライムドラマ-

『 ボディビルダー  』 -エンディングに不満あり-

Posted on 2026年1月6日2026年1月6日 by cool-jupiter

ボディビルダー 70点
2026年1月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョナサン・メジャース
監督:イライジャ・バイナム

 

『 ジョーカー 』そっくりだと聞き、チケット購入。

あらすじ

片田舎で祖父と二人暮らしのキリアン・マドックス(ジョナサン・メジャース)は、ボディビルダーとして一花咲かせたいという願望を抱いていた。しかし、キリアンは怒りの感情のコントロールに難を抱えていて・・・



ポジティブ・サイド

非常に少ない登場人物だけで物語が進んでいく。まるでフランス映画的だ。しかし、そこにはミステリの風味もロマンスの予感もない。あるのはキリアンの非常に孤独な生活のみ。ストイックにボディビルに打ち込む姿には孤高という言葉も似合いそうだが、さにあらず。彼は孤独なのだ。

 

『 ジョーカー 』におけるアーサーと同じように、キリアンは両親に対して問題を抱え、好意を寄せる女性に対する接し方に問題があり、肝腎かなめのボディビルに対してもステロイドを使うという反則技を使っている。いくらハードにトレーニングをして、食事制限をしていても、これでは駄目だ。

 

『 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 』のフィギュアスケートもそうだが、評価がすべて他者の評価によって決まってしまう競技とは、なんと残酷であることか。得点競技ではなく採点競技の難しいところだ。すぐに How to make people like you などとググってしまうところに、彼の承認欲求以前の幼稚さが現れている。

 

キリアンの問題は至極簡単。自分が人を好きになれないから、人は自分を好きになってくれない。つまり、愛された経験の欠如によって歪んでしまった。あるいは子どものメンタルのまま、体だけが大きくなってしまった。子どもとは性と労働から疎外された者と社会学的に定義されるが、異性と付き合えない、セックスもできない、仕事もできないというキリアンはまさに体が大きいだけの子どもなのだ。何をやっても上手く行かず、怒りを爆発させても、そのしっぺ返しを食らう。彼は人生の弱者であり敗者である。

 

このあたりから物語は一気にジョーカー色を帯びてくる。なにもかもダメなキリアンの元に舞い込む一報。上向くかと思われた人生。しかし・・・ 『 ショーシャンクの空に 』では、ブルックスは娑婆になじめなかった。遅れて出てきたレッドも娑婆になじめず、命を絶とうとした。キリアンの選択は・・・  

 

ネガティブ・サイド

個人的にはラストの10分は蛇足。観る側を虚実皮膜のあわいに落とし込むような締めくくり方で十分だった。たとえば『 国宝 』で喜久雄が最後に目にしたのは、父親の死の情景と重なるきらめきだった。喜久雄は父親のように、あるいは俊介のようになったのか。それとも、その境地に達しただけなのか。その解釈は観る側に委ねられている。そういう結末の描き方を模索できなかったか。

 

時代設定はどうなっているのだろうか。2016年のコンペティションで云々かんぬんというセリフから、それ以降の時代だと思われるが、一方でアメリカンプロレスの話題の中でテイカーとケインの破壊兄弟が出てきたが、それは2000年前後。また、スマホが出てこない。たまに電話が出てきても、それはすべて固定電話。またYouTubeが存在しながらも、ボディビルの大会映像はすべてVHS。いったい、どういう世界線なのだろうか。

 

総評

レイトショーで鑑賞したのもあるだろうが、十数人ほどいた観客の中で女性はJovian妻一人だけ。あとはすべて中年男性だった。どこの劇場もこのような有様なのだろうか。人が悪に染まる要因は、元々のパーソナリティなのか、それとも環境なのか、それらの複合なのか、それ以外なのか。じっくりと見極めてみてほしい。間違ってもデートムービーだと思ってはいけない。本作ほどデートに向かない作品はない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go out with ~

~と一緒に外出する、転じて「~とデートする」の意味。文脈なしでも、ほぼ間違いなくデートの誘いだと解釈される表現。連れだって何かをしたい時、恋人、あるいは意中の相手には Do you want to go out with me? を、友人や同僚には Do you want to hang out with me? を使おう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 星と月は天の穴 』
『 YADANG ヤダン 』
『 この本を盗む者は 』

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ジョナサン・メジャース, スリラー, 監督:イライジャ・バイナム, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 ボディビルダー  』 -エンディングに不満あり-

2025年総括と2026年展望

Posted on 2025年12月31日 by cool-jupiter

2025年総括

副業、さらに英語ネタの note に時間を使っていて、年間100本のレビューには二年連続で及ばず。しゃーない。邦画では『 国宝 』がまさかの実写歴代一位を獲得。年末にも上映されているという異例のロングランとなったのが印象的。外国映画では、数こそ少ないものの中国アニメが鮮烈な印象を残した。映画館の営業スタイルはコロナ禍の前および最中に比べて完全に旧に復したが、チケット代はじわじわと上昇。それだけ国が貧しくなったのだと感じて、気が滅入る。アニメが強いのはお国柄だと言えるが、アニメが最強コンテンツだというのは毎年ながら釈然としない。

 

前向きになれる傾向としては、コロナ禍を経験した中で、旧来の連たちの形、新しい連帯の形が積極的に模索されてきたこと。『 フロントライン 』や『 この夏の星を見る 』などは、社会派でありつつエンタメの要素も併せ持った良作だった。今後は外国人問題、超高齢者問題、孤独死、尊厳死、そして戦争前夜の雰囲気を色濃く反映した映画が作られていくことを懸念しつつ、期待もしたい。

 

それでは各賞の発表をば。

 

2025年最優秀海外映画

『 教皇選挙 』

現実世界での教皇の死去および本物のコンクラーベが本作公開の年に起こるというのは、良くも悪くも最高のプロモーションになったのではないだろうか。宗教というシステム(Jovianの卒論のテーマだった)は信じることによって生み出されているが、それは政治でも経済でも同じこと。法律は文字、貨幣は物体。そこに現実的な拘束力はない。しかし、我々はそのシステムに従う。大切なのはシステムを盲目的に受け入れることではなく、それに疑義を抱くこと。そうしたことを非常にサスペンスフルに描き出した本作こそ、年間最優秀映画の栄に浴するにふさわしい。

次点

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』

小黒の成長、新キャラの導入、そして人間と妖精、妖精と妖精の間の緊張関係の高まりを2時間の中に過不足なく盛り込んだ脚本は称賛に値する。また、台詞に頼らない narrative 、さらにアニメ的というよりも漫画的な格闘シーンの数々が印象的だった。中国がコンテンツ産業にも力を入れ始めた証か。ジブリを承継するのは日本ではなく中国となるのだろうか。このクオリティの作品を継続的に作れるなら、それも歓迎したい。そう感じられるほどのクオリティの高さを誇っている。

次々点

『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』

韓国に限らず、世界の大都市に共通する環境の中で紡ぎだされる物語。都市とは、隣人が正体不明である空間に他ならない。誰もが他人に無関心である中、マイノリティたちが互いにロマンティックにならず、しかし自らのロマンスをひたむきに追い求め、傷つき、そして癒されていく。分断の対義語の一つに共存があるが、その共存のありうべき形を提示した傑作。

 

2025年最優秀国内映画

『 愛されなくても別に 』

ある意味で日本版の『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』であるとも言える作品。身の上の不幸を嘆くのはいいが、それを他人と競っても仕方がない。同病相哀れむのはいい。しかし、これからの時代に求められるのは、異病相慈しむという姿勢ではないだろうか。それを如実に示した本作の価値は上がりこそすれ、下がることはないに違いない。

次点

『 国宝 』

まさかの実写映画の日本歴代ナンバーワンの興行収入を達成。テレビの力で一位に君臨してきた作品が、テレビ資本なしの本作によって蹴落とされるのは象徴的。政治およびエンタメの世界の口コミの力に辟易していたのだが、本作のヒットは間違いなく数多くのレビュワーの力によるところも大きい。もちろん、脚本、演技、撮影のすべてもハイレベルだったことは言うまでもない。

次々点

『 JUNK WORLD 』

狂ったクリエイターがさらにその凶器を加速させて作り上げたエンタメ。実写とアニメの境目を行く本作は、その制作過程だけではなく、そのストーリーも良い意味で狂っている。個性が重視されながらも、それを育てる土壌がない日本社会において、このようなクリエイターが制作に没頭し、作品を発表できていることは非常に好ましいことだ。

 

2025年最優秀海外俳優

デミ・ムーア

『 サブスタンス 』での異様・異形の演技を高く評価する。日本の小説の『 モンスター 』をボディ・ホラーに昇華させ、『 ザ・フライ 』のような着ぐるみとメイクがCGに優る視覚効果を生み出すことを再確認させてくれたのも大きい。

次点

ティモシー・シャラメ

『 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 』で反骨のボブ・ディランを体現した。一歩間違えば単なる物真似かつコスプレになってしまうところを、伝記映画として引き締めたのはシャラメの力に依るところが大きい。

次々点

レオナルド・ディカプリオ

かつてのハンサム俳優から、なんでもありの演技派となったディカプリオが、『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』で新境地を開拓した。父親の愛情を表現する演技のひとつの基準になったのではないか。

 

2025年最優秀国内俳優

吉沢亮

『 国宝 』の主演によって、ついに代表作を手に入れた。ハン・ソロ=ハリソン・フォード、ロッキー=シルベスター・スタローンのように、立花喜久雄=吉沢亮だと言えるようになった。演技は学問であり、知識であり、技術であるが、それだけではない。渾身の力で演じることが重要なのだと、吉沢の演技は物語っていた。

次点

毎熊克哉

『 桐島です 』で時代に取り残された不器用な逃亡者を好演した。陰のある男がよく似合う、どこか昭和、平成の空気をまとった役者で、この人が出ている作品はハズレが非常に少ない。

次々点

馬場ふみか

『 愛されなくても別に 』で、非常にアンニュイながらも内に秘めたエネルギーの強さを感じさせるキャラを好演した。Jovianのお気に入りの南沙良を役の上で完全にコントロールしていた。おそらく撮影の現場でもそうだったのだろう。さらなる活躍に期待が高まる。

 

2025年最優秀海外監督

ポール・トーマス・アンダーソン

一歩間違えれば壮大なギャグになりかねない『 ワン・バトル・アフター・アナザー 』を、ユーモアと緊張感とスリルと恐怖で2時間40分を1時間40分に体感させるほど凝縮した手腕は見事の一語に尽きる。

次点

MTJJ

『 羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来 』の、徹底して絵で見せる手法と、その根底にある観客への信頼を評価する。言葉ではなく行動で語る鹿野というキャラは、まさにMTJJ監督の申し子とも言うべき存在。

次々点

チョ・ソンホ

『 君の声を聴かせて 』の演出が胸を打った。フェアに伏線を張りつつ、それでいて終盤に観る側を驚かせてくれるという演出のバランス感覚は絶妙だった。

 

2025年最優秀国内監督

李相日

3時間の長丁場をまったく弛むことなく、常にドラマを盛り上げ続けた『 国宝 』の演出を評価したい。歌舞伎の人気を盛り上げ、また兵庫県をはじめとする各地の聖地巡礼を盛り上げるなど、社会現象にまでなった。そうしたムーブメントを起こせる映画は数年に一つ生まれるぐらいである。

次点

平松恵美子

『 蔵のある街 』で、これぞご当地ムービーという作品を届けてくれた。地元出身者を起用するという基本を外す作品が多い中、本作は倉敷出身者をキャスティングしたところも好印象。

次々点

山元環

『 この夏の星を見る 』が示した、オンラインでのつながりが、決して触れ合えない、しかし互いの存在は認識し合える星と星のようだった。触れ合うことなくとも、人は人を照らすことができるということをコロナ禍の最中の青春群像劇として仕上げた手腕は素晴らしかった。

 

2025年海外クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 ジュラシック・ワールド/復活の大地 』

前作までの設定をすべて放り出したリセット作品。人間の行動がすべてアホで、なおかつ「それはもう別の作品で見た」という監督の自己満足シーンのオンパレード。時間とカネを無駄にした作品のワースト・ワンに決まりである。

 

次点

『 スーパーマン(2025) 』

魅力に欠ける主人公、そしてそれ以上に魅力とカリスマ性に欠けるヴィランと、せっかくのスーパーマンとレックス・ルーサーという極上の素材がまったく活かされないままに調理されてしまった。

 

次々点

『 ロングレッグス 』

2021年の『 ウィッチサマー 』と同じく、もの珍しさだけで喧伝されてしまった作品。

 

2025年国内クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 恋に至る病 』

意味不明な展開に意味不明なキャラ描写。キャラクターたちの行動原理の奥底にあるものを一切描写することなく、そのヒントすらないままに奇行に走っていくキャラたちに頭を抱えるばかり。脚本段階、撮影段階、編集段階、試写と、どこかの段階で誰か突っ込みを入れられなかったのか。

次点

『 ぶぶ漬けどうどす 』

ダメなご当地映画はこうやって作れ、というお手本のようなクソ作品。京都を極めて皮相的にしか理解していない人間が京都を題材にするとこうなってしまうわけだ。脚本家および監督は少なくとも京都に3年は住む、あるいは働いてから本作に取り掛かるべきだった。

次々点

『 果てしなきスカーレット 』

姫たるスカーレットが死者の国で復讐の鬼と化す。これほど面白そうな題材を、何をどうやったらあれほどクソつまならない物語にしてしまうのか。聖のキャラの薄っぺらさ、スカーレットのぶれぶれの姿勢、ご都合主義ばかりのストーリー展開。復讐したい相手がその先に待つという階段を、『 タイタニック 』でジャックに支えられるローズばりに登っていく姿には頭を抱えざるを得なかった。

 

2026年展望

AIが日常生活、学校教育、産業に浸透してきた。当然、映画製作の現場にもその影響は押し寄せている。そこには正の影響も負の影響もあるわけで、技術をどのように受容するのかは業界が試行錯誤して決める、あるいは自然淘汰に任せることになるだろう。映画ファンとしては、AIをホラーあるいはファンタジーではなく、ミステリやサスペンス、あるいはヒューマンドラマの文脈で再解釈した作品が国内外でより多く生み出されることを期待したい。

 

個人的には来年はゲームサントラのコンサートのレビューや、小説や漫画、ビジネス書のレビューにも挑戦してみたい。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画, 海外Tagged 2020年代Leave a Comment on 2025年総括と2026年展望

投稿ナビゲーション

過去の投稿

最近の投稿

  • 『 HELP 復讐島 』 -孤島のリベンジ-
  • 『 ここにひとつの▢ がある 』 -眩暈を覚える連作短編集-
  • 『 マーズ・エクスプレス 』 -先行SFへのオマージュ満載-
  • 『 ペンギン・レッスン 』 -軍政下の小さな奇跡-
  • 『 禍禍女 』 -クレイジーな三角関係-

最近のコメント

  • 『 桐島です 』 -時代遅れの逃亡者- に ヒフミヨのヒンメリの歌灯に より
  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より

アーカイブ

  • 2026年2月
  • 2026年1月
  • 2025年12月
  • 2025年11月
  • 2025年10月
  • 2025年9月
  • 2025年8月
  • 2025年7月
  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme