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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 未分類

『 テラフォーム 侵略 』 -やや竜頭蛇尾のSF-

Posted on 2022年12月19日 by cool-jupiter

テラフォーム 侵略 50点
2022年12月18日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ニコール・シャルモ ジャック・キャンベル
監督:エディ・アーヤ

近所のTSUTAYAで準新作コーナーにあったので、クーポンを使ってレンタル。典型的なクソB級SFだと思っていたが、どうしてなかなか面白かった。

 

あらすじ

アメリカの片田舎に隕石が落下。周辺の住民およそ1300人全員が犠牲になった。隕石落下地点では有毒ガスが発生。軍は一帯を封鎖する。謎の解明のために宇宙生物学者のローレン(ニコール・シャルモ)が召喚されるが、回収された遺体のうち49名が突如として起き上がった・・・

 

ポジティブ・サイド

侵略ものとしてはなかなか珍しい植物媒介型。Jovian的には小説『 トリフィド時代 』以来のように思える。よくよく考えれば、これは理にかなっている。新天地に最初に降り立つべきは動物ではなく植物。そして植物がガス交換して、それによって大気組成を徐々に変えていくというのは、実際のテラフォーミングの過程とも合致するはず。

 

さらに死体が起き上がるというのもなかなかのホラー。面白いなと感じたのは、死体がゾンビ化して動き回って周囲の生物を襲いまくる、ということがない。逆にどこか虚空の一点を時折見つめるのみ。これはシュールな光景で、これは『 光る眼 』とかからヒントを得ているのかな。物語が進むにつれ、ローレンの過去と今回の侵略がリンクしてくる。このへんは『 メッセージ 』の真似だろう。

 

過去の先行作品のおいしいところを頂いてくるのは別に悪いことではない。問題はしっかりと自分流の味付けができるかどうか。その意味で、本作は割と真面目に科学的な考証を行っている。ああ、そこがそうなるの?という感じで、思わぬ形で過去と現在をつなげてくる。ここはちょっと感心した。

 

ちなみにこれ、元ネタというか、着想は漫画『 風の谷のナウシカ 』から得てるよね。

 

ネガティブ・サイド

序盤にローレンと一緒に出てくる男性科学者はちょっと問答をしただけで、あとは全然役立たず。『 メッセージ 』におけるジェレミー・レナ―的なポジションのはずだろうに。このキャラはばっさりカットしても良かった。 

 

仮説段階とはいえ、異星文明由来の物質を吸い込んだ人間相手に、スタンダード・プリコーションで接近したらダメでしょ。

 

異星人がいよいよ本領発揮してくるという時に、ドラマ『 X-ファイル 』的な演出をするのは少々気になった。映画が映画のオマージュを取り込むのはいいが、ドラマの演出をそのまま使うというのはどうもなあ。

 

最後の最後の展開、必要かな?『 アクセル・フォール 』並みに唐突な終わり方。一応伏線は張ってあるものの、だからどうしたの?としか言えない。

 

総評

『 アド・アストラ 』思弁的なSFが好き、または『 ザ・メッセージ 』のようなB級作品を楽しめるという向きなら、本作もそこそこ楽しめるはず。a rainy day DVD もしくは a stay-at-home day DVD として、ウォッチ・リストに入れておいてもいいかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I’m listening.

直訳すれば「私は聞いている」、字幕では「それで?」だった。普通の会話の中でも割と出てくる表現で、「それで?」や「ということは?」や「つまり?」のように、「あなたの話を聞いている。その続きを話してほしい」を簡潔に表現していると思えばいい。会話に自信がなく、うなずいてばかりの人は、一度 “I’m listening.” を使ってみよう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』
『 ケイコ 目を澄ませて 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, アメリカ, オーストラリア, ジャック・キャンベル, ニコール・シャルモ, 監督:エディ・アーヤLeave a Comment on 『 テラフォーム 侵略 』 -やや竜頭蛇尾のSF-

『 グリーン・ナイト 』 -エスクワイアの旅物語-

Posted on 2022年12月19日 by cool-jupiter

グリーン・ナイト 55点
2022年12月17日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:デブ・パテル アリシア・ヴァイキャンダー ジョエル・エドガートン
監督:デビッド・ロウリー

古代や中世のファンタジーは定期的に観たくなる。DQやFFといったゲームで育ったJovian世代なら尚更である。

 

あらすじ

アーサー王の甥であるサー・ガウェイン(デブ・パテル)は、クリスマスの日、円卓の騎士たちが集う王の宴に招かれた。そこに緑の騎士が現れ、自分の首を切り落とす者はいないかという遊び事を持ちかけてきた。ガウェインはその遊び事に乗り、緑の騎士の首を落とす。しかし、騎士はガウェインに「1年後にミドリの礼拝堂へ来い。その時、自分がお前に同じことをする」と言い残し、去っていった・・・

ポジティブ・サイド

中世(といっても古代に近い中世か)の英国の雰囲気が画面全体に溢れている。石造りの建造物はやはりエキゾチックに感じる。ガウェインの旅路の大自然の豊饒さと荒々しさも素晴らしい。

 

ガウェインが行く先々で経験するイベントが非常に王道RPG的。『 アクアマン 』とは違い、これらのイベントが物語の侵攻を助けるのではなく、あくまでもエスクワイア=騎士見習いであるガウェインの成長や内省につながっている。

 

最後にたどり着く緑の礼拝堂で再会する緑の騎士との対話、そこでガウェインの脳裏を駆け巡るビジョンは、まさに騎士としての生き様の成就だったのだろう。そこまでなら普通の中世ファンタジーなのだが、面白いのはガウェインが追い求めた名誉。名誉とは他者からの称賛なしには得られない。しかし、旅路の中で出会う人々は騎士としての名誉を時に傷つけ、時に無理解、無関心を示す。そう、本当の騎士は認められるものではなく、自らそうあろうとする者なのだ。

 

ネガティブ・サイド

ダークファンタジーだからといって、本当に画面を暗くしてどうする。一部、本当に何も見えないシーンがあった。映画ファンが不満たらたらだった『 GODZILLA ゴジラ 』のMUTOとゴジラの夜の決戦シーンよりも暗い。誰が何をやっているのか見えない。何故にこんな画を複数も撮ってしまったのか。

 

肝心のグリーン・ナイトに関する知識をもっと共有してほしかった。緑に関する哲学的な問答が終盤にあるのだが、もっとグリーン・ナイトそのものに関してキャラクターたちに語って欲しかった。『 MEN 同じ顔の男たち 』のグリーン・マンもかなり謎の存在だったが、彼らには何か共通点があるのだろうか。アーサー王の物語なら解説は不要に思うが、英国とグリーン・ナイトやグリーン・マンといった超常的な存在については説明不足に感じた。

 

主演のデブ・パテルは『 ホテル・ムンバイ 』でははまり役だったが、今作では今一つ。この時代のグレート・ブリテン島にインド人はいないはず。デブ・パテルは悪い役者ではないが、このキャスティングが最適だったとは思えない。

 

総評

ある程度アーサー王伝説について知っておく必要がある・・・とまでは言わないが、その知識があることが望ましいのは間違いない。その意味で、間口が広い映画とは言えない。ただ古典的なRPGゲーム程度の知識があれば、ガウェインが行く先で経験するあれやこれやのイベントを楽しむことはできる。GOGのグルートのモデルはグリーン・ナイトなのかな?といったような疑問を楽しみながら鑑賞すればいい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

believe in ~

劇中では “Do you believe in magic?” =「あなたは魔法を信じますか?」という感じに使われていた。

believe ~ = ~を(良いもの、または正しいものだと)信じる
believe in ~ = ~の存在・能力・価値などを信じる

としっかり区別して覚えよう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』
『 ケイコ 目を澄ませて 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アイルランド, アメリカ, アリシア・ヴァイキャンダー, カナダ, ジョエル・エドガートン, デブ・パテル, ファンタジー, 監督:デビッド・ロウリー, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 グリーン・ナイト 』 -エスクワイアの旅物語-

『 マーズ・ミッション2042 』 -中国発の竜頭蛇尾のSF-

Posted on 2022年12月4日 by cool-jupiter

マーズ・ミッション2042 15点
2022年12月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:スオ・シャオクン
監督:リウ・ナー

『 ムーンインパクト 』がアホ極まりないUSA産SFだったので、ならば中国産はどうか?とということで近所のTSUTAYAでレンタル。竜頭蛇尾のダメSFだった。

 

あらすじ

火星移住計画が進行中の2042年。中国やアメリカは火星の軌道上および地表で様々な実験や研究を行っていた。そんな中、火星に小惑星が接近しているとの報が入る。時を同じくして、火星に謎の生命体が出現。地表探査チームは宇宙船で脱出するが、巨大生物に襲われ不時着を余儀なくされる。アメリカは中国に救助を要請。中国のエウロパ探査宇宙船ワン・フー乗組員は火星に着陸するが・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の15分は『 オデッセイ 』そのまんま。マット・デイモンが火星に取り残されてしまうシークエンスを中国が再構成してみた、という感じ。word for word, scene for scene の再構築ではないが、明らかにオマージュのレベルを超えている。こうした姿勢は悪くないと思う。技術的に進んだ相手の手法をそのまま真似てみるというのは、芸術を学ぶ上で不可欠。模写はその最たる例。映画でもそういう試みはあっていい。

 

火星の大気中を遊泳するクジラはなかなかの迫力。アメリカ人が宇宙生命体を描くと『 ライフ 』のカルヴィンのようなクリーチャーになってしまうが、中国が描くクジラやトカゲはアジア的なセンスが素直に反映されていて、個人的には受け入れやすい。

 

ネガティブ・サイド

科学的な考証は無きに等しい。いちいちツッコミを入れるのも馬鹿らしいが、火星と地球の距離を考えろ。『 オデッセイ 』がなぜあれほどハラハラドキドキとヤキモキした感じを生み出せたのか。それは通信に要するタイムラグ。地球と火星で通信すると、往復で30分弱かかる。それが本作ではリアルタイムに通信できている。超光速通信だ。そんな技術があれば、火星のテラフォーミングなど、とっくに達成されていそうに思えるが。

 

アメリカ人を悪者にするのは別にOK。アメリカもソ連やロシア、中国などを散々悪者に描いてきた。問題は、アメリカ人の研究者個人が悪いのであって、アメリカが悪いのではないという描き方。もっと踏み込んでええんやで、中国さん。せっかくの宇宙SF。もっとスケールの大きい話しようや。また中国人俳優の中で英語を喋るのが1~2人しかいない。韓国やインドをもっと見習って、俳優に語学を勉強させるべき。エンタメ分野でも世界制覇を目指すなら英語は今後マストだろう。邦画は無理でも、中国映画界にはそのポテンシャルがあってしかるべき。

 

俺の屍を越えてゆけ的な展開が短時間で二度発生。これは萎える。こういう感動の押し売りが受け入れられるのは一つの映画につき1回までと心得よ。また最後は父と息子の葛藤と和解の物語に着地してしまうが、そこに至るまでの人間ドラマの描写が圧倒的に弱い。冒頭の展開だけで脚本家が力尽きて、予算も使い果たしのだろうか。

 

総評

一言、ダメ映画である。冒頭シーンの迫力に期待を持ってはいけない。そこがピークである。a rainy day DVD にもならない。小説『 三体 』が世界を席巻して以来、中国発のSFの良作を待っているが、まだまだ時間がかかるのかもしれない。配信やレンタルで見かけてもスルーするのが吉。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. Hardly anything was impressive after the first 15 minutes.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, スオ・シャオクン, 中国, 監督:リウ・ナーLeave a Comment on 『 マーズ・ミッション2042 』 -中国発の竜頭蛇尾のSF-

『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』 -アイデアの勝利-

Posted on 2022年11月15日 by cool-jupiter

MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 75点
2022年11月15日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:円井わん マキタスポーツ
監督:竹林亮

どこのラノベだと思わせるタイトルだが、これがべらぼうに面白かった。『 カメラを止めるな! 』に迫る低予算のアイデア一発勝負映画の秀作だ。

 

あらすじ

小さな広告代理店に勤める吉川(円井わん)は、大手広告代理店への転職を目指し、職場に泊まり込む毎日を過ごしていた。ある日、二人の後輩から、自分たちが同じ1週間を何度も繰り返していることを知らされる。吉川たちはこのタイムループを原因は永久部長が身に着けているブレスレットにあると睨み、なんとかそれを破壊するための算段を練ろうとするが・・・

ポジティブ・サイド

タイムループものは小説でも映画でも数多くの秀作が生産されてきた。実際に劇中でも『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』や、『 ハッピー・デス・デイ 』、『 恋はデジャ・ブ 』などが言及される。本作も秀作である。

 

まず、タイムループの現場を会社にしたのがユニーク。その会社もかなりハードな様子。ネタなのか事実なのか分からないが、ブラック企業勤務の人が「とうとう iPhone が会社を自宅だと認識し始めた」みたいなことを言うが、まさにそんな会社。これだけで同じサラリーマンとして吉川やその他の面々に大いに感情移入してしまう。

 

本作でもう一つユニークなのが、タイムループに巻き込まれた面々の大半がタイムループに巻き込まれていることに気づいていないこと。そして、気付いた者たちが気付いていない者たちに気付きを促す流れが笑えるのだ。特に本丸である永久部長にタイムループに気付いてもらうために上申制度をそのまま使うところに笑ってしまう。どこまでサラリーマンやねん。異常事態にあっても社畜根性が抜けない。そんな彼ら彼女らの姿を笑いながら、冷や汗をかいている人も多いのではないだろうか。日本人の多くは地震や台風でも出社したがるからなあ・・・

 

閑話休題。本作はコメディでありながら、上質なヒューマンドラマにもなっている。小さな広告代理店で仕事をさばきながら、大きな広告代理店への転職が内定している吉川は、同僚や恋人への接し方に少々問題あり。しかし、そんな彼女がタイムループ脱出のために、部長の抱える問題の解決のために、一致団結して協力していく中で人間として成長していく。

 

毎日が同じ仕事の繰り返しのように感じられる人は多いはず。Jovian自身もそうだった。しかし、そういった閉塞的な状況をどう捉え、どう行動するのか。本作はそこに大きな示唆を与えてくれるという意味で、単なるコメディ以上の作品に仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

開始10分で「ああ、この人が実はキーパーソンやね」とすぐに気づいてしまう。ここをもう少しうまくカバーするような仕組みがあれば、中盤の驚き展開をもっと強烈にできたはず。

 

ずっとほったらかしにしてしまっていた吉川のボーイフレンドは、結局どうなったのだろう。そこも少しで良いのでフォローしてほしかった。

 

総評

サラリーマン的な世界観を提示して、それを笑わせながら、いつの間にやらそのサラリーマン的な世界観に感動させられた。決して万人受けする作品ではないだろうが、刺さる人には刺さること間違いなし。低予算であっても脚本が良ければ勝負できる。有名俳優が出演していなくても、しっかりとした演出ができればキャラにもストーリーにも説得力が生まれる。こうした王道以外の作品が邦画の世界でもっと生み出されてほしい。すまじきものは宮仕えと言うが、サラリーマンは本作を観て、明日への勇気をもらおうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make it up to someone

誰かに対して埋め合わせをする、の意味。吉川は仕事に忙殺されて、ボーイフレンドを放置してしまい、それに対して電話で「埋め合わせするから」と言う。英語字幕なら、間違いなく I’ll make it up to you. である。この表現を使うということは何らかの穴を開けてしまっているわけで、積極的に使うべきフレーズではないだろう。ただ、人間関係の中でこう言わざるを得ない場面はきっとある。知っておいて損はないはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ドント・ウォーリー・ダーリン 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, コメディ, マキタスポーツ, 円井わん, 日本, 監督:竹林亮, 配給会社:パルコLeave a Comment on 『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』 -アイデアの勝利-

『 トップガン マーヴェリック 』 -マサラ上映-

Posted on 2022年11月13日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点 
2022年11月12日 塚口サンサン劇場にて鑑賞 
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー ヴァル・キルマー 
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

劇場鑑賞7回目。マサラ上映への参加は実は初めて。『 バーフバリ 王の凱旋 』のマサラ上映を神戸国際松竹で鑑賞しようとするもタイミングが合わなかった。ボリウッド映画以外でもマサラ上映はありだなと感じた。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

ポジティブ・サイド

入り口で「マサラ上映ですけど、大丈夫ですか?」の問いに然りと回答。するとクラッカーを2つ渡される。なるほど、良きタイミングで鳴らせというわけか。劇場内はほぼ10割の入り。初対面のおじさんから「これ、使ってください」と紙吹雪の束を渡される。前後左右にサイリウム持ちもチラホラ。異様な熱気である。

 

マサラ上映前の劇場スタッフのコスプレとインストラクションが素晴らしかった。どこまで本当か分からないが、『 トップガン マーヴェリック 』のマサラ上映は世界でも塚口サンサン劇場だけとのことだった。スクリーン上の “Don’t think, just do. It’s today.” の文言にテンションが上がる。

 

オープニングの『 ミッション:インポッシブル 』の最新作のトレイラーの時点で、紙吹雪が舞い、クラッカーがパンパンと鳴らされる。特にあのテーマ曲に合わせてポン、ポン、ポンポン、ポン、ポン、ポンポンとクラッカー鳴らしていた集団はマサラ上映のプロ参加者たちか。

 

”トップガン・アンセム” からの “Danger Zone” で劇場のテンションは最高潮。紙吹雪も上がる上がる、クラッカーも発射されまくり。今回の参加者の大半は、おそらく劇場鑑賞5回以上、または配信もしくは円盤で本作を相当回数観ている人たちだろう。機関砲射撃やミサイル発射、その他の印象的なシーンでドンピシャでクラッカーが鳴らされる。いったい何発用意してきたのだろうか。

 

思いがけない副産物としてMX4D鑑賞の時以上に火薬の匂いが感じ取れた点が挙げられる。ジェットがアフターバーナーに点火した時、フレアをばらまく時、爆弾投下した時などに漏れなくクラッカーが鳴り響き、むせかえる程の火薬の匂いが臨場感をいや増すのを感じた。

 

最近、YouTubeでずっと「Fighter Pilots React to TOP GUN MAVERICK」という動画シリーズを視聴していて、映画のどこが現実に即していて、どこが現実離れしている、あるいは完全なフィクションなのか、かなり細部まで study していた。そのことで鑑賞時の楽しみが薄れるかと懸念していたが、それは杞憂だった。本作は何回観ても面白いし、軍人さんのツッコミ内容を知っても尚面白い。またインド映画以外でもマサラ上映と相性の良い作品があることを映画ファンに知らしらめたというのは素晴らしい。あらためて今年のベストであると確信した。

 

ネガティブ・サイド

あまりにもクラッカーがうるさいのが幸いして、台詞を聴くのではなく、字幕を読むことに集中できた。そのうえであらためて感じたのが、戸田奈津子御大の英訳のまずさ。Talk to me, dad. や He called you a man, Phoenix. などの字幕は酷い。これは作品の問題ではないので減点はしない。

 

本番ミッションで渓谷内に橋があるが、事前の調査で分かっておらず、現場でとっさに判断してかいくぐったようだった。これは海軍情報部の重大な落ち度、というよりも脚本上の重大な欠点だろう。

 

総評

マサラ上映は後片付けがなかなか大変だが、上映終了後は観客に一体感が生まれているので、一致団結して掃除も順調に進んだ。記念写真も良い思い出。SNSにアップ不可ということは、多分ブログにもアップ不可だろうと解釈した。もしも本上映の参加者がいたら、ほとんど全員が空軍式の敬礼をしている中、数少ない海軍式の敬礼をしている中の一人がJovianである。本作の劇場公開もさすがに全国的にも終わりつつあるが、劇場で映画を観るということの楽しさを思い出させてくれた功績は計り知れない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

joyride

乗り物に乗って楽しむことを指す。特に盗難車の場合が多い。マーヴェリックがペニーをF-18に乗せ、それがバレたせいでボスニア送りにされたエピソードが披露された。この場合、盗んだのは戦闘機。しかも一般人(といっても軍のお偉いさんの娘ではあったが)を乗せたというのだから、無手勝流のマーヴェリックらしい。Take me on your mighty wings ならぬ Take me on a joyride とペニーが頼んだのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 警官の血 』
『 窓辺にて 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, ヴァル・キルマー, トム・クルーズ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -マサラ上映-

『 天間荘の三姉妹 』 -スカイハイだと明示せよ-

Posted on 2022年11月6日 by cool-jupiter

天間荘の三姉妹 40点
2022年11月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:のん 大島優子 門脇麦 寺島しのぶ
監督:北村龍平

漫画『 スカイハイ 』は、絵柄は好きでも、ストーリーはそんなに好きではなかった。今作も予備知識ほぼゼロで臨んだが、柴咲コウがイズコだと分かってからは、この独特の世界観を楽しめなかった。

 

あらすじ

老舗の温泉宿「天間荘」を切り盛りする若女将の天間のぞみ(大島優子)は、イルカの調教師のかなえ(門脇麦)とともに腹違いの妹、たまえ(のん)を迎え入れる。たまえは行き先を決めるまでの間、天間荘で働くことになるが・・・

ポジティブ・サイド

『 女子高生に殺されたい 』でも感じたが、アイドルだった大島優子が女優になっている。和服の着こなしだけなく、所作も旅館の女将さんらしさが出ている。それを感じさせたのは歩き方。宿の廊下をしゃなりしゃなりと歩くことができていた。長女として、また若女将として、大女優・寺島しのぶに真っ向から挑むその姿勢や善し。脱アイドル完了まであと2作品ぐらいだろうか。

 

門脇麦も相変わらずの安定感。彼女の出演作はハズレが少なく、作品がハズレでも彼女の演技がハズレであることはほとんどない。日本のジェシカ・チャステインを目指してほしい。『 あのこは貴族 』と同じく高良健吾との共演がよく似合う。また、どことなく寺島しのぶと顔の作りが似ているように感じられ、母子の感じが強く出ていた。

 

ただ。今作では寺島しのぶすら食ってしまう三田佳子御大が出演。本作の色んな面に不満があるのだが、三田演じる財前からは偏屈さと、その根っこある他者を敢えて寄せ付けないという優しさ、そして気高さが感じられた。財前とたまえのサブプロットをメインのプロットに書き換えて、それを1時間30分のたまえのビルドゥングスロマン映画にしても良かった。それぐらい三田佳子の演技は鮮烈だった。

ネガティブ・サイド

残念ながら役者の演技以外に褒められるところがない。震災で亡くなってしまった人々は確かに痛ましいとは思う。けれど最も苦しめられるのは、亡くなった人の家族や友人ではなく、見つからない人、行方不明のままの人の家族や友人ではないか。言い方は悪いが、遺体があれば、その人は死んだと受け入れられる。受け入れざるを得ない。しかし遺体が見つからないままであれば、まだ生きているのではないかという絶望的な希望にすがるしかないではないか。『 風の電話 』が傑作だったのは、まさにここに焦点を絞ったからである。

 

そもそも漫画『 スカイハイ 』は、天国に行く、現世をさまよう、復讐するの三択から一つを選ぶのではなかったか。津波によって街ごと破壊された、なので三ツ瀬という街をそのまま天と地の間に再現しようというのは、原作の世界観を破壊してはいないか。何か腑に落ちない。

 

絵師の少女の物語が今一つ。正直なところ、こんな風に孤立してしまう子は残念ながらどこにでもいる。今の大学生がどれくらいメンタルの不調を抱えて、いわゆる「配慮願い」を学校に提出してくるか、本作の制作者たちは知っているのだろうか。Jovianはこの少女の因果にまったく同情も共感もできなかった。

 

本作はのんのキャラクターと合っていないようにも感じた。のんの持ち味として、たとえば『 私をくいとめて 』や『 さかなのこ 』、『 Ribbon 』のように、世間や時代に簡単に迎合しないキャラクターが挙げられる。これは彼女自身の生き様とも共通するところだろう。その一方で、本作ではいわゆるフリーターで、旅館の女中からイルカの調教師を目指すというサブプロット。偏屈な財前との絡みから、おもてなしを極めることを志すのではダメなのか?死者のメッセージを生者に届ける役目を引き受け、天地の間にたゆたう魂を昇天させるという筋立てではなダメなのか?ぶっちゃけイルカの調教師のシーンは必要か?しかも、ザバーンと水に飛び込んだ直後のシーンで、のんの髪が濡れていないという大失敗の画も・・・

 

本作は『 スカイハイ 』のスピンオフであることを明示するか、あるいは『 パッセンジャーズ 』のようなトリックを仕込むべきだった。天間荘でたまえが様々な客をもてなしていくが、実はもてなされていたのは・・・という感じである。ファンタジーを描きたいのか、ヒューマンドラマを描きたいのか。そこをはっきりさせない中途半端な作品である。

 

総評

一部はとても面白いのだが、全体を観ると凡庸というか、はっきりいって面白くない。製作者の死生観に文句をつけるわけではないが、死者側から生者側を観るという物語の必然性を感じない。『 スカイハイ 』は理不尽に命を奪われた個人が、死を受容したり、あるいは復讐するところが肝なのであって、記憶をもって蘇るというのはご都合主義が過ぎる。チケットを買うなら、役者の演技を堪能するためと割り切るべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

near-death

ニアミスならぬニアデスで、これは臨死という意味。しばしば near-death experience = 臨死体験という使われ方をする。臨死体験は『 フラットライナーズ 』の昔から映画や小説のテーマになっているので、この表現を見聞きしたことがある人も多いのではないか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』
『 警官の血 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, のん, ファンタジー, 大島優子, 日本, 監督:北村龍平, 配給会社:東映, 門脇麦Leave a Comment on 『 天間荘の三姉妹 』 -スカイハイだと明示せよ-

『 秘密の森の、その向こう 』 -フレンチ・ファンタジーに酔いしれる-

Posted on 2022年10月29日 by cool-jupiter

秘密の森の、その向こう 70点
2022年10月26日鑑賞 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ジョセフィーヌ・サンス ガブリエル・サンス
監督:セリーヌ・シアマ

予備知識ゼロで鑑賞。あらすじすら読まなかった。Twitter友達から勧められたからなのだが、そういう人からのお勧めは当たり率が非常に高い。

 

あらすじ

ネリー(ジョセフィーヌ・サンス)は両親に連れられ、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けに来る。しかし、母は自分の母を喪失した悲しみから、家を出て行ってしまう。残されたネリーは森を散策するうちに、母と同じ名前の少女マリオン(ガブリエル・サンス)と出会い、友達になる。ネリーはマリオンの家に招かれるが・・・

ポジティブ・サイド

何とも言えない余韻を残す作品。鑑賞中に思い浮かんだのは『 思い出のマーニー 』と『 リング・ワンダリング 』の二作。時を巡る、そして自らのルーツに図らずも迫ってしまう物語である。

 

BGMはほとんどない。しかし、それが使われる際の情景の美しさとキャラクターの心象風景とのマッチング具合は素晴らしいの一言。キャラクターも少なく、さらに台詞も多くない。台詞が発されたとしても、多くの場合は何らかの比喩というか婉曲的な表現が多く、それが観る側をぐいぐいと惹きつける。フランスといえば少ない登場人物にもかかわらず読者を翻弄するミステリの良作を生み出す国だが、映画でもその技法は存分に活かされている。

 

母マリオンが姿を消した直後に現れる、母と同じ名前の少女マリオン。ネリーとマリオンの子ども同士の無邪気な交流が、いつしか魂の交感にまで昇華される。普通なら2時間はかかりそうなものだが、シアマ監督は70分でそれをやってのける。ここまで研ぎ澄まされた演出と編集は見たことがない。

 

「人はいつか死ぬ。早いか遅いかだけだ」とは『 もののけ姫 』のジコ坊の言。死ぬ時期を知ってしまうというのはシビア極まりないことだが、同時に確実に出会える人間がいるのだ、という希望にもなる。なるほど、これは男を主軸にしては作れない物語。男の自分でも心揺さぶられるのだから、女性視点ではどうなるのだろう。有休を使って一人で観に行ったことがある意味で悔やまれる佳作だ。

ネガティブ・サイド

ネリーとマリオンはなかなか見分けがつかない。双子のキャスティングというのは吉とも凶とも出るが、今作ではその中間ぐらいだろうか。

 

ネリーの父が、終盤の手前でネリーとマリオンの両方に出会うシーン。ここにマリオンを連れてこず、ネリーと父との会話だけでもう一日だけ滞在を延ばす(予定の繰り上げをやめる、が正しいか)ようにすれば、さらにファンタジー色が強まっただろうと思う。

 

総評

『 シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 』を鑑賞した時に近いインパクトがあった。フランス映画はたまにこういう静謐な傑作を送り出してくる。『 トップガン マーヴェリック 』では疑似的な父と息子の関係作りに失敗したマーヴェリックが、ペニーとアメリアの母と娘の関係性から学ぶ姿が印象的だったが、本作はもっと直接的に母と娘の関係性に切り込んでいく。父と息子というのは『 オイディプス王 』の時代からの古典的テーマであるが、本作は母の母と、母の娘という対極的なテーマの古典になりうる力を秘めている。

 

Jovian先生のワンポイントフランス語レッスン

Excusez-moi

エクセキューゼ・モワという感じの発音。英語で言うところの Excuse me. で、軽めの謝罪であったり、あるいはちょっと話しかけたり、ちょっと通らせてもらったり、といった時に使える。日本語の「すいません」に相当するのだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 アムステルダム 』
『 天間荘の三姉妹 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ガブリエル・サンス, ジョセフィーヌ・サンス, ファンタジー, フランス, 監督:セリーヌ・シアマ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 秘密の森の、その向こう 』 -フレンチ・ファンタジーに酔いしれる-

『 マイ・ブロークン・マリコ 』 -遺骨と共に行くリトリート-

Posted on 2022年10月9日2022年10月9日 by cool-jupiter

マイ・ブロークン・マリコ 65点
2022年10月8日 TOHOシネマズ西宮OSにて鑑賞
出演:永野芽郁 奈緒
監督:タナダユキ

ごく最近、お通夜と葬式に参列した。生きること、そして死ぬことについて追究しようとしているのではないかと本作に注目していたので、チケットを購入。

 

あらすじ

トモヨ(永野芽郁)は外回り営業中に、かつての親友マリコ(奈緒)がアパートから転落死したことを知る。幼少の頃から父に苛烈な虐待を受けていたマリコの遺骨を、トモヨはマリコの実家から強奪する。そして、マリコが生前に行きたがっていた「まりがおか岬」を目指すことにして・・・

ポジティブ・サイド

観終わってすぐの感想は「これはロードトリップではなく、リトリートだったな」というもの。リトリートと聞いて「はいはい、リトリートね」と得心できる人は、マインドフルネスにハマっている人、マインドフルネスを大いに実践している人か、または国際基督教大学の現役生か卒業生だろう。リトリートとは、日常から離れて内省することで、まさに本作のトモヨの旅そのものである。

 

本作がいわゆるバディ・ムービーともロード・トリップとも異なるところは、トモヨの相方であるマリコが死んでいるということである。マリコの願いを叶えようと旅に出るトモヨだが、実は癒やしや赦しを求めているのはマリコではなくトモヨの方なのだ。無造作なご飯の食べ方、明らかにニコチン依存症をうかがわせるタバコの吸い方、そして勤め先の絵にかいたようなブラック企業っぷりから、それは明らかである。

 

永野芽郁は『 地獄の花園 』での武闘派OL役が無駄ではなかったと思わせる演技。単純にギャーギャー言うだけなら素人でもできる。遺骨を強奪するシーンでの慟哭と咆哮は素晴らしかったし、居酒屋での切れっぷりも迫力十分。安藤サクラ路線に行けるか?と期待させてくれた。Jovian一押しの奈緒も、壊れてしまった女性を怪演。筆舌に尽くしがたい虐待を受けてきたことで感覚が麻痺してしまっている女性像を如実に提示してきた、DV被害に遭った女性が、再婚相手にまたもDV男を選んでしまうかのように、暴力男と付き合い始め、やっと別れたかと思ったら、またも相手は暴力男という具合。その自分の感性の狂いっぷりを淡々と語る喫茶店のシーンは素晴らしかった。駄作確定の『 貞子 』映画を作るくらいなら、奈緒や永野芽郁を使った『 富江 』映画が観たい。

 

一種の共依存であるトモヨとマリコの旅路の途中に現れる窪田正孝演じる男の飾らなさ、絶妙な距離感の取り方も良い。どうにもならなくなっても、ちょっとしたことで生きていける。そのことをさり気なく気付かせてくれる男で、だからこそトモヨは旅の後に日常に帰っていくことができた。『 レインマン 』のように旅で何かが大きく変わったのではなく、トモヨは日常から数日逃避したわけだ。最後のシーンの解釈は分かれることだろう。Jovianはトモヨが読み取ったのはマリコの感謝であると感じた。何が正解かは分からない。人生、そして人間関係はそんなものだろう。

 

ネガティブ・サイド

原作の漫画がどうなっているのは分からないが、あまりにも展開がご都合主義すぎる。まず引ったくりに遭うタイミングも出来過ぎだし、その引ったくり男が最後の最後で絶妙なタイミングで現れてくるのも「何だかなあ」である。85分という短い尺を95分にして、その10分間でもう少しストーリー展開にリアリティを持たせられたのではないか。

 

マリコの家庭および男性遍歴についても掘り下げられたのではないかと思う。特に付き合う男全てがハズレの暴力男というのはリアリティがある。だからこそ、それを映像でも示すべきだった。そうすることで窪田正孝演じる男と、その他の男どもとのコントラストがより際立ったと思う。

 

これは個人の感想だが、エンドクレジットに流れる曲がストーリーとマッチしていなかった。

 

総評

永野芽郁が『 地獄の花園 』に続いて殻を割ろうとしている作品。かつ、『 ハルカの陶 』の奈緒が新境地を開拓した作品でもある。男同士の恋愛物語が輸入されたり、あるいは邦画でも作られつつあるが、女同士のちょっと普通ではない依存関係、それも故人とのそれを描いた作品はかなり異色だろう。それでも西宮ガーデンズにはかなり多くの、それも若い観客が来ていた。若い人の心をとらえる何かが本作にあるのは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

child abuse

児童虐待の意。日常では決して使いたくない表現。せいぜい新聞やニュース番組でしか触れたくない。けれど児童虐待は現実に存在する。見かけたらバンバン通報するしかない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ドライビング・バニー 』
『 ソングバード 』
『 千夜、一夜 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, C Rank, アドベンチャー, ヒューマンドラマ, 奈緒, 日本, 永野芽郁, 監督:タナダユキ, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 マイ・ブロークン・マリコ 』 -遺骨と共に行くリトリート-

『 四畳半タイムマシンブルース 』 -Back to the 四畳半-

Posted on 2022年10月2日 by cool-jupiter

四畳半タイムマシンブルース 75点
2022年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行
監督:夏目真悟

戯曲『 サマータイムマシン・ブルース 』を、そのまま『 四畳半神話大系 』のキャラクターで再構築。見事なスピンオフ作品に仕上がっている。

 

あらすじ

「私」(浅沼晋太郎)のエアコンのリモコンが、悪友・小津(吉野裕行)によって壊されてしまった。これにより部屋は灼熱地獄に。映画サークルの明石さん(坂本真綾)が撮影に邁進するなか、アパートの下鴨幽水荘からどういうわけかタイムマシンが見つかる。これで一日前に戻って、壊れる前のリモコンを持って帰ってくれば、と一同は考えて・・・

ポジティブ・サイド

四畳半主義者および四畳半世界をビジュアル化するにあたって、しっかりと湯浅政明のテイストを受け継いでくれている。奇妙な色彩の使い方と、「私」の青春そのままのようなくすんだ灰色とが織り成すコントラストは、それだけで観る者を癒やす。

 

キャラの中身も恋、いや濃い。10年以上ぶりに浅沼晋太郎が「私」を演じるが、まさに森見登美彦風のダメダメ大学生をそのまま演じている。この「私」のまるで成長していない加減が絶妙で、おっさんは自らの青春時代を回顧せざるを得ない。肉体的な鍛錬や学問的な精進から逃避するのみならず、恋からも逃げまくる。いや、追いかけまくる。この情けなさに笑いと涙の両方が喚起される。

 

悪友・小津と「私」の「セクシャルな営み」も映像化してみると面白いし、それをクールに眺める明石さんも美しい。いつもの四畳半の面々が、ふとしたことから手に入れるタイムマシンを使って、ドタバタ劇を繰り広げる。タイムトラベルものはシリアス路線かコメディ路線に行くのが常で、本作はもちろんコメディ。行き先が一日前なのだから、これほどスケールの小さいタイムトラベルは珍しい。しかし京都市の片隅だけの限られた人間関係の中で過去改変を阻止せねばならないという独自のシチュエーションは、笑いだけではなくハラハラドキドキ感も生み出している。

 

明石さんを追いかける「私」を追いかける「私」と小津という構図にはドキドキしながらも、笑うしかない。これも活字とは異なり映像で観ることで独特のユーモアと緊張感が生まれている。昨日と今日だけのタイムトラベルかと見せかけて、ストーリーは突如大規模に展開していく。そこで序盤からの数々の伏線が鮮やかに回収されていく。タイムトラベルものの王道で、実に清々しい。

 

京大に落ちてICUに行き、木造のボロボロ男子寮(ヴォーリズ建築!)で怠惰な四年間を過ごした身としては、下鴨幽水荘=男子寮に感じられてしまう。タイムマシンはおそらく理論上でしか存在できないが、思い出というタイムカプセルは誰でも持つことができる。未来は自らで切り拓くもの。そしてその未来が、いつか美しい思い出になる。

ネガティブ・サイド

森見登美彦の小説版『 四畳半タイムマシンブルース 』と少々異なるところがいくつかある。序盤で「私」が裸踊りをする直前の明石さんの「本当にやるんですか?」はもっと色っぽい雰囲気だったはず。他にも小説版との違うなと感じられるところがちらほら。まあ、このへんは森見登美彦と上田誠、どちらの波長が自分に近いかということだと思うが。

 

田村の行動が、「私」たちが必死に阻止しようとした過去改変の原理をあっさりと破っているところだけは気になった。これもタイムトラベルもののお約束か。

 

総評

梅田ブルク7は老若男女で9割の入りだった。森見登美彦の fanbase 恐るべし。仮にこれが何の話か分からなくても、ぜひ高校生や大学生にはデートムービーとして劇場鑑賞してほしい。本作から小説やアニメの『 四畳半神話大系 』や『 バック・トゥ・ザ・フューチャー 』を知って、それらにも触れてほしい。究極的にはゲーテの『 ファウスト 』にまでたどり着いてほしいと思う。今目の前にある「時」を誠実に生きること。若い人ほど、それを実践してほしいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

space-time 

「時空」の意。SF小説やSF映画では頻繁に出てくる表現。英語の順番どおりに訳せば空時となるが、これでは少々おさまりが悪い。ちなみに space = 宇宙の意味もあるが、古代中国語では 宇=空間、宙=時間だったとされる。言葉は違っても、概念・観念レベルでは人間はだいたい同じなのかもしれない。 

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, アニメ, 吉野裕行, 坂本真綾, 日本, 浅沼晋太郎, 監督:夏目真悟, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:アスミック・エース, 青春Leave a Comment on 『 四畳半タイムマシンブルース 』 -Back to the 四畳半-

『 トップガン 』 -4Kニューマスター上映-

Posted on 2022年9月19日 by cool-jupiter

トップガン 90点
2022年9月18日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:トム・クルーズ アンソニー・エドワーズ ケリー・マクギリス ヴァル・キルマー
監督:トニー・スコット

『 トップガン マーヴェリック 』の記録的な大ヒットを受けて、前作と新作の二作連続上映。こういった試みは、今後も続けていってほしいと思う。

 

あらすじ

F-14パイロットのマーベリック(トム・クルーズ)は無鉄砲な操縦を繰り返す海軍の問題児。そんな彼と相棒のグース(アンソニー・エドワーズ)はエリート養成機関「トップガン」に送り込まれる。他の部隊の腕利きや教官との衝突や、民間人アドバイザーのチャーリー(ケリー・マクギリス)とのロマンスを通じて、マーベリックは成長していくが・・・

ポジティブ・サイド

夕陽と戦闘機、そして Kenny Loggins の “Danger Zone” のシーンが都合3回出てくるが、これらのシーンが最も『 トップガン 』らしいと感じた。『 トップガン 』自体は多分10回以上観ているが、初めて劇場で鑑賞したことで、大画面と大音響でしか感じ取れないものがあると分かった気がする。

 

若きトム・クルーズが、無鉄砲なパイロット、無邪気な青年、孤独と焦りを抱えた男など、様々な面を多彩に演じ分けた。レオナルド・ディカプリオ同様に、ルックスだけの人ではなく、若い頃から実は演技派だったわけやね。レイバンのアビエイター仕様サングラスを駆ける時の笑顔は反則級に charming だし、グースを失って打ちひしがれる姿は heart-wrenching としか言いようがない。

 

今作の時点で父と息子というネタが仕込まれていて、アメリカが持つ positive male figure への幻想の強さをあらためて再確認した。同時に、”You look good.” のように、次作に受け継がれていく数々のネタ的な台詞や演出が発見できたのも楽しかった。

 

迫力に欠けると一部で言われた高空での戦闘シーンは、逆にオーガニックに感じられて好感を持った。サイズが実物の何分の一かのモデル機を使って撮影したというのは、精巧なCGがない時代ゆえの特撮。けれど、CGで何でもありになってしまった現代人の目には逆に非常に新鮮に映った。F-14が単純にメチャクチャかっこいい飛行機ということも再確認した。

 

新作鑑賞後にあらためて観ると、全体的な作りは非常にチープというか、1980年代定期なテイストで彩られている。すなわち、ベトナム戦争よりも後で、湾岸戦争よりも前という、ある意味で軍がリアルではなくファンタジーでいられた時代。本作の影響で米海軍への入隊志願者が増えたと言われる。フィクションとしてのエンタメは、時に現実に強く作用するという好個の一例だろう。

 

ネガティブ・サイド

F-14がジェット後流に巻き込まれるシーンは山岳地帯だったが、イジェクトしたマーベリックとグースは海に着水した。機を海に向けるなどのシーンが一瞬でよいので欲しかった。

 

総評

劇場の入りはイマイチだったが、このような試みはもっと行ってほしい。コロナ禍の2020年にジブリ映画がリバイバル上映されたように、続編がヒットしたら、その前作を劇場で再公開するというのは、今後のビジネスモデルとして研究されてしかるべきと思う。ラブシーンがあるので、子供の年齢にはちょっとだけ注意が必要だけれども、 親子で劇場鑑賞してほしいと心から思える作品。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fall for someone

誰かに惚れる、誰かを好きになる、の意。『 イソップの思うツボ 』でも紹介した表現。劇中ではチャーリーがマーベリックに対して使っていた。fall in love with someone は少々ロマンチックすぎる表現なので、こちらを使おう。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1980年代, S Rank, アクション, アメリカ, アンソニー・エドワーズ, ヴァル・キルマー, ケリー・マクギリス, トム・クルーズ, 監督:トニー・スコット, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 トップガン 』 -4Kニューマスター上映-

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