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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

Posted on 2023年1月31日 by cool-jupiter

宇宙戦争(1953) 70点
2023年1月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジーン・バリー アン・ロビンソン
監督:バイロン・ハスキン

『 そばかす 』でトム・クルーズの『 宇宙戦争(2005) 』に言及されていたのを聞いて、再鑑賞しようとTSUTAYAを訪れる。そのDVDの隣に元ネタがあったので、そちらも併せてレンタルしてきた。

 

あらすじ

ロサンゼルス近郊に隕石が落下。天文物理学者のクレイトン・フォレスター(バリー・ジーン)は、調査に乗り出すも、隕石の正体は分からない。やがて、隕石の中から謎の浮遊マシーンが出現し、周囲の人間や建造物を焼き払っていく。隕石は世界各地に落ち、マシーンも続々と現れ、人類は絶体絶命の危機に落ちるが・・・

 

ポジティブ・サイド

古き良き、という表現は個人的にはあまり好まないのだが、本作に関してはまさに古き良き特撮映画の香りがプンプンする。何もかもがCGである現代映画に比べると、大道具や小道具が活き活きと仕事をしていた姿が目に浮かぶ。その後の東宝の『 ゴジラ 』、『 モスラ 』、『 ラドン 』などの大怪獣特撮映画は、本作から多大なインスピレーションを得ているのは間違いない。隕石状でやって来る侵略者というのはキングギドラだ。

 

浮遊マシーンの造形や、そこから伸びてくるチューブの造形もいい。このデザインはなんとなくだが、ディズニーの隠れた秀作『 ブラックホール 』のロボット、マクシミリアンに引き継がれているようにも思う。

 

火星人の侵攻に対するアメリカ人の反応にもリアリティーがある。当時、内戦以外でアメリカ国内が戦場になったことはないが、本作で描かれる逃げ惑う人々、暴徒と化す人々、教会で従容と死を待つ人々の姿には迫真性があった。

 

米軍が徹底抗戦し、浮遊マシーンがケロッとしている様も特撮の粋という感じがした。原爆まで持ち出すのは、まさに冷戦前夜という感じだが、全翼の爆撃機は実にかっこよかった。核攻撃を含む米軍の全火力が無意味だったというシークエンスは『 インデペンデンス・デイ 』に引き継がれたように思う。

 

もはや一巻の終わり・・・というところで、火星人が地球の微生物になすすべなく侵され、死んでいくという描写も、コロナ禍を経験した我々の目には新鮮かつ説得力あるものとして映る。

ネガティブ・サイド

冒頭で金星がスキップされたのは何故?

 

レイチェルが特に何か大きな役割を果たすわけではないのがビミョーなところ。まあ、フォレスター博士自体も役立たずで終わってしまうのだが。

 

前線が破られた際に、後方に新たな防衛網を築きに向かった軍人さんはその後どうなったのだろう?

 

総評

特撮ファンならぜひ鑑賞しよう。非常にオーガニックな映像を楽しめるだろう。SFファンも鑑賞すべきであると思う。人間ドラマを楽しみたい向きにはお勧めできない。ただ、コロナ禍によって、目に見えない微生物やウィルスの存在を否応なく意識させられるようになった現代、本作の価値が再び高まっているのは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Take my word for it.

私の言葉をそのまま受け取ってくれ、転じて「信じてくれ」、「本当なんだ」という意味になる。劇中では「早くワシントンに知らせて増援を呼んでくれ」というような台詞の前で使われていた。何か強調したいこと、強く主張したいことがある時に使いたい表現である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1950年代, B Rank, SF, アメリカ, アン・ロビンソン, ジーン・バリー, 監督:バイロン・ハスキンLeave a Comment on 『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

『 ヒトラーのための虐殺会議 』 -淡々と進む超高速会話劇-

Posted on 2023年1月29日2023年1月29日 by cool-jupiter

ヒトラーのための虐殺会議 70点
2023年1月29日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フィリップ・ホフマイヤー ヨハネス・アルマイヤー
監督:マッティ・ゲショネック


トレイラーを観て、面白そうだと感じたのでチケット購入。

あらすじ

時は1942年、ベルリンのヴァンゼー湖畔の邸宅にナチス親衛隊と各省の事務次官が集められ、ユダヤ人の絶滅を効率的に進めていくための会議が持たれた。議長のラインハルト・ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)は、右腕のアドルフ・アイヒマン(ヨハネス・アルマイヤー)と共に、利害対立を調停していき・・・

ポジティブ・サイド

『 シン・ゴジラ 』も真っ青の超高速会話劇である。どのようにプロジェクトを進行させていくのかを各々が自分の立場から語っていくという意味では『 決算!忠臣蔵 』に近いとも感じた。ただし、怪獣対策や主君の仇討とは違い、ヴァンゼー会議で話し合われたのはジェノサイド計画。わずか十数名が90分でこの計画について話し合い、実務家レベルでの協議は続けていくとしたものの、大筋で合意してしまうのだから、戦時下という非常時とはいえ、当時のドイツがいかに狂っていたのかがよく分かる。

 

同時に、なぜ当時のドイツがヨーロッパをあっという間に蹂躙できたのかも見えてくる。恐ろしいまでに勤勉なのだ。わき道にそれるが、Jovianは大学時代にドイツ人留学生二人と寮で共に暮らした経験がある。そこで「『 今度、同盟組む時はイタリア抜きにしようぜ 』っていうジャーマン・ジョークがあるって聞いたけど、本当?」と尋ねたことがある。答えは「え、それはジャパニーズ・ジョークじゃないのか?」だった。一時期、日本人サッカー選手で海外で活躍するのは皆、ブンデスリーガ所属だったが、ドイツ人も日本人もとにかく勤勉なのだ。イタリア人と一緒に暮らしたことはないが、イタリア旅行に行ったことがある多くの知人友人から聞くところによると、勤勉な民族ではなさそうだ。

 

閑話休題。議長を務めるハイドリヒを会社の事業統括本部長とするなら、その最側近のアイヒマンは営業部長あたりか。この二人が実質的に取り仕切る会議に、各省や各方面軍の幹部が自らの権益を主張し、あるいは自らの負担減を主張する。丁々発止のやりとりで、ある時はハイドリヒが個別に話をし、またある時はアイスマンが冷静にデータとエビデンスを提示する。ビジネスプランを話し合っているのならお手本にしたくなるような映画だが、議題はあくまでもジェノサイド計画。

 

内務省次官のシュトゥッカートが強硬にユダヤ人疎開計画に反対するので、「あれ?」と感じたが、彼の出してきた対案に戦慄させられた。その直後、別室でハイドリヒとシュトゥッカートが二人だけで話すシーンでは、互いの家族について軽く談笑する。よくそんな話題を出して、しかも笑顔になれるなと背筋が寒くなった。もう一人、人道的な観点からの懸念を述べるクリツィンガーにも唖然とさせられる。人道的って、そっちの意味かよ・・・

 

本作はエンタメとしての要素を徹底的に削ぎ落している。BGMも音響も無し。凝ったカメラワークも一切なし。普通なら、書記役としてその場にいた若い女性の視点で会議を眺めるショットをいくつも入れそうなものだが、そんなものは一切なし。普通の人間の普通の視点からだけカメラを回すことで、作為性を一切排除した歴史ドキュメンタリー的な作品に仕上がった。無音のエンドクレジットを観て、虚無感が胸に去来した。

ネガティブ・サイド

おそらく議事録通りなのだろうが、会議出席者の自己紹介が欲しかった。一人だけというのはちょっと分かりにくい。まあ、本作はわざわざ鑑賞する向きは近代ドイツ史にまあまあ詳しい、あるいは関心があるという層のはずだが、ライトな鑑賞者もいるはずである。

 

『 RRR 』のように、エンドロールでヴァンゼー会議出席者たちの写真を映し出すぐらいしてもよかったのではないか。

 

総評

想像でしかないが、本作で描かれたのと同じような会議が2021年11月から2022年1月ぐらいにかけて、クレムリンのどこかで行われていたのではないか。自国の暗部を映画化することにかけては韓国が抜きん出ているが、その闇の濃さにかけては本作が突き抜けている。こんな主義および体制の国家と日本は同盟を結んでいたわけだが、ドイツにはヴァイツゼッカー大統領がその後に現れたが、本邦にはまだそのような為政者は現れていない。そのことをどう感じるべきかは、観る側の良識に委ねられている。

 

Jovian先生のワンポイント独語レッスン

interessant

発音はインテレサント、意味は「面白い」。英語の interesting にあたる。作中で Danke = ダンケと同じくらい聞こえてきたように思う。Jovianもたまにドイツ人と英語で話す時、アンドではなくウントと言うことがある。interessant も相槌か何かで使ってみようと思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ドイツ, フィリップ・ホフマイヤー, ヨハネス・アルマイヤー, 歴史, 監督:マッティ・ゲショネック, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 ヒトラーのための虐殺会議 』 -淡々と進む超高速会話劇-

『 モービウス 』 -二番煎じのオンパレード-

Posted on 2023年1月28日 by cool-jupiter

モービウス 35点
2023年1月28日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:ジャレッド・レト マット・スミス アドリア・アルホナ
監督:ダニエル・エスピノーサ

 

劇場公開時にはスルーした作品。近所のTSUTAYAで準新作になったので、クーポン使用でレンタル。

あらすじ

天才医師マイケル・モービウス(ジャレッド・レト)は、自らが患っている血液難病の治療法を探していた。ある時、コウモリの血清を使った治療法を自分自身に試した結果、マイケルは異能の力を授かってしまう。同時に、抑えようのない血液への渇望に苛まされるようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

メインのキャラを演じた俳優たちは皆、ハマっていた。ジャレッド・レトは言うに及ばず、親友かつ宿敵となるマイロを演じたマット・スミスも『 ラストナイト・イン・ソーホー 』同様に、心に闇を抱えたキャラを好演した。

 

マイケルの同僚マルティーヌを演じた女優は美人だなと感じた。

 

ネガティブ・サイド

何もかもに既視感を覚えた。キャラもそうだし、ストーリーもそう。オリジナリティが決定的に欠如している。

 

ヴィランと見せかけてヒーローでした、は既に『 ヴェノム 』でやったこと。さらに主人公に立ちはだかるヴィランが主人公と同じパワーを持っているという筋立ても『 インクレディブル・ハルク 』以来、使い古されたプロット。幼い患者を救おうと結成を投与したらヴィランになってしまった。倒すためではなく止めるため、または元に戻して別の治療を施すために自らも結成を投与して患者であった少女と対峙する・・・のようなストーリーなら相当にドラマが盛り上がるはずなのだが。

 

マイケルとマイロのバトルも、まるでファンタビを観ているかのよう。コウモリがバトルをするのかどうかは知らないが、エコーロケーションによって死角からの攻撃も交わしてしまう、あるいは暗闇でも闘えるといった、コウモリらしさが感じられなかった。

 

血の臭いにすこぶる敏感になっていたマイケルだが、街中に出たら混乱するのでは?ちょっと下品かもしれないが、雑踏の中には「現在、生理中です」という女性などいくらでもいただろう。そうした臭いに反応してしまってもすぐに自制できる。しかし、マルティーヌの血の臭いには抗いがたい何かがある・・・といった描写をほんの少し入れてくれれば、それだけでマイケルが一気に人間臭くなり、感情移入しやすくなったと思う。

 

総評

近年のMCUの傾向を中耳になぞるかのように、一つの映画が一つの長大なインフォマーシャルになってしまっている。エンディングのカットシーンを観ても、もはや興奮できない。義理で鑑賞しているように感じ始めたMCUだが、あと1~2年で劇場鑑賞から離脱するのが吉かもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

work

上手く行く、の意。劇中では It worked. = 実験が成功したわ、のように使われていた。日本語でも「このプランは本当にワークするのか?」のように、一部の業界人は日常的に使っているのではないか。しばしば work like a charm = 魔法のように上手く行く = 実に上手く行く、見事に効く、という形で使われる。英会話中級者なら耳にしたことはある表現だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アクション, アドリア・アルホナ, アメリカ, ジャレッド・レト, マット・スミス, 監督:ダニエル・エスピノーサ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 モービウス 』 -二番煎じのオンパレード-

『 ウィロー 』 -王道ファンタジー-

Posted on 2023年1月28日 by cool-jupiter

ウィロー 75点
2023年1月27日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ワーウィック・デイビス ヴァル・キルマー
監督:ロン・ハワード

これは確か小4の夏休みに大阪の映画館で家族で観たのを覚えている。『 イウォーク・アドベンチャー 』と『 エンドア 魔空の妖精 』とともに、VHSでその後何度か鑑賞したのも覚えている。

 

あらすじ

悪の女王バヴモルダは魔術によって権力を欲しいままにしていたが、自身を滅ぼすと予言された特別な子の誕生を案じていた。国中の妊婦を探す女王だが、予言の子は助産婦によってその世界へと密かに解き放たれていた。農夫ウィロー(ワーウィック・デイビス)は偶然にも赤ん坊を見つけ、彼女を人間の世界に還そうと仲間と共に旅に出るが・・・

 

ポジティブ・サイド

非常にオーガニックな作りで、今の目には逆に新鮮に映るし、製作者の美学がよりクリアに繁栄されているように感じられる。ミジェットが100人以上で集落を作ることで、この物語世界の広さに説得力が生まれている。

 

剣と魔法の王道的な中世ファンタジーで、味方の剣士と敵側のプリンセスの禁断のロマンスもベタベタながら、ジョージ・ルーカスの思想の反映だろう。『 スター・ウォーズ 』っぽさがあり、個人的にこういった展開は好ましい。

 

あちこちにその後の作品をインスパイアした要素が散見される。印象に残ったのは「君の愛は一千の死に勝る」というマッドマーティがんのセリフ。萩原一至の漫画『 BASTARD!! -暗黒の破壊神- 』で「君の愛は十億の死に勝る」か何かに言い換えられていた。

 

ネガティブ・サイド

ウィローたちの冒険にもっと必然性があれば尚よかった。予言の赤子をダイキニの元に還すというだけではなく、自分たちで予言を成就させるべく冒険の旅に出るというプロットにすれば、もっとドラマが盛り上がったと思われる。

 

総評

本作が現代になってドラマ化されるというのは、映画公開当時に本作に大いにインスパイアされた少年少女が、コンテンツ制作業界の意思決定権者になりつつある、あるいはなった、ということだろう。なのでリアルタイムで本作を楽しんだ今の40代は、ぜひ子どもたちに本作を観せてあげよう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go bonkers

go crazy の意味。すなわち「頭がおかしくなる」と「大騒ぎして楽しむ」ということ。村の長老が旅のリーダーに任じられた時、腕の立つボンカーを呼び寄せる様は、まさに go bonkers という感じだった。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, B Rank, アドベンチャー, アメリカ, ヴァル・キルマー, ファンタジー, ワーウィック・デイビス, 監督:ロン・ハワード, 配給会社:MGM映画会社Leave a Comment on 『 ウィロー 』 -王道ファンタジー-

『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』 -カーアクションは少なめ-

Posted on 2023年1月26日 by cool-jupiter

パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 70点
2023年1月22日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:パク・ソダム チョン・ヒョンジュン
監督:パク・デミン

 

仕事が繁忙期なので簡易レビュー。

 

あらすじ

クルマを運転させれば右に出る者がいないウナ(パク・ソダム)は、裏の世界の運び屋として生きている。ある日、プロ野球賭博のブローカーとその息子を運ぶという依頼が入る。しかし、アクシデントにより依頼人の幼い息子と300億ウォンの貸金庫の鍵だけを運ぶことになる・・・

ポジティブ・サイド

冒頭の数分間は『 ドライヴ 』、『 ベイビー・ドライバー 』、『 トランスポーター 』への韓国映画界なりのオマージュか。街中の路地の爆走や、静かに闇に紛れる様。クルマを駆る天才ドライバーというのは実に絵になる。パク・ソダムの無表情でのクールな演技は本作にマッチしていた。

 

子役のチョン・ヒョンジュンは『 パラサイト 半地下の家族 』ではあまり印象に残らなかったが、本作では守られるべき小さな子どもから、ヒロインを守らんとする男の子に成長する。よくこんな脚本を書いて、子どもに演じさせて、さらにそれを面白い筋立てに仕上げるものだと関心させられた。

 

韓国の警察は無能というのが定番だったが、今作の悪徳警察は特に悪辣。さっさと誰かこいつをぶっ殺せ、と心の底から思わせてくれた。

 

パク・ソダムはこれから役者としてのピークが来るだろう。続編も期待して良さそうだ。

 

ネガティブ・サイド

カーアクションが決定的に少ない。もちろん終盤の肉弾戦の迫力は否定しないが、本作の最大のアピールは華麗なるドライビング・テクニックであるべきだ。

 

国家情報院のおばちゃんに見せ場がなかった。悪徳刑事を吊し上げるのはこの人だと思ったが。

 

インドの青年にも、もう一つぐらい見せ場が欲しかった。

 

総評

『 非常宣言 』と同じく、日本ではとても作れそうにないダークな娯楽作品。ぜひ続編を作ってほしい。運び屋という裏稼業に興味のある人は、Jovianの先輩の書いた小説『 運び屋 』も読んでみよう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

サジャン

社長の意。社 = シャ ⇒ サ、長 = チョウ ⇒ チャン。昔、うちの親父も韓国旅行していた時に「社長、社長、社長にはこれが似合う」とか言われて、高いカバンを露天商に買わされていたな。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, チョン・ヒョンジュン, パク・ソダム, 監督:パク・デミン, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズ, 韓国Leave a Comment on 『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』 -カーアクションは少なめ-

『 非常宣言 』 -デタラメなパワーで突っ切る韓国映画-

Posted on 2023年1月12日 by cool-jupiter

非常宣言 70点
2023年1月8日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ソン・ガンホ イ・ビョンホン チョン・ドヨン イム・シワン
監督:ハン:ジェリム

色々あって年末年始は劇場に行けなかったが、新年一本目に本作をチョイス。

あらすじ

パク・ジェヒョク(イ・ビョンホン)の娘は、トイレで不審な男性を目撃する。その後に搭乗したハワイ行きの航空便で、乗客が吐血して死亡。機内はパニックに陥る。同じ頃、国内ではバイオテロの犯行予告動画が拡散しつつあった。捜査に乗り出したク・イノ刑事(ソン・ガンホ)は、テロの標的となった飛行機に妻が乗っていると知り・・・

ポジティブ・サイド

物語の開始から、最初の死者が出るまでが非常にスピーディーだが、このテンポが最後まで落ちない。やれやれ、話がちょっと一段落したか、と思った瞬間から、新たな展開が矢継ぎ早に始まっていく。普通の映画だったらここで終わり、という瞬間からさらに40分は尺を稼ぐが、そこに長さを感じない。最初から最後まで無茶苦茶な展開ながら、観る側を飽きさせずに惹きつけ続ける力を持っている。

撮影という面でビックリさせられたのは、機長が感染して、飛行機の操縦が滅茶苦茶になるところ。飛行機がきりもみ回転しながら降下していくシーンでは、キャビンの乗客の一部がマイナスのGの作用で天井にはりつけられてしまう。トム・クルーズの『 ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 』のように本物の飛行機を使ったとは思わないが、観ていてハッとさせられた。

ソン・ガンホとイ・ビョンホンという二大巨頭の揃い踏みだが、バイオテロの犯人を演じたイム・シワンが最も凄みのある演技を見せる。『 殺人鬼から逃げる夜 』のウィ・ハジュンでも感じたことだが、整った顔立ちの青年が狂気をはらむ歪んだ笑顔に変わっていく瞬間は、本当に気持ち悪い。これは誉め言葉である。イム・シワンが聞けば「俺の演技力を見たか」と思うに違いない。

もちろん両巨頭の見せ場も十分にある。妻を思う心優しきソン・ガンホが、そんな馬鹿なという方法で状況を打開するし、トラウマを抱えるイ・ビョンホンがそれを乗り越えていく過程にもドラマがある。チョン・ドヨン演じる強気の大臣も素晴らしい。緊急事態宣言下でサービスエリアが営業しない中で、トラック運転手にコンビニ利用を促したどこぞの島国のアホな国土交通大臣とは大違い。このようなリーダーシップを真正面から描ける点は素直に羨ましい。

ネガティブ・サイド

アメリカに追い返される韓国機はまだしも、日本の航空自衛隊があんな対応するかなあ。厚木の米軍が出張ってくるのは現実的にも本作のストーリー的にも考えられるが、百里あたりの自衛隊が、下手したら日韓戦争の引き金をひくような真似をするだろうか。やはり日韓は互いに相手を仮想敵国と見ているのか。

韓国国民が飛行機に対して拒絶反応を起こすのは理解できるが、たかだが数時間程度の間に各種のプラカードや横断幕を準備して、組織だった反対デモが起こるものだろうか。いくらデモ好きの韓国人とはいえ、非現実的に見えた。

総評

劇中の韓国国民が感染者を多数抱えた飛行機を受け入れるかどうかで激論を交わす様は、2020年当時の我々がダイヤモンド・プリンセス号に対して投げかけた言説と同じであることを思い起こさせられた。ちょうど本作鑑賞の前日に中部空港のジェットスターに爆破予告の電話があったとのニュースが。パンデミックと航空機テロという二つの要素が、この上ないタイミングで合わさった韓国スリラーである。

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ピ

血の意。劇中で何度も何度も「ピ!ピ!」とキャラたちが大騒ぎするので、すぐに分かる。チとピで何となく似ている気がする。

次に劇場鑑賞したい映画

『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』
『 ファミリア 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ビョンホン, イム・シワン, スリラー, ソン・ガンホ, チョン・ドヨン, 監督:ハン・ジェリム, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 非常宣言 』 -デタラメなパワーで突っ切る韓国映画-

『 インターステラー 』 -尻すぼみであること以外はパーフェクト-

Posted on 2023年1月9日 by cool-jupiter

インターステラー 80点
2023年1月7日 WOWOW録画にて鑑賞
出演:マシュー・マコノヒー アン・ハサウェイ ジェシカ・チャステイン
監督:クリストファー・ノーラン

諸事情あってなかなか映画館に行けないので、過去のWOWOW録画DVDを手に取る。中に入っているのは『 インターステラー 』と『 コンタクト 』で、前者を選ぶ。

あらすじ

ダストボウルの大量発生により土壌で作物が育たず、酸素も近い将来に生存不可能なレベルにまで低下することが予想される世界。元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は娘マーフの部屋で起きる奇妙なサインから座標を読み取る。そこではNASAが、人類救済ミッションを密かに進めており、クーパーは土星付近のワームホールを目指すミッションに参加することになる・・・

ポジティブ・サイド

地球滅亡ではなく人類滅亡という設定がいい。しばしば発生する砂嵐は dust bowl =ダストボウルと呼ばれる、1930年代にアメリカとカナダの農業に大打撃を与えたものである。もちろん Jovian はダストボウルを直接に経験した世代ではないが、これはアメリカ近代史ではしょっちゅう触れられるのでよく知っていた。

ワームホールの説明や描写もSF入門レベルにまで dumb down してくれているのも有難い。ワームホールの説明として、紙を折り曲げて二点をくっつけるというのは定番中の定番だが、二次元平面の紙の上の穴(hole)は三次元空間では球(sphere)になるという説明は秀逸だと感じた。

ワームホールの先の別の銀河で訪れる移住先の星々の描写も光っている。ブラックホール近傍の惑星あるいはステーションというのは『 ブラックホール 』でもお馴染みで、それ自体にオリジナリティはない。しかし、ブラックホールの重力圏内と圏外での時間のずれが生むドラマは、ベタながら見応えがあった。

ノーラン監督は初期から「時間」をテーマにした作品作りで知られていて、本作でもそれは一貫している。『 TENET テネット 』で見せた見事な物語の円環的構造は、実は本作でも示されていて、劇場で始めた鑑賞した時、WOWOWで二度目に鑑賞した時、そして今回と、毎回その構造の巧みさに舌を巻く。

本作の最大の功績はTARSかもしれない。R2-D2やBB-8とはまた違った魅力のあるロボットである。コミュニケーションの設定に正直度やユーモアがあったが、これは案外現実世界で似たようなロボットが作られた際、取り入れられる設定かもしれない。また、安易に人型にするのではなく、TARSのような造形の方がモビリティも確保できるだろうなと感じた。

SFにはファンタジーの領域にどっぷり浸かったものと、現実的な科学技術に立脚しつつ、ほんの少しのフィクションを混ぜたものがある。どちらも面白いのだが、本作は数あるSF作品の中でもファンタジーの領域と現実の領域が見事な配分でミックスされていると感じる。ここでいうファンタジーとは「愛」の力。いかなる科学も超越する親子の奇妙な愛の絆は、何度見ても感動させられてしまう。俺もだいぶ単純になってもうたな・・・

ネガティブ・サイド

親子の愛だけに留めておけばよかったのに、なぜアン・ハサウェイ演じるブランド博士をクーパーの love interest にする必要があったのか。ここが解せない。友愛に近い感じで良かったのでは?

そのブランド博士やその他の面々も、人類を救うと言いつつ、移住候補先の星の大地に星条旗の旗を立てるのか?これが英国籍と米国籍を持つクリストファー・ノーランの植民に対する意識の表れなのだろうか?うーむ・・・

天文物理学や生物学の門外漢だが、ガルガンチュアのようなブラックホールが天文単位の距離にあるような複数の惑星は、そもそも移住に向かないのでは?ブランド博士の言う通り、小惑星の衝突などが起きない(ブラックホールがそれらをすべて吸い込むか弾き飛ばす)環境では、生物の創発が喚起されない。地球ですら木星のおかげで天体衝突の確率は1000分の1になっているとされる。微生物や植物すらない環境はテラフォーム不可能な気がするのだが・・・

総評

最後の最後のクーパーの決断が個人的には受け入れがたいが、そこに至るまでの3時間近い物語には圧倒されるばかり。3度目の鑑賞でもそう感じる。ティモシー・シャラメやケイシー・アフレック、マイケル・ケインにジョン・リスゴーなど、若手から超ベテランまでが脇を固める。2010年代のSF映画の秀作の一つであることは間違いない。

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

stella

ラテン語で a star の意味。interstellar は文字通り「星々の間の」、「恒星間の」という意味である。星座を constellation と言うが、色んな星が一緒になってできるのが星座ということである。似たような語に『 アド・アストラ 』の astra がある。これは astrum の複数形の対格で、こちらも意味は星だが、やや誌的な感じがする表現。これの元はギリシャ語のasterで、astronaut や astronomy はここから来ている。アスタリスクを見たら「あ、確かに星だ」と感じてもらえれば幸いである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』
『 ファミリア 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アメリカ, アン・ハサウェイ, ジェシカ・チャステイン, マシュー・マコノヒー, 監督:クリストファー・ノーラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 インターステラー 』 -尻すぼみであること以外はパーフェクト-

『 ブレイン・ゲーム 』 -色々な要素を詰め込みすぎ-

Posted on 2023年1月4日 by cool-jupiter

ブレイン・ゲーム 50点
2023年1月2日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジェフリー・ディーン・モーガン アンソニー・ホプキンス アビー・コーニッシュ コリン・ファレル
監督:アルフォンソ・ポヤート

2018年にシネ・リーブル梅田で公開していたのを覚えている。何故かこのタイミングで近所のTSUTAYAで準新作扱いだったので、クーポンを使って割引料金でレンタルしてきた。

 

あらすじ

謎の連続殺人事件を捜査するFBIのジョー(ジェフリー・ディーン・モーガン)とキャサリン(アビー・コーニッシュ)は、予知能力を持つ医師クランシー(アンソニー・ホプキンス)に助力を求める。しかし、捜査を進めるにつれて、クランシーは犯人が自分を上回る予知能力の持ち主であると気付き、捜査から降りると言い出す・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤のいくつかの謎めいた殺人事件の現場はなかなかの迫力。異様な死に様を見せる被害者の数々に、『 セブン 』や、アンソニー・ホプキンスつながりで言えば『 羊たちの沈黙 』のような猟奇殺人事件映画の傑作の予感が漂う。カウルズ捜査官も、どことなくスターリング捜査官の雰囲気をたたえている。序盤の捜査開始シーンから真犯人のコリン・ファレル登場シーンまでは結構面白い。

 

コリン・ファレルの狂信的なまでのサイコパス殺人鬼の演技も堂に入っている。アンソニー・ホプキンスを鼻で笑うような演技はなかなかできない。『 AVA / エヴァ 』でも感じたが、この役者は老人とバトルを繰り広げるのが似合うのかもしれない。その超絶的な予知能力を物語る、とある録画映像の演出も地味ながら素晴らしい。

 

原題の Solace は慰めの意。本作のテーマに mercy killing =安楽死がある。ペインコントロールの上手く行かない末期癌患者は時に「殺してくれ」と叫ぶこともある。その瞬間の苦しみから解放するには死は最も確実かつ手っ取り早い手段だろう。『 いのちの停車場 』や『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』が扱ったトピックでもあるが、本作はさらに一歩踏み込んで、苦痛を感じ始める前に殺すという、屈折した思想を持った犯人像を作り上げた。この安楽死を単なる殺人と切って捨てるのか、それとも救いや慰めの一手段と見るのか。この部分について、ある意味で非常に剣呑な誘いをもって本作は閉じられる。この幕の閉じ方はなんとなく『 CURE キュア 』を思わせてくれた。

 

ネガティブ・サイド

ホプキンスやファレルの持つ超能力の正体がよく分からない。予知能力も物や人に手を触れて発動する場合と、不意に発動する場合がある。さらに、劇中でもたびたびフラッシュバックのように挿入されるビジョンには予知と過去視の両方があって、かなりややこしい。しかも、その能力の発動タイミングもかなり(製作者にとって)恣意的に思える。能力発動の条件があいまいなままストーリーが進むので、どうしてもご都合主義に見えてしまう。カーチェイスの最中および直後などはその最たる例だ。

 

真犯人=ファレルの存在は、あらすじどころかポスタービジュアルやDVDのカバーで明かされてしまっているが、この男の登場がとにかく遅い。1時間40分のストーリーのうち1時間ぐらい過ぎたあたりで登場してくるというのは、脚本のペース配分ミス、あるいは編集ミスだろう。あまりにバランスが悪すぎる。

 

キャスティングも、別にアンソニー・ホプキンスを起用する必要はなかったのでは?まあ、彼自身が製作総指揮に名を連ねているので、それはできない相談か。しかし、それでもクランシー博士とその娘がどうみてもお祖父ちゃんと孫にしか見えないし、妻とも相当な年齢の開きがあるように見えた。60歳ちょっとの別の役者を起用できなかったのか。役者としてのホプキンスは否定しないが『 羊たちの沈黙 』の二番煎じを狙うのは無理。ストーリーそのものは悪くないのだから、自分よりも若い役者を起用し、超知性かつ超能力の犯人を、友情と経験で追い詰めるような素直な物語にしてほしかった。

 

総評

序盤から中盤にかけての面白さは文句なし。ただし、いったんコリン・ファレルが現れてからは「なんじゃ、そりゃ・・・」という展開のオンパレード。超能力対決というのは『 スキャナーズ 』の昔から陸続と生み出されてきたが、本作はその中でも凡庸な部類に入る。ヒューマンドラマのパートにもっと力を入れるか、あるいは犯人と刑事&博士の対決にもっと尺を取れば、もう少し面白さも増したはず。アンソニー・ホプキンスのファンなら鑑賞もありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

precognition

 

予知の意。『 マイノリティ・リポート 』好きならプリコグという言葉を覚えているはず。あれは precognition の派生語、precognitives の省略形だ。cognition というのは取っ付きにくい語だが、この元のラテン語の cognosco は、同じ意味のギリシャ語 gnosis に由来する。gnosis は知識という意味で、ニュースアプリの「グノシー」の社名はまず間違いなくここから来ている。また、診断=diagnosis というのも、gnosis を含んでいる。身体診察や問診を通じて(dia = through)病気を「知る」ということである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アビー・コーニッシュ, アメリカ, アンソニー・ホプキンス, コリン・ファレル, サスペンス, ジェフリー・ディーン・モーガン, 監督:アルフォンソ・ポヤート, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 ブレイン・ゲーム 』 -色々な要素を詰め込みすぎ-

『 ナイト・ウォッチャー 』 -ドンデン返しが少し弱い-

Posted on 2023年1月3日 by cool-jupiter

ナイト・ウォッチャー 60点
2023年1月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:タイ・シェリダン アナ・デ・アルマス ジョン・レグイザモ ヘレン・ハント
監督:マイケル・クリストファー

新年一発目は近所のTSUTAYAの準新作コーナーから、『 ザ・メニュー 』のジョン・レグイザモ出演作の本作を pick out 。

 

あらすじ

アスペルガー症候群持ちのバート(タイ・シェリダン)は、ホテル受付の夜間シフトで働いている。彼は秘密裡に客室を盗撮し、人間同士のやりとりから普通のコミュニケーションを学んでいた。ある夜、ホテルで殺人事件が発生。バートのカメラに犯人とその犯行が映っていたが、彼はそれを警察に知らせることができず、逆に第一発見者として警察にマークされてしまう。系列の別ホテルに異動となったバートは、懲りずに盗撮を行うが、そこに謎めいた美女のアンドレア(アナ・デ・アルマス)が客として訪れ・・・

 

ポジティブ・サイド

タイ・シェリダンがアスペルガー役を好演。合わない視線、過剰な答え、あるいは質問に対する返答拒否ともいえる応答、相手の気持ちや会話の流れをぶった切る発話など、まさに言葉の正しい意味でのコミュ障である。客室を盗撮・盗聴して、そこでのやりとりから普通の人のコミュニケーションを研究するというのだから、まさに他人の気持ちが理解できていない。この主人公に感情移入するのはなかなか難しいが、母親やホテルの経営者が良き理解者になってくれているので、観ている側は一定の距離でバートを見守ることができる。

 

序盤の終わり、アナ・デ・アルマス演じるアンドレアの登場からシチュエーションが一気に動く。コミュ障であるバートがいかにしてこの美女と距離を縮めていくのか。このプロセスが、アスペルガーだけではなく、広くコミュ障全般、いや、ある程度青臭い男性全般に当てはまるような描き方をされているので、観ている側(特に男性)はここで一気にバートを応援したくなる。この流れの絶妙さは、是非とも鑑賞の上で確認を!

 

殺人事件の第一発見者であるバートを第一容疑者として追う刑事が、厳しさと優しさを併せ持っていて、彼の存在もバートの難しいパーソナリティをオーディエンスが理解することを助けている。観ている我々はバートが犯人ではないことを知っていて、しかしバートはそのことを刑事には伝えられず、なおかつ刑事はバートを追わざるを得ないという、観ている側がキャラに感じるジレンマと、キャラがキャラに対して感じるジレンマが複雑に入り組んだプロットは本当にもどかしい。それが観る側をストーリーに引き付ける。最後に「え?」と思わせる展開も待っており、低予算映画としては満足のいくクオリティのサスペンスに仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

バートがどういうきっかけで盗撮・盗聴からコミュニケーションを勉強しようと思い立ったのかが分からない。『 ベイビー・ドライバー 』のベイビーがテレビをザッピングしながら色々なセリフを吸収していくのと同じようなシーンが少し挿入されていれば、バートなりのアスペルガーのコーピングがどういうものなのか理解しやすくなったのだが。

 

アンドレアが語るアスペルガーの弟の話は必要だっただろうか。アスペルガーが転帰して死に至ることは普通はない。こうした一種の障がいを描く映画は、必ずしもその障がいをユニークかつポジティブなものとして描く必要はないが、だからと言って誤った情報、あるいは誤解を与えかねないような描写は慎むべきではないだろうか。

 

最後のドンデン返しがちょっと弱いと感じる。というよりも、やはりアンドレアの弟の話を抜きにクライマックスを構成すべきだったと思う。相手がアスペルガーであろうと普通人であろうと、態度を変えないのがアンドレアの長所であるべきではなかったか。

 

総評

90分と非常にコンパクトな作品で、サスペンス風味でありながら、最後にミステリの様相も帯びる作品。ドンデン返しに少々不可解さも残るが、バートという青年の一種のビルドゥングスロマンだと思えば、納得いくクオリティだと言える。アナ・デ・アルマスのヌードも拝めるので、スケベ映画ファンはそれを目当てに視聴するのもありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

die from ~

~が原因で死ぬ、の意。

die of 直接的な死因

die from 間接的な死因

と覚えよう。普通は die of cancer =ガンで死亡する、のように of を使うが、劇中では die from love =愛で死ぬ、のように使われていた。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アナ・デ・アルマス, アメリカ, サスペンス, ジョン・レグイザモ, タイ・シェリダン, ヘレン・ハント, 監督:マイケル・クリストファー, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 ナイト・ウォッチャー 』 -ドンデン返しが少し弱い-

2022年総括と2023年展望

Posted on 2022年12月31日2023年12月31日 by cool-jupiter

2022年総括

世界もさすがにコロナに慣れてきた。日本の多くの部分では旧態依然とした政治・社会体制が続いているが、職業や教育の分野がデジタル化が進みつつあるのは悪い傾向ではないと思う。そんな中で映画館もそれなりに健闘できた一年ではないだろうか。

一方で、テアトル梅田が閉館するなど、ミニシアターには厳しい時代が続いている。メガヒットと呼べるような作品も劇場公開されたが、映画館および映画文化を支えるために必要なのはブロックバスターだけではなく、静かに、しかし確実に人の心を動かすような良作、そしてそれを届けてくれる良心的な劇場であると思う。超大作をマサラ上映することでコアな映画ファンをがっちり掴む塚口サンサン劇場のように、作品選びだけではなく、作品を提供するスタイル、劇場体験そのものを売りにするのが今後の劇場のサバイバルにつながっていくのかもしれない。

それでは個人的な各賞の発表をば。

 

2022年最優秀海外映画

『トップガン マーヴェリック 』

延期に次ぐ延期を経て、満を持して劇場公開された本作が最優秀海外映画の栄に浴する。CDやDVDの売り上げは落ちても、コンサートや芝居のチケットは売れている。「モノ消費からコト消費へ」と言われて久しいが、本作は大スクリーンと大音響での映画体験、それがもたらす興奮や高揚感を思い出させてくれた。期せずしてロシアがウクライナに侵攻。ウクライナは逃げるべきか、戦うべきかという議論が日本の識者(とされる人々)の間でもたびたび行われた。それが良いか悪いかは議論が分かれるところだが、平和という状態は軍が膨大なエネルギーを注ぎ込むことで達成され、維持されているということも示した作品だった。

 

次点

『 あなたがここにいてほしい 』

中国映画というと実験的な低予算おバカ映画と、『 シスター 夏のわかれ道 』のような超上質ドラマの二極化が進んでいるという印象を受けた。その中でも本作の完成度は非常に高く、個々人のドラマが社会の発展と相似形を成し、個々人の関係の破綻が社会の矛盾の現れとなっていた。社会性とエンタメを高い次元で融合させているという点、で2021年の『 少年の君 』に近いレベルまで来ていると感じた。

 

次々点

『 RRR 』

ハリウッドのアクション超大作のカーチェイスや銃撃戦、爆発というのは、アクションのためのアクションになっていることが非常に多い。ポップコーンが進むでしょ?というやつである。一方でインド映画、というよりもS・S・ラージャマウリ監督の映画には肉弾アクションは言うに及ばず、銃弾や火薬にまでキャラクターの心情が乗り移ったかのように感じられる。この熱量は劇場鑑賞でしか得られないと思う。まさに鑑賞する映画ではなく体験する映画だ。

 

2022年最優秀国内映画

『 前科者 』

日本も完全に格差社会になってしまった。ここで言う格差とはしばしば経済的なそれである。一度非正規雇用になってしまうと、なかなか正規雇用になれない。同じく、一度犯罪者になってしまうと前科者というレッテルをはがすことができない。「罪を憎んで人を憎まず」という言葉があるが、その罪は人格によるものなのか、環境によるものなのか。本作の発する問いの意味は、今後大きくなることはあっても小さくなることはない。お好み焼きの千房の会長・中井政嗣氏が言う「反省は一人でもできるが、更生は一人ではできない」という言葉の意味を我々は噛みしめる必要があるのではないだろうか。

 

次点

『 マイスモールランド 』

diversity をダイバーシティ、inclusion をインクルージョンとしか訳せないところに日本社会の排他性が垣間見える。クルド人という寄る辺なき民の存在を、ウクライナ難民と重ね合わせずにはいられない。受け入れない者は、受け入れられない覚悟をしなければならない。しかし最初に動くべきは国ではなく、一個人なのだろう。少数の交流が多数になる必要はない。しかし、少数者との交流を妨げる理由もないはずである。

 

次々点

『 死刑にいたる病 』

興行収入10億円と、並みのヒットになってしまった。もしも日本のオーディエンスの嗜好が韓国オーディエンスのそれに近ければ、興収30億も狙えたのではないか。それぐらいにダークな作品。こうした毒のある作品がヒットする土壌を育まない限り、邦画の世界は青春キラキラ漫画の映画化に血道を上げ続けることになってしまう。

 

2022年最優秀海外俳優

チャン・ジンイー

『 あなたがここにいてほしい 』で見せたみずみずしい演技の印象はいまだに鮮烈。幼さ、無邪気さ、切なさ、弱さ、強さ、愛おしさなど、少女から女性に至るまでの様々な段階の属性を一作の中で全て出しきった。

 

次点

N・T・ラーマ・ラオ・Jr. 
ラーム・チャラン

『 RRR 』の主演二人を選出。友情と使命のはざまで翻弄される二人の男の熱き血潮のたぎるアクションとドラマは、この二人の俳優以外ではなし得なかった。

 

次々点

ロバート・パティンソン

『 THE BATMAN ザ・バットマン 』で新たなブルース・ウェインとバットマン像を打ち出したパティンソンを推す。同作のヴィランでジム・キャリーの超絶変態リドラー像を打破したポール・ダノとの接戦を制した。

 

2022年最優秀国内俳優

阿部サダヲ

『 死刑にいたる病 』の怪演で文句なし。近年の邦画の猟奇犯罪者役としては『 ミュージアム 』の妻夫木聡と双璧であると言っていい。目の奥から容易に心の闇をのぞかせるという演技は誰にでもできるというものではない。

 

次点

岸井ゆきの

ボクシング映画には基本的にハズレがないが、その中でも特に異色だった『 ケイコ 目を澄ませて 』の主演を張った岸井ゆきのを選出しないわけにはいかない。安藤サクラの後継者として、日本トップの女優を目指すべし。

 

次々点

森田剛

滅多に映画に出てこない森田剛だが、『 前科者 』の演技には度肝を抜かれた。同じV6の岡田准一とはえらい差がついたように見えるが、ヒューマンドラマをじっくりと演じさせれば森田剛の方が上だろう。

 

2022年最優秀海外監督 

コゴナダ

『 アフター・ヤン 』で見せた、断片的な視覚情報からオーディエンスの想像力を無限に喚起していくという手法には恐れ入った。今後、真似をする監督がプロアマ問わず出てくると予想されるが、コゴナダ監督の領域に達する者は数年は出てこないのは確実である。

 

次点

バンジョン・ピサンタナクーン

タイ映画には馴染みがあまりなかったが、『 女神の継承 』でホラーという分野では邦画を抜き去ったと確信した。少なくとも現時点の日本とタイのこのジャンルの作り手のトップだけを比べるならタイの圧勝だろう。一歩間違えるとギャグになってしまうシーンの数々を恐怖で塗りつぶしたピサンタナクーン監督の剛腕には恐れ入るしかない。

 

次々点

リュ・スンワン

『 モガディシュ 脱出までの14日間 』で韓国の近代史と政治、そしてアクションと人間ドラマの全てを描き切った。その卓越したバランス感覚は賞賛に値する。

 

2022年最優秀国内監督

湯浅政明

『 犬王 』

邦画のミュージカルというのは往々にして大惨事になるものだが、本作は違った。ロックオペラと言っていいほどの硬質な楽曲の数々と二人の男の時を超えた友情が見事にミックスされたミュージカルで、この水準の作品は年に一本生まれれば良い方だろう。

 

次点

安川有果

『 よだかの片想い 』で見せた、音響や音楽を極力使わず、役者のセリフにも頼らず、ひたすら演技で物語っていく手腕を高く評価したい。城定秀夫のライバルになってほしい。

 

次々点

片山慎三

『 さがす 』のダークな展開はまるで韓国スリラーのようだった。社会や人間心理のダークサイドを容赦なく追究しようとする作り手がもっと日本にたくさん現れてほしい。

 

2022年海外クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』

伝説的なシリーズの最終作ながら、原点回帰に大失敗。というか、広げまくった風呂敷を畳むつもりがゼロだったという、詐欺にも近い作り方&売り方。popcorn flick として見ても標準以下の駄作。掛けた予算と関わったスタッフを考えれば、クソ映画オブ・ザ・イヤーの栄に浴すのは必然。

 

次点

『 ソー ラブ&サンダー 』

サノスを失ったMCUの迷走を表す一作。キャラの掛け合いだけは見ていられるが、ストーリーはもうどうでもいいかな。

 

次々点

『 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 』

ハリポタと違って、このシリーズはワクワクできない。キャラが最初から大人で成長の余地があまりなく、しかもストーリーがしばしば政治的だからだ。シリーズ打ち切りの話も出ているようだが、さもありなん。

 

2022年国内クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 大怪獣のあとしまつ 』

よくこんなゴミを作って、なおかつ公開してくれたものだ。世が世なら監督とプロデューサーは市中引き回しの上、打ち首獄門に処されている。

 

次点

『 牛首村 』

牛の首には特に意味はないと劇中で明かされた時点で席を立つべきだった。清水崇はもうホラーを作ってはいけない。

 

次々点

『 貞子DX 』

『 N号棟 』との大接戦を制して本作をクソ映画オブ・ザ・イヤーの次々点に選出。貞子という不世出のキャラクターにとどめを刺した罪はあまりにも重い。

 

2023年展望

2023年に楽しみにしている邦画は『 ヴィレッジ 』と『 跳んで埼玉Ⅱ(仮) 』、期待の洋画は『 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』と『 Magic Mike’s Last Dance 』。逆に不安視している邦画はゴジラの新作、洋画だと『 Creed Ⅲ 』も少し怪しそう。

2023年は韓国映画やインド映画以上に、中国映画の上澄みも更に世界に発信される一年になる気がする。同時に、邦画の製作システムになんらかのブレイクスルーが求められる一年になるのも間違いない。特に大学の90分授業を集中して受けていられないという若年層をどうやって映画館に連れてくるのか。やはり物語としての面白さ以上に劇場体験そのものが付加価値になるような仕組みが求められるのだろう。

コロナ発生から4年目に入ろうとしており、映画の製作や公開に関しても旧に復しつつあるはず。しかし、業界、特に邦画の世界は元に戻るのではなく、前進をしてほしい。オリジナル脚本で作られた作品が優秀作品のトップを占めるという年をそろそろ体験したい。

 

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