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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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投稿者: cool-jupiter

『 エイリアン 』 -SFとホラーの完璧な融合-

Posted on 2022年4月10日 by cool-jupiter

エイリアン 90点
2022年4月4日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シガニー・ウィーバー トム・スケリット 
監督:リドリー・スコット

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220410160215j:plain



小学生の頃に親父とVHSで観た。その後も何度か観た記憶があるが、とにかくチェスト・バスターのシーンが強烈すぎて、まともに観られなかったことだけはよく覚えている。同時期に確かジェフ・ゴールドブラム主演の『 ザ・フライ 』もテレビか何かで観て、そちらも小学生にはトラウマだった。今回、あらためて本作を鑑賞して、大傑作である。『 プロメテウス 』、『 エイリアン: コヴェナント 』の流れでこの古典的傑作をレンタル。大学の新年度開講前という超絶繁忙期だが、repeat viewingしてしまった。

 

あらすじ

貨物船ノストロモ号は謎の信号を受信、クルーは惑星LV-426に向かう。異星文明の宇宙船内部でクルーの一人が謎の生物に襲われ昏睡状態に。回復したかに見えたクルーの胸部からエイリアンが誕生。航海士リプリー(シガニー・ウィーバー)たちはエイリアンの駆除に乗り出すが・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の宇宙船のシーンは『 スター・ウォーズ 』そっくりだが、これは両者が『 2001年宇宙の旅 』に強烈にインスパイアされているからだ。宇宙とは未知の空間で、未知であることは恐怖あるいは畏怖の対象になる。エイリアンという存在が恐怖の成分を完璧なまでに体現しており、宇宙船という典型的なSFのガジェットが、嵐の山荘や絶海の孤島といったクローズド・サークルになっており、そのことがミステリ要素とホラー要素をこれでもかというぐらいに際立たせている。

 

その宇宙船の造形は内部も外部も完璧である。CGでは出せない質感がありありと感じられ、それが物語の迫真性を大いに高めている。またLV-426に不時着している異星文明による宇宙船のあまりにも不吉すぎる外観と内部も、ホラー映画としての本作の価値を高めている。特にスペースジョッキーの謎のミイラは、死体発見=ミステリという定石通り。そこからフーダニットを否応なく考えさせられるが、本作は謎を謎のままに徹底したホラー路線へ舵を切ることで宇宙の神秘と恐怖を一挙に増幅させた。

 

1970年代といえば『 スター・ウォーズ 』と同世代。つまりCGなどなかった時代。だが、フェイス・ハガーやチェスト・バスター、ビッグチャップの造形も息を呑むほどのおぞましさ=素晴らしさ。H・R・ギーガーが手がけたこれらのデザインが構成に及ぼした影響は枚挙にいとまがない。Jovianの世代であればゲームの『 メトロイド 』が一例だし、もっとメジャーなところで言えば漫画『 ドラゴンボールZ 』のフリーザの第3形態もゼノモーフをモチーフにしていることは疑いようがない(鳥山明の作品は様々な古典映画の intertextuality の見本市である)。このエイリアンの造形の巧みさが「怖い、見たくない」と「怖い、けどもっと見たい」という二律背反の欲求を呼び起こす。

 

このエイリアンが、一人また一人とクルーを殺戮していくシーンは、ホラー映画の文法に非常に忠実。宇宙そして宇宙船という環境で怪物が人間を殺していくというのは、言葉にすると陳腐もしくはギャグに感じられるが、それらが完璧なマリアージュを果たすとこれほどの傑作になるのだと証明したリドリー・スコットの功績は果てしない。

 

アンドロイドと船を統括するマザーという人工知能の存在も、現代の視点からは逆に新鮮に映る。人工知能が人間をリードし、人間がその助言や指令を受け入れるという世界観は確実に浸透しつつある。チェスや将棋の世界ではAI無しには研究はもはや成り立たない。医学や天文学の分野でもデータ分析や画像解析はAIの独擅場である。電車や自動車でも自動運転に実現の目途が立ちつつあり、船や飛行機、さらには宇宙船も時間の問題だろう。

 

アンドロイドのアッシュの一種の反乱は、政府ではなく超巨大企業が世界を牛耳るようになりつつある現代の延長線上の近未来への警告と受け取れなくもない。また個人的にいたく感心したのが、リプリーがノストロモ号のマザーコンピュータに”You, bitch!”と叫ぶシーン。母 vs 母 という構図は『 エイリアン2 』のものだと思っていたが、実は本作の時点でそうした対決の萌芽が見られていた。これを見事に引き継いだJ・キャメロンには流石である。

 

これを映画館で観られた人が羨ましい。Jovianが生まれた年に公開された作品だが、どこかでリバイバル上映してくれないだろうか。

 

ネガティブ・サイド

会社の指令でLV-426に降り立つわけだが、そのことをウェイランド社に報告する様子がない。また、ジョン・ハートが最初に死んだ時にも会社に報告する必要があるのではないだろうか。

 

総評

『 エイリアン 』シリーズをひとつも観たことがなくても、エイリアンと聞けばグロテスクな宇宙生物をイメージする人は多いだろう。それが本作の持つ影響力の大きさである。事実かどうかは定かではないが、外国人登録の訳語として Alien Registration が使われていたが、本作公開後に一部の自治体では Foreign Registration に変えた、という話を聞いたことがある。 とにかく様々なジャンルのメディアに計り知れない影響を及ぼしたのである。コロナ禍の原因、それに対する一つの実験的対処として本作を鑑賞することも可能である。時代を超えた名作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

quarantine

「隔離」「検疫」の意。2020年以降に最も知られるようになった語彙の一つだろう。元々はラテン語の quadraginta = 40 から来ている。Valentine(ヴァレンタイン)とつづりが似ているが、発音はクウォランティーンである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1970年代, S Rank, SF, アメリカ, シガニー・ウィーバー, トム・スケリット, ホラー, 監督:リドリー・スコット, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 エイリアン 』 -SFとホラーの完璧な融合-

『 ナイトメア・アリー 』 -A Twist of Fate-

Posted on 2022年4月7日2022年4月7日 by cool-jupiter

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ナイトメア・アリー 60点
2022年4月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ブラッドリー・クーパー ケイト・ブランシェット トニ・コレット ルーニー・マーラ
監督:ギレルモ・デル・トロ

 

簡易レビュー。

 

あらすじ

スタン(ブラッドリー・クーパー)は、偶然出会ったカーニバルで仕事を得る。スタンはそこで様々なショーを学び、また自身も読心術を身に着ける。そして、いつしかモリー(ルーニー・マーラ)と共に恋仲になるが・・・

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ポジティブ・サイド

ブラッドリー・クーパーの好演が光る。貴族的な顔立ちをしているが、この役者は堕ちていく役を演じさせると本領を発揮する。

 

出演陣は非常に豪華。ルーニー・マーラは楚々とした美女役が似合うし。ケイト・ブランシェットも妖しげな美魔女として存在感を発揮した。

 

見世物小屋の一団というのも時代を感じさせるが、こうした江戸川乱歩的な世界観のビジュアルは個人的には嫌いではない。むしろ好物である。なのでカーニバルの中でスタンが徐々に居場所を確立していく序盤は楽しませてもらった。

 

詐術で都市の権力者や金持ちに取り入っていく様もなかなか見応えがあった。カネの力で死者と交信あるいは再会しようなど、あさましいことこの上ない。しかし、そうした富裕層から搾り取れるだけ搾り取ろうとするスタンには共感できるし、やりすぎたスタンが破滅していく様も理解できる。

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ネガティブ・サイド

あまりにも予想通り過ぎる展開。冒頭で正体不明の死体を家ごと焼失させるシーンから、ハッピーエンドには決してならないことが分かる(原作小説の作者はカトリーヌ・アルレーではないので)。では、どんなバッドエンドを迎えるのかと想像するわけだが、これもすぐにピンとくる。ある意味でトレイラーですべてネタバレしている作品だろう。

 

スタンが金に執着する背景が不透明だ。もちろん人間だれしもカネへの欲求はあってしかるべきだが、そのあたりの描写が不足している。もう少し父親との関係(の悪さ)を匂わす描写があれば、ウィレム・デフォーやロン・パールマンらのキャラクターとの絡みに深みが出ただろう。

 

トニ・コレットにもう少し見せ場が欲しかったと思う。

 

総評

『 シェイプ・オブ・ウォーター 』のモンスターと同じく、恐ろしく思える存在も実はそうではない、というところがギレルモ・デル・トロらしいと言えばらしい。CG全盛の今という時代でも、大道具や小道具、衣装その他も、デル・トロらしい力の入れようである。サスペンスとしては、まあまあ面白い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

mentalist

読心術の使い手、の意。DaiGoのようなアホではなく、サイモン・ベーカー主演のテレビドラマ『 メンタリスト 』を観る方が、この言葉の意味がより正確に把握できるだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, クライムドラマ, ケイト・ブランシェット, トニ・コレット, ノワール, ブラッドリー・クーパー, ルーニー・マーラ, 監督:ギレルモ・デル・トロ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ナイトメア・アリー 』 -A Twist of Fate-

『 エイリアン: コヴェナント 』 -一作目の不完全リメイク-

Posted on 2022年4月5日 by cool-jupiter

エイリアン: コヴェナント 50点
2022年4月1日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:マイケル・ファスベンダー キャサリン・ウォーターストーン
監督:リドリー・スコット

 

先月の残業時間が危険水域に入った。今月もやばそうなので簡易レビューを。

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あらすじ

植民船コヴェナントは航行中に事故に遭い、クルーを冬眠から目覚めさせた。夫を失ったダニエルズ(キャサリン・ウォーターストーン)らは失意に沈む。しかし、船にはとある信号が届いていた。それは近傍の居住に適した惑星から発せられていた。クルーは調査のためにその惑星に赴くが・・・

 

ポジティブ・サイド

グロいシーンが前作『 プロメテウス 』よりも増。特に最初に背中を突き破られるシーンはなかなかに disturbing で良かった。

 

ネオモーフの白さも味わい深い。エイリアン=ゼノモーフ=黒というイメージが非常に強いが、白い個体がデイビッドと奇妙な信頼関係を築きかけようとするシーンは示唆的だった。繁殖できないアンドロイドと寄生しなければ繁殖できないエイリアンには不思議なコントラストがある。

 

話が『 ターミネーター 』的な世界観で駆動されているが、それはそれで現代の感覚が反映されていて、納得できないものでもない。

 

全体的に『 エイリアン 』を彷彿させるシーンや構図が多かったのも好印象。

 

エンジニア ⇒ 人類 ⇒ アンドロイド ⇒ エイリアン ⇒ エンジニア という奇妙な連環はどこか『 ガニメデの優しい巨人 』的だが、リドリー・スコットの世界観あるいは人間観がよく現れているとも言える。『 ブレードランナー 』で人間とレプリカントの違いを追究せんとしたスコット翁は、本作によってエイリアン=異質なる者とは異星生物ではなく「被造者」による「被造者」であるという仮説を打ち出した。AIのシンギュラリティが現実に視界に入った現代、創造者と被造者の関係が可変的であるというのは、独特かつ説得力ある視座であると評価してよいだろう。

 

ネガティブ・サイド

どんな偶然が起きれば、ニュートリノ・バーストに遭遇するというのか。そして、たまたまニュートリノ・バーストに遭遇した場所のすぐ近くで、ジョン・デンバーの『 カントリー・ロード 』を受信するなどといったことがあるものか。普通に考えれば、行うべきは通信であって着陸探査ではない。前作に引き続き、宇宙船のクルーがアホすぎる。

 

そのクルーも、やはり呼吸可能というだけで宇宙服もヘルメットも着用しないという非常識っぷり。前作に引き続き、同じ愚を犯している。特にコロナが終息せず、マスクをはずすことが今でもためらわれる今という時代の視点からすると、未知の惑星でこれほど無防備な宇宙飛行士というのは、アホにしか見えない。エイリアンは第一義的には寄生生物(しかも宇宙最悪レベル)なのだから、通常の生物の生体防御を巧みにかいくぐる様を描くべきだった。人間がアホなので寄生に成功しました、ではなく、人間も対策を打っていましたがエイリアンはもっと上手でした、という展開こそが必要だった。

 

エンジニアもエンジニアでアホすぎる。理由があって生物兵器の実験場惑星で冬眠していた同朋が数万年ぶりに母星に帰ってくるというのは、確かに種族総出で出迎えるべき一大イベントだろう。J・P・ホーガンの『 巨人たちの星 』でも似たような描写はあった。しかし、この世界の知的生命体というのは通信を行わないのだろうか。人類がアホなのは創造者譲りなのか。

 

最後の最後に、セックスしたら死ぬというホラー映画のクリシェを持ってくるのも気に入らない。何故にわざわざ自分から三流ホラー路線に入っていくのか理解できない。

 

総評

かなり微妙な出来と言わざるを得ない。『 プロメテウス 』よりもエンタメ色が強まった分、様々なクリシェが生じてしまい、逆に展開が読みやすくなってしまっている。というか、マイケル・ファスベンダーではなく、もっとマイナーな役者でないと、この twist は生きないだろう。三作目もあるらしいが、スコット翁にどのようなビジョンが見えているのか、少々不安でならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

covenant

ぶっちゃけJovianも本作を飛行機で観るまでは知らなかった語。しかし、旅先のカナダのバンクーバーの街中で Covenant House を見かけて、「お、コヴェナントや」と思い、その場でググったことを今でも覚えている。Covenant House = 家などに居場所がない人の避難所である。英検1級を目指すのであれば知っておいて良いと思うが、そうでなければ無視してよい。

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アクション, アメリカ, キャサリン・ウォーターストーン, マイケル・ファスベンダー, 監督:リドリー・スコット, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 エイリアン: コヴェナント 』 -一作目の不完全リメイク-

『 プロメテウス 』 -エイリアン前日譚の不発作-

Posted on 2022年4月3日 by cool-jupiter

プロメテウス 45点
2022年3月28日 WOWOW録画にて再鑑賞
出演:ノオミ・ラパス マイケル・ファスベンダー
監督:リドリー・スコット

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土曜出勤が続きすぎて、映画館に行く力が出てこなかった。手元の円盤を適当にあさっていると本作が出てきた。劇場鑑賞してイマイチだったので、これを機に再鑑賞。

 

あらすじ

古代遺跡が共通して指し示す星に人類の創造主エンジニアがいる。そう確信するエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)博士たちは、ウェイランド社の支援を受けて、宇宙船で旅立つ。無事に目的にたどり着いた一行だが、そこには謎の遺跡が待ち受けていて・・・

 

ポジティブ・サイド

プロダクションデザインは流石のリドリー・スコットと言える。地球およびLV-223の遺跡や壁画、宇宙船、様々なガジェットに至るまで、精巧かつ緻密に形作られている。LV-223も地球と似て非なる惑星の雰囲気がよく出ていた。

 

『 エイリアン 』シリーズのひとつの醍醐味であるショッキングな描写もなかなかのもの。詳しくは書けないが、この時の人間をこうするとどうなるの?というシリーズ恒例の疑問にしっかり答えてくれる。

 

エイリアンと人類の戦いに焦点を当てないという決断も尊重したい。人間とは何か?何故存在するようになったのか?アンドロイドとは人類にとってどのような存在なのか?人類とアンドロイドの関係は、創造主たる神と人類の関係のアナロジーたりうるのか?『 エイリアン 』シリーズは常にアクションとSFの比重を変えながら存続してきたが、今作によって非常に思弁的なSFとしての性質も手に入れた。その方向性の変化(だけ)は良い意味で評価したい。

 

ネガティブ・サイド

キャラクターの行動原理がとにかく意味不明の一語に尽きる。スポンサーであるウェイランド個人の希望や欲求が大きくものを言ったのは分かるが、それでも異星文明が存在すると思しき惑星を見つけたなら、まずは徹底的な観測、そして通信を試みるだろう。いくら2094年とはいえ、いきなり恒星間航行はとんでもない飛躍だと感じる。

 

宇宙船プロメテウスのクルーの行動もむちゃくちゃである。どこの宇宙飛行士が未知の惑星上でヘルメットをはずすのか。仮に呼吸可能な空気だとして、空気中にどんな微生物や花粉などの微笑物質が存在するか分かったものではない。これだけでも目まいがしてくるというのに、1メートル超はあろうかという蛇のような異性生物に触ろうとするか?いったいどこまでアホなのか?

 

見せ場の一つでもある手術用の機器も、なぜクルーに女性がいるのに男性用の手術しかできないのか。シャーリーズ・セロン演じるヴィッカーズがアンドロイドなのかと疑わせたいのだろうが、だったら船長のアイドリス・エルバとあれやこれやのトークをさせる必要はないだろうと思うし、そもそもハイバネーションからの覚醒直後にタフネスぶりを見せつける描写も必要ない。こういうのは観る側を惑わせるぐらいがちょうど良いのである。

 

人類誕生の秘密を創造主に尋ねようというのは、SF小説としては面白いが、ホラー要素とアクション要素の両方がてんこ盛りのSF映画シリーズのひとつとしてはどうなのだろうか。それをやるなら、『 エイリアン 』の一環ではなく、独立した作品を企画してほしかった。エンジニアと人類の遭遇にしても、エンジニアが人類を創造した動機にしても、ぼやかされた感が強い。もっとストレートに観る側をびっくりさせるようなアイデアはなかったのか。この分野にはJ・P・ホーガンの小説『 星を継ぐもの 』と『 ガニメデの優しい巨人 』という金字塔(ホラー路線ではなく純粋なハードSF)があるが、リドリー・スコットなら敢えてそうした高いハードルを超えようとする姿勢が求められるのではないか。拍子抜けとしか言えない作品である。

 

総評

再鑑賞しても、it didn’t grow on me. 『 エイリアン 』シリーズ(一作目と二作目)のファンなら本作は評価できないだろう。または『 エイリアン 』シリーズの超上級ファンなら、本作を高く評価するのだろうか。エイリアン関連の映画でなければ、毎年、夏にいくつか出てくるB~C級SF映画という扱いで終わりだろう。もし観ようと思うのなら、まずは『 エイリアン 』と『 エイリアン2 』この続編である『 エイリアン: コヴェナント 』は新婚旅行の行きと帰りの飛行機の中で2回字幕なしで観た。6割ぐらいしか理解できなかったと記憶しているので、そちらも近々レンタルしてこようかな。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Poor choice of words

字幕では「失礼な言い方でした」だったが、これは意訳。直訳すれば「貧相な言葉の選択」ということ。日常会話でもたまに耳にする表現。『 ダークナイト 』のジョーカーもほとんど同じセリフを言っている。気になる人は、この動画でチェックしてみよう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アメリカ, ノオミ・ラパス, マイケル・ファスベンダー, 監督:リドリー・スコット, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 プロメテウス 』 -エイリアン前日譚の不発作-

『 リング・ワンダリング 』 -虚実皮膜の間に漂う-

Posted on 2022年3月27日 by cool-jupiter

リング・ワンダリング 75点
2022年3月26日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:笠松将 阿部純子 長谷川初範
監督:金子雅和

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今日も今日とて土曜日出勤。仕事終わりに鑑賞可能な映画をランダムに探して本作をチョイス。あらすじも何も頭に入れずに臨んだが、なかなかの秀作だと感じた。

 

あらすじ

漫画家を目指しながら工事現場で働く草介(笠松将)はニホンオオカミを上手く描けずにいた。ある時、工事現場で犬の頭蓋骨と思しき骨を見つけた草介は不思議なインスピレーションを得る。他にも骨がないかと夜中に現場に赴くも、草介はそこでいなくなった犬を探す不思議な女性ミドリ(阿部純子)と出会い・・・

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ポジティブ・サイド

こう言ってはアレだが、ダメな役者が一人も出ていないだけで、これほど映画の世界というのは引き締まるのだなと感じた。予算をそれなりにかけて、話題になりそうな作品を題材にして、名前が売れている(≠実力がある)キャストで作品を作るのが主流になってしまった邦画の世界だが、まだまだ自らの心映えを作品世界に反映させられる作り手がいるのである。

 

主演の笠松将の空虚に見える目の中に宿る力強い意志の力、またミドリと出会ってからぶっきらぼうな態度が徐々に軟化していく様に説得力があり、またそこで見せる笑顔や、スケッチの際の真剣なまなざしに魅力を感じた。朴念仁ではあるが、その心根は悪くなく、心情の動きも表情や立ち居振る舞いにさりげなく、しかし確実に表れていた。

 

阿部純子も素朴な女性を好演。不思議な女性というよりも妖しげな女性と名状すべき雰囲気を醸し出す。それが物語のファンタジー要素を補強しながらも、説得力を持たせることにも成功している。また、いわゆる日本的な顔であることも大きい。これにより、タイムトラベルしていることに草介が気付かないという、展開の強引さを緩和している。片岡礼子と安田顕の夫婦も脇を固める。全編にわたって無言の演技の多い本作で、それは非常に好ましいことだが、二人が目だけで語り合うシーンはその中でも白眉だった。

 

二ホンオオカミを思うように描けずにいたところ、それらしき骨からヒントを得るというのは、実際にありそうなことだと感じた。『 風立ちぬ 』でも堀越二郎が魚の骨をヒントに飛行機の機体の曲線を思い描いていた。自然の中にこそ創作のヒントが眠っているのだろう。また、本作で描出される自然の美しさにはかなりのものがある。金色に映える一面のススキ野原に、水音とオオカミの遠吠えだけが聞こえる雪山など、暗転した劇場でこそ観たいビジュアルが満載だった。非常に映画らしい映画だと感じた。

 

知らず知らずにタイムトラベルしていた草介が、自分の知らなかった歴史を知り、創作上の駒だとしか考えていなかった自身の漫画の登場人物を血肉化させていくようになるというプロットは凝ったものだと言える。ジャンル分けが難しい映画であるが、敢えて言えばファンタジー風味の人間ドラマだろうか。それとも人間ドラマ風味のファンタジーだろうか。合理的に説明がつく物語ではないが、監督・脚本の金子雅和の言わんとするところは伝わった。すなわち、生あるものは滅ぶ。しかし、滅びても死なないものがある、ということである。

 

ネガティブ・サイド

非常に独創的な作品だが、いくつかのショットは既視感に溢れたものだった。おんぶから一種の異界に至るというのは『 となりのトトロ 』のさつきとメイの構図だし、狼の巣穴のシーンは『 ネバーエンディング・ストーリー 』のグモルクとの対峙シーンにそっくりだった。

 

漫画パートを実写化するのは悪いアイデアとは思わないが、紙とインクの上で繰り広げられるストーリーを映し出すには、やはりモノクロにするなどの違いが必要だったのではないか。そのうえで、あのシーンだけは鮮やかなカラーにしてみせる、などの工夫ができたのではないかと思う。

 

総評

The less you know, the better. な映画だろう。詳しいあらすじを知っていれば、序盤のうちから「何だこりゃ?」と思ってしまったかもしれない。たまには予備知識ゼロで劇場に向かうのもいいものである。タイトルの英語は Ring Wandering。正確な発音は、リング・ウォンダリングに近い。和製英語で、山や森林で一種の vertigo に陥ることのようである。そのタイトル通りに、不思議な時間の円環に誘ってくれる。独特の世界観に浸らせてくれる、映画らしい映画である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

give sb a piggyback ride

誰々をおんぶする、の意味。単に piggyback sb up という言い方もある。基本的に小さな子ども相手にしかしない行為なので、大人同士の会話で使われることはあまりない。ただ、

Let me piggyback on that question.  
その質問に便乗させてください。

I piggybacked on their research and got this data.
彼らのリサーチに便乗して、 このデータを手に入れたんだ。

のように使われることはたまにある。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ファンタジー, 日本, 監督:金子雅和, 笠松将, 配給会社:ムービー・アクト・プロジェクト, 長谷川初範, 阿部純子Leave a Comment on 『 リング・ワンダリング 』 -虚実皮膜の間に漂う-

『 ウェディング・ハイ 』 -ペーシングに改善の余地を残す-

Posted on 2022年3月24日 by cool-jupiter

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ウェディング・ハイ 60点
2022年3月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:篠原涼子 中村倫也 関水渚
監督:大九明子

 

『 町田くんの世界 』でJovianの心を射抜いた関水渚の出演作、さらに『 勝手にふるえてろ 』や『 私をくいとめて 』の大九明子の監督作ということでチケットを購入しない理由はなかった。

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あらすじ

石川彰人(中村倫也)と新田遥(関水渚)の二人は、ウェディング・プランナーの中越真帆(篠原涼子)と共に結婚式と披露宴を計画する。しかし、式の当日、招待客たちの思いがけぬあいさつやスピーチなどで進行は大混乱。果たして中越は、新郎新婦の期待に応えて、全ての参列者たちに満足してもらえる式を実現できるのか・・・

 

ポジティブ・サイド

結婚式そのものがテーマという映画はパッと思いつかない。『 マンマ・ミーア! 』も、結婚式というよりは、結婚式に至るまでの過程のストーリーが主眼である。式の中身で魅せる映画は希少価値があるのではないだろうか。

 

本作は特に若い、未婚の男性にとって良い教材となるだろう。序盤で彰人が結婚式の中身や引き出物などを遥と一緒に決めていくわけであるが、そこで見せる「めんどくさいけど、めんどくささを見せないようにする」という演技には、男性の結婚式経験者の95%が共感できるはずだ。若き女性たちよ、男性がウェディング・プランを練る際にあれやこれやと発話しているのは、ほとんど全部演技である。「真面目に考えてよ!」などと思ったり口にしたりすることなかれ。若き男性たちよ、演技力を磨くべし。こうした場面で意中の女性の心が離れてしまうことほど人生の中で大きな損失はないのである。

 

結婚式にやってくる面々も非常に濃くてよい。Jovian自身は非常に簡素な結婚式および披露宴を行ったが、だからと言ってスピーチや余興で大いに盛り上がる結婚式も決して否定はしない。そうした場の盛り上がりを楽しんだこともあるし、先輩や友人の結婚式で、それこそ『 くれなずめ 』並み、あるいはそれ以上の余興に加担したこともあるのだ。そこにある想いは一つ、人生に(おそらく)一回しかない機会を memorable なものにしたい、というものだけである。本作の登場人物たちも、ほとんど全員が悪意など持っていない。ただ、ひたすらに自分の熱い思いを吐き出しているに過ぎない。

 

そうはいっても、式場は貸し切りというわけではない。次の結婚式や披露宴の予定も当然にあるわけで、善意の行動だからといって結果的に他人に迷惑をかけて良いわけではない。そこでプランナーである中越の奮闘が始まるわけであるが、ここはなかなか見応えがあった。日本企業の多くは社是やら何やらに「創意工夫」なる四文字熟語を使いたがるが、本当にそれができている企業は少数であろう。中越は、しかし、その創意工夫を次々に実践していく。あまり書いてしまうとネタバレになるが、料理の時間短縮のところでは「ほう」と唸らされた。Jovian自身も披露宴の際に「皿が空いた人から順に次の料理を出してください」とお願いし、快く引き受けてもらったことがあるが、こうしたオペレーションというのは実は結構大変なことなのだ。これをちょっとした知恵と工夫で乗り越えていく様は爽快感があった。

 

終盤近くの関水渚の両親への手紙の朗読が、まんまJovian妻の結婚式での手紙の朗読と内容がまるかぶりで、苦笑しながらも感じ入ってしまった。同じように感じる男性は多いのではないだろうか。

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ネガティブ・サイド

主人公が分かりにくい。ウェディング・プランナーの篠原涼子が主人公で、中村倫也と関水渚の夫婦が準主役かと思ったが、ドタバタ群像劇だった。例えは悪いが、珍作『 ギャラクシー街道 』のようなちぐはぐさというか、アンバランスさを感じた。

 

ペースにも大いに難ありだった。多士済済の披露宴であるが、物語の前半に登場してくるキャラクターの背景は割と丁寧に描かれる一方で、物語の後半のキャラについてはおざなりな印象を受ける。序盤、中盤、終盤に隙がない・・・ではなく、序盤、中盤、終盤でテンポがガラリと異なる。もちろん変奏曲的な構成が効果的なこともあるが、本作の、特に終盤では失敗だった。

 

伏線回収が光るという評もあるようだが、これは別に伏線でも何でもなく、単なる前振りだである。この展開に度肝を抜かれるようなら、まずは普通のミステリを10冊ほど読んでみたらよい。綾辻行人、米澤穂信、湊かなえあたりが良いだろう。

 

その終盤の展開も長いし、くどい。さらに下ネタを使ってくる。下ネタは否定しない。だが、演技者の岩田がどうにも振り切れていない。『 町田くんの世界 』では良い感じにダメ男だったのに、本作ではいつものイケメン気取りが足を引っ張って、ダメ男になりきれていなかった。

 

総評

Jovianは民放テレビには疎いので、バカリズムが何なのか良く分からない。『 地獄の花園 』は珍品にしか見えないが、いつかチェックしてみるか。色々と課題を残す作品ではあるが、老若男女問わず勧められる点では良作だろう。『 喜劇 愛妻物語 』などはかなり観る人を選ぶ作品だったが、本作はそれこそ高校生ぐらいからシニアのカップルまで、非常に楽しく鑑賞できるはずだ。ぜひパートナーと共に劇場で鑑賞されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Speak now, or forever hold your peace. 

「声を上げるならば今である、さもなければ永久に黙っていなさい」の意。牧師(プロテスタント)あるいは神父(カトリック)が結婚式の際に使う口上。要は、「この結婚に意義があるなら、申し出よ」ということ。一昔前、COCO塾のCMで Speak now を実践するCMがあった。興味がある人は観てみよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, コメディ, 中村倫也, 日本, 監督:大九明子, 篠原涼子, 配給会社:松竹, 関水渚Leave a Comment on 『 ウェディング・ハイ 』 -ペーシングに改善の余地を残す-

『 永遠の831 』 -もっとエンタメ要素を-

Posted on 2022年3月21日 by cool-jupiter

永遠の831 25点
2022年3月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:斉藤壮馬 M・A・O
監督:神山健治

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先週も土曜日出勤。来週も再来週も出勤確定。夏休み並みの長期休暇気分でも味わうつもりで、あらすじも何も知らないままチケットを購入。

 

あらすじ

大災厄が起きた世界。新聞奨学生のスズシロウ(斉藤壮馬)は、大きな怒りを感じると時間を止めてしまうという能力に悩まされていた。ある時、止まった時間の中で自分と同じように動いている少女を見つけたスズシロウは、彼女を密かに尾行するが・・・

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ポジティブ・サイド

大災厄というのが何であるのか明示されないが、それが物語のフィクション性を高めつつ、リアリティも増している。大地震でも津波でも原発事故でもコロナでも何でもよい。ほんの少しでも考えてみれば、日本という国に上がり目がなく、なおかつ日本という国の政治が末期症状の一歩手前に来ていることは、国会論戦の空虚さとコメンテーター連中の頭の悪い評論活動を見れば明らか。そうした作り手の姿勢は嫌いではない。

 

ネガティブ・サイド

『 あした世界が終わるとしても 』で感じた、アニメキャラがモーションキャプチャーでゆらゆら動くことの気味悪さは、個人的には全く克服できそうにない。

 

新聞屋の若い女性オーナーのお色気設定がよく分からない。スズシロウがこの女性に辟易していたところに、対照的に清純そうななずなが現れた・・・というわけでもなかった。お色気担当?要らないな。

 

「時間を止める」というアイデアは古典だから良いとして、時間を止める方法がバラバラであることに必然性を見出せなかった。また時間が止まっている長さが、スズシロウの場合は3分から1週間と幅がありすぎる。おそらく、なずなも同様だろう。そう考えると、この方法で831戦線が犯行を重ねていくのは無理がありすぎる。

 

なずなが時間を止めるために命の危険を感じなくてはならないというのも地味に意味不明だ。いや、その設定自体は受け入れるにしても、兄が妹を銃で撃つ必要があるのか?あれだとすぐに近隣住民から警察に通報されて、犯行もクソもないと思うが。

 

止まった時間の中で、なずなやスズシロウが触ったものが動き出すというのも、これまた地味に意味不明だ。スマホは電波が止まって使えなくなったが、だったら何故エレベーターは電気が通って使えていた?どうして車は走れた?

 

政治的な主張が込められているのは構わないが、それを成し遂げようというのが官僚の息子というのもどうなのか。阿川兄妹のバックグラウンドを考えれば、公安や内閣情報調査室に常にマークされているだろう。

 

総評

細かいところに突っ込みだすと、いくらでも突っ込めてしまう。ストーリーを堪能するのではなく、今という時代を背景にしながら観ることで、個人個人で感じ取れるものを感じ取ればよいのだろう。ただ、アニメはちょっと・・・という層には勧めにくいし、いわゆる日本的なアニメの文法からもかなり逸脱した作品である。鑑賞するのなら、下調べをほとんどせずに臨むか、あるいはこれ以上なくリサーチした上で観るべきだろう。ただ、どういう見方をしてもエンタメ要素に乏しいという欠点は消せないだろうが。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

ransom

身代金の意。ランサムウェアなる言葉を聞いたことのある方もいるだろう。コンピュータを使用可能にするマルウェアを解除してやるからカネを払え、というやつである。誘拐系のミステリやサスペンス映画ではしょっちゅう聞こえてくるので、そういう作品を鑑賞する時には耳を澄ませてみよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, M・A・O, アニメ, ファンタジー, 斉藤壮馬, 日本, 監督:神山健治, 配給会社:WOWOWLeave a Comment on 『 永遠の831 』 -もっとエンタメ要素を-

『 余命10年 』 -難病ジャンルの文法には忠実-

Posted on 2022年3月15日2022年3月15日 by cool-jupiter

余命10年 65点
2022年3月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:小松菜奈 坂口健太郎
監督:藤井道人

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『 デイアンドナイト 』『 新聞記者 』、『 宇宙でいちばんあかるい屋根 』、『 ヤクザと家族 The Family 』の藤井道人監督の作品。さらにJovianお気に入りの奈緒も出演しているとなれば、チケットを買わないという選択肢は存在しない。超繁忙期なので簡易レビューを。

 

あらすじ

茉莉(小松菜奈)は、百万人に1人の病を患ってしまう。発病後に10年生きた人はほとんどいないことから、彼女は自身の余命を10年以内と悟る。ある日、中学の同窓会で和人(坂口健太郎)と再会するも、和人がアパートの自室から飛び降りてしまう。生きることに自暴自棄になっていた和人に「私も頑張るから、あなたも頑張って」とエールを送る茉莉だったが、自分の病気を知らない和人との距離を縮めることを常に恐れていて・・・

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ポジティブ・サイド

2011年に始まり、2017年に幕を閉じる本作。つまり、7年の歳月を描き切ったわけであるが、主演の小松菜奈はその月日の尊さ、美しさ、素晴らしさを一身に体現する演技を見せた。説明的なセリフも非常に少なく、キャラクターの表情やたたずまいに多くを語らせる姿勢には好感が持てる。いつ死ぬともしれない身だからこそ、一瞬一瞬を生きようとする。季節の移り変わりというのは、ありふれた自然現象であるが、来年にはもう桜は見られない、あるいは来年にはもう雪に触れないとなれば、おのずとそれらを慈しむようになる。茉莉の生き様からはそれが伝わってきた。

 

ビデオカメラがちょうど良い小道具になっていて、茉莉が自分の生きた証を残すものとして効果的に使われる。同時に、その映像が消えていく様に、死がどうしようもない虚無であるという現実も見えてくる。死ぬ準備はできたが、本当は死にたくないと泣く演技では『 秘密への招待状 』のジュリアン・ムーア並みに良かったと思う。

 

余命10年というタイトルが示す通りに、奇跡が起きてハッピーエンドを迎えることはないわけだが、それでも茉莉という名前が残り、茉莉の書く小説が残ることで、彼女は確かに生きていたし、ある意味では今も生き続けていると言える。劇場のあちこちから聞こえてきたすすり泣きは、茉莉の死に対する悲しみに対する涙であったのと同時に、茉莉のように生きられなかった自身に対する改悛の涙なのだろう。Jovianはオッサン過ぎて涙を流すには至らなかったが、劇場に来ていた多くの10代たちの感性は鈍くないのだなと感じるには十分だった。

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ネガティブ・サイド

和人が茉莉の父に「あの子を受け止めてほしい」と言われた後の行動が腑に落ちなかった。中学生から10年経過ということは23歳から25歳。しかも、その時点では茉莉との再会から1~2年過ぎていた?ということは25~27歳でもありうる。この年齢で想い人の父親から上のような言葉を掛けられたら、あっさり引くことはないように感じる。

 

茉莉が家族に対して言う「私たちって、どっちが可哀そうなんだろうね」というセリフにはドキリとさせられた。両親や姉の抱く葛藤を間接的にでもよいので、もっと見せてくれていたら、このセリフの切れ味というか、心に残す傷の深さはもっとすごいものになっただろうに。

 

和人の両親と義絶しているという背景も、少しは見せてほしかった。「父親の会社を継げば人生安泰だったのに」という言葉も聞かれたが、ここらへんの親子関係をほんの少し掘り下げるだけで、和人が茉莉の父にかけられた言葉の重みに気付かなかったことの説明になったのだが。

 

総評

素晴らしい出来映えと評せるが、難病ものというジャンルとして見た場合、真新しさはなかった。藤井道人は社会や人間の光と闇の描き分けに長けているので、もっと茉莉や和人の心の底のダークな面を見せてくれても良かったのにと思う。プロデューサーはキャスティングで若い世代を惹きつけようとしていたのだろう。実際に劇場は7分の入りで、来場者の9割は若者、その半分以上はカップルに見えた。すすり泣いていたのは彼ら彼女らがほとんどだろう。ただJovianは観終わって、三浦透子あるいは奈緒が茉莉を演じていたら、磯村勇人が和人を演じていたら、とも感じた。美男美女の恋愛模様は、どこかファンタジーに見えるのである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

disown

own = 所有する、の反対語。しばしば「勘当する」や「義絶する」の意味で用いられる。接頭辞の dis は動詞の意味を反対にする。cover = カバーで覆う、discover = 覆いを取り除いて発見する、continue = 続ける、discontinue = 続けるのを止めて廃止する、connect = つなげる、disconnect = つながりを断つ、などは知っておきたい。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ラブロマンス, 坂口健太郎, 小松菜奈, 日本, 監督:藤井道人, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 余命10年 』 -難病ジャンルの文法には忠実-

『 THE BATMAN ザ・バットマン 』 -最もダークなバットマン-

Posted on 2022年3月13日2022年3月14日 by cool-jupiter

THE BATMAN ザ・バットマン 75点
2022年3月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ロバート・パティンソン ゾーイ・クラヴィッツ ポール・ダノ
監督:マット・リーブス

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半強制の土曜出勤後のレイトショーで鑑賞。疲労した状態で3時間の長丁場映画は無謀かと思ったが、緊張感が持続する素晴らしい出来映えだった。

あらすじ

ゴッサム・シティの市長選の最中、現職市長が謎の知能犯リドラーに殺害される。その翌日には警察本部長までもが殺害されてしまう。バットマン(ロバート・パティンソン)は盟友ゴードン警部補と事件を追うが、その過程で自身とその家族の闇を見せつけられ・・・

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ポジティブ・サイド

結論から言うと『 ダークナイト 』と同じくらい面白かった。ティム・バートンの『 バットマン 』、ジョエル・シュマッカーの『 バットマン 』、クリストファー・ノーランの『 ダークナイト 』などと比べても、ヒーローではなく探偵という意味合いが強い。また大富豪として燦然と輝くセレブであるブルース・ウェインと警察や司法の裁けぬ悪を自ら制裁する影のヒーローのバットマンというコントラストが薄れ、圧倒的にダークな雰囲気が物語全体を支配している。

BGMも良い。ダニー・エルフマンの手がけたテーマ曲のイントロ部分を変奏させたような重々しいBGMが物語全体を通奏低音になっていて、重くシリアスな空気を生み出していた。Nirvanaの ”Something in the way” も、バットマンの心情とマッチしていた。

スーパーヒーローは常に狭間に立っている。スーパーマンはクラーク・ケントで、アイアンマンはトニー・スタークで、スパイダーマンはピーター・パーカーである。人間としての生活とスーパーヒーローとしての使命が時に、というか常にぶつかり合う。本作が新しいなと感じられたのは、バットマンの正体がブルース・ウェインなのではなく、ブルース・ウェインの正体こそがバットマンである、とリドラーが喝破するところ。確かに本作では、ブルースはウェイン・エンタープライズの経営にまったく参画していないようで、バットマンとしての生き方を貫こうとする姿勢が先行作品よりも遥かに強く打ち出されている。一方で、ブルース・ウェインとしての弱さもしっかりと表現されており、マット・リーブス監督のさじ加減はかなり巧みであるという印象。バットマンは結局のところ孤児で、自分の人生にかけている positve male figure を常に探し求めている。その対象がアルフレッドであり、ゴードン警部補である。一方で、いつまでも孤児という子どものままではいられないわけで、息子はいつか(文学的な意味での)父親殺しを果たさねばならない。その対象が、本作ではペンギンであり、ファルコーネである。本作はブルース・ウェインというキャラの内面の闇に深く切り込んだ作品であり、物語そのものの重苦しさとあいまって、観ていて消耗が激しい。しかし、鑑賞後にはそれは心地よい疲労に感じられた。

ロバート・パティンソンはバットマンとしてもブルース・ウェインとしてもハマり役。個人的にはバットマン役だけを考えれば

ロバート・パティンソン > ベン・アフレック ≧ マイケル・キートン > クリスチャン・ベール > ヴァル・キルマー >>>>> ジョージ・クルーニー

という序列である。

ヴィランであるポール・ダノは、ジム・キャリーの怪人リドラーとは全く異なるリドラー象を打ち出してきた。『 ダークナイト 』におけるジョーカーのような、犯罪者というよりもテロリスト寄りの人物で、これはこれで十分に恐ろしい人物であると感じた。非イケメンで、どちらかというオタク系の外見をしているポール・ダノが white trash の一つの究極系であるリドラーを演じるというのは、キャスティング上の大勝利なのだろう。実際にポール・ダノはかなりの怪演を見せている。ジョーカーを演じると精神にダメージを負うと言われるが、このリドラーを作り上げるのも相当にダノを苦しめたのではなかろうか。とあるシーンで、スマホでバットマンと通話するリドラーは、エンドルフィンやらドーパミンがあふれ出ているかのような druggy な喋り方だった。麻薬中毒の問題もサブプロットにあるのだが、頭がおかしい人間は脳内麻薬だけでトリップできるのだなと感じさせてくれた。

バットマン初心者向けではないが、バットマン好きで、なおかつマット・リーブス監督と波長が合えば、本作はかなりの傑作と感じられることだろう。

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ネガティブ・サイド

ゾーイ・クラヴィッツのキャットウーマンはなかなか堂に入っていたが、ロマンスの要素を含めようとしたのは感心しない。すわキスか?と期待していたキャットウーマンだったが、バットマンは単にコンタクトレンズ型カメラとイヤホンの装着具合を確かめていただけ、という距離感を保っていたほうが良かった。今作のブルース・ウェインは大人と子どもの境目の存在で、女=ロマンスの対象はノイズである。

いくら父親にあたる存在を渇望しているとはいえ、ファルコーネやらアルフレッドやらに、父トーマスのことをあれこれ言われて、それを全部信じ込んでしまうというのはどうなのか。

続編を強く匂わせる終わり方だったが、次回作ではジョーカー登場?演じていたのは誰?本作をもって『 ジョーカー 』は全てめでたく妄想ということになったのだろうか?

総評

バットマン好きなら見逃してはならない一作。しかし、逆に言えば「バットマンというのは名前しか知らない」という層にはキツイ作品だろう。事実、Jovian妻がこれに該当し、終始訳が分からなかったとのことだった。3時間あるリブートだからといって、全てを懇切丁寧に説明してくれるわけではない。知らない人からしたら「ペンギンって何?キャットって何?」となってしまう。逆にバットマン世界を知っていれば、ブルース・ウェイン/バットマンを更にもう一段掘り下げた作品として、楽しめることだろう。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be spoken for 

割とよく使われる表現。

Someone is spoken for = 誰かにはお相手がいる

Something is spoken for = 何かが予約済み、売約済みである

という感じに訳されることが多い。劇中では “You’re already spoken for.” という具合に使われていたが、「あなたには先約がある」あるいは「あなたにはすでに相手がいる」のような字幕だった気がする。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ゾーイ・クラヴィッツ, ポール・ダノ, ロバート・パティンソン, 監督:マット・リーブス, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 THE BATMAN ザ・バットマン 』 -最もダークなバットマン-

『 ナイル殺人事件 』 -謎解きを楽しもうとすべからず-

Posted on 2022年3月11日 by cool-jupiter

ナイル殺人事件 50点
2022年3月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ケネス・ブラナー ガル・ガドット
監督:ケネス・ブラナー

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『 オリエント急行殺人事件 』に続くエルキュール・ポワロもの。仕事が超絶繁忙期のため、簡易レビューを。

 

あらすじ

巨額の遺産を相続したリネット(ガル・ガドット)は友人のフィアンセとの略奪婚を果たす。しかしエジプトを新婚旅行中にリネットが殺害されてしまう。ハネムーンに集まった人々は実は全員リネットに怨恨を抱いていた。名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は事件の真相解明に挑むが・・・

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ポジティブ・サイド

ドロドロの愛憎劇として観るなら、かなり良い出来映え。アガサ・クリスティは、友好的な登場人物たちが実は裏では・・・という人間関係を描く最初の世代にして名手である。現代でこそ意外性はないのだが、クリスティの時代はこれが斬新だったのだ。世界が今ほど近代化・都市化しておらず、コミュニティの中の人間関係が十分に可視化される時代だったのだ。だからこそリネットが言う「私に近づいて来る人間は、みんな私のお金が目当て」という言葉に説得力が出ている。

 

巨大なピラミッドやラムセス2世の神殿、そしてナイル川をクルーズする豪華客船とエジプト旅行の雰囲気を味わうことができた。色々と緩和されてきたとはいえ、海外旅行はまだまだ難しそう。劇場で異国情緒を味わうのも一興かもしれない。

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ネガティブ・サイド

『 ねじれた家 』と同じく、ハウダニットを深く考えてはいけない。ホワイダニットだけを考えるべき作品で、その意味ではミステリとしては非常に弱い。一応、最後の最後で筋の通った謎解きはなされるが、推理としては噴飯もの。「説明がつく」ということと「実行することができる」は別のこと。あまりツッコミすぎると野暮だが。

 

ポワロの若き日のエピソードは必要だったろうか。愛する人を偲ぶあまりに独身のまま老年に差し掛かろうとするのは確かに物悲しくはあるが、そのことが本編に深みも奥行きも与えているようには見えなかった。『 ダークナイト 』のトゥーフェイスを見せられても意味が分からない。まあ、更なる続編への布石なのだろうが。

 

総評

悪い作品ではないが、面白いとも感じない。超豪華な火曜サスペンス劇場という感じである。どうせなら『 アクロイド殺し 』を現代風にアレンジして映画化してみてはどうか。超絶技巧が要求されるが、挑んでみたいと思う脚本家は数多いるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

square

色々な意味がある語だが、ここでは人物を指して「四面四角」という意味。He is a square. = あいつは四面四角な奴だ = 融通が利かない面白味のない奴だ、という意味になる。fair and squareと言えば、正々堂々、公明正大という意味にもなる。Let’s fight fair and square. = 正々堂々と戦おうじゃないか、という意味。 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, ガル・ガドット, ケネス・ブラナー, ミステリ, 監督:ケネス・ブラナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ナイル殺人事件 』 -謎解きを楽しもうとすべからず-

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