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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2023年9月

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

Posted on 2023年9月25日2023年9月25日 by cool-jupiter

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 80点
2023年9月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フランキー・フェイソン
監督:デビッド・ミデル

 

妻が「面白そう」というので、チケットを購入。ハズレが少ないシネ・リーブル梅田の上映作品だが、本作は年間ベスト級の面白さだった。

あらすじ

心臓病を抱えるケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、誤って救命救急サービスのアラームを作動させてしまう。それによってケネスの自宅に警察官が急行し、ケネスの安否を確認しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

舞台はケネスの自宅室内とアパートのホールウェイ。主な登場人物は、ケネスと最初に現場に急行する警察官3名、ライフ・ガード社の女性オペレーター1名、そしてケネスの姪っ子一人と、非常に小規模な作品。しかし、そこに流れる空気の濃密さはそんじょそこらの映画の比ではない。

 

最初は職務に忠実にケネスの安否を確認しようとする警察官たち。しかしケネスが黒人、元海軍兵、さらに精神障害の既往歴ありという属性を知るにつれて、どんどんと過激化していく。黒人ということは犯罪者予備軍ではないか。海軍ということは武器を所有しているのではないか。まるで『 福田村事件 』のように、疑心暗鬼がいつの間にか確認に変わり、法執行官の代表たる警察官がいとも簡単に法を破っていく。そこに至るまでの過程が『 デトロイト 』そっくりだが、『 デトロイト 』では銃声というトリガーがあった。しかし、本作では警察官の暴力性を引き出す契機は何もなし。そのことが観る側に恐怖感を呼び起こす。単に暴力的になっていくから怖いのではない。職務に忠実であろうとする姿勢が、いつの間にか他者を傷つけることを厭わない姿勢に変わっていくことが恐ろしい。そういう意味では本作は『 ヒトラーのための虐殺会議 』に近いものがある。これは極端な例かもしれないが、哲学者ハンナ・アーレントが見抜いたように、人は凡庸な悪にこそ支配されてしまう。その過程をわずか数十分で臨場感たっぷりに描いた点が本作の一番の貢献と言えるかもしれない。

 

ケネスを演じたフランキー・フェイソンの迫真の演技には息を呑むばかり。双極性障害の持ち主にして、軽いPTSD持ちにも見えた。彼の脳裏に去来したであろう様々な体験を一切映像化することなく、観る側にそれをありありと想起させる演技力と監督の手腕は見事の一語に尽きる。ライフ・ガード社のオペレーターの女性の声だけの迫真の演技も印象的。中学校教師上がりの警察官ロッシの個人としての信条が、警察という階級組織の中で簡単に押しつぶされていく様もリアルだった。

 

タイトルの通りに最後にケネスは殺害されてしまうわけだが、その結末には慄然とさせられる。法とは何か。人命とは何か。何が我々を狂わせるのか。何が我々を思考停止に陥らせるのか。本作が示唆する問題はアメリカだけに限定されたものでは決してない。

 

ネガティブ・サイド

エンドロール時に本物のケネスや警察官たちの声が聞こえるが、警察官たちは暴力的というよりも、ケネスをおちょくるような口調だったと感じた。であるならば、そのような口調を再現し、それをケネスが威圧的、高圧的、威嚇的と受け取ってしまう、のような演出を模索できなかったか。あるいは、エンドロールの実在の人物たちの声はすべてカットしてしまうのも一つの選択肢だっただろう。

 

総評

間違いなく年間ベスト候補の一つ。非常に限定的な時間と空間、そして人間関係だけで圧倒的なドラマを生んでいる。大量破壊兵器を持っていないのに、あたかも持っているかのように振る舞ったイラクは空爆されてしかるべきだった。ウクライナ戦争以降、このような言論が耳目に入ってくるが、どう考えてもアメリカの方が悪い。疑わしきは罰せずというのが人類のたどり着いたひとつの結論であるはずだが、個人レベルでも国家レベルでも疑惑を確信に変えて行動してしまうアメリカには決して倣ってはならない。やることなすこと全てアメリカの猿真似の本邦も、本作や『 福田村事件 』を直視しなければならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make sure

しばしば S1 make sure that S2 + V のような形で使う。意味は、S2がVするとS1が確認する。まあ、これは例文で覚えたほうが早い。

 

She made sure that the door was locked and the windows were closed.
彼女はドアが施錠されていて、窓も閉じられているということを確認した。

I want to make sure that this assignment is due next month.
この課題は来月が締め切りであると確認したい。

 

のように使う。初級者から上級者まで日常でバンバン使う表現なので、ぜひ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 BAD LANDS バッド・ランズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, スリラー, フランキー・フェイソン, 伝記, 監督:デビッド・ミデル, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

『 グランツーリスモ 』 -壮大なインフォマーシャル-

Posted on 2023年9月25日 by cool-jupiter

グランツーリスモ 30点
2023年9月23日 TOHOシネマズ伊丹にて鑑賞
出演:アーチー・マデクウィ デビッド・ハーパー オーランド・ブルーム
監督:ニール・ブロムカンプ

鑑賞する気は毛頭なかったが。世評では本作は『 RRR 』や『 トップガン マーヴェリック 』に比肩すると言われている。ならばとチケットを購入。

 

あらすじ

小さな頃からクルマが大好きだったヤン・マーデンポロー(アーチー・マデクウィ)は、PlayStationゲーム『 グランツーリスモ 』で抜群の腕前を誇るゲーマーになっていた。同作のトップゲーマーたちを集めて、現実のレーシング・ドライバーに育成するというGTアカデミーが発足。ヤンも招集されるが、そこで出会ったコーチは、ゲーマーがレーサーになれるわけがないと思っているジャック・ソルター(デビッド・ハーパー)だった・・・

 

ポジティブ・サイド

主人公のヤンのバックグラウンドを丁寧に描いている点には好感を抱いた。元サッカー選手の父にサッカー選手として花開いた弟、憧れの女の子オードリーとの絶妙な距離感など、ゲーマーとしてだけではなく一人の人間としての個別性がしっかり確立されていて、そのことがストーリーの要所要所のイベントとリンクしていく。愛したいのに愛せない父親と憎らしいけれど愛すべきコーチの対比も映える。

 

これが実話(をベースにした物語)だというのだから恐れ入る。VRが教育に徐々に取り入れられていっているが、各種の技能の訓練にシミュレーターがどんどんと使用されるようになっていく、という近未来を予感させてくれたのも、教育業界人の端くれとして thought-provoking だと感じた。

 

日本発のゲームが基になっており、開発者も日本人なので、日本(東京)の描き方に問題はなかった。よくあるハリウッド映画だと床の間に掛け軸のようなトンチンカンな日本家屋ではなく、ネオンサインに彩られたガヤガヤしたアジア的あるいは無国籍な繁華街の雰囲気は良かった。

 

ネガティブ・サイド

『 トップガン マーヴェリック 』や『 RRR 』に並ぶ面白さは感じなかった。もちろん、何を面白いと思うのかは個人の感性なので、そういうレビューをする人はそういう感性の持ち主なのだと納得するしかない。ただ、比較するなら『 トップガン 』の方だろう。複雑な家庭出身の主人公がアカデミー入りを果たし、大きな事故を経ながらも大活躍。新しい仲間を得て、自分の選んだキャリアを全うしようと決意する・・・って、まんま『 トップガン 』のプロットと同じやんけ。さらにエンヤとケニー・Gの楽曲が随所で挿入されるのも、80年代のイケイケ音楽と同時のオールディーズをふんだんに取り入れた『 トップガン 』ともよく似ている。つまり、オリジナリティはない。ニール・ブロムカンプといえば『 第9地区 』や『 エリジウム 』のように、差別や格差といった社会問題をうまくエンタメに昇華する監督だが、今作で彼の持ち味が発揮されたかというと、やや疑問。こういう構成にするなら、エドガー・ライトやジョセフ・コジンスキーの方が明らかに上手だろうと思う。

 

トップガンとの最大の違い、かつ本作の最大の弱点は、ゲームと現実の絶対的な境目である加速やターン時のGフォースをあまり描けていなかったこと、なおかつそのGをどのように克服していったのかという過程が思いっきりすっ飛ばされていたこと。そしてゲームではリセットできても、実際の運転ではリセットは不可能という絶対的な現実を乗り越える過程もなかった。序盤にヤンがパトカーを振り切る運転を見せたが、これなどはコーチのソルターが最も嫌う行動ではないか。現実にこんな anecdote があったとも思えない。映画化にあたっての脚色なのだろうが、個人的には蛇足に感じた。

 

本来描かれるべきゲームと現実の絶対的な相違を克服する過程の代わりに、本作はこれでもかと音楽を売り込んでくる。別にそれはそれで構わないし、それがヤン・マーデンボローという人物を正確に描くには欠かせないのは分かる。問題はそのことがストーリーに特に深みを与えていないこと。GTアカデミーの仲間たちがヤンのヘッドホンからの音漏れで夜中に目を覚ましてしまうシーンがあったが、もしもその後に一度は袂を分かった仲間たちが、ヤンの影響を受けて、自分なりのキラーソングを見つけて活躍するようになった、というひとかけらの描写や説明があれば良かったのだが、それもなし。よくできたミュージック・プロモーション・ビデオだとは言えるが、レーサーとしての成長を描くドラマとしては微妙と言わざるを得ない。

 

最後の最後でとあるプレゼントが大きな役割を果たすが、「おいおい、完全に使いこなしてるやんけ」と突っ込みを入れざるを得なかった。SONYのウォークマンはJovianも愛用しているが、ソルターがブルートゥース接続をするというのがまず想像できないのだが・・・

 

総評

正直なところ期待外れ。ストーリーも陳腐で細部も突っ込みどころだらけ。しかし、Jovian妻は「まあまあ面白い」とのことだった。さらに鑑賞後のトイレで若い男性二人が「あのゲーム、やりたくなった」と話していたりで、大傑作とは言わないまでも佳作とは言えるかもしれない。どんな作品でも最後は作り手と受け取り手の波長の問題となる。Jovianは無線の音声が印象に残ったので、『 グランツーリスモ 』よりも Ace Combat シリーズをもう一度プレーしてみようかな、と感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

podium

表彰台の意。ラテン語では pod = 足、ium=場所である。足の乗る場所なので表彰台となる。pod は ped にもなり、ペダルやペディキュアといった語からも足の意味が読み取れる。英語に自信のある人なら centipede =百足=ムカデ、arthropod =節足動物などを思い起こすかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』
『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーチー・マデクウィ, アメリカ, オーランド・ブルーム, スポーツ, デビッド・ハーパー, 伝記, 監督:ニール・ブロムカンプ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 グランツーリスモ 』 -壮大なインフォマーシャル-

『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』 -ホラー風味たっぷりのミステリ-

Posted on 2023年9月24日 by cool-jupiter

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 65点
2023年9月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ケネス・ブラナー
監督:ケネス・ブラナー

 

簡易レビュー。

あらすじ

ベネチアで楽隠居をしていた名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)の元に旧知の小説家が訪ねてきた。彼女の誘いで交霊会に臨むことになったポアロは、子どもの霊に憑りつかれているという妖しい館へと赴く。見事に霊媒師のトリックを暴いたポアロだが、その霊媒師が何者かに殺害されてしまい・・・

ポジティブ・サイド

情緒あふれる古都ベネチアがいい。『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』や『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』のようにアクションの舞台になるよりも、ミステリの舞台となる方が断然映える。

 

原作をかなりいじくっているが、これは脚本家が良い仕事をした。どれだけオカルト色を強めても、原作はアガサ・クリスティー。つまり絶対にミステリ。なので、観ている側も「この作品のジャンルはホラーなのか、ミステリなのか」と迷うことがない。どんなにスーパーナチュラルな事象に見えても、絶対に合理的な説明がつくはずだ、という確信をもって鑑賞できる。これがカトリーヌ・アルレー原作だとこうはいかない。オカルトの可能性が少しあるからだ。

 

人間模様もかなりドロドロで、怖いのはやはり人間なのだと思わされる。恐怖が最高潮に達した瞬間に、快刀乱麻を断つがごとく炸裂するポアロの名推理。ケネス・ブラナー版ポアロの中では本作は一番面白い。

 

ネガティブ・サイド

霊媒師のトリックを暴く序盤は良かったが、声が変わる謎は放置。ここもスッキリさせてほしかった。

 

とある密室のトリックが少々お粗末。時代が時代だけにしゃーないのだが「物的な証拠は?」と開き直られたら終わり。推理は状況証拠だけではなくちゃんとした物証を基に行ってほしかった。

 

総評

アガサ・クリスティーものとしては『 ねじれた家 』に通じるテイストとミステリ、そしてホラー要素が上手く混ざり合っている。4作目がどうなるかは分からないが、次作も楽しみ。そして5作目に『 アクロイド殺し 』を実現してほしい。高校生だったJovian少年は『 アクロイド殺し 』に衝撃を受けて、そこから江戸川乱歩以外のミステリ作品も読むようになったのだ。ケネス・ブラナー版のポアロの今後に期待。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fall victome to ~ 

~の犠牲・被害者になる、の意味。Many passengers fell victim to the water accident due to the captain’s lack of experience. =船長の経験不足のせいで多くの乗客が水難事故の犠牲になった、のように使う。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ケネス・ブラナー, ミステリ, 監督:ケネス・ブラナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』 -ホラー風味たっぷりのミステリ-

『 劇場版シティーハンター 天使の涙 』 -序章と銘打つべし-

Posted on 2023年9月20日 by cool-jupiter

劇場版シティーハンター 天使の涙 40点
2023年9月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神谷明 伊倉一恵
総監督:こだま兼嗣

 

簡易レビュー。

あらすじ

冴羽獠(神谷明)と槇村香(伊倉一恵)のもとに、動画配信者のアンジーから逃げた猫を捜して欲しいとの依頼が入る。破格の報酬に猫を探し出そうとする二人。しかし、その依頼は獠の凄絶な過去に結びつくことになる依頼で・・・

ポジティブ・サイド

1980年代からしっかり現代にまでアップデートできている。ただし、いくら時代がアップデートされても「もっこり」は健在。これを失ってはシティーハンターがシティーハンターではなくなってしまう。シリアス極まりないシーンにも「もっこり」という台詞をぶち込んでくるあたり、製作者側は時代がうつろいゆく中でも失ってはいけないものが何であるのか分かっている。

 

一方でシティーハンター冴羽獠の超絶射撃は健在。手に汗握るアクションは十分に堪能できた。特に今回の相手は格闘戦でも獠を圧倒する。このハラハラドキドキ感は、通常のエピソードでは味わえない。すべてを吹っ切った獠の神業による決着は、まさに狙撃手の面目躍如。ゴルゴ13よりも冴羽獠の方が総合力では上手かな。

ネガティブ・サイド

神谷明、伊倉一恵、キャッツアイの面々の声の衰えが顕著である。こればっかりはどうしようもないが、どこかの時点でアニメ『 ドラえもん 』や『 サザエさん 』のように、声優交代は必要だったのではないかと感じてしまう。

 

そのキャッツアイの登場は北条司ワールドのスターシステムだと思えば普通にあり。しかし、『 うちのタマ知りませんか 』や『 ルパン三世 』まで出てきてしまえば、世界観も何もない。ところどころにものすごいノイズが混じったように感じられた。やるなら同じ媒体(週刊少年ジャンプ)のネタをてんこ盛りにした『 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 』に倣うべきだった。

 

海坊主が完全なる役立たず。なんだかなあ・・・

 

中途半端なインフォマーシャルも不要。カップ麺メーカーがスポンサーなのか?

総評

最終章への序章なら、序章であると銘打ってほしい。劇中でも北条司本人(?)が続編への意欲を示していたが、早くしないと声優陣が本格的に枯れてしまう。事実、映画館も結構な入りだったが、若い世代は見当たらず。ほとんど40代以上に見えた。今ならギリギリで純度100%のシティーハンターが製作できるはず。欲をかいて2章、3章と作るのではなく、次作でスパっときれいにまとめてほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crowning achievement

最高傑作という表現はいくつかあるが、殊に弟子のような意味合いの場合はこの表現を使うことが多い。Plato was the crowning achievement of Socrates’ many disciples. =プラトンは数多くのソクラテスの弟子の中でも最高傑作であった、のように言える。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』
『 アリスとテレスのまぼろし工場 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アニメ, 日本, 神谷明, 総監督:こだま兼嗣, 配給会社:アニプレックスLeave a Comment on 『 劇場版シティーハンター 天使の涙 』 -序章と銘打つべし-

『 天空のサマン 』 -編集に難あり-

Posted on 2023年9月17日 by cool-jupiter

天空のサマン 50点
2023年9月10日 シアターセブンにて鑑賞
出演:関雲徳
監督:金大偉

簡易レビュー。

 

あらすじ

金大偉は、失われゆく満州語と満州人のシャーマニズムを受け継ぐ現代サマンたちへの取材を通じて、文化と伝統を維持していくことの意義を模索する。

ポジティブ・サイド

1100万人の満州人がいても、ネイティブ満州語は絶滅の危機にあると言う。文化とは存在ではなく営為だが、その営為を可能にするのは言葉と行動だ。本作はその行動の中でもシャーマニズムに注目するという意味で非常にユニーク。Jovianの大学での専攻は宗教学で、専門は東北アジアにおけるアニミズム思想だった。なのでシャーマニズムの概要についても、それなりの知識を有している。なので本作で描かれる儀式や神歌の数々は非常に興味深く映った。

 

ヨセミテなどの美しさに魅せられたジョン・ミューアや、英国人ながら、いや英国人ゆえにアメリカの雄大な自然に魅了された風景画家トマス・コールなど、欧米人も自然の美しさを解する心はある。しかし、自然そのものを神聖視し、自然と交感・交流しようという意志や行動は見られない。それはアボリジニやネイティブアメリカンのもの。Jovianも大昔にアリゾナを旅行した時、ナバホ族のパフォーマンスを見たことがある。あれも一種のシャーマニズムだろう。今やシャーマニズムは中心ではなく周辺にしか残っていない。それは日本も同じ。中国も同じだろう。多様性や包摂、自然環境保護などの視点から周辺に追いやられた満州民族の伝統的風習から学べることは多い。

 

ネガティブ・サイド

編集に難ありと言わざるを得ない。時系列ごとにまとめるか、あるいは取材地域ごとにまとめるか、それとも祖先崇拝や神域での行事などサマンの行う各種のイベント種類ごとにまとめるなど、何らかの軸を持ったドキュメンタリー作品に仕上げるべきだった。時間の面でも場所の面でも、かなりバラバラになってしまっていて、正直なところ分かりやすい構成とは言い難い。DVD販売あるいは配信に際して再編集をお願いしたい(無理だろうが)。

 

低予算映画ゆえと言ってしまえばそれまでだが、監督自身が務めたナレーションがかなり稚拙に聞こえた。それは声の大きさ、発話の速度、抑揚(中国語にしてはずいぶんと控え目に聞こえた)など、プロフェッショナルとは思えなかった(監督の中でも『 主戦場 』のミキ・デザキはかなり上手かった印象がある)。『 JOMON 私のヴィーナス 』のブレイク・クロフォードのように、製作スタッフの中からナレーションに長けた人物を選ぶという方法もあったはず。

 

総評

日本人にとっては、シャーマニズムを通じて文化と言語を保持しようする人々の奮闘、つまり自らのアイデンティティーを見つめ直し、それを維持しようと思う機会になるかもしれない。観やすい、聞きやすい作品ではないのだが、興味を引くテーマを扱っていることは間違いないし、神歌や祖霊崇拝の儀式は同じアジア人という視点から共感しやすい。大学生で宗教学や人類学を学びたいという人は是非観てみよう。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

我

ウォと発音する。意味は「私」だが、つまりは一人称単数のこと。日本語は私、僕、俺、あたし、わたくし、吾輩、うち、など外国人泣かせの一人称を持つが、中国語ではウォだけ覚えればOK。これは劇中で数えきれないぐらい聞こえてくるのですぐに分かるだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 劇場版シティーハンター 天使の涙 』
『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ドキュメンタリー, 日本, 監督:金大偉, 配給会社:TAII Project, 関雲徳Leave a Comment on 『 天空のサマン 』 -編集に難あり-

『 兎たちの暴走 』 -やや竜頭蛇尾-

Posted on 2023年9月16日 by cool-jupiter

兎たちの暴走 60点
2023年9月9日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:リー・ゲンシー ワン・チエン
監督:シェン・ユー

簡易レビュー。

 

あらすじ

シュイ・チン(リー・ゲンシー)は父と継母、弟と暮らしているが、家に居場所がない。また学校でも本当の友達はいなかった。しかし、ある時、自分を生んですぐに行方をくらませた母チュー・ティン(ワン・チエン)が16年ぶりに帰ってきた。過去のわだかまりをなくしたシュイ・チンは、母に居場所を求めていく。しかし、母にはとある秘密があって・・・

ポジティブ・サイド

高校の校舎および雰囲気が中国映画『 少年の君 』や韓国映画『 不思議の国の数学者 』のそれとよく似ている。学校=一種の監獄という構図が見て取れる。家にも学校にも、本当の居場所がないというシュイ・チンの境遇が映像だけで伝わってきた。

 

元々存在しなかった母親と親子というよりも友情に近い関係性を求めてしまうのもむべなるかな。その過程がアメリカ映画『 レディ・バード 』と対照的で面白かった。

 

色々と荒い面はあるが、主要キャラクターの感情や思考が言葉ではなく振る舞いで表されている。たった一組の母と娘の関係性を描きながら、中国社会の暗い位相が浮き彫りにした手腕は見事。

ネガティブ・サイド

ぴょんぴょんと元気に跳ね回る兎たちが、最後の最後に大暴走・・・なのだが、結末がなんとも尻すぼみ。終わりよければ全て良しと言うが、逆に言えば終わり悪ければ全て悪しになる。邦画『 MOTHER マザー 』のエンディングにも個人的には不満だったが、母たるチュー・ティンがもっと自己犠牲の精神を見せるか、あるいはさらなる暴走をして・・・と、もう一つ先の段階まで踏み込んでエンディングに繋げられなかったか。

総評

中国版の逆『 レディ・バード 』になりきれなかった作品。それでも母と娘の歪な関係の描写に、地域社会や現代中国の閉鎖性が垣間見えてくる。それにしても主役のリー・ゲンシーは良い役者だ。『 少年の君 』のチョウ・ドンユィにも驚かされたが、中国はルックスではなく演技力や監督の演出をそのまま体現できる表現力で役者が選ばれているようだ。粗削りだが、キラリと光るところもある作品。シェン・ユー監督の名前は憶えておきたい。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

元

ユアンと発音する。言わずと知れた中国の通貨単位。劇中で何度か200万元が話題になるが、何と言っているのか聞き取れなかった。2は多分、アールのはず。元はユアンとはっきり聞こえた。リスニングは難しい。が、語学学習は兎にも角にもリスニングから。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』
『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, リー・ゲンシー, ワン・チエン, 中国, 監督:シェン・ユー, 配給会社:アップリンクLeave a Comment on 『 兎たちの暴走 』 -やや竜頭蛇尾-

『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

Posted on 2023年9月11日 by cool-jupiter

あしたの少女 70点
2023年9月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・シウン ペ・ドゥナ
監督:チョン・ジュリ

簡易レビュー。

 

あらすじ

高校生のソヒ(キム・シウン)は大手ISPの下請けコールセンターで実習生として働き始める。ソヒはオペレーターとしてストレスフルな仕事を何とかこなしていた。しかし、厳しくも優しかった男性上司が会社の駐車場で自殺したことを知ったソヒは、徐々に精神的に摩耗していき・・・

 

ポジティブ・サイド

キム・シウンがいかにも韓国女子高生という気の強い役を見事に演じている。好きなダンスに真摯に打ち込む姿勢、友達との友情とその友情に徐々に入っていく亀裂、そして徐々に自分を失っていく様など、どれもリアリズムたっぷりに演じていた。こういう役者を抜擢して、妥協のない演出を施すあたりが韓国映画界らしい。邦画はいつになったら追いつけるのか。

 

実習生と聞けば、日本でも技能実習制度を思い起こさずにはいられない。ほっこりするエピソードが報じられることもあるが、過労死が疑われるケースや雇用側の暴力、被用者の逃亡など、ネガティブなニュースの方が圧倒的に多い気がする。それは隣国でも同じらしい。

 

後半はソヒの死を捜査する刑事オ・ユジンが主役となる。もっとも観ている側はソヒがどのように追い詰められていったのかをつぶさに見ているわけで、捜査で何の真実が明らかになるのかと思う。そこが本作の味噌で、学校や企業、役所、果ては家庭に至るまで無責任の構造が浸透していたことが明らかになる。これはショッキングだ。しかも、ユジンとソヒの意外な接点も明らかになり、刑事としてのユジンではなく一個人としてユジンも、ソヒの死に激しく揺さぶられることになる。

 

前半と後半の実質的な二部構成と、それぞれの主役である二人の女優の演技に圧倒される。そして物語そのものがもたらす苦みを忘れることは難しい。

 

ネガティブ・サイド

全体的にやや冗長な印象。ソヒのパートを70分、ユジンのパートを50分の合計120分にできなかっただろうか。

 

ソヒの父ちゃんがなんとなく『 焼肉ドラゴン 』のキム・サンホ的で、なんだかなあ・・・ もう少しちゃんと子どものことを見ようぜ、と思わされた。

 

ソヒの親友、ボーイフレンド、別の男の先輩との関係をもう少し丹念に描いてくれていれば、ソヒが特殊な境遇の女の子ではなく、どこにでもいる普通の高校生であるという事実がもっと強調されたと思われる。

 

総評

重厚な映画。『 トガニ 幼き瞳の告発 』のような後味の悪さというか、社会全般への怒りと無力感の両方が強く感じられる。ヘル・コリアなどと揶揄されることが多い韓国だが、日本社会も似たようなもの。韓国映画界は社会の暗部をさらけ出す映画を製作することを恐れないが、日本はどうか。『 福田村事件 』のような気骨のある作品を今後生み出せるだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。韓国映画やドラマではよく聞こえてくる。ソンベニム=先輩様という使われ方もあるらしい。「先輩」という概念はあっても、それが実際に言葉として存在するのは日本と韓国ぐらいではないだろうか。中国映画もある程度渉猟して中国語ではどうなのか、いつか調べてみたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 兎たちの暴走 』
『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・シウン, サスペンス, ヒューマンドラマ, ペ・ドゥナ, 監督:チョン・ジュリ, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

『 福田村事件 』 -100年前と思うなかれ-

Posted on 2023年9月9日 by cool-jupiter

福田村事件 80点
2023年9月2日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:井浦新 田中麗奈 永山瑛太
監督:森達也

大学後期の開講直前につき簡易レビュー。

 

あらすじ

1923年、智一(井浦新)は朝鮮半島から故郷の福田村に妻の静子(田中麗奈)とともに帰ってくる。一方、讃岐から来ていた沼部新助(永山瑛太)率いる行商団15名は、薬売りをしながら千葉へと向かっていた。やがて関東大震災が発生。一帯は混乱に陥り、朝鮮人が攻めてくるとの噂が飛び交い、人々は疑心暗鬼に陥り・・・

ポジティブ・サイド

本作について、なにかをクドクドと言う必要はない。2020年に自分のFacebookで以下のように投稿したことがある。

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米ウィスコンシン州の警察官による黒人銃撃事件を報じるYahoo Japanニュースのコメント欄が恐ろしいことになっている。「銃を取りに行っているように思われても仕方がない」「黒人は元々犯罪率が高い」「白人でも普通に撃たれる案件」「警察の制止を無視する方が悪い」等々。世論を何らかの方向に誘導したい勢力に雇われているのか、それとも本気でそう思っている人間が一定数存在しているのか。すべてがステレオタイプにまみれた意見で、ジェイコブ・ブレイクという個人がどんな人間だったかということに全く関心がないらしい。

いくら銃社会のアメリカでも、『無抵抗』で『丸腰の人間』を『後ろから』、『7発』撃つ理由は見当たらないだろう。相手を無力化させるのではなく殺すことが目的の行動としか解釈できない。

黒人が殺された、ではなく、無抵抗の人間が殺された、ということに恐怖を感じる人間が、日本ではマイノリティであるらしい。そのことに戦慄させられる。「なんでもかんでも人種差別に結び付けるな」というエクストリーム意見もあるようだが、そういう人間の頭をカチ割って中身を見てみたい。人種差別云々ではなく、人を人とも思ってない所業が繰り返されてることに何か感じひんのかなあ・・・ 人種差別ではなく人間差別になってるとは思わんのかな・・・ アメリカのこの手の問題の根っこはracismではなくdehumanizationになりつつあると感じる。

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これが本作の問題提起そのもの。なんでもかんでもアメリカに追従する日本だが、実は人間差別という点ではアメリカに先んじていたのかもしれない。そこから日本人は進歩したと言えるのか。本作が問うのはそこである。

 

ネガティブ・サイド

東出の間男っぷりが現実とリンクしているのは一種のブラックジョークなのだろうか。当時の風俗習慣を垣間見る上では興味深いのだが、虐殺とそこに至るまでの社会的な混乱を描く上では不必要な要素に思えた。東出絡みのシーンはすべてカットして、120分ちょうどに収めてほしかった。

 

総評

Jovianも〇万円をクラファンに投じた作品が満を持して公開。実はクレジットにも名前が出ている。なぜ今、100年前の話なのか?と問うなかれ。これは現代の物語である。現代日本が持つことができずにいる多様性、その原因の根っこが本作で明らかにされている。日本人とそれ以外の人間に分けて考えるという二項対立的な思考がそれだ。それを一気に打ち砕く新助の言葉と、そこから始まる虐殺シーンの凄惨さは近年の邦画の中でも出色の出来。『 主戦場 』に並ぶ傑作。今という時代に本作を製作・公開した森達也監督の炯眼に満腔の敬意を表したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

vigilante

2017年にシネ・リーブル梅田にて『 ビジランテ 』というタイトルの映画が上映されていた。意味は「自警団」である。form a vigilante = 自警団を組む・組織する、のように使う。ただ、自警団は往々にして組むこと自体が違法もしくは非合法であることを忘れてはならない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴァチカンのエクソシスト 』
『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, スリラー, 井浦新, 日本, 歴史, 永山瑛太, 田中麗奈, 監督:森達也, 配給会社:太秦Leave a Comment on 『 福田村事件 』 -100年前と思うなかれ-

『 MEG ザ・モンスターズ2 』 -J・ステイサム大暴れ-

Posted on 2023年9月4日 by cool-jupiter

MEG ザ・モンスターズ2 40点
2023年9月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェイソン・ステイサム ウー・ジン ソフィア・ツァイ
監督:ベン・ウィートリー

『 MEG ザ・モンスター 』の続編。もはやサメ映画ではなく低俗B級怪獣映画。いや、ステイサム映画と言った方がいいかもしれない。

 

あらすじ

ジョナス・テイラー(ジェイソン・ステイサム)は、海洋探査研究所マナ・ワンで、子どものメガロドンが飼育されていることを知る。ジョナスはジウミン(ウー・ジン)たちと共にさらなる深海探査に繰り出すが、海上にはテロリストの影が迫っていた。そして、深海にはメガロドン以外の脅威も・・・

ポジティブ・サイド

ホラー映画は、恐怖の正体をなかなか見せないのが常道だが、本作は続編。したがって巨大鮫メガロドンを出し惜しみする必要はなし。実際に冒頭からメグが登場する(飼育されている個体だが)し、深海探査に行くまでの展開もスムーズ。そして潜った先にはやはりメグ。お約束をしっかりと守ってくれる。深海にはメグ以上の恐怖の存在である水圧が存在しており、『 リバイアサン 』冒頭でキャラクター達が軽口で言っていた「水圧でペチャンコにされるぞ」が本作では実現。これには不謹慎ながら、劇場で思わずガッツポーズしそうになった。

 

ある意味で『 ミッション・インポッシブル 』におけるトム・クルーズのように、ジェイソン・ステイサムが好き勝手に暴れ回る。前作ではそこにラブロマンスの要素を加えてきたが、今作はバディを投入。ウージン演じるジウミンが、時にコミック・リリーフに、時にヒーローにと大活躍。チャイウッド映画などと揶揄する向きも散見される本シリーズだが、ジウミンは文句なしに愛すべきキャラ。まさかの第三作製作の暁には、クリフ・カーティスと共に続投は決定的だろう。

ネガティブ・サイド

メガロドンがティラノをガブリというのは、確か原作小説にあった描写のはず。ただ、浅瀬に入ってきた恐竜をパクっと行ったのであって、シャチのように思いっきり海岸の上にまで来ることはなかった。サメなのにサメらしくないふるまいを見せるのはいかがなものか。

 

元々は超巨大鮫の恐怖とそれを倒す爽快感を描くはずだったが、海はやはりだだっ広すぎて、巨大鮫のインパクトが薄れてしまう。なので浅瀬に連れてきて、その巨体と獰猛さを存分に見せつけるべきだが、それは前作でやってしまった。なので、今作はなぜか恐竜とタコを連れてきたが、これは大失敗。水棲生活を何千万年もやってきた恐竜が地上でも活動できるのは信じがたい。いきなり紫外線ガンガンの地上に出てきて、エラ以外で呼吸して、なおかつ地上の気圧にも完全に適応するのは不可能だろう。出すのはサメだけでいい。タコは『 キングコング 』へのオマージュだったのだろうか。メガロドンがタコをガブリというのも極めて非現実的。

 

モンスターだけでもお腹いっぱいなのに、味方の裏切りにテロリストと、本作は軸をどこに定めているのか分からない点が大いにマイナス。正直、ジウミン以外の味方は全員死んでも良かったのでは?とすら感じた。その方がメグやその他の怪物たちとの対決の機運も盛り上がるし、ホラーの要素も強まる。

 

個人的に最も疑問に感じたのは、飼育されていて脱出したメグ。そもそも何故逃げられるような構造の水槽(にしては馬鹿でかいが・・・)に入れてしまうのか。「来い」と「行け」を教えてたとして、それだと水族館の魚ショーと何が違うのか、どうせ続編ではこの個体とまた別のメグがつがいになって、生態系を荒らしまくって、しかし仲違いして、互いに噛みつき合って・・・のような展開になるのだろう。続編製作の種をあらかじめ仕込む作り方ではなく、一作で完結する面白さを映画業界は追求してほしい。

 

総評

まあ、夏恒例のクソホラーならぬクソ鮫映画である。サメ映画というよりもジェイソン・ステイサム映画と言うべきか。ジェイソン・ステイサムが『 アクアマン 』ばりに海で大活躍して巨大鮫を倒していく、というプロットを「面白そう!」と感じるか、「んなアホな・・・」と感じるかは人それぞれ。前者ならチケットを買えばいいし、後者なら静かにスルーすべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

God knows why.

理由は神のみぞ知る、の意味。劇中では People just love him. God knows why. = あいつは人に好かれるね、あんな顔なのに。のように訳されていたように思う。日常で意味が分からないという事象に対して、サラっと使えれば英検1級だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 福田村事件 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』
『 アステロイド・シティ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, ウー・ジン, ジェイソン・ステイサム, ソフィア・ツァイ, 監督:ベン・ウィートリー, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 MEG ザ・モンスターズ2 』 -J・ステイサム大暴れ-

『 神回 』 -男の習性を捉えた逸品-

Posted on 2023年9月1日 by cool-jupiter

神回 75点
2023年8月27日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:青木柚 坂ノ上茜
監督:中村貴一朗

 

『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』、『 リバー、流れないでよ 』に続く邦画のタイムループもの。本作もなかなかの秀作だった。

あらすじ

沖芝樹(青木柚)と加藤恵那(坂ノ上茜)は夏休みの教室で文化祭の出し物についての打ち合わせを始める。しかし樹は突如意識を失ってしまう。気が付くと目の前には恵那の姿。そして彼女は打ち合わせを始める前と寸分たがわぬ言動を見せる。樹はまたも意識を失い、気が付くと時が打ち合わせ直前に戻っていた。このタイムループを抜け出すために樹はあらゆる手段を講じるが・・・

以下、多少のネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

 

鑑賞直後、Jovian妻は「何これ、キモイ」という端的にも程がある感想を述べてくれた。その通り、本作はキモイ。グロ描写やゴア描写がドギツイわけではない(流血や暴力シーンはほんのちょっとある)。男の子側にも女の子側に性的な描写があるが、はっきり映ったり、あるいは思いっきり触っていたりするわけではないので、そこは安心してほしい。

ここでいうキモさとはずばり、男のとある習性のこと。

 

『 アンダー・ユア・ベッド 』

『 レミニセンス 』

 

このあたりの作品に

 

世にも奇妙な物語の『 バーチャル・リアリティ 』

 

のプロットを足して、それを青春映画っぽく仕立て上げたのが本作だ。というとずいぶんと安っぽく聞こえてしまうが、実際はさにあらず。まず本作は青春映画ではない。ジャンル分けするのは難しいが、敢えて言えばファンタジーだろうか。

 

主役の樹は『 よだかの片想い 』でアイコのゼミ仲間や『 終末の探偵 』のボランティア少年などで印象的だった青木柚。まったく特徴のない顔つきながら、出演作では必ず一定以上のインパクトを残している。故障したテレビを買い替えたら、彼のその他の出演作もチェックしてみたい。

 

ヒロインの恵那を演じた坂ノ上茜は『 きみの瞳が問いかけている 』の明香里の店のスタッフを演じていた。登場時間は多くなかったが、パッと見た瞬間に「あ、見たことある」と感じさせるぐらいには印象に残っていた。

 

この若い二人の織り成す無限にも思えるタイムループものが、何故に青春映画ではないのか。それは、女性が率直にキモイと感じてしまう男の習性によるものだ。ある程度年齢のいった男性(10代や20代はダメ、できれば不惑過ぎ)なら、分かるはず。『 僕の好きな女の子 』を楽しめた、あるいは某魔法使いシリーズの某キャラに激しく共感できるようならさらに良し。

ネガティブ・サイド

一番最初のショットは不要。学校の校門をくぐる描写すら不要だったかも。

 

最後、何故に教室は暗くなった?

 

謎解きパートというか、ネタ晴らしパートはもっと短くていい。全体を75分から80分でまとめられれば、それこそ神映画になれたかもしれない。

総評

男のアホな習性だけで一つの物語として成立させた力業はたいしたもの。男には忘れられない夜や忘れられない瞬間、忘れられない匂いや感触というものがある。Jovian妻を含め、女性全般はそれをキモイと感じるわけだが、それが男の性(さが)なのだからしゃーない。むしろ男の内面のダークサイドや鬱ルートを真っ向から描写し、ハッピーエンドを潔く否定した中村貴一朗監督の作劇術に満腔の敬意を表したいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You with me?

劇中で何度も何度も聞こえてくる「聞いてる?」の私訳。会話ではこうした時、Are you listening to me? とは普通は言わずに、Are you with me? または You with me? と言う。『 トップガン マーヴェリック 』でも、出撃前に一瞬上の空になっていたマーヴェリックに向かってホンドーが “Hey, you with me?” と言っていた。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

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『 MEG ザ・モンスターズ2 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ファンタジー, ラブロマンス, 坂ノ上茜, 日本, 監督:中村貴一朗, 配給:東映ビデオ, 青木柚Leave a Comment on 『 神回 』 -男の習性を捉えた逸品-

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