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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 きみの瞳が問いかけている 』 -オリジナル超え、ならず-

Posted on 2020年10月29日2022年9月16日 by cool-jupiter

きみの瞳が問いかけている 65点
2020年10月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:横浜流星 吉高由里子
監督:三木孝浩

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201029234121j:plain
 

『 ただ君だけ 』の日本版リメイク。かなり原作に忠実に作りこまれているが、余計な演出になってしまっているところが数か所あったのが残念である。

 

あらすじ

不慮の事故で失明した明香里(吉高由里子)と過去の過ちからアルバイトで日々を食いつなぐだけの塁(横浜流星)は、ふとしたことから出会い、距離を縮めていく。しかし、明香里の失明は塁の過去に原因があり・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201029234216j:plain
 

ポジティブ・サイド

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』や『 坂道のアポロン 』で印象的な光と影の使い方を見せた三木孝浩監督は、本作でも光を巧みに操った。邦画の夜のシーンは不自然なほどに明るいことが多いが、本作の夜の場面はそれを感じさせないし、本作の昼の場面は陽光を画面いっぱいに映し出す。原作の前半は暗、後半は明というコントラストにはこだわらず、各シーンで監督の持ち味が上手く発揮されていた。光だけでこれほど映える絵を撮れる人はそう多くない。

 

横浜流星も空手のバックグラウンドを活かして、見事なキックボクシングシーンを披露した。特に復帰二戦目のフィニッシュシーン、右ストレートで相手を仕留めた後の返しの左フックまで打っていた(空振りというところがリアルだ)。エンドクレジットで見逃したが、かなり本格的なボクシングの手ほどきを受けたのだろう。普段からどれくらい鍛えているのかは想像するしかないが、まさに鋼と呼べる肉体美も披露。これは女性客を呼べる。間違いない。山下智久の矢吹ジョーは正直イマイチだったが、横浜流星をジョーにしてリメイクできないものか。バンタム級やフェザー級に見えない?それは山下もそうだったでしょ?

 

閑話休題。吉高由里子の視覚障がい者の演技も良かった。決して合わない目線は基本であるが、聴覚だけではなく嗅覚も敏感であるところがなんともユーモラス。原作通りにデート前に浮き浮きするところや、「一人では行けない」という店をチョイスするところが何とも微笑ましい。障がい者をことさらに障がい者扱いしていないところに、今というタイミングで日本でリメイクする意味があるのだと感じた。少々脱線するが、Jovianは縁あって、大学で英語を教えている。もちろん、このご時世なのでオンライン授業である。視覚障がいや聴覚障がいの学生もいるのだが、彼ら彼女らはAcrobat Readerの読み上げ機能や、Google Meetの字幕オン機能やリアルタイム翻訳は、障がいを障がいでなくしている。原作でも本作でも、ヒロインが仕事をしている様は大いに輝いて見える。もちろん、ちょっと間の抜けたシーンのおかげで人間らしさが色濃く出ている。何をどうやれば排水溝にパンティが詰まるのかは大いなる謎だが、ハン・ヒョジュのように上着を脱がなかった代わりに、下着を見せてくれたのだと理解しようではないか。

 

二人が不器用に育んでいく恋の描写も、原作にかなり忠実で丁寧だ。二人でどこかに出かける約束をした帰り道の塁の「ひゃっほう!」感も微笑ましいし、美容室で髪を手入れする明香里もまた微笑ましい。原作同様に視覚障がい者に対して、思いがけずきつい言葉を浴びせてしまうシーンには少々こたえるものがあるが、それも塁の過去の因果によるものだと思えば納得できるし、横浜流星はそうした影のある男を上手く描出できていた。格闘家から地下世界のバウンサー的な存在に落ちてしまった男が、さりげなく明香里の部屋をバリアフリー化しているところもポイントが高い。壊すだけではなく直せる男でもあるのだ。賃貸住宅でそんなことをして大丈夫かと不安になるが、大丈夫だった。ちょっとした工夫が大きな助けになるという物語全体のテーマを表している良いシーンと演出だった。

 

クライマックスで文字通りにすれ違ってしまう二人には、胸がつぶれそうになった。原作とほとんど同じなのに、あらためてそう思えるということは、それだけ芝居のレベルも高く、その他の演出も効果的だったということだろう。特にリメイク要素として追加された“視覚以外の要素”が特に印象的だった。原作を観た人も、横浜流星ファンも、吉高由里子ファンも、かなり満足できるクオリティに仕上がっていると言えるだろう。

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ネガティブ・サイド

横浜流星の格闘シーンには迫真性があったが、顔はそうではなかった。原作のチョンミルの恵まれた体躯と野獣性、武骨な顔つきと低い声。これらがあったればこそ、アジョシ=おじさんという呼称が成立していた。蚊の鳴くような小さな声だったが、それでも塁の声を聞いて、聴覚が人一倍鋭い明香里が直感的に「この声は40代の男性だ」などと思うだろうか。ここにどうしても無理があり、その違和感は中盤までつきまとう。

 

また明香里が塁の顔の良し悪しに言及するたびに、塁がムッとする演出は不要だろう。日本版リメイクは横浜流星のキャスティングによって若い女性客を劇場に呼びたいという意図が見え見えだが、それは現実世界の話。銀幕の中では、塁は顔の美醜を気に掛けるようなキャラではないし、そうしたキャラであるべきでもない。

 

細かい粗というか、オリジナル超えをできていない点もあった。横浜流星がミンチョルではなく『 アジョシ 』のテシクになってしまっている。何故だ。もじゃもじゃ頭を再現しようとしても、こうはならないだろう。浣腸少年を消してしまうのは別に構わないが、だったら塁の心根の優しやを表してくれる代替の存在が必要だろうと思う。明香里の上司の指をへし折るシーンでも、相手の口のふさぎ方を間違えている。あれでは噛みつかれた時に自分がダメージを受けるではないか。オリジナルにあったベッドシーンというか、ハン・ヒョジュが上半身の上着を脱いでチョンミルと抱き合う場面に相当するシーンがなかったのは何故なのか。せっかくの色っぽいシーンではなく「美しいシーン」だったのに、それを再現しようという意気込みが監督になかったのか、それとも吉高サイドがNGを出したのか、まさか編集で削ったのか。納得がいかない。仕事を辞めざるを得なかった明香里に「気晴らしにどこかに連れて行って」と言われて、シリアスな記憶の場所である浜辺に連れて行ってしまう塁のセンスを疑う。原作通りにアミューズメントパークで良いのに。

 

総評

残念ながらオリジナルのクオリティには少々届かない。『 SUNNY 強い気持ち・強い愛 』の広瀬すずが『 サニー 永遠の仲間たち 』のシム・ウンギョンを巧みにコピーしていたように、吉高由里子はハン・ヒョジュをかなり巧みにコピーできていた。しかし、横浜流星のビジュアルおよび声質がダメである。ただ、オリジナルを意識しなければそれなりに良い出来に仕上がっている。本作だけを見ても、十分にロマンス要素および悲恋の要素も堪能できる。『 見えない目撃者 』ほどのリメイク大成功とは言わないまでも、まずまずのリメイク成功例と言えるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be on a crutch / on crutches

松葉杖をついている、の意。単数か複数かは使っている松葉杖の数で使い分けるべし。今後は車椅子だけではなく松葉杖にも優しい環境作りが求められるものと思う。駅へのエレベーターの設置などはかなり進んだが、今後は自動改札の幅を少し広くしたり、電車とプラットフォームの間の隙間をさらに小さくするような工夫が必要だと思われる。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ラブロマンス, 吉高由里子, 日本, 横浜流星, 監督:三木孝浩, 配給会社:ギャガ

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