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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2022年5月

『 女子高生に殺されたい 』 - もっと設定を研ぎ澄ませれば更に良し-

Posted on 2022年5月7日 by cool-jupiter

女子高生に殺されたい 65点
2022年5月5日 梅田ブルク7にて鑑賞

出演:田中圭 南沙良 河合優実 細田佳央太
監督:城定秀夫

タイトルだけでスルーしようとしていたが、『 志乃ちゃんは自分の名前が言えない 』の南沙良が出演していると気付いて、ギリギリでチケット購入。上映最終日であっても、劇場の入りは4割程度となかなかだった。

 

あらすじ

教師の欠員が出た二鷹高校に赴任してきた東山春人(田中圭)は、そのルックスと人当たりの良さでたちまち人気教師となる。しかし、彼には秘密があった。目をつけていた女子高生、佐々木真帆(南沙良)に殺されたいというオートアサシノフィリアの持ち主だった。春とは密かに練っていた計画を進めようとするが・・・

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

タイトルだけ読めば「どこのアホの妄想だ?」と思わされるが、中身はどうしてなかなか練られていた。シネフィル=映画好きな人、シネフィリア=映画好きということだが、オートアサシノフィリアというのは初めて聞いた。ありそうだと感じたし、実際に存在するようだ。この一見突飛な性癖(この語も、ここ10~20年で意味が変わってきたように思う)に説得力を持たせる背景にも現実味がある。田中圭は『 哀愁しんでれら 』あたりから少しずつ芸風を変え始めたようで、もう少し頑張れば中堅からもう一つ上の段階に進めるかもしれない。

 

女子校生役で目についたのは河合優実。『 サマーフィルムにのって 』や『 佐々木、イン、マイマイン 』など、作品ごとにガラリと異なる演技を見せる。今作のキャラにリアリティがあったかどうかはさておき、キャラの迫真性は十分に堪能できた。テレビドラマなどには極力出ずに、映画や舞台で腕を磨き続けてほしい役者だ。

 

南沙良の目の演技も見応えがあった。正統派の美少女キャラよりも、陰のある、あるいは闇を秘めた役を演じるのが似合う。こういう女子高生になら殺されたい。

 

最初は意味不明に思えた春人の行動の数々が中盤以降に一気に形を成していくプロセスは面白かった。高校生ものでゲップが出るくらい見飽きた学園祭をこういう風に使うのには恐れ入った。学園祭の変化球的な使い方の作品といえば恩田陸の小説『 六番目の小夜子 』と赤川次郎の小説『 死者の学園祭 』が印象に残っているが、本作も同様のインパクトを残した。

 

色鮮やかな序盤から陰影の濃くなる終盤の照明のコントラストがキャラクターたちの心情を反映している。またBGMも静謐ながら不穏な空気を醸し出すのに一役買っていた。タイトルで損をしていると思うが、普通に面白い作品。河合優実のファンなら要チェックである。

 

ネガティブ・サイド

本作の肝である「春人は一体誰に殺されたいのか?」という謎の部分がやや弱い。いじめっ子、柔道娘、予知娘、多重人格娘と取り揃えてはいるが、4択ではなく実質的には2択だった。というよりも1択か。最初から2択に絞り込むか、あるいは4択のまま観る側を惑わすような展開にもっと力を入れた方が中盤までのミステリーとサスペンスがもっと盛り上がっただろうと思う。

 

河合優実のキャラの地震予知能力は必要だったか?あの世界には緊急地震速報というものはないのだろうか。というか、予知能力と物語が何一つリンクしていなかった。この設定はそぎ落としてよかった。

 

南沙良のキャラのDIDも、もっとさり気ない演出を要所に仕込めたはず。『 39 刑法第三十九条 』などを参考にすべし。駄作だった『 プラチナデータ 』もそのあたりの伏線はしっかりと張ってあった。殺してほしい相手を南沙良の1択に絞って、ほんのちょっとした仕草や表情などを追い続けた方が物語の一貫性やフェアな伏線が生まれたはず。

 

総評

多重人格の扱いがちょっとアレだが、ストーリー自体はかなり面白い。南沙良、河合優美などの、いわゆるアイドルではなくオーディションを潜り抜けてきた若手女優たちの演技も光っているし、照明や音楽も良い仕事をしている。それらをまとめ上げる城定秀夫監督の手腕は称賛に値する。劇場で見逃してしまった人も、ぜひレンタルや配信で鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

auto

元々はギリシャ語の self に当たる語に由来している。意味は「自身」あるいは「自動」。automobile = 自分で動く = 自動車である。他にも FA = factory automation = 工場稼働の自動化だし、autobiography = 自分で書く伝記 = 自伝である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, 南沙良, 日本, 河合優美, 田中圭, 監督:城定秀夫, 細田佳央太, 配給会社:日活Leave a Comment on 『 女子高生に殺されたい 』 - もっと設定を研ぎ澄ませれば更に良し-

『 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 』 -ドラマの予習を前提にするな-

Posted on 2022年5月5日 by cool-jupiter

ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 45点
2022年5月4日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:ベネディクト・カンバーバッチ エリザベス・オルセン ソーチー・ゴメス
監督:サム・ライミ

 

先月退職した元・同僚カナダ人と共に鑑賞。彼もJovianもイマイチだという感想で一致した。

あらすじ

異世界で魔物から少女を助けようとする夢を見たドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、かつての恋人クリスティーンの結婚式に参列していた。しかし、その最中に夢で見た少女アメリカ(ソーチー・ゴメス)が怪物に襲われているところに遭遇する。辛くも少女を助けたストレンジは、アメリカはマルチバースから来たと知る。助力を必要とするストレンジは、自身と同じく魔法使いであるワンダ(エリザベス・オルセン)を訪ねるが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

ドクター・ストレンジのスティーブンの部分、つまり腕の立つ外科医であり、鼻持ちならない人間の部分がクローズアップされたのは良かった。スーパーヒーローは人間部分とヒーロー部分のせめぎ合いが大きなドラマになるが、それが最も面白いのはスパイダーマン、次いでアイアンマン、その次にドクター・ストレンジだと感じている(ちなみにその次はハルク)。冒頭の結婚式から一挙に魔物とのバトルになだれ込んでいくシークエンスで「ここから先は全部スーパーヒーローのパートですよ」と丁寧に教えてくれるのは配慮があってよろしい。クリスティーンと良い意味で決別できたことで、短いながらもスティーブンの成長物語にもなっていた。

 

これはネガティブと表裏一体なのだが、「え?」というキャラクターが「え?」という役者に演じられて登場する。このシーンは震えた。予告編でも散々フォーカスされていて気になっていたが、この御仁を持ってくるとは。ヒントは『 デッドプール 』。彼が時系列関連で云々言う際にマルチバースっぽい台詞を言う。その時の名前がヒントである。

 

映像は美麗を通り越して、もはや訳が分からないレベル。特に最初のマルチバース行きのシーンはポケモンショックを起こすレベルではないかと思う(一応、褒めているつもり)。魔法のグラフィックや、その他のスーパーヒーローの技のエフェクトも、通り一遍ではあるが、エキサイティングであることは疑いようがない。特に面白かったのは音符さらには楽譜が魔法になるシーン。ある攻撃の強さや衝撃度は1)視覚的に、2)効果音によって示されるが、そこに明確に音楽を乗せてきたのは新しい手法であると感じた。今後、これをマネする作品がちらほら出てくるものと思われる。

 

サム・ライミが監督ということでホラーのテイストが入っているが、良い意味でMCUっぽさを裏切っていて面白かった。MCU作品はスター・ウォーズ以上にプロデューサー連中が強固すぎる世界観を構築していて、そこからの逸脱は一切許されない=監督や脚本家の個性は不要という印象があったが、ディズニー上層部もマルチバース的な寛容の精神を持ち始めたのだろうか。

ネガティブ・サイド

予告編で散々ワンダが出てきたいたので、彼女がヴィランであることは分かる。けれども、テレビドラマの視聴を前提に映画を作るか?これはテレビドラマの劇場版映画ではないはずだが。一緒に観たカナダ人は「電車の中でドラマのrecap動画を観たから何とか意味は分かった」と言っていたが、ドラマには一切触れていないJovianには何のこっちゃ抹茶に紅茶な展開であった。

 

第一の疑問として、何故ワンダに子どもがいる?いや、別に子どもがいてもいいが、なんであんなに成長した子どもがいるの?『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』から10年以上経過したようには思えないが。劇中で「魔法で創った」と説明されるが、だったら何故にもう一度魔法で子どもを創らないのか?まあ、親からすれば子どもは唯一無二なのだろうが、それならそれで別の宇宙の自分から自分の子どもを奪うという結論に至る思考回路が謎となる。

 

第二の違和感はワンダ強すぎということ。インフィニティ・ウォーやエンドゲームでもうすうす感じていたが、ワンダが強すぎる。ワンダとキャプテン・マーベルだけでサノスを十分に倒せたのでは?『 エターナルズ 』の 面々より普通に強いだろう。他の不満点としては、せっかく出てきたファンタスティック・フォーたちがあっさりとやられたり、挙句にはあのキャラまでワンダにねじり殺されてしまう始末。うーむ・・・

 

マルチバース関連で一番よく分からないのは、どこのユニバースでもドクター・ストレンジがベネディクト・カンバーバッチであるということ。『 スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム 』を思い出そう。別のユニバースには別のピーター・パーカーが存在していた。なぜ本作ではカンバーバッチ版のストレンジしか出てこないのか。もちろんスパイダーマンとドクター・ストレンジを同列に扱えるわけはないが、互いにリンクしている作品同士、もう少しこのあたりの説明が必要だったと思う。またアメリカは72のユニバースを巡ったそうだが、そのいずれでもサノスは倒されていたのか?それだけ巡れば、いくつかはサノスによって生命が半滅させられたユニバースに遭遇しそうなものだが。

 

アメリカが語る他のユニバースでの鉄則その1は良いとして、その2の食べ物の部分が良く分からない。それが何か重要な展開につながるわけでもなんでもないからだ。ポストクレジットシーンその2にはつながるが、ここのユーモアは笑えないし、完全に空回りしていた。

 

魔法を使った戦いにはそれなりに満足できたが、ストレンジが華麗な体術を駆使して戦うシーンは個人的には萎えた。浮遊マントがストレンジの体を逆に操って、hand to hand combat で敵を倒す、というのならまだ理解できるのだが。

 

ポストクレジット・シーンその1では、シャーリーズ・セロンが登場。しかし、誰よ、これ?『 エターナルズ 』のラストもそうだが、もはやMCU作品はそれ自体が別作品のインフォマーシャルと化している。映画が映画を宣伝するというのは、好ましくない。もしやるなら『 ワンダーウーマン 1984 』のように、たいていの人が分かるようなキャラを持ってくるべきだ。

 

総評

ぶっちゃけた話、『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』以降、スパイダーマン以外のMCUものは面白くない。ドラマその他の媒体と相互補完させたりするような商法が更に目立つからだ。MCUは元々そのような側面が強かったが、そこがさらに強引になったと感じる。一応、義務感で次作も観るつもりではいるものの、『 モービウス 』もスルーしたし、そろそろこのジャンルから降りてもいいかもしれないと個人的には感じる。映画館自体は大盛況だったので、この路線自体は成功かもしれないが、あまり積極的に勧めたいと思える出来ではなかった。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Try as I might, 

劇中のウォンのセリフの一部。頑張ってはみたものの、の意。ほぼ間違いなく、I couldn’t … が続く。私 = I 以外が主語になることもあるが、I が最もよく使われるように思う。

Try as I might, I couldn’t fix the printer.
頑張ってみたが、プリンターを直せなかった。

などのように使う。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, エリザベス・オルセン, ソーチー・ゴメス, ベネディクト・カンバーバッチ, 監督:サム・ライミ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 』 -ドラマの予習を前提にするな-

『 さがす 』 -邦画サスペンスの良作-

Posted on 2022年5月4日2022年5月4日 by cool-jupiter

さがす 75点
2022年5月1日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:佐藤二朗 伊東蒼 清水尋也
監督:片山慎三

 

テアトル梅田で見逃した作品。地元の塚口サンサン劇場で遅れて上映していたので、これ幸いとチケット購入。邦画もまだまだ捨てたものではない、と感じさせてくれた。

あらすじ

大阪市西成区に暮らす原田楓(伊東蒼)の父、智(佐藤二朗)が突如失踪した。智は前日に報奨金300万円で指名手配中の連続殺人犯を偶然見かけたと言い残していた。警察も取り合ってくれない中、楓は父の働く日雇いの工事現場を訪れる。そこには原田智という名前の全く別人が働いていた。しかし、その男は智が目撃したと言っていた指名手配犯に酷似しており・・・

ポジティブ・サイド

舞台が大阪、それも新今宮=西成区なので、コテコテの大阪を通り越して、時代に取り残された大阪が活写されている。尼崎出身、尼崎在住のJovianには非常に親近感のある風景である。単に下町が舞台だからではなく、地べたを這いずり回って生きる人間の姿がしっかりと見えた。邦画だと『 万引き家族 』以来の描写であるように思う。

 

佐藤二朗と伊東蒼の親子がリアリティを生んでいる。特に佐藤二朗はダメな大人を見事に体現している。20円が足りずに万引きしようとし、そこへ娘が駆け込んでくる冒頭のシーン、さらに路上でクッチャクッチャと音を立てながら食べる父親、それを注意しながらも、家に帰れば互いに気の置けない親子であることを映し出す。外で見える風景と中から見る風景のコントラストが鮮やかである。

 

万引きの場面では警察官がスーパーの店長に示談を勧める。元大阪府警のJovian義父が憤慨するであろうシーンだが、大阪府警=無能という印象を一発で観る側に与える非常に効果的な演出である。これがあるおかげでその後の様々な警察絡みの展開に無理がなくなっている。

 

父を必死に探す楓を伊東蒼が熱演。『 空白 』でトラックにはねられる万引き娘や『 ギャングース 』の家なき子の印象が残っているが、本作の熱演はそれらの印象をすべて上書きするもの。まさに西成のじゃりン子で、身寄りのない子を引き取るシスターの顔面に唾を吐きかけるわ、街中で先生に相手に大声で悪態をつくわと、周りの大人の協力を自ら遠ざける。しかし、一方で日雇い外国人労働者とはじっくり話ができるなど、他者や大人をすべて拒絶しているのではなく、同病相憐れむ的な価値観で動いていることが分かる。このあたりは日本の現実、就中、大阪という都市の闇も垣間見せていて興味深い。

 

単純に姿を消した父親を娘が探し出そうとする物語と見せかけてさにあらず。スクリーンに「3か月前」と表示されたところから、一気に物語の背景が明かされ始める。そこで明らかになる真実に関しても、序盤のうちにフェアな伏線が張られているので、納得しながら受け入れることができる。この脚本は上手いと感じた。

 

疑惑の殺人鬼役を清水尋也が怪演。『 ミスミソウ 』でも存在感を発揮していたが、日本の俳優で異常者を正面から演じられる若手俳優は少ない。『 キャラクター 』のFukaseや『 ミュージアム 』の妻夫木聡が印象に残っているが、清水は韓国のクライム・サスペンスなどに出ても爪痕を残せるのではないかと感じた。『 殺人の追憶 』を日本でリメイクするとしたら、柔らかい手の青年は清水尋也で決まりだろう。

 

近年話題になったSNSの闇や、人間の生と死についての非常に現実的な問題提起もなされている。『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』や『 いのちの停車場 』などが有耶無耶にしてしまった命の尊厳について逆説的な形で切り込んでいった野心作。かなり血生臭いが、ぜひ多くの人に鑑賞いただきたい一作である。

ネガティブ・サイド

伊東蒼はさすがの大阪弁ネイティブだが、佐藤二朗の大阪弁はイマイチだった。じゃりン子チエ役の中山千夏レベルとまでは言わないが、それぐらいにまでは仕上げてほしかった。佐藤の芸歴なら出来るはずだし、片山監督もそこまで演出してもよかった。

 

楓のボーイフレンドが終始役立たずだった。この男が活躍する、そしてあっさり撃退されるシーンや、あるいは楓の父・悟に正面からぶつかっていくような展開があれば、もっとドラマが盛り上がっただろうと思う。

 

総評

佐藤二朗というと福田雄一作品の常連だが、ハッキリ言ってJovianは福田はあまり好きではない。『 HK 変態仮面 』は面白かったが『 ヲタクに恋は難しい 』あたりで絶望して『 新解釈・三國志 』は観ても腹が立つだけだろうと思い、回避した。佐藤二朗もNHKの『 歴史探偵 』の所長っぷりがチャラけていて好きではなかったが、良い脚本および良い演出に巡り合えば、こんなにも違う顔を見せるのかと感心させられた。老老介護の悲劇やSNSを通じた集団自殺・殺人など、命について考える機会が否応なく増える日本社会において、本作の放つメッセージは決して軽くはない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Not a chance

劇中であるキャラが言う「んなわけねーだろ」の私訳。Not a chance = そんな可能性はない、という意味で、質問に対する答えとして使われる。

A: Do you think I’ll get a job offer from them?
あの会社から内定もらえるかな?

B: Not a chance.
まあ、無理だろ。

というのが用例である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 伊東蒼, 佐藤二朗, 日本, 清水尋也, 監督:片山慎三, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 さがす 』 -邦画サスペンスの良作-

『 3022 』 -もっと見せ方に工夫が必要-

Posted on 2022年5月1日2022年5月1日 by cool-jupiter

3022 40点
2022年4月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:オマー・エップス ケイト・ウォルシュ
監督:ジョン・スーツ

観終わって気が付いた。監督は何と『 アンチ・ライフ 』のジョン・スーツではないか。とはいえ、さすがに『 アンチ・ライフ 』のような超絶駄作ではなかった。

 

あらすじ

木星の衛星エウロパへの入植のために、宇宙ステーション「パンゲア」が設立された。各国クルーが10年単位で運用を担当するが、米国人クルーたちは次第に疎遠になり、精神的に病み始めた。医師がミッションの失敗を地球に伝えようとした時、地球との通信が途絶える。そしてパンゲアは謎の衝撃波に襲われ・・・

 

ポジティブ・サイド

シンボリズムに溢れた作品である。今でも小中学校の教科書に載っているのだろうか。パンゲアとは過去の地球に存在した一つの超大陸のこと。つまり宇宙ステーション「パンゲア」は今日様々な大陸に分断されてしまった人類を再び一つにする場所ということ。だが、悲しいかな、人が集まると分断が生じるのが世の常。本作の展開はそのことをよく表していると思う。

 

地球消滅(別にネタバレでも何でもない)の後、宇宙に残された数少ない人類がどう振る舞うのかという思考実験をそのまま映像化(≠映画化)した感じで、そういう意味では雰囲気はよく出ている。命令を出せる者、命令が出せない者、命令がないと動けない者、命令がなくても動いてしまう者など、人間というのは極限状況でも日常でもあまり変わり映えしないのだろう。人間模様にはそれなりに説得力が感じられた。

 

パンゲアの船長のジョンのヒゲの有無によって、映し出されているのがいつの時点なのかを見せるのは面白いと感じた。過去と現在、そして未来を行き来する映像体験はそれなりに楽しめる。

 

ネガティブ・サイド

『 ラスト・サンライズ 』では太陽が消滅し、残された中国人社会の大混乱ぶりが活写された。本作はパンゲアという宇宙ステーションのみで話が進み、出てくるのも結局欧米人のみ。自分たちだけが覇権を握りたい中国と、欧米(今風に言えばNATOか)の枠組みで世界を牛耳りたいアメリカがよくよく対比されている。どっちもダメである。だいたい最終目的地がエウロパというのが、うーむ・・・ 結局ヨーロッパに回帰するのね。『 オブリビオン 』はタイタンを目指していたが。

 

低予算のために絵や音楽で魅せられないのは分かるが、そこを何とかするのが創意工夫というものだろう。結構な勢いで喋りまくるが、予算的に『 ロード・オブ・モンスターズ 』と同程度なのか?さすがにそこまでではないだろう。

 

人間模様はそれなりに迫真性があったが、それを効果的に映し出せていない。カメラワークや効果音などで、場の閉塞感や緊張感を演出することはできたはずだが、それも無し。ここは予算が少ないせいにはできない。同じ低予算映画でも『 CUBE 』にはそれが出来ていた。『 ドント・ルック・アップ 』とまでは言わずとも、『 エンド・オブ・ザ・ワールド 』程度には人間ドラマを深めることができたのではと思う。

 

最も意味不明なのは3022というタイトル。いや、日数のことなのだとは劇中で言及されているが、そこに何か深い意味はないのか?自分が読み取れないだけ?別に2971でも3412でも良い?あれこれ考えながら観るのには向かないか。

 

総評

積極的にお勧めできる作品ではない。梅雨時に面白耐性を意図的に下げたい時には良いのではないだろうか。あるいは『 アド・アストラ 』が面白かったという人なら、本作も堪能できるかもしれないが、万人向きではないことだけは確かである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

night terrors

夜驚症の意。睡眠中に暴れるなど、睡眠障害が極度に悪化した症状を呈する。夜恐症ではなく夜驚症と書かれるので注意。lost in translation か、あるいは「夜そのものを怖がる病気」と勘違いされないようにするための漢字だと考えられる。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アメリカ, オマー・エップス, ケイト・ウォルシュ, 監督:ジョン・スーツLeave a Comment on 『 3022 』 -もっと見せ方に工夫が必要-

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