破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン
チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。
あらすじ
巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・
以下、ネタバレあり
ポジティブ・サイド
『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。
「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。
改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。
日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。
ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。
ネガティブ・サイド
ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。
日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。
まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。
総評
土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。
Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン
トッケビ
超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。
次に劇場鑑賞したい映画
『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』
『 オアシス 』