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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:アスミック・エース

『 ちひろさん 』 -人の輪の中で孤独に生きる強さ-

Posted on 2025年2月9日 by cool-jupiter

ちひろさん 75点
2025年2月8日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:有村架純
監督:今泉力哉

 

劇場公開時に観られなかった作品。これも近所のTSUTAYAで借りてきた。

あらすじ

元風俗嬢のちひろ(有村架純)は港町のお弁当屋さんで働いていた。自らの前職について特に隠すこともないちひろ目当てに、弁当屋には大勢の客がやって来ていた。そんなちひろは、客だけではなく寄る辺を持たない小学生や高校生、ホームレスとも親しく交流していき・・・

 

ポジティブ・サイド

野良猫と無邪気にじゃれ合ったり、弁当屋の常連客と談笑したりと、とても無邪気なちひろさん。しかし風俗嬢としての過去も特に隠しておらず、良い意味でも悪い意味でも周囲の耳目を集めている。そんなちひろを有村架純が好演。様々なドラマを生み出していく。

 

駄々っ子の小学生や、ストーカー気質の女子高生などと奇妙な形で縁を深めつつ、思いつめた男性客や元店長との再会など、ちひろの過去も深掘りされていく。ちひろは誰に対してもオープンでフラットな人当たりを見せるが、ところどころで闇を秘めた目つきも見せる。特に母親に関する電話と、海辺の砂を掘るシーンでは心底ゾッとさせられた。この一瞬を切り取ったカメラマンの手腕よ。また名言も明示もされないが、おそらくちひろは前科者。推測できる裏のストーリーとしては『 オアシス 』のようなものだろうか。

 

表のストーリーは『 町田くんの世界 』や山本弘の小説『 詩羽のいる街 』が近い。ちひろさんを中心につながっていく人の輪。その中心にちひろさんがいる。本作がユニークなのは、ちひろさんがつなげた輪に・・・おっと、これ以上は重大なネタバレか。ただ、セックスワーカーは性サービスの提供以上にカウンセラー的な役割を担っているという面が出されていたのには首肯させられた。

 

ふと調べてみたが、日本のセックスワーカーは推計で30万人。日本の人口を1億2千万人と丸めれば、女性は6000万人。20歳から29歳の人口は約700万人。セックスワーカーの人口ボリュームにもう少し幅を持たせれば母数は約1000万人か。雑な計算だが、100人中3人は風俗産業の従事者となる。ちひろさんは身近な存在とは言わないまでも、珍しい存在ではない。人と人とが触れ合う時に大切なのは肩書きではなく人間性。頭ではわかっていても実践するのは本当に難しい。

 

ネガティブ・サイド

エンディングに少し納得がいかない。ちひろのその後を描くんはよいが、もっともっとその後、極端に言えば40代、50代になったちひろを映し出してほしかった。ちひろが本当の意味で救われるのは、孤独と共に生きられるようになることではなく、孤独と共に生きられるようになる誰かを見つける、あるいは自らの孤独をさらに受け継いでくれる誰かを見つけることであるかのように思う。

 

総評

限定された空間、限定された時間、限定された登場人物で織りなす人間ドラマが沁みる。我々はしばしば肩書で人間を判断するが、そうしたものは虚飾とは言わないまでも虚構=フィクション、作り物である。そういった一種の社会的なしがらみの外に出て生きることの難しさや尊さが本作には溢れている。『 前科者 』に次ぐ有村架純の代表作と評して良い秀作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Don’t be afraid, night is on our side.

とても印象に残った「ちひろさん」の台詞の私訳。be on one’s side = 誰々の味方である、の意。大学時代の社会学の授業で「夜とは最も身近な異界」と言った教授がいたが、至言であると思う。夜の街、夜の世界、夜の仕事など、

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 怪獣ヤロウ! 』
『 メイクアガール 』
『 Welcome Back 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 有村架純, 監督:今泉力哉, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 ちひろさん 』 -人の輪の中で孤独に生きる強さ-

『 夜明けのすべて 』 -人は生きた星-

Posted on 2024年3月3日 by cool-jupiter

夜明けのすべて 80点
2024年3月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:上白石萌音 松村北斗 芋生悠
監督:三宅唱

 

『 ケイコ 目を澄ませて 』を三宅唱監督の作品ということでチケット購入。国内作品の年間ベスト候補と言ってよい出来栄えであった。

あらすじ

PMSのせいで感情が不安定になってしまう藤沢(上白石萌音)は、上司への反発や薬の副作用から来る居眠りのため会社を退職する。転職先の栗田科学でも同僚の山添(松村北斗)の無気力な勤務態度に怒りを爆発させてしまうが、彼もパニック障害のため生き辛さを抱えていて・・・

 

ポジティブ・サイド

大昔、看護学校でPMSについて習った記憶がある。なぜなら「私、PMSかも」と言い出す女子が大勢いたから。程度の差こそあれ、エストロゲンやらの各種ホルモンのストームが起きれば、それは肉体にも精神にも多大な影響を及ぼす。人類の半分は女性で、女性の10代から50代ぐらいは、誰でもPMS予備軍と言って差し支えない。これを単なる女性特有のイライラやヒステリーで片づけず、れっきとした病気であると真正面から描いた作品は今作が初めてではないだろうか。劇中のモノローグでもあった通り、診断名がつくことでホッとする人も多いはず。

 

同様のことはパニック障害にも当てはまる。Jovianの仕事の大部分は大学等で教える非常勤講師の指導で、間接的にではあるが、毎年のべ数万人(実数だと約12000人)の高校生や大学生に関わっている。近年圧倒的に多いのは、LD、ADHD、鬱病・双極性障害、パニック障害だと感じる。開講直前、あるいは開講直後から3週間ぐらいの間に学校から要配慮申請が届く。パニック障害は一位ではないが、おそらく心理・精神面での配慮だと3位か4位ぐらい。数にすると毎年10人ぐらいだろうか。なので合理的配慮を要すると学校が判断するレベルのパニック障害は10数人に一人。おそらく配慮は必要としないレベルのパニック障害は百数十人に一人ほどの割合で存在すると考えられる。つまり、それほど珍しい病気ではない。

 

主演の二人の自然体の演技は見事だった。同病相憐れむではないが、お互い病気持ちであることを知った藤沢さんのエールを即座に否定する山添君のナチュラルな無礼さ。そして藤沢さんに不用意に髪をバッサリ切られた時の邪気のない反応。このコントラストに、我々は知らず知らずのうちに山添君をパニック障害というフィルターで見ていたことに気付かされる。

 

本作は光と影の使い方が非常に巧みで印象的。栗田科学のオフィス内、街中で自転車に乗る山添君、そして移動式プラネタリウムの中など、人物の心理的な状態が視覚的に表現されている。といっても明るい=明るい精神状態、暗い=暗い精神状態では決してない。むしろ、タイトルの通りに夜明け前の暗さにこそ希望が宿っていることを示してくれていたように感じる。

 

本作に登場する人物は、誰もが目に見えない傷を抱えている、栗田科学の社長然り、山添君の元上司然り。彼らの傷が癒されることはないのだが、しかし彼らが救われることは可能なのだ。それは直接的な救済ではない。むしろ、自分以外の誰かが救われることで自分が救われる。そうしたことを教えてくれる。藤沢さんと山添君の奇妙な関係も、そうした視点から見つめることで理解することができる。

 

本作は観る側の想像力を喚起しようとする。藤沢さんのお母さんが毛糸の手袋を編むのにどれほどの時間がかかったのか。山添君の同僚の大島さんが何故最後に「外で話したい」と言ったのか。ドキュメンタリー制作を行う中学生のダンの母親は、シングルマザーなのか否か。明確な答えは何も提示されない。我々はただ想像するのみである。それこそが本作の発したいメッセージなのではないかと思う。

 

太陽が西の空に沈むことはない。なぜなら太陽は動かず、地球こそが太陽の周りをまわっているからだ。これは厳然たる科学的事実(ただし厳密には太陽も天の川銀河内を超高速で公転しているし、その天の川銀河も超高速で移動しているのだが)。それでも我々は夜空の星々に意味を見出す。信じられないほどの距離を隔てた星々が、信じられないほどの時間をかけて地球に届けた光を見て、我々は星座を見出し、物語を生み出す。それは、どんなに離れた人間同士でも、お互いを照らし、意味ある関係を生み出せるという希望に他ならない。夜だからこそ見える光があるのだ。

 

ネガティブ・サイド

物語冒頭のモノローグの多用はいただけない。藤沢さんというキャラクターの苦悩を、それこそ回想シーンを通じて想像させるべきで、これを真正面から語ってしまったのは何故なのか。

 

個人的には芋生悠の出番がもう少し欲しかったかな。

 

総評

人間の弱さや儚さを映し出すことで、逆説的に人間の強さや優しさを教えてくれる作品。演技・演出、撮影、照明、音楽・音響のすべてがハイレベル。原作小説をかなりアレンジしているそうだが、発しようとするメッセージは同じなはず。他者に向けるまなざしをほんの少し優しくしようと思えた。2024年度のベスト候補の最右翼。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Polaris

北極星の意。元々は stella polaris = 極の星だったが、stellaが省略されて polaris が定着した。ここでソラリスを思い浮かべた人はラテン語の知識またはセンスがある人。これも sol =太陽に、形容詞化の接尾辞 aris がくっついたもの。ただ日常会話では圧倒的に the North Star を使うことが多い。北極星を Polaris と呼ぶのは天文学的な文脈に限られる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ソウルメイト 』
『 落下の解剖学 』
『 マリの話 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, ヒューマンドラマ, 上白石萌音, 日本, 松村北斗, 監督:三宅唱, 芋生悠, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:バンダイナムコフィルムワークスLeave a Comment on 『 夜明けのすべて 』 -人は生きた星-

『 四畳半タイムマシンブルース 』 -Back to the 四畳半-

Posted on 2022年10月2日 by cool-jupiter

四畳半タイムマシンブルース 75点
2022年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行
監督:夏目真悟

戯曲『 サマータイムマシン・ブルース 』を、そのまま『 四畳半神話大系 』のキャラクターで再構築。見事なスピンオフ作品に仕上がっている。

 

あらすじ

「私」(浅沼晋太郎)のエアコンのリモコンが、悪友・小津(吉野裕行)によって壊されてしまった。これにより部屋は灼熱地獄に。映画サークルの明石さん(坂本真綾)が撮影に邁進するなか、アパートの下鴨幽水荘からどういうわけかタイムマシンが見つかる。これで一日前に戻って、壊れる前のリモコンを持って帰ってくれば、と一同は考えて・・・

ポジティブ・サイド

四畳半主義者および四畳半世界をビジュアル化するにあたって、しっかりと湯浅政明のテイストを受け継いでくれている。奇妙な色彩の使い方と、「私」の青春そのままのようなくすんだ灰色とが織り成すコントラストは、それだけで観る者を癒やす。

 

キャラの中身も恋、いや濃い。10年以上ぶりに浅沼晋太郎が「私」を演じるが、まさに森見登美彦風のダメダメ大学生をそのまま演じている。この「私」のまるで成長していない加減が絶妙で、おっさんは自らの青春時代を回顧せざるを得ない。肉体的な鍛錬や学問的な精進から逃避するのみならず、恋からも逃げまくる。いや、追いかけまくる。この情けなさに笑いと涙の両方が喚起される。

 

悪友・小津と「私」の「セクシャルな営み」も映像化してみると面白いし、それをクールに眺める明石さんも美しい。いつもの四畳半の面々が、ふとしたことから手に入れるタイムマシンを使って、ドタバタ劇を繰り広げる。タイムトラベルものはシリアス路線かコメディ路線に行くのが常で、本作はもちろんコメディ。行き先が一日前なのだから、これほどスケールの小さいタイムトラベルは珍しい。しかし京都市の片隅だけの限られた人間関係の中で過去改変を阻止せねばならないという独自のシチュエーションは、笑いだけではなくハラハラドキドキ感も生み出している。

 

明石さんを追いかける「私」を追いかける「私」と小津という構図にはドキドキしながらも、笑うしかない。これも活字とは異なり映像で観ることで独特のユーモアと緊張感が生まれている。昨日と今日だけのタイムトラベルかと見せかけて、ストーリーは突如大規模に展開していく。そこで序盤からの数々の伏線が鮮やかに回収されていく。タイムトラベルものの王道で、実に清々しい。

 

京大に落ちてICUに行き、木造のボロボロ男子寮(ヴォーリズ建築!)で怠惰な四年間を過ごした身としては、下鴨幽水荘=男子寮に感じられてしまう。タイムマシンはおそらく理論上でしか存在できないが、思い出というタイムカプセルは誰でも持つことができる。未来は自らで切り拓くもの。そしてその未来が、いつか美しい思い出になる。

ネガティブ・サイド

森見登美彦の小説版『 四畳半タイムマシンブルース 』と少々異なるところがいくつかある。序盤で「私」が裸踊りをする直前の明石さんの「本当にやるんですか?」はもっと色っぽい雰囲気だったはず。他にも小説版との違うなと感じられるところがちらほら。まあ、このへんは森見登美彦と上田誠、どちらの波長が自分に近いかということだと思うが。

 

田村の行動が、「私」たちが必死に阻止しようとした過去改変の原理をあっさりと破っているところだけは気になった。これもタイムトラベルもののお約束か。

 

総評

梅田ブルク7は老若男女で9割の入りだった。森見登美彦の fanbase 恐るべし。仮にこれが何の話か分からなくても、ぜひ高校生や大学生にはデートムービーとして劇場鑑賞してほしい。本作から小説やアニメの『 四畳半神話大系 』や『 バック・トゥ・ザ・フューチャー 』を知って、それらにも触れてほしい。究極的にはゲーテの『 ファウスト 』にまでたどり着いてほしいと思う。今目の前にある「時」を誠実に生きること。若い人ほど、それを実践してほしいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

space-time 

「時空」の意。SF小説やSF映画では頻繁に出てくる表現。英語の順番どおりに訳せば空時となるが、これでは少々おさまりが悪い。ちなみに space = 宇宙の意味もあるが、古代中国語では 宇=空間、宙=時間だったとされる。言葉は違っても、概念・観念レベルでは人間はだいたい同じなのかもしれない。 

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, アニメ, 吉野裕行, 坂本真綾, 日本, 浅沼晋太郎, 監督:夏目真悟, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:アスミック・エース, 青春Leave a Comment on 『 四畳半タイムマシンブルース 』 -Back to the 四畳半-

『 マインド・ゲーム 』 -This Story Has Never Ended-

Posted on 2022年8月24日2022年8月24日 by cool-jupiter

マインド・ゲーム 75点
2022年8月22日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:今田耕司 前田沙耶香 藤井隆
監督:湯浅政明

『 犬王 』以来、ずっと観たいと思っていた本作を、ついに借りることができた。脳が溶けるような映像&物語体験であった。

 

あらすじ

幼なじみにして初恋の相手みょんちゃん(前田沙耶香)に再会した西(今田耕司)は、みょんちゃんの父親の借金の取り立てにきたヤクザに射殺されてしまう。あの世で神に出会った西は、神の言いつけに逆らって、現世に舞い戻るが・・・

 

ポジティブ・サイド

今田耕司の声だけで笑ってしまうが、物語自体も極めてクレイジーとしか言えない。幼馴染にして初恋の相手、中学の時には両想いになれたのに真剣交際に発展せず。あれよあれよという間にみょんは別の男と付き合い始め、cherry pop ・・・ 哀れ、西は漫画家を目指す。

 

20歳にして偶然にみょんと再会する西だが、みょんにはやはり他に男が。しかも婚約者。もうこの時点でヘタレの西に感情移入するしかない。さらにみょんの実家での西の妄想というか、手前勝手な思考回路はまるで『 君が君で君だ 』の尾崎豊(偽物)を思い起こさせる。Jovianはここで西に同化してしまった。自分でも同化している・・・ではなく、どうかしていると思うが、この西の物語を見届けたい、見届けなければならないという気分にさせられた。

 

ビックリするのは、その次の瞬間にあっさりと西が死んでしまうこと。正確には殺されるわけだが、まず殺される直前の緊迫した空気に戦慄させられる一方で、西の殺され方には不謹慎にも笑ってしまう。このテンションのジェットコースター的な上がり下がりが、物語の全編を通じて続いていく。

 

ストーリーは荒唐無稽もいいところだが、これらは全て西の人生観や世界観のメタファーだ。クジラはどう見ても西の胎内回帰願望だろう。母の子宮内で胎児でいることほどストレスフリーな生き方はない。騒音もなく、常にぬるま湯の中。呼吸をする必要もなく、食事を自分で用意する必要もない。しかし、そんな安楽な環境にいつまでもいられるはずはない。人は常に生み出されなければならない。西にもその時が来る。

 

本作のメッセージは、あまりにもストレートだ。死んだ気になれば、いつでも生まれかれるということだ。絵柄も独特、ストーリーも独特、キャラも独特。何もかもが既存のアニメや既存の映画という枠に囚われない、非常に自由な湯浅政明色の演出に染められている。さあ、脳が溶けてしまうようなトリッピーな映像世界を味わおうではないか。

 

ネガティブ・サイド

西とみょんちゃんのセックスシーンは、もっと婉曲的に描けなかったのだろうか。二人の身体が重なり合うところをもっと抽象的に描く方法はあったはず。機関車=ピストン運動のような非常に直接的かつ間接的案、もっと記号的な形で西とみょんのまぐわいを描く方法を湯浅監督には模索してほしかった。

 

ところどころでキャラクターが実写化されるのはノイズに感じた。島木譲二がヤクザの親分とか、笑えるのは笑えるが、それは面白いから笑っているのではなく、「しゃーないな」と思って笑っているのである。

 

総評

なんというか、『 トップガン マーヴェリック 』を鑑賞し続けているせいか、本作を観て “Don’t think. Just do.” という言葉が思い出された。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

kick one’s ass

「しばく」の意。標準語にするなら「ぶん殴る」か。俗説だが、アメリカ人はストリートファイトであっても蹴ることはあまりない。蹴るのは卑怯で、闘うなら拳だろうと思われているらしい。なんにせよ、kick one’s ass を能動態で日常会話で使うことはあまりないはず。実際は I got my ass kicked. = ぼろ負けした、のように受け身で使うことが多いだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2000年代, B Rank, アニメ, コメディ, ファンタジー, 今田耕司, 前田沙耶香, 日本, 監督:湯浅政明, 藤井隆, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 マインド・ゲーム 』 -This Story Has Never Ended-

『 犬王 』 -異色の時代劇ミュージカル-

Posted on 2022年6月26日2022年6月26日 by cool-jupiter

犬王 80点
2022年6月24日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:アヴちゃん 森山未來
監督:湯浅政明

 

会社の同僚が激しく心揺さぶられたと評した作品。振休を使って、梅田ブルク7に向かう。平日の昼間で公開から3週間経過しているにも関わらず、半分近くの入りで驚いた。

あらすじ

南北朝の統一前夜、奇形児として生まれた犬王(アヴちゃん)は、独自に猿楽を学ぶ。ある日、犬王は草なぎの剣の呪いによって盲目となってしまった琵琶法師の少年・友魚(森山未來)と出会う。犬王の異形の姿が見えない友魚は、すぐに犬王と意気投合。二人は独自の楽曲と舞踊で、たちまち都の話題を呼び・・・

 

ポジティブ・サイド

三種の神器によって呪われてしまった友魚と、とある人物からの呪いをその身に受けて異形の身体に生まれてしまった犬王。社会や家族から cast out された二人が織りなす楽曲の斬新さが目を引く。鎌倉時代には絶対にありえない演出がふんだんに施されていて、二人のライブが類まれなるスペクタクルになっている。猿楽を現代のロック調に再解釈し、歌詞は当時のものさながらに、新たなエモーションを乗せることに成功している。また光による演出も映画館で鑑賞するにふさわしく、eye-candy である。個人的にはクジラの歌と演出が最も心に残っている。

 

同時に、二人の楽曲が平家の亡霊の鎮魂歌になっているという設定がユニーク。忘れがちであるが、平安以降の日本はほとんど常に乱世で、それだけ人の死が身近にあった時代。なおかつ、娯楽もなく、さりとて一般庶民が文字として記録されたり、あるいは何かを記録する時代でもない。そこから『 図書館戦争 』や『 罪の声 』の脚本を務めた野木亜紀子の主張が垣間見える。いつの世であっても、最も救済が求められるのは名もなき無辜の民や、歴史の闇に葬り去られる運命の敗者たちなのである。

 

パフォーマンスが成功するたびに犬王の異形の身体が少しずつ普通になっていく。また友魚も名を友有と変え、自分の一座を持つ。時の将軍、足利義満の御前での仮面なしのパフォーマンスも成功に導き、順風満帆な二人だったが、好事魔多し。その将軍の意向により、二人は窮地に追いやられてしまう。この展開の辛さよ。虐げられてきた自分たちのパフォーマンスが虐げられてきた者たちを救ってきたにもかかわらず、為政者は事故の権力の正当化に汲々とするばかり。600年前も今も、権力者と庶民の関係は変わらないのか。

 

ちょうど大河ドラマで源氏が平氏を滅ぼし、鎌倉政権内のゴタゴタに焦点が移っているところである。これが上手い具合に劇中の平家の滅亡と南北朝統一を推進する足利幕府内部のゴタゴタとシンクロしている。同時に、多様性や包摂を謳いながらも、それが出来ない現代日本社会、さらに政権にとって都合の良い歴史の主張など、時代劇でありながら現代風刺になっている。アニメとしてもミュージカルとしても、近年では出色かつ異色の出来の邦画である。多くの人に鑑賞いただきたいと思う。

 

ネガティブ・サイド

犬王に関しては想像力を自由に働かせる余地があるものの、ストーリーにオリジナル要素が足りなかった。手塚治虫の漫画『 火の鳥 太陽編 』にそっくりだと感じた。

 

明らかに『 ボヘミアン・ラプソディ 』にインスパイア・・・というかパクったシーンが終盤にある。いや、中盤にもあるのだが、そこはオマージュと受け取れた。が、最終盤のステージ入りのシーンはオマージュとは言えないような気がする(楽曲の方も厳密にはアウトかもしれない)。

総評

Jovianは洋画のサントラは結構たくさん持っているが、邦画は久石譲以外持っていなかったりする(ミーハーの誹りは甘んじて受ける)。そんなJovianが「これはサントラを買わねば!」と強く感じたのが本作である。虐げられ歴史に抹殺された者たちが、時を超えて訴えかけてくるメッセージには確かに心揺さぶられずにはおれない。

そうそう、予告編で『 四畳半タイムマシンブルース 』が9月に公開されると知り、非常に興奮した。めちゃくちゃ楽しみである。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Once upon a time

「今は昔」の意。スター・ウォーズの始まりもこれである。他にも『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』など、割と使用頻度は高いように思う。B’zも『 once upon a time in 横浜 〜B’z LIVE GYM’99 “Brotherhood”〜 』 というDVDを昔、出していた。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, アヴちゃん, ファンタジー, ミュージカル, 日本, 森山未來, 歴史, 監督:湯浅政明, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:アニプレックスLeave a Comment on 『 犬王 』 -異色の時代劇ミュージカル-

『 さがす 』 -邦画サスペンスの良作-

Posted on 2022年5月4日2022年5月4日 by cool-jupiter

さがす 75点
2022年5月1日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:佐藤二朗 伊東蒼 清水尋也
監督:片山慎三

 

テアトル梅田で見逃した作品。地元の塚口サンサン劇場で遅れて上映していたので、これ幸いとチケット購入。邦画もまだまだ捨てたものではない、と感じさせてくれた。

あらすじ

大阪市西成区に暮らす原田楓(伊東蒼)の父、智(佐藤二朗)が突如失踪した。智は前日に報奨金300万円で指名手配中の連続殺人犯を偶然見かけたと言い残していた。警察も取り合ってくれない中、楓は父の働く日雇いの工事現場を訪れる。そこには原田智という名前の全く別人が働いていた。しかし、その男は智が目撃したと言っていた指名手配犯に酷似しており・・・

ポジティブ・サイド

舞台が大阪、それも新今宮=西成区なので、コテコテの大阪を通り越して、時代に取り残された大阪が活写されている。尼崎出身、尼崎在住のJovianには非常に親近感のある風景である。単に下町が舞台だからではなく、地べたを這いずり回って生きる人間の姿がしっかりと見えた。邦画だと『 万引き家族 』以来の描写であるように思う。

 

佐藤二朗と伊東蒼の親子がリアリティを生んでいる。特に佐藤二朗はダメな大人を見事に体現している。20円が足りずに万引きしようとし、そこへ娘が駆け込んでくる冒頭のシーン、さらに路上でクッチャクッチャと音を立てながら食べる父親、それを注意しながらも、家に帰れば互いに気の置けない親子であることを映し出す。外で見える風景と中から見る風景のコントラストが鮮やかである。

 

万引きの場面では警察官がスーパーの店長に示談を勧める。元大阪府警のJovian義父が憤慨するであろうシーンだが、大阪府警=無能という印象を一発で観る側に与える非常に効果的な演出である。これがあるおかげでその後の様々な警察絡みの展開に無理がなくなっている。

 

父を必死に探す楓を伊東蒼が熱演。『 空白 』でトラックにはねられる万引き娘や『 ギャングース 』の家なき子の印象が残っているが、本作の熱演はそれらの印象をすべて上書きするもの。まさに西成のじゃりン子で、身寄りのない子を引き取るシスターの顔面に唾を吐きかけるわ、街中で先生に相手に大声で悪態をつくわと、周りの大人の協力を自ら遠ざける。しかし、一方で日雇い外国人労働者とはじっくり話ができるなど、他者や大人をすべて拒絶しているのではなく、同病相憐れむ的な価値観で動いていることが分かる。このあたりは日本の現実、就中、大阪という都市の闇も垣間見せていて興味深い。

 

単純に姿を消した父親を娘が探し出そうとする物語と見せかけてさにあらず。スクリーンに「3か月前」と表示されたところから、一気に物語の背景が明かされ始める。そこで明らかになる真実に関しても、序盤のうちにフェアな伏線が張られているので、納得しながら受け入れることができる。この脚本は上手いと感じた。

 

疑惑の殺人鬼役を清水尋也が怪演。『 ミスミソウ 』でも存在感を発揮していたが、日本の俳優で異常者を正面から演じられる若手俳優は少ない。『 キャラクター 』のFukaseや『 ミュージアム 』の妻夫木聡が印象に残っているが、清水は韓国のクライム・サスペンスなどに出ても爪痕を残せるのではないかと感じた。『 殺人の追憶 』を日本でリメイクするとしたら、柔らかい手の青年は清水尋也で決まりだろう。

 

近年話題になったSNSの闇や、人間の生と死についての非常に現実的な問題提起もなされている。『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』や『 いのちの停車場 』などが有耶無耶にしてしまった命の尊厳について逆説的な形で切り込んでいった野心作。かなり血生臭いが、ぜひ多くの人に鑑賞いただきたい一作である。

ネガティブ・サイド

伊東蒼はさすがの大阪弁ネイティブだが、佐藤二朗の大阪弁はイマイチだった。じゃりン子チエ役の中山千夏レベルとまでは言わないが、それぐらいにまでは仕上げてほしかった。佐藤の芸歴なら出来るはずだし、片山監督もそこまで演出してもよかった。

 

楓のボーイフレンドが終始役立たずだった。この男が活躍する、そしてあっさり撃退されるシーンや、あるいは楓の父・悟に正面からぶつかっていくような展開があれば、もっとドラマが盛り上がっただろうと思う。

 

総評

佐藤二朗というと福田雄一作品の常連だが、ハッキリ言ってJovianは福田はあまり好きではない。『 HK 変態仮面 』は面白かったが『 ヲタクに恋は難しい 』あたりで絶望して『 新解釈・三國志 』は観ても腹が立つだけだろうと思い、回避した。佐藤二朗もNHKの『 歴史探偵 』の所長っぷりがチャラけていて好きではなかったが、良い脚本および良い演出に巡り合えば、こんなにも違う顔を見せるのかと感心させられた。老老介護の悲劇やSNSを通じた集団自殺・殺人など、命について考える機会が否応なく増える日本社会において、本作の放つメッセージは決して軽くはない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Not a chance

劇中であるキャラが言う「んなわけねーだろ」の私訳。Not a chance = そんな可能性はない、という意味で、質問に対する答えとして使われる。

A: Do you think I’ll get a job offer from them?
あの会社から内定もらえるかな?

B: Not a chance.
まあ、無理だろ。

というのが用例である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 伊東蒼, 佐藤二朗, 日本, 清水尋也, 監督:片山慎三, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 さがす 』 -邦画サスペンスの良作-

『 地球外少年少女 後編「はじまりの物語」 』 -もっとオリジナリティを-

Posted on 2022年2月14日2022年2月14日 by cool-jupiter

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地球外少年少女 後編「はじまりの物語」 50点
2022年2月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤原夏海
監督:磯光雄

 

『 地球外少年少女  前編「地球外からの使者」 』の続き。Jovianの予想が外れたのもあるが、全体的に内向きに閉じた完結編だった。

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あらすじ

なんとか彗星の欠片との衝突に耐え、管制室との通信も回復した登矢(藤原夏海)たちだったが、彗星本体はなお地球軌道上を周回している。しかも、彗星からのナノマシンはかつて破棄された超AI、セブン由来だった。状況を打開するために登矢たちはダッキーとブライトをフレーム合体させ、ダッキーの知能リミッターを解除するが・・・

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ポジティブ・サイド

前編と同じく30分で1エピソードというテレビアニメ的な構成。そのことが引き続き、展開をジェットコースター的にしている。宇宙ステーションが事故や災害に見舞われるというのは『 ゼロ・グラビティ 』など、SF映画・小説では日常茶飯事だが、やはり宇宙=真空=死という恐怖感がこたえられないサスペンスを生み出す。このあたり、主役級の登場人物は誰一人として死なないのだろうと予想していても、ハラハラドキドキさせられてしまった。

 

UN2に代表されるような地球人が彗星の破壊を試みる一方で、登矢たち地球外少年少女たちが彗星との対話、それによる説得を試みるという対照的なアプローチは面白かった。UN2自体は相手を問答無用で破壊しようとするが、問答を試みるというのは極めて日本的・・・とまでは言えないが、それでも本作をユニークたらしめる一つの要因になっている。

 

説得成功の直前に、潜入していたテロリストが牙を剥く。まあ、テロリストというよりは狂信者なのだが、『 コンタクト 』然り、この展開は現代に刺さる。特に、新型コロナウィルスやそのワクチン関連の狂騒、さらには地球温暖化などの環境問題と、絶えて久しいと思われた終末思想の相性の良さを、本作であらためて間接的に見せられたように思う。だからといってエンタメ性が失われているわけではなく、元々の長所であるテンポの良いストーリー展開をさらに強化するのに役立っている。このあたりが本作を単なるジュブナイル映画に留めていない点で非常に好ましく感じられる。

 

超知性と化したセブンと、インプラントの不調で死の危機に瀕する心葉を救おうとする登矢との対話も実に興味深い。取捨選択された情報だけを与えられた旧知性であるルナティック・セブンと、人間の清濁の両面すべての情報を吸収した超知性であるルナティック・セブンが、人間と人類を峻別しているところが目を引く。行きつくところは命とは何かという問いと、それに対する一定の答えになるわけで、Jovianは本作の提示する答えが最適解だとは思わない。もちろん、最適解があると考えることそのものがあまりに人間的なのかもしれないし、逆にあまりにも非人間的とも言えるかもしれない。ただ、このあたりの解釈はかなりの程度、受け取り手側に委ねられており、ここを考えるきっかけを得るだけでも本作を鑑賞する価値はあるのだろうと感じた。

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ネガティブ・サイド

全体的に盛り下がった感じがする。前編に堂々と「地球外からの使者」と銘打っておいて、実際は地球由来だったというのはこれ如何に。太陽系外の異星文明から飛来した超高度AIが自らの創造主に代わって恒星間飛行に飛び立った。そこで地球に飛来して、地球外で生まれ育った登矢の存在に興味を示し・・・という展開を予想していたのだが、これはまるっきりハズレ。

 

この過去に破壊され、廃棄されたシンギュラリティに達したルナティック・セブンが、ナノマシンとして宇宙で増殖し、彗星に乗って帰ってくるというのは、まんま『 太陽の簒奪者 』と『 二重螺旋の悪魔 』のアイデアを味付けし直したもの。ここはもっとオリジナリティが欲しかった。

 

最も違和感を覚えたのはルナティック・セブンの残したポエム=予言。起こる事象をある程度正確に予測するならまだしも、美衣奈といった固有名詞まで出るものだろうか。そこまでいくと超知性ではなく、オカルトである。オカルトとSFは混ぜてはいけない。

 

総評

前編の勢いが少し落ちたが、それでも非常にテンポの良い作品であることは間違いない。『 海獣の子供 』と同じく、エンタメ性と深遠なテーマの両方を成立させた佳作である。小学校高学年であれば直感的に理解できるストーリーになっているし、高校生あたりのデートムービーにもちょうどいい。もちろん、ファミリーでの鑑賞もありである。Netflixで視聴可能なようなので、週末のステイホーム時に6話を一気に観るというのもありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Terran

地球人の意。terraというのはラテン語で、土地、大地、陸地を意味する。ここから地球という意味が生まれた(ちなみに gaia は terra のギリシャ語)。America → American となるように、Terra → Terran で地球人となる。もちろん複数形は Terrans である。宇宙人が普通に出てくる英語SF小説で「地球人」という言葉が出てきたら、Terran か、またはEarthman が使われていると思ってよい。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, SF, アドベンチャー, アニメ, 日本, 監督:磯光雄, 藤原夏海, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:エイベックス・ピクチャーズLeave a Comment on 『 地球外少年少女 後編「はじまりの物語」 』 -もっとオリジナリティを-

『 地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 』 -予想外に硬質なSFアドベンチャー-

Posted on 2022年2月1日2022年2月14日 by cool-jupiter

地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 70点
2022年1月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤原夏海
監督:磯光雄

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オミクロン株が猛威を振るい、まん防が発令されても、映画館が営業してくれるのはありがたい。それでも週末の昼~夕方は喋りまくる客が多すぎて、さすがに二の足を踏む。なのでしばらくはレイトショーを中心に、若者が少なそうな作品を鑑賞するしかないか。

 

あらすじ

2045年。「あんしん」は世界初の未成年も宿泊できる宇宙ステーションとして稼働していた。そこにやってきた少年少女たちだが、彗星の欠片との衝突事故が起きてしまう。月で生まれた14歳の登矢(藤原夏海)心葉は、皆と力を合わせて窮地を脱しようとするが・・・

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ポジティブ・サイド

AIと宇宙、そしてファースト・コンタクトという、Jovianが好物としているSFジャンルが全て詰まっている。

 

AIが生活の隅々にまで浸透し、宇宙ステーションのオペレーションもAIに依存するところ大というのは、現実的であるように思う。ちょうど先日鑑賞した『 ブラックボックス 音声分析捜査 』でも、航空機の安全のために人間の介在する余地を減らす云々という考え方が開陳されていたが、そのこと自体はあながち間違っていないと思う。また同じくAIが浸透していた『 イヴの時間 』の世界とは少し異なり、本作ではユニークな形のドローンが個々人に付属している。これもありそうな未来の形に映った。

 

宇宙に関しても、世界各国で様々なベンチャー企業が生まれ、宇宙への輸送や、宇宙からの送電、デブリ掃除などは現実の企画として存在しているし、宇宙宿泊も時間の問題だろう。このあたり小川一水の小説『 第六大陸 』を彷彿させるし、SF世界でありながら法律云々の話になるのも同作を強く想起させる。単なる少年少女のスペース・ファンタジーではなく、ハードSF風味のアドベンチャー物語になっているところが好ましい。

 

主人公の登矢がひねくれたガキンチョであることにしっかりとした意味付けがなされているのが良い。宇宙生まれ宇宙育ちという存在が出現するかどうかは分からない。しかし、外国生まれ外国育ちの日本人というのはたくさんいるし、今後ますます増えていくだろう。その中で『 ルース・エドガー 』のような異端児は必ず出てくる。登矢は、まさにそうした異端の天才児である。そうした人間を日本社会は包摂できるのか。本作はそうした視点に立って作られていると見ることも可能である。

 

本作は2022年という今と劇中の2045年の間に何があったのかを懇切丁寧に説明してくれるわけではない。もちろん、断片的な情報は大いに語られる。全体像が見えそうで、決して見えない。そのもどかしさが知的興奮とサスペンスにつながっている。一話30分×三話構成という劇場上映作品らしからぬ作りだが、これによって中だるみすることなく、常に一定以上の緊張感あるストーリー描写が続いていく。

 

本作はシンギュラリティ=技術的特異点以後の世界が描かれており、AIがどのように進化し、またその進化がどのように人間によって封じ込められたのかについても、後編で明らかになるはず。後編の上映が待ち遠しい。

 

ネガティブ・サイド

「地球外からの使者」という、どう考えてもファースト・コンタクトを示唆しているとしか思えない副題がつけられているが、前編に関する限りでは、異星人のいの字がちょっとにおわされているのかな、という程度。ただ、このアイデアは野尻包介の小説『 太陽の簒奪者 』のオマージュのような気がしてならない。または野崎まどの小説『 know 』のラストそっくりの展開が、後編のクライマックスになるような気がしてならない。または長谷敏司の『 BEATLESS 』のような、モノがヒトを凌駕した世界での実存の意味を問うシーンもありそうだ。

 

こうした予想は見事に裏切ってくれればそれで良いのだが、全編を通じて漂うチープさはもう少し何とかならなかったのか、そらTuberだとか、ジョン・ドウだとか、現代のYouTuberやアノニマスをそのまま言葉だけ変えても未来感は出ない。現在には存在しない、かつ現代人が予想もできないようなテクノロジー、たとえば教育ツール(なぜ博士が博士というニックネームを持つのかと絡めれば尚よい)が一つでも描写されていれば素晴らしさを増したことだろう。

 

常にBGMが鳴り響いていて、少々うるさい。映画的というよりも、テレビアニメ的である。その構成自体は面白さに貢献しているが、BGMの面ではマイナスであると感じた。また楽曲そのもののクオリティもあまり高いとは感じず、ビジュアルやシーンとは噛みあってないなかったように思えた。

 

総評

オッサンが見ても面白かった。レイトショーで鑑賞したからかもしれないが、劇場の観客で一番若く見えたのは30代男性だった。かといって子どもが楽しめないわけでは決してない。『 劇場版 ダーウィンが来た! 』を鑑賞するような家族にも、ぜひともお勧めしたい。本作が最もターゲットにしているのは、異端の存在や変革の時に臨んで、柔軟に対応できる者である。そこに老若男女は関係ないが、やはり若い世代にこそ、そうした柔軟性を求めたいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

It’s not your business.

作中で何度か登場する「お前には関係ない」の意。少々無礼な表現なので、自分からは使わないようにしたい。似たような表現に Mind your own business. がある。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, SF, アドベンチャー, アニメ, 日本, 監督:磯光雄, 藤原夏海, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:エイベックス・ピクチャーズLeave a Comment on 『 地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 』 -予想外に硬質なSFアドベンチャー-

『 海辺の映画館 キネマの玉手箱 』 -観客、傍観者になることなかれ-

Posted on 2020年8月19日2021年1月22日 by cool-jupiter

海辺の映画館 キネマの玉手箱 70点
2020年8月18日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:厚木拓郎 細山田隆人 細田善彦 吉田玲
監督:大林宣彦

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大林監督と言えば、赤川次郎の小説の映画化、そして『 ねらわれた学園 』(てやんでい、という表現は本作で初めて触れた気がする)や『 時をかける少女 』などの青春タイムトラベル小説の映画化というイメージ。惜しくも遺作になってしまった本作にも、やはりタイムトラベル要素が組み込まれている。R.I.P to Nobuhiko Ōbayashi.

 

あらすじ

広島県尾道市の海辺の映画館「瀬戸内キネマ」が閉館にあたって、日本の戦争映画をオールナイト上映することになった。それを観に来ていた毬男(厚木拓郎)、鳳介(細山田隆人)、茂(細田善彦)は、突如劇場を襲った稲妻の閃光に包まれ、銀幕の世界へと入り込んでしまい・・・

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ポジティブ・サイド

物語世界に入ってしまう作品というのは、外国産だと『 はてしない物語 』や『 ジュマンジ 』、やや古いところでは『 ラスト・アクション・ヒーロー 』などが思い浮かぶ。邦画では『 今夜、ロマンス劇場で 』のように銀幕から出てくる系はあっても、逆は少ない。その意味では本作には希少価値がある。玉手箱とは、一種のタイムマシーンの謂いであろう。

 

全編戦争映画で、太平洋戦争だけではなく戊辰戦争や日中戦争までもが描かれている。これだけでも大林宣彦監督が、司馬遼太郎的な中途半端に自身に都合の良い歴史観を持っていないことが分かる。日本の歴史において明治や大正が最高で、昭和中期だけが歴史の鬼子なのだという司馬史観は、小説家の空想ではあっても、確固たる世界観や歴史観としては成立しない。「歴史はどこを見ても常に戦争前夜である」と言ったのはE・H・カーだったっけか。戦争などというものは、その悲惨さを知らなければ回避しようと努力などできないと思う。

 

本作は、厚木拓郎演じる毬男が吉田玲演じる希子を様々な時代で過酷な境遇や戦禍から救い出そうと奮闘する様を軸に進んでいく。異なる映画、すなわち異なる時代の異なる場所、異なる人物として巡り合う希子たちを三馬鹿が救い出そうと必死に頑張る姿は、大林流の独特かつ前衛的なタッチの映像により、とてもコミカルに見える。だが、それこそが監督の意図する仕掛けである。笑いは、自分と対象との距離が一定以上にある時に生まれる(コメディアンと自分がそっくりだったら笑えないだろう)。つまり、毬男たちの姿を笑うことで歴史上の戦争と現代の観客の距離感が演出されているわけだ。しかし、時にユーモラスなそのタッチも時代を経るごとに、つまり太平洋戦争に近付くほどにダークでシリアスなトーンを増してくる。監督の故郷である広島に原爆が落とされる前夜に至っては、絶望的なムードさえ漂う。せっかく何とか脱出させることができたと思った希子も、結局は広島に帰ってきてしまうのだ。この歴史の距離感がどんどんと近くなってくるにつれて、笑えなくなってくる感覚。時間を巡る不思議な物語の描き方の点で『 弥生、三月 君を愛した30年 』の3.11に通じるものがある。だが、地震は天災でも原爆は人災である。避けられたはずなのに避けられなかった。そこで生きて、そこで死んだ人たちがいた。その人たちの生死に何らかの形で自分が時を超えて関わることができたという、この不思議な映画体験こそが大林監督が次世代に伝えたい、残したいものなのだろう。

 

幸いにも日本は平和ボケと言われて久しい。それはなんだかんだで戦争、そして悲惨すぎる敗北を知っている世代が政治の世界に長老として存在していたからだ。今の政治家を見よ。自分の頭では何も考えられない甘やかされたボンボンだらけである。こういう連中は人の痛みに鈍感なので、権力を握ると弱い者いじめに走る。消費税増税が好例だ。大林監督のメッセージは単純である。傍観者になるな。テレビでもPCのモニターでもいい。その先にある世界(政治や経済や娯楽や文化や芸術)を想像せよ、体感せよ、そして行動せよということだ。

 

ネガティブ・サイド

3時間の作品だが、2時間40分程度に仕上げられなかったのかな。この酷暑の折、映画館に出向くまでに結構な量の汗をかいてしまい、どうしても鑑賞中に水分補給が必須になる。現に途中、何人もトイレ休憩に立ったし、中にはそのまま戻ってこない観客もいた(これは大林作品以外でも時折見られる現象ではあるが)。途中にギャグのようなIntermissionを挿入しているが、本当にそこで5分程度のIntermissionをとっても良かったように思う。夏の映画館で2時間30分超は膀胱的にはかなりしんどい。

 

文字をスクリーンにスーパーインポーズさせるのは別に良いのだが、その背景色が最初から最後までカラフルだったのは、個人的にはあまりピンとこなかった。『 オズの魔法使 』のように、モノトーンの映画はモノトーン、近代以降はカラー、というように区別してもよかったのではないか。

 

以下、かなりどうでもよいこと。和姦と強姦の両方が描かれるが、PGレーティングはどうなっているのだろうか。特に沖縄戦時の笹野高史演じる軍人が山崎絋菜を犯すシーンはアウトだろうと思う。そして、成海璃子は『 無伴奏 』の時と同じく、乳首は完全防備。なんだかなあ・・・

 

総評

年に数回しか映画に行かないという人々には、なかなかお勧めしづらい。けれども、宮崎駿が正真正銘の引退作に『 君たちはどう生きるか 』というメッセージを発しようとしているのと同様、戦争を知っている世代からのメッセージには耳を傾けるべきと思う。映画ファンであれば、大林監督の反戦への思いと次世代への希望を体感してほしいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

troupe

桜隊=The Sakura Troupeの「隊」である。発音は troop と同じ。語源も同じとされる。『 スター・ウォーズ 』のストーム・トゥルーパーや珍作かつ傑作『 スターシップ・トゥルーパーズ 』はtroopにerがついたものである。Troupeの意味としては、『 ロケットマン 』でもフィーチャーされた名曲“Your Song”の歌詞にある、a travelling showであると理解しよう。この語を普通に知っていれば英検準1級以上の語彙力である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ファンタジー, 厚木拓郎, 吉田玲, 日本, 歴史, 監督:大林宣彦, 細山田隆人, 細田善彦, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 海辺の映画館 キネマの玉手箱 』 -観客、傍観者になることなかれ-

『 チェイサー 』 -韓国版『 セブン 』+『 ソウ 』-

Posted on 2020年6月20日 by cool-jupiter

チェイサー 80点
2020年6月18日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:キム・ユンソク ハ・ジョンウ ソ・ヨンヒ
監督:ナ・ホンジン

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『 PMC ザ・バンカー 』のハ・ジョンウの出演作。鬱映画だと聞いていたが、この作品は確かに精神的にくるものがある。

 

あらすじ

元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)はデリヘルを経営している。しかし、所属する女性二人が行方をくらます。誰かに売り飛ばされたと直感したジュンホはミジン(ソ・ヨンヒ)使って独自におとり捜査を開始。自店に他店にも記録のあるヨンミン(ハ・ジョンウ)という客をジュンホは追走して捕まえるが・・・

 

ポジティブ・サイド

2000年代の作品だが、やはりここにも『 国家が破産する日 』の傷跡が見える。刑事を辞めて、どういうわけかデリヘル経営者になっているジュンホが、最初は自社の商品を誰かに奪われていると憤慨し、行動を起こす。それが徐々に、社会的な弱者を自分が守らねばという使命感へと変わっていく。警察はあてにならない。所詮は権力者の犬である。ナ・ホンジン監督のそんな信念のようなものが物語全体を通じて聞こえてくるようである。

 

それにしても、ジュンホ演じるキム・ユンソクの妙な迫力はどこから生まれてくるのか。『 オールド・ボーイ 』でオ・デスを演じたチェ・ミンシクもそうだが、一見すると普通のオッサンが豹変する様は韓国映画の様式美なのか。『 アジョシ 』の悪役、マンソク兄のように三枚目ながら、やることはえげつない。こうしたギャップが、決してlikeableなキャラクターではないジュンホを、観ている我々がだんだんと彼のことを応援したくなる要因だ。最初の15分だけを観れば、ジュンホが主役であるとは決して思えない。むしろ、こいつが悪役・敵役なのでは?とすら思える。普通に社会のゴミで、普通に女性の敵だろうというキャラである。何故そんな男を応援したくなるのか。その絶妙な仕掛けは、ぜひ本作を観て体験してもらうしかない。アホのような肺活量と無駄に高い格闘能力も、何故か許せてしまう。なんとも不思議なキャラ造形である。

 

だが、キャラの面で言えばハ・ジョンウ演じるヨンミンの方が一枚も二枚も上手。『 殺人の追憶 』の真犯人はこんな顔だったのではないかと思わせるほど平凡な見た目ながら、その内面は鬼畜もしくは悪魔。このギャップにも震えた。それも『 羊たちの沈黙 』のハンニバル・レクター博士のような超絶知性のサイコパスではなく、『 殺人の追憶 』や『 母なる証明 』などのポン・ジュノ作品でも静かにフィーチャーされた知的障がい者を思わせる男で、どこまでが素なのかが全くつかめない。本当に知的に問題のあるキャラかと言うと違う。ミジン(そして、その前の二人も)を自宅に連れ込んで、あっさりと監禁してしまうまでの流れは、非常に知性溢れる犯罪行為である。けれど、警察の取り調べにあっさりと口を割ってしまうところなど、どこか幼い子どもを思わせる素直さ。これほど掴みどころのない猟奇殺人者はなかなか見当たらない。その語り口はどこか『 ユージュアル・サスペクツ 』のケビン・スペイシーを彷彿させる。実在の事件と犯人に基づいているというところに韓国社会の闇と、その闇に多くの人に目を向けてほしいという韓国映画人の気迫を感じる。

 

それにしても韓国映画のバイオレンス描写というのは、いったい何故にこれほど容赦がないのか。ミジンを殺そうと金槌で特大の釘を後頭部にぶち込もうとするシーンは、観ているだけで痛い。『 ソウ 』でとあるキャラクターが壮絶な自傷行為を行うシーンも視覚的に痛かったが、本作はもっと痛い。路上のチェイスでついにジュンホがヨンミンを捕らえ、マウント状態からアホかというぐらい殴るシーンも痛い。邦画にありがちな口から血がタラリといったメイクや演出ではない。顔が腫れる、出血する、傷跡が残る、痛みで目がチカチカする。殴られる側の痛みが観る側にまで伝染してくるかのような描写だ。

 

鬱映画とは聞いていたが、エンディングも救いがない。まさしく韓国版『 セブン 』である。奇しくもこれもケビン・スペイシーか。猟奇殺人者やシリアル・キラーの恐ろしいところは、殺人行為そのもの以上に、何が彼ら彼女らを殺人に駆り立てるのかが不明なところにある。弁護士との接見シーンでヨンミンが性的に不能だから、その腹いせに女性を殺したのだという説が開陳される。単純で分かりやすい説明だ。だが、ヨンミンの甥っ子の負った頭の大怪我はいったい何なのか。ヨンミンが女刑事の“性”を揶揄するシーンは何を意味するのか。宗教的なシンボルを半地下の部屋の壁に描きたくったのは、いったいどういう衝動に突き動かされたからなのか。ヨンミンという殺人鬼の内面に迫ることなく閉じる物語は、我々に圧倒的な無力感と敗北感を味わわせる。だが、その先に一縷の望みもある。社会の底辺に生きる者同士の連帯を予感させて、物語が終わるからだ。後味の悪さ9、光の予感1である。それでも光は差しこんでくると信じたいではないか。

 

ネガティブ・サイド

ギル先輩とその仲間たちとジュンホの絡みが欲しかった。何の説明も示唆もないままに、「またお前が何かやりやがったのか!」という態度は、下手をすると偏見や差別になりかねない。もちろん偏見や差別に対する糾弾の意味合いも本作には込められている。けれど、偏見・差別は関係性が全く存在しない相手との間に発生する傾向のあるものだ。彼らの態度は、悪を許すまじというある意味で度を超えた正義感の持ち主であるジュンホという人間へのまなざしではなく、デリヘル経営者という社会のはみ出し者への視線に感じられた。

 

ジュンホの部下であるチンピラは最後はどこに行った?素晴らしく良い顔の俳優である。この男の活躍をもっと堪能したかったのだが。

 

クライマックスの展開の引っ張り方が少々強引かつ冗長だった。検事から12時間以内に証拠を出せと言われて、タイムリミットが設定されているうちはよいが、それを過ぎてしまった後の流れとテンションが中盤から後半のそれに比べて、やや落ちた。

 

総評

傑作と評して良いのかどうかわからないが、それでも最後までハラハラドキドキを持続させる良作である。グロ描写や暴力描写が多めなので観る人を選ぶ作品だが、社会矛盾を穿つメッセージ性と、社会的弱者を救うのはまた別の社会的弱者という希望とも絶望とも取れる内容は、これまた観る人を選ぶ。サスペンスの面だけ見れば、迷うことなく傑作である。この緊張感はちょっと他の作品では得られない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アニ

日本語では「いいや」ぐらいの軽い否定語。アニアニ=いやいや、も韓国映画ではちらほら聞こえてくるような気がする。外国語学習のコツの一つに「はい」、「いいえ」と1~10の数字をまずは覚えろ、という教えがある(ボクシングジャーナリスト・マッチメーカー・解説者のジョー小泉)。なかなか機会は訪れないだろうが、韓国旅行や韓国出張の際に土産物屋であれこれ売りつけられそうになったら「アニアニ」と言ってやんわりと断ろう。

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2000年代, A Rank, キム・ユンソク, サスペンス, スリラー, ソ・ヨンヒ, ハ・ジョンウ, 監督:ナ・ホンジン, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 チェイサー 』 -韓国版『 セブン 』+『 ソウ 』-

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