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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 花澤香菜

『 夜は短し歩けよ乙女 』 -Time flies when you’re having fun-

Posted on 2022年8月9日 by cool-jupiter

夜は短し歩けよ乙女 70点
2022年8月8日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:星野源 花澤香菜
監督:湯浅政明

 

『 四畳半神話大系 』同様に、原作が森見登美彦、監督は湯浅政明。青春の儚さと濃さを幻想的に描く異色のアニメである。

あらすじ

「黒髪の乙女」(花澤香菜)に恋する「先輩」大学生の私(星野源)は、可能な限り偶然を装って黒髪の乙女の目に留まろうと努力を重ねる。しかし、乙女は酒や本を求めて夜の木屋町を徘徊する。私はなんとか彼女の目に留まらんと奮励努力するが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 四畳半神話大系 』とも共通するが、京都の町、それもごくごく狭い範囲の空気をよく伝えている。Jovianはその昔、烏丸御池を勤務地としていたので、あのあたりの地理や空気をそれなりに理解していると自負するが、京都出身ではない湯浅政明監督がこれだけ京都(京都府でも京都市でもない、京都人の脳内地図の赤いエリア)をこれだけアニメで再現できるということに脱帽するしかない。

 

一夜の中で繰り広げられる先輩と乙女の経験する奇想天外なイベントの数々が極彩色で描かれる。はっきり言ってアホとしか言えない出来事のオンパレードなのだが、若さとはそもそも愚かさでもある。そして恋は愚かでないとできない。あるいは恋を人は愚かにする。ナカメ作戦(なるべく 彼女の 目に留まる の頭文字を取った作戦)など愚の骨頂であるが、それを我々が笑えるのは、自分がまさにそうだったからに他ならない。この対象と自分との距離感が森見登美彦作品の特徴である。ハマる人はドハマりするのだ。

 

一夜の出来事というのはもちろん若さのメタファーで、その若さをどのように過ごすのかが本作のテーマである。乙女の時計の進みが遅く、その他のキャラ、特に高齢者の時計が恐るべき速さで時を刻むのは、それだけ過ごしている時間の密度の差があることを意味している。高速で動くと時の進みが遅くなるというのは相対性理論だが、乙女は常に動き回っている。そしてそれを追いかける先輩も。あるいは文系もしくは文系上がりならアンリ・ベルクソンの純粋持続を思い出そう。夜は短しと言いながら、濃密な時間がそこにはある。

 

もちろん衒学的な理屈などこねずとも、本作の面白さは十分に堪能できる。火鍋のシーンの意味不明なまでのテンションや、古本市で聞かれる古本の神の長広舌など、理屈抜きで面白いシーンがたくさんある。原作ではそれぞれ独立していたエピソードを上手く一夜にまとめた脚本の勝利でもある。森見ファンはぜひ観よう。湯浅ファンもぜひ観よう。

 

ネガティブ・サイド

原作もそうなのだが、乙女に対するセクハラ描写は必要なのだろうか。

 

ミュージカルのシークエンスが少しダレていたと感じた。また歌唱のレベルもミュージカルのそれではない。もちろん素人が素人劇をやっているのだが、それでももう少しミュージカルであることそれ自体にエンタメ要素を持たせてほしい。

 

後は星野源の声の演技か。上手い下手ではなく、先輩のイメージに合わなかった。ジョニーの声が『 四畳半神話大系 』と同じなら、先輩の声も浅沼晋太郎で良かった。もしくはジョニーの声優を変えるべきだった。

 

総評

『 四畳半神話大系 』と同じく、森見登美彦の恋愛哲学と湯浅政明の世界観が華麗に融合している。『 四畳半タイムマシンブルース 』も湯浅政明に監督してもらいたかったが、異なるテイストで森見作品を料理してほしいという気持ちもある。何はともあれ、自意識過剰なアホ大学生(別に中学生でも高校生でも社会人でもいい)に感情移入できるなら、青春の濃さと儚さを本作を通じて体験してみよう。オッサンにもお勧めしたい。「ああ、俺もこうやったわ」と青春を振り返ってしまうこと請け合いである。

 

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

Ars longa vita brevis.

正式には Ars longa est, vita brevis est.  be動詞に当たる est が省略されているが、古典ラテン語にはよくあること。元々は Art is long, life is short. = 技術は長く、人生は短い = 技術の習得には長い時間がかかるのに、人生は短いという意味だったが、英語では 美術・芸術は長く、人生は短いと解釈されるようになった。『 ゲティ家の身代金 』を観ると、確かにそうなのかもしれないと思わされる。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2010年代, B Rank, アニメ, ファンタジー, 日本, 星野源, 監督:湯浅政明, 花澤香菜, 配給会社:東宝映像事業部Leave a Comment on 『 夜は短し歩けよ乙女 』 -Time flies when you’re having fun-

『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』 - 新世紀の中国アニメ-

Posted on 2020年12月31日 by cool-jupiter

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201231212849j:plain

羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~ 80点
2020年12月31日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:花澤香菜 宮野真守 櫻井孝宏
監督:MTJJ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201231212915j:plain
 

ずっと観に行こうと思いながら、タイミングが合わなかった作品。思いがけず2020年の締めくくりに劇場鑑賞することになった。本作を観て感じるのは、アニメーションは日本が中国に伝授したものであっても、日本的とされる自然観や世界観の源流は古代中国にあったのだろうなということ。そして、日本的とされるアニメーションは下手をすれば中国にぶち抜かれる恐れすらあるのだろう。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201231212938j:plain
 

あらすじ

森でのどかに暮らしていた猫の妖精・小黒(花澤香菜)は、人間の開発によって住処を追われる。放浪の旅の最中に同じく妖精のフーシー(櫻井孝宏)たちと出会った小黒は、彼らの住処で共に暮らすことになる。しかし、そこに最強の執行人、ムゲン(宮野真守)が現れ、フーシーらを撃退する。小黒はムゲンに連れ去られてしまい・・・

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ポジティブ・サイド

小黒の猫バージョンの狙ったかのような「あざとかわいさ」を見よ。これがロードトリップムービーの導入だと言われれば素直に理解できるが、サイキック・バトルアクション系の主人公だと言われれば、「またまたご冗談を」と言いたくなるだろう。だが、本作はそういう話なのだ。つまり、ジャンルミックス作品であり、それゆえ必然的にインターテクスチュアリティ(間テクスト性=intertextuality)に溢れる作品となっている。

 

冒頭から『 もののけ姫 』を思わせる森林の風景が美しい。こだまを彷彿させるキャラクターがその印象をますます強めてくれる。そして逃げ惑う動物。立ち向かわんとする小黒。切り拓かれる森。これを『 もののけ姫 』と言わずして何とする。

 

小黒がフーシーと出会い、仲間にしていく流れもスムーズだ。妖精同士の出会いと語らい、そして団らんに言葉はいらない。世界からある意味で疎外された者同士だけに通じる直感的なコミュニケーションには大いに考えさせられた。異形の者だから疎外されるのではなく、異能の者だから疎外される。妖精たちは必ずしも姿かたちのために疎外されているわけではないことがテンフーとロジュの造形を比較してみれば分かる。妖精の世界も妖精の世界で、なかなかに複雑だ。一枚岩と思わせてそうではないところが、本作を単なるおとぎ話やファンタジーにしていない。本作の目指すところは共生である。それが現実の中国の目指す「一帯一路」構想とどれくらい軌を一にするものなのかは分からないが、様々な異民族との共存共栄を志向するクリエイターが中国に存在し、その作品が中国国内のみならず国外のマーケットでも公開されることの意義は決して小さくない。

 

例えて言えば、これは『 X-MEN 』であり、『 妖怪人間ベム 』であり、『 AKIRA 』を中国風に味付けしなおした作品である。ムゲンなどはまさにマグニートーであるし、妖精社会の内ゲバと人間を守らんとする戦いはベム、ベラ、ベロの影が見え隠れする。そしてラストの領界はどうみても『 AKIRA 』だろう。観る人が観れば、より多くのオマージュやガジェット、あらゆる意味での間テクスト性のエビデンスを発見できそうだが、それは本作のオリジナリティの低さを証明するものではない。逆だ。中国は日本やアメリカの先行作品に貪欲に学んだのですよ、あなた方と肩を並べるところまで来ましたよ、もうすぐで追い抜きますよ、と宣言しているのだ。実際にバトルシーンのスピード感はアニメ映画の『 ドラゴンボール 』的でありながら、その背景や細かいキャラの動きの変化の書き込みは同作の比ではない。少なくとも『 あした世界が終わるとしても 』レベルのバトルシーンは遥かに超えている。様々なオマージュもクオリティを高めれば、立派なオリジナルになる。

 

原題の中国社会を下敷きに鑑賞すべきだろう。ストーリーもキャラクターも面白いし、深みがある。ムゲンはどことなく『 千と千尋の神隠し 』のハクのパワーアップ版以上のキャラだし、フーシーも単純な善悪二元論で割り切れるキャラではない。いつの間にやら移民大国になっている日本でも、異能・異端の者たちとどのように交流し、彼ら彼女らをどのように社会に包摂するか、あるいはしないのかを選択する時がきっと訪れる。もちろん、正解などない。必要なのは、答えを求め続けようとする姿勢を維持すること、つまりは旅を共にすることなのだろう。昨年の内に観ておきたかったと思う。

 

そうそう、Jovianは基本的には外国産映画は現地語を聞き、字幕を読むことを是としているが、本作は吹き替えで充分に楽しめる。見た目が日本のアニメ的であるし、中国人キャラクターが日本語をしゃべっても違和感を覚えなかった。

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ネガティブ・サイド

ムゲンと小黒がイカダで旅をするシークエンスが少々長かった。海上シーンをもう少し削るか、あるいはムゲンと小黒に何らかの対話をさせてほしかった。

 

戦闘シーンの疾走感と迫力は文句なしであるが、妖精たちの属性についてもう少し掘り下げて説明してほしかった。台詞は不要。ただ、陰陽五行説の木火土金水の相克関係を、バトルを通じて視覚的に分かりやすく見せてくれれば、中学生以下にもっと刺さるのではないか。

 

館の妖精たちが街の住人たちを救助していくシーンもスピーディーでスリリングだった。その一方で、館の館長と龍遊市の政治的指導者層との折衝の様子も一瞬でいいから見せてほしかった。妖精と人間の共存関係はナイーブなものではなく、高度に政治的な判断の元で維持されているものだと提示されれば、さらに大人向けのアニメとなったことだろう。

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総評

古今東西のあれやこれやのオマージュが詰め込まれた作品。かといって古いわけではなく新しい。様々なコンテンツを浴びるようにして育った個人がアメリカでは『 レディ・プレイヤー1 』を作り、『 封神演義 』や『 西遊記 』といった中国古典をベースにした教養人が本作を作ったと言えるのかもしれない。「中国映画で猫?『 空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 』みたいな地雷作品じゃねーだろうな?」と疑わしく感じてしまう向きにこそお勧めしたい傑作に仕上がっている。

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

The more S + V, the more S + V.

エンディング曲で“More we divide, more we collide”という歌詞がある。正しくは“The more we divide, the more we collide”=「私たちが分裂すればするほど、私たちはもっと衝突する」ということ。The 比較級 S + V, the 比較級 S + V. で「SがもっとVすれば、SはもっとVする」という意味になる。

 

The older you are, the weaker you become.

年をとればとるほど、弱くなっていく。

 

The more you sleep, the longer you live.

寝れば寝るほど、長生きする。

 

The more money I have, the less secure I feel.

より多くのお金を持つほどに、どんどん安心感がなくなっていく。

 

などのように使う。この構文がサラッと使えれば、英会話の中級(CEFRでB1手前)だろうか。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, 2020年代, A Rank, 中国, 宮野真守, 櫻井孝宏, 監督:MTJJ, 花澤香菜, 配給会社:アニプレックス, 配給会社:チームジョイLeave a Comment on 『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』 - 新世紀の中国アニメ-

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