Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: 監督:松居大悟

『 リライト 』 -小説をまあまあ上手く改変-

Posted on 2025年6月21日2025年6月21日 by cool-jupiter

リライト 55点
2025年6月15日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:池田エライザ 阿達慶
監督:松居大悟

法条遥の同名小説の映画化ということでチケット購入。ラストを一捻りしているが、そこに至るまでは割と原作に忠実だった。

あらすじ

2310年の未来からタイムリープしてきた保彦(阿達慶)と偶然にも親密になった美雪(池田エライザ)は、やがて彼に惹かれていく。しかし、ある悲劇が康彦を襲う。彼を救う全てを求めて10年後の自分に出会いに行く美幸だが・・・

ポジティブ・サイド

原作の少しわちゃわちゃしていたところが視覚化されて、分かりやすくなっていた。原作もそうだったが、『 時をかける少女 』へのオマージュが随所にある。〇〇〇〇を読んだ康彦ではないが、尾道に行ってみたくなるような作品になっている。

本作は(原作もそうなのだが)一種のギャルゲーだと思えばいい。ある意味、『 Ever17 -the out of infinity- 』が近いだろうか。これがネタバレにならないことを祈る。

大人の美雪を掘り下げたところが原作との違いで、ここは面白かった。リライト=rewriteが意味するところは、自分の運命や人生の書き換えでもある。曲がりなりにも分泌のプロになったのなら、Verweile doch, du bist so schön! という精神を持ちたいもの。

ネガティブ・サイド

正直、原作のおどろおどろしい執念のようなものが消えてしまっていて残念。それが何であるか気になる人は原作を読んでほしい。康彦の口癖の「何という無駄!」は削る必要はあったのだろうか。

キャスティングも残念ながら減点材料。池田エライザや橋本愛が高校生を演じるのはさすがに無理があるし、その他の同級生たちもかなりしんどかった。

橋本愛の罪ではないが、販促物、とくにポスタービジュアルなどを手がける人はネタバレを避けてほしい。あるいは鑑賞後にそれと分かる作りにしてほしい。原作未読のうちの嫁さん(に限らず普通の感受性と観察力の持ち主)は、すぐに誰がキーパーソンなのか悟ってしまった。

総評

小説の映画化としてはまあまあ。同作家の作品で言えば『 バイロケーション 』よりはマシである。池田エライザのファンなら鑑賞すべし。そうでなければスルー推奨。本当ならアニメ作品にすべきなのだろう。というわけで、タイムリープものとしては本作よりも遥かに面白い高畑京一郎の小説『 タイム・リープ あしたはきのう 』を、誰か105分程度でアニメ化してくれませんかねえ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I wish time stopped now.

時間が止まってほしい、の意。さて、本作ではとあるキャラクターがこれを日本語で言う。どんな場面なのかしっかりと把握して、ここぞというロマンチックな場面でこれをささやいてみよう。それができれば英検1級を超えて英検0級である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 JUNK WORLD 』
『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』
『 脱走 』

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, SF, 日本, 池田エライザ, 監督:松居大悟, 配給会社:バンダイナムコフィルムワークス, 阿達慶Leave a Comment on 『 リライト 』 -小説をまあまあ上手く改変-

『 ちょっと思い出しただけ 』 -鮮やかな回想劇-

Posted on 2022年2月20日2022年2月20日 by cool-jupiter

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220220213816j:plain

ちょっと思い出しただけ 75点
2022年2月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:池松壮亮 伊藤沙莉 河合優実
監督:松居大悟

 

『 くれなずめ 』や『 君が君で君だ 』など、終わらない青春、あるいは青春を引きずる姿を追究してきた松居大悟監督の最新作。またJovianの大学の後輩がプロデューサーも務めている。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220220213839j:plain

あらすじ

ダンサーだったが、怪我で舞台の照明係に転身した照生(池松壮亮)。タクシー運転手としてコロナ不景気に翻弄される葉(伊藤沙莉)。葉はある客を乗せたことで、照生と付き合っていた、かつての日々を思い起こして・・・

 

ポジティブ・サイド

一年の特定の日付だけを映し出していく構成というと『 弥生、三月 君を愛した30年 』に少し似ているところがあるが、それを名作『 ペパーミント・キャンディー 』のように過去に逆行していく形で提示していくところがユニークだと感じた。作品によっては、視点が今なのか、それとも回想なのか分かり辛いものもあるが、本作はマスク着用や手洗いが生活様式として定着したところから始まっているので、現在と回想の見分けが容易。これは思わぬコロナの副産物だろう。

 

池松壮亮演じる照生が夢と現実の狭間でもがく姿に激しく共感する。同時に軽蔑のような念も覚える。それはおそらく、多くの男が持つ大人になってしまった自分と若者のままでいたい自分の葛藤を具象化させられたかのように感じるからだ。男は基本アホなので、付き合っている女性はいつまでも自分を好いてくれると思い込んでいるし、相手の言う「何があっても好き」のような言葉も鵜呑みにしてしまう。鑑賞中に何度「照生、このアホ、そこはそうちゃうやろ」と思ってしまったか分からない。

 

葉を演じた伊藤沙莉は、これが代表作になるのではないか。決して美人ではないのだが、ある瞬間にめちゃくちゃ可愛く見えるのは本人の力なのか、それともメイクアップアーティストやカメラマンの力なのか。『 息もできない 』のキム・コッピのように、大声を張り上げることも、とびきりチャーミングな笑顔を見せることもできる女優。ラブシーンも普通にいけそう。一番可愛らしいと感じたのは、タクシーを降りるところを照生に止められるシーン。ここでの葉のはしゃぎっぷりは恋する女子の演技としては白眉だろう。浮かれていながらも「言葉にしてほしい」という女子が共通して持つ強烈な願望が駄々漏れになっていて、非常に微笑ましく、かつ恐ろしい。男性諸君、言葉にすることの重要性をゆめ忘れることなかれ。

 

回想を経るごとにちょっとした小道具の存在の有無や照生の行動の違いなどが明らかになっていき、どんどんと物語に引き込まれていく。ただ時間をさかのぼりながらも、未来に向かっている部分もあった。永瀬正敏演じる、待っているおじさんがそれで、このサブプロットはなかなかにパンチが効いている。妻を待ち続ける=妻に執着し続ける姿は、そのまま照生の未来に見えてくるし、事実その通りである。というか、男全般に当てはまるわ、これ。『 パターソン 』でも何気ない日常の連続をある意味で壊す役割を演じた永瀬が、今度はその何気ない日常を延々と続ける姿はある意味で感動的でもあった。

 

男女の幸せだった日々が、理想と現実のはざまで少しずつずれていってしまうという意味では『 花束みたいな恋をした 』とも共通するところがある。しかし、本作では男の情けなさというか、女々しさ(この言葉が不適切でないことを祈る)が存分に表出されていて、かなり酸っぱさ濃いめの甘酸っぱい物語に仕上がった。松居大悟は作家性とエンタメ性をバランスよく表現できる監督で、氏の作品は今後も要チェックであると感じた。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220220213855j:plain

ネガティブ・サイド

言葉とダンスに関する問答が印象的だったが、特にダンスに関する部分はもっと突き詰められたのではないかと思う。外国映画は字幕か吹き替えかは、それこそ観る側が自由に選択すればよいと思う。ただ、言葉にしてくれないと分からないという時の言葉というのは、言語に関係があることなのか?とは感じた。何語で発話しようとも、なんらかの感情や思考が表現されたという事実は変わらないだろう。

 

もうひとつ、ダンスは言語を超えるというのにも大いに納得したが、ぜひ照生が葉に踊って見せるシーンをもっと取り入れてほしかった。愛情を踊りで伝える照生と、そのメッセージを受け取りながらも十分に解釈しきれない葉のコントラストがあれば、甘酸っぱさの甘さと酸っぱさが両方増しただろうと思う。

 

総評

男性の過去の恋愛への執着を描いた『 僕の好きな女の子 』と対を成すかのような作品。女性が過去の恋愛をいかにカジュアルに忘却できるかを、非常に説得力のある形で描き出している。男性が覚えているのに対し、女性は思い出す(その前提には「忘れる」がある)ものなのだ。そういうわけで、デートムービーにはあまり向かないかもしれない。どちらかというと、男女ともにおひとり様での鑑賞が望ましいと思われる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

pop the question

直訳すれば「例の質問をポンッと出す」の意、意訳すれば「プロポーズする」の意。プロポーズの言葉は十中八九、”Will you marry me?”(最後は falling tone で)である。疑問文=質問であるが、語尾は上げずに下げて言うべし。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ラブロマンス, 伊藤沙莉, 日本, 池松壮亮, 河合優実, 監督:松居大悟, 配給会社:東京テアトルLeave a Comment on 『 ちょっと思い出しただけ 』 -鮮やかな回想劇-

『 くれなずめ 』 -青春を終わらせるな-

Posted on 2021年5月30日 by cool-jupiter

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210530110417j:plain

 

くれなずめ 70点
2021年5月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:成田凌 高良健吾 若葉竜也 藤原季節 浜野健太 目次立樹  
監督:松居大悟

 

プロデューサーの和田大輔、なんとJovianの大学の後輩である。隣の寮に住んでいた脳筋の変人だったが、いつの間にやら文化人かつ商売人になっていた。今後もプロデューサーとして活躍していくと思われるので、和田大輔プロデュース作品には是非とも注目してくだされ。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210530110449j:plain

あらすじ

友人の結婚式のために久しぶりに集まった吉尾(成田凌)や明石(若葉竜也)らだったが、余興が盛大にすべってしまった。気まずい空気に包まれたまま、彼らは二次会までの時間をつぶそうとする。そして、かつての自分たちの友情を回想していき・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210530110506j:plain

ポジティブ・サイド

タイトルに反応して、「くれ~なず~む街の~」と口ずさむのは立派なオッサンだろう。くれなずむというのは、今の季節だと午後6:30から午後7:00ぐらいの逢魔が時が続いていく感じを指す。結婚式に出席するということは、同年代が結婚しつつあるという意味で、独身貴族の時期の終わりを予感させる。しかし、まだ一人を楽しみたい。まだ完全に大人になりたくない。そのような若者のパトスを象徴的に表すタイトルである。

 

成田凌や若葉竜也、藤原季節など売り出し中の若手のエネルギーがそのまま画面にみなぎっている。そこに混じる高良健吾が『 あのこは貴族 』の時と同じく、 condescending  な感じを出すか出さないかのギリギリの線の演技で、若者と大人、フリーターと社会人の境界線上のモラトリアム人間を好演していた。かつての親友たちが各々に成長していたり、あるいは社会参加を拒んでいたり、まるでかつての自分や自分の友人たちとの関係を思い出す世代は多いだろう。特にJovianのようなロスジェネ世代には、その傾向が強いのではないか。

 

アホな男たちのアホな乱痴気騒ぎが延々と続くが、それぞれがロングのワンカットになっているのが印象深い。ワンカットによって場の臨場感が高まるし、観ている側もその場に参加している感覚が強くなる。対照的に回想シーンでは随所にカットを入れ、カメラのアングルを変えていく。まるで記憶を色々と編集しているかのように。こういうことは結構多い。友人の結婚式などに参加して、昔の写真や映像を観ると、自分の記憶と実は少し違っていたりすることが往々にしてあるからだ。

 

主人公である吉尾とその悪友たちの現在のまじわりが、過去の様々なエピソードに繰り返し、あるいは焼き直しになっているところが面白く、リアリティがある。野郎どもの友情というのは時を超える、あるいは時を止めるのだ。おそらく本作の登場人物たちのような30歳前後の男性には、非常に突き刺さる者が多い作品であると思う。

 

割とびっくりするプロットが仕込まれているが、開始数分で非常にフェアな伏線が張られているので、これから鑑賞するという人は、そこに注意を払えれば吉である。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210530110536j:plain

ネガティブ・サイド

前田敦子は悪い演技を一切していなかったが、これは大いなるミスキャストではなかったか。観た瞬間から「ああ、このキャラの因果はこれだな」と想像がつく。

 

ある時点で舞台が切り替わるが、そこからの展開がどうしようもなく陳腐で、映像としてもお粗末だ(ガルーダ・・・)。下手なCGやVFXなど使わず、素直に高校時代の回想シーンと同じで良かった。原作の舞台のノリを持ってくるのなら、それを映画的に翻案しなければならない。映画→舞台→映画という感じで、トーンの一貫性を大いに欠いていた。

 

また結婚式場から二次会の会場に向かうはずの最終盤の「くれなずむ街」のシーンが、どう見ても盛り場からは遠く離れた場所。ロケーションありきで、絵的なつながりが無視されていた。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210530110600j:plain

総評

藤原季節が出演していること、そして青春の象徴との別れという意味では『 佐々木、イン・マイマイン 』の方が個人的には面白いと感じた。だが決して駄作ではない。良作である。モラトリアムが長くなった現代、青春ときっぱり決別するのはなかなか難しい。むしろ、青春をできるだけ長く生き続けようとする、つまり日が暮れようとしていながらも、まだまだ暮れないという人生を送る人が増えている。日暮れて途遠しとなる人も同じくらい増えているように思うが、それでも今という時代にを生きる人間にエールを送る作品に仕上がっている。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

afterparty

「二次会」の意。これは実際にネイティブも頻繁に使う表現である。ちなみに三次会はafter-afterpartyと言う。大学生の頃にアメリカ人留学生に教えてもらった時は、”You gotta be kidding me, right?”と反応してしまった。嘘のようだが、本当にそう言うのである。

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 成田凌, 日本, 浜野謙太, 監督:松居大悟, 目次立樹, 若葉竜也, 藤原季節, 配給会社:東京テアトル, 青春, 高良健吾Leave a Comment on 『 くれなずめ 』 -青春を終わらせるな-

『君が君で君だ』 -この映画に共感する人は犯罪者予備軍か熱心な映画ファンか-

Posted on 2018年7月20日2022年2月20日 by cool-jupiter

君が君で君だ 65点

2018年7月19日 梅田ブルク7にて観賞
出演:池松壮亮 キム・コッピ 満島真之介 大倉孝二 YOU 向井理 高杉真宙 光石研
原作・脚本・監督:松居大悟 

  • ネタばれは白字で表示

韓国から日本にやってきたパク・ソンヨン(キム・コッピ)にストーカー行為をする尾崎豊(池松壮亮)、ブラッド・ピット(満島真之介)、坂本龍馬(大倉孝二)の話である。以上、終わり。で、済ませてもよいが、それではあまりに芸が無いし、不親切であるし、記録にもならない。ストーカー映画というジャンルが映画において確立されているかどうかは寡聞にして知らないのだが、小説には傑作がいくつもある。Jovianの印象に強く残っているのは大石圭の『アンダー・ユア・ベッド』と吉村達也の『初恋』である。Amazonの関連商品を見るに、まだ他にもたくさんの未読の傑作がありそうだ。

元々、ブラピが恋人に振られた日に、尾崎とやけくそカラオケをしていた店で働いていたのがソンヨン、通称ソンであった。その夜、繁華街で酔った勢いで誰かれ構わず難癖をつけて行くブラピと尾崎は、女性に絡むチンピラに勢いで特攻する。当然返り討ちにあうわけだが、ソンがビール瓶を割って、男たちを脅かすことで事態は収拾。怪我で流れた血をハンカチで拭ってくれたソンに、二人は一気に恋に落ちる。そこにソンの元彼の坂本龍馬も加わり、ソンの家の裏手のアパートを借り、3人でソンを守る国を建国し、日夜ストーカー行為に励む。そんな奇妙な生活も10年目になっていた・・・

ストーカーという概念が認知されるようになったのはいつごろだったか。個人的に思いだせるのは、確かテニス選手のマリー・ピアースが元彼だったか父親だったかに付きまとわれていて、警察に相談した。裁判所は男の方に、半径20mだか50mだかに近づいてはならないと命じた、というような話をテニス中継の実況中に聞いた覚えがある。現代ではストーキングは、単に物理的に付きまとうだけではなく、ゴミ漁りや盗聴、無言電話および実際の電話、さらにはSNSでのストーキングなど、その行為のエスカレートする一方のようだ。

尾崎、ブラピ、坂本の三人は、ソンを姫に、そして自らを兵士に譬える。これは上手い比喩だ。軍の格言に「良い兵士とは考えない兵士だ」というものがある。言い得て妙であろう。軍の作戦行動には大抵の場合、損耗が織り込まれている。その現実を頭から追い出せないような者は従軍などできはしない。この三人組も同工異曲である。自分たちの好意を客観視できれば、このような犯罪行為を続けられはしないし、ソンが同居の恋人(高杉真宙)から虐待されるのを盗聴していながら、それを助けず、通報もせず、不気味な祈祷に耽る姿には嫌悪感を抱くしかない。

ことほど然様に狂った男たちを現実に呼び戻せるものは何か。本作のその回答として、カネと暴力を提示する。ソンの恋人が作った借金の取り立てにやって来る。友枝(向井理)とそのボスの星野(YOU)である。2人は彼らの国の入管を経ずに文字通り土足で入り込んでくる。それでも3人組は偏執な愛情を変えることなく、なぜか王子に借金返済の手伝いをさせて下さいとまで申し出る。ここまで来るとコメディだが、彼らの執拗な愛情に純粋さと美しさを見出した借金取りたちにも変化が表れ始める・・・

この映画の結末は賛否両論を巻き起こす。それは間違いない。しかし、純愛派が賛成するわけではないだろうし、否定派が異常な愛情そのものを否定するわけではないだろう。そのことは友枝というキャラクターの「自分は半端でいいっすわ」という台詞とその後の言動に現れる。おそらく中途半端なスタンスを取る、この結末を受け入れることができる自分と受け入れられない自分がいるというモヤモヤ感を良しとできれば、それで良いのではなかろうか。

エンドクレジットは絶対にその目に焼き付けてほしい。こういう効果を狙って松居大悟監督はこのようなキャスティングにしたのだろうか。自分がストーカー被害に遭うことも、自分自身がストーカーになることも、これはどちらも起こりうる。観客という立場からこの物語を眺めていた自分の頭を、監督にガツンと殴られたかのような衝撃を感じるクレジットであった。あのタイミングで、最後にYOUとか表示されたら、「え、俺もこの映画に登場してたの?」みたいになるでしょうよ、そりゃあ。惜しむらくは、“女子高生の頃から20年間同じ女性にストーカー行為をしていた男が逮捕された”というニュースが割と最近あったことで、映画のインパクトが薄まってしまった感は否めない。そういえば福山優治の『そして父になる』も、そんな感じだったな。現実は時に映画よりも奇なり。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, キム・コッピ, ロマンス, 日本, 池松壮亮, 監督:松居大悟, 配給会社:ティ・ジョイLeave a Comment on 『君が君で君だ』 -この映画に共感する人は犯罪者予備軍か熱心な映画ファンか-

最近の投稿

  • 『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』 -自分らしさを弱点と思う勿れ-
  • 『 近畿地方のある場所について 』 -やや竜頭蛇尾か-
  • 『 脱走 』 -南へ向かう理由とは-
  • 『 JUNK WORLD 』 -鬼才は死なず-
  • 『 リライト 』 -小説をまあまあ上手く改変-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme