Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: ヒューマンドラマ

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

『 あんのこと 』 -社会の一隅の現実-

Posted on 2024年6月19日 by cool-jupiter

あんのこと 75点
2024年6月15日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:河合優実 佐藤二朗 稲垣吾郎
監督:入江悠

 

旧シネ・リーブル梅田の頃にパンフレットを見て興味を抱いたのでチケットを購入。

あらすじ

学校にも六に通えず、母親から虐待されて育った香川杏(河合優実)は、売春と薬物使用の疑いで警察に逮捕される。しかし、そこで人情味あふれる刑事、多々羅(佐藤二朗)やジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)と出会い、更生への道を歩み始めるが・・・

 

ポジティブ・サイド

よくもここまで暗い話を描けたものだと感心する。まるでよくできたた社会派の韓国映画を観ているようだった。それを可能にしたのは第一に脚本の力、次に役者の力だろう。

 

まず、2020年6月の朝日新聞の記事だが、これは無料登録すれば読めるので、ぜひ多くの人に(映画鑑賞後に)読んでほしい(読み終わったら、すぐに登録解除のこと)。コロナによって日本社会のセーフティネットの脆さが浮き彫りになったと言われるが、問題はそもそもセーフティネットにかからない人々が最初から一定数存在するということ。劇中でも小学校にすらまともに行けなかったという人が役所で体よく生活保護申請を却下されそうになるが、そもそも不登校の時点で登校を両親に促さない行政の怠慢があったはずなのだ。杏にしても同じこと。「自己責任」(小泉政権)やら「自助・共助・公助」(菅政権)という一種のスローガンで切って捨てるのではなく、言葉の本当の意味でのインクルージョンについて考えるべきではないのか。

 

ハナさんの人生の壮絶さは想像するしかないが、虐待、性被害、薬物使用など一人で現代社会の諸問題の総合商社をやっている杏というキャラクターの内面は想像すらできない。実際に、杏の心中がナレーションや字幕などで物語られることも一切ない。すべては杏の表情や立ち居振る舞いから推測するしかないが、河合優実は見事に演じきった。ネタバレになるので書けないが、親に愛されなかった自分を、自分自身で取り戻す機会などそうそうあるものではない。それを奪われた。絶望するには充分だ。この絶望感は観る側に間違いなく感染するだろう。

 

ネガティブ・サイド

ラストシーンが意味深。新たな家族の再生なのか。それとも新たな虐待親子関係の始まりなのか。どちらとも判断しかねるが、ここはどちらなのかを入江監督にはっきりと映し出してほしかった。『 MOTHER マザー 』のラストシーンもそうだったが、解釈を観る側にゆだねるのではなく、作家としてのメッセージを明確に示してほしかったと思う。

 

総評

鑑賞後、『 トガニ 幼き瞳の告発 』を観終わった時のような虚無感を覚えた。それだけ見る者の心に澱みを残す作品だと言える。『 ギャングース 』でも見られた入江監督の社会の底辺で生きる者たちへの眼差しは、本作でさらに透徹したものになったと評していいだろう。杏というキャラクター、そしてそのモデルとなった人物にどれだけ思いを馳せられるのか。想像力を試される作品だと言える。メンタルの調子を整えてから鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

abuse

アビューズと発音する。本作には三つの abuse が描かれている。一つは drug abuse = 薬物乱用、もう一つは child abuse = 児童虐待、最後に power abuse = 職権乱用である。いずれも全く良い意味ではないが、現代のニュースを英語で見聞きする際には、悲しいかな、必要な語彙である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 チャレンジャーズ 』
『 ザ・ウォッチャーズ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 伝記, 佐藤二朗, 日本, 河合優実, 監督:入江悠, 稲垣吾郎Leave a Comment on 『 あんのこと 』 -社会の一隅の現実-

『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

Posted on 2024年6月12日 by cool-jupiter

かくしごと 60点
2024年6月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:杏 中須翔真 奥田瑛二
監督:関根光才

 

テアトル梅田の『 あんのこと 』の上映時間が合わず、こちらのチケットを購入。

あらすじ

千紗子(杏)は絶縁していた父・孝蔵(奥田瑛二)が半裸で徘徊していたことから、施設入所までの間だけ介護をするため帰郷した。ある夜、旧友の運転する車が少年をはねてしまう。その少年の身体に虐待を思わせる傷跡を見つけた千紗子は、自分がその子の身柄を引き受けようと決意して・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

杏と奥田瑛二の父と娘の距離感が生々しい。警察や記者、さらに医者は結構な確率で過程を壊してしまうとされているが、教師もそうなのか。

 

記憶喪失の少年と認知症(これも一種の記憶喪失)の父親の対比も生々しい。忘れたままでいてほしい、しかし、忘れてはいけないことを忘れないでほしいという、一種の二律背反的な思考や感情が、どんどんとセルフケア能力を喪失していく父の介護の中でないまぜになっていく過程の描写は、正直かなり堪えた。

 

特に父親がとあるシーンで、認知症ゆえの悲しい告白をするが、「今さらそんなことを口にしてどうする」と憤慨させられた。が、これは多くの昭和世代のジジイ連中の多くに共通する隠された本音。それゆえにこのシーンでの杏の涙が光る。

 

『 ミッシング 』の狂乱の母親像は一味違った母親の狂気を堪能できる一作。

 

ネガティブ・サイド

原作の小説のタイトルは『 嘘 』なのに、それを敢えて『 かくしごと 』に変えたのは何故なのだろうか。このタイトル改変だけでオチがすべて露わになってしまっている。まさか絵本を描く/書く仕事とかけたのではあるまいな。

 

飲酒運転して交通事故というのは笑えない。しかもそれを隠蔽しようというのはもっと笑えない。さらに救急車も呼ばないというのにはドン引きした。原作もこうなのか?ご都合主義もここに極まる。

 

言葉は悪いが、あのレベルの家庭の母親が文芸雑誌などを読むのか?またその夫が東京の住所ならまだしも、実家まで突き止めるか?いくらなんでもご都合主義が過ぎる。

 

総評

東出と離婚して、遠くの土地で一人で子育てするという杏のイメージがそのまま投影された作品で杏がはまり役だと見る人もいれば、あざとすぎるキャスティングだと見る向きもあるだろう。Jovianは前者だった。選択的夫婦別姓など、家族の在り方に関する議論がようやく始まりつつある日本だが、選択的な親と子の在り方についても、そのうち考えなければならないのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

adopt 

色々な意味を持つ語だが、その一つに「養子にする」というものがある。たまに adapt と混同する初習者がいるが、adopt の opt は option = 選ぶもの、だと覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』
『 チャレンジャーズ 』

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 中須翔真, 奥田瑛二, 日本, 杏, 監督:関根光才, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

『 ミッシング 』 -もう少し焦点を絞り込めなかったか-

Posted on 2024年6月2日 by cool-jupiter

ミッシング 60点
2024年6月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:石原さとみ 青木崇高 森優作 中村倫也
監督:吉田恵輔

 

風邪がなかなか治らないので簡易レビュー。

あらすじ

沙織里(石原さとみ)と豊(青木崇高)の娘の美羽が突然姿を消した。直前まで娘と一緒にいた沙織里の弟(森優作)との関係はギクシャクしたものになり、ネットでは母親に批判的な書き込みがあふれる。唯一、ローカルTV局の砂田(中村倫也)だけは親身に沙織里に寄り添うが・・・

ポジティブ・サイド

6歳の子どもの失踪など考えただけでも胸が苦しくなる。自発的に疾走するわけがないのだから、誘拐または事故に決まっている。本作は美羽の失踪の真相を追うのではなく、そこから見えてくる人間関係の変質や社会の闇に迫っていく。

 

青木崇高の演技が特に良かった。感情の表出をあまり行わない=感情があまり動いていない、というわけでは決してない。最も印象深かったのは蒲郡のホテルの喫煙所。悲しさ、悔しさ、虚しさをないまぜにしたような表情に胸を打たれた。

 

ネット上の無責任かつ批判的なコメントについて、なぜ無関係な人間がそんなことをできるのかと憤りを覚えるが、本作は「無関係な人間だからこそそんなことができるのだ」という視点を提供している。では、我々はどうすべきなのか。関わるしかないだろう。それが直接の癒しになるかどうかはわからない。しかし、関わること、そして関わることでしか得られないものがあるのは間違いない。

 

ネガティブ・サイド

メディアの恣意的な報道とその影響については同監督の『 空白 』の二番煎じに感じられた。また、中村倫也演じる砂田という男に少し尺を割きすぎ。TV局側のサブプロットをもっと削れば、佐織里と豊の二人の物語にもう少しフォーカスできたはず。

 

石原さとみの演技はかなり過剰だったように思う。というか、演技の過剰さと化粧やヘアスタイルが矛盾していたとでも言おうか。ぼろぼろの肌、ぼさぼさの髪で壊れていく様を見せるべきだった。

 

怪しい犯人的な人物をこれ見よがしに出し入れしていたが、元々真相追求型のストーリーではないと分かっているのだから、それもノイズだと感じられた。

 

総評

吉田恵輔監督は『 BLUE ブルー 』のような、非常に小さな輪の中の人間関係を描かせる名手であると思っている。だからこそ同作や『 空白 』のように、本作ももう少しキャラクターあるいはサブプロットを絞ってほしかった。それでも人間たるもの、どうあるべきかについて非常に示唆に富む回答を本作が提示しているのは間違いない。早めに劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make a prank call

よほど熱心な英語学習者でもない限り知っておく必要性は薄いが、これは「いたずら電話をする」の意。いたずら電話もその悪質性によっては一発で起訴される可能性もあるのではないだろうか、と本作を観て思わされた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 関心領域 』
『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 中村倫也, 日本, 森優作, 監督:吉田恵輔, 石原さとみ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 青木崇高Leave a Comment on 『 ミッシング 』 -もう少し焦点を絞り込めなかったか-

『 デス・ストーム 』 -a typhoon day DVD-

Posted on 2024年5月17日 by cool-jupiter

デス・ストーム 40点
2024念5月14日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ゾーラ・バーチ
監督:リンジー・ゴスリング

 

C級ディザスター・ムービーかと思い、近所のTSUTAYAでレンタル。

あらすじ

アメリカの片田舎のミニンワには、様々な問題を抱える人々が暮らしていた。そこに超大型の竜巻が迫りつつあり・・・

 

ポジティブ・サイド

片田舎にこそ社会の縮図が存在するのだなと感じさせられた。

 

低予算ゆえに肝心のトルネードの脅威はほとんど間接的にしか描かれない。ただ、それが逆に想像を掻き立てる。

 

厳しい現実、救いのない現実が容赦なく展開するが、最後に小さな命が助かるのは救いか。

 

ネガティブ・サイド

群像劇だが、やや取っ散らかりすぎ。もう少し登場人物は減らせたように思う。特に、とあるクズ男の存在は不要に感じた。

 

TVアナウンサーの男性(名前忘れた・・・)の家族愛は麗しいが、被災地にのこのこやってきて、けが人を車で運んで、そして家族と再会・・・を喜ぶ前に、自分の報道の誤りと向き合う必要があるんちゃうの?

 

低予算映画ゆえか、誰も彼も演技が過剰。セリフ回しも拙い。また意味の分からないカメラワークも随所に見られた(投げられた車のカギを受け取るシーンなど)。

 

総評

ディザスター・ムービーかと思ったら、意外や意外、ヒューマンドラマだった。『 ヘヴィ・ドライブ 』並みのカバー詐欺。ただ小さな町の複雑な人間模様を眺めるのは、それなりに面白い。手持ち無沙汰の雨の日、あるいは台風の日の暇つぶしにはいいのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

issue

issue は多義語だが、劇中では A tornado warning has been issued. = 竜巻警報が発令されました、のように使われていた。issue = 発する、である。名詞でも a special issue = 雑誌の特別号のように使われる。TOEIC600点レベルなら知っていないとおかしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 不死身ラヴァーズ 』
『 関心領域 』
『 バジーノイズ 』

https://amzn.to/4dNIRUv 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, カナダ, ゾーラ・バーチ, ヒューマンドラマ, 監督:リンジー・ゴスリングLeave a Comment on 『 デス・ストーム 』 -a typhoon day DVD-

『 あまろっく 』 -尼崎市民、観るべし-

Posted on 2024年4月16日 by cool-jupiter

あまろっく 70点
2024年4月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:江口のりこ 中条あやみ 笑福亭鶴瓶
監督:中村和宏

 

尼崎市民としては鑑賞すべきだろうということでチケット購入。

あらすじ

東京でコンサルタントとして働いていた優子(江口のりこ)だったが、理不尽なリストラにより尼崎の実家に戻ってくることになった。自堕落な生活を送っていたところ、父の竜太郎(笑福亭鶴瓶)が20歳の早希(中条あやみ)と再婚すると言う。遥かに年下の義理の母の出現に困惑する優子だったが・・・

 

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

映画の宣伝で江口のりこがあまりにも無気力だったが、実際は頑張って演技していた。中条あやみも標準語の時よりも良い演技を披露できていたように思う。

 

家族とは何か。『 焼肉ドラゴン 』(この舞台は隣町の伊丹。ちなみにこの作品での焼肉の焼き方監修をした人が尼崎で商売をしておられる。山里食品ではない、念のため)でも追究されたテーマで、家族とはそもそも壊れて、新しく生まれる、あるいは作るものだった。

 

本作は65歳の男性と20歳の女性の再婚を通じて、年下の義理の母親はありなのか?適齢期を過ぎても結婚しないパラサイトはありなのか?シングルマザーに支えは必要なのか否か?

こうした新たな問いに一定の答えを出そうというのが本作である。赤の他人の優子と早希の距離が徐々に縮まっていく過程はユーモラスであり現実的でもある。

 

尼崎市民は観ていて楽しめるだろう。Jovianの家の目と鼻の先のうどん屋だったり、散歩コースのすぐ脇の工場が近松鉄工所だったり、魚釣り公園や寺町など、まさにご当地ムービー、おらが町の映画だと感じられた(阪急沿線民には不評かもしれない)。

ネガティブ・サイド

冒頭からいきなり「尼ロックなんか誰も知らんわ!」という台詞が聞かれるが、ホンマかいな。今も昔も尼崎市内の結構な数の小学校が社会科見学で尼崎閘門に行っているはずなのだが。

 

工場でとあるアクシデントが起きるが、工都・尼崎の工場職人がこんな杜撰なことをするんかな?ちょっと無理のある脚本に思えた。

 

ブランクが何年もあるはずの優子がいきなり第一線のコンサルタント然として話し出すシーンには違和感ありあり。普段から経済ニュースや経済紙に目を通していたという描写があれば、少しは説得力も生まれるのだが。

 

2018年の台風を元ネタにしたと思しきシーンがあるが、地元民としては少し複雑。尼ロックが水害を防いだのは確かだろうが、あの時はとんでもない暴風被害が出て、杭瀬の工務店のおっちゃんが「2か月で3年分の仕事量や!」と特需を享受していた。フィクションだと思えばいいのだろうが、だったら阪神淡路大震災を持ち出すのもやめてほしかった。

 

『 ハルカの陶 』でも思ったが、地理がめちゃくちゃ。まあ、突っ込んでも意味がないんやけどね。ただJR沿線民と阪神沿線民は楽しいはず。

 

総評

実際は60点だが、地元民のよしみで10点おまけしておく。某映画サイトでやたらと高評価されているが、これは兵庫県民、特に尼崎市民が先行上映を観て星を与えていることに注意されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

complete strangers

「赤の他人」の英訳。他にも total strangers という表現もある。劇中では「あんたと私は赤の他人や!」というのがあったが、英語だと You and I are complete strangers! となるだろうか。間違っても red strangers とは言わないように。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』
『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 中条あやみ, 日本, 江口のりこ, 監督:中村和宏, 笑福亭鶴瓶, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 あまろっく 』 -尼崎市民、観るべし-

『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

Posted on 2024年3月13日 by cool-jupiter

ソウルメイト 85点
2024年3月10日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ダミ チョン・ソニ ピョン・ウソク
監督:ミン・ヨングン

 

中国映画『 ソウルメイト 七月と安生 』の韓国リメイク。なまなかにリメイクするだけになってしまうのでは・・・という懸念を吹っ飛ばす大傑作に仕上がっている。

あらすじ

少し内気なハウン(チョン・ソニ)は自由なミソ(キム・ダミ)と出会い、やがて二人は無二の親友になっていく。しかし、ハウンがジヌ(ピョン・ウソク)と付き合い始めたことで二人の関係に少しずつ変化が生じて・・・

ポジティブ・サイド

オリジナルが傑作だったので、リメイクしても質が低下するだけでは・・・。鑑賞前はそう感じていたが、とんでもない。残すべきところは残し、変えるべきところは変える。傑作が大傑作に生まれ変わった。

 

話の大筋は原作と同じ。ただし、大きな変更もある。原作では七月と安生の二人の友情がネット小説によって表現されていたが、本作では小説を絵画に置き換えた。これによって本作はいきなりミソの巨大な肖像画を見せられることになる。つまり二人の友情、その産物が一気に可視化される。原作では文字だったものが、その後の映像によって雄弁に語られたが、本作ではそれを一気にビジュアル化した。正直なところ「いきなりこんなもの見せて大丈夫か?壮絶なネタバレでは?」と怪訝にすら感じたが、これは完全に杞憂だった。というか、小説を絵画にすることで、終盤のドラマがこれほど泣けるものになるとは・・・

 

キム・ダミはチョウ・ドンユイに勝るとも劣らぬ演技でミソを好演。子役もどこで探し出してきたのか、キム・ダミにそっくり。それにしても高校生から20代後半ぐらいまでを全く違和感なく演じ分けるキム・ダミやチョン・ソニの演技力の高さよ。もちろんそれを演出するミン・ヨングン監督の手腕もあるのだろうが、日本で本作をリメイクできるだろうか。ミソが河合優実で、ハウンが南沙良?監督は今泉力哉または三宅唱とか?

 

閑話休題。オリジナルでは七月はいつもボーイフレンドの自転車に二人乗りしていたが、今作のハウンはいつもミソの原付の後ろに乗っている。この違いは大きいと感じた。特に中盤のとある大きな出来事の後、いつも二人一緒だったミソとハウンだったはずが、ミソはハウンとジヌをある意味置き去りにして先に帰ってしまう。これがその後の二人の関係性を何よりも雄弁に物語っていた。

 

その後、済州島を出ることになったミソと済州島に残ることになったハウン。オリジナルを忠実になぞりつつも、わずかな脚色を施している。印象的なのはミソという名前が漢字では微笑となるところ。常に明るく笑顔をたたえていたミソが、思わぬタトゥーを彫っていたり、あるいは一人暮らししていたアパートの壁にほんのちょっとした落書きをしていたり。本人が語らずとも、それらがミソの心情を見事に代弁していた。物語るオリジナルから、シネマティックなリメイクへ。この脚本家、相当な手練れ。

 

その後、再会を祝した二人だったが、離れて過ごした間に際立つようになってしまった考え方や行動様式から仲違いへ。このあたりも原作に忠実ながら、しかし巧みに換骨奪胎している。それでも離れられない二人。原作でも光と影の関係に言及されていたと記憶しているが、ある時から常に自分の先へと歩いていくミソに対し、ハウンはついに自分でも別世界へ飛び出していく。今まで影だった自分が、今度はミソを影にしてしまう。

 

ここで二人が小さな頃から対照的な絵を描いてきたことが大いなる伏線となって活きてくる。抽象的な絵を描くミソと極めて写実的な絵を描くハウン。この二人の絵が交わる瞬間のドラマに涙を流さずにはいられようか。絵を描くということが、これほどの深い愛情表現になるのか。絵を描くという行為が、これほど深い対象理解につながるのか。そして絵を描くということが、これほど自分の心の中を映し出すものなのか。冒頭で大写しされるミソの肖像画が、まったく違った意味を帯びて迫ってくる最終盤の展開に涙が止まらなかった。間違いなく2024年のベストである。

 

ネガティブ・サイド

あのケーキは一体どこから出てきたのだろうか。

 

原作では「ダサい下着」を思いっきりカメラに映し出していたが、本作はそこを回避。うーむ・・・

 

総評

ミン・ヨングン監督の情報がほとんど見当たらないのだが、いったい何者なのだろう。日本では漫画のドラマ化の問題点が浮き彫りになって久しいが、原作を脚色するなら原作を超えなければ意味がない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバラマ

使ってはいけない韓国語の一つ。意味はクソ野郎。劇場の照明点灯後のJovian妻の第一声は「ジヌはクソ野郎やな」だった。クソ野郎=シバラマである。この言葉が実際にどのように使われるのかを知るには『 息もできない 』を鑑賞のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, キム・ダミ, チョン・ソニ, ヒューマンドラマ, ピョン・ウソク, 監督:ミン・ヨングン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

『 夜明けのすべて 』 -人は生きた星-

Posted on 2024年3月3日 by cool-jupiter

夜明けのすべて 80点
2024年3月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:上白石萌音 松村北斗 芋生悠
監督:三宅唱

 

『 ケイコ 目を澄ませて 』を三宅唱監督の作品ということでチケット購入。国内作品の年間ベスト候補と言ってよい出来栄えであった。

あらすじ

PMSのせいで感情が不安定になってしまう藤沢(上白石萌音)は、上司への反発や薬の副作用から来る居眠りのため会社を退職する。転職先の栗田科学でも同僚の山添(松村北斗)の無気力な勤務態度に怒りを爆発させてしまうが、彼もパニック障害のため生き辛さを抱えていて・・・

 

ポジティブ・サイド

大昔、看護学校でPMSについて習った記憶がある。なぜなら「私、PMSかも」と言い出す女子が大勢いたから。程度の差こそあれ、エストロゲンやらの各種ホルモンのストームが起きれば、それは肉体にも精神にも多大な影響を及ぼす。人類の半分は女性で、女性の10代から50代ぐらいは、誰でもPMS予備軍と言って差し支えない。これを単なる女性特有のイライラやヒステリーで片づけず、れっきとした病気であると真正面から描いた作品は今作が初めてではないだろうか。劇中のモノローグでもあった通り、診断名がつくことでホッとする人も多いはず。

 

同様のことはパニック障害にも当てはまる。Jovianの仕事の大部分は大学等で教える非常勤講師の指導で、間接的にではあるが、毎年のべ数万人(実数だと約12000人)の高校生や大学生に関わっている。近年圧倒的に多いのは、LD、ADHD、鬱病・双極性障害、パニック障害だと感じる。開講直前、あるいは開講直後から3週間ぐらいの間に学校から要配慮申請が届く。パニック障害は一位ではないが、おそらく心理・精神面での配慮だと3位か4位ぐらい。数にすると毎年10人ぐらいだろうか。なので合理的配慮を要すると学校が判断するレベルのパニック障害は10数人に一人。おそらく配慮は必要としないレベルのパニック障害は百数十人に一人ほどの割合で存在すると考えられる。つまり、それほど珍しい病気ではない。

 

主演の二人の自然体の演技は見事だった。同病相憐れむではないが、お互い病気持ちであることを知った藤沢さんのエールを即座に否定する山添君のナチュラルな無礼さ。そして藤沢さんに不用意に髪をバッサリ切られた時の邪気のない反応。このコントラストに、我々は知らず知らずのうちに山添君をパニック障害というフィルターで見ていたことに気付かされる。

 

本作は光と影の使い方が非常に巧みで印象的。栗田科学のオフィス内、街中で自転車に乗る山添君、そして移動式プラネタリウムの中など、人物の心理的な状態が視覚的に表現されている。といっても明るい=明るい精神状態、暗い=暗い精神状態では決してない。むしろ、タイトルの通りに夜明け前の暗さにこそ希望が宿っていることを示してくれていたように感じる。

 

本作に登場する人物は、誰もが目に見えない傷を抱えている、栗田科学の社長然り、山添君の元上司然り。彼らの傷が癒されることはないのだが、しかし彼らが救われることは可能なのだ。それは直接的な救済ではない。むしろ、自分以外の誰かが救われることで自分が救われる。そうしたことを教えてくれる。藤沢さんと山添君の奇妙な関係も、そうした視点から見つめることで理解することができる。

 

本作は観る側の想像力を喚起しようとする。藤沢さんのお母さんが毛糸の手袋を編むのにどれほどの時間がかかったのか。山添君の同僚の大島さんが何故最後に「外で話したい」と言ったのか。ドキュメンタリー制作を行う中学生のダンの母親は、シングルマザーなのか否か。明確な答えは何も提示されない。我々はただ想像するのみである。それこそが本作の発したいメッセージなのではないかと思う。

 

太陽が西の空に沈むことはない。なぜなら太陽は動かず、地球こそが太陽の周りをまわっているからだ。これは厳然たる科学的事実(ただし厳密には太陽も天の川銀河内を超高速で公転しているし、その天の川銀河も超高速で移動しているのだが)。それでも我々は夜空の星々に意味を見出す。信じられないほどの距離を隔てた星々が、信じられないほどの時間をかけて地球に届けた光を見て、我々は星座を見出し、物語を生み出す。それは、どんなに離れた人間同士でも、お互いを照らし、意味ある関係を生み出せるという希望に他ならない。夜だからこそ見える光があるのだ。

 

ネガティブ・サイド

物語冒頭のモノローグの多用はいただけない。藤沢さんというキャラクターの苦悩を、それこそ回想シーンを通じて想像させるべきで、これを真正面から語ってしまったのは何故なのか。

 

個人的には芋生悠の出番がもう少し欲しかったかな。

 

総評

人間の弱さや儚さを映し出すことで、逆説的に人間の強さや優しさを教えてくれる作品。演技・演出、撮影、照明、音楽・音響のすべてがハイレベル。原作小説をかなりアレンジしているそうだが、発しようとするメッセージは同じなはず。他者に向けるまなざしをほんの少し優しくしようと思えた。2024年度のベスト候補の最右翼。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Polaris

北極星の意。元々は stella polaris = 極の星だったが、stellaが省略されて polaris が定着した。ここでソラリスを思い浮かべた人はラテン語の知識またはセンスがある人。これも sol =太陽に、形容詞化の接尾辞 aris がくっついたもの。ただ日常会話では圧倒的に the North Star を使うことが多い。北極星を Polaris と呼ぶのは天文学的な文脈に限られる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ソウルメイト 』
『 落下の解剖学 』
『 マリの話 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, ヒューマンドラマ, 上白石萌音, 日本, 松村北斗, 監督:三宅唱, 芋生悠, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:バンダイナムコフィルムワークスLeave a Comment on 『 夜明けのすべて 』 -人は生きた星-

『 僕らの世界が交わるまで 』 -コミュ障家族の再生物語-

Posted on 2024年1月23日 by cool-jupiter

僕らの世界が交わるまで 65点
2024年1月20日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジュリアン・ムーア フィン・ウルフハード
監督:ジェシー・アイゼンバーグ

 

ジェシー・アイゼンバーグの監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

DV被害者のシェルターを運営する母エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、音楽のライブ配信に夢中の息子ジギー(フィン・ウルフハード)は、互いを理解しあえず、すれ違うばかり。そんな中、シェルターに受け入れた女性の息子を第二の我が子のように思い始める。一方でジギーも、政治を知的な同級生女子に惹かれていき・・・

ポジティブ・サイド

コミュ障というのは、単に喋りが下手という意味ではない。中島梓は『 コミュニケーション不全症候群 』で、コミュニケーション不全症候群とはコミュニケーションの対象を人間とそれ以外に分けて、人間以外とのコミュニケーションにより親和性を持つことだと喝破した。本作に引きつけて言うなら、PCのモニターの向こう側のリスナーに夢中なジギーは立派なコミュニケーション不全症候群患者である。その母も、息子のジギーを独立した人格の持ち主ではなく、育成シミュレーションゲームのキャラか何かだと思っている節がある。これも立派なコミュニケーション不全症候群患者だと見なせるだろう。

 

本作は、この困った母と息子が互いに向き合うようになるまでを丹念に描いていく。面白いのは、親子というのは似たもので、エヴリンもジギーもお互いに真摯に向き会えばいいものを、わざわざ代替の対象を見つけ出して、それに執着していく。ジギーは聡明で、政治を語り、集会にも参加するアクティブな同級生女子に惹かれていく。観ながら「おいおい、その娘はお前の母ちゃんの若い頃そっくりなんやぞ?」と思いながら、ある意味でハラハラしながら観ていた。同時並行で、エヴリンはシェルターに転がり込んできた女性の息子がよくできた母思いの孝行息子ということで、彼を疑似息子に見立てて、再度の育成ゲームに乗り出す始末。

 

この絶妙なすれ違いが終わり、親子が互いに向き合う過程が、原題 = When You Finish Saving the World(あなたが世界を救ったら)によくよく表れている。マザー・テレサは日本人に「インド人ではなく、まずは家族を気にかけてください」と言った。最近の『 コンクリート・ユートピア 』でも「修身斉家治国平天下」が聞かれた。治国や平天下を語る前に、まずは家族や家庭に向き合うべし。過度に説教臭くなることなく、かといって安易なお涙頂戴になることなく、とある家族の姿を淡々と描いていく。自分もしっかりしなくちゃ、と感じられる人はきっと多いはず。

 

ネガティブ・サイド

エヴリンの妻、ジギーの父親の存在感がイマイチだった。中途半端なインテリで、自分の意見というものがない。これなら別に、エヴリンをシングルマザーに設定しても良かった。

 

ジギーがライラに嫌われてしまう経緯をすべてライラの言葉で説明してしまうのは残念だった。ライラの態度や周囲の視線から、自分で何かを悟るというシークエンスにしてほしかった。

 

エンディングが少し雑。『 スリー・ビルボード 』と同じで、もう1~2分でいいので、その先が欲しかった。

 

総評

コミュ障家族というのは、おそらく先進国あるいは経済が一定程度に発展した国では必然的に発生するはず。職場や学校という家庭以外に属するコミュニティがあり、なおかつ自宅には個室があるという条件がそろえば、本作のような物語は実はそう珍しくないのではないかと思う。Z世代云々という矮小な世代論ではなく、もう少し普遍的な親子像、家族像を模索しようとしているという視点で本作は鑑賞されるべきではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sup

これは What’s up? の短縮形。What’s up? → Wassup? → Sup? という具合にどんどん短縮されていく。しばしばネットでは What’s up? に対してどう反応するか?という記事やら解説が出回るが、正しい答えなどない。ただし日常レベル(Jovianの体感)で最もよくあるやりとりは

 

A: Hey dude, sup?
B: Hey!

 

または

 

A: Sup, man?
B: Sup?

 

のようなものである。本作でもそういうシーンがある。Sup? を使えればそれだけで英会話中級者だろう。それだけくだけた感じで話せる友達がいるということだから。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 VESPER ヴェスパー 』
『 みなに幸あれ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ジュリアン・ムーア, ヒューマンドラマ, フィン・ウルフハード, 監督:ジェシー・アイゼンバーグ, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 僕らの世界が交わるまで 』 -コミュ障家族の再生物語-

『 ブルーバック あの海を見ていた 』 -母と娘と海を巡る珠玉のドラマ-

Posted on 2024年1月14日 by cool-jupiter

ブルーバック あの海を見ていた 80点
2024年1月7日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ミア・ワシコウスカ ラダ・ミッチェル
監督:ロバート・コノリー

簡易レビュー。

 

あらすじ

海洋生物学者のアビー(ミア・ワシコウスカ)は母ドラ(ラダ・ミッチェル)が脳卒中で倒れたとの連絡を受け、帰郷する。幸いドラは一命をとりとめたが、言葉を発することができなくなってしまった。母の介護のために実家に滞在することになったアビーは、母と過ごした海、そしてそこで友情をはぐくんだ魚、ブルーバックを思い起こして・・・

 

ポジティブ・サイド

オーストラリアの海の美しさが印象的。『 ブレス あの波の向こうへ 』は海の上だったが、本作は海の中をリアリズムたっぷりに映し出してくれる。映像的には少々薄暗いが、実際の海の中はあんな感じ。逆に『 アクアマン 』がいかにファンタジーなのかが分かる。

 

母と娘が海で育む奇妙な絆と、アビーがダイビングのたびに築いていくブルーグローパーとの奇妙な友情が心地よい。家族の物語が環境保護のメッセージと密接にリンクしている。ブルーバックと名付けられたグローパーが、グロテスクながら実はなかなかキュート。どうもCGではなく人形らしい。もちろんモーションキャプチャーは使っているのだろうが、やはりCGには出せない味があった。

 

石垣島やら、辺野古埋め立てやら、日本の状況もオーストラリアと似たり寄ったり。非常にローカルな物語が、実はグローバルな問題提起にもつながっているのだと実感させてくれる。

 

ネガティブ・サイド

物語の構成に難あり。最初の数日は病院に泊まり込み、あるいは近くのホテルに泊まりながら母親を看病する。そして退院できるとなった時に、はじめて実家を訪れて・・・という見せ方にしないと、アビーが回想する過去の出来事の結末が最初にすべて見えてしまっていた。

 

総評

驚きに欠けるドラマではあるが、そのぶん人間そして大自然との関係が濃密に描かれる。それも言葉ではなく映像と音楽で情感豊かに。同じオーストラリア産でも『 TALK TO ME トーク・トゥ・ミー 』は少し波長が合わなかったが、今作では至福の時間を味わえた。1月にして年間ベスト候補であると断言したくなる出来栄えである。できるだけ多くの人に鑑賞してほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

deepest

作中では The sea is deepest here. =「この海はここが一番深い」のような使われ方をしていた。通常、最上級には the がつくが、比較対象が自分自身の場合はその限りではない。

I’m the most energetic in the morning. 
(他にもそういう人はいるが)午前中に一番エネルギーが出せるのは僕だ。

I’m most energetic in the morning. 
僕は(他の時間帯の自分自身に比べて)午前中が一番エネルギーが出せる。

この二つのセンテンスの違いを把握しておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アクアマン/失われた王国 』
『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, オーストラリア, ヒューマンドラマ, ミア・ワシコウスカ, ラダ・ミッチェル, 監督:ロバート・コノリー, 配給会社:エスパース・サロウLeave a Comment on 『 ブルーバック あの海を見ていた 』 -母と娘と海を巡る珠玉のドラマ-

投稿ナビゲーション

過去の投稿
新しい投稿

最近の投稿

  • 『 桐島です 』 -時代遅れの逃亡者-
  • 『 あの夏、僕たちが好きだったソナへ 』 -青春を追体験する物語-
  • 『 ジュラシック・ワールド/復活の大地 』 -単なる過去作の焼き直し-
  • 『 近畿地方のある場所について 』 -見るも無残な映画化-
  • 『 入国審査 』 -移住の勧め・・・?-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年8月
  • 2025年7月
  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme