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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ヒューマンドラマ

『 風が吹くとき 』 -アポカリプス後の世界を描く-

Posted on 2024年8月17日 by cool-jupiter

風が吹くとき 80点
2024年8月15日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:森繫久彌 加藤治子
監督:ジミー・T・ムラカミ

 

8月15日ということで、リバイバル上映されている本作のチケットを購入。本作はたしか小学6年生ぐらいの時に、公民館で無理やり見せられたような記憶がある。

あらすじ

ジェームズ(森繫久彌)とヒルダ(加藤治子)の老夫妻は英国の郊外でのんびり暮らしていた。ある日、国際情勢が急速に悪化し、戦争が不可避となる。ジェームズは政府と州議会が発行している手引きに従って、屋内シェルターを作る。その後、ソ連による核ミサイルが本当に発射され・・・

ポジティブ・サイド

様々な事柄がユーモアたっぷり、皮肉たっぷりに描かれている。たとえばヒルダが食器を洗剤で洗った後、水ですすぐことなく布巾で拭くのは、1980年代や1990年代の国際結婚を特集したテレビ番組などではお馴染みの光景だった。また、ジェームズの恐妻家としての面もたびたび描かれ、日常パートでもサバイバルパートでも、そこだけを見れば既婚者としては面白い。

 

もちろん、本作の眼目はそこではなく核戦争の恐怖こそが主眼。ただ単に核の威力を描くのではなく、核爆発後の社会のありようをリアルに描き出した点こそ本作の特長だ。

普通に考えれば地下ではなく一階に作るシェルターにどれほどの効果があるかは不透明だし、そもそもコンクリートではなく木造のドアでそれを作るのは滑稽ですらある。しかし、ジェームズはそんなことはお構いなし。何故か?一つには先の戦争(第二次世界大戦)を生き残ったという生存者バイアスのせい。もう一つには、最後には政府が何とかしてくれるという楽観主義。しかし、これは単なる楽観主義ではなく、もはや国家主義あるいは全体主義ともいうべき思想に昇華している。国家が危急存亡の秋であれば男性はすべて召集されるというのは、現代のウクライナやロシアをも超えた非常態勢で、それを半ば常識のように語るジェームズには怖気を振るってしまう。妻のヒルダも、戦争を生命や財産の危機ではなく、思い出のように語ってしまう能天気ぶり。「私はスポーツと政治には興味がありません」というのは、地球の反対側の島国にも半分ぐらい当てはまっている。そうした国民を多数要する国の末路は推して知るべし。

 

核爆発後の世界でも、ある意味でのんきに二人だけの完結した世界で暮らすジェームズとヒルダ。その二人が徐々に衰弱していく様子は見るに堪えない。水道、電気、ラジオ、新聞配達に牛乳配達まで止まっているのに、すぐに政府のレスキューチームがやってくると信じるのは、やはりこの世界ではそれだけ国家主義あるいは全体主義が浸透しているからなのか。家の外に出るのはまだしも、放射性物質をたっぷり含んだ雨水を貯水して生活用水にするとは。いや、トイレに使うのは可だが、飲むのはアカンよ・・・

 

国家を頼りにすれども、救助は来ない。衰弱して、どんどん弱気になっていく妻に対してジェームズができることは祈ることだけ。その祈った先に、果たして神はいるのか。

 

一定以上の世代からすれば、漫画『 はだしのゲン 』や絵本『 おこりじぞう 』、アニメ映画『 トビウオのぼうやはびょうきです 』などで核兵器および核爆発後の被害の大きさや悲惨さは周知されていたが、『 はだしのゲン 』が悪書扱いされるようになった現代は相当に剣呑と言うか、本当に戦争前夜、戦争まで十数年という感覚すら覚える。そんな中で本作がリバイバル上映されたことの意味は決して小さくないと考える。ややエロティシズムを感じさせるシーンがあるが、小中学生でも十分に理解できる内容と構成になっている。英国だけでなく、世界中で定期的に上映してほしいと切に願う。

 

ネガティブ・サイド

ジェームズの知識の偏りや欠落具合が気になった。冒頭の図書館で、ジェームズが他者と話す、あるいは新聞以外の雑多な書籍などに目を通しながらも、本当の意味では興味もないし、理解してもいないという描写が欲しかった。

ソ連を途中でロシアを表現するようになっていたが、ソ連結成は1922年なのでジェームズの記憶の混濁?それとも日本側の翻訳ミス?

総評

8月15日は敗戦日。終戦日でも終戦記念日でもない。大学時代、ドイツ人に「ドイツだと敗戦日と言うぞ」と言われて、終戦記念日という表現に違和感を抱き始めたことを今でも覚えている。戦争に巻き込まれることはあっても、戦争を自分から起こしてはいけないし、核を撃たれる前に降伏しないといけない。というか、核を許容してはいけない。テアトル梅田はだいたい五分の入りだった。戦争、就中、核戦争に対する意識を持つ人がそれだけいると見るべきか、それだけしかいないと見るべきか。Jovianは前者だと思いたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

shelter

避難所の意。take shelter =避難する、という形で使われる。しばしば take refuge と混同されるが、take shelter は「安全な場所(文字通りにシェルター)に逃げ込む」という意味であるのに対し、take refuge は危険から逃れて安全な場所まで行くという意味。英検準1級、TOEIC800を目指すなら違いを理解しておくこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』
『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, A Rank, アニメ, イギリス, ヒューマンドラマ, ホラー, 加藤治子, 森繫久彌, 監督:ジミー・T・ムラカミ, 配給会社:チャイルド・フィルムLeave a Comment on 『 風が吹くとき 』 -アポカリプス後の世界を描く-

『 エベレスト 』 -下りてくるまでが登山-

Posted on 2024年8月10日 by cool-jupiter

エベレスト 40点
2024年8月7日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジェイソン・クラーク ジョシュ・ブローリン
監督:バルタザール・コルマウクル

 

涼を求めて近所のTSUTAYAからレンタル。

あらすじ

エベレスト登頂を目指してカトマンズに多くの人間が集まった。その中には腕利きガイドのロブ・ホール(ジェイソン・クラーク)や自信にあふれるベック・ウェザーズ(ジョシュ・ブローリン)の姿もあった。彼ら彼女らはそれぞれの決意を胸にエベレストの征服を目指して歩み出すが・・・

 

ポジティブ・サイド

「なぜエベレストに登る?」「そこにあるからだ」という序盤の登山家たちのやりとりで、「ああ、登山バカの物語だな」と感じられた。ここで聞かれる日本人登山家の難波康子の言葉は大いなる〇〇フラグだったのか、と鑑賞後に感じられた。

 

エベレストという過酷すぎる環境を映像で描くことには成功していた。山は見上げる、人は見降ろすというカメラアングル多数で、常に山が上位という視点が一貫していた。特にクレバスを梯子でわたるシーンは、絶対に落ちないと分かっていてもヒヤッとするシーンだった。

 

ロブ・ホールには不本意ながらも共感した。「金を払っているんだぞ!」という顧客の要望に応えようとする思いと、これ以上の登山は不可能だと判断する理性の葛藤は、たいていのサラリーマンなら経験済みだろう。この遭難事故が彼のプロフェッショナリズムを強化したことは間違いない。

 

ネガティブ・サイド

序盤にガイドやシェルパについてベックが文句を言うシーンが多くあるが、これは事実なのだろうか。登山家よりも、はるかにエベレストのプロであるはずの彼らの言うことを軽視するような輩が主人公一人というのは受け入れがたかった。

 

『 神々の山嶺 』でも感じられたが、様々な装備や設備が登場するが、それらがどのような役割を果たしてくれるのかを少しで良いので説明してほしかった。トルコの五輪射撃代表銀メダリストの無課金おじさんが話題だが、普通は装備に投資する。何故それらに投資するのかについては、少しで良いので説明が欲しかった。

 

家族や恋人のやりとりのパートが、あまりにもこれ見よがしというか、くどかった。山のパートにもう少し比重を置くべきではなかったか。

 

白人男性だらけの中、日本人の難波康子にほとんど焦点が当たらない。2010年代前半のハリウッドは良い意味でも悪い意味でも politically correct ではなかったということがうかがい知れる。

 

総評

大自然に挑むといえば聞こえはいいが、本作の残す教訓は「専門家の言うことは聞け」、「自然は乗り越える対象ではなく畏怖する対象」ということだろうか。死に瀕する中で顧みてこなかった家族の姿が浮かんでくることを、感動的と捉えられるかどうかは人による。個人的には「うーむ・・・」だった。乗り越えるべきハードルは無数にあるが、『 神々の山嶺 』の製作スタッフで難波康子物語を作ってほしいと、本作を通じて強く感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Why do you climb?
Because it’s there.

「なぜ山に登るのか?」「そこに山があるからだ」という、よく知られた問答。もともとはジョージ・マロリーの言葉で、おそらく世界中で知られている。こうしたやり取りを実際の会話ですることはないだろうが、知っておくこと自体は損にはならないはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ツイスターズ 』
『 先生の白い嘘 』
『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』

 

エベレスト [Blu-ray]

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  • ジェイソン・クラーク
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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, イギリス, ジェイソン・クラーク, ジョシュ・ブローリン, ヒューマンドラマ, 歴史, 監督:バルタザール・コルマウクル, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 エベレスト 』 -下りてくるまでが登山-

『 YOLO 百元の恋 』 -オリジナル越えの傑作-

Posted on 2024年7月17日 by cool-jupiter

YOLO 百元の恋 80点
2024年7月16日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:ジア・リン ライ・チァイン
監督:ジア・リン

 

『 百円の恋 』の中国リメイク。『 ソウルメイト 七月と安生 』が『 ソウルメイト 』としてリメイクされたのと同じくらいの、リメイク成功と言える。

あらすじ

ドゥ・ローイン(ジア・リン)は一度は就職したものの、すぐに離職。以来10年間、実家で親のすねかじりをしていたが、妹と大ゲンカしたことでローインは衝動的に家を出る。ある時、ひょんなことから知り合ったボクサーのハオ・クン(ライ・チァイン)への思慕から、ローインはボクシングジムに通い始め・・・

ポジティブ・サイド

『 百円の恋 』の安藤サクラも痛々しいキャラ設定だったが、本作のローインはそれに加えて100キロの巨体。恋人も親友もいるが、実はその二人が自分に隠れて付き合っているという、笑うに笑えない状況で物語は始まる。このあたりはオリジナルに上手く「肉付け」しているだけだが、中盤でローインが妹の提案に乗って、とある仕事を引き受けたあたりから「呆れるほどに痛く」なる。

 

そして突如として鳴り響く、あの楽曲!そして、春夏秋冬、トレーニングを通じてみるみる痩せてゆくローインをこれでもかと映し出す。これまでのボクシング映画が実はほとんどフォーカスしてこなかった、文字通りの意味での迫真の減量である。壮絶とはまさにこのこと。ロバート・デ・ニーロもこれは称賛するに違いない。

 

そしてローインの初の試合。ここでは『 クリード チャンプを継ぐ男 』にもあった、1ランドすべてをワンカットで見せる手法を採用。ジア・リンは監督としても相当に先行作品をリスペクトしているようである。

 

最後は『 プラダを着た悪魔 』のアン・ハサウェイよろしく、颯爽と去っていくローイン。このあたりもオリジナルと同じではあるが、カタルシスの度合いはこちらの方が上。奔放の駄作『 レッドシューズ 』も、せめてこのような絵作りが出来ていれば評価ももう少し上がっただろうにと思わされた。

 

エンドクレジットでは、ジア・リンがローインになっていくシーンが克明に映し出される。『 百円の恋 』の試合前の入場シーンは安藤サクラの悲壮感と決意が前面に出ていて印象的だったが、本作ではそこ「生まれ変わり」のシーンだったのだなということが、より鮮烈な印象を伴って想起された。

 

ネガティブ・サイド

あの彼氏と親友には最終盤にもう一度だけ出てきてほしかった。

 

総評

傑作。『 百円の恋 』を観ていなくても楽しめるし、鑑賞済みであればもっと楽しめる。「あの音楽」を聞いて自動的にアドレナリンが出るような人は、今すぐにでもチケットを購入して劇場鑑賞してほしい。中国映画界はハリウッドや邦画からも学ぶ姿勢が見られるが、それは「近いうちに追い抜いてやる」という意思表示に他ならない。韓国映画に抜かれて久しい日本の映画業界だが、中国映画界に本格的に

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

姐

ジエと発音する。「姉」の意。劇中で何度かローインがこう呼ばれる。日本語でも姉の「し」と読むので、なんとなく音も近く感じる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』
『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, ジア・リン, スポーツ, ヒューマンドラマ, ボクシング, ライ・チァイン, 中国, 監督:ジア・リン, 配給会社:東映ビデオLeave a Comment on 『 YOLO 百元の恋 』 -オリジナル越えの傑作-

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

『 あんのこと 』 -社会の一隅の現実-

Posted on 2024年6月19日 by cool-jupiter

あんのこと 75点
2024年6月15日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:河合優実 佐藤二朗 稲垣吾郎
監督:入江悠

 

旧シネ・リーブル梅田の頃にパンフレットを見て興味を抱いたのでチケットを購入。

あらすじ

学校にも六に通えず、母親から虐待されて育った香川杏(河合優実)は、売春と薬物使用の疑いで警察に逮捕される。しかし、そこで人情味あふれる刑事、多々羅(佐藤二朗)やジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)と出会い、更生への道を歩み始めるが・・・

 

ポジティブ・サイド

よくもここまで暗い話を描けたものだと感心する。まるでよくできたた社会派の韓国映画を観ているようだった。それを可能にしたのは第一に脚本の力、次に役者の力だろう。

 

まず、2020年6月の朝日新聞の記事だが、これは無料登録すれば読めるので、ぜひ多くの人に(映画鑑賞後に)読んでほしい(読み終わったら、すぐに登録解除のこと)。コロナによって日本社会のセーフティネットの脆さが浮き彫りになったと言われるが、問題はそもそもセーフティネットにかからない人々が最初から一定数存在するということ。劇中でも小学校にすらまともに行けなかったという人が役所で体よく生活保護申請を却下されそうになるが、そもそも不登校の時点で登校を両親に促さない行政の怠慢があったはずなのだ。杏にしても同じこと。「自己責任」(小泉政権)やら「自助・共助・公助」(菅政権)という一種のスローガンで切って捨てるのではなく、言葉の本当の意味でのインクルージョンについて考えるべきではないのか。

 

ハナさんの人生の壮絶さは想像するしかないが、虐待、性被害、薬物使用など一人で現代社会の諸問題の総合商社をやっている杏というキャラクターの内面は想像すらできない。実際に、杏の心中がナレーションや字幕などで物語られることも一切ない。すべては杏の表情や立ち居振る舞いから推測するしかないが、河合優実は見事に演じきった。ネタバレになるので書けないが、親に愛されなかった自分を、自分自身で取り戻す機会などそうそうあるものではない。それを奪われた。絶望するには充分だ。この絶望感は観る側に間違いなく感染するだろう。

 

ネガティブ・サイド

ラストシーンが意味深。新たな家族の再生なのか。それとも新たな虐待親子関係の始まりなのか。どちらとも判断しかねるが、ここはどちらなのかを入江監督にはっきりと映し出してほしかった。『 MOTHER マザー 』のラストシーンもそうだったが、解釈を観る側にゆだねるのではなく、作家としてのメッセージを明確に示してほしかったと思う。

 

総評

鑑賞後、『 トガニ 幼き瞳の告発 』を観終わった時のような虚無感を覚えた。それだけ見る者の心に澱みを残す作品だと言える。『 ギャングース 』でも見られた入江監督の社会の底辺で生きる者たちへの眼差しは、本作でさらに透徹したものになったと評していいだろう。杏というキャラクター、そしてそのモデルとなった人物にどれだけ思いを馳せられるのか。想像力を試される作品だと言える。メンタルの調子を整えてから鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

abuse

アビューズと発音する。本作には三つの abuse が描かれている。一つは drug abuse = 薬物乱用、もう一つは child abuse = 児童虐待、最後に power abuse = 職権乱用である。いずれも全く良い意味ではないが、現代のニュースを英語で見聞きする際には、悲しいかな、必要な語彙である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 チャレンジャーズ 』
『 ザ・ウォッチャーズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 伝記, 佐藤二朗, 日本, 河合優実, 監督:入江悠, 稲垣吾郎Leave a Comment on 『 あんのこと 』 -社会の一隅の現実-

『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

Posted on 2024年6月12日 by cool-jupiter

かくしごと 60点
2024年6月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:杏 中須翔真 奥田瑛二
監督:関根光才

 

テアトル梅田の『 あんのこと 』の上映時間が合わず、こちらのチケットを購入。

あらすじ

千紗子(杏)は絶縁していた父・孝蔵(奥田瑛二)が半裸で徘徊していたことから、施設入所までの間だけ介護をするため帰郷した。ある夜、旧友の運転する車が少年をはねてしまう。その少年の身体に虐待を思わせる傷跡を見つけた千紗子は、自分がその子の身柄を引き受けようと決意して・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

杏と奥田瑛二の父と娘の距離感が生々しい。警察や記者、さらに医者は結構な確率で過程を壊してしまうとされているが、教師もそうなのか。

 

記憶喪失の少年と認知症(これも一種の記憶喪失)の父親の対比も生々しい。忘れたままでいてほしい、しかし、忘れてはいけないことを忘れないでほしいという、一種の二律背反的な思考や感情が、どんどんとセルフケア能力を喪失していく父の介護の中でないまぜになっていく過程の描写は、正直かなり堪えた。

 

特に父親がとあるシーンで、認知症ゆえの悲しい告白をするが、「今さらそんなことを口にしてどうする」と憤慨させられた。が、これは多くの昭和世代のジジイ連中の多くに共通する隠された本音。それゆえにこのシーンでの杏の涙が光る。

 

『 ミッシング 』の狂乱の母親像は一味違った母親の狂気を堪能できる一作。

 

ネガティブ・サイド

原作の小説のタイトルは『 嘘 』なのに、それを敢えて『 かくしごと 』に変えたのは何故なのだろうか。このタイトル改変だけでオチがすべて露わになってしまっている。まさか絵本を描く/書く仕事とかけたのではあるまいな。

 

飲酒運転して交通事故というのは笑えない。しかもそれを隠蔽しようというのはもっと笑えない。さらに救急車も呼ばないというのにはドン引きした。原作もこうなのか?ご都合主義もここに極まる。

 

言葉は悪いが、あのレベルの家庭の母親が文芸雑誌などを読むのか?またその夫が東京の住所ならまだしも、実家まで突き止めるか?いくらなんでもご都合主義が過ぎる。

 

総評

東出と離婚して、遠くの土地で一人で子育てするという杏のイメージがそのまま投影された作品で杏がはまり役だと見る人もいれば、あざとすぎるキャスティングだと見る向きもあるだろう。Jovianは前者だった。選択的夫婦別姓など、家族の在り方に関する議論がようやく始まりつつある日本だが、選択的な親と子の在り方についても、そのうち考えなければならないのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

adopt 

色々な意味を持つ語だが、その一つに「養子にする」というものがある。たまに adapt と混同する初習者がいるが、adopt の opt は option = 選ぶもの、だと覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』
『 チャレンジャーズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 中須翔真, 奥田瑛二, 日本, 杏, 監督:関根光才, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

『 ミッシング 』 -もう少し焦点を絞り込めなかったか-

Posted on 2024年6月2日 by cool-jupiter

ミッシング 60点
2024年6月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:石原さとみ 青木崇高 森優作 中村倫也
監督:吉田恵輔

 

風邪がなかなか治らないので簡易レビュー。

あらすじ

沙織里(石原さとみ)と豊(青木崇高)の娘の美羽が突然姿を消した。直前まで娘と一緒にいた沙織里の弟(森優作)との関係はギクシャクしたものになり、ネットでは母親に批判的な書き込みがあふれる。唯一、ローカルTV局の砂田(中村倫也)だけは親身に沙織里に寄り添うが・・・

ポジティブ・サイド

6歳の子どもの失踪など考えただけでも胸が苦しくなる。自発的に疾走するわけがないのだから、誘拐または事故に決まっている。本作は美羽の失踪の真相を追うのではなく、そこから見えてくる人間関係の変質や社会の闇に迫っていく。

 

青木崇高の演技が特に良かった。感情の表出をあまり行わない=感情があまり動いていない、というわけでは決してない。最も印象深かったのは蒲郡のホテルの喫煙所。悲しさ、悔しさ、虚しさをないまぜにしたような表情に胸を打たれた。

 

ネット上の無責任かつ批判的なコメントについて、なぜ無関係な人間がそんなことをできるのかと憤りを覚えるが、本作は「無関係な人間だからこそそんなことができるのだ」という視点を提供している。では、我々はどうすべきなのか。関わるしかないだろう。それが直接の癒しになるかどうかはわからない。しかし、関わること、そして関わることでしか得られないものがあるのは間違いない。

 

ネガティブ・サイド

メディアの恣意的な報道とその影響については同監督の『 空白 』の二番煎じに感じられた。また、中村倫也演じる砂田という男に少し尺を割きすぎ。TV局側のサブプロットをもっと削れば、佐織里と豊の二人の物語にもう少しフォーカスできたはず。

 

石原さとみの演技はかなり過剰だったように思う。というか、演技の過剰さと化粧やヘアスタイルが矛盾していたとでも言おうか。ぼろぼろの肌、ぼさぼさの髪で壊れていく様を見せるべきだった。

 

怪しい犯人的な人物をこれ見よがしに出し入れしていたが、元々真相追求型のストーリーではないと分かっているのだから、それもノイズだと感じられた。

 

総評

吉田恵輔監督は『 BLUE ブルー 』のような、非常に小さな輪の中の人間関係を描かせる名手であると思っている。だからこそ同作や『 空白 』のように、本作ももう少しキャラクターあるいはサブプロットを絞ってほしかった。それでも人間たるもの、どうあるべきかについて非常に示唆に富む回答を本作が提示しているのは間違いない。早めに劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make a prank call

よほど熱心な英語学習者でもない限り知っておく必要性は薄いが、これは「いたずら電話をする」の意。いたずら電話もその悪質性によっては一発で起訴される可能性もあるのではないだろうか、と本作を観て思わされた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 関心領域 』
『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 中村倫也, 日本, 森優作, 監督:吉田恵輔, 石原さとみ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 青木崇高Leave a Comment on 『 ミッシング 』 -もう少し焦点を絞り込めなかったか-

『 デス・ストーム 』 -a typhoon day DVD-

Posted on 2024年5月17日 by cool-jupiter

デス・ストーム 40点
2024念5月14日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ゾーラ・バーチ
監督:リンジー・ゴスリング

 

C級ディザスター・ムービーかと思い、近所のTSUTAYAでレンタル。

あらすじ

アメリカの片田舎のミニンワには、様々な問題を抱える人々が暮らしていた。そこに超大型の竜巻が迫りつつあり・・・

 

ポジティブ・サイド

片田舎にこそ社会の縮図が存在するのだなと感じさせられた。

 

低予算ゆえに肝心のトルネードの脅威はほとんど間接的にしか描かれない。ただ、それが逆に想像を掻き立てる。

 

厳しい現実、救いのない現実が容赦なく展開するが、最後に小さな命が助かるのは救いか。

 

ネガティブ・サイド

群像劇だが、やや取っ散らかりすぎ。もう少し登場人物は減らせたように思う。特に、とあるクズ男の存在は不要に感じた。

 

TVアナウンサーの男性(名前忘れた・・・)の家族愛は麗しいが、被災地にのこのこやってきて、けが人を車で運んで、そして家族と再会・・・を喜ぶ前に、自分の報道の誤りと向き合う必要があるんちゃうの?

 

低予算映画ゆえか、誰も彼も演技が過剰。セリフ回しも拙い。また意味の分からないカメラワークも随所に見られた(投げられた車のカギを受け取るシーンなど)。

 

総評

ディザスター・ムービーかと思ったら、意外や意外、ヒューマンドラマだった。『 ヘヴィ・ドライブ 』並みのカバー詐欺。ただ小さな町の複雑な人間模様を眺めるのは、それなりに面白い。手持ち無沙汰の雨の日、あるいは台風の日の暇つぶしにはいいのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

issue

issue は多義語だが、劇中では A tornado warning has been issued. = 竜巻警報が発令されました、のように使われていた。issue = 発する、である。名詞でも a special issue = 雑誌の特別号のように使われる。TOEIC600点レベルなら知っていないとおかしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 不死身ラヴァーズ 』
『 関心領域 』
『 バジーノイズ 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, カナダ, ゾーラ・バーチ, ヒューマンドラマ, 監督:リンジー・ゴスリングLeave a Comment on 『 デス・ストーム 』 -a typhoon day DVD-

『 あまろっく 』 -尼崎市民、観るべし-

Posted on 2024年4月16日 by cool-jupiter

あまろっく 70点
2024年4月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:江口のりこ 中条あやみ 笑福亭鶴瓶
監督:中村和宏

 

尼崎市民としては鑑賞すべきだろうということでチケット購入。

あらすじ

東京でコンサルタントとして働いていた優子(江口のりこ)だったが、理不尽なリストラにより尼崎の実家に戻ってくることになった。自堕落な生活を送っていたところ、父の竜太郎(笑福亭鶴瓶)が20歳の早希(中条あやみ)と再婚すると言う。遥かに年下の義理の母の出現に困惑する優子だったが・・・

 

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

映画の宣伝で江口のりこがあまりにも無気力だったが、実際は頑張って演技していた。中条あやみも標準語の時よりも良い演技を披露できていたように思う。

 

家族とは何か。『 焼肉ドラゴン 』(この舞台は隣町の伊丹。ちなみにこの作品での焼肉の焼き方監修をした人が尼崎で商売をしておられる。山里食品ではない、念のため)でも追究されたテーマで、家族とはそもそも壊れて、新しく生まれる、あるいは作るものだった。

 

本作は65歳の男性と20歳の女性の再婚を通じて、年下の義理の母親はありなのか?適齢期を過ぎても結婚しないパラサイトはありなのか?シングルマザーに支えは必要なのか否か?

こうした新たな問いに一定の答えを出そうというのが本作である。赤の他人の優子と早希の距離が徐々に縮まっていく過程はユーモラスであり現実的でもある。

 

尼崎市民は観ていて楽しめるだろう。Jovianの家の目と鼻の先のうどん屋だったり、散歩コースのすぐ脇の工場が近松鉄工所だったり、魚釣り公園や寺町など、まさにご当地ムービー、おらが町の映画だと感じられた(阪急沿線民には不評かもしれない)。

ネガティブ・サイド

冒頭からいきなり「尼ロックなんか誰も知らんわ!」という台詞が聞かれるが、ホンマかいな。今も昔も尼崎市内の結構な数の小学校が社会科見学で尼崎閘門に行っているはずなのだが。

 

工場でとあるアクシデントが起きるが、工都・尼崎の工場職人がこんな杜撰なことをするんかな?ちょっと無理のある脚本に思えた。

 

ブランクが何年もあるはずの優子がいきなり第一線のコンサルタント然として話し出すシーンには違和感ありあり。普段から経済ニュースや経済紙に目を通していたという描写があれば、少しは説得力も生まれるのだが。

 

2018年の台風を元ネタにしたと思しきシーンがあるが、地元民としては少し複雑。尼ロックが水害を防いだのは確かだろうが、あの時はとんでもない暴風被害が出て、杭瀬の工務店のおっちゃんが「2か月で3年分の仕事量や!」と特需を享受していた。フィクションだと思えばいいのだろうが、だったら阪神淡路大震災を持ち出すのもやめてほしかった。

 

『 ハルカの陶 』でも思ったが、地理がめちゃくちゃ。まあ、突っ込んでも意味がないんやけどね。ただJR沿線民と阪神沿線民は楽しいはず。

 

総評

実際は60点だが、地元民のよしみで10点おまけしておく。某映画サイトでやたらと高評価されているが、これは兵庫県民、特に尼崎市民が先行上映を観て星を与えていることに注意されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

complete strangers

「赤の他人」の英訳。他にも total strangers という表現もある。劇中では「あんたと私は赤の他人や!」というのがあったが、英語だと You and I are complete strangers! となるだろうか。間違っても red strangers とは言わないように。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』
『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 中条あやみ, 日本, 江口のりこ, 監督:中村和宏, 笑福亭鶴瓶, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 あまろっく 』 -尼崎市民、観るべし-

『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

Posted on 2024年3月13日 by cool-jupiter

ソウルメイト 85点
2024年3月10日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ダミ チョン・ソニ ピョン・ウソク
監督:ミン・ヨングン

 

中国映画『 ソウルメイト 七月と安生 』の韓国リメイク。なまなかにリメイクするだけになってしまうのでは・・・という懸念を吹っ飛ばす大傑作に仕上がっている。

あらすじ

少し内気なハウン(チョン・ソニ)は自由なミソ(キム・ダミ)と出会い、やがて二人は無二の親友になっていく。しかし、ハウンがジヌ(ピョン・ウソク)と付き合い始めたことで二人の関係に少しずつ変化が生じて・・・

ポジティブ・サイド

オリジナルが傑作だったので、リメイクしても質が低下するだけでは・・・。鑑賞前はそう感じていたが、とんでもない。残すべきところは残し、変えるべきところは変える。傑作が大傑作に生まれ変わった。

 

話の大筋は原作と同じ。ただし、大きな変更もある。原作では七月と安生の二人の友情がネット小説によって表現されていたが、本作では小説を絵画に置き換えた。これによって本作はいきなりミソの巨大な肖像画を見せられることになる。つまり二人の友情、その産物が一気に可視化される。原作では文字だったものが、その後の映像によって雄弁に語られたが、本作ではそれを一気にビジュアル化した。正直なところ「いきなりこんなもの見せて大丈夫か?壮絶なネタバレでは?」と怪訝にすら感じたが、これは完全に杞憂だった。というか、小説を絵画にすることで、終盤のドラマがこれほど泣けるものになるとは・・・

 

キム・ダミはチョウ・ドンユイに勝るとも劣らぬ演技でミソを好演。子役もどこで探し出してきたのか、キム・ダミにそっくり。それにしても高校生から20代後半ぐらいまでを全く違和感なく演じ分けるキム・ダミやチョン・ソニの演技力の高さよ。もちろんそれを演出するミン・ヨングン監督の手腕もあるのだろうが、日本で本作をリメイクできるだろうか。ミソが河合優実で、ハウンが南沙良?監督は今泉力哉または三宅唱とか?

 

閑話休題。オリジナルでは七月はいつもボーイフレンドの自転車に二人乗りしていたが、今作のハウンはいつもミソの原付の後ろに乗っている。この違いは大きいと感じた。特に中盤のとある大きな出来事の後、いつも二人一緒だったミソとハウンだったはずが、ミソはハウンとジヌをある意味置き去りにして先に帰ってしまう。これがその後の二人の関係性を何よりも雄弁に物語っていた。

 

その後、済州島を出ることになったミソと済州島に残ることになったハウン。オリジナルを忠実になぞりつつも、わずかな脚色を施している。印象的なのはミソという名前が漢字では微笑となるところ。常に明るく笑顔をたたえていたミソが、思わぬタトゥーを彫っていたり、あるいは一人暮らししていたアパートの壁にほんのちょっとした落書きをしていたり。本人が語らずとも、それらがミソの心情を見事に代弁していた。物語るオリジナルから、シネマティックなリメイクへ。この脚本家、相当な手練れ。

 

その後、再会を祝した二人だったが、離れて過ごした間に際立つようになってしまった考え方や行動様式から仲違いへ。このあたりも原作に忠実ながら、しかし巧みに換骨奪胎している。それでも離れられない二人。原作でも光と影の関係に言及されていたと記憶しているが、ある時から常に自分の先へと歩いていくミソに対し、ハウンはついに自分でも別世界へ飛び出していく。今まで影だった自分が、今度はミソを影にしてしまう。

 

ここで二人が小さな頃から対照的な絵を描いてきたことが大いなる伏線となって活きてくる。抽象的な絵を描くミソと極めて写実的な絵を描くハウン。この二人の絵が交わる瞬間のドラマに涙を流さずにはいられようか。絵を描くということが、これほどの深い愛情表現になるのか。絵を描くという行為が、これほど深い対象理解につながるのか。そして絵を描くということが、これほど自分の心の中を映し出すものなのか。冒頭で大写しされるミソの肖像画が、まったく違った意味を帯びて迫ってくる最終盤の展開に涙が止まらなかった。間違いなく2024年のベストである。

 

ネガティブ・サイド

あのケーキは一体どこから出てきたのだろうか。

 

原作では「ダサい下着」を思いっきりカメラに映し出していたが、本作はそこを回避。うーむ・・・

 

総評

ミン・ヨングン監督の情報がほとんど見当たらないのだが、いったい何者なのだろう。日本では漫画のドラマ化の問題点が浮き彫りになって久しいが、原作を脚色するなら原作を超えなければ意味がない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバラマ

使ってはいけない韓国語の一つ。意味はクソ野郎。劇場の照明点灯後のJovian妻の第一声は「ジヌはクソ野郎やな」だった。クソ野郎=シバラマである。この言葉が実際にどのように使われるのかを知るには『 息もできない 』を鑑賞のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, キム・ダミ, チョン・ソニ, ヒューマンドラマ, ピョン・ウソク, 監督:ミン・ヨングン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

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