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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アメリカ

『 アントマン&ワスプ クアントマニア 』 -オリジナリティ欠如が甚だしい-

Posted on 2023年2月25日 by cool-jupiter

アントマン&ワスプ クアントマニア 20点
2023年2月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ポール・ラッド エヴァンジェリン・リリー キャスリン・ニュートン ジョナサン・メジャーズ
監督:ペイトン・リード

 

うーむ、MCUの終わりの始まりのような映画だった。

 

あらすじ

アベンジャーズの一員として世界を救ったスコット・ラング(ポール・ラッド)はヒーローとして街の人々に愛されて暮らしていた。ある日、娘のキャシー(キャスリン・ニュートン)がハンク・ピムと共同で量子世界への探査信号を送る研究をしていると、謎の球体が現れ、スコットやホープら全員が未知の量子領域に取り込まれてしまった・・・

ポジティブ・サイド

スコットが相変わらず小市民ヒーローなのがいい。今作でもサーティワンのネタを引っ張ってくれる。スパイダーマンと並ぶ市民型のヒーローだ。本を出して、しかもそのオーディオブックを自分のクルマの中で聞いてしまう。このナルシシズムがアントマンがその他のスーパーヒーローと一線を画すところであり、魅力でもある。

 

サブアトミカという領域は、ある意味で外宇宙よりも遠い。そんな世界を舞台にするという構想自体は肯定したい。

ネガティブ・サイド

マイケル・ペーニャはもう用無しなのか。アントマンを葛藤するスーパーヒーローではなく、小市民スーパーヒーローにとどめておいてくれるはずの貴重な存在だったというのに。

 

未知の量子領域のはずが、何もかもが『 スター・ウォーズ 』に見える。どの景色が、とか、どのクリーチャーがとか、どの服装が、というレベルではない。我々はいったい何を見せられているのか。なんとなく『 スター・ウォーズ 』っぽくないかな、と感じるシーンは、しかし思いっきり『 ジョン・カーター 』っぽかったりする。さらにはロボット兵士(?)は『 ブラックホール 』のヒューマノイドそっくり。とにかく何から何までディズニー色に塗り固められている。オリジナリティはどこへ行った?

 

『 ミクロの決死圏 』の昔から、極小の世界には科学的なロマンがあったが、本作にはそれもなし。『 アントマン 』はまだしも、『 アントマン&ワスプ 』でも一切触れられなかった「可能性」、すなわちその他多くの自分という存在が次から次へ生まれるというのは、ご都合主義にもほどがある。サブアトミカでは、観測者と観測対象なので・・・のような説明も一切なし。

 

そもそもジャネットが量子領域について誰にも何も語らなかった理由が最初から最後まで謎だ。誰かに何を言われても「今は彼らを救出するのが先だ」と言って説明を拒絶する。いったい何がしたいの?相方のハンクも「この世界の時間の流れが分からない。元の世界では5分かもしれないし10年かもしれない」みたいに言っていたが、アホかーーー!量子領域に30年滞在していたジャネットは、きっちり30年分加齢して帰ってきたことを忘れたんかーーー!観ていて頭がクラクラするシーンだった。

 

肝心の征服者カーンも、その脅威がさっぱり伝わってこない。手から放つ謎のビームで量子世界のクリーチャーを一撃で消滅させるが、アントマン達には軽微なダメージを与えるだけって、弱すぎやろ。その一方で別の次元ではマイティ・ソーを倒したという発言もする。強いのか弱いのか分からない。しかし、最後の最後に倒された相手は〇〇でした、って・・・。多種多様な次元の多種多様なカーンがいるからスーパーヴィランとしての格は保たれていると言いたいのだろうか?よく分からん。テーマであるはずの Look out for the little guy. の the little guy は実はアントマンではなくカーンだった、という描き方がまったく出来ていない。このヴィランを相手に次のフェーズのアベンジャーズがどう結集するのか、悪い意味でまったく道筋が読めない。

 

とにかく一作丸ごと informercial というMCUのやり方には辟易する。義理で観続けているが、It’s about time to jump off the bandwagon. という気がしてきた。

 

総評

スコットたちが良いキャラというだけで、本作はストーリーとして完全に破綻している。『 スター・ウォーズ 』のファンなら楽しめるか?と自問自答したが、答えは否。アントマンはMCUの中でもスパイダーマンの次に好きだったが、こんな中途半端な形でキャシーに道を譲って引退するのだろうか。納得いかん。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

look out for ~ 

劇中では Look out for the little guy. = 小さい奴に注意しろ、というように使われていた。look out for ~ は ~を注意して見る、~に対して目を凝らす、のような意味。昔、大学の教会のミサで、Look out for the weakest in your community. というのを聞いたことがあったな。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SFアクション, アメリカ, エヴァンジェリン・リリー, キャスリン・ニュートン, ジョナサン・メジャーズ, ポール・ラッド, 監督:ペイトン・リード, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 アントマン&ワスプ クアントマニア 』 -オリジナリティ欠如が甚だしい-

『 対峙 』 -緊迫の対話劇-

Posted on 2023年2月20日 by cool-jupiter

対峙 75点
2023年2月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェイソン・アイザックス マーサ・プリンプトン リード・バーニー アン・ダウド
監督:フラン・クランツ

日本は犯罪者だけではなく、その家族にも異様に厳しいが、犯罪大国アメリカはそのあたりどうなのか。本作は非常に緊迫感のある対話劇であった。

 

あらすじ

高校生による銃乱射事件が発生。多くの生徒が死亡し、犯人も図書室で自らを撃って死亡した。事件から数年後、被害者の息子の父ジェイ(ジェイソン・アイザックス)と母ゲイル(マーサ・プリンプトン)はセラピストの勧めにより、とある教会で加害者の父リチャード(リード・バーニー)と母リンダ(アン・ダウド)と出会い、対話を持つことに・・・

ポジティブ・サイド

4人の親たちの台詞のみが部屋に響く。そこに派手な効果音や観る側の情緒を揺さぶるようなBGMは一切ない。これにより、ドキュメンタリー的な作品とは一味違うリアリティのある作品に仕上がっている。カメラワークも、序盤はひたすら定点カメラからの映像で、ここはドキュメンタリー的に感じる。しかし、終盤からは手振れのあるカメラワークとなり、まるで観ている自分もその場にいるかのように感じさせられた。

 

肝心のストーリーはどうか。非常に珍しい。低予算映画ほど台詞だらけになりがちだが、本作は演じる役者たちが、言葉に魂を乗せている。愛する者を失った者の悲嘆や、理不尽な死に対する怒りなどが、観客に存分に伝わってくる。

 

本作の特徴として「見せない」ということが挙げられる。数々の写真のやりとりがなされるが、どれ一枚として映されることはない。また、悲惨極まりない銃乱射事件やその余波についても大いに語られるが、回想シーンも全くない。本作は観る側の想像力を信頼している。それは、そのまま「あなたが被害者の親になったとしたら?」、「あなたが加害者の親になったとしたら?」という問いにつながっている。

 

この被害者の両親と加害者の両親が出会い、言葉を交わすことの意味とは何か。ここで対峙する彼ら彼女らの言葉について語るのは無粋だろう。なので、ちょっと違う角度から。本作の原題は Mass である。これは日本語で「ミサ」の意。Jovianは一応、国際基督教大学で宗教学(といってもキリスト教ではなく古代東洋思想史だったが)を専攻していたし、先輩後輩同級生にはキリスト者がたくさんいたし、そんな学生やOYRと呼ばれる留学生たちとミサに出たこともある。ミサとはめちゃくちゃ分かりやすく言うと、人間関係の完成である。

 

キリスト教の教えの一つに「汝の敵を愛せ」というものがある(余談だが、国際基督教大学から割りと近い府中市には「酒は人類の敵である。汝の敵を愛せ」という看板を掲げた酒屋があった)。もちろん、劇中で誰かが Love your enemies などと言うわけではない。しかし、舞台が教会でタイトルが「ミサ」ということは、本作が提示するひとつの結論は融和であると言える。馴染みのある人は多くないかもしれないが、本作を鑑賞する際はキリスト教的価値観を少しだけ意識してみてほしい。

 

ネガティブ・サイド

オチが弱いというか、アメリカ人的な死生観というか人生観というか、そういったものは結局『 ウインド・リバー 』で開陳されたものと何一つ変わらない。結局のところ、アメリカ人の精神に刻まれた陰影の濃さは、昔も今もあまり変わらないということなのだろう。

 

序盤のジェイとゲイルの車内の会話はカットしてよかった。同様に最後の最後にリンダによって語られるエピソードも不要であると感じた。見せないことで想像させる手法を貫いたのだから、語らないことで想像させる手法も貫くべきだった。

 

総評

非常にユニークな作品。ひたすら語りで進んでいくが、その言葉の一つひとつが非常に重い。まるで舞台劇を観ているかのように感じられる。日本をはじめとする東洋では、個人の罪によって三族皆殺しがありうる。過激極まりない考え方だが、この思想は現代にも残っている。高畑淳子がとっくに成人した息子の犯罪でコテンパンに叩かれたのは記憶に新しい。家族が犯罪加害者になってしまった、あるいは犯罪被害者になってしまった時、自分は何に、どのように向き合うべきなのか。それを示唆する、非常に現代的な作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

in hindsight

「今にして思えば」、「後から思い起こしてみると」のような意味。ほぼ同じ意味の表現として in retrospect もあるが、こちらの方が少しフォーマルな印象がある。英語中級者なら知っておきたい表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, アン・ダウド, サスペンス, ジェイソン・アイザックス, ヒューマンドラマ, マーサ・プリンプトン, リード・バーニー, 監督:フラン・クランツ, 配給会社:トランスフォーマーLeave a Comment on 『 対峙 』 -緊迫の対話劇-

『 トップガンナー 』 -パロディにすらなれていない-

Posted on 2023年2月9日 by cool-jupiter

トップガンナー 10点
2023年2月7日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エリック・ロバーツ
監督:ダニエル・ラスコ

近所のTSUTAYAでレンタル。もうタイトルだけで借りてしまった。Sometimes, I’m in the mood for garbage.

 

あらすじ

へリング大佐(エリック・ロバーツ)はやんちゃな新人パイロットたちを育成していた。ある時、最新鋭戦闘機ヴァルキリーが基地に緊急着陸。降りてきた海兵隊員たちは。ロシアの開発した恐るべき生物兵器を一刻も早く処理しなければならないと言う。そして基地にはロシア空軍の最新鋭戦闘機が迫りつつあり・・・

 

ポジティブ・サイド

いかにも『 トップガン 』を意識した夕焼けと、そこに浮かび上がるシルエットだけは良かった。本作の良さはそこで終わりである。

 

ネガティブ・サイド

基地はメキシコ近くにある、みたいな設定なのに、なぜロシアから飛んできた海兵隊がやってくるのか。アラスカとかの間違いでは?

 

海軍ではなく空軍なのにトップガンナーなどというタイトルをつけるセンスを疑う。そして空軍なのに、空中戦ではなく地上戦がメイン。いや、メインではないが、タイトルにもある Gun を使うのが地上と空中で半々というのは詐欺に近いのではないか。DVDのジャケットに「この大空で最強<トップ>の射手<ガンナー>が決まる」みたいに書いていて、地上の射撃戦を見せられてもなあ。そこでも、海兵隊に「単射にしろ」と言われた直後に連射でぶっ放したりと、意味不明な展開が多数。

 

肝心の空中戦もビジュアルは非常に低クオリティ。low budget movie だからしゃーないとはいえ、Ace Combat Zero レベルのCGはさすがに2020年の映画でやってはいかんだろう。

 

3機のF-18が意気揚々とSu-57に挑むもあっさりと返り討ち。というか、一機がやられた直後に、一機がおとりになって、そのすきに最後の一機が相手の後ろを取る・・・って、3対1でも負けるのに、敢えて一時的にとはいえ1対1に持っていくのは何故なのか。そしてせっかく奪ったSu-57の背後を機銃で撃たず、イジェクトして神風アタックを仕掛けるのか。いや、撃てよ。なんで機体を敵機にぶつけようとするのか。こいつら米空軍を名乗った旧大日本帝国空軍か?

 

ヴァルキリーを飛ばすシーンで、遂に胸躍る空中戦か?と思わせて、映っているのはずっと機内の映像。モニターに表示される敵機を撃って撃墜・・・って、そこで大空を映せないのか?最初の空中戦でCGにかける予算を全部使ってしまったのか。監督、脚本、プロデューサーがどいつもこいつもそろって能無しだったか。

 

総評

クソ映画愛好家にしかお勧めできない。こっちは低クオリティでもいいので、とにかくスカイアクションがたくさん観たいのだが、意味の分からん地上戦と役者の顔面アップの長い台詞回しが延々と続く。まあ、でも作っている側も傑作を作る気など毛頭ないだろう。熱心な映画ファンが全世界に1億人いるとして、そのうちの1000人に一人がレンタルや配信で視聴してくれれば元が取れるのだろう。それくらいの低クオリティである。ゴミでも観るか、という心づもりで鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I need to forget about this load of turd.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, F Rank, アクション, アメリカ, エリック・ロバーツ, 監督:ダニエル・ラスコLeave a Comment on 『 トップガンナー 』 -パロディにすらなれていない-

『 FALL フォール 』 -シチュエーション・スリラーの秀作-

Posted on 2023年2月8日2023年2月8日 by cool-jupiter

FALL フォール 75点
2023年2月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレイス・キャロライン・カリー ヴァージニア・ガードナー ジェフリー・ディーン・モーガン
監督:スコット・マン

妻が観たいというのでチケット購入。個人的には優先順位は低い作品だったが、予想以上に面白かった。

 

あらすじ

ベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)は、フリークライミング中の夫の事故死の悲嘆から抜け出せずにいた。事故から一年後、デンジャーDとして活躍する親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)が訪問してくる。夫の死を乗り越えるために、高さ600メートルの旧テレビ塔の頂上まで昇ろうと誘ってきて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

高さ600メートルは想像しがたい。東京スカイツリーと言われても、関西人にはピンと来ない。しかし、梅田のスカイビルの3倍以上の高さと言われるとギョッとするし、あべのハルカスの展望台の2倍の高さと言われると冷や汗をかいてしまう。高所恐怖症の人がいる反面、高いところが怖くない人もいる。しかし、本作の描く高所に恐怖を感じない人はいないはずだ。本国のキャッチコピーの通り、Fear reaches new heights. である。

 

トレーラーの時点では承認欲求モンスターの女子二人が繰り広げる迷惑劇だと思い込んでいたが、『 フリーソロ 』とまでは行かないまでも、クライミングのバックグラウンドがあることを描いてくれたのは良かった。高いところに昇るというのは、それだけでかなり危険な行為なのだ。

 

テレビ塔の頂上につくまでの描写も不穏である。振動で揺さぶられて緩くなったり外れてしまうネジなどをこと細かく映すことで、いつベッキーとハンターは窮地に陥るのか、とサスペンスを盛り上げていく。冷静に考えれば頂上にたどり着くまではピンチになるはずがないのだが、観ている間は結構ハラハラドキドキさせられた。スコット・マン監督の手腕はお見事。

 

頂上に到達するも、梯子が壊れて降りられない。電波もない。人影もない。さあ、どうする?本作はスリラーであると同時にサバイバル映画でもある。水が少量で食い物なし。トイレもなし。ベッドも無し。着替えも無し。二人が持っているものを最大限に使って、なんとか状況を打開していこうとあがく様は素直に応援したくなるし、試みが上手く行きそうで上手く行かないという展開の連続で非常に疲れる。そんな中で、二人の間に思わぬ不協和音も聞こえてくる。状況だけでも非常にサスペンスフルなのに、ここにきて人間関係までもが・・・ ここから先の展開は是非劇場で確かめられたし。

 

サバイバルの先にはホラー展開も待っている。高度600メートルで何が襲ってくるのか?とも感じたが、その正体は序盤で明らかにされている。これには純粋に恐怖を感じた。逃げ回ろうにも逃げられない。文字通り、一歩間違えれば転落死するのだから。だが本作はある意味で『 127時間 』も真っ青の展開で主人公を生かす。諦めなければ人間ここまで出来るのか、とホラーと人間賛歌を同時に行うという離れ業も見せてくれる。これもぜひ劇場で確認されたい。本作鑑賞後、しばらく高層ビルには登りたくなくなること請け合いである。

 

ネガティブ・サイド

物語にケチをつけるとすれば、最後の最後の救出劇がすべて省略されていたところか。

 

『 海底47m 』のスタッフが再集結、みたいな宣伝は不要に思う。いや、まあ宣伝側の意図は分かるが、おかげで劇中のとある展開が予想できたというか、あっさり見破れてしまった。

 

字幕翻訳者にも喝。ベッキーの好きなWWEレスラーの名前がバウティスタになっていたが、それは役者としての名前。レスラーとしての名前はバティスタだ。

 

最後の最後、Let’s go home. は無いわ・・・。普通に警察に逮捕される案件やろ。

 

総評

女子二人だけで、ここまで観る側をグイグイ引っ張り続ける力を持った作品は近年だと『 17歳の瞳に映る世界 』と『 Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バック 』ぐらいか。スリラーとしても、これでもかと観客をハラハラドキドキさせ続けてくれて、まさにサービス満点。この恐怖と緊迫感はまさに劇場の大画面と大音響で味わうべきだ。ぜひチケット購入を!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You got this.

『 トップガン マーヴェリック 』(追いトップガン6回目)でも紹介した表現。You can do this. の意味。劇中ではハンターが何度も何度もベッキーをこう言って励ます。日常でも職場でも使える表現。ぜひ知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, イギリス, ヴァージニア・ガードナー, グレイス・キャロライン・カリー, ジェフリー・ディーン・モーガン, スリラー, 監督:スコット・マン, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 FALL フォール 』 -シチュエーション・スリラーの秀作-

『 宇宙戦争(2005) 』 -人間ドラマが中途半端-

Posted on 2023年2月5日 by cool-jupiter

宇宙戦争(2005) 55点
2023年2月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ダコタ・ファニング ティム・ロビンス
監督:スティーブン・スピルバーグ

『 そばかす 』で言及されていた作品。当時、東京の劇場で観たのを覚えているが、結末以外の中身を完全に忘れていた。

 

あらすじ

レイ(トム・クルーズ)は離婚した妻との間の子どもであるロビーとレイチェル(ダコタ・ファニング)たちと面会していた。だが、街は突如謎の嵐と落雷に見舞われた。その直後、地面の下から巨大マシーンが現れ、人々を消し去っていく。レイは子どもたちを連れて必死に逃げようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

マーヴェリックでもなくイーサン・ハントでもなく、ジャック・リーチャーでもないトム・クルーズが、何かに向かっていくのではなく何かから逃げ惑う姿は新鮮だった。トム・クルーズは爽やか系だけではなく、『 レインマン 』や本作のように嫌な奴も演じられる。感情移入しづらいタイプの主人公に、どういうわけか徐々に共感させられてしまうのは、元の『 宇宙戦争(1953) 』になかった人間ドラマの要素のおかげ。ダメ親父がダメ親父なりに必死になるシーンの連続に、中年で胸を打たれずにいるのは難しい。

 

娘役のダコタ・ファニングも、栴檀は双葉より芳し。割とエキセントリックな役を演じることが多いが、子役の時からしっかりした演技派やったんやね。

 

訳が分からないままにひたすら蹂躙されていく展開はSFというよりもホラー。前作で家の中に侵入してきたチューブを切り落とすシーンを、ひたすら隠れて逃げるというシーンに改変したのもその流れに沿ったもので適切だったと感じた。9.11がアメリカ人の精神に生じさせた陰影は、当時はまだまだ濃かったということが思い出された。

 

唐突に(科学的にではなく政治的に)コロナ禍を終わらせようとする日本政府的な終わり方も、それなりに味わい深い。

 

ネガティブ・サイド

主人公レイの背景が物語にほとんど生きてこない。せいぜいクルマのコイルを交換しろというアドバイスくらい。港湾リフトを凄腕で操作する男という背景が、彼が逃げる、あるいは闘うシーンで活かされなかったのは残念。

 

原作は隕石の飛来から侵略が始まったが、本作ではマシーンは太古の昔から地中に埋まっていたという。だったらなぜ『 ”それ”がいる森 』と同じ失敗をしているのか。いや、正しくは『 ”それ”がいる森 』が失敗を繰り返したと言うべきか。いずれにしても火星人が過去に地球に来たことがあるという設定は蛇足である。

 

火星人のマシーンを内側から爆破するシーンは不要であるように感じた。日本でマシーンの撃退に成功したのが東京ではなく大阪だったのには笑わせてもらったが、アメリカ本土は徹頭徹尾逃げ惑う展開にした方がホラーやサスペンスの要素がさらに強まったように思う。

 

長男のロビーが父親に反発するのは良いとして、なぜに自ら死地に赴こうとするのか。そこがよく分からなかった。また、最後にはシレっと生存していて、このあたりは究極のご都合主義に感じられた。

 

総評

ホラーやサスペンスとして鑑賞すればそこそこ面白いが、SFやパニックものとして鑑賞すると凡庸に感じられる。原作通りに人間ドラマを極めて薄くするか、あるいは振り切って人間ドラマに全振りするかだったように思う。ただ、近年の天文学の発達で太陽系が実は豊かなオーシャン・ワールドだったと明らかになった。さらに地球外生命体が発見された時、本作はそれにどうコンタクトすべきかを考えるきっかけとして再評価されるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be careful with ~

be careful と来たら of を思い浮かべる人が多いだろう。be careful of ~ = ~に気を付ける、という意味だが、be careful with ~ は、~を大事に扱う、という意味。劇中では Be careful with the glove. = そのグローブ、大切に扱えよ、という感じで使われていた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, SF, アメリカ, ダコタ・ファニング, ティム・ロビンス, トム・クルーズ, ホラー, 監督:スティーブン・スピルバーグ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 宇宙戦争(2005) 』 -人間ドラマが中途半端-

『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

Posted on 2023年1月31日 by cool-jupiter

宇宙戦争(1953) 70点
2023年1月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジーン・バリー アン・ロビンソン
監督:バイロン・ハスキン

『 そばかす 』でトム・クルーズの『 宇宙戦争(2005) 』に言及されていたのを聞いて、再鑑賞しようとTSUTAYAを訪れる。そのDVDの隣に元ネタがあったので、そちらも併せてレンタルしてきた。

 

あらすじ

ロサンゼルス近郊に隕石が落下。天文物理学者のクレイトン・フォレスター(バリー・ジーン)は、調査に乗り出すも、隕石の正体は分からない。やがて、隕石の中から謎の浮遊マシーンが出現し、周囲の人間や建造物を焼き払っていく。隕石は世界各地に落ち、マシーンも続々と現れ、人類は絶体絶命の危機に落ちるが・・・

 

ポジティブ・サイド

古き良き、という表現は個人的にはあまり好まないのだが、本作に関してはまさに古き良き特撮映画の香りがプンプンする。何もかもがCGである現代映画に比べると、大道具や小道具が活き活きと仕事をしていた姿が目に浮かぶ。その後の東宝の『 ゴジラ 』、『 モスラ 』、『 ラドン 』などの大怪獣特撮映画は、本作から多大なインスピレーションを得ているのは間違いない。隕石状でやって来る侵略者というのはキングギドラだ。

 

浮遊マシーンの造形や、そこから伸びてくるチューブの造形もいい。このデザインはなんとなくだが、ディズニーの隠れた秀作『 ブラックホール 』のロボット、マクシミリアンに引き継がれているようにも思う。

 

火星人の侵攻に対するアメリカ人の反応にもリアリティーがある。当時、内戦以外でアメリカ国内が戦場になったことはないが、本作で描かれる逃げ惑う人々、暴徒と化す人々、教会で従容と死を待つ人々の姿には迫真性があった。

 

米軍が徹底抗戦し、浮遊マシーンがケロッとしている様も特撮の粋という感じがした。原爆まで持ち出すのは、まさに冷戦前夜という感じだが、全翼の爆撃機は実にかっこよかった。核攻撃を含む米軍の全火力が無意味だったというシークエンスは『 インデペンデンス・デイ 』に引き継がれたように思う。

 

もはや一巻の終わり・・・というところで、火星人が地球の微生物になすすべなく侵され、死んでいくという描写も、コロナ禍を経験した我々の目には新鮮かつ説得力あるものとして映る。

ネガティブ・サイド

冒頭で金星がスキップされたのは何故?

 

レイチェルが特に何か大きな役割を果たすわけではないのがビミョーなところ。まあ、フォレスター博士自体も役立たずで終わってしまうのだが。

 

前線が破られた際に、後方に新たな防衛網を築きに向かった軍人さんはその後どうなったのだろう?

 

総評

特撮ファンならぜひ鑑賞しよう。非常にオーガニックな映像を楽しめるだろう。SFファンも鑑賞すべきであると思う。人間ドラマを楽しみたい向きにはお勧めできない。ただ、コロナ禍によって、目に見えない微生物やウィルスの存在を否応なく意識させられるようになった現代、本作の価値が再び高まっているのは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Take my word for it.

私の言葉をそのまま受け取ってくれ、転じて「信じてくれ」、「本当なんだ」という意味になる。劇中では「早くワシントンに知らせて増援を呼んでくれ」というような台詞の前で使われていた。何か強調したいこと、強く主張したいことがある時に使いたい表現である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1950年代, B Rank, SF, アメリカ, アン・ロビンソン, ジーン・バリー, 監督:バイロン・ハスキンLeave a Comment on 『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

『 モービウス 』 -二番煎じのオンパレード-

Posted on 2023年1月28日 by cool-jupiter

モービウス 35点
2023年1月28日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:ジャレッド・レト マット・スミス アドリア・アルホナ
監督:ダニエル・エスピノーサ

 

劇場公開時にはスルーした作品。近所のTSUTAYAで準新作になったので、クーポン使用でレンタル。

あらすじ

天才医師マイケル・モービウス(ジャレッド・レト)は、自らが患っている血液難病の治療法を探していた。ある時、コウモリの血清を使った治療法を自分自身に試した結果、マイケルは異能の力を授かってしまう。同時に、抑えようのない血液への渇望に苛まされるようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

メインのキャラを演じた俳優たちは皆、ハマっていた。ジャレッド・レトは言うに及ばず、親友かつ宿敵となるマイロを演じたマット・スミスも『 ラストナイト・イン・ソーホー 』同様に、心に闇を抱えたキャラを好演した。

 

マイケルの同僚マルティーヌを演じた女優は美人だなと感じた。

 

ネガティブ・サイド

何もかもに既視感を覚えた。キャラもそうだし、ストーリーもそう。オリジナリティが決定的に欠如している。

 

ヴィランと見せかけてヒーローでした、は既に『 ヴェノム 』でやったこと。さらに主人公に立ちはだかるヴィランが主人公と同じパワーを持っているという筋立ても『 インクレディブル・ハルク 』以来、使い古されたプロット。幼い患者を救おうと結成を投与したらヴィランになってしまった。倒すためではなく止めるため、または元に戻して別の治療を施すために自らも結成を投与して患者であった少女と対峙する・・・のようなストーリーなら相当にドラマが盛り上がるはずなのだが。

 

マイケルとマイロのバトルも、まるでファンタビを観ているかのよう。コウモリがバトルをするのかどうかは知らないが、エコーロケーションによって死角からの攻撃も交わしてしまう、あるいは暗闇でも闘えるといった、コウモリらしさが感じられなかった。

 

血の臭いにすこぶる敏感になっていたマイケルだが、街中に出たら混乱するのでは?ちょっと下品かもしれないが、雑踏の中には「現在、生理中です」という女性などいくらでもいただろう。そうした臭いに反応してしまってもすぐに自制できる。しかし、マルティーヌの血の臭いには抗いがたい何かがある・・・といった描写をほんの少し入れてくれれば、それだけでマイケルが一気に人間臭くなり、感情移入しやすくなったと思う。

 

総評

近年のMCUの傾向を中耳になぞるかのように、一つの映画が一つの長大なインフォマーシャルになってしまっている。エンディングのカットシーンを観ても、もはや興奮できない。義理で鑑賞しているように感じ始めたMCUだが、あと1~2年で劇場鑑賞から離脱するのが吉かもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

work

上手く行く、の意。劇中では It worked. = 実験が成功したわ、のように使われていた。日本語でも「このプランは本当にワークするのか?」のように、一部の業界人は日常的に使っているのではないか。しばしば work like a charm = 魔法のように上手く行く = 実に上手く行く、見事に効く、という形で使われる。英会話中級者なら耳にしたことはある表現だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アクション, アドリア・アルホナ, アメリカ, ジャレッド・レト, マット・スミス, 監督:ダニエル・エスピノーサ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 モービウス 』 -二番煎じのオンパレード-

『 ウィロー 』 -王道ファンタジー-

Posted on 2023年1月28日 by cool-jupiter

ウィロー 75点
2023年1月27日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ワーウィック・デイビス ヴァル・キルマー
監督:ロン・ハワード

これは確か小4の夏休みに大阪の映画館で家族で観たのを覚えている。『 イウォーク・アドベンチャー 』と『 エンドア 魔空の妖精 』とともに、VHSでその後何度か鑑賞したのも覚えている。

 

あらすじ

悪の女王バヴモルダは魔術によって権力を欲しいままにしていたが、自身を滅ぼすと予言された特別な子の誕生を案じていた。国中の妊婦を探す女王だが、予言の子は助産婦によってその世界へと密かに解き放たれていた。農夫ウィロー(ワーウィック・デイビス)は偶然にも赤ん坊を見つけ、彼女を人間の世界に還そうと仲間と共に旅に出るが・・・

 

ポジティブ・サイド

非常にオーガニックな作りで、今の目には逆に新鮮に映るし、製作者の美学がよりクリアに繁栄されているように感じられる。ミジェットが100人以上で集落を作ることで、この物語世界の広さに説得力が生まれている。

 

剣と魔法の王道的な中世ファンタジーで、味方の剣士と敵側のプリンセスの禁断のロマンスもベタベタながら、ジョージ・ルーカスの思想の反映だろう。『 スター・ウォーズ 』っぽさがあり、個人的にこういった展開は好ましい。

 

あちこちにその後の作品をインスパイアした要素が散見される。印象に残ったのは「君の愛は一千の死に勝る」というマッドマーティがんのセリフ。萩原一至の漫画『 BASTARD!! -暗黒の破壊神- 』で「君の愛は十億の死に勝る」か何かに言い換えられていた。

 

ネガティブ・サイド

ウィローたちの冒険にもっと必然性があれば尚よかった。予言の赤子をダイキニの元に還すというだけではなく、自分たちで予言を成就させるべく冒険の旅に出るというプロットにすれば、もっとドラマが盛り上がったと思われる。

 

総評

本作が現代になってドラマ化されるというのは、映画公開当時に本作に大いにインスパイアされた少年少女が、コンテンツ制作業界の意思決定権者になりつつある、あるいはなった、ということだろう。なのでリアルタイムで本作を楽しんだ今の40代は、ぜひ子どもたちに本作を観せてあげよう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go bonkers

go crazy の意味。すなわち「頭がおかしくなる」と「大騒ぎして楽しむ」ということ。村の長老が旅のリーダーに任じられた時、腕の立つボンカーを呼び寄せる様は、まさに go bonkers という感じだった。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, B Rank, アドベンチャー, アメリカ, ヴァル・キルマー, ファンタジー, ワーウィック・デイビス, 監督:ロン・ハワード, 配給会社:MGM映画会社Leave a Comment on 『 ウィロー 』 -王道ファンタジー-

『 インターステラー 』 -尻すぼみであること以外はパーフェクト-

Posted on 2023年1月9日 by cool-jupiter

インターステラー 80点
2023年1月7日 WOWOW録画にて鑑賞
出演:マシュー・マコノヒー アン・ハサウェイ ジェシカ・チャステイン
監督:クリストファー・ノーラン

諸事情あってなかなか映画館に行けないので、過去のWOWOW録画DVDを手に取る。中に入っているのは『 インターステラー 』と『 コンタクト 』で、前者を選ぶ。

あらすじ

ダストボウルの大量発生により土壌で作物が育たず、酸素も近い将来に生存不可能なレベルにまで低下することが予想される世界。元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は娘マーフの部屋で起きる奇妙なサインから座標を読み取る。そこではNASAが、人類救済ミッションを密かに進めており、クーパーは土星付近のワームホールを目指すミッションに参加することになる・・・

ポジティブ・サイド

地球滅亡ではなく人類滅亡という設定がいい。しばしば発生する砂嵐は dust bowl =ダストボウルと呼ばれる、1930年代にアメリカとカナダの農業に大打撃を与えたものである。もちろん Jovian はダストボウルを直接に経験した世代ではないが、これはアメリカ近代史ではしょっちゅう触れられるのでよく知っていた。

ワームホールの説明や描写もSF入門レベルにまで dumb down してくれているのも有難い。ワームホールの説明として、紙を折り曲げて二点をくっつけるというのは定番中の定番だが、二次元平面の紙の上の穴(hole)は三次元空間では球(sphere)になるという説明は秀逸だと感じた。

ワームホールの先の別の銀河で訪れる移住先の星々の描写も光っている。ブラックホール近傍の惑星あるいはステーションというのは『 ブラックホール 』でもお馴染みで、それ自体にオリジナリティはない。しかし、ブラックホールの重力圏内と圏外での時間のずれが生むドラマは、ベタながら見応えがあった。

ノーラン監督は初期から「時間」をテーマにした作品作りで知られていて、本作でもそれは一貫している。『 TENET テネット 』で見せた見事な物語の円環的構造は、実は本作でも示されていて、劇場で始めた鑑賞した時、WOWOWで二度目に鑑賞した時、そして今回と、毎回その構造の巧みさに舌を巻く。

本作の最大の功績はTARSかもしれない。R2-D2やBB-8とはまた違った魅力のあるロボットである。コミュニケーションの設定に正直度やユーモアがあったが、これは案外現実世界で似たようなロボットが作られた際、取り入れられる設定かもしれない。また、安易に人型にするのではなく、TARSのような造形の方がモビリティも確保できるだろうなと感じた。

SFにはファンタジーの領域にどっぷり浸かったものと、現実的な科学技術に立脚しつつ、ほんの少しのフィクションを混ぜたものがある。どちらも面白いのだが、本作は数あるSF作品の中でもファンタジーの領域と現実の領域が見事な配分でミックスされていると感じる。ここでいうファンタジーとは「愛」の力。いかなる科学も超越する親子の奇妙な愛の絆は、何度見ても感動させられてしまう。俺もだいぶ単純になってもうたな・・・

ネガティブ・サイド

親子の愛だけに留めておけばよかったのに、なぜアン・ハサウェイ演じるブランド博士をクーパーの love interest にする必要があったのか。ここが解せない。友愛に近い感じで良かったのでは?

そのブランド博士やその他の面々も、人類を救うと言いつつ、移住候補先の星の大地に星条旗の旗を立てるのか?これが英国籍と米国籍を持つクリストファー・ノーランの植民に対する意識の表れなのだろうか?うーむ・・・

天文物理学や生物学の門外漢だが、ガルガンチュアのようなブラックホールが天文単位の距離にあるような複数の惑星は、そもそも移住に向かないのでは?ブランド博士の言う通り、小惑星の衝突などが起きない(ブラックホールがそれらをすべて吸い込むか弾き飛ばす)環境では、生物の創発が喚起されない。地球ですら木星のおかげで天体衝突の確率は1000分の1になっているとされる。微生物や植物すらない環境はテラフォーム不可能な気がするのだが・・・

総評

最後の最後のクーパーの決断が個人的には受け入れがたいが、そこに至るまでの3時間近い物語には圧倒されるばかり。3度目の鑑賞でもそう感じる。ティモシー・シャラメやケイシー・アフレック、マイケル・ケインにジョン・リスゴーなど、若手から超ベテランまでが脇を固める。2010年代のSF映画の秀作の一つであることは間違いない。

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

stella

ラテン語で a star の意味。interstellar は文字通り「星々の間の」、「恒星間の」という意味である。星座を constellation と言うが、色んな星が一緒になってできるのが星座ということである。似たような語に『 アド・アストラ 』の astra がある。これは astrum の複数形の対格で、こちらも意味は星だが、やや誌的な感じがする表現。これの元はギリシャ語のasterで、astronaut や astronomy はここから来ている。アスタリスクを見たら「あ、確かに星だ」と感じてもらえれば幸いである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』
『 ファミリア 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, SF, アメリカ, アン・ハサウェイ, ジェシカ・チャステイン, マシュー・マコノヒー, 監督:クリストファー・ノーラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 インターステラー 』 -尻すぼみであること以外はパーフェクト-

『 ブレイン・ゲーム 』 -色々な要素を詰め込みすぎ-

Posted on 2023年1月4日 by cool-jupiter

ブレイン・ゲーム 50点
2023年1月2日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジェフリー・ディーン・モーガン アンソニー・ホプキンス アビー・コーニッシュ コリン・ファレル
監督:アルフォンソ・ポヤート

2018年にシネ・リーブル梅田で公開していたのを覚えている。何故かこのタイミングで近所のTSUTAYAで準新作扱いだったので、クーポンを使って割引料金でレンタルしてきた。

 

あらすじ

謎の連続殺人事件を捜査するFBIのジョー(ジェフリー・ディーン・モーガン)とキャサリン(アビー・コーニッシュ)は、予知能力を持つ医師クランシー(アンソニー・ホプキンス)に助力を求める。しかし、捜査を進めるにつれて、クランシーは犯人が自分を上回る予知能力の持ち主であると気付き、捜査から降りると言い出す・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤のいくつかの謎めいた殺人事件の現場はなかなかの迫力。異様な死に様を見せる被害者の数々に、『 セブン 』や、アンソニー・ホプキンスつながりで言えば『 羊たちの沈黙 』のような猟奇殺人事件映画の傑作の予感が漂う。カウルズ捜査官も、どことなくスターリング捜査官の雰囲気をたたえている。序盤の捜査開始シーンから真犯人のコリン・ファレル登場シーンまでは結構面白い。

 

コリン・ファレルの狂信的なまでのサイコパス殺人鬼の演技も堂に入っている。アンソニー・ホプキンスを鼻で笑うような演技はなかなかできない。『 AVA / エヴァ 』でも感じたが、この役者は老人とバトルを繰り広げるのが似合うのかもしれない。その超絶的な予知能力を物語る、とある録画映像の演出も地味ながら素晴らしい。

 

原題の Solace は慰めの意。本作のテーマに mercy killing =安楽死がある。ペインコントロールの上手く行かない末期癌患者は時に「殺してくれ」と叫ぶこともある。その瞬間の苦しみから解放するには死は最も確実かつ手っ取り早い手段だろう。『 いのちの停車場 』や『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』が扱ったトピックでもあるが、本作はさらに一歩踏み込んで、苦痛を感じ始める前に殺すという、屈折した思想を持った犯人像を作り上げた。この安楽死を単なる殺人と切って捨てるのか、それとも救いや慰めの一手段と見るのか。この部分について、ある意味で非常に剣呑な誘いをもって本作は閉じられる。この幕の閉じ方はなんとなく『 CURE キュア 』を思わせてくれた。

 

ネガティブ・サイド

ホプキンスやファレルの持つ超能力の正体がよく分からない。予知能力も物や人に手を触れて発動する場合と、不意に発動する場合がある。さらに、劇中でもたびたびフラッシュバックのように挿入されるビジョンには予知と過去視の両方があって、かなりややこしい。しかも、その能力の発動タイミングもかなり(製作者にとって)恣意的に思える。能力発動の条件があいまいなままストーリーが進むので、どうしてもご都合主義に見えてしまう。カーチェイスの最中および直後などはその最たる例だ。

 

真犯人=ファレルの存在は、あらすじどころかポスタービジュアルやDVDのカバーで明かされてしまっているが、この男の登場がとにかく遅い。1時間40分のストーリーのうち1時間ぐらい過ぎたあたりで登場してくるというのは、脚本のペース配分ミス、あるいは編集ミスだろう。あまりにバランスが悪すぎる。

 

キャスティングも、別にアンソニー・ホプキンスを起用する必要はなかったのでは?まあ、彼自身が製作総指揮に名を連ねているので、それはできない相談か。しかし、それでもクランシー博士とその娘がどうみてもお祖父ちゃんと孫にしか見えないし、妻とも相当な年齢の開きがあるように見えた。60歳ちょっとの別の役者を起用できなかったのか。役者としてのホプキンスは否定しないが『 羊たちの沈黙 』の二番煎じを狙うのは無理。ストーリーそのものは悪くないのだから、自分よりも若い役者を起用し、超知性かつ超能力の犯人を、友情と経験で追い詰めるような素直な物語にしてほしかった。

 

総評

序盤から中盤にかけての面白さは文句なし。ただし、いったんコリン・ファレルが現れてからは「なんじゃ、そりゃ・・・」という展開のオンパレード。超能力対決というのは『 スキャナーズ 』の昔から陸続と生み出されてきたが、本作はその中でも凡庸な部類に入る。ヒューマンドラマのパートにもっと力を入れるか、あるいは犯人と刑事&博士の対決にもっと尺を取れば、もう少し面白さも増したはず。アンソニー・ホプキンスのファンなら鑑賞もありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

precognition

 

予知の意。『 マイノリティ・リポート 』好きならプリコグという言葉を覚えているはず。あれは precognition の派生語、precognitives の省略形だ。cognition というのは取っ付きにくい語だが、この元のラテン語の cognosco は、同じ意味のギリシャ語 gnosis に由来する。gnosis は知識という意味で、ニュースアプリの「グノシー」の社名はまず間違いなくここから来ている。また、診断=diagnosis というのも、gnosis を含んでいる。身体診察や問診を通じて(dia = through)病気を「知る」ということである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アビー・コーニッシュ, アメリカ, アンソニー・ホプキンス, コリン・ファレル, サスペンス, ジェフリー・ディーン・モーガン, 監督:アルフォンソ・ポヤート, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 ブレイン・ゲーム 』 -色々な要素を詰め込みすぎ-

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