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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アメリカ

『 グッド・ナース 』 -医療とは何かを問う-

Posted on 2022年10月26日 by cool-jupiter

グッド・ナース 65点
2022年10月22日 心斎橋シネマートにて鑑賞
出演:ジェシカ・チャステイン エディ・レッドメイン
監督:トビアス・リンホルム

傑作の誉れ高い『 アナザーラウンド 』の脚本を手掛けたトビアス・リンホルムの監督作品。主演に『 女神の見えざる手 』のジェシカ・チャステインということでチケット購入。

あらすじ

シングルマザーの看護師エイミー(ジェシカ・チャステイン)は心臓病を抱えていたが、健康保険に加入できるまで、まだ数か月の勤務を要していた。そんな時、ベテラン看護師チャーリー(エディ・レッドメイン)がやってくる。二人は意気投合し、チャーリーはエイミーを公私で支えていく。しかし、チャーリーの着任以来、病院では患者の不審死が相次いで・・・

ポジティブ・サイド

dark cinematography が冴える。普通、薄暗い画面というものはあまり歓迎されないが、物語全体を貫く疑念が、本作では暗さという形で全編にわたって視覚的に表現される。夜勤のシーンが多く、当然のように病棟は消灯されている。このことが不自然な暗さへの違和感を緩和している。

 

ジェシカ・チャステインはアクション映画に出演するよりも、サスペンスやヒューマンドラマ方面にもっと出るべき。看護師としての演技は堂に入ったもの。注射前にシリンジをコンコンとやるのは、まさに看護師あるある。最初の心臓発作の際は、患者の体位変換の只中で、急性腰痛症、いわゆるギックリ腰の発症かと勘違いした。2000年代初頭はアメリカでも体圧分散マットはまだ普及していなかったか。様々なシーンでジェシカ・チャステインの見せる多くの所作や立ち居振る舞いは看護師をよくよく研究していて、実にリアルだった。まさに good nurse 。 

 

対するエディ・レッドメインのベテラン看護師ぶりにも説得力があった。死亡した老女の体を丁寧に清拭する様には真面目な職業人で、死者の尊厳を守ろうとする人間らしさも感じられた。エイミーと友情を紡ぎ、エイミーの娘たちにも positive male figure として接する姿は、こちらもまさに good nurse 。しかし、病棟で患者の不審死が続くようになってから、徐々に観客の疑念が大きくなってくる。

 

警察の介入、そして病院の不可解な対応・・・というよりもあからさまな隠蔽工作に慄然とする。警察の捜査にこっそりと協力するエイミーだが、ここでは病院どころか市議会議員や検察までもが事件に対してみて見ぬふり。アメリカの警察が悪というのはお定まりであるが、これはフィクションではなく実話。このあたりから、エイミーとチャーリーの友情に一気にサスペンス要素が盛り込まれてくる。徐々にあらわになるチャーリーの過去、そしてチャーリー自身が語る元妻や子どもとの関係についても、観る側はエイミー同様にますます疑心暗鬼になってくる。

 

エイミーとチャーリーの最後の面会のピーンと張りつめた緊張感は素晴らしい。これ見よがしなBGMもわざとらしいカメラワークもなく、二人の役者の演技合戦に委ねた感じがした。実際、チャーリーの犯行の動機が不明である以上、下手な味付けは不要だろう。脚本家が変に出しゃばらなかったことも奏功している。最後に明かされる事実については衝撃的の一語に尽きる。アメリカのヘルスケア・システムの歪さはある程度知っていたが、ここまでだったとは・・・。まさに事実は小説よりも奇なり。

 

ネガティブ・サイド

エイミーの心筋症は物語を重くするファクターであり、彼女がチャーリーに頼るようになる重要な契機でもある。その病気がドラマ作りにあまり寄与していない。チャーリーへの疑惑が深まるか、というタイミングで心臓の発作が・・・ 娘たちに対しても親身に接してくれるチャーリーを疑うとは何事かという葛藤が・・・のようなシーンがあってもよかったのではないか。

 

チャーリーが取り調べ室でぽつぽつと語り始めるシーンは少し陳腐に感じた。そこに至るまでの過程がこれ以上ないほどにスリリングだったので、ここで拍子抜けしてしまうのは作劇上、誠に惜しいと言わざるを得ない。

 

ほんの少しだけ医学的な知識が必要になるが、最小限の説明すらなし。日本の映画やドラマのように何もかもを台詞で説明するのもどうかと思うが、まったく説明がないのもやや不親切か。

 

総評

これが実話というのだから恐れ入る。エンディングで明かされる数字には震えあがるしかない。近年、エッセンシャル・ワーカーとして看護師という職業への認知がアップデートされているが、元より看護は医行為を含み、医行為は侵襲を伴うものが多い。今も現役看護師であるJovian母は、よく胸骨圧迫で患者さんの肋骨を折っていた(本人談)。

J「それでどうやったん?」
母「アカンかったわ」

みたいな会話は普通だった。チャーリーのような bad nurse を擁護するつもりは毛頭ないが、人間にダメージを与える行為への看護師の心理的閾値が低いのは間違いない。ではどうすればよいのか?その答えが本作である。看護師はペアで働かせるべし。一人でなにもかもさせてはならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

At the end of the day

その日の終わりに、という意味ではない。これは「結局は」、「最終的には」、「つまるところ」のような意味。劇中では

At the end of the day, we are here for you.
結局のところ、我々は皆さんの味方です。

のように使われていた。結論や重要な点を述べる前に、At the end of the day と言うようにしてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 秘密の森の、その向こう 』
『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 アムステルダム 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, エディ・レッドメイン, サスペンス, ジェシカ・チャステイン, 伝記, 監督:トビアス・リンホルム, 配給会社:NetflixLeave a Comment on 『 グッド・ナース 』 -医療とは何かを問う-

『 アフター・ヤン 』 -アンドロイドを悼むということ-

Posted on 2022年10月23日 by cool-jupiter

アフター・ヤン 75点
2022年10月22日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:コリン・ファレル ジョディ・ターナー=スミス ジャスティン・H・ミン マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ 
監督:コゴナダ

 

妻のリクエストで大阪ステーションシティシネマへ。客層はほぼ中高年といった感じ。

あらすじ

茶葉店を営むジェイク(コリン・ファレル)と妻カイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、幼い養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)、アンドロイドのヤン(ジャスティン・H・ミン)は幸せに暮らしていた。しかし、ある日、突然、ヤンが故障してしまう。ヤンを修理する方法を探す過程で、ジェイクはヤンに毎日数秒だけの映像記録が残るメモリーが内臓されていることを知り・・・

ポジティブ・サイド

シンボリズムに溢れた作品。白人の父、黒人の母、アジア系の養子にアジア系のアンドロイドと、diversity を象徴するような家族が冒頭から映し出される。その家族がそろって踊る、しかし、皆が躍るのを止めてもヤンだけが踊り続ける。最初は戸惑ったが、後にこれが本作の Establishing Shot であると分かった。

 

ヤンの故障に最も過敏に反応するのがミカというのも、当たり前と言えば当たり前だが、その反応には注意を払う必要がある。I want him back! と叫ぶミカは、ヤンが死んだとは理解していない。あくまで故障であって、修理すれば元に戻ると信じている。ミカはほんの子どもであるが、死の概念が理解できないほど幼いわけではない。この世界にどれほど深くアンドロイドが根付いていて、しかしその歴史はまだそれほど古くはないことが示唆されている。本作は常に、説明することを拒否する。観る側に絶えず考察することを要求する。

 

ヤンの修理を試みる過程でジェイクはヤンに内蔵された数々の過去の映像を掘り起こすことになる。その中でクローンの存在についても観る側は知ることになる。人間同士の関係、人間とアンドロイドの関係、人間とクローンの関係の記憶の断片の数々から浮かび上がってくるのは、我々が生きるこの世界には未知の領域がいくらでもあるということ。たとえば自分の父と母の幼少期、自分の親友の家庭内での姿、自分の子どもの初恋など。これらの、本来であれば知り得ないような家族の秘密、さらに他人の秘密のようなものをわずかでも垣間見た時に明らかになるもの、それが歴史ではないだろうか。我々の知らないところで誰かが生きているし、我々が死んだ後も誰かが生きていく。

 

Every new beginning comes from some other beginning’s end. という歌詞がある。セミソニックの『 Closing Time 』という楽曲のそれで、結構ヒットした曲なので30代以上なら知っている人も多いだろう。本作のテーマはまさにこれで、何かが終わったとしても、それは別の何かの始まりなのかもしれない。芋虫にとっての終わりは、蝶にとっての始まり。ならばアンドロイドにとっての終わりも、何か別の事象の始まりなのではないか。本作は答えを語らない。答えは鑑賞者それぞれが想起するのだろう。

ネガティブ・サイド

個人的にはクローンに関する云々は不要であると感じた。おそらくだが、人間にとっては遠くの人間を愛するよりも、近くの動物やメカを愛する方が易しい。同様に、人間はクローンよりもロボットの方に愛着を感じやすいと考えられる。本作はロボットに焦点を集中させるべきだと感じた。

 

全編が非常に淡々と進んでいくが、もう少し何らかの起伏というか、分かりやすい起承転結があっても良かった。

 

総評

観終わって、しばらく席で沈思黙考する作品は多くない。しかし本作はそうさせてくれた一本。家族とは?生とは?死とは?文学や芸術、果ては哲学や宗教の領域にまで亘る問いが本作ひとつの中に収められている。近い将来(20~50年後ぐらいか?)に到来するであろうアンドロイドやクローンとの共生社会の一つありうべきシミュレーションとして、本作の価値は高い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

wrap one’s head around ~

~を理解する、の意。『 ゴーストランドの惨劇 』や『 スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち 』でも紹介した表現。

I still can’t wrap my head around what this movie is all about.
この映画のテーマがなんなのか、今でも分からない。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

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『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 アムステルダム 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アメリカ, コリン・ファレル, ジャスティン・H・ミン, ジョディ・ターナー=スミス, マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ, 監督:コゴナダ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 アフター・ヤン 』 -アンドロイドを悼むということ-

『 トップガン マーヴェリック 』 -追いトップガン6回目-

Posted on 2022年9月19日2022年12月31日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点
2022年9月18日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー ヴァル・キルマー
監督:ジョセフ・コジンスキー

9月16日から行われている『 トップガン 』と『 トップガン マーヴェリック 』の連続上映。back to back で鑑賞すると、新作は前作のオマージュに満ち溢れていて、なおかつエンタメ一直線路線も受け継いでいることにあらためて気づかされる。

 

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

ポジティブ・サイド

6回目の鑑賞で、何もかも分かっているのだが、それでも中だるみを感じることがない。これは素直にすごいことだと思う。ダークスターのテスト飛行からの事故、左遷と思わせてのトップガンへの復帰、ペニー・ベンジャミンとの再会、ルースターら新世代のトップガン卒業生との訓練、盟友アイスマンとの別れなど、すべてのプロットが戦闘機のスピードで疾走していく。

 

自分が単純なのもあると思うが、アイスマンとの対話と抱擁は何度鑑賞しても胸がいっぱいになるし、マーヴェリックが2分15秒で峡谷を突破して爆撃を成功させるシーンでは息が止まるほどの緊迫感がある。F-14を駆ってSu-57とのドッグファイトは、まさに “It’s not the plane, it’s the pilot.” の極致。現実だと100回やって10回も勝てないだろうが、それでも勝ってしまうだけの説得力がマーヴェリックにあった。

 

前作でトム・スケリット演じた共感バイパーやM・アイアンサイド演じたジェスターのキャラクターの一部がサイクロンに投影されているのも面白い。下限高度にうるさいのは当たり前として、前作でバイパーに “Is that clear?” と言われて “Yes, sir.” としか返せなかったマーヴェリックが、今作ではすかさず文書を提出するところに、彼の30年間での成長が見て取れた。フェニックスとハングマンを同時に相手するときの、”Leaving your wingman. There’s (That’s じゃなかった・・・) a strategy I haven’t seen in a while.” というのは、かつての訓練で僚機を捨ててバイパーを追うというミスを犯した自分に言及しているのかと、6回目の鑑賞で気付いた。

 

フェニックスは良いキャラで、変に誰かの love interest になったりしないところや、女性特有のあれやこれやがプロットに組み込まれていないのも良かった。訓練や撮影時に、演じたモニカ・バルバロだけが唯一嘔吐しなかったと言われているが、そうしたプラスの描写やエピソードがなかったことも良かったと思う。女性だとか男性だとかに囚われず、トップガン卒業生として横一線で勝負するところが素晴らしいのである。

 

全体的に前作をトレースするシーンが多かったが、生徒だったマーベリックが教官マーヴェリックに成長する上では避けて通れない描写だった。前作のファンを喜ばせるための措置が、そのまま本作のプロットの必然性につながっていた。これは脚本家の功績。素晴らしい。大学で正課および課外講座を受け持つことがあるJovian先生も、マーヴェリックを見習って、今後はクラス中にもう少しだけチーム制のアクティビティを取り入れていこうと思う。

 

身もふたもない言い方をすれば、トム・クルーズが自分のナルシシズムを成就させるために生み出した作品。それがこれほど面白いのだから、エゴも突き抜ければ他者を満足させるのか。ハリソン・フォードといえばハン・ソロ、シルベスター・スタローンといえばロッキー・バルボア、トム・クルーズといえばピート・”マーヴェリック”・ミッチェルと言えるだけの代表作を生み出したと言える。良くない例かもしれないが、『 セブン 』のブラピ演じる刑事キャラの名前とかパッと出てこないでしょ・・・

 

閑話休題。分かる方がいれば是非お知らせください。何度観てもフェニックスとハングマンの掛け合いは面白いのだが、いつも音声ばかり聞いて、字幕表示が分からない。

 

Maverick: Leaving your wingman? There’s a strategy I haven’t seen in a while. 
僚機(ウィングマン)を見捨てる?こんな戦法を見るのは久しぶりだ。

 

Hangman: He called you a man, Phoenix. You’re gonna take that?
フェニックス、マーヴェリックが man だと言ってるぞ?受け入れるか? 

 

Phoenix: As long as he doesn’t call you a man. 
あんたを man と呼ばなければね。

 

のところの字幕がどうなっているか、覚えている人がいれば是非コメント欄でご一報を。なんか「男は我慢よ」みたいな文字がちらっと見えた気がしたのだが・・・

ネガティブ・サイド

最後にエド・ハリスが出てきて、ジョン・ハムと二人で苦笑いするシーンとかがあれば痛快だったろうに。まあ、そこまでいくと演出過多か。

 

総評

大げさかもしれないが、本当に老若男女問わず観てほしい作品。期せずしてロシアによるウクライナ侵攻や、台湾海峡あたりでの有事が想定される世界情勢になってしまったが、平和というのは膨大なエネルギーでもって支えられているということが如実に感じることができる作品。除隊するつもりだったマーヴェリックを、ペニーが必死に説得。見事に編隊長の座を掴み取ったマーヴェリックだったが、それは死ぬかもしれないミッションに向けて飛び立つことを意味する。台詞のないマーヴェリックとペニーの囁きと抱擁に、軍人という難しい生き方が垣間見える。それを肯定せよとは思わないが、否定もできないと感じる。爽快感の後に、ほんの少しの苦みを残す。それも時代にマッチした名作の所以か。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You got this.

「お前はならできる」の意。相手を cheer on するときに使う定型表現。出撃前にルースターがマーヴェリックに声をかけるが、甲板上の放送で邪魔されてしまう。おそらく僚機に選んでもらったことへの感謝、あるいは疑問をぶつけようとしたのだろう。You got this. というのは勿論「お前ならできる」という意味だが、取りようによっては「情実じゃない、この役目はお前が実力でゲットしたんだ」とも取れる。6回目の鑑賞でそう感じた。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, ヴァル・キルマー, トム・クルーズ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズ『 トップガン マーヴェリック 』 -追いトップガン6回目- への2件のコメント

『 トップガン 』 -4Kニューマスター上映-

Posted on 2022年9月19日 by cool-jupiter

トップガン 90点
2022年9月18日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:トム・クルーズ アンソニー・エドワーズ ケリー・マクギリス ヴァル・キルマー
監督:トニー・スコット

『 トップガン マーヴェリック 』の記録的な大ヒットを受けて、前作と新作の二作連続上映。こういった試みは、今後も続けていってほしいと思う。

 

あらすじ

F-14パイロットのマーベリック(トム・クルーズ)は無鉄砲な操縦を繰り返す海軍の問題児。そんな彼と相棒のグース(アンソニー・エドワーズ)はエリート養成機関「トップガン」に送り込まれる。他の部隊の腕利きや教官との衝突や、民間人アドバイザーのチャーリー(ケリー・マクギリス)とのロマンスを通じて、マーベリックは成長していくが・・・

ポジティブ・サイド

夕陽と戦闘機、そして Kenny Loggins の “Danger Zone” のシーンが都合3回出てくるが、これらのシーンが最も『 トップガン 』らしいと感じた。『 トップガン 』自体は多分10回以上観ているが、初めて劇場で鑑賞したことで、大画面と大音響でしか感じ取れないものがあると分かった気がする。

 

若きトム・クルーズが、無鉄砲なパイロット、無邪気な青年、孤独と焦りを抱えた男など、様々な面を多彩に演じ分けた。レオナルド・ディカプリオ同様に、ルックスだけの人ではなく、若い頃から実は演技派だったわけやね。レイバンのアビエイター仕様サングラスを駆ける時の笑顔は反則級に charming だし、グースを失って打ちひしがれる姿は heart-wrenching としか言いようがない。

 

今作の時点で父と息子というネタが仕込まれていて、アメリカが持つ positive male figure への幻想の強さをあらためて再確認した。同時に、”You look good.” のように、次作に受け継がれていく数々のネタ的な台詞や演出が発見できたのも楽しかった。

 

迫力に欠けると一部で言われた高空での戦闘シーンは、逆にオーガニックに感じられて好感を持った。サイズが実物の何分の一かのモデル機を使って撮影したというのは、精巧なCGがない時代ゆえの特撮。けれど、CGで何でもありになってしまった現代人の目には逆に非常に新鮮に映った。F-14が単純にメチャクチャかっこいい飛行機ということも再確認した。

 

新作鑑賞後にあらためて観ると、全体的な作りは非常にチープというか、1980年代定期なテイストで彩られている。すなわち、ベトナム戦争よりも後で、湾岸戦争よりも前という、ある意味で軍がリアルではなくファンタジーでいられた時代。本作の影響で米海軍への入隊志願者が増えたと言われる。フィクションとしてのエンタメは、時に現実に強く作用するという好個の一例だろう。

 

ネガティブ・サイド

F-14がジェット後流に巻き込まれるシーンは山岳地帯だったが、イジェクトしたマーベリックとグースは海に着水した。機を海に向けるなどのシーンが一瞬でよいので欲しかった。

 

総評

劇場の入りはイマイチだったが、このような試みはもっと行ってほしい。コロナ禍の2020年にジブリ映画がリバイバル上映されたように、続編がヒットしたら、その前作を劇場で再公開するというのは、今後のビジネスモデルとして研究されてしかるべきと思う。ラブシーンがあるので、子供の年齢にはちょっとだけ注意が必要だけれども、 親子で劇場鑑賞してほしいと心から思える作品。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fall for someone

誰かに惚れる、誰かを好きになる、の意。『 イソップの思うツボ 』でも紹介した表現。劇中ではチャーリーがマーベリックに対して使っていた。fall in love with someone は少々ロマンチックすぎる表現なので、こちらを使おう。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1980年代, S Rank, アクション, アメリカ, アンソニー・エドワーズ, ヴァル・キルマー, ケリー・マクギリス, トム・クルーズ, 監督:トニー・スコット, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 トップガン 』 -4Kニューマスター上映-

『 レインマン 』 -旅は人を変える-

Posted on 2022年9月15日 by cool-jupiter

レインマン 85点
2022年9月14日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ダスティン・ホフマン トム・クルーズ
監督:バリー・レビンソン

 

『 テルマ&ルイーズ 』と同じく、午前十時の映画祭にて鑑賞。同じくロードトリップの傑作。

あらすじ

チャーリー(トム・クルーズ)は、義絶していた父が死んだと聞き、遺産目当てに葬式へと向かった。しかし、300万ドルの遺産は管財人を通じて特定の人物に相続されることに。その人物が、存在すら知らなかった自閉症の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)だと知ったチャーリーは、遺産の半分の相続を法的に主張するために、レイモンドをLAへ連れていこうとするが・・・

ポジティブ・サイド

『 トップガン マーヴェリック 』では年齢を感じさせなかったトム・クルーズだが、本作では流石に若々しさに満ち溢れている(当たり前だ)。同時に、ビジネスも上手くなく、同僚の操縦も下手で、ガールフレンドへの当たりも強い。つまりはクズなわけだが、そんな男が遺産目当てで出向いた父の葬式で、実は兄がいて、しかもその兄がまともなコミュニケーションを取ることができない自閉症の兄との旅路で思いがけない挫折と成長を味わう。

 

こう書くと実にありきたりなプロットというか、純文学の香りすらしてくる。しかし、中身は実にまっとうなエンターテイメントで、いかにもアメリカといった趣のあるヒューマンドラマにしてロードトリップ・ムービーである。

 

イライラして怒鳴り散らすトム・クルーズには若気の無分別という言葉がピッタリ。母は幼くして亡くなり、少年時代に父親に愛情を注がれなかったと固く信じている、まさに愛情不足の典型のような青年だ。そんな男がカネ目当てに自閉症の兄を施設外に無断で連れ出すのだから、応援できるわけがない。しかし、そんなチャーリーを期せずして変えてしまうのが、兄レイモンドである。

 

ダスティン・ホフマンの演技はキレッキレで、ALSなら『 博士と彼女のセオリー 』のエディ・レッドメイン、自閉症なら本作のダスティン・ホフマンを超える演技は不可能だと思わされた。

 

コミュニケーションが成り立っていない状態で延々と話し続けるシーンや、クルマが走りながら話すシーンが非常に多く、どれだけのNGあるいはリテイクがあったのか気になる。前編これ、トム・クルーズとダスティン・ホフマンの演技合戦である。特にホテルの一室で二人がダンスするシーン、そして期せずして二人の距離が大きく変化する瞬間ほど poignant なものは、近年の映画では思いつかなかった。

 

レインマンというタイトルの意味が明らかになる中盤からは至高のヒューマンドラマとなる。旅は人を変える。月並みな真実だが、それを非常に説得力のある形で提示した傑作である。

 

ネガティブ・サイド

一点だけ不満なのが、なぜレイモンドがあれほど心理的にスムーズに施設の外に出られたのかということ。なにか一つだけでも、「この男は、幼かったあの子が成長した姿だ」と彼なりに感じ取る契機というか、ほんのちょっとした気付きのエピソードがあればパーフェクトだったと感じる。

 

総評

文句なしの大傑作。ロードトリップものとしては『 テルマ&ルイーズ 』に勝るとも劣らない。障がい者(ということ語弊があるが)をメインに据えた作品としては『 フォレスト・ガンプ/一期一会 』よりも上だと感じる。若いトム・クルーズが粗削りな演技ながらも、盟友ダスティン・ホフマンに食らいついていく様を見ると、『 トップガン マーヴェリック 』の撮影開始前に、彼が若い俳優たちに彼自身が考案した3か月の特別訓練を課したというプロフェッショナリズムの原点はここにあったのかもしれない、とすら思える。stand the test of time forever な作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take over 

引き継ぐの意。遺産ではなく、事業や業務を引き継ぐ時に使う。劇中では “I’ll take over from here.” = ここからは私が引き継ごう、となっていた。もちろん、I’ll take over your job. = 僕が君の仕事を引き継ぐよ、のように目的語を取ってもいい。我が業界では、割と頻繁に非常勤講師が代わるので、テイクオーバーはもはや日本語と化している。嘆かわしい限りである。 

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1980年代, A Rank, アメリカ, ダスティン・ホフマン, トム・クルーズ, ヒューマンドラマ, 監督:バリー・レビンソンLeave a Comment on 『 レインマン 』 -旅は人を変える-

『 死霊館 悪魔のせいなら、無罪 』 -拍子抜けもいいところ-

Posted on 2022年9月11日 by cool-jupiter

死霊館 悪魔のせいなら、無罪 20点
2022年9月11日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:パトリック・ウィルソン ベラ・ファーミガ
監督:マイケル・チャベス

『 死霊館 』シリーズ。一つも見たことはないが、「悪魔のせいなら、無罪」という副題に惹かれて近所のTSUTAYAでレンタルしてしまった。

 

あらすじ

心霊研究家のエド(パトリック・ウィルソン)とロレイン(ヴェラ・ファーミガ)のウォーレン夫妻は、悪魔に憑りつかれたせいで殺人を犯してしまったという青年アーニーの無実を証明するため、その呪いの実態を調査することになるが・・・

 

ポジティブ・サイド

子役の男の子はそれなりに迫力があったかな。

 

ベラ・ファーミガは良い年齢の重ね方をしていると感じた。

 

ネガティブ・サイド

こんなん、タイトル詐欺やん。悪魔のせいなら無罪という部分に惹かれて、『 エミリー・ローズ 』のような丁々発止のやりとりを期待していたのに、肝心の法廷部分は最後におまけ程度についてくるだけ。実際に悪かったのは人間ですというオチ。しかも無罪判決が出るわけでもなし。

 

冒頭の悪魔祓いのシーンも『 エクソシスト 』で見た構図の焼き直し。サメ映画が『 ジョーズ 』を超えられないように、悪魔祓い映画も『 エクソシスト 』を超えられないのか。白目むいたり、四肢を変な方向に曲げたりといった視覚的な演出以外を追求しようとは思わんのか。

 

その他のシーンもホラー映画の文法にあまりにも忠実すぎて、退屈になるだけ。ここはこけおどしだろう、ここはそろそろ来るな、という予感がほとんど全部的中する。多分、作り手も流れ作業で製作しているような気がする。それでも『 死霊館 』ユニバースの熱心なファンなら、キャラクターの development を楽しめるのかもしれないが、初見の人間ではストーリーも演出も全く楽しめない。

 

総評

ホラー+法廷サスペンスというテイストを期待していたのに裏切られた。和洋折衷の料理屋だと思って入ったら、ほとんど全部洋食で、最後の最後に抹茶アイスのデザートを供された感じである。ホラーの初心者にもホラーの愛好家にも勧められない。死霊館シリーズのファンだけが楽しめば良いというスタンスで作られた作品なので、それに該当しない人は近づくべからずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

curse

呪い、または呪うの意。これをセンテンスの形で使うことはまずない。普通は “Curse you!” = 呪ってやる!=この野郎め!という意味合いで使う。というか、こんな表現を使えるなら、もう英語コミュニケーションの上級者だろう。 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アメリカ, パトリック・ウィルソン, ベラ・ファーミガ, ホラー, 監督:マイケル・チャベス, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 死霊館 悪魔のせいなら、無罪 』 -拍子抜けもいいところ-

『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

Posted on 2022年8月28日 by cool-jupiter

NOPE  / ノープ 70点
2022年8月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ダニエル・カルーヤ キキ・パーマー スティーブン・ユアン ブランドン・ペレア
監督:ジョーダン・ピール

Jovianは矢追純一世代だったので、UFOには一時期かなりハマっていた。そのUFOをジョーダン・ピールが料理するというのだから、観ないわけにはいかない。

 

あらすじ

馬の飼育と調教を生業にするヘイウッド家の父が、謎の死を遂げる。長男OJ(ダニエル・カルーヤ)は、父の死と空に一瞬見えた謎の飛行物体が関連していると確信。妹のエム(キキ・パーマー)と共に、謎の物体をカメラに収めようと考えるが・・・

ポジティブ・サイド

予告や内容紹介の段階では、M・ナイト・シャマランの『 サイン 』のようなストーリーなのかと思った人は多くいそう。実際に似ているところもあったし、そうでないところもあった。いずれにせよ確実なのは、ジョーダン・ピールがまたしても非常にオリジナル作品を送り出してくれたことだ。

 

オープニングのTVショーはまったくもって意味不明。また映画の各段階で馬の名前が画面に大々的に表示される。これもこの段階では意図が見えない。しかし、後々これらが本作のテーマとダイレクトにつながっていることが分かる。

 

ハリウッドのはずれのはずれにある広大な馬の飼育場、その上空の雲の中に得体の知れない存在がいる。そして、それはどうやら人や馬を襲う。この正体不明の存在との闘争・・・ではなく、とにかくこいつを写真や映像にしてビッグになってやろう、というところが現代風で面白い。また、その奇妙なモチベーションに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのが興味深い。

 

主人公OJを演じるダニエル・カルーヤは、『 ゲット・アウト 』とはガラリと異なる寡黙な男。しかし馬および野生動物に対する造詣が深く、そのことが物語上で大きな意味を持っている。また馬の調教師であるというバックグラウンドに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのは興味深い。映画産業の初期の初期から現代に至るまで、我々は物語(往々にしてそれは事件)をカメラという媒体で撮られ、スクリーンという媒体に映写されるものだと思ってきた。しかし、本当の事件が自分の身にリアルに起きた時、人はどう対応するのか。これが本作の裏テーマなのではないかと思う。

 

徐々に正体を現すUFOと、それをカメラに収めようとするOJとMの兄妹や、奇妙な協力者エンジェル、自身の経験が裏目に出て被害に遭ってしまうジュープなど、それぞれの登場人物が物語に意味と味わいを与えている。個人的に最も印象に残るのは、後半に登場する老カメラマン。常にPCモニターで「あるもの」を見ているのだが、本作ではそれは痛烈な皮肉に見えてくる。UFOで始まり、ハリウッドの新たな神話の誕生で終わる。何を言っているのか分からない?だったら劇場で観るべし。

以下、マイナーなネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

序盤から中盤にかけての展開がスリリングだったのに対して、終盤にかけての展開は少しテンポが落ちたと感じる。「あれは何だ?」、「もっとちゃんと見せろ」という中盤までのテンションが、後半にまで持ち越されていない。謎の存在をカメラに収めるというミッションに、途中で別キャラが入り込んでくるからだろう。もしも牧場の倉庫に主導のフィルムカメラが眠っていて「ひいひいひいお爺ちゃん、ありがとう!」という展開であれば、また異なる印象を受けたと思う。

 

これはトレーラーの罪なのだろうが、Mがしきりに “Don’t look, don’t look.” と言いながら歩くシーンは盛大なネタバレだった。

 

UFOが『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』的な変形を見せるのはちょっといただけない。もっと無機質なままで良かったのにと思う。写真に収めるべきは馬に乗ったOJであるべきだったと思う。

 

総評

『 ゲット・アウト 』のような意表を突いたSF的な要素もありながら、常に社会批判も盛り込んでくるのがジョーダン・ピール流。今作でも伝統的な映画業界やパパラッチ、YouTuber を皮肉る一方で、エンターテイメントとしての面白さもしっかり追求できている。ジャンルとしてはSF+ホラーになるのだろうが、このホラー映画は観る人を選ばない。ある意味で、『 ゲット・アウト 』や『 アス 』よりも、本作の方がジョーダン・ピール世界への入門編としては適しているかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nope

No のくだけた言い方。No をクイックに歯切れよく発音すると、語尾に p の音がついてくる。同じことは Yes にも言える。これをインフォーマルに言うと Yep となる。いずれの表現もかなりカジュアルな表現なので、ビジネスの場では使わないようにしたい。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アメリカ, キキ・パーマー, スティーブン・ユアン, ダニエル・カルーヤ, ブランドン・ペレア, ホラー, 監督:ジョーダン・ピール, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

『 トップガン マーヴェリック 』 -追いトップガン5回目-

Posted on 2022年8月21日2022年12月31日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点
2022年8月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー

「追いトップガン」なる言葉が生まれていたことを最近知った。Jovianも5度目の追いトップガンである。

 

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

ポジティブ・サイド

2週間前の西宮ガーデンズも凄い入りだったが、今日のMOVIXあまがさきもかなりの混雑。座席は8~9割は埋まっていた。中高年が多いが、10代男子や20代カップルもちらほら。コロナは高止まりしているが、映画館に人は帰ってきているなと強く印象付けられた。

 

多くの人々が大画面と大音響の中毒になっているのだろう。冒頭の Top Gun Anthem と Danger Zone でノリノリになっているオッサンが数名見受けられた(頭や肩がヒョコヒョコ動いているのが見えるのだ)。彼らもきっと追いトップガン組だろう。

 

5度目の鑑賞となると、字幕に目をやらず、役者のセリフに集中することができる。ハングマンとフェニックスのやりとり(フェニックスがこっそり中指を立てるところなど)は観ていて毎回とても面白いが、今回新たな発見が。

 

Maverick: Leaving your wingman? That’s a strategy I haven’t seen in a while.
僚機(ウィングマン)を見捨てる?こんな戦法を見るのは久しぶりだ。

Hangman: He called you a man, Phoenix. You’re gonna take that?
フェニックス、マーヴェリックが man だと言ってるぞ?受け入れるか?

Phoenix: As long as he doesn’t call you a man.
あんたを man と呼ばなければね。

 

めちゃくちゃ痛快なやりとりである。『 エイリアン2 』の

ハドソン:Hey Vasquez, have you ever been mistaken for a man? 

バスケス:No. Have you? 

並みに面白い。字幕がどう表示されたかは覚えていないが、wingman は確かに男に聞こえる。余談だが、アメリカでは定期的に大学一年生を freshman ではなく freshperson と呼ぶようにしよう、という運動が起きると聞いたことがある。けれど毎回 fizzle out するようだ。fisherman や fireman も同じらしい。映画やドラマでも firefighter より fireman の方が圧倒的に使われている頻度は高いと感じる。きっと wingman もいつまでも wingman なのだろう。

 

閑話休題。本作はリリースのタイミングもある意味で絶妙だった。ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界は戦争を抑止するシステムが膨大な力によって成立していることを図らずも知ってしまった。同時に「死ぬのも仕事のうち」だという人々が存在するということも。たた、死ぬのが仕事のうちだからといって必ず死ななければならないわけではない。死なないに越したことはない。本作や前作『 トップガン 』で戦闘機や軍事そのものに興味を持ったという若い世代には、ぜひとも漫画『 ファントム無頼 』をお勧めしたい。日本の空にもマーヴェリックのような自衛官が飛んでいると思えるようになるだろう。

ネガティブ・サイド

マーヴェリックが単騎でミッション演習コースを駆け抜けるシーンで、峡谷を飛ぶマーヴェリックの機ではない機体の影が一瞬だけ映っている。最初の頃の鑑賞では気のせいかと思っていたが、何度見てもやはり映っている。マーヴェリックのF-18の機影ならまっすぐ動くはずだが、その影の元になった機体は上昇しているっぽい。画面に映るのは1秒ほどだが、誠に惜しいシーンである。

 

総評

何度見てもやっぱり面白い。ターミネーター=A・シュワルツェネッガー、ハン・ソロ=ハリソン・フォード、ロッキー=シルベスター・スタローンと同じレベルで、ピート・”マーヴェリック”・ミッチェル=トム・クルーズであると感じる。今年の最優秀海外俳優の座は彼のものである。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズは4作目か5作目で観るのをやめてしまったが、やっぱり観たいと思えてきた。トム・クルーズのスターパワー、恐るべしである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

None of your business.

「お前には関係ない」の意。結構きつい表現なので職場などでは使わない方が吉。ほぼ同じ意味とニュアンスの表現に Mind your own business. がある。これらを正しく使えれば、それだけでコミュニケーションの上級者である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ヒューマンドラマ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -追いトップガン5回目-

『 グレイマン 』 -頭を空っぽにして楽しむべし-

Posted on 2022年8月18日 by cool-jupiter

グレイマン 65点
2022年8月15日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ライアン・ゴズリング クリス・エヴァンス アナ・デ・アルマス
監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ

 

Netflix製作・配給の映画。典型的な popcorn flick である。アクション満載なのは楽しいが、すべてがどこかで観た構図なのが玉に瑕。

 

あらすじ

長期服役中だったが、CIAの工作員としてスカウトされたコードネーム、シエラ・シックス(ライアン・ゴズリング)。ある時、タイのバンコクでターゲットを暗殺するが、その男は自らを元シエラ・フォーだと言い、シックスにとある機密情報を託す。シックスは同作戦に従事したミランダ(アナ・デ・アルマス)にフォーのことを告げる。同時に、CIA本部では、冷酷非情な工作員ロイド・ハンセン(クリス・エヴァンス)がシックス暗殺に向けて動き始めて・・・

ポジティブ・サイド

とにかく最初から最後までど派手なアクションの連続。格闘戦あり、ナイフ使いあり、銃撃あり、カーチェイスあり、爆発ありと何でもござれ。戦闘の舞台もバンコクから始まり、ウィーン、プラハ、クロアチアなど正に世界を股にかける工作員たちのスーパーバトル。CGと実写の両方が使われているが、どちらにも相当のカネが費やされている。アクションを期待するなら、You will get your money’s worth. その期待は裏切られることはないだろう。

 

はじめはブレードランナーVSキャプテン・アメリカぐらいに思っていたが、とんでもない。シエラ・シックスは『 ブラック・ウィドウ 』よりも強いのではないか。観る側にそう思わせるだけのド派手なアクションのオンパレードである。

 

カナダでは「ライアンと言えばゴズリング」と言われるぐらいの人気俳優だが、ライアン・ゴズリングの北米大陸どころか、名実ともに世界的スーパースターになった。本作でもその地位を更に固めることになったと言えるだろう。『 ナイスガイズ! 』のようなコメディ・アクションから、本作のようなシリアス・アクションまで、その演技ボキャブラリーは巨大。わずか数秒だけしか画面に映らないが、ムキムキの体も作ってきた。

 

悲しい過去を背負った男が、友情、そして新たな愛情の対象を見つけ、それを命がけで守る姿は美しい。ライアン・ゴズリングのファンなら本作は必見だろう。『 アメリカン・アサシン 』が面白かったと感じた向きにもお勧めだ。スペシャリストvsスペシャリストという分野に新たな快作が送り出されてきた。次回作への期待も膨らむ。Netflix限定配信などと言わず、ぜひ劇場公開を!

ネガティブ・サイド

アクションの規模は空前絶後だが、全てのシーンに既視感を覚える。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズからジェイソン・ボーンのシリーズまで、どこかで観た銃撃戦だったりカーチェイスだったり、肉弾戦だったりする。観ている最中は手に汗握るが、観終わって少し時間が経つと、興奮したことは覚えていても感銘を受けたシーンがほとんどなかったことに気付く。

 

また悲しい過去を背負った男が少女を守るために闘うというプロットでは『 アジョシ 』が先行している。アクションのスケールでは本作の勝ちだが、チャ・テシクとシエラ・シックスが素手もしくはナイフで戦えば、チャ・テシクが勝つ構図しか見えない。本作はそういう感想を抱かせる作品である。

 

悪役のクリス・エヴァンスはそれなりに新鮮だったが、劇中で盛んに sociopath と形容される悪役そのまんま。予想通りの悪でしかない。爪をはぎとっていく拷問シーンはまあまあの迫力だが、それとても『 ただ悪より救いたまえ 』のインナムが錆びた極太ばさみで拷問相手の指を切り落としていくシーンと比較してしまうと、非常に小物っぽくなってしまう。それこそエヴァンス演じるロイドは、それこそ『 ただ悪より救いたまえ 』のレイ以上の狂気を放つ極悪人であるべきだった。このあたり、監督の演出の弱さか、それともエヴァンスがキャプテン・アメリカの殻を破れないのか。

 

最大の問題は、あれだけ他国で大暴れしておきながら、肝心のCIAがまったく揺らいでいないところである。他国であれだけ警察官や一般市民を殺傷すれば、CIA長官どころかアメリカ大統領の首が飛ぶだろう。エンディングで( ゚Д゚)ハァ?となること請け合いである。

 

総評

シネ・リーブル梅田の新音響を利用したodessa上映回に行ってきたが、Netflix配信=個人用デバイスでの鑑賞では味わえない音響と音圧だった。odessa上映ではなくても、大画面かつ大音響を堪能する価値のあるアクション巨編である。頭を空っぽにして、とにかく2時間ハラハラドキドキを味わいたいなら、本作鑑賞は must だろう。ぜひ劇場鑑賞を。 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Heads will roll.

直訳すれば「首が転がるだろう」の意。転じて「リストラが行われるだろう」ということを意味するが、劇中では文字通りの意味で、首が転がる=死人が出るの意味で使われていた。実際のセリフでは Heads would roll. と仮定法だったが、 普通の学習者であれば「リストラが計画されている」という意味だけ押さえておけばよい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, アナ・デ・アルマス, アメリカ, クリス・エヴァンス, ライアン・ゴズリング, 監督:アンソニー・ルッソ, 監督:ジョー・ルッソ, 配給会社:NetflixLeave a Comment on 『 グレイマン 』 -頭を空っぽにして楽しむべし-

『 サイレントヒル リベレーション 』 -残念な続編-

Posted on 2022年8月16日 by cool-jupiter

サイレントヒル リベレーション 30点
2022年8月13日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:アデレイド・クレメンス キット・ハリングトン キャリー=アン・モス ショーン・ビーン
監督:マイケル・J・バセット

『 マインド・ゲーム 』がまだレンタル中。なので『 サイレントヒル 』の続編を借りてくる。ホラー色が薄まり、宗教色が最初から色濃く出ていたのは色々と残念だった。

 

あらすじ

ヘザー(アデレイド・クレメンス)は、ある事情から父親クリス(ショーン・ビーン)と共に各地を転々としながら生活していた。しかし、18歳の誕生日を目前にして、ヘザーの前に謎の人物が現れ、また父親も姿を消してしまう。家には「サイレントヒルに来い」という血文字が残されていた。ヘザーは同級生ヴィンセント(キット・ハリングトン)と共にサイレントヒルに向かうが・・・

 

ポジティブ・サイド

出るわ出るわのクリーチャーたち。ゲームと映画の『 サイレントヒル 』のugly系のクリーチャーは本作でも見事に表現されている。一押しは人体マネキンパーツで出来た蜘蛛のようなクリーチャー。まるでスティーブン・キング作品に出てきそうな雰囲気。また前作で描かれなかったセクシー看護師アーミーの残虐殺戮描写も本作ではたっぷり登場。グロ描写ファンを喜ばせてくれた。

 

父親クリストファーの尽きることのない娘、そして妻への愛は感動的ですらある。それがヴァルティエル派の信徒の狂信性と鮮やかなコントラストになっている。どちらも人間本来の姿なのが皮肉なところ。クリーチャー(非人間) vs 人間という単純な二項対立ではなく、人間そのものが一種の分裂的な気質を備えた生き物なのだろう。アレッサという虐げられた個人を通して、本作はそのことを強く訴えかけているようである。

 

ネガティブ・サイド

ゲーム、そして前作の大きな特徴でもあった静寂の中に突如混ざる雑音という演出がなくなった。割と速いテンポで次から次へとクリーチャーが出てくるのは良いが、そこにお約束的演出がなくなってしまったのはいただけない。サイレントヒルのサイレントという部分がごっそりそぎ落とされたのは残念至極である。

 

またサイレントヒルに迷い込むことはあっても、サイレントヒルからは逃れられないという前作の悲劇的な結末を、割とご都合主義的に破ってくるのもいかがなものか。前作でクリスタベラを失った教団が、前作以上の影響力を保持しているのも説明がつけがたい。指導者を失った教団に優秀な跡継ぎ(イエスに対するペテロなど)がいれば何とかなる。前作にはそのような描写はなかったし、今作でも一切フォローがなかった。

 

看護師アーミーは個人的にはツボだが、ウッフーン、アッハーンみたいな声は必要か?ゲームを実際にプレーしていないのだが、無言でサクサク相手を滅多刺しにしていく方が共感を呼び起こすと思うが。

 

最大の恐怖のひとつだった三角頭がアレッサの守護者というのは、何か拍子抜けに感じた。二大クリーチャー同士の一騎打ちはアクション映画としては面白いが、ホラー映画としては「なんだかなあ・・」である。

 

最大の問題は、前作が非常に巧みに展開した、怪異に浸食された街とそこで狂信者として生きる集団の恐ろしさの見せ方のバランスが壊れてしまっていることだろう。本作は最初から最後まで怖いのは人間というスタンスである。いや別にそれでもいいのだが、だったらサイレントヒルをタイトルに冠する必要はないわけで。そもそも続編自体が不要だったのかな。それともプロデューサーの監督や脚本家の人選がイマイチだったか。

 

総評

舞台はアメリカだがゲーム制作自体は日本。その日本的な静謐なテイストを良い意味でも悪い意味でもアメリカナイズして映像化したのが本作である。前作を楽しめたのなら、本作は鑑賞不要。まさか本作から鑑賞する奇特な向きはないだろうが、本作から鑑賞したなら、楽しめた楽しめなかったに依らず、前作『 サイレントヒル 』を鑑賞されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

sanctuary

「聖域」や「聖堂」の意。一定以上の年齢層であれば漫画『 聖闘士星矢 』でお馴染みだろう。animal sanctuary = 動物保護区、wildlife sanctuary = 野生動物保護区のような使われ方をすることも多い。英検準1級やTOEFL、IELTSで言って以上のスコアを目指すのなら知っておきたい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, E Rank, アデレイド・クレメンス, アメリカ, キット・ハリングトン, キャリー=アン・モス, ショーン・ビーン, ホラー, 監督:マイケル・J・バセット, 配給会社:プレシディオLeave a Comment on 『 サイレントヒル リベレーション 』 -残念な続編-

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