Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: ミステリ

『 教皇選挙 』 -2020年代を予見した作品-

Posted on 2025年3月25日2025年3月25日 by cool-jupiter

教皇選挙 80点
2025年3月23日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レイフ・ファインズ
監督:エドワード・ベルガー

 

元・宗教学専攻として興味を惹かれ、チケット購入。

あらすじ

教皇が亡くなり、新たな教皇を選出するため世界各地から枢機卿がバチカンに集った。教皇選挙=コンクラーベを取り仕切るローレンス(レイフ・ファインズ)は旧知のベリーニを推そうとする。そんな中、カブールからベニテスという枢機卿がやって来て・・・

 

ポジティブ・サイド

礼服を身にまとった聖職者たちが一堂に会し、選挙という名の一種の派閥構築と権力闘争に勤しむ姿は、それだけで非常に cinematic だった。英語、ラテン語、イタリア語などが飛び交うのも楽しめた。

 

有力者が票を伸ばしながらも得票多数には至らず、逆にスキャンダルの発覚により失脚していく。『 スポットライト 世紀のスクープ 』を思い出す人も多いだろう。聖職者は性職者などと揶揄されても仕方がないスキャンダルだった。また権謀術数も駆使され、米大統領選でもここまでほじくり返すかと思われるような過去の詮索もあり、選挙=戦争であるというベリーニの叫びは真実であると実感させられる。

 

主人公のローレンスはコンクラーベを恙なく執り行うために奔走するが、その様子をつぶさに見るにつけ、結局は人種や地域の壁を人間が超えることは難しいのだと思わされる。序盤で「英語を話す者は英語を話す者と、イタリア語を話す者はイタリア語を話す者とくっつく」と言われるが、結局はカトリックもバベルの塔の崩壊後の姿のままということか。

 

ローレンスは「確信こそが最大の敵であり、確信してしまえば mystery が存在せず、すなわち信仰も存在しなくなる」と語る(mysteryの字幕は何だったのだろう)。これは多くの現代人が肝に銘じておくべき言葉だと感じた。「公職選挙法に違反していないと認識している」とアホの一つ覚えのように繰り返す兵庫県知事などはこの最たる例で、確信=思い込みは罪になりうるのだ。

 

終盤に大事件が起き、外部から遮断されるべきコンクラーベも中断を余儀なくされる。そこで枢機卿たちによって交わされる議論が本作の核心。ローマ・カトリックの繁栄はレコンキスタや十字軍、さらには大航海(という名の間接的侵略と武器の売買)によってもたらされたものだという歴史的事実を完全に無視した妄言、そしてそれを静かに打ち砕く言説には震えた。

 

最後にローレンスはとある秘密を知ってしまう。その秘密を彼はどう受け止めたのか。奇妙な舞台装置がここに投入されるが、劇中でのとある会話とローレンスが最後に取った行動を合わせて考えれば、その真意は推察できる。

 

10年前のテイラー・スウィフトの東京ドームでのコンサートに行ったが、そこでテイラーは “You are not your mistakes.” だと語ってくれた。今やっとその意味が分かったような気がする。劇中でとある人物が言う “I am *******” と、本質的に同じ意味だったのだ。 

ネガティブ・サイド

アジア系の枢機卿もいたが、ほんの一瞬映ることが2回あったぐらい。もう少しアジアもフォーカスしてくれ。

 

先代教皇は結局、何者だったのか。どこまで見通して死んでいったのか。何かヒントになるような情報がまったく呈示されなかったので、モヤモヤした気持ちだけが残った。

総評

聖職者としての建前と人間としての本音が交錯し合う非常にスリリングな会話劇。トランプ米大統領の二度目の就任の際に、アメリカの司教が慈悲を求めた説教が話題になった。おそらく米国の聖職者たちの中でも政治的にデリケートな話題について我々の目に見えないところで相当に深く議論がされていたのだろうと想像される。そうした言葉のやりとりを楽しめる人は楽しめるだろうし、楽しめない人は楽しめないだろう。Jovianは波長がピタリと合った。今年のイチ押しの作品である。

 

Jovian先生のワンポイントイタリア語レッスン

Come stai

英語でいうところの How are you? にあたる表現。おそらくイタリア語会話の本の最初の3ページ以内に必ず出てくる表現。これから鑑賞するという人は、どこでこの台詞が出てくるか注目してみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Flow 』
『 ミッキー17 』
『 ケナは韓国が嫌いで 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  
Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, イギリス, サスペンス, ミステリ, レイフ・ファインズ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 教皇選挙 』 -2020年代を予見した作品-

『 正体 』 -トレーラーは避けるべし-

Posted on 2024年12月1日 by cool-jupiter

正体 60点
2024年11月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:横浜流星
監督:藤井道人

 

藤井道人監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

死刑囚の鏑木慶一(横浜流星)が脱走、警察の目をかいくぐり、仕事をしながら逃走を続けていた。逃亡先で出会う人々と交流を深めながらも正体がばれて逃げ続ける鏑木。彼にはある目的があり・・・

 

ポジティブ・サイド

そもそも逮捕・勾留されている犯罪者がそんなに簡単に逃げられるのかと思うが、Jovianは大阪の富田林署から脱出し、数十日の逃走後に山口県で捕まった男性を思い出した。なので鏑木の逃走劇およびその後の潜伏にもリアリティを感じることができた。

 

最初の潜伏先がなにわ万博の建設現場だというのも生々しい。『 BAD LANDS バッド・ランズ 』や『 さがす 』で描かれた西成区のような場所は、素性も経歴もどうでもいい日雇い労働者の供給先だからだ。我が町尼崎の南の方も昔はそうだった。

 

まるで韓国映画であるかのように警察が無能だが、その根源は松重豊演じる警視総監?または捜査一課長。推測することしかできないが、『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』の袴田さんもそんないい加減な采配で犯人扱いされたのではなかっただろうか。

 

追う刑事の山田孝之の芝居も抑制的でよかった。台詞ではなく表情や行動で内なる想いを表出させていたのが印象的。特に記者会見で、すぐ横にいる上司への不信感と国民に対する謝罪および協力の呼びかけをするためのプロフェッショナルの顔を両立させていたのは見ごたえあるシーンだった。

 

SNSから身バレし、しかしSNSを活用することで注目を集め世論を喚起する。まるで最近のどこぞの県知事選のようだが、終盤の立てこもりにもリアリティが認められた。

 

鏑木と交流するキャラの中では吉岡里穂演じる記者の父親役が印象に残った。以前の勤め先で京都弁護士会所属の大御所二人が痴漢に間違われた際の対応について、一人は「身元を明らかにして立ち去る」、もう一人は「その場にとどまって弁護士を呼ぶ」だった。なので弁護士が対応を誤ることもありえるし、実際にこうした描写を入れることで鏑木についた弁護士が無能だった、あるいは対応を誤ったと間接的に示す効果もあった。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて、逮捕から死刑の確定までが早すぎる。弁護士が超絶無能だったとしか考えられない。衣類に残る血痕の量や、実際の血液型鑑定などをすれば鏑木が犯人ではない可能性は相当に高いはず。警察および検察はどう証拠を捏造したというのか。警察は鏑木の育った施設をマークするよりも、担当弁護士の事務所および自宅をマークすべきと考えるべきではなかったか。

 

吉岡里帆と同居するようになってからの流れがやや雑だと感じられた。アラサーのバリキャリ女子が二十歳少々の若造を居候させていく中で、偶発的に、または意図的に背中のやけどの跡を見るとか、もう少し那須(で漢字は合っている?)の「正体」に関わるヒントを提示すべきだった。

 

鏑木が逃亡中に一重まぶたにするシーンがあったが、次の瞬間にはもう二重に戻っていた。いくらなんでも編集が乱暴すぎると感じた。

 

とある介護施設が重要拠点になるのだが、これも割とすぐにメディアあるいはフリーランサーが突き止めそうなものだが。実際に調査力に秀でた嫌な個人記者も出てきているのだから。

 

兎にも角にもトレーラーがほとんど全部ネタバレだった。物語上の重要なシーンや台詞の多くがすでにトレーラーにあり、重要なシーンの流れや台詞がすべて分かってしまい、正直なところかなり白けてしまうことが多かった。予告は宣伝会社・担当が作るのかな。『 六人の嘘つきな大学生 』のトレーラーも決して良くない出来栄えの上にネタバレが潜んでいた。トレーラーも藤井道人監督自身が手掛けてはどうか。

 

総評

予告編を一切観ることなく鑑賞すれば印象は全く違ったはず。決して直接的ではないが、それゆえに力強いメッセージを発するという藤井監督の演出は随所で光っている。それゆえにストーリー展開の意外性が損なわれたことが余計に残念に感じられる。トレーラーは正式には teaser trailer と言う。tease とは「焦らす」の意味。情報は小出しにしてナンボ。これから鑑賞する人は可能な限り事前情報をカットして鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be on the run

逃走中である、の意。警察や敵兵から逃げている状態を指す。ちなみに潜伏中であるという場合はbe in hidingがよく使われる。英語の映画ではニュースのアナウンサーがよく使っている表現である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, ミステリ, 日本, 横浜流星, 監督:藤井道人, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 正体 』 -トレーラーは避けるべし-

『 六人の嘘つきな大学生 』 -ミステリ部分があまりにも弱い-

Posted on 2024年11月25日2024年12月30日 by cool-jupiter

六人の嘘つきな大学生 30点
2024年11月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浜辺美波
監督:佐藤祐市

 

浜辺美波が主演ということでチケット購入。

あらすじ

人気企業スピラリンクスの新卒採用で最終選考に残った嶌衣織(浜辺美波)ら6人の大学生は最終課題であるグループディスカッションに向けて団結して協力していた。しかし課題は急遽変更となり、採用枠は1名に限定された。さらに、最終課題の当日、部屋では謎の封筒が見つかり・・・

ポジティブ・サイド

密室で次々に明かされる就活生のダークサイド。そして、崩れていく友情。その展開はサスペンスフルだった。

 

就活が一種の戦争であることはバブル崩壊以降、もはや常識。本作は『 何者 』同様に人間の裏側を描きながら、佐藤祐市監督の過去作『 キサラギ 』的な密室でのディスカッションの面白さもあった。

ネガティブ・サイド

まずスピラリンクスという会社が意味不明。新人でも年俸一千万円が可能って、どんな企業やねん。コンテンツクリエーション系の企業なら10,000千円/年は十分可能だが、一年目からは不可能やで。

 

10,000人から6人採用とすると、倍率1667倍となる。んなアホな。1,000人から6人なら166倍で、これなら超人気企業としてリアルな数字となる。

 

関東の錚々たる大学が実名で出てくるが、学生の描き方がステレオタイプすぎると感じた。これが『 あのこは貴族 』や『 愚行録 』のように、特定の大学だけにフォーカスするならまだしも、これだけたくさんの大学を色眼鏡を通じて描き出していいのか。特に早稲田と慶應はあまりに典型的過ぎて笑ってしまった(良い意味ではない)。

 

スピラリンクスも、採用の最終段階がトンデモな方向に行っているのに何の介入も行わないとはどういう料簡なのだ?警察や金融機関への就職ちゃうねんぞ・・・

 

一番の不満点としてミステリ部分の弱さが挙げられる。原作小説は未読だが、映画と同じトリック(?)なのか。JR中央線の武蔵境または東小金井を大学生時代に最寄り駅としていたJovianは劇中のとある矛盾に一発で気付いた。立教や明治の学生が気付かないわけがないだろう。

 

また複数の大学で実際に教えていた者として言わせてもらえば、学校から学校への移動というのは、校門から校門への移動を指すのではない。教室から教室への移動を指すのだ。劇中での学生たちが言う移動時間は、実質的には20分ぐらい足りない。

 

それにしてもこの犯人、行動力がありすぎて笑ってしまう。そこまで調べるとなると、全員とは言わないまでも一人、二人ぐらいの耳にはその活動が届くに違いない。特にとある重要書類には苦笑いするしかなかった。これを見せてもらえるぐらいに信頼を得るには、あまりにも時間が足りないはず。催眠術でも使ったのか。

 

終盤、パスワードロックされた媒体が出てくるが、これに対するヒントがアンフェアではなかったか。「犯人が好きなもの」ではなく「犯人が愛したもの」はmisleadingすぎる。そこで自分の好物を入力する衣織にも喝!それがお前の愛なんか・・・

総評

コロナ後(と言っていいかどうかは分からんが)の就活模様ということで、洋画『 エグザム 』が元ネタなのかも?原作小説の評価は高いので、映画化に際して色々と削ってしまったのだろう。浜辺美波ファン以外にお勧めするのは難しい。大学生がこれを観てリアルな就職活動だと思わないことを切に願う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

job-hunt

就職活動する、の意。I will start job-hunting as soon as I come back from France to Japan. =「フランスから日本に帰国次第、就活を始めるつもりだ」のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 正体 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 浜辺美波, 監督:佐藤祐市, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 六人の嘘つきな大学生 』 -ミステリ部分があまりにも弱い-

『 あの人が消えた 』 -パクリなのか、オマージュなのか-

Posted on 2024年9月29日 by cool-jupiter

あの人が消えた 50点
2024年9月28日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:高橋文哉
監督:水野格

 

妻が「面白そう」というのでチケット購入。

あらすじ

配達員の丸子(高橋文哉)は、担当地域のとあるマンションへの出入りを繰り返す中で、ある住人が自分の大好きなネット小説の作者であると知る。しかし、そのマンションには奇妙な住人が住んでいて・・・

ポジティブ・サイド

物語の早い段階から『 ピンクとグレー 』みたいなストーリーか?と少し身構えていたが、全然違った。予想が外れて満足な時もあれば、不満なこともある。本作はその意味では満足できた。

 

トリックに関しては伏線の張り方がフェア。というか、少々あからさますぎると感じたが、鑑賞直後の劇場内での観客の反応を見聞きするに、これぐらいがちょうどいい塩梅なのか。これから鑑賞する向きに一つだけ(本当は10個ぐらい出したいが)ヒントを与えるとするなら、Tシャツとなるだろうか。おっと、ヒントが二つになってしまった。

 

『 クリーピー 偽りの隣人 』でも感じたが、本作の舞台となるマンションをスタッフはよく見つけてきたなと思う。あの構造は気持ち悪い。

 

コロナ禍を「過去」にしてしまっているが、トラック運転手に代表される配達員への感謝の気持ちを忘れてはいけないというメッセージは個人的に高く評価したい。

 

ネガティブ・サイド

某作品と某作品の重大なトリックを全くと言っていいほど換骨奪胎せずに取り込んでしまうのはいかがなものか。『 レディ・プレイヤー1 』が『 シャイニング 』のネタバレをかましたのとは訳が違う。それとも本作を劇場に観に来るような層は某作や某作を観ない、製作側は決めつけているのだろうか(TOHOシネマズの観客はポップコーンを床に散乱させる率が高いのは確かだが)。

 

トリックに重きを置くのは分かるが、住人から聞く話と丸子が実際に見聞きする話が都合よく一致するのは何故なのか。特にごみの分別ネタ。住人の方はともかく、トラック運転手がそこまで観察できるものなのか。また痴話喧嘩に対する苦情の話も大いなる矛盾。作っていて、あるいは脚本段階でおかしいと思わなかったのだろうか。

 

あの交番勤務の巡査長、普通にけん責食らうか、降格やで。

 

梅沢富美男のネタは不要。誰得やねん。

 

総評

劇場鑑賞中に隣の妻に「これ、アレやな?」とささやいて、妻も頷くこと2回。ドンデン返しにすべてを懸ける姿勢は評価したいが、それをやるなら先行作品に最低限の敬意を表すべきだ。最低限の敬意とは、少なくとも少しは自分流のアレンジを加えること。それをしないのはパクリと言われてもしょうがない。『 オリエント急行殺人事件 』のような完全リメイク、または舞台を現代日本にしたリメイクの製作を模索すべきだったように思う。観客の評価は高いようだが、シネフィルの大半は「うーむ・・・」と悪い意味で唸る作品か。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

reincarnation

転生の意。rebirth とも言う。ただ、reincarnation は「再び肉体を得る」という意味で、ここには魂もしくは意識は維持されているというニュアンスがある。異世界転生を訳す際はこれがふさわしい。一方、『ジュラシック・ワールド リバース』は rebirth で、これは再び赤ん坊が生まれるの意。つまり、今回産み出されるジュラシック・ワールドは『 ジュラシック・パーク 』あるいは『 ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 』(この副題は壮大な誤訳・・・)のキャストが出てくるわけではありませんよ。ということ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 シュリ 』
『 シビル・ウォー アメリカ最期の日 』
『 熱烈 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 監督:水野格, 配給会社:TOHO NEXT, 高橋文哉Leave a Comment on 『 あの人が消えた 』 -パクリなのか、オマージュなのか-

『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』 -学園系ジャーナリスト物語-

Posted on 2024年8月17日 by cool-jupiter

新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 55点
2024年8月16日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:藤吉夏鈴 髙石あかり 
監督:小林啓一

 

『 殺さない彼と死なない彼女 』の小林啓一監督の作品ということで食指が動き、チケット購入。

あらすじ

文学少女の所結衣(藤吉夏鈴)は、あこがれの作家・緑町このはが在籍する櫻葉学園高校に入学する。しかし緑町このはは覆面作家で、かつ入部試験中のアクシデントで結衣は文芸部に入部できなくなった。しかし、このはの情報を持つという新聞部への入部と捜査を文系部部長は提案してきて・・・

ポジティブ・サイド

誰でも文章を書けて、手軽に写真や動画を撮影し、それらをネットで発表できる時代に、記事は足で拾うというタイプの古き良きジャーナリスト精神を感じさせる新聞部。ホームページやメルマガ形式ではなくザラ紙にこだわる点も買い。

 

結衣あらためトロッ子のこのは探しと新聞部の活動がパラレルに進んでいく中、新聞部は順調に教師のスキャンダルをスクープし、やがて学園の最深部の闇に近づいていくという構成もテンポが良い。

 

学生間の対立もありながら、巨悪を大人にすることで青春映画としても成立している。一方で、子どもに味方をしてくれる大人も設定されており、そのバランス感覚も良い。

 

子どもが大人を権力の座から追い落とすのに必要なのは「正義」ではなく「真実」という信念が貫かれている。正義は往々にして独りよがりになりがちだが、真実は見る方向さえ誤らなければ万人に届くものだ。軽い気持ちで鑑賞したが、硬骨なジャーナリズムを感じ取ることができた。

 

ネガティブ・サイド

主演の藤吉夏鈴のしゃべりがかなりボソボソかつ平板。演技力の無さなのか、それともそういう演出なのか。共演の髙石あかりとの差が目立った。

 

とある小道具があまりにこれ見よがしだったので、すぐに先が読めてしまった。また、肝心の緑町このはの正体もすぐに分かってしまった。

 

学園の文系部に関する諸問題のひとつに特進科と普通科の格差があるというが、そうしたところをもっと描写すべきだった。たとえば茶道部の主体は普通科なのに文芸部の一声で茶室を明け渡さざるを得ない、のような場面がほしかった。

 

総評

『 新聞記者 』をもっとライトに、かつ巨悪を打倒して大団円で締めくくる学園系・・・と言うと語弊があるが、ストーリーとしてはそんな感じである。Jovianはつい最近まで大学の語学系クラスの教務スタッフだったので、大学と出版社の固い結びつきというものは肌で感じてきた。本作のような不正の構図は決して荒唐無稽ではないと感じた。政治とカネの問題がまたもや有耶無耶にされようとしているが、教育とカネは有耶無耶にしてほしくない。その意味で本作には大いにカタルシスを感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

cross the line

特定の線を横切る=一線を越えるの意。なにかをやりすぎてしまった時、言動などが許容範囲を超えてしまった時に使われる表現。Take a step back before you cross the line. のように使う。割とよく出てくる表現なので知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 ニューノーマル 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 監督:小林啓一, 藤吉夏鈴, 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS, 配給会社:東映ビデオ, 青春, 髙石あかりLeave a Comment on 『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』 -学園系ジャーナリスト物語-

『 真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク 』 -イージーリーディングのSFミステリ-

Posted on 2024年8月15日 by cool-jupiter

真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク 60点
2024年8月14日 読了
著者:喜多喜久
発行元:集英社文庫

 

滋賀のメタセコイア並木道までの日帰り旅行の電車内で読了。

あらすじ

超常現象研究会のフィールドワークのために故郷の冥加村に帰ってきた星原は、ある夜、UFOを目撃してしまう。UFOを追った先の山で不思議な「棺」を見つけた星原は、その中に謎の美少女を見つけて・・・

 

ポジティブ・サイド

前の勤め先には製薬会社の社員が多く、その受講生の方々がお勧めしてくれたのが著者の『 ラブ・ケミストリー 』で、以来、同著者の作品は結構読んできた。今作は部屋の掃除をしていたら積ん読になっていた文庫が出てきた。買ったはいいが、表紙で読むのをためらっていたのだと思う。

 

ジェームズ・ホーガンの『 星を継ぐもの 』よろしく、最初のエピローグでSF、それも宇宙人者であることを高らかに宣言している。まあ、ラブケミで死神を出してしまうような著者なので、宇宙人くらいで目くじらを立ててはいけない。

 

超常現象研究会がネットの謎の書き込みを基にキャトルミューティレーションを調査しに赴いた片田舎で殺人事件が発生、そしてそこには新興宗教の創設をもくろむ怪しい男が・・・と、かなりとっちらかった内容。それを300ページ程度できれいにまとめる筆力、構想力は大したもの。化学の実験や概念の一部は時間と共に風化していく恐れがあるが、その心配の少ないオカルト分野に目を付けたのも慧眼か。

 

夏、美少女、オカルト、SF、ミステリを一冊で気軽に楽しめる。高校生、大学生あたりに好適なストーリー。

 

ネガティブ・サイド

正直なところ、ミステリ部分はダメダメ。真相にはたどりつけなくても、犯人はすぐに分かってしまう。大きなヒントは序盤、中盤、終盤に一つずつ。どの段階で気付けるかでミステリ読書歴を測れるかもしれない。

 

また主人公の星原やサークル会長の天川のキャラクター造形はステレオタイプそのもの。綾辻行人や法月綸太郎の先行作品を読めば、似たようなキャラはわんさか出てくる。やはりこの著者は大学で化学に黙々と勤しむキャラクターにリアリティを与える方向で行くべきだと思われる。

 

物語と直接の関係はないが、本作のカバー絵は一種のミステリになっている。何故この構図であって「あの場所のあの表情」ではないのか。うーむ・・・

 

総評

3時間弱でスイスイ読めた。特別な知識は不要。求められるのは主人公の星原のモタモタした思考にシンクロできるかどうか。あるいはそのモタモタした思考を青春だと捉えてニヤニヤできるかどうか。そういう意味では青少年だけではなく案外中年読者にも向いているのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

casket

棺の意。今や主流の直方体の棺を指す。coffinという語もあるが、これは上半身側が大きく、下半身側が小さくなっているもの。WWEのファンなら棺桶マッチ= Casket Match だと知っているだろう。またゲームの『 エースコンバット 』ファンなら、coffin=飛行機のように四面四角でない物体だと分かるはず。まあ、これは一種のマニアの覚え方なので参考にしてはいけない。そもそも casket も coffin も英検1級以上を目指すのでなければ知っておく必要性はゼロだ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』
『 風が吹くとき 』
『 #スージー・サーチ 』

真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク (集英社文庫)

真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク (集英社文庫)

  • 作者:喜多 喜久
  • 集英社
Amazon

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

 

Posted in 国内, 書籍Tagged 2010年代, C Rank, SF, オカルト, ミステリ, 日本, 発行元:集英社文庫, 著者:喜多喜久Leave a Comment on 『 真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク 』 -イージーリーディングのSFミステリ-

『 悪鬼のウイルス 』 -細かい点には目をつぶるべし-

Posted on 2024年6月6日 by cool-jupiter

悪鬼のウイルス 50点
2024年5月19日読了
著者:二宮敦人
発行元:TOブックス

 

特急「こうのとり」の車内で読了。



あらすじ

智樹断ち高校生は夏休みに陸の孤島の石尾村を訪れた。そこは、子どもたちが武装し、大人たちを地下に監禁する恐怖の村だった・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤から目をそむけたくなるようなシーンのオンパレード。殺人シーンだけではなく、汚物まみれの部屋での残飯食いや死体処理など、一歩間違ったら・・・ではなくて、もう一段描写力を上げれば和製クライヴ・バーカーになれるのでは?このシーンで読むのをやめない物好きな読者なら、最終盤までの一気読みはほぼ確定だろう。

 

また中盤以降はキャラクターのセリフと心情描写を多めにして、readabilityをアップさせている。特に主人公側の某キャラが発狂していく過程はぐいぐい読ませる。

 

さらに強固なシステムに支えられた村が一挙に崩壊していく様も迫力満点。こういったところに着目すれば、低予算でもそれなりにスペクタクルな映画を作れるのでは?と考えてしまうのも無理からぬことかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

智樹が高校生離れした数々の知識とスキルの持ち主であることに白けてしまう。お前は小林少年なのか?

 

あらすじにある「村の壮絶な過去を知るとき、日本中が鬼の恐怖に侵される!」などという展開は存在しない。それともこれはまだ公開前の映画版のあらすじなのか?いずれにしろ、編集者はまともな仕事をすべし。

 

また「たった一度、嘘をついただけで人生のすべてが崩れ落ちる恐怖」という帯の惹句も壮大なネタバレ。編集者、ちゃんと仕事しろ。

 

後は「腐り鬼」の真相かな。〇〇を一人にするのではなく、△世代にわたって□□していた、のような設定なら、もう少し真実味を増せただろうに。

 

総評

実写映画化よりも、むしろ深夜アニメ化すべきでは?超絶グロ描写をどう撮ったのか?秀作ホラー小説『 水霊 ミズチ 』を凡作ホラー映画『 水霊 』に変えてしまったように、坂東眞砂子の土着ホラー『 狗神 』の同名映画化作品のように、内容も表現もマイルドにしてしまったのだろうか。おそらくだが「読んだら観るな、観てから読むな」になるような気がする。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

endemic

パンデミックが世界的流行というのは今や常識。こちらのエンデミックは風土病の意味。これらの語に含まれる dem はデモクラシーの dem、つまり demos = 人々の意。democrasy = 民主主義にも、dem がしっかり見て取れる。

 

悪鬼のウイルス (TO文庫)

悪鬼のウイルス (TO文庫)

  • 作者:二宮敦人
  • TOブックス
Amazon

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

 

Posted in 国内, 書籍Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, ミステリ, 日本, 発行元:TOブックス, 著者:二宮敦人Leave a Comment on 『 悪鬼のウイルス 』 -細かい点には目をつぶるべし-

『 6月31日の同窓会 』 -嫌ミス入門に適す-

Posted on 2024年6月2日 by cool-jupiter

6月31日の同窓会 65点
2024年5月18日読了
著者:真梨幸子
発行元:実業之日本社

 

佐津の温泉に向かう特急「こうのとり」の車内で読了。

あらすじ

蘭聖学園の卒業生に送られてくる6月31日の同窓会への招待状。それを受け取った者が怪死するという事件が発生。学園のOGであり、弁護士の松川凛子は、同じく学園卒業生から依頼されたことで調査を開始するが・・・

 

ポジティブ・サイド

情景描写もあるが、それ以上に各キャラの心の声だらけのため、圧倒的に読みやすい。またそれがねっとりしていて読ませる。はじめて読む作家だが、疑心暗鬼を描かせたら、なかなかの手練れだろう。

 

我々はよく因習村などという言葉を使ったりするが、因習に支配されるのは村でも町でも同じ。むしろ中途半端な中堅都市の中堅学校ほど、そうした因習に支配されているものだろう。たとえば『 ここは退屈迎えに来て 』の舞台の高校を格調高い歴史ある女子高にすれば、そこには悪趣味な世界が構築されていると想像するのは難しくない。

 

怪しいと思った人物が次から次へと現われては消えていくので、先の展開が気になってページを繰る手が速くなった(2時間で読み切ろうと決めていたのもあるが)。特に学園パートは赤川次郎の『 死者の学園祭 』や恩田陸の『 六番目の小夜子 』的なドロドロの面白さがあった。

 

ネガティブ・サイド

途中から犯人というか、真犯人が分かってしまう。作者が引っかけたいのは主人公ではなく読者だという視点で読めるベテラン読者なら、中盤過ぎには色々と見透かせてしまうのでは?

 

とある毒物というか化学物質を執拗に描写しているが、これはミスリーディングを誘いたいにしてもやりすぎ。描写が科学的に正確または不正確だというのではなく、その描写の量から「ああ、ここまで書き込むということはこれは〇〇なんだな」と思わざるを得ない。

 

それにしても蘭聖学園のOGが社会の要所要所に存在しすぎではないか。まるで早稲田や日大のように感じてしまった。

 

総評

ミステリとしてはやや物足りないが、嫌ミスとしては標準的。本作を面白いと感じられたら、次は一気にステップアップして湊かなえの『 告白 』を読もう。少し古いが、嫌ミスの元祖とも言うべき作品で、構成も本作とそっくり、なおかつ面白さは数段上だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

class reunion

最も一般的な「同窓会」の訳語。

plan a class reunion = 同窓会を計画する
attend the class reunion = 同窓会に出席する

のように使う。

6月31日の同窓会 (実業之日本社文庫)

6月31日の同窓会 (実業之日本社文庫)

  • 作者:真梨 幸子
  • 実業之日本社
Amazon

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

 

Posted in 国内, 書籍Tagged 2010年代, C Rank, ミステリ, 日本, 発行元:実業之日本社, 著者:真梨幸子Leave a Comment on 『 6月31日の同窓会 』 -嫌ミス入門に適す-

『 変な家 』 -変なストーリー-

Posted on 2024年4月25日 by cool-jupiter

変な家 20点
2024年4月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈
監督:石川淳一

 

ポイント消費のために鑑賞決定。変な映画だった。

あらすじ

動画配信業の雨宮(間宮祥太朗)はマネージャーから購入予定の一軒家について相談される。間取りに奇妙な点があると感じた雨宮は、ミステリー愛好家の設計士・栗原(佐藤二朗)を尋ねる。雨宮と栗原は様々な仮説を立てていくが・・・

以下、ややネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

YouTuberが話題性を求めて不法侵入やら何やらをするのは、まあ分からんでもない。その話題性を家の不可思議な間取りに求めるのもそれなりに説得力がある。赤穂城や姫路城、彦根城や二条城などを訪れれば、たいていはボランティアのおっちゃんが城郭の防御の仕組みや城内の間取りの糸などを詳しく教えてくれる。城にはパッと見では意味の分からないあれやこれやに意味があるものだ。そうした個人的な経験を下敷きに鑑賞したので、最初の20分程度まではそれなりに楽しめた。

ネガティブ・サイド

原作となった動画や小説は未見だが、この映画と同じくらい ( ゚Д゚)ハァ? という展開の連続なのだろうか。

 

だいたい何故にそんな変な設計図が通るのか。そして、それを業者が素直に作るのか。いや、それもすべて本家の息のかかった設計士や施工業者だったのだと言ってしまえばそれまでだろうが、だったら何故にそんな設計図を残すのか。そして家ごと売りに出してしまうのか。秘密裏に作って秘密裏に壊せばいいだけの話だろう。

 

また佐藤二朗演じる栗原の仮説も道理がまったく通らない。謎の家の間取りを利用して殺人代行をしていたというが、何故に子どもにそんな真似をさせるのか。殺したい相手も大人だったのなら大人がやればいい。それに風呂場で凶行に及ぶというのも合点がいかない。相手が背を向けている状態で風呂の床を抜いて上がり込むというのか。そんな馬鹿な。いや、それ以前に殺人を代行するための家だというのなら、そこに殺したい人間を招く必要がある。ということは住人はターゲットの知り合いか、それ以上の関係性を持っていなければならない。つまり、ターゲットが死んだ時、あるいは行方不明になった時、高確率で警察の捜査の対象になる。そんなアホな殺人代行業が存在していいのか。

 

実はこのあたりから少しうつらうつらしてしまった・・・

 

まあ、他にも都合の良い幻覚剤だったり、他人の家を勝手に盗撮して、しかもそれをどこの馬の骨とも知れない人間にほいほい見せてしまう都合の良い隣人だったりと、デウスエクスマキナを乱用してくれる。そして行き着く先が『 犬鳴村 』的な因習村。どこまでワンパターンなのか。明治時代の呪いを昭和だか平成だかの霊媒師の助言で解こうというところが腑に落ちない。というか、まずはその妾さんを丁重に弔いなさいよ。そのうえで当主自らお供え物や供養の祈りを捧げなさいよ。そのうえで神主あるいは坊主に相談しなさい。それもせず霊媒師にアドバイスを求めるようなメンタリティで、どうやって富を蓄積できるというのか。リアリティがさっぱり感じられないし、呪いに対するアプローチがそもそも的外れだ(その意味で『 リング 』はよくできていたと感じる)。

 

公開から1か月以上経つが、劇場の入りは凄まじかった(その分、ずっと喋り続ける女子中学生ぐらいの集団、スマホをいじり続ける若い女性、いびきをかいて寝る男性など、客層も終わっていたが)。まあ、客層と映画の出来に相関があろうはずもないが、邦画の現状および未来に対して一抹の不安を抱かせる劇場体験だった。

 

総評

端的に言ってクソ映画。原作を散々レ〇プして生まれた作品だろうと感じる。ミステリならミステリ、ホラーならホラーとその特徴を打ち出すべきだが、初っ端からホラー風味→ミステリ風味→ホラー風味→ミステリ風味と行き来するものだからイマイチ物語世界に入っていけなかった。案の定というか、大学の教え子たちと少し雑談する中で「あれ、意味分からないですよね?」と言われ、然りとしか答えられなかった。中高生をビビらせるだけのチンプンカンプン物語がヒットするという邦画の現状は喜ぶべきではなく憂うべきである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. I need to forget about this awful film ASAP.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ホラー, ミステリ, 佐藤二朗, 川栄李奈, 日本, 監督:石川淳一, 配給会社:東宝, 間宮祥太朗Leave a Comment on 『 変な家 』 -変なストーリー-

『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』 -ホラー風味たっぷりのミステリ-

Posted on 2023年9月24日 by cool-jupiter

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 65点
2023年9月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ケネス・ブラナー
監督:ケネス・ブラナー

 

簡易レビュー。

あらすじ

ベネチアで楽隠居をしていた名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)の元に旧知の小説家が訪ねてきた。彼女の誘いで交霊会に臨むことになったポアロは、子どもの霊に憑りつかれているという妖しい館へと赴く。見事に霊媒師のトリックを暴いたポアロだが、その霊媒師が何者かに殺害されてしまい・・・

ポジティブ・サイド

情緒あふれる古都ベネチアがいい。『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』や『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』のようにアクションの舞台になるよりも、ミステリの舞台となる方が断然映える。

 

原作をかなりいじくっているが、これは脚本家が良い仕事をした。どれだけオカルト色を強めても、原作はアガサ・クリスティー。つまり絶対にミステリ。なので、観ている側も「この作品のジャンルはホラーなのか、ミステリなのか」と迷うことがない。どんなにスーパーナチュラルな事象に見えても、絶対に合理的な説明がつくはずだ、という確信をもって鑑賞できる。これがカトリーヌ・アルレー原作だとこうはいかない。オカルトの可能性が少しあるからだ。

 

人間模様もかなりドロドロで、怖いのはやはり人間なのだと思わされる。恐怖が最高潮に達した瞬間に、快刀乱麻を断つがごとく炸裂するポアロの名推理。ケネス・ブラナー版ポアロの中では本作は一番面白い。

 

ネガティブ・サイド

霊媒師のトリックを暴く序盤は良かったが、声が変わる謎は放置。ここもスッキリさせてほしかった。

 

とある密室のトリックが少々お粗末。時代が時代だけにしゃーないのだが「物的な証拠は?」と開き直られたら終わり。推理は状況証拠だけではなくちゃんとした物証を基に行ってほしかった。

 

総評

アガサ・クリスティーものとしては『 ねじれた家 』に通じるテイストとミステリ、そしてホラー要素が上手く混ざり合っている。4作目がどうなるかは分からないが、次作も楽しみ。そして5作目に『 アクロイド殺し 』を実現してほしい。高校生だったJovian少年は『 アクロイド殺し 』に衝撃を受けて、そこから江戸川乱歩以外のミステリ作品も読むようになったのだ。ケネス・ブラナー版のポアロの今後に期待。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fall victome to ~ 

~の犠牲・被害者になる、の意味。Many passengers fell victim to the water accident due to the captain’s lack of experience. =船長の経験不足のせいで多くの乗客が水難事故の犠牲になった、のように使う。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ケネス・ブラナー, ミステリ, 監督:ケネス・ブラナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』 -ホラー風味たっぷりのミステリ-

投稿ナビゲーション

過去の投稿

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme