Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: マ・ドンソク

『 スタートアップ! 』 - 韓流・腕力コメディ-

Posted on 2020年10月25日2022年9月16日 by cool-jupiter

スタートアップ! 55点
2020年10月24日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:マ・ドンソク パク・ジョンミン チョン・へイン ヨム・ジョンア
監督:チェ・ジョンヨル

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201025203819j:plain
 

序盤はコメディ色が強めだが、終盤はやはり腕力で全てを解決売る展開に。ある意味予想通りの作りである。シネマート心斎橋は9割以上の入り。『 鬼滅の刃 無限列車編 』も熱いが、韓国映画、そしてマ・ドンソクも固定客をガッチリと掴んでいる印象。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201025204019j:plain
 

あらすじ

テギル(パク・ジョンミン)とサンピル(チョン・へイン)の悪童連は、大学にも予備校にも行かず自堕落な日々を過ごしていた。サンピルはカネを稼ぐために就職するが、そこはヤクザの高利貸しだった。一方のテギルも地元を飛び出し、偶然に立ち寄った中華料理屋で異彩を放つ料理人、コソク(マ・ドンソク)に出会うが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201025204046j:plain
 

ポジティブ・サイド

しょっぱなから主人公のテギルが殴られまくる。まずはヨム・ジョンア演じる母親からビンタを食らいKOされる。そして、謎の赤髪サングラス女子にもボディーブローでKOされる。極め付きは住み込みバイトをすることになった中華料理屋でもマ・ドンソク演じるコソク兄貴にもKOされる。いったいどこまで殴られるんだ?さらにこいつはどれだけ打たれ強いんだ?と、笑ってしまうほどに思わされる。しかし、住み込み初日明けの朝、逃げ出そうとするテギルにコソク兄貴が、拳ではなく言葉で語ってくる。それによって、殴られるよりも効いてしまうテギル。負け惜しみで「逃げるんじゃねえ。ウンコに行くだけだ」と言うのだが、このセリフが終盤のちょっとした伏線になっているのはお見事。

 

このテギルとコソク兄貴の関係を軸に、多種多様な人間関係が描かれていくが、実は彼ら彼女らは皆、社会のメインストリームから外れた者たちである。つまり、本作は「連帯」を描いているわけだ。社会の一隅には、こんな人たちがいる。しかも健気に生きている。そこにヤクザ者や半グレ集団が絡んできて、そしてそのヤクザ者の中に旧知の間柄の人物が・・・という、ある意味では陳腐な物語ではある。だが、非常に示唆的だなと感じたのは、弱い立場の人間を虐げる者の中にも、実は弱い人間がいるということ。誰も初めから弱者を虐げ搾取しようなどとは思わない。ヤクザの高利貸しがドスを効かせて言う「どんな仕事も長く続ければ、それが天職になるんだ」というセリフには、そうしたヤクザ者たちも最初はその仕事を嫌がっていたということが仄めかされている。

 

なんだかんだで最後はマブリーが腕力と胆力で解決するわけだが、テギルとサンピルの悪ガキコンビの成長も併せてしっかり描かれている。また、それを見守る中華料理屋のオーナーの渋みと深みよ。この人、『 エクストリーム・ジョブ 』のチキン店オーナーだったり、『 暗数殺人 』のマス隊長だったりと、見守る役を演じさせると天下一品だなと感じる。日本で言えば『 風の電話 』の三浦友和の雰囲気に通じる。陳腐な人間ドラマではあるが、感じ入るものがある。マ・ドンソクのファンなら観ておきたい。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201025204125j:plain
 

ネガティブ・サイド

テギルとサンピルのキャスティングは、逆の方が良かったのでは?これはJovianの嫁さんも同感だったようである。イケメンが反抗期で、ケンカの腕もたいしたことないのに、ところかまわず生意気盛りにケンカを売って殴られまくる方がより笑えるように思う。絵的にも、生傷が絶えない金髪テギルの方が借金取りに似合っている。というか、この男、DNA的に菅田将暉と遠い共通のご先祖様を持っている・・・???

 

テギルの母が元バレーボール選手という設定もあまり活きていない。ビンタよりも脳天唐竹割りの方がバレーのスパイクと似ているし、絵的にも笑えるのではないかと思うが、いかがだろうか。

 

個人的にはマ・ドンソクのおかっぱ頭にはそれほど笑えなかった(TWICE好きでノリノリで踊るには笑ったが)。いかつい風体の男が、目を開けて寝たり、中華鍋を華麗に振るったりするだけで十分にギャップがある、つまり面白い。おかっぱ頭はビジュアル的にはインパクトがあるが、それなしで勝負することも十分にできたと思うのだが。結局、最後はいつものマ・ドンソクに戻るわけだし。

 

社会的弱者の連帯を謳った本作であるが、未解決の問題も数多く残されたままストーリーは完結する。もっと荒っぽくてもよいので、無理やりにでも大団円にできなかったか。一部の問題は、まるで最初から存在しなかったかのようですらある。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201025204156j:plain
 

総評

序盤のギャグには面白いものとつまらないものが混在している。『 エクストリーム・ジョブ 』は劇場内のあちこちから「ワハハ」という声が聞こえてきたが、本作はそこまでではない。ちょこちょこ「クスクス」という笑いが漏れてくる程度だった。もっと振り切った笑いを追求できたはずだし、あるいはもっと容赦の無いバイオレンス描写も追求できたのではないか。マ・ドンソクの魅力やカリスマに頼りすぎた作品という感じがする。ファンなら観ておくべきだが、コメディ要素を期待しすぎると少々拍子抜けするかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イーセッキ

『 サスペクト 哀しき容疑者 』でも紹介した表現。意味は「てめえ、この野郎」ぐらいだろうか。本作でも何十回と聞こえてくる。邦画でここまで罵り言葉を連発するのは北野武映画くらいか。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, コメディ, チョン・へイン, パク・ジョンミン, マ・ドンソク, ヨム・ジョンア, 監督:チェ・ジョンヨル, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 スタートアップ! 』 - 韓流・腕力コメディ-

『 悪人伝 』 -The Gangster, The Cop and The Devil-

Posted on 2020年7月20日2021年1月21日 by cool-jupiter

悪人伝 65点
2020年7月19日 心斎橋シネマートにて鑑賞
出演:マ・ドンソク キム・ムヨル キム・ソンギュ
監督:イ・ウォンテ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200720232716j:plain
 

『 犯罪都市 』の暴力刑事から一転、マ・ドンソクが極道の組長として、連続殺人鬼を追うという悪人vs悪人、そこに刑事も加わるという三つ巴のクライムドラマ。少々意味不明な部分もあるが、全体的にはソリッドにまとまった秀作。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200720232734j:plain
 

あらすじ

ヤクザの組長チャン・ドンス(マ・ドンソク)はある夜、追突事故に遭う。穏便に済ませようとしたところ、突然相手に刺される。何とか撃退したもののドンスは重傷を負う。一方でチョン刑事(キム・ムヨル)は犯行を連続殺人鬼によるものと推測。ドンスに情報を渡すように迫るが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200720232753j:plain
 

ポジティブ・サイド

原題はThe Gangster, The Cop, The Devilである。『 続・夕陽のガンマン 』=The Good, The Bad and The Uglyを彷彿させる。三つ巴の戦いには独特の面白さがある。それが極道、警察、連続殺人犯というところが、いかにも韓国らしいではないか。韓国映画における警察はしばしば無能もしくは腐敗の象徴として描かれる。つまり、この戦いに一見すると善人がいないのである。つまり、そこに裏切りの予感が常に漂っている。それが物語にサスペンスをもたらしている。

 

刑事が異様な熱血で、正義と法の執行のためなら、正義と法を曲げても構わない。そこまで暴走する雰囲気を湛えている。まるで『 エンドレス 繰り返される悪夢 』に出てくるもう一人のループ現象に囚われた男のような必死さで、各方面に突っかかって食らいついて行く。『 アウトレイジ ビヨンド 』における小日向文世演じる刑事のように、悪と悪を争わせて漁夫の利を狙うなどということはしない。どこまでも直情径行で、だからこそ自分の信念を法に優先させるという暴走をしそうだと感じられる。相手が極道の組長でもシリアルキラーであろうと妙に自信満々で、どこかの時点と唐突にサクッと刺される、あるいは撃たれる予感も漂わせる、何とも危ういキャラである。そんな男がどういうわけかだんだんと応援したくなる奴に見えてくるから不思議だ。傍若無人な暴力刑事が、血気盛んな熱血刑事に華麗なる変貌を遂げるその仕組みに興味がある方は、ぜひ鑑賞しよう。

 

対するヤクザのマ・ドンソクも、いわゆる任侠道を往くような男ではなく、己の欲望と野望のために無法を是とし、殺人を厭わない悪人だ。子どもに少々甘いというか、妙に優しい側面を見せたりもするが、そうした顔は決して前面に出てこないし、まなじりを下げることはあっても、それは優しさではなく暴力を予感させる不敵な笑み。実は良い人的なエピソードを取り入れそうなところで、そうしたシーンはことごとく回避される。実際はドンス組長のちょっと意外な優しい側面を強調するシーンも撮ったかもしれない。しかし、それを編集でそぎ落としたのは英断だった。また、『 アジョシ 』のマンソク兄弟のような、人間を人間と思わないような非人道的なビジネスに手を出していないことで、悪(あく)ではなく悪(わる)にとどまっている。ワルはワルのままの方が生き生きしていて、見ていて面白いから。腕っぷしにモノを言わせて殴りまくるのは『 犯罪都市 』と同じ。違うのは、そこに明確な血の臭いと痛みがあること。中盤の大立ち回りや、クライマックスの殺人鬼への殴打の連発シーンでは、爽快感と痛みを両方同時に味わえる。まさに“マ・ドンソク”時間とも言うべき、不思議な味わいの時間である。

 

これだけ濃いメンツに追われる殺人鬼=The Devilもしっかりとキャラが立っている。次から次に行きずりに人を殺し、ニーチェやキルケゴールなどの哲学書を読み、熱心に教会に通うというキャラで、高い知能と人生への深い思索を備えたサイコパスである。だが、そんなインテリ設定など吹っ飛ばすような不気味な目、そして笑いがこの悪魔にはある。他者の生殺与奪の権を握ることに快感を覚えるというパーソナリティは間違いなく異常者であり、『 暗数殺人 』のテオとは方向性こそ異なるものの、異常性では全く引けを取っていない。こんな奴でも法治国家で逮捕されれば、人権が確保され、弁護士が付き、そして心神耗弱を理由に罪が軽くなる。直接的な証拠がないために法廷で裁けない。それを知っているから、どこまでも強気でいる。韓国の殺人鬼というのは、アメリカやロシアの大量連続殺人犯に負けず劣らずの異常者で、日本ではちょっと見られないタイプである。キム・ソンギュという役者の狂いっぷりには感銘を受けた。

 

何をどうやってもハッピーエンドにはならないストーリー展開だが、一つ言えることは、一度歩むと決めた道なら死ぬまでその道を歩き続けなければならないということか。法が裁けぬ悪ならば無法者が裁いてくれようというプロットは爽快であり痛快である。勧善懲悪に飽きたという向きは是非とも劇場へ。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200720232816j:plain
 

ネガティブ・サイド

アクションとアクションのつなぎ目が少々粗いシーンがある。具体的には中盤のドンスとチョン刑事が、刺客集団を撃退するシーン。『 オールド・ボーイ 』の廊下での大立ち回りを再現せよ、とまでは思わないが、もっと一連の格闘アクションの一つ一つを編集で連続したものに見せるのではなく、実際にひとつの連続したアクションとして撮影できなかったか。

 

警察の捜査を描く過程が少々ずさんだ。例えば殺人鬼が飲食をしたと思われる店のゴミである焼酎の瓶を選り分けるシーンは何だったのか。結局、目当ての瓶は見つかり、そこから唾液は採取できたのか、できなかったのか。また若手連中に犯人のクルマを鑑識させるが、ハンドルカバーに残った血痕を見つけるのに、そこまで時間がかかるか?犯人が手で触れているはずの箇所なのだから、真っ先に調べると思うが。それに途中でドンスの策謀で、犯人の遺留品を使って敵対するヤクザの組長をヒットマンに暗殺させるが、これまでの殺人鬼の殺しの手口と全く異なるのに、道具だけで同一犯と断定するのは少々性急に過ぎはしないか。韓国映画では警察はしばしば無能の極みに描かれるが、ここまで無能ではないはずだ。

 

そろそろ終わりかという終盤での展開が少し中だるみする。最後の刑務所うんぬんのくだりはバッサリとカットして、ビジュアルで説明すればそれで事足りたはずだ。また最後のマ・ドンソクの台詞も蛇足だったと感じた。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200720232844j:plain
 

総評

マ・ドンソクのマ・ドンソクによるマ・ドンソクのための映画である。北野武の往事は、「バカヤローッ!」、「この野郎!」と凄みながら相手を殴っていたが、それをマブリーの腕力でやると何かが違う。コメディの度合いと同時に恐怖の度合いも上がるという、なんとも不思議な現象が起きる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

ヒョンニム

あちらのヤクザの世界は親子ではなく兄弟関係になるらしい。下の者は上の者をヒョンニム=兄様と呼ぶ。ヒョン=兄、ニム=様である。ただ実際は兄貴ぐらいの意味合いでも使われる。吉本でも同門の若手は先輩をしばしば兄貴や兄さんと呼ぶ。『 トガニ 幼き瞳の告発 』で校長の双子の弟が兄を「ヒョン」と呼んだところ、「学校ではそう呼ぶな」とたしなめられていた。他には、『 パラサイト 半地下の家族 』のポン・ジュノ監督がアカデミー賞監督賞の受賞スピーチでタランティーノを指して「クエンティン・ヒョンニム」と言っていたのが印象的だ。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・ソンギュ, キム・ムヨル, クライムドラマ, マ・ドンソク, 監督:イ・ウォンテ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 悪人伝 』 -The Gangster, The Cop and The Devil-

『 犯罪都市 』 -韓流・マル暴奮闘記-

Posted on 2020年7月9日 by cool-jupiter

犯罪都市 65点
2020年7月8日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マ・ドンソク ユン・ゲサン チン・ソンギュ
監督:カン・ユンソン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200709234413j:plain
 

『 エクストリーム・ジョブ 』の面白刑事チン・ソンギュが悪役を演じてブレイクしたという映画。安定のマ・ドンソク劇場であり、適度なユーモアがあり、韓国テイストの暴力描写もある。

 

あらすじ

衿川警察の強力班の刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)はその強面と腕っぷしで地元ヤクザのいざこざを解決してきた。しかし、中国からやってきたチャン・チェン(ユン・ゲサン)率いる朝鮮族マフィアが台頭。事態は警察、韓国ヤクザ、中国マフィアの三つ巴の抗争の様相を呈し始めて・・・

 

ポジティブ・サイド

マ・ドンソクの魅力が本作でも爆発している。その腕っぷしでヤクザでも何でも平手で張り倒して、問答無用で言うことを聞かせる。それがなんともユーモラスだ。なんとなくNBAの往年のスター、チャールズ・バークレーやシャキール・オニールを思わせる。ガキ大将がそのままデカく成長しただけのように見える。そこが逆にかっこいい。警察というガッチガチの縦割り組織に身を置きながらも、どこか自由人的な雰囲気も感じさせる。お世辞にも美男子とは言えないが、顔の美醜を超越したカリスマ的なオーラもある。中尾彬をごつくしたような渋さもある。

 

主人公がこれだけキャラが立っていると、悪役側も相当な悪でなければ務まらないが、ユン・ゲサンとチン・ソンギュ演じる朝鮮族の高利貸し男の冷酷無比かつ残忍、さらに狂暴なキャラ設定は、確かにマ・ドンソクと鮮やかなコントラストを成している。序盤に出てくる韓国ヤクザをとことんまで舐め腐った態度に、有無を言わせぬ暴力。はっきり言って人間を人間と思っていない。それはそのまま、彼ら朝鮮族の延辺やハルビンでの扱われ方なのだろう。日本の半グレというのがどの程度のワルの集団なのかはよく知らないし知りたくもないが、この朝鮮族のような失うものがない人間たち、目の前の人間から奪い取ることしか考えない人間の集団ではないことを祈りたい。

 

本作では銃火器が使用されない。その代わりに『 聖女 Mad Sister 』でも使われた長柄ハンマー、『 哀しき獣 』のミョン愛用の手斧など、『 アジョシ 』のテシクのナイフなど、ダメージを与える以上に痛みを与える武器が多用される。視覚的に痛いのだ。よくここまでやれるなと呆れると同時に感心させられる。

 

本作では印象的なアクションシーンが二つある。一つは中盤の朝鮮族マフィアと韓国ヤクザの大乱闘。特に消火器が噴霧された中でのワンカット(に編集された)チャン・チェンとイス組の組長の殺し合いは必見。もう一つは、ラストのチャン・チェンとマ・ソクトのステゴロ。その戦う環境も強烈だし、バトルそのものも周囲を破壊しまくる大迫力。パンチを決定打にするのではなく、submission maneuverを極めてしまうところが妙にリアルだ。

 

適度にひねりもあるし、オチもそれなりに痛快。スカッとした気分になりたい梅雨空の日にちょうど良いだろう。

 

ネガティブ・サイド

ラストのバトルシーンで、何箇所かスタント・ダブルを使っている。できればマ・ドンソクとユン・ゲサンにすべて演じてほしかった。興行収入で『 アジョシ 』超えと言われてもピンとこない。ウォンビンはアクションを全部自分でこなしたではないか。

 

見事な死亡フラグを立てるキャラが予想に反して生き残る。それは別に良い。だが、そこで人が変わってしまうのはどうなのか。あのようなシチュエーションを潜り抜けたら、もっと慎重に、あるいはもっと臆病になってしまうと思うのだが。某キャラクターの豹変ぶりがチト説明しづらいように思う。

 

また広域警察や公安まで出張って来る事態になるのだが、もっと中央の権威というものを呵々と笑い飛ばすような演出が欲しかった。ソウルから来た刑事に握手すると見せかけて、その手を握りつぶすシーンがあるが、この情けないオッサンを班長の代わりにはできなかったか。すなわち、各シーンでリーダーシップを発揮しようとするも微妙に浮いてしまうというキャラだ。本作は究極的にはdick-measuring contest、すなわちアホな男たちの意地の張り合いなのだ。だからこそ、体面やら中央の権威やらはノイズになるのである。

 

総評

普通に面白い作品である。朝鮮族についての背景知識がなくとも、単にヤクザの抗争だと思えばそれで充分。主人公が「気は優しくて力持ち」的な作品にはハズレが少ない。予定調和的であるが、良い意味で手堅くまとまっている。本作か『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』を鑑賞すれば、マ・ドンソクのファンになること請け合いである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

カッカチュセヨ

Jovianはこれまでに二回韓国に行ったことがある。そこで非常に重宝したのが、この「カッカチュセヨ」である。値切り交渉ができるところが大阪人と韓国人の共通点である(とヒョーゴスラビア共和国民のJovianが言ってみる)。このチュセヨも便利な表現で何か欲しい時には、全部これで通じる。20年前にガイドさんに教えてもらって、今でも覚えているのが「パチュセヨ(ご飯ちょうだい)」と「ムルチュセヨ(水ちょうだい)」である。これらは実際に大阪・鶴橋のおばちゃん達には通じた。カッカチュセヨも通じたが、飲食代はさすがに負けてくれないのが鶴橋である。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アクション, クライムドラマ, チン・ソンギュ, マ・ドンソク, ユン・ゲサン, 監督:カン・ユンソン, 配給会社:ファインフィルムズ, 韓国Leave a Comment on 『 犯罪都市 』 -韓流・マル暴奮闘記-

『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』 -韓国産ゾンビ映画の傑作-

Posted on 2020年5月17日 by cool-jupiter

新感染 ファイナル・エクスプレス 75点
2020年5月16日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:コン・ユ チョン・ユミ マ・ドンソク チェ・ウシク シム・ウンギョン
監督:ヨン・サンホ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200517120849j:plain
 

COVID-19のおかげでゾンビ映画的な世の中が現実化してしまった。だが、いち早くCOVID-19を抑え込んだ(ように現時点では見える)国もある。そう、韓国である。その韓国が生んだ傑作ゾンビ映画を、今というタイミングで見直す意味はきっとあるはずである。

 

あらすじ

ファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)は離婚調停中。一人娘のスアンが釜山に向かうのに随行するため高速鉄道KTXに乗る。その頃、各地では謎のゾンビが出現していた。そして、KTX車内にもゾンビの影が迫って・・・

 

ポジティブ・サイド

『 トガニ 幼き瞳の告発 』のコン・ユが嫌な奴に見える。これはすごいことである。もちろん、そうした人間が変化していく様を描くことが本作の眼目の一つであるが、コン・ユという俳優の高い演技力を大いに堪能できるのが本作の収穫である。子役のスアンと顔立ちが似通っているという点もポイントが高い。親子であるという説得力が生まれ、だからこそコン・ユのダメな父親としての演技が光る。演技力という点ではKTX車内にゾンビウィルスを持ち込むシム・ウンギョンの演技も見逃せない。ゾンビ映画の文法に忠実に乗っ取りながらも、動けるゾンビを新しい形で提示した。特に子泣き爺的に標的にかぶりつく動作は、かまれている女性の火事場の馬鹿力的な描写とあいまって、妙なリアリティがあった。だが、なんといっても娘スアンの魂の泣き声の悲痛さよ。日本でもこれぐらいの金切り声で泣ける子役が欲しい。

 

ゾンビが跋扈する世界の恐ろしさは無論、襲い掛かって来るゾンビにある。だが、それ以上の恐怖は人間同士が疑心暗鬼になることだ。もっと言えば、その人間の本性が露わになることと言ってもいい。主人公のソグが自分と娘だけが助かればいいと身勝手な考えに囚われている中で、周囲の人間も自己中心的になる者、利他的になる者と分断されていく。

その過程の描写がねちっこい。特に必死で最前線を潜り抜けてきた者たちに対して容赦なく浴びせられる罵詈雑言は聞くに堪えない。胸が痛む。まるで現今の日本の医療従事者の家族へのいじめのようではないか。こうした、必死に戦う者への差別的な言動は普遍的に見られるもののはずである。なぜなら世界中のゾンビ映画に共通する文法だからである。クリシェと言えばクリシェであるが、今という時代に見返すといくつも発見がある。

 

ゾンビ発生の原因の一端を主人公ソグが担っていたという設定もなかなか良い。本作は詰まるところ、韓国社会における富裕層と中流層、そして下層社会民の分断を遠回しに批判しているのだ。マネーゲームに興じられるような強者の横暴が、巡り巡って大多数の庶民に多大な迷惑と被害を与えているのだぞ、というのが本作の脚本家と監督のメッセージである。いやはや、これはかなりの傑作である。

 

ネガティブ・サイド

走るゾンビは世界的にもだんだんと描かれるようになってきているが、本作でも健在。だが、上空のヘリコプターから落ちてきたゾンビやどう見ても脚や背骨が損傷しているだろうゾンビまでもが走りまくるのはいかがなものか。腕が異様な方向に曲がったまま走るゾンビは面白かったので、もっと足を引きずるゾンビ、高速で這うゾンビなど、走る以外の方法で迫りくるゾンビも見たかった。これは贅沢か。

 

途中、コン・ユ、マ・ドンソク、チェ・ウシクでパーティーを組むところで何故か上着を抜き出す男たち。いや、皮膚の露出は抑えろ。それに、携帯を使ってのトラップはなかなか良かった。であるならば、各車両に残された荷物を漁って、もっと使えそうなアイテムを探すべきではないか。女性もののカバンにはかなりの確率でスマホが入っているだろうし、旅行客の荷物ならタオル類などもあるだろう。力業以外の知恵の部分がもう少し見たかった。

 

ラストはかなり評価が分かれるところだろう。『 殺人の追憶 』や『 母なる証明 』のように、「え?」と思わせるエンディングの方が結果的によりドラマチックに、よりシネマティックになったのではないだろうか。

 

総評

本邦でも『 カメラを止めるな! 』や『 アイアムヒーロー 』、『 屍人荘の殺人 』など、近年でもゾンビ映画は制作され続けている。おそらくゾンビ映画もしくは未知のウィルス系の作品はメジャーやインディーを問わず今後も世界的な需要があるだろう。そこで日本はどんな作品を世に問うことができるか。本作は邦画が乗り越えるべき一つのハードルを示していると言える。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

クロニカ

「だから」の意味。「パパは自部勝手だ。だからママも逃げたんだよ」というセリフがあったが、話の文脈がはっきりしていると、どんな言葉もインプットしやすい。

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, コン・ユ, シム・ウンギョン, スリラー, チェ・ウシク, チョン・ユミ, パニック, マ・ドンソク, 監督:ヨン・サンホ, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』 -韓国産ゾンビ映画の傑作-

投稿ナビゲーション

新しい投稿

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme