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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ヒューマンドラマ

『 イニシェリン島の精霊 』 -内戦の擬人化劇-

Posted on 2023年2月13日 by cool-jupiter

イニシェリン島の精霊 75点
2023年2月11日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:コリン・ファレル ブレンダン・グリーソン ケリー・コンドン バリー・コーガン
監督:マーティン・マクドナー

カナダ人元同僚が絶賛していたのでチケットを購入。『 スリー・ビルボード 』には及ばないが、佳作であると言える。

 

あらすじ

1923年、イニシェリン島。パードリック(コリン・ファレル)は親友コルム(ブレンダン・グリーソン)から一方的に絶交を宣言される。パードリックは自分に何か至らぬことがあっただろうと真摯にコルムに謝罪するが、コルムは「これ以上関わるなら自分の指を切り落とす」とまで宣言して・・・

ポジティブ・サイド

イギリス映画の特徴である乾いた空気感は本作でも健在。対照的に人間関係は非常にウェットである。田舎の特徴と言ってしまえばそれまでだが、この島に登場する人々は老いも若きも他人との距離が近い。というか距離がない。プライベートな領域に遠慮会釈なく踏み込んでくる。こうした島だからこそ、コルムの突然の絶交宣言にはパードリックのみならず周囲の人間も困惑させられる。

 

絶交とはいうものの、パードリックとコルムはそれなりに言葉を交わせる。絶交とは?と観ている側が疑問に思い始める頃に、コルムは有言実行、自らの指を切り落とす。まさに衝撃の展開となるわけだが、パードリックはそこで怯まない。それでもコルムとの友情を取り戻そうともがく。だがコルムは全く応えない。当てつけのように、島を訪れた音大生たちと夜な夜なパブで交流を持つ。このあたりからパードリックも変わり始めていく。コルムとの友情ではなく対立を選んでいく。その過程で、コルムが音大生と交流し始めたように、パードリックも横暴な経験の息子ドミニク(バリー・コーガン)と奇妙な交流を持っていたが、その関係も壊れていく。妹のシボーン(ケリー・コンドン)もやがて島から去っていく。

 

コルムとパードリックの対立は、最後には『 スリー・ビルボード 』並みの惨事につながっていく。おかしなもので、人間同士がどこまでも対立しても、それに巻き込まれる動物に対しては、コルムもパードリックもお互いに人間らしさというか優しさを見せる。人間らしさとは何なのかと考えさせられる。Homo homini lupus. 人は人に狼という言葉を思い出した。また、パブの男たちが「昔は敵と言えばイングランド人だったが、今ではIRAだか政府軍だかで、意味が分からない」と言っていた。何のことはない台詞かもしれないが、当事者ではない者だと、昔も今も洋の東西を問わず、人間の意識はこの程度であるということを痛烈に皮肉っていると感じた。たとえばタリバンと聞いて、2001年以前にどれだけの人が認識できただろうか。Bellum omnium contra omnes. 万人の万人に対する闘争と言うが、人間は常に争うものなのか。そしてその争いには周囲は無関心なのか。そして争っている者同士の関係はいったん変質してしまえば、元には戻らない。コルムが指をなくしても、コルムはコルムである。たとえパードリックの良き友であったコルムではなくなってもコルムはコルムなのだ。国民を多少戦争で死なせても、国家の政体は変わらないのか。昔のアイルランドではなく今日のロシアを見ているとそう思えてくる。

 

コリン・ファレルの演技が絶品。100年前のアイルランドの片田舎の退屈な男をまさに体現した。対峙するブレンダン・グリーソンも偏屈ジジイを怪演。憎悪とは異なる感情から絶交するという難しい役どころを見事に解釈したと感じる。他に演技面で光ったのはバリー・コーガン。ここ数年で急激に頭角を現しつつある。本作のちょっとおかしな青年という役は、『 母なる証明 』のウォンビンのそれに匹敵するほどに感じた。

 

『 スリー・ビルボード 』が個人の赦しの物語であったとするなら、本作はその反対、つまり国家の対立を擬人化したものと言えるかもしれない。ロシアとウクライナの戦争開始から一年になんなんとし、台湾有事やら防衛費倍増やらと日本を取り巻く環境も激変している。イニシェリン島の精霊は世界のどこにでもいるのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

ドミニクのたどる運命というか、彼の結末が物悲しい。事故なのか、それとも自分の意志なのか。そこをあいまいにしたところに不満を感じる。ドミニクは、とある自分の行動の結果にとことん絶望したというシーンを入れてほしかった。そうすればイニシェリン島という場所の閉塞感が更に強調されたものと思う。

 

イニシェリン島のバンシーを体現していたと思われる黒衣の老婆のキャラは不要だったように感じた。

 

総評

内戦と聞くと、職業柄か個人的な嗜好からか、どうしてもアメリカ南北戦争が思い浮かぶ。が、アメリカが The United States of America であるように、英国も The United Kingdom である。『 二人の女王 メアリーとエリザベス 』から歴史が分かるように、彼の国はバラバラの国が一つにまとまっているのだ。鑑賞時にはそうした背景を知っておく必要がある。『 ウルフウォーカー 』は、ローマやイングランドに攻め込まれるアイルランドの謂いになっていたが、本作のコルムとパードリックの関係は、単なる個人同士の諍いではなく、内戦や国家間の戦争の愚かしさを傍観するしかないという無力感を味わわせてくれる。なんとも疲れる映画である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

There goes ~

~がなくなる、~がダメになる、の意。劇中では There goes that theory. = その理論はダメだ、のように使われていた。

There goes my PC. = PCが壊れた
There goes my money. = カネがなくなった

のように、結構なんにでも使える表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』
『 対峙 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イギリス, ケリー・コンドン, コリン・ファレル, バリー・コーガン, ヒューマンドラマ, ブレンダン・グリーソン, 監督:マーティン・マクドナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 イニシェリン島の精霊 』 -内戦の擬人化劇-

『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』 -コメディではなくシリアスドラマ-

Posted on 2023年2月6日 by cool-jupiter

グッドバイ、バッドマガジンズ 70点
2023年2月4日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:杏花
監督:横山翔一

シネ・リーブル梅田で予告編を何度か観て、面白そうだと感じたのでチケット購入。コメディ要素はあるものの、結構シリアスな人間ドラマに仕上がっていた。

 

あらすじ

女性誌編集を希望しながらも、男性向け成人誌の編集で採用された詩織(杏花)。卑猥な画像や物品に囲まれたオフィスで仕方なく働くも、女性編集者の澤木やライターのハルに影響を受け、徐々に仕事に打ち込むようになっていく。そして女性向け成人誌の創刊というチャンスを掴むことになるが・・・

ポジティブ・サイド

東京オリンピックに関しては2023年の今でも超巨額の談合やら何やらが今も捜査されているが、その巨大スポーツ利権イベントの裏でコンビニの店頭から消えたエロ雑誌とそれらを作る人々のドラマに焦点を当てたのはかなり目の付け所が秀逸であると感じる。

 

まずは主演の杏花の演技が素晴らしい。就職難の中、コネで雑誌社に就職するも、配属先は男性向け成人誌の編集部門。うら若き乙女にとってかなりアウェイの職場だろう。死んだ魚の目で来る日も来る日も女性のヌードがプリントされた紙をシュレッダーにかけていく日々。新人は雑用が主な仕事とはいえ、これはなかなかキツイ。しかしわずか数か月でたくましく成長する詩織。後輩社員に変わってキャッチコピーを考える様は圧巻。電光石火の早業で、次々に刺激的なエロの見出し語を生み出していく詩織の成長に、オッサンであるJovianは目頭が熱くなった。

 

詩織が成長できたのも自己研鑽だけではなく、周囲の仕事人の助けもある。落ち目のエロ本業界にあっても、良いものを作ればユーザーはついてくるという信念を持った仕事人がいるからこそ。逆にそうした人々が独立を志向して会社を去っていくのがリアルだった。残された面々も、しばしば営業と対立。これはどこの業界のどこの会社でも見られる光景だろう。うちのような語学教育会社でも、営業がクライアントに「弊社なら可能です!」とか堂々と宣言して、レッスンプランを考えたり講師に研修を実施するJovianのような教務担当が頭を抱えるというのは、日常茶飯事とまで言わないが、年に2~3回はある(口八丁の営業、ホンマええ加減にせえよ・・・)。

 

本作がお仕事ムービーとして優れている点は、仕事で盛大にやらかしてしまう展開を見せてくれるところ。ここで某キャラがやらかすミスは、サラリーマン的には洒落にならない類のものである。ミスの発生機序やその結果がもたらす影響が非常にリアルだった。

 

衰退産業にあっても個として雄々しく生きていくことができる。題材こそエロ本だが、そこに込められたメッセージは万人向けである。

ネガティブ・サイド

「テープがなければ中身で戦えた」という台詞には共感できなかった。昔も今も書籍やレンタルビデオ、レンタルDVDは中身ではなく外側で勝負してきたはず。飲食店なんかもそう。世の中の製品というのは、まずは外側で勝負しないと始まらない。このあたりを描いた小説に『 装幀室のおしごと。 ~本の表情つくりませんか?~ 』がある。

 

物語の軸が終始定まらなかった。仕事を通じて詩織が成長していくビルドゥングスロマンなのか、斜陽産業で頑張る人々を活写するお仕事ムービーなのか。どちらも追求するのではなく、どちらかに振り切るべきだった。途中からエロ雑誌の存在意義ではなく、人は何故セックスするのかにテーマが変質していったのも気になる。最後の展開は不要に思えた。

 

次々と社員が退社していく中、クビになる人もいるのだが、「え?クビだけですむの?社会的に抹殺されへんの?」という展開には少々鼻白んだ。

 

総評

雑誌の栄枯盛衰を描く物語としては『 SCOOP! 』や『 騙し絵の牙 』を上回る面白さ。全体を通して観るとトーンが一定しないが、一瞬一瞬の面白さはなかなかのもの。主演の杏花の成長は、この職場、この業界だからこそ、万人が応援できるストーリーに仕上がっている(最後以外は)。PG12作品だが、間違っても高校生あたりがデートムービーにできるものではない。大学生でもどうだろうか。35歳以上なら男性でも女性でも、お仕事ムービーとしてもエロ本の歴史ものとしても楽しめるはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

dirty magazines

タイトルにあるバッドマガジンズというのは低品質な雑誌、あるいはコンテンツが邪悪な雑誌という意味。英語ではエロ雑誌、成人雑誌は概して dirty magazines と言う。別に知っておく必要はないだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 杏花, 監督:横山翔一, 配給会社:日活Leave a Comment on 『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』 -コメディではなくシリアスドラマ-

『 そして僕は途方に暮れる 』 -逃げて、逃げて、逃げた先には-

Posted on 2023年1月29日 by cool-jupiter

そして僕は途方に暮れる 70点
2023年1月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤ヶ谷太輔 前田敦子 中尾明慶
監督:三浦大輔

『 娼年 』の三浦大輔監督が、とにかく目の前の現実から逃げる男の話を作ったと知り、面白そうだと思いチケットを購入。

 

あらすじ

フリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、鈴木里美(前田敦子)と同棲していた。しかし、里美に浮気を問い詰められた裕一は、発作的に家を出てしまう。そして親友の今井伸二(中尾明慶)の自宅に転がり込むが・・・

ポジティブ・サイド

元々舞台劇だったようだが、その臨場感は映画でも健在。主演と監督が舞台と同じだからだろう。冒頭から主人公が絵にかいたようなクソ野郎で、まったく共感できない。いや、クソ野郎ではなくダメ野郎か。日本のモラハラ夫の大部分ははこのようにして生まれているのだろうし、いわゆるニートの一部もこのようにして生まれていると推測される。このダメ男がなにかあるたびに次から次へと逃げていく。そして行きついた先に、自分を超えるダメ野郎と出会い、どう変わっていいのか分からないが、とにかく変わろうと決心する。ここは少し共感できた。特に藤ヶ谷太輔が見せる泣きの演技は『 志乃ちゃんは自分の名前が言えない 』の南沙良の泣きの演技に匹敵する。

 

『 そばかす 』に続き、ここでも前田敦子が絶妙な演技を披露している。Jovianはすっかり前田ファンである。この前田演じる里美も良妻賢母(今はこの言葉を使ってもいいのだろうか・・・)的なキャラと見せかけて、非常に人間味のある失敗をして、観る側を戦慄させる。いや、里美だけではなく、裕一の周囲の人間すべてがそうで、まさに共感と反感をジェットコースター的に感じられる一作に仕上がっている。

 

いくつか第四の壁を破るかのようなセリフがあるが、裕一が最後の最後に何度もこちら=観客席を振り返るのは、そういうこと。あとは世間様が何とか尻拭いしてくれるという甘い期待を抱いているのだ。実際、(Jovianの見た限りでは)劇場に訪れていた人の多くは、中年女性のおひとり様あるいは中年女性の二人組だった。嗅覚の鋭い観客たちである。

 

ネガティブ・サイド

 

映画としての絵のつなぎ方に問題多々あり。夜中のにわか雨のシーンから姉の家に転がり込むところで、小さなハンドタオルで濡れネズミの裕一の全身が拭けるはずがないし、ソファにも座るべきではないだろう。その後、姉の家を飛び出したシーンでも水たまり一つなし。さすがに不自然。

 

裕一のヒゲも変だった。鼻下だけに少し生やしているが、そんなデザインができるような生活をしていないだろう。

 

野村周平がゴジラ映画を撮っていた(?)っぽいが、映画の中に新作映画のCMは入れなくてよい。

 

総評

個人的には共感6割、反感4割の作品。自分でも学校や仕事から逃亡したことがあり、裕一のダメ野郎っぷりにイライラさせられながらも、自分を重ね合わせて見る瞬間も多かった。備わらんことを一人に求むる無かれ。人生とは詰まるところ、他人同士の尻拭いなのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Like father, like son.

「この父親にして、この息子あり」の意。母娘の場合は、Like mother, like daughter. となる。是枝裕和監督の『 そして父になる 』の英語タイトルも Like Father, Like Son だった。英検準1級以上を目指すなら知っておきたい表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 中尾明慶, 前田敦子, 日本, 監督:三浦大輔, 藤ヶ谷太輔, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 そして僕は途方に暮れる 』 -逃げて、逃げて、逃げた先には-

『 そばかす 』 -アロマンティックという生き方-

Posted on 2023年1月23日 by cool-jupiter

そばかす 75点
2023年1月21日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:三浦透子 前田敦子 伊藤万理華
監督:玉田真也

簡易レビュー。

 

あらすじ

三十路になっても結婚せず、実家暮らしを続ける蘇畑佳純(三浦透子)に業を煮やした母親は、佳純に無断でお見合いをセッティングする。半ば騙されてお見合いをすることになったが、出会ったのはいきつけのラーメン屋の店主で、しかも彼は結婚を考えるよりも仕事に打ち込みたいと言う。佳純は彼と友達付き合いを始めるが・・・

ポジティブ・サイド

カメラワークではなく会話劇で魅せる。自宅の居間や職場の屋上など、何気ない日常のシーンをじっくりと切り取って、そこで交わされる言葉とその言外の意味でもってキャラクターの背景を語ってくれる。佳純と母親、佳純と父親、佳純と妹の会話の中身や、その声のトーンなどから、家族の人間関係が浮き彫りになってくる。非常に舞台演劇的で、Jovianは好きである。

 

三浦透子の自然体に見える演技がいい。アロマンティックやアセクシャルを公言する友人知人がいないので想像しかできなかったが、三浦の演技はその意味で非常にリアルだと感じた。村上春樹とは波長が合わないのだが『 ドライブ・マイ・カー 』にも少し興味が出てきた。

 

『 イニシエーション・ラブ 』あたりでは今一つだった前田敦子が、今や完全に女優になったなと感じる。『 食べる女 』や『 町田くんの世界 』あたりから進境著しい。Jovianは今作で前田のファンになってしまった。

 

シンデレラを書き換えるのは面白いし、実際には文学の世界では feminist theory の元、様々なおとぎ話がリライトされている。代表的なのはフィオナ・フレンチの『 スノー・ホワイト・イン・ニューヨーク 』だろうか。興味のある向きは大型図書館や大学の図書館などで借りてみよう。

 

ネガティブ・サイド

『 終末の探偵 』でも感じたが、BGMがうるさい。もっとシンプルにキャラクターのたたずないや風景だけで魅せてほしいと感じるシーンがいくつもあった。

 

最後のチェロの演奏シーンは正直ガッカリさせられた。音にではなく、演奏時の三浦の運指が音とあまり合っていなかった。『 セッション 』のマイルズ・テラーや『 ボヘミアン・ラプソディ 』のグウィリム・リーやベン・ハーディとまでは言わないが、玉田監督ならもっとリアリティにこだわって欲しかったし、三浦透子ならその期待にも十分に応えられると思うのである。

 

総評

『 僕の好きな女の子 』でも感じたが、Jovianは玉田真也監督と波長が合うらしい。男の普遍的な性質を活写する一方で、本作ではアロマンティックやアセクシャルという生き方を鮮やかにスクリーンに描き出した。本作はそうした生き方を素晴らしいと称揚しているわけではない。ただ、自分と同じ生き方を志向している人間はきっとどこかにいるのだ、ということを教えてくれる。実際にそうした人に出会えるかどうかは分からない。けれど、自分は独りではないと知ることは大きな empowerment になることは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

aromantic

ロマンティックに否定の接頭辞の a をつけたもの。意味は「恋愛感情を抱かない」。apathy = 感情がない、と構造的には同じ。sympathy = 気持ちが同じ = 共感、telepathy = 遠くの気持ち = テレパシー。asexual = 性的関心・欲求がないは生物学的にレアだと思うが、aromantic は割と普通だと思われる。romantic それ自体が元々が「ローマ的」という意味で、イクラ強力なミームであっても、一民族、一国家の性質を全人類に当てはめられるわけではないと考える。

 

ところで・・・外来語をカタカナで表記する際、元の語の成り立ちや読みやすさを考慮して、ア・ロマンティックのように書けないだろうか。最近、リスキリングという言葉が人口に膾炙するようになったが、これもリ・スキリングと書けば「スキルにイングがついて、死の前にリがついているのか」と感じられるようになる。ただ、そうするとリプレーをリ・プレーと書いたり、プレビューをプレ・ビューと書くことになるのか・・・ 外来語の翻訳と表記はかくも難しい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 三浦透子, 伊藤万理華, 前田敦子, 日本, 監督:玉田真也, 配給会社:ラビットハウスLeave a Comment on 『 そばかす 』 -アロマンティックという生き方-

『 終末の探偵 』 -裏社会と表社会のはざま-

Posted on 2023年1月20日 by cool-jupiter

終末の探偵 70点
2023年1月15日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:北村有起哉 武イリヤ
監督:井川広太郎

超絶繁忙期のため簡易レビュー。

 

あらすじ

しがない探偵の新次郎(北村有起哉)は、ヤクザと中国系マフィアのいざこざの元になった人物の捜索を依頼される。同じ頃、ミチコ(武イリヤ)という女性もクルド人の友人を探してほしいと依頼に訪れてきた。捜査を同時に進めていく中で、新次郎は別の巨悪の存在に近づいていき・・・

 

ポジティブ・サイド

北村有起哉の立ち居振る舞いが素晴らしい。正義の味方でもなく、ヤクザと友人関係にあるが、さりとて極悪人でもない。まさに表社会と裏社会のはざまに生きる探偵だと、ありありと感じられた。タバコをくゆらせながら旧知のヤクザと、おそらく最後となるであろう会話を交わすシーンは、

 

先日公開された『 ファミリア 』と同じく日本社会と移民の軋轢を描いているが、どうにも説教臭かった『 ファミリア 』よりも、本作の方がエンタメとしての純粋な面白さは上だと感じた。

 

『 マイスモールランド 』に続いてクルド人という、チベット人と同じく国を持たない民族出身の個人が失踪した。こうした寄る辺なき民に焦点を当てることには重要な意味があるように思う。ロシアによるウクライナ侵攻は、ある時突然自分が難民になりうるという可能性を世界に示した。そうした難民を受け入れるのか、拒絶するのか。それはそのまま自分の将来になっているのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

プロットがしょぼい。外国人を食い物にする者の正体は・・・って、これではテレビドラマではないか。昔の火曜サスペンス劇場を現代風に作り変えたら、こうなるのではないか。

 

ヤクザとマフィアが素手ゴロで決着というノリには個人的にはついていけなかった。『 初恋 』のような王道チャンバラでよかったのでは?

 

総評

テレビドラマの映画化と思うほどコンパクトな作品だが、逆にもう2~3本は同工異曲の作品を作ってみてもいいのではないか。劇場の入りもかなり良かった。映画館に足しげく通うようなファンなら、本作も是非チェックされたし。ニヒルで、それでいて熱い北村有起哉が堪能できる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

scavenger 

劇中で新次郎が自身を「俺は街のどぶさらいだ」と言うが、英語にすると I’m a scavenger. となるだろうか。scavenger と聞いて『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』を思い浮かべた人はナイス。元々は腐肉食動物を指すが、転じて廃品回収業者も指すようになった。古い関西弁を知っている人なら「ああ、ガタロみたいなものか」と感じることだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そばかす 』
『 そして僕は途方に暮れる 』
『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, クライムドラマ, ヒューマンドラマ, 北村有起哉, 日本, 武イリヤ, 監督:井川広太郎, 配給会社:マグネタイズLeave a Comment on 『 終末の探偵 』 -裏社会と表社会のはざま-

『 ファミリア 』 -新たな家族像を提示する-

Posted on 2023年1月16日 by cool-jupiter

ファミリア 50点
2023年1月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:役所広司 吉沢亮 MIYAVI
監督:成島出

昨年末から気になっていた作品。『 ヤクザと家族 The Family 』とは異なる形で、新しい時代の家族の在り方を提示する野心作。

 

あらすじ

プラントエンジニアの学(吉沢亮)は、アルジェリア赴任中に現地で知り合ったナディアと結婚し、陶芸家の父・誠治(役所広司)のもとに彼女を連れてきた。その夜、地元の半グレ集団とトラブルに陥ったブラジル人のマルコスが誠治の仕事場に迷い込んできた。暴れるマルコスを誠治と学は必死で匿って・・・

ポジティブ・サイド

社会問題・時事問題をふんだんに盛り込んだ作品。特に、Jovianは2008年に某信販会社を辞めて、同年10月に富士重工関連会社から内定取り消しを食らった。リーマン・ショックの煽りで派遣切りが横行していた頃だ。また2013年当時は、大阪の某英会話スクールで日揮の社員のいるクラスを担当していたので、色々と話を聞かせてもらったことがある。なので本作の鑑賞中は、頭の中を色々なことが駆け巡った。

 

働いている業界が業界なので、Jovianの周りは国際結婚だらけである。同僚には夫もしくは妻がアメリカ人、カナダ人、イングランド人、メキシコ人、ペルー人、韓国人、中国人まで様々だ。なので学がナディアと結婚することを素直に受け止めることができたし、実際に今後はこうした国際結婚がどんどん増えていくのは間違いない。学というキャラクターの先駆的なところは、日本に来る外国人と結婚するのではなく、日本の外でパートナーを見つけたこと。これはJovianの周りでも二人しかいないので、かなり珍しい。今はそうした日本人は珍しいが、今後はもっと出てくるはず。それを予感させてくれたのは良かった。

 

MIYAVIは『 ヘルドッグス 』と同じような役だったが、『 BLEACH 』の頃に比べて演技力は格段に向上した。そう感じるのは、彼が弊社の某アンバサダーを務めているからではない。純粋にパフォーマーとしてまだまだ成長できるし、本人がそれを志向しているのだろう。愛する家族を失ったがゆえに暴走するという、役所広司とは異なるベクトルの狂気を巧みに表していた。その役所広司の演技は堂に入ったもの。『 ハルカの陶 』に登場してもおかしくなさそうな指使いで土ひねりをする様には見入ってしまった。吉沢亮との父子の関係もナチュラルで、まさに日本の俳優の大御所である。

 

ブラジル人(別にベトナム人でも中国人でもインド人でも良い)という異質な存在を社会がどう受け入れるのか、または疎外するのか。そうした状況において、個人と個人はいかなる関係を結べるのか、または結べないのか。今後、日本社会のあちこちで進行していくであろうこうした物語を、かなり極端な形ではあるが、本作は描いている。老若男女問わずに観て、そして考えてほしい作品である。

ネガティブ・サイド

ストーリーが全体的にちぐはぐ。息子を失った父の暴走の方向が『 空白 』とは全く違った形で炸裂する中盤の展開は、ホンマかいなと感じてしまった。日本の政治家や役人が海外のテロに何か手が打てるわけがないし、情報が手に入れられるわけでもない。これは歴史的史実。それよりも学とナディアを日本に帰還させて「自己責任!」という言葉を浴びせかける日本社会を描写した方が、もっと強力な社会風刺映画になったことだろう。

 

提示したい家族像が強すぎるというか、届けたいメッセージが強烈すぎるような気がする。愛する妻と娘を失った男が狂気に駆られ、愛する息子を失った男が狂気に駆られるも、最終的には新たな家族を見出すというのは、ちょっとご都合主義が過ぎる。受け取りようによっては、血のつながりは代替可能であるとも取れてしまう。また誠治にそれが可能なのは、彼自身が孤児だったという背景にその要因があるという描写も個人的には受け入れがたかった。

 

半グレやヤクザが在日ブラジル人の若者をとことん痛めつけるが、北野武の映画かいなというぐらいの暴力描写。それはもちろん構わないのだが、そこが一種の見せ場になっているのはどうなのかなあ。公園で遊ぶ小学生ぐらいの子どもたちが無意識に、あるいは意識的に見せる差別意識やいじめの描写を入れることで、逆にエリカやマルコスがどのような艱難辛苦を現在も味わい続けているのかを観る側に想像させる方が、より大人な映画作りであると思うのだが。

 

マルコスが陶芸作りに興味を持ったきっかけが不明瞭だと感じた。色んなあらすじでは、「誠治に亡き父の面影を見出し・・・」的なことを書いているが、そんな描写あったっけ?ここを深堀りしないとタイトル詐欺になるのだが・・・

 

総評

非常に示唆的なドラマと、物語のために無理やり過剰に盛り上げるドラマが混在する作品。結局のところ、役所広司というスーパーな俳優の包容力によってかろうじて成り立つ物語である。ただ『 しあわせのマスカット 』のように時事問題・社会問題を大胆に取り入れた点は評価できる。愛と狂気は表裏一体だが、MIYAVIのキャラが地元有力者の御曹司という点が気になった。ただの一般人が憎悪に駆られていく。その一方で、ただの一般人は愛情を見出していく。そんな対比があれば、もっと上質な人間ドラマになったはず。役所広司やMIYAVIのファンなら鑑賞しても損はない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take care of ~

~の世話をする、の意味。劇中では「息子をよろしく頼みます」=Please take care of my son. と訳されていた。今後、日本でも国際結婚が増加する。これぐらいの簡単な英語ぐらいは知っていてもいいだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 』
『 そして僕は途方に暮れる 』
『 死を告げる女 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, MIYAVI, ヒューマンドラマ, 吉沢亮, 役所広司, 日本, 監督:成島出, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 ファミリア 』 -新たな家族像を提示する-

『 ケイコ 目を澄ませて 』 -岸井ゆきのの新境地-

Posted on 2022年12月23日 by cool-jupiter

ケイコ 目を澄ませて 75点
2022年12月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:岸井ゆきの 三浦友和 松浦慎一郎
監督:三宅唱

日曜の夜の回とはいえ、MOVIXあまがさきの観客はJovianひとりだけ。この『 百円の恋 』に勝るとも劣らない作品がこれでは少々寂しい。

 

あらすじ

生まれつきの感音性難聴の小河ケイコ(岸井ゆきの)は、荒川区の古いボクシングジムに所属するプロボクサー。聴覚障がい者として様々な葛藤を抱え、しばらくボクシングを休みたいと感じ始めるが、その手紙をなかなか会長(三浦友和)には渡せずにいて・・・

ポジティブ・サイド

16mmカメラの粗い映像が良い意味で冴えている。解像度の低い画を見せることで、あなた方がケイコたちを見る時の目はこうなっているのですよ、と言われているように感じた。本作のもう一つの特徴はBGMを極限まで排除したこと。これによって知らず知らずケイコの世界を我々も体験していることになる。バスのシーンが印象的で、路上や車内の騒音がまったく聞こえず、バスの車体の駆動音が振動のような形で伝わってくるシーンが特に印象的だった。

 

冒頭でケイコがトレーナー相手にミット打ちする長回しのワンカットにはしびれた。このワンシーンだけで、ケイコという人物がどれほどボクシングに打ち込んできたのかが如実に示されていた。それはとりもなおさず、演じた岸井ゆきのの鍛錬の成果だ。ボクシング映画は、そういう意味で他のスポーツとはかなり毛色が異なる気がする。ボクシングのバックグラウンドがある役者など、そうそう多くないだろう。もちろんトレーナー役の俳優の力も大きいが、彼は経験者だろう。

 

たいていのボクシング映画の主人公はボクシングにしがみつく男だが、ケイコは違う。ボクシングからしばらく距離を取りたいと思っている。オフの日には仲間とおしゃれなカフェでろうあ者の仲間と女子談義に花を咲かせている。このシーンには唸った。それまでに出ていた手話の字幕が出てこないからだ。一見して楽しそうな話をしていることは分かるが、手話の心得のある人以外にはさっぱりだ。ただし、この後のシーンのケイコの顔や手先をよくよく見れば、そしてジムの会長のケイコへの言葉を聞けば、ケイコたちの交わした会話の内容が自然と理解できてくる。この演出は非常に巧みであると感じた。

 

障がい者と健常者の間にはどうしても壁が生まれやすい。ケイコも社会の中で疎外されてきた経験からそう感じてしまう。一方でボクシングを通じて、実は多くのものを受け取ってきたことにホテルの清掃業を通じて気付くシーンもある。このシーンはちょっと泣けたな。耳が聞こえない中でトレーナーや会長からワンツー・フック・ツー・ウィービングからの右アッパーというコンビネーションを教わる時、観客は当然、指示の声が聞こえる。だが実はケイコには聞こえていない。けれど教える側の動作でそれが伝わるのだ。仕事でも同じこと。ベッドメイキングのコツは言葉ではなくジェスチャーで伝えられる。ボクシングはケイコにコミュニケーション力を与えていたのだ。

 

ボクシングの果てにケイコが見つける、もう一つのもの。それは河川敷にひとり佇立するケイコに唐突に訪れる。ジムは閉鎖し、会長やトレーナーとの縁は切れるかもしれない。けれど、袖振り合うも多生の縁。知らず知らずのうちにボクシングから得ているものがあるのである。意を決して走りだすケイコの姿に、勇気を与えられない人がいるのだろうか。

 

ネガティブ・サイド

ボクシング映画全体に言えることだが、ミット打ちはかなり頑張って撮るが、ガチンコのスパーリングは本作でもお目にかかれなかった。ボクサーはミットを通してパンチのコンビネーションやボディワークを身に着けていくが、ミットの位置に相手のボディや顔面があるわけではない。なので、スパーリングで打点や距離、角度を微調整していく。本作ぐらいボクシングをしている作品なら、そこまで見せてほしかった。

 

もう一つはボクサーに欠かせない減量。女子の場合は特に生理不順を伴うことも多く、非常に神経を使う。そうした過程が一切移されなかったのは拍子抜け。原作である『 負けないで! 』は未読だが、その辺もかなり赤裸々に書かれていると推察する。本当に女優・岸井ゆきのを追い込むのであれば、減量も避けて通るべきでなかった。

 

総評

岸井ゆきのは年間最優秀俳優にノミネートされるべき好演を見せた。Aランクには5点たりないが、それはJovianが過度なボクシングファンだから。これがボクシングではないスポーツあるいはヒューマンドラマなら文句なしにAランクである。『 母性 』で怪演を見せる女優が多数いたが、岸井ゆきのは全く負けていない。むしろ勝っている。このような映画こそ多くの人に見られるべきであると心底から思う。未鑑賞の方は年末年始休みに寒さと感染症に十分対策をして劇場へ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

sign language

手話の意。ボディ・ランゲージは日本語にもなっているが、サイン・ランゲージ=手話ということも知っておこう。野球など、今でも情報伝達にサインを使うスポーツは多いが、あれは一種の手話である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』
『 散歩時間〜その日を待ちながら〜 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, スポーツ, ヒューマンドラマ, 三浦友和, 岸井ゆきの, 日本, 松浦慎一郎, 監督:三宅唱, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 ケイコ 目を澄ませて 』 -岸井ゆきのの新境地-

『 シスター 夏のわかれ道 』 -家族の在り方を問う-

Posted on 2022年12月6日 by cool-jupiter

シスター 夏のわかれ道 75点
2022年12月3日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:チャン・ツィフォン ダレン・キム シャオ・ヤン
監督:イン・ルオシン

妻が観たいというのでチケット購入。チャン・ツィフォンとイオ・ルオシン監督のコンビは、チョウ・ドンユイとデレク・ツァン監督のコンビに並ぶほどのポテンシャルがあるのではないかと感じた。

 

あらすじ

看護師のアン・ラン(チャン・ツィフォン)は、ある日、両親を交通事故で失う。両親と疎遠だったアン・ランは初めて自分に幼い弟ズーハン(ダレン・キム)がいたことを知る。医師になるために北京に進学しようとするアン・ランは、ズーハンを養子に出そうとするが・・・

ポジティブ・サイド

中国の一人っ子政策が廃止されたというニュースは記憶に新しい。調べてみると2015年のことだった。ということは現在の10代、20代、30代の大部分は一人っ子ということになる。本作の主人公のアン・ランも20代で、まさに一人っ子政策のど真ん中の世代だ。本作はこの一人っ子政策とアジア、特に中国(韓国や日本もだが)に根強く残る男尊女卑的な社会の在り方を鋭く批判している。

 

冒頭、いきなりの交通事故でアン・ランの両親が死亡するが、肝心の葬式やその後の親戚の集いでもアン・ランはあまり悲しそうではない。それもそうで彼女は両親とは疎遠にしていた。そのあたりの事情はおいおい明らかになっていくのだが、その見せ方が非常に巧みであると感じた。生まれてくることを望まれなかったアン・ラン、そして決して映像で見せられることはないが、甘やかされて育った(それは愛されて育ったとも言い換えられる)ことが明らかなズーハンの姿に、アン・ランとの残酷な対比が否が応でも浮かび上がってくる。

 

このズーハンを何とか自分の人生から追い出そうとする前半、我々はアン・ランに激しく感情移入する。自分で自分の人生を切り拓こうとする人間は、どうしたって応援したくなるではないか。その転機はいくつかある。アン・ランとズーハンの両親の事故の原因となった可能性のあるタクシー運転手の子どもが、ズーハンと同じ幼稚園に通っているのだ。当然、火種となる。また、アン・ランとボーイフレンドの間にも、いつもと異なる空気が流れるようになる。ここでアン・ランが感じるボーイフレンドとの距離というか隔たりに、男と女、上流階級と下層民、医師と看護師など、あらゆる格差が浮き彫りになる。

 

このあたりから北京に行くという夢と、自分が決して持つことのなかった家族を持ちたいというアン・ランの願望がせめぎ合い始める。その心情の細やかな移り変わりはぜひ直接鑑賞されたい。

 

それにしてもチャン・ツィフォンの演技力には恐れ入る。抑えつけられてきた女性が爆発するシーンは韓国映画ではお馴染みだが、中国の女性も似たようなものなのか。韓国女優に勝るとも劣らない抑圧された者の凄みを見せる。子役のダレン・キムも負けていない。父母の死を理解できない甘えん坊が、ある瞬間から姉を思いやれる心優しい子に変わっていく。この、姉を思いやるがゆえに姉と自分は離れた方が良いと思い込む姿には泣けてしまう。邦画なら、ここで情けないボーイフレンドと対比するために、頼りがいのある同世代の男子を投入するのだろうが、本作はそこでズーハンの成長と、ギャンブル中毒ながら、親戚の中で唯一アン・ランの味方をしてくれた叔父、そして同じ女性として夢を諦めた叔母を映し出す。家族とは所与のものではなく、自分で作る、あるいは見出すものなのだ。本作はそうした新時代の中国の家族観を提示する試みだと言える。

 

ネガティブ・サイド

『 共謀家族 』のシャオ・ヤンにもう少し見せ場が欲しかった。アン・ランは何度か両親の墓参りに来るが、そこに誰のものか分からないお供え物がある、あるいはお墓が何故かいつもきれいだった、という描写があれば、アン・ランは叔父を見直すシーンの感動がもっと深まったはず。

 

アン・ランが最後に選ぶ選択肢が少々陳腐に感じた。詳しくはネタバレになるので書けないが、本当に見たいのは、この選択の先、5年後、10年後だ。無茶苦茶なアイデアかもしれないが、アン・ラン自身が北京で誰かの養子になる、のようなエクストリームな展開を模索してみてもよかったのではないだろうか。

 

総評

中国産の駄作『 マーズ・ミッション2042 』を鑑賞直後のためか、同じ中国産の本作は光輝いて見える。そうした贔屓目を抜きにしても本作のクオリティの高さは際立っている。一人っ子政策批判=中国共産党批判だが、最近のゼロコロナ政策の緩和など、中国も政治的にマイルドになりつつあるのだろうか。社会批判と人間ドラマをハイレベルで融合させた注目の一作である。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

jiějiě

発音は「ジエジエ」、お姉さんの意である。劇中でズーハンが何度も何度もジエジエと言うので、否が応でも覚えてしまう。ちなみにエンディングの歌でも何度も聞こえてくる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, シャオ・ヤン, ダレン・キム, チャン・ツィフォン, ヒューマンドラマ, 中国, 監督:イン・ルオシン, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 シスター 夏のわかれ道 』 -家族の在り方を問う-

『 ある男 』 -人間の在り方を問う-

Posted on 2022年11月25日 by cool-jupiter

ある男 75点
2022年11月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:窪田正孝 安藤サクラ 妻夫木聡
監督:石川慶

 

石川慶監督が『 愚行録 』以来、妻夫木聡とタッグを組む。そしてメインのキャストは日本一の女優である安藤サクラと実力派の窪田正孝。チケットを購入しない理由はゼロである。

あらすじ

失意のうちに暮らす里枝(安藤サクラ)は、訳あって神奈川から宮崎にやってきた大祐(窪田正孝)と出会い、やがて二人は結婚した。新たに生まれた子どもと里枝の長男の4人家族は幸せな生活を送っていたが、ある日、大祐が事故死してしまう。疎遠になっていた大祐の兄は、しかし、大祐の遺影を指して大祐ではないと言う。夫の身辺整理の助けのために、里枝はかつて離婚の際に頼った弁護士の城戸(妻夫木聡)を再度頼ることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭、後姿の男が二人並んだ不思議な絵が見せられる。そこから場面を転じて雨の日。客のいない文房具店でいきなり悲嘆の涙を流す安藤サクラによって、一気に物語世界に引き込まれた。相対する窪田正孝も、田舎では明らかに浮いてしまうアウトサイダーでありながら、素朴さと素直さがにじみ出る好漢をきっちり演じた。里枝が大祐に死んだ我が子のことを訥々と語り、それを黙々と聞く大祐というシーンは、今年の邦画の中では最高レベルの静かな演技合戦だったように思う。

 

やがて家族となる二人だが好事魔多し。大祐は倒木の下敷きになり死亡してしまう。ここから妻夫木演じる弁護士の城戸が登場する。夫の身元が不明であったとして生命保険金の受け取りの可不可を尋ねる里枝に「問題ない」と法律の専門家として助言するが、これはかなりグレーな対応に見える。その一方で、この弁護士が通り一遍の法律家ではなく、困っている人を助ける人間であることも垣間見える。城戸が調査する谷口大祐という男の軌跡が明かされるにつれ、罪とは何か、幸せとは何かという問いがますます重みを増してくる。

 

本作は基本的にはサスペンスだが、ミステリとしてもなかなか面白い仕掛けが施されている。本作は『 人数の町 』と同じく、戸籍の問題を扱っている。いわゆる戸籍売買である。そこに仕掛けられたトリックは、見かけは全く異なるが趣旨としてはウィリアム・カッツの某小説のトリックに非常によく似ている。なので、80年代、90年代の海外ミステリ好きならピンとくるかもしれない。

 

城戸自身が在日三世という設定で、日本人や日本社会が時にそこはかとなく、時に非常にあけすけに、かつ激烈に排外的な差別を行う様は、観客として見ていてもキツイ。これが “The means of defense against foreign danger, have been always the instruments of tyranny at home.” =「外敵への防衛の意味するものは、常に国内における暴政の方便である」というジェームズ・マディソンの言葉そのまんまなのが更にキツイ。憎悪を煽られた当人たちは一時は自分たちの問題を忘れられるかもしれない。しかし、問題そのものは存在し続ける。では、どうすればいいのか。その問題が自分に関わってこないような、違う自分になればいい。

 

本作が提起する問題は、別人になることの是非ではなく、別人になりたい、ならなければならないと人に思わせる社会的なシステムである。高畑淳子の息子が婦女暴行で逮捕された時に、何故か高畑淳子が謝罪し、活動縮小に追い込まれた。別に息子は未成年でもなかったのに。同時期のアメリカではロバート・ダウニー・Jrの息子がドラッグの使用で逮捕された。自身もドラッグ常習者だったダウニーは「息子のリハビリを支援する」と言い、アメリカのメディアも特に何も言わなかった。別にJovianは「だからアメリカが優っていて日本が劣っている」と主張しているわけではない。ただ、罪というものを償えるものと考えられるか。あるいは家族の罪はその家族全体が共有すべきものなのか。このあたりを真剣に考えるべき時期に日本社会も来ていると言える。

 

最後の最後の場面で城戸が放ったセリフは何だったのか。その言葉が何であるかを想像することで、現代日本社会の生きづらさをどれだけ感じているのか、あるいは感じていないのかが測れるような気がする。何とも重い作品である。

ネガティブ・サイド

柄本明のわざとらしすぎる演技は何とかならんのか。『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』の時に負けず劣らずの過剰な演技は、さすがにちょっとどうかと思う。そろそろ佑と時生に譲って引退しては?

 

その柄本のキャラに妻夫木が「在日ですか?」と声をかけられるが、いくらなんでも無理がある。元カープの金本や元阪神の桧山ですら、カミングアウトされて、はじめて「そうかも?」と思えるレベルで、在日三世を見た目で見破るというのは、あまりに現実離れしている。せめて刑務官が「あのじいさんは誰が訪ねてきても最初はああ言うんです」とでも言ってくれればフォローにもなったのだが。

 

総評

ミステリかつヒューマンドラマの秀作である。差別とは何かを正面から問うことを巧妙に避け、差別から逃れようとすることが悪なのかという非常に重い問いを投げかけてきた。最初と最後に提示される絵画はマグリット作の『 不許複製 』というらしい。Jovianは、ある意味でこれに先立つマネの『 フォリー・ベルジェールのバー 』という作品を思い浮かべた。興味のある向きは本作を鑑賞後にググられたい。近代になって、人間がいかに自分から逃避しようと思うようになったかが見えてくるかもしれない。 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

How do you know?

劇中でとあるキャラクターが「何で分かるんですか?」と言うが、これは英語では How do you know? となる。Why do you know? にはならない。「なんで?」と聞くと、あるいは読むとついつい “why” と訳してしまいたくなることがあるが、Why do you know ~? というのは、かなり限定された文脈でしか使えない。How do you know? は日常でもよく使うので、無条件にこちらを覚えておこう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 サイレント・ナイト 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ミステリ, 安藤サクラ, 日本, 監督:石川慶, 窪田正孝, 配給会社:石川慶Leave a Comment on 『 ある男 』 -人間の在り方を問う-

『 窓辺にて 』 -愛を巡っての珠玉の対話劇-

Posted on 2022年11月20日 by cool-jupiter

窓辺にて 75点
2022年11月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ 若葉竜也
監督:今泉力哉

 

『 愛がなんだ 』の今泉力哉がオリジナル脚本で映画化。本作でも愛の不条理さを独特の感性で描き出すことに成功した。

あらすじ

フリーで物書きをしている市川茂巳(稲垣吾郎)は、小説編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が担当作家と浮気していることを知るが、そのこと自体にショックを覚えなかった自分自身にショックを受ける。一方で、茂巳は新進気鋭の女子高生作家・久保留亜(玉城ティナ)へのインタビューをきっかけに、彼女の作品のキャラクターのモデルとなった人物と合うことになり・・・

ポジティブ・サイド

なんだかんだで稲垣吾郎あっての映画だなと感じた。と、ちょっと待て。よくよく思い返してみると、Jovianが稲垣吾郎をスクリーンで観るのは、なんと『 催眠 』以来ではないか。4中年の危機とは無縁そうに見えるが、その内面を大きくかき乱された、しかしそのことを決して表面には出さない大人を好演したと言える。

 

本作のテーマは愛の形。それは今泉力哉監督が一貫して追求しているテーマである。妻が浮気をしている。そのことに腹を立てない夫は、妻を愛していると言えるのか。茂巳がサッカー選手である友人・有坂とその妻にそのことを相談するが、その有坂自身も芸能人女性と実は浮気をしている。妻もそのことに気付いている。妻は夫に腹を立てつつも、最終的には許してしまう。なぜなら夫を愛しているから。観ている我々からすれば「なんだ、この茂巳というキャラは。変な奴だなあ」と感じるが、それがいつの間にやら「なんだ、有坂の妻は。変な奴だなあ」に変わっていく。そう。愛とは元々変なものなのだ。愛しているから許せないこともあるし、愛しているからこそ許してしまうこともある。本作はそのことをドラマチックな展開もなく、淡々と見せていく。

 

茂巳は茂巳で、女子高生作家の久保留亜に大いに振り回される。小説のキャラクターのモデルに会わせてもらう中で、ボーイフレンドを紹介され、なぜか二人で軽くバイクのツーリングに出ることに。そうなんだよなあ。人と人とが触れ合い、分かり合うのに、毎回毎回たいそうな理屈が必要なわけでもない。事実、二人は後に思わぬ形で触れ合うことになる。その光景がまたとても微笑ましい。

 

茂巳は誰かに何かを言われるたびに「え?」と素っ頓狂な返事をするばかりで、まったく主体性のある人物には見えない。にもかかわらず、物語は静かに、しかし確実に彼を軸にして進んでいく。茂巳が誰に対しても真摯に耳を傾け、真摯に受け答えする姿勢によって、相手は自分なりに答えを見つけていく。

 

本作は一つひとつの対話の場面が非常に長く、しかもその多くがロングのワンカット。まさに演出する監督と演じる役者のせめぎ合いという感じだが、そのどれもが実に自然に映る。留亜と茂巳がホテルのスイートの一室で語らう場面でぶどうの実がひとつ房から落ちてしまい、それを茂巳が自然に拾い上げる。これは演出なのか、それともアドリブなのか。色々なキャラクターと茂巳がカフェや公園などで語り合うばかりの2時間半の映画が長く感じないというのは、対話の一つひとつがそれだけ真に迫っているからだ。

 

本作は物語論についても非常に含蓄のある示唆を与えてくれる。Jovianの兄弟子(と勝手に思っている)奥泉光は「論文を書くと、自分の中で知識が体系化されていく。小説を書くと、自分の中が空っぽになる」と『 虚構まみれ 』で書いていた。本作でもこのことが強く示唆されていて、今泉力哉は小説家としても相当な書き手であることを窺わせる。書くということは、思いや考えを固定してしまうことであり、それが小説、就中、私小説であれば美しい思い出としてキープしておきたい自身の物語を失ってしまうことになる。このあたりの物書きの機微を茂巳から読み取れた。稲垣吾郎と今泉力哉、なかなかのケミストリーだ。

 

オープニングとエンディングで茂巳が見せる、ある光のアクセサリがまぶしい。愛はそこにあったが、今はない。けれど、愛は確かにそこに存在した。そして、その瞬間は光り輝いていたのだ。手放してこそ実感できる愛、それもまた一つの愛の形ではないか。

 

ネガティブ・サイド

城定秀夫監督の『 愛なのに 』ぐらいのベッドシーンがあっても良かったのでは?また、玉城ティナのシャワーシーンも曇りガラスの向こうにうっすら見える程度に撮影できなかったのかな?ドロドロの不倫と中年とは思えない純朴さの対比が、稲垣吾郎演じる茂巳というキャラをより引き立たせるように思うのだが。

 

DINKSにしても、えらい良い家に住んでいるなと感じた。ロケーション協力に狛江と見えたが、あのエリアでも家賃あるいは月々のローンはかなりのものだろう。二馬力とはいえ、茂巳が一切家で仕事をしているシーンがないのは、少々現実離れしているように見えた。

 

総評

観終わってすぐに思い浮かんだのは B’z の LOVE & CHAIN の歌詞を思い出した。初期からのB’zファンなら

 

愛するというのは信じるということであっても

相手のすべてに寛容であるということではない

束縛された時に感じる愛もある

 

という間奏中の語りを知っているはず。愛というのは難しい。束縛された時に感じる愛もあれば、手放したことで感じる愛もあるはず。シニアのカップルで鑑賞していただきたい逸品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

perfect

日本語にもなっている語。カナダではウェイターが頻繁に使っていた。

 

A:I’ll have this breakfast set.
B:Perfect!

 

A:Two glasses of beer, please.
B:Two glasses of beer? Perfect!

 

など。Good と相槌を打つ際に、時々 “Perfect!” と言ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ある男 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ラブロマンス, 中村ゆり, 日本, 玉城ティナ, 監督:今泉力哉, 稲垣吾郎, 若葉竜也, 配給会社:東京テアトルLeave a Comment on 『 窓辺にて 』 -愛を巡っての珠玉の対話劇-

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